(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製品液を容器に充填して飲料を製造するシステムにおいて、生産効率を上げることが常に求められており、当該システムの構成要素である容器処理装置においては、所望する温度に加熱または冷却するのに要する時間を短縮することが必要である。
そこで本発明は、従来に比べて所望する温度に迅速に加熱または冷却することができる容器処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明の容器処理装置は、製品液が充填された容器を搬送するコンベヤと、容器を加熱または冷却する処理水を、コンベヤで搬送される容器に向けて散布するノズルと、を備え、コンベヤは、容器を横向きに寝かせ、かつ、容器の搬送方向に沿って転動させながら搬送する転動領域を有している。
【0006】
本発明の容器処理装置によれば、容器を横向きに寝かせているので、例えば缶容器を例にすると、製品液が上蓋の内面及び底蓋の内面にも接し、しかも、上蓋及び底蓋にも温水が浴びせられるので、正立した缶容器では有効でない上蓋及び底蓋も有効な伝熱面となり、缶胴を含めた伝熱面が正立の器と比べて増える。
また、横向きに寝かせて転動される缶容器の内部には、缶胴の内面近傍の製品液が缶胴に連れ回されることによる円周方向に沿う、換言すれば上下方向に撹拌が生じ、転動が繰り返されるとこの撹拌が製品液の全体に波及するので、対流で生じる製品液の上下の温度差を解消できる。
以上により、本発明の容器処理装置によれば、製品液の全体を所定の温度に迅速に加熱することができる。
【0007】
本発明の容器処理装置において、コンベヤは、複数のコンベヤ要素が鉛直方向に並び、容器が鉛直方向に隣接する一方のコンベヤ要素から他方の前記コンベヤ要素に移送される反転動作を繰り返して搬送される主コンベヤと、前工程から受け渡された容器を主コンベヤに向けて搬送する搬入コンベヤと、主コンベヤから受け渡された容器を後工程に受け渡す搬出コンベヤと、を備えることができる。
【0008】
本発明の容器処理装置において、主コンベヤは、コンベヤ要素が、横向きに寝ている容器を静置して搬送する一方、反転動作が行われる領域を転動領域として機能させることができる。
【0009】
本発明の容器処理装置において、搬入コンベヤ及び搬出コンベヤの一方又は双方を、転動領域として機能させることができる。
【0010】
本発明の容器処理装置において、転動領域を、無限軌道上に沿って配列され、無限軌道の走行に伴って移動する複数の自転ローラと、複数の回転ローラに接し、無限軌道の走行に伴って複数の自転ローラを摩擦力により回転させる固定摩擦体と、を備える構成とし、容器を、摩擦力によりそれぞれが回転し、隣接する前記自転ローラに支持されながら転動させることができる。
【0011】
本発明の容器処理装置において、主コンベヤが、最上段に位置するコンベヤ要素から最下段に位置するコンベヤ要素に向けて、缶容器を下向きに搬送する場合に、搬入コンベヤ及び搬出コンベヤの一方又は双方が、容器を登坂して搬送することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の容器処理装置によれば、容器を横向きに寝かせるので、有効な伝熱面積が増えるとともに、容器を転動させるので、製品液が缶胴に連れ回されることによる円周方向に沿う撹拌が生じるので、容器の内部の製品液の全体を所定の温度に迅速に加熱することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
本実施形態の容器処理装置1は、ウォーマとして用いることを想定しており、例えば2〜20℃程度の低い温度で製品液が充填された缶容器100を搬送しながら、温水をシャワー状にして缶容器100に浴びせるものである。容器処理装置1は、温水を浴びせながら缶容器100を搬送する過程において、缶容器100を横置きにして転動させることにより、製品液を迅速に昇温することを特徴としている。以下、容器処理装置1の構成を説明した後に、容器処理装置1により製品液を迅速に昇温できる作用及び効果について説明する。
