(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルミニウム材と、当該アルミニウム材の少なくとも一方の表面に形成された化成皮膜と、当該化成皮膜上に形成された塗膜とを有するプレコートアルミニウム材において、当該塗膜は、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ユリア樹脂、カーボンブラック及びアクリル樹脂としてスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体を含み、架橋密度が1×10−6〜1×10−3mol/ccであり、伸びが2%以上であり、アクリル樹脂の含有割合は、ビスフェノール型エポキシ樹脂とユリア樹脂との合計量100質量部に対して5〜25質量部であり、カーボンブラックの含有割合は、ビスフェノール型エポキシ樹脂とユリア樹脂との合計量100質量部に対して3〜12質量部であることを特徴とするプレコートアルミニウム材。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム材は、軽量、高耐食性、高熱伝導性、高リサイクル性などの特性に優れており、建材、電機製品などの構成材料として広く使用されている。そのような用途において、アルミニウムが本来持つ特性を損なわずに他の機能が求められるに至り、表面処理された製品が実用化されている。表面処理の手法としては、耐食性や耐摩耗性などを向上させることが可能なアノード酸化処理、耐食性や密着性などを向上させることが可能なめっき処理、耐食性や潤滑性などを向上させることが可能な塗装処理等が用いられている。中でも、塗装により形成される塗膜は、主に樹脂や添加剤などで構成され、多種多様な組合せにより、様々な機能を発現させることが可能である。
【0003】
アルミニウム材に塗装する工程は、アルミニウム材をプレス加工後に塗膜を形成するポストコート法と、プレス加工前にアルミニウム材に予め塗膜を形成しておくプレコート法の2種類が知られている。プレコート法には、ユーザーでの工程短縮によるトータルコストの低減や作業環境の改善などに加えて、アルミニウム材に形成する塗膜厚を均一にすることが可能なため品質の安定性という点で特長を有する。
【0004】
近年、環境問題が深刻化するにつれて、自動車のCO
2排出量などの規制が大幅に強化されてきている。排出ガスの低減や燃費の向上を実現する上で、車体の軽量化が不可欠であり、自動車部品へのアルミニウム材の適用が増えてきている。そのような中、プレコートアルミニウム材を加工し、自動車部品に応用する試みが増加しつつある。自動車部品の中には、光が反射することによる眩しさを抑制するために、表面が黒色であることを必要とするものがある。また、自動車の使用環境は多岐にわたることから、自動車部品に対して高温高湿試験を行ってこれらの信頼性に問題がないことを確認しておくこと重要である。
【0005】
特許文献1には、金属板の少なくとも片面に、水分散ポリエステル樹脂をベースとする水系黒色樹脂組成物から形成される膜厚0.8〜1.6μmの第一黒色層が積層され、この第一黒色層の上に溶剤系黒色塗料から形成される膜厚5〜9μmの第二黒色層が積層されており、上記水系黒色樹脂組成物が、水系樹脂で表面が被覆された表面処理カーボンブラックを含有する黒色塗装金属板が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるようなポリエステル樹脂を主剤とする塗膜を用いる場合に、曲げ加工後のサンプルに対して高温高湿試験を行うと、加水分解反応が進行することによって塗膜剥がれが発生するという問題が残った。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.プレコートアルミニウム材
本発明に係るプレコートアルミニウム材は、アルミニウム材と、この少なくとも一方の表面に形成された化成皮膜と、この化成皮膜上に形成された塗膜とを有する。この塗膜は、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、カーボンブラック及びアクリル樹脂を含む。塗膜の架橋密度は1×10
