(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る無線通信システムの構成図である。
図1に示した無線通信システムは、無線通信モジュール10を搭載した車両20、基地局4Aおよび基地局4B、ネットワーク8Aおよびネットワーク8B、無線端末100、管理サーバ6、ならびにPSAP7を有している。
【0011】
基地局4Aおよび基地局4Bならびにネットワーク8Aおよびネットワーク8Bは、通信事業者Aによって提供されている。以降、基地局4またはネットワーク8を区別せず説明するときには、単に基地局4またはネットワーク8と記載し、基地局4またはネットワーク8を区別して説明するときには、基地局4A、4B、またはネットワーク8A、8Bと記載する。
【0012】
基地局4は、GSM(登録商標)(Global System for Mobile communications)等の第2世代移動通信システム、CDMA(Code Division Mutlple Access)等の第3世代移動通信システム、またはLTE(Long Term Evolution)等の第4世代移動通信システムなど如何なる移動通信システムに対応していてもよい。
【0013】
無線通信モジュール10は、様々な機能を実現する。例えば、無線通信モジュール10は、緊急通報システムを実現する上で、緊急時にPSAP7(緊急コールセンターを含む)に発呼するようになっている。さらに、車両20と通信システムとを組み合わせて、リアルタイムに情報サービスを提供するテレマティクスサービスが知られている。テレマティクスサービスでは、ナビゲーションシステムのデータ更新のための地図データやPOI(point of interest)データをネットワーク8上のサーバからダウンロードする。また、テレマティクスサービスでは、車両搭載機器のダイアグ情報をネットワーク8上のサーバにアップロードする。無線通信モジュール10は、このようなダウンロードおよびアップロードを、ネットワーク8を介して行っている。
【0014】
本実施の形態では、無線通信モジュール10は、車両20などの乗り物に搭載されたIVS(In Vehicle System)として例示している。本実施の形態では、乗り物として車両20を挙げて説明している。なお、乗り物は、船舶または列車など移動するものであれば如何なるものでもよい。無線通信モジュール10は、携帯電話機もしくはスマートフォン等の携帯端末に搭載されてもよい。無線通信モジュール10は、IoT(Internet Of Things)のためのモジュールでもよい。
【0015】
無線通信モジュール10は、第2世代移動通信システム、第3世代移動通信システム、または、第4世代移動通信システムに対応していてもよい。無線通信モジュール10は、無線端末100と通信することもできる。無線通信モジュール10は、様々な機能およびユーザが作成したプログラムの実行するための機能も有してもよい。
【0016】
基地局4またはネットワーク8を運営する通信事業者Aは、自社と契約したユーザに対し自社の移動体通信サービスを提供している。
【0017】
図2は、本実施の形態に係る無線通信モジュールのブロック図である。
図2に示した無線通信モジュールは、アンテナ11、無線通信部12、制御部13、記憶部14、IF15、カード駆動部16、およびSIMカード17を有している。
【0018】
アンテナ11は、基地局4との間の無線信号を送受信する。
【0019】
無線通信部12は、アンテナ11を介して基地局4と無線通信する。無線通信部12は、アナログ信号処理部やデジタル信号処理部を有している。
【0020】
アナログ信号処理部では、アンテナ11から受信された無線信号の増幅およびアナログ−デジタル変換処理等を行い、また、デジタル信号処理部から転送されるデジタル信号のデジタル−アナログ変換処理等をアナログの増幅を行い、アンテナ11を介して送信する。
【0021】
デジタル信号処理部では、制御部13から転送されたデータを符号化し、無線信号の通信チャネルで送信できるようにデジタル信号に変換し、また、アナログ信号処理部から転送されたデジタル信号を復号し、復号したデータを制御部13に転送するようになっている。
【0022】
制御部13は、種々のプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バックアップRAM、I/O(Input / Output)等(いずれも図示せず)よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで各種の処理を実行する。制御部13は、無線通信部12を制御する上で必要な処理を実行する。
【0023】
記憶部14は、電気的に内容を書き換えることが可能なEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)などによって構成され、無線通信部12を制御する上で必要なプログラムおよび情報を記憶する。
【0024】