【0015】
[容器処理装置1の構成]
容器処理装置1は、
図1に示すように、内部を搬送される缶容器100に温水を浴びせて加熱する処理槽10と、容器処理装置1の前工程から受け取った缶容器100を処理槽10の内部を搬送し、容器処理装置1の後工程に受け渡す搬送装置30と、を備えている。缶容器100は、搬送装置30の全行程の中の一部の行程において、転動しながら搬送される。
【0016】
[処理槽10]
処理槽10は、
図1に示すように、搬入口11Aと搬出口11Bを除いて、内部を外部と区画する槽本体11と、槽本体11の天井部分に設けられ、温水が供給される温水配管12と、温水配管12に供給された温水をシャワー状にして散布する散水ノズル13と、を備える。散水ノズル13から散布された温水が、散水ノズル13よりも下方を搬送される缶容器100にシャワー状となって浴びせられる。
処理槽10は、温水配管12に温水を供給するポンプユニット15を備えており、ポンプユニット15は隣接する温水タンク16に溜められる温水を温水配管12に送給する。
処理槽10は、後述する搬送装置30よりも下方にシャワー受け台17を備えており、シャワー受け台17は缶容器100に浴びせられ、かつ搬送装置30を通過した温水を受けるとともに温水タンク16に案内する。このように温水タンク16は、温水の回収タンクとして機能する。
以上のように、搬入口11Aから槽本体11に搬入された缶容器100は、槽本体11の内部を搬送されながら散水ノズル13から散布された温水を浴びせられることで昇温され、搬出口11Bから搬出される。
【0017】
[搬送装置30]
搬送装置30は、
図1に示すように、搬入コンベヤ40と、主コンベヤ50と、搬出コンベヤ60と、を備え、缶容器100はこの順番に搬送される。
搬入コンベヤ40は、前工程の搬出コンベヤ110から受け渡される缶容器100を主コンベヤ50に向けて搬送する。缶容器100は、正立状態で搬送される前工程の搬出コンベヤ110から搬入コンベヤ40に移送される過程で横向きに寝かされた姿勢に変えられるものとする。
搬入コンベヤ40は、
図1に示すように、缶容器100を上向きに登坂して搬送するものであり、缶容器100はこの登坂の過程で転動される。なお、
図1に示すように、搬入コンベヤ40の上方にも散水ノズル13が設けられており、登坂する缶容器100に温水が浴びせられるようになっている。なお、搬入コンベヤ40の具体的な構成については後述する。
【0018】
主コンベヤ50は、搬入コンベヤ40から受け渡される缶容器100を、蛇行させながら搬送して、搬出コンベヤ60に受け渡す。主コンベヤ50は、この搬送を実現するために、鉛直方向又は上下方向に間隔をあけて配置される複数のコンベヤ要素51と、上段に配置されるコンベヤ要素51の排出側Eと下段に配置されるコンベヤ要素51の受け入れ側Sとの間に設けられる反転ガイド55と、を備える。
主コンベヤ50において、コンベヤ要素51を水平方向に搬送された缶容器100は、反転ガイド55の案内により転動しながら向きを反転して、排出端Eから一つ下のコンベヤ要素51に乗り移る。主コンベヤ50に受け渡された缶容器100は、以上の水平方向の搬送及び向きを反転させる動作を繰り返しながら、一番上に設けられるコンベヤ要素51から一番下に設けられるコンベヤ要素51まで搬送される。
なお、主コンベヤ50は、反転ガイド55において缶容器100は転動するが、コンベヤ要素51において缶容器100は転動することなく静置した状態で搬送される。
【0019】
主コンベヤ50を搬送されてきた缶容器100は、搬出コンベヤ60に移送され、後工程の搬入コンベヤ120に受け渡される。この受け渡しの過程で、缶容器100は横向きに寝かせた状態から正立に姿勢が変えられるものとする。
搬出コンベヤ60は、搬入コンベヤ40と同様に、缶容器100を上向きに登坂して搬送するものであり、缶容器100はこの登坂の過程で転動される。
図1に示すように、搬出コンベヤ60の上方にも散水ノズル13が設けられており、登坂する缶容器100に温水が浴びせられるようになっている。なお、搬出コンベヤ60は、搬入コンベヤ40と同様の構成を備えている。