−6〜1×10
−3mol/ccであり、塗膜の伸びは2%以上である。そして、アクリル樹脂の含有割合は、エポキシ樹脂とユリア樹脂の合計量100質量部に対して5〜25質量部である。
【0012】
B.アルミニウム材
本発明で用いられるアルミニウム材は、自動車部品用に成形するために求められる機械的性質や化学的性質により、アルミニウム材の合金や質別が適宜選択される。その中で、JIS A1080PやA1100P等の1000系や、JIS A5052P、A5082P等の5000系を用いることが好ましい。
【0013】
C.化成皮膜
本発明で用いられる化成皮膜は、りん酸クロメート、ジルコニウム系、チタン系、リン酸亜鉛等を用いることができるが、これらの中で、りん酸クロメート、又は、ジルコニウム系を用いるのが好ましい。りん酸クロメートの付着量は、金属Cr元素換算で好ましくは5〜50mg/m
2、より好ましくは10〜45mg/m
2である。この付着量が5mg/m
2未満では、塗膜との密着性が低下する場合があり、50mg/m
2を超えると、塗膜との密着性の効果が飽和し経済性に欠ける。ジルコニウム系の付着量は、金属Zr元素換算で好ましくは3〜20mg/m
2、より好ましくは5〜15mg/m
2である。この付着量が3mg/m
2未満では、塗膜との密着性が低下する場合があり、20mg/m
2を超えると、塗膜との密着性の効果が飽和し経済性に欠ける。なお、塗膜の付着量は、蛍光X線分析装置を用いて測定することができる。
【0014】
上記化成皮膜を形成する方法としては、アルミニウム材の表面に、化成皮膜形成用の所定の処理液を所定の温度で加温後にスプレーするスプレー法や、所定温度の処理液仲にアルミニウム材を所定時間浸漬する浸漬法が挙げられる。
【0015】
なお、化成処理を行う前に、アルミニウム材表面の汚れを除去したり表面性状を調整したりするために、希硫酸、希硝酸等による酸処理(洗浄)、或いは、水酸化ナトリウム水溶液、ケイ酸ナトリウム水溶液等によるアルカリ処理(洗浄)を行うことが望ましい。このような洗浄による表面処理も、アルミニウム材に所定の表面処理液をスプレーしたり、所定温度の表面処理液中にアルミニウム材を所定時間浸漬することによって実施される。
【0016】
D.塗膜
D−1.エポキシ樹脂
本発明における塗膜に用いられるエポキシ樹脂には、ビスフェノール類とエピハロヒドリンとの重縮合により合成されるビスフェノール型エポキシ樹脂が用いられる。ビスフェノール類としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂には、エポキシ基や水酸基を分子内に有するため、硬化剤を配合し加熱硬化させることが可能である。ビスフェノール型エポキシ樹脂の数平均分子量は、好ましくは4300〜9200、より好ましくは4500〜8900である。数平均分子量が4300未満では、曲げ加工時に塗膜割れや塗膜剥離が生じる場合がある。一方、9200を超えると、塗料粘度が上昇し塗装外観が劣る場合がある。この数平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography;ゲル浸透クロマトグラフィー)法により測定することができる。標準ポリマーにはポリスチレンが用いられ、溶離液にはTHF(Tetrahydrofuran;テトラヒドロフラン)が用いられる。
【0017】
D−2.ユリア樹脂
本発明における塗膜に用いられるユリア樹脂には、尿素化合物とホルムアルデヒドなどのアルデヒド化合物を縮合させた後、アルキルエーテル化させたものが用いられる。ユリア樹脂はエポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部配合する。この配合割合が1質量部未満では、塗膜の架橋密度が小さく曲げ加工後の耐高温水性が劣る場合がある。一方、30質量部を超えると、塗膜中に遊離のユリア樹脂が存在する。その結果、熱水に接触することでユリア樹脂自身が加水分解するために、曲げ加工後の耐高温水性が劣る場合がある。
【0018】