IF15は、USBのIFやその他のIF等であり、ディスプレイおよびマイクとスピーカ、またはナビゲーションシステム等に接続される。
【0025】
カード駆動部16は、SIMカード(またはUIMカード)と呼ばれるICカード、すなわち情報カードを駆動するようになっている。カード駆動部16は、SIMカード17を取り込み、取り出しができるようにしてもよい。カード駆動部16は、制御部13から設定情報の読み出しや書き込みを受けた場合、SIMカード17に記録された設定情報の読み出し、SIMカード17への書き込みを行うようになっている。
【0026】
一般に、SIMカードは、加入者を特定するための情報、通信事業者を特定するための事業者特定情報、および加入者が契約している利用可能なサービスに関する情報などが記録されたICカードである。
【0027】
SIMカード17は、組み込み型のeSIM(Embedded SIM)でもよい。SIMカード17は、無線通信モジュール10の外にあってもよい。また、SIMカード17は、通信事業者から支給されてもよいし、その他の手段で入手してもよい。ユーザは、支給されたSIMカード17を無線通信モジュール10に装着または接続することで、無線通信モジュール10を使用できるようになる。
【0028】
SIMカードは、サービスを受ける上で必要な設定情報が記録されている。例えば、位置情報を登録する際の情報、電話番号(例えばIVSの電話番号)に関する情報など様々な設定情報がある。これらの情報は、ネットワーク8上の管理サーバ6に送信される。
【0029】
以下、本実施の形態に係る無線通信システムの動作について説明する。
【0030】
本実施の形態に係る無線通信システムは、緊急通報システムeCallについて説明しており、eCallの一部の仕様については、3GPP(Third Generation Partnership Project )のTS24.008(Core Network Protocol; Stage3)に規定されている。制御部13は、緊急呼処理としてネットワークを介して位置登録と緊急発呼を行うようになっている。
【0031】
また、SIMカード17には、eCallだけのサービスを許容するタイプと、テレマティクスサービス(データ通信および電話)およびeCallを許容するタイプとがある。本実施の形態は、eCallだけのサービスを許容するタイプについて説明しているが、その他のタイプにも適用できる。
【0032】
図3は、本実施の形態に係る無線通信システムの動作を表したシーケンス図である。
【0033】
まず、緊急事態が発生して緊急事態のイベントが無線通信モジュール10に通知される(ステップS1)。緊急事態は、交通事故または無線通信モジュール10を使用しているユーザの事故または怪我等であるが、特に事故または怪我に限定するものではない。緊急事態のイベントは、車両20に搭載されたセンサが感知することにより自動的に発生してもよいし、ユーザが緊急事態を検知することにより手動で発生してもよい。なお、緊急事態のイベントが発生する前は、無線通信モジュール10の通信状態は、緊急の発呼(以下、緊急発呼という)をしないモード(緊急呼非動作:eCall Inactivity)である。
【0034】
制御部13は、この通知を受けたとき、基地局4を介してネットワーク8上の位置登録管理サーバ6に位置登録を行う(ステップS2)。位置登録の成功が無線通信モジュール10に通知される(ステップS3)。
【0035】
制御部13は、PSAP7に緊急発呼を行う(ステップS4)。このとき、無線通信モジュール10の位置登録が成功しているため、PSAP7は、無線通信モジュール10の電話番号を知ることができる。無線通信モジュール10は、緊急発呼の成功の通知を受け(ステップS5)、制御部13は、緊急発呼の後のタイマーTを起動する(ステップS6)。緊急発呼が成功すれば、車両20のドライバまたはその他の人は、PSAP7のオペレータと会話することができる。また、車両20の位置情報を緊急発呼と共に通知すれば、PSAP7のオペレータは、車両20の位置を知ることができる。
【0036】
制御部13は、タイマーTの期間中に位置登録を解除することなく維持する。このタイマーTが起動された時点から所定時間(例えば12時間)、PSAP7との通信が可能となる。タイマーTは所定時間後に満了し、この満了時に、制御部13は、緊急呼非動作(eCall Inactivity)のモードに移行し、位置登録を解除する(ステップS7)。緊急呼非動作(eCall Inactivity)のモードでは、無線通信モジュール10の電力はあまり消費されない。
【0037】
仮に、ステップS3の代わりに、位置登録が失敗し、緊急発呼が成功した場合には、タイマーTの期間中に位置登録を繰り返し試みるようになっている。しかしながら、制御部13は、無線通信モジュール10の消費電力を低減するため、位置登録が失敗したときには、緊急呼処理を中止し、緊急呼非動作(eCall Inactivity)のモードに移行してもよい。
【0038】