【0020】
[搬入コンベヤ40]
さて、搬入コンベヤ40の構成について、
図1に加えて
図2も参照して説明する。なお、搬出コンベヤ60も同様の構成を備えている。
搬入コンベヤ40は、
図1及び
図2に示すように、缶容器100の搬送方向Fの上流から下流に向けて上向きに傾斜して設けられている。
この搬入コンベヤ40は、搬送方向Fと直交する方向に間隔をあけて設けられる一対のコンベヤチェーン41,41と、コンベヤチェーン41,41に回転可能に支持されるとともに、コンベヤチェーン41,41の走行に伴って搬送方向Fに移動する複数のローラ43と、ローラ43の下面に接触する一対の固定摩擦板45,45と、コンベヤチェーン41,41が巻き回され、搬送方向Fに間隔をあけて設けられる一対の支持軸47,47と、を備えている。
支持軸47,47は、いずれか一方に回転駆動力を与える電動モータ(図示を省略)が連結されており、また、コンベヤチェーン41,41と噛み合い、支持軸47,47と一体で回転するスプロケット48,48を備えている。
缶容器100は、コンベヤチェーン41,41がなす無限軌道上の上段に位置する、隣接するローラ43,43の間に載せられて搬送される。
【0021】
搬入コンベヤ40の動作を説明する。
電動モータを起動して支持軸47,47の一方を回転すると、スプロケット48,48に掛け回されたコンベヤチェーン41,41が走行を始める。このコンベヤチェーン41,41は、斜め上方に向って登坂走行する。コンベヤチェーン41,41の走行に伴ってローラ43も移動する。ローラ43は、固定摩擦板45,45に接触しているために、固定摩擦板45,45との間の摩擦力により回転する。なお、ここでは、
図2(b)に基づいて、時計回り(R1)に回転するものと定義する。
搬送対象の缶容器100は、隣接するローラ43,43の間に横向きに寝かせて載せられているので、ローラ43,43の時計回りの回転により、反時計回(R2)りに回転する。
ここで、缶容器100と下側で接触、支持する隣接するローラ43との接点P1が、当該ローラ43の外周面と回転軸を通る鉛直方向の線分との交点点P2よりも、搬送方向F(またはコンベヤチェーン41,41の走行方向)にずれている。したがって、缶容器100は、下り落ちることなく、登坂することができる。
以上の通りであり、缶容器100は、ローラ43,43の上で横向きに寝ながら、搬入コンベヤ40を搬送される。
【0022】
[主コンベヤ50]
次に、搬入コンベヤ40を搬送されてきた缶容器100が受け渡される主コンベヤ50を説明する。
主コンベヤ50は、前述したように、複数のコンベヤ要素51と、複数の反転ガイド55と、を備えている。本実施形態は、5つのコンベヤ要素51と、4つの反転ガイド55を備えている。それぞれのコンベヤ要素51及び反転ガイド55を、
図3に示すように、コンベヤ要素51A,51B,51C,51D,51Eとし、反転ガイド55A,55B,55C,55Dとする。
【0023】
受け渡された缶容器100は、コンベヤ要素51Aを反転ガイド55Aに向けて図中の右向きに搬送され、反転ガイド55Aにて搬送の方向が左向きに反転されて、コンベヤ要素51Bに受け渡される。コンベヤ要素51Bに受け渡された缶容器100は、図中の左向きに搬送され、反転ガイド55Bにて搬送の方向が右向きに反転されて、コンベヤ要素51Cに受け渡される。以後、同様にして、缶容器100は、反転ガイド55C、コンベヤ要素51D、反転ガイド55D及びコンベヤ要素51Eの順に搬送され、搬出コンベヤ60に受け渡される。
以上のように、缶容器100は、最上段に位置するコンベヤ要素51Aから最下段に位置するコンベヤ要素51Eまで、蛇行しながら搬送される。缶容器100は、コンベヤ要素51A,51B,51C,51D,51Eのそれぞれにおいて、散水ノズル13から散布されるシャワー状の温水が浴びせられる。
【0024】