D−3.カーボンブラック
本発明における塗膜に用いられるカーボンブラックとしては、炭化水素原料をチャンネル法、ファーネス法、熱分解法、アセチレン法等により熱分解することにより製造される黒色微粉末が好ましい。チャンネル法は主に天然ガスを原料に用い、これを燃焼室内で多数のバーナーチップから不完全燃焼させる。そして、不完全燃焼する炎の高さを適切に調整し、鉄製のチャンネルに衝突させて、生成するカーボンブラックをこのチャンネルに付着させ、付着したものを捕集する方法である。ファーネス法は、原料を耐火煉瓦で内張した炉内において、酸素が不足する状態で熱分解させる方法である。熱分解法は炉内の空気を完全に断ち、空気を介さないで炉内に熱を供給して熱分解する方法である。アセチレン法は、アセチレンガスの熱分解による方法である。このような方法によって得られるカーボンブラックを塗膜成分として含有させることにより、塗膜を黒色化することができる。
【0019】
カーボンブラックの配合量は、エポキシ樹脂とユリア樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは3〜12質量部、より好ましくは4〜10質量部配合される。この配合割合が3質量部未満では、黒色が不十分となり曲げ加工部の色が透ける場合がある。一方、12質量部を超えると、塗膜の伸びが小さくなり曲げ加工性が劣る場合がある。
【0020】
D−4.アクリル樹脂
本発明における塗膜に用いられるアクリル樹脂は、カーボンブラックの分散剤として用いられる。アクリル樹脂がカーボンブラック粒子表面に吸着し、主に、アクリル樹脂のポリマー鎖同士が重なり合う際に生じるエントロピー排斥効果によってカーボンブラックが安定化し、カーボンブラックの凝集を抑制することができる。アクリル樹脂としては、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、ポリアクリルアミド等が好適に用いられる。アクリル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは3000〜90000、より好ましくは3500〜8500である。
【0021】
アクリル樹脂の配合割合は、エポキシ樹脂とユリア樹脂の合計量100質量部に対して、5〜25質量部、好ましくは8〜22質量部である。この配合割合が5質量部未満では、カーボンブラックが凝集してその分布がまばらになる。その結果、色が薄くなって黒色とはならない。更に、曲げ加工時に塗膜割れの起点となり、曲げ加工性が劣る。一方、25質量部を超えると、過剰に含有されるアクリル樹脂が加水分解して、曲げ加工後の耐高温水性が劣る。
【0022】
D−5.塗膜の架橋密度
本発明における塗膜の架橋密度は、1×10
−6〜1×10
−3mol/cc、好ましくは3×10
−6〜8×10
−4mol/ccである。塗膜の架橋密度は、プレコートアルミニウム材の未塗装面側に希塩酸を接触させてアルミニウム材を溶解させ、残留した塗膜を用いて、或いは、PTFEフィルムに後述する塗料をバーコータで塗布し、後述する条件で焼付けたものからPTFEフィルムを剥がし、残留した塗膜を用いて測定される。測定には、動的粘弾性装置が用いられる。具体的には、塗膜の貯蔵弾性率の温度依存性を測定した曲線から、ゴム状平坦領域の貯蔵弾性率を求め、下記(1)式により算出される。なお、塗膜の貯蔵弾性率の温度依存性は、塗膜を短冊状に切断し、動的粘弾性測定装置にセットし、一定の昇温測定で昇温させて、引張モードで行なわれる。
【0023】
n=E‘/3RT (1)式
ここで、n:架橋密度(mol/cc)、
E‘:ゴム状平坦領域の貯蔵弾性率(J/cc)、
R:気体定数(8.31J/mol・K)、
T:温度(K)である。
【0024】
塗膜の架橋密度が1×10
−6mol/cc未満では、塗膜内部の架橋構造に伴う網目が大きくなり、塗膜の伸びが大きくなる。その結果、曲げ加工に伴って網目が大きくなるため、塗膜の透水率が大きくなって曲げ加工後の耐高温水性が劣る。一方、1×10
−3mol/ccを超えると、塗膜内部の架橋が密になる。その結果、曲げ加工によって塗膜が破断し、曲げ加工後の耐高温水性が劣る。