PSAP7が無線通信モジュール10の電話番号を知っていれば、PSAP7のオペレータは、緊急事態が発生した車両20にコールバックすることができる。また、PSAP7のオペレータが車両20のドライバまたはその他の人と会話することで電話番号がオペレータに伝わったとき、オペレータは、緊急事態が発生した車両20にコールバックすることができる。
【0039】
図4は、位置登録が拒否されたときの無線通信システムの動作を表したシーケンス図である。
【0040】
まず、ステップS1、S2の動作は、
図3で説明したときの動作と同じである。位置登録が拒否されたときには、無線通信モジュール10は、ネットワーク8を介して位置登録の拒否の通知を受ける(ステップS13)。制御部13は、この通知により位置登録が拒否されたときの理由値を知ることができる。
【0041】
それから、制御部13は、PSAP7に緊急発呼を行う(ステップS14)。このとき、無線通信モジュール10が位置登録に失敗しているため、無線通信モジュール10の電話番号は、PSAP7に通知されない。この状況では、PSAP7のオペレータは、緊急事態が発生した車両20にコールバックすることができない。無線通信モジュール10は、緊急発呼の成功の通知を受け(ステップS5)、緊急呼処理の中止判定処理を実行する(ステップS16)。
【0042】
図5は、無線通信モジュール10において、位置登録が拒否されたときの緊急呼処理の中止判定処理を表したフローチャートである。
【0043】
まず、無線通信モジュール10の制御部13は、位置登録が拒否されたときの理由値を参照し、その理由値により緊急呼処理を中止にするか否かを判定する(ステップS161)。本実施例で記載している理由値(cause value)は、3GPPで規定されている理由値である。
【0044】
例えば、理由値には、緊急呼処理できる見込みがない場合の値として、端末要因またはSIMカードの要因で失敗したとき(IMSI unknown in HLR)の値「2」などとし、緊急呼処理できる見込みがある場合の値として、ネットワークが一時的な要因で失敗したとき(Network Failure)の値「17」などとしてもよい。
【0045】
位置登録が拒否されている場合には、緊急呼処理できる見込みがない場合の値として、位置登録できる見込みがない場合の値にしてもよく、緊急呼処理できる見込みがある場合の値として、位置登録できる見込みがある場合の値にしてもよい。
【0046】
理由値が緊急呼処理できる見込みがない場合の値のとき、制御部13は、緊急呼処理を中止し(ステップS162)、緊急呼非動作(eCall Inactivity)のモードに移行する。
【0047】
理由値が緊急呼処理できる見込みがある場合の値のとき、制御部13は、緊急発呼の後のタイマーTを起動し(ステップS6)、タイマーTの期間中に位置登録を繰り返し試みることで緊急呼処理を継続する(ステップS163)。タイマーTが起動された時点から所定時間(例えば12時間、または、短い時間でもよい)後に満了し、この満了時に、制御部13は、緊急呼非動作(eCall Inactivity)のモードに移行する。
【0048】
図4および
図5で説明したように、無線通信モジュール10は、位置登録が失敗したとしても、その後、緊急呼処理できる見込みがある場合、PSAP7との通信を再試行することができる。無線通信モジュール10とPSAP7とがつながって、無線通信モジュール10のユーザが、PSAP7のオペレータに電話番号を言ったときなど、オペレータが、電話番号を取得できた場合には、緊急事態が発生した車両20にコールバックすることができる。
【0049】
無線通信モジュール10は、位置登録が失敗し、緊急呼処理できる見込みがない場合、緊急呼処理を中止し、緊急呼非動作(eCall Inactivity)のモードに移行するため、無線通信モジュール10の消費電力を低減させると共に、ネットワークへの負荷を抑止することができる。
【0050】
図6は、緊急発呼が拒否されたときの無線通信システムの動作を表したシーケンス図である。
【0051】
まず、ステップS1、S2の動作は、
図3で説明したときの動作と同じである。位置登録の成功が無線通信モジュール10に通知される(ステップS23)。
【0052】
位置登録が成功した後に、制御部13は、PSAP7に緊急発呼を行う(ステップS24)。ここで、緊急発呼が拒否されたときには、無線通信モジュール10は、ネットワーク8を介して緊急発呼の拒否の通知を受ける(ステップS25)。制御部13は、この通知により緊急発呼が拒否されたときの理由値を知ることができる。そしてそれから、無線通信モジュール10は、緊急呼処理の中止判定処理を実行する(ステップS26)。
【0053】
図7は、無線通信モジュール10において、緊急発呼が拒否されたときの緊急呼処理の中止判定処理を表したフローチャートである。
【0054】
まず、無線通信モジュール10の制御部13は、緊急発呼が拒否されたときの理由値を参照し、その理由値により緊急呼処理を中止にするか否かを判定する(ステップS261)。
【0055】