コンベヤ要素51A,51B,51C,51D,51Eは、基本的に同じ構成を備えており、それぞれにおいて、缶容器100は、横向きに寝かせた状態で搬送されるものの、転動することなく搬送される。ただし、搬入コンベヤ40と同様の構成を採用して、缶容器100を回転させることもできる。もっとも、上段から下段に向けた温水の落下を容易にするためには、コンベヤ要素51A,51B,51C,51D,51Eの温水を通す隙間が多いことが好ましい。そこで、本実施形態においては、複数段のコンベヤ要素を備える主コンベヤ50は、転動させるための構成要素を備えない簡易な構造を採用している。
【0025】
[コンベヤ要素51A]
以下、
図4を参照し、コンベヤ要素51の構成を説明する。
コンベヤ要素51は、搬送方向Fと直交する方向に間隔をあけて設けられる一対のコンベヤベルト52,52と、コンベヤベルト52,52が巻き回され、搬送方向Fに間隔をあけて設けられる支持軸53,53と、を備えている。
支持軸53,53は、いずれか一方に回転駆動力を与える電動モータ(図示を省略)が連結されており、また、コンベヤベルト52,52が掛け回され、支持軸53,53と一体で回転するプーリ54,54を備えている。
【0026】
電動モータを起動して支持軸53,53の一方を回転すると、プーリ54,54に掛け回されたコンベヤベルト52,52が走行を始める。コンベヤベルト52,52の走行に伴って、コンベヤベルト52,52に載せられた缶容器100は、反転ガイド55に向けて搬送される。
コンベヤベルト52,52は、缶容器100が所定の位置からずれないように、缶容器100を保持するずれ留め部品を缶容器100が載せられる表面に設けるとよい。
コンベヤ要素51Aは、コンベヤベルト52,52の間は空間であるから、シャワー状に散布された温水は、このコンベヤベルト52,52の間を通過して、下段のコンベヤ要素51Bに向けて容易に達する。コンベヤ要素51Bとコンベヤ要素51Cの間、コンベヤ要素51Cとコンベヤ要素51Dの間、コンベヤ要素51Dとコンベヤ要素51Eの間についても同様であり、最上段のコンベヤ要素51Aに浴びせられた温水は、最下段のコンベヤ要素51Eまで至り、さらにシャワー受け台17に達する。なお、コンベヤ要素51Aに浴びせられた温水は、下段に行くほど温度が低くなる。
【0027】
[反転ガイド55]
次に、反転ガイド55について、
図5を参照して説明する。なお、反転ガイド55Aを例にする。
反転ガイド55は、上段の例えばコンベヤ要素51Aと下段の例えばコンベヤ要素51Bの間に設けられる円弧状の部材からなり、凹んだ側をコンベヤ要素51A,51Bに向けて配置し、この凹んだ部分が缶容器100の通る通路56になる。
回転されることなく搬送された缶容器100は、
図5に示すように、反転ガイド55Aの通路56に受け入れられる。通路56に受け入れられた当初には、缶容器100は、コンベヤベルト52,52に接触しているために、
図5に示すように、時計回りに回転、転動しながら通路56を落下するが、反転コンベヤ55に触れると今度は反時計回りに回転、転動して、次のコンベヤ要素51Bに至り、コンベヤ要素51Bにより次の反転箇所である反転ガイド55Bに向けて搬送される。なお、時計回り、反時計回りはあくまで、
図5に示す例の場合に過ぎず、反転ガイド55Bにおいては、この逆である。また、連続的に搬送されてくる複数の缶容器100の回転、転動は一様ではないが、それぞれの缶容器100の内部の製品液は、反転ガイドを通過する間に激しく撹拌されるので、製品液を短時間で昇温させるという所期の達することができる。
【0028】
[容器処理装置1の動作]
以上の構成を備える容器処理装置1は、以下のように動作して缶容器100の中の製品液を温める。なお、ポンプユニット15が運転されており、散水ノズル13からシャワー状の温水が搬入コンベヤ40、主コンベヤ50及び搬出コンベヤ60に向けて散布されていることを前提とする。
前工程の搬出コンベヤ110から受け渡された缶容器100は、搬入コンベヤ40を搬送される過程で、転動されながら、シャワー状の温水が浴びせられ、製品液が温められる。この転動の際に、缶容器100の中の製品液が撹拌されるので、短時間で所望する温度に昇温することができる。この点については、後述する。