【0025】
D−6.塗膜の伸び
本発明における塗膜の伸びは、2%以上、好ましくは3%以上である。塗膜の伸びも、プレコートアルミニウム材の未塗装面側に希塩酸を接触させてアルミニウム材を溶解させ、残留した塗膜を用いて、或いは、PTFEフィルムに後述する塗料をバーコータで塗布し、後述する条件で焼付けたものからPTFEフィルムを剥がし、残留した塗膜を用いて測定される。測定には、引張試験機が用いられる。引張試験において、塗膜が破断した際における伸びを塗膜の伸びとする。なお、塗膜の伸びは、(破断後の標点距離−初期の標点距離)を初期の標点距離で除した値を百分率で表したものである。
【0026】
塗膜の伸びが2%未満では、素材の変形に塗膜が追随できず、曲げ加工によって塗膜が破断し、曲げ加工後の耐高温水性が劣る。なお、塗膜の伸びの上限値は、塗膜の成分及びその含有量に依存するが、本発明では5%程度となる。
【0027】
D−7.塗膜厚
本発明における塗膜厚は、好ましくは2〜20μm、より好ましくは4〜12μmである。塗膜厚が2μm未満では、黒色が不足する場合がある。一方、20μmを超えると、曲げ加工によって塗膜が破断して塗膜割れが発生する場合がある。
【0028】
E.製造方法
本発明に係るプレコートアルミニウム材は、上述のように、アルミニウム材の少なくとも一方の表面にスプレー法又は浸漬法によって化成皮膜を形成する。次いで、この化成皮膜上に塗膜形成用の液状の塗料組成物を塗布し、それを焼き付けることによって製造される。
【0029】
E−1.塗料組成物
本発明における塗膜形成用の液状の塗料組成物は、塗膜成分を溶剤に溶解、分散させて調製される。塗膜成分とは、上述のエポキシ樹脂、ユリア樹脂、カーボンブラック及びアクリル樹脂を含む。溶剤は、各塗膜成分を溶解又は分散できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、炭化水素、アルコール、ケトン、エステル等を用いることができる。塗料組成物において、塗膜成分を含む塗料固形分が10〜60質量%となるように溶剤量を適宜選択することが好ましい。
【0030】
通常は、まず、エポキシ樹脂及びユリア樹脂を溶剤中に溶解させたものと、カーボンブラック及びアクリル樹脂を溶剤中に分散させたものを調製する。次いで、前者に後者を添加し、その後に、溶剤を更に添加して所望の塗料固形分濃度の塗料組成物を調製する。なお、必要に応じて、塗料組成物にレベリング剤、はじき防止剤、わき防止剤等を含有させても良い。
【0031】
E−2.塗布方法
アルミニウム材表面に塗料組成物を塗布する方法としては、膜厚の均一性に優れ、生産性が良好なロールコート方式が好ましい。ロールコート方式では、塗料組成物をパンに貯めておき、ピックアップロールによりパンから塗料組成物をかき上げてアプリケーターロールに転写し、転写した塗料組成物をアルミニウム材表面に塗布する。なお、アルミニウム材の搬送は、バックアップロールを用いて行う。なお、ロールコート方式の他に、グラビアロール方式、ナチュラルコート方式等の方法で塗布しても良い。バーコータで塗布してもよい。また、後述する焼付方法によって乾燥させた後の塗膜厚が2〜20μmとなるように、塗料組成物の塗布量を調整する。
【0032】
E−3.焼付方法
アルミニウム材に塗布した塗料組成物は、熱風乾燥機内で乾燥することにより焼付ける。焼付けにおける最高到達板温度は、好ましくは250〜320℃、より好ましくは260〜300℃であり、焼付時間は、好ましくは20〜100秒、より好ましくは40〜90秒である。最高到達板温度が250度未満の場合や焼付け時間が20秒未満の場合には、曲げ加工性が劣る場合がある。一方、最高到達板温度が320を超える場合や焼付け時間が100秒を超える場合には、曲げ加工性が劣る場合がある。焼付に用いる加熱方法は、熱風乾燥機による加熱方法の他に、赤外線加熱や高周波誘導加熱によるものであっても良い。
【実施例】
【0033】
本発明例1〜6及び比較例1〜9