例えば、理由値には、緊急呼処理できる見込みがない場合の値として、端末要因またはSIMカードの要因で失敗したとき(IMSI unknown in HLR)の値「2」、および、位置登録が成功していてもPSAP7に電話番号が通知されないで失敗した場合(Request Service Option not subscribed) の値「33」などとし、緊急呼処理できる見込みがある場合の値として、ネットワークが一時的な要因で失敗したとき(Network Failure)の値「17」などとしてもよい。
【0056】
緊急発呼が拒否されている場合には、緊急呼処理できる見込みがない場合の値として、緊急発呼できる見込みがない場合の値にしてもよく、緊急呼処理できる見込みがある場合の値として、緊急発呼できる見込みがある場合の値にしてもよい。
【0057】
理由値が緊急呼処理できる見込みがない場合の値のとき、制御部13は、緊急呼処理を中止し(ステップS162)、緊急呼非動作(eCall Inactivity)のモードに移行する。
【0058】
理由値が緊急呼処理できる見込みがある場合の値のとき、制御部13は、緊急発呼の後のタイマーTを起動し(ステップS6)、タイマーTの期間中に位置登録を維持することで緊急呼処理を継続する(ステップS263)。タイマーTが起動された時点から所定時間(例えば12時間)後に満了し、この満了時に、制御部13は、緊急呼非動作(eCall Inactivity)のモードに移行する。
【0059】
図6および
図7で説明したように、無線通信モジュール10は、緊急発呼が失敗したとしても、その後、緊急呼処理できる見込みがある場合、PSAP7との通信を再試行することができる。無線通信モジュール10は、緊急発呼が失敗し、緊急呼処理できる見込みがない場合、緊急呼処理を中止し、緊急呼非動作(eCall Inactivity)のモードに移行するため、無線通信モジュール10の消費電力を低減させると共に、ネットワークへの負荷を抑止することができる。
【0060】
図8は、無線通信モジュール10において、緊急発呼が拒否されたときの緊急呼処理の中止判定処理を表したフローチャートである。
【0061】
まず、無線通信モジュール10の制御部13は、緊急発呼が拒否されたときの理由値を参照し、その理由値により緊急呼処理を中止にするか否かを判定する(ステップS261)。
【0062】
理由値が緊急呼処理できる見込みがない場合の値のとき、制御部13は、緊急呼処理を中止し(ステップS162)、緊急呼非動作(eCall Inactivity)のモードに移行する。
【0063】
理由値が緊急呼処理できる見込みがある場合の値のとき、制御部13は、上述の理由値によってPSAP7に電話番号が通知されていたか否かを判定する(ステップS262)。
【0064】
制御部13は、PSAP7に電話番号が通知されていない場合、緊急呼処理を中止し(ステップS162)、電話番号が通知されていた場合、緊急発呼の後のタイマーTを起動し(ステップS6)、タイマーTの期間中に位置登録を維持することで緊急呼処理を継続する(ステップS263)。タイマーTが起動された時点から所定時間(例えば12時間)後に満了し、この満了時に、制御部13は、緊急呼非動作(eCall Inactivity)のモードに移行する。
【0065】
図6および
図8で説明したように、無線通信モジュール10は、緊急発呼が失敗したとしても、その後、緊急呼処理できる見込みがあり、電話番号が通知されていた場合、PSAP7との通信を再試行することができる。この場合、オペレータは、緊急事態が発生した車両20にコールバックすることができる。
【0066】
無線通信モジュール10は、緊急発呼が失敗し、緊急呼処理できる見込みがない場合、緊急呼処理を中止し、緊急呼非動作(eCall Inactivity)のモードに移行するため、無線通信モジュール10の消費電力を低減させると共に、ネットワークへの負荷を抑止することができる。
【0067】
図9は、位置登録と緊急発呼が共に拒否されたときの無線通信システムの動作を表したシーケンス図である。
【0068】
まず、ステップS1、S2、S13、S14の動作は、
図3で説明したときの動作と同じである。PSAP7から緊急発呼が拒否されたときには、無線通信モジュール10は、ネットワーク8を介して緊急発呼の拒否の通知を受ける(ステップS25)。
【0069】
位置登録と緊急発呼が共に拒否されたとき、制御部13は、緊急呼処理できる見込みがないため、緊急呼処理を中止し(ステップS31)、緊急呼非動作(eCall Inactivity)のモードに移行する。
【0070】
図9で説明したように、無線通信モジュール10は、位置登録と緊急発呼が共に失敗している場合、緊急呼処理できる見込みはないため、無線通信モジュール10の消費電力を低減させると共に、ネットワークへの負荷を抑止することができる。
【0071】
本出願は、2017年2月21日付で出願された日本国特許出願(特願2017-029734)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。