搬入コンベヤ40から主コンベヤ50に受け渡された缶容器100は、コンベヤ要素51A,51B,51C,51D,51Eを順に搬送されるそれぞれの過程で、温水が浴びせられ、製品液が温められ、下段に行くほど温度が高くなる。主コンベヤ50において、缶容器100は、反転ガイド55A,55B,55C,55Dで転動される。
主コンベヤ50から搬出コンベヤ60に受け渡された缶容器100は、搬出コンベヤ60を搬送される過程で、転動されながら、シャワー状の温水が浴びせられ、製品液が温められる。
【0029】
散布された温水は、搬入コンベヤ40、主コンベヤ50及び搬出コンベヤ60のそれぞれを通過して、シャワー受け台17に案内されて温水タンク16に回収され、ポンプユニット15にて温水配管12を介して送給され、散水ノズル13からシャワー状の温水となって散布される。
【0030】
[容器処理装置1の作用及び効果]
以上説明した容器処理装置1の作用及び効果を説明する。
(1)加熱能力の向上
本実施形態は、横向きに寝かせた状態で温水を缶容器100に浴びせること(第一の要因)、及び、転動させながら温水を缶容器100に浴びせること(第二の要因)の二つの要因により、温水による加熱能力を向上し、より短い時間で製品液を所望する温度まで昇温できる。以下、第一の要因、第二の要因の順に説明する。
【0031】
はじめに、第一の要因について、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は、缶容器100が正立している従来の例を示している。
缶容器100は、正立して搬送されている状態において、シャワー状の温水HWが缶容器100の上蓋102に浴びせられる。ところが、上蓋102と製品液Lの間には気体を含むエアギャップAGが存在する。したがって、エアギャップAGが断熱層となり、上蓋102は製品液Lに対して有効な伝熱面にはならない。また、正立して搬送される缶容器100は、底蓋103が上向きに窪んでいることもあり、底蓋103には散布された温水が直接は接しないため、底蓋103も製品液Lに対して有効な伝熱面にはならない。したがって、正立して温水が浴びせられる缶容器100は、缶胴101だけが製品液Lに対して有効な伝熱面となる。
以上に対して、
図7に示すように、横向きに寝かせた缶容器100は、製品液Lが上蓋102の内面及び底蓋103の内面に接し、しかも、缶容器100が転倒していれば、上蓋102及び底蓋103にも温水HWが浴びせられるので、正立では有効でなかった上蓋102及び底蓋103も有効な伝熱面となり、缶胴101を含めた伝熱面が、正立と比べて増える。よって、本実施形態によれば、加熱能力を向上させることができる。
【0032】
次に、第二要因について、
図6〜
図8を参照して説明する。
前述した
図6において、正立している缶容器100に温HW水を浴びせると、有効な伝熱面である缶胴101の内面近傍の製品液Lが加熱(加熱はHで示されている)されるが、製品液Lは缶容器100の内部で対流Cを起こすために、製品液Lは上部の温度が高く下部の温度が低くなり、温度差が生じる。缶容器100は正立してかつ静置しているだけなので、製品液Lの全体を所定の温度に加熱するのに長時間を要する。
以上に対して、
図7に示すように、本実施形態に従って横向きに寝かせて転動される缶容器100に温水HWを浴びせると、缶胴101の内面近傍の製品液Lが加熱され対流Cを起こす。ところが、本実施形態は、缶容器100が転動されるために、缶容器100の内部の製品液Lには対流Cが生じるのに加えて、缶胴101の内面近傍の製品液Lが缶胴101に連れ回されるので、缶胴101の円周方向に沿って水流Aが生じる。この水流Aは、
図7(a)に示すように、対流Cの向きと反する向きの成分を有しているから、対流Cを撹拌することになる。缶容器100の転動が繰り返されれば、製品液Lの全体に水流Aによる撹拌の効果が波及するので、製品液Lの全体を所定の温度に迅速に加熱することができる。本発明者らの検討によれば、温水の散布条件が同じであれば、横向きに寝かせて転動させると、正立かつ静置している場合に比べて、1/2程度の時間で所定の温度まで加熱できる。
【0033】
ここで、