アルミニウム材表面に、塗膜を以下のようにして形成した。アルミニウム合金板(JIS A5052P H34、幅:20cm、長さ:30cm、厚さ:1.0mm)を弱アルカリ性の脱脂液で脱脂処理し、次いで水洗した。このアルミニウム合金板を、室温の市販のりん酸クロメート化成処理液中に0.5分間浸漬して化成処理し、次いで、水洗後に大気雰囲気中で乾燥した。次に、このアルミニウム合金板に、焼付乾燥後の膜厚が10μmとなるように、表1に示す塗料組成物(シクロヘキサンとトルエンの混合溶剤を用い、塗膜成分を含む塗料固形分濃度を45質量%としたもの)をバーコータにより塗布し、最高到達板温度を290℃、焼付時間を60秒として熱風乾燥機内において焼付け、プレコートアルミニウム材試料を作製した。
【0034】
【表1】
【0035】
りん酸クロメート化成皮膜の付着量を、蛍光X線分析装置を用いて測定したところ、作製した全ての試料においてCr量で25mg/m
2であった。
【0036】
作製した各プレコートアルミニウム材試料から幅:20cm、長さ:30cmの部分を切り出し、その未塗装面を希塩酸に接触させて残留した塗膜を得た。各塗膜試料の架橋密度を動的粘弾性測定装置により測定した。なお、動的粘弾性測定の条件は、1Hz、昇温速度3℃/分とした。更に、希塩酸接触によって同様に得た塗膜試料の伸びを、引張試験機により測定した。なお、引張試験の条件は、速度100mm/分とした。結果を表1に示す。
【0037】
次に、上記各プレコートアルミニウム材試料について、色、曲げ加工性、曲げ加工後の密着性及び曲げ加工後の耐高温水性を後述の方法によって評価した。表1において、○及び△を合格とし、×を不合格とした。結果を表1に示す。
【0038】
<色>
色は、プレコートアルミニウム材試料の塗膜面を目視によって評価した。評価基準は、以下の通りである。
○:黒色であり使用可能
×:色が薄く、使用不可
【0039】
<曲げ加工性>
曲げ加工性は、プレコートアルミニウム材試料の塗膜面を外側にして180度1T曲げを行い、塗膜の割れを目視で観察した。評価基準は、以下の通りである。
○:塗膜の割れなし
△:微小な塗膜の割れがあるが使用可能
×:著しい塗膜の割れがあり使用不可
【0040】
<曲げ加工後の密着性>
曲げ加工後の密着性は、曲げ加工性を評価するために作製したプレコートアルミニウム材試料の曲げ部にセロハンテープを貼り合せ、剥離した際における塗膜の剥離の程度を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:塗膜剥離なし
×:塗膜剥離あり
【0041】
<曲げ加工後の耐高温水性>
曲げ加工後耐高温水性は、曲げ加工性を評価するために作製したプレコートアルミニウム材試料にプレッシャクッカー試験を実施し、外観を目視によって評価した。なお、試験時間は168時間とした。評価基準は、以下の通りである。
○:塗膜剥離が認められず、変色も認められない
×:塗膜剥離が認められ、又は、塗膜剥離が認められず変色が認められる。
【0042】
本発明例1〜6では、本発明の構成要件を満たすので、色、曲げ加工性、曲げ加工後の密着性及び曲げ加工後の耐高温水性のいずれも合格であった。
【0043】
比較例1では、塗膜の架橋密度が小さ過ぎたため、曲げ加工後の耐高温水性が不合格であった。
【0044】
比較例2では、塗膜の架橋密度が大き過ぎたため、曲げ加工性及び曲げ加工後の耐高温水性が不合格であった。
【0045】
比較例3では、塗膜成分としてエポキシ樹脂とユリア樹脂とは異なる樹脂を用いたため、曲げ加工後の耐高温水性が不合格であった。
【0046】
比較例4では、塗膜成分にカーボンブラックを含まないので、色が不合格であった。
【0047】
比較例5では、塗膜の伸びが小さ過ぎたため、曲げ加工性が不合格であった。
【0048】
比較例6では、アクリル樹脂の含有量が少な過ぎたため、色及び曲げ加工性が不合格であった。
【0049】
比較例7では、アクリル樹脂の含有量が多過ぎたため、曲げ加工後の耐高温水性が不合格であった。
【0050】
比較例8では、アクリル樹脂の含有量が少な過ぎたため、色及び曲げ加工性が不合格であった。
【0051】
比較例9では、アクリル樹脂の含有量が多過ぎたため、曲げ加工後の耐高温水性が不合格であった。