図8は、中心軸Sを中心にして、正立した缶容器100を回転させる場合を示している。この場合も、缶胴101の内面に製品液が連れ回されるので、
図8(b)に示すように、水流Bが生じるが、この水流Bは水平方向Hに沿うものであり、対流Cをその流れの向きに撹拌する効果はほとんどない。つまり、対流Cは対流Cとしてほぼそのまま生じ続ける。したがって、正立した缶容器100を回転させたとしても、加熱能力の向上は小さい。
【0034】
(2)省設置スペース化
次に、容器処理装置1は、
図1及び
図2に示すように、搬送装置30のなかで温水を最も多く缶容器100に浴びせる主コンベヤ50において、コンベヤ要素51A,51B,51C,51D,51Eを鉛直方向に並べることにより、面積の狭い設置スペースでも、搬送距離を稼ぐことができる。したがって、本実施形態によれば、設置スペースが狭くても、加熱能力の優れた容器処理装置1を実現できる。
【0035】
(3)前・後工程との接続容易化
次に、容器処理装置1は、
図1及び
図2に示すように、単列で搬入コンベヤ40に搬入された缶容器100を、単列のままで搬出コンベヤ60まで搬送することができる。ここで、複数列で搬送される缶容器100を加熱処理する場合には、後工程に受け渡す際に缶容器100を単列化する必要がある場合があり、その場合には、単列化するための構造が必要となる。これに対して、本実施形態は、缶容器100を単列のままで処理できるので、前・後工程との接続部分の構成が容易となる。
【0036】
(4)温水散布の構成の簡易化
容器処理装置1は、主コンベヤ50において、最上段のコンベヤ要素51Aに向けて浴びせた温水が、重力により落下する。しかも、コンベヤ要素51A,51B,51C,51D,51Eは、いずれも温水を通しやすいので、最上段に向けて散布した温水を最下段のコンベヤ要素51Eを搬送する缶容器100にも浴びせることができる。つまり、コンベヤ要素51A,51B,51C,51D,51Eのそれぞれに対応して散水ノズル13を設けなくても、最上段のコンベヤ要素51Aに向けて温水を散布する散水ノズル13を設けるだけで、全てのコンベヤ要素51A,51B,51C,51D,51Eを搬送される際に温水を浴びせることができる。したがって、本実施形態によれば、温水を散布する構成を簡素化することができる。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることができる。
一連の加熱または冷却の処理工程において、容器に異なる温度の温水または冷水を浴びせる必要がある場合には、複数台、例えば2台の容器処理装置1を直列に並べ、それぞれで異なる温度の温水または冷水を散布すればよい。この場合でも、容器処理装置がそれぞれ占有する面積が小さいので、レイアウトの自由度、ひいては容器処理装置を含む製品液の充填ラインの設計の自由度が大きい。
【0038】
以上の実施形態においては、主コンベヤ50は最上段のコンベヤ要素51Aから最下段のコンベヤ要素51Eに向けて、折り返しながら下向きに缶容器100を搬送したが、この逆に、最下段のコンベヤ要素51Eから最上段のコンベヤ要素51Eに向けて上向きに搬送することができる。この逆向きの搬送は、最下段から最上段に向うのにつれて、浴びせられる温水の温度が高くなることになるので、搬送が進むのにつれて製品液の温度を高くするという、加熱パターンに合致している。ただし、缶容器100を例えば下段のコンベヤ要素51Eからその上段のコンベヤ要素51Dに移送するためには駆動源が必要であるのに対して、下向きに搬送するには、重力を利用すればよいので、駆動源が不要であるという利点がある。
【0039】
また、本実施形態では、製品液を加熱する例を説明したが、本発明は、冷却水を容器に浴びせて製品液を冷却する場合についても、転動による液の撹拌によって、冷却能を向上させることもできる。
また、加熱または冷却の対象となる容器は、缶に限るものでなく、ビン、ペットボトルなど任意である。ただし、缶容器を対象とする場合に、加熱能又は冷却能の向上効果が顕著になることは、上述の通りである。
また、本実施形態では、缶容器100に製品液だけを充填する例を示したが、固形物を含んでいてもよい。