(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シロキサン構成単位の全量(100モル%)に対する、前記式(1)で表される構成単位及び前記式(2)で表される構成単位の合計の割合(総量)が、55〜100モル%である請求項1又は2に記載の成形体。
前記レベリング剤が、シリコーン系レベリング剤及び/又はフッ素系レベリング剤であり、かつエポキシ基に対する反応性基及び/又は加水分解縮合性基を有する請求項1〜5の何れか1項に記載の成形体。
前記レベリング剤が、ヒドロキシル基を有するシリコーン系レベリング剤であり、且つレベリング剤の割合が、前記カチオン硬化性シリコーン樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部である請求項1〜7の何れか1項に記載の成形体。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[成形体]
本発明の成形体(以下、単に「本発明」と称する場合がある)は、ハードコート層、基材層、熱可塑性樹脂層を少なくとも含み、成形体が曲面形状を有し、成形体の最表面が該ハードコート層である。本発明の成形体の好ましい態様の1例(ハードコート層/基材層/熱可塑性樹脂層)を
図1に示す。本発明の成形体は、ハードコート層、基材層、熱可塑性樹脂層以外の層、例えば粘着剤層、アンカー層、低反射層、防汚層、撥水層、撥油層、防曇層、保護フィルム層、印刷層、導電層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、ブルーライトカット層等を有していてもよい。上記曲面形状は、成形体の全体若しくは一部に平面ではない部分(曲面部)を有していればよく、曲面は最表面のハードコート層に向かって、凸形状に湾曲しても凹形状に湾曲してもよいが、凸形状に湾曲していることが好ましい。本発明の成形体は、後述の成形体の製造方法により作製できる。なお、上記ハードコート層は、上記基材層の表面において、一部のみに形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。
【0028】
本発明の成形体の厚みは、例えば1〜10000μmの範囲から適宜選択することができ、好ましくは10〜1000μmであり、より好ましくは20〜500μmであり、さらに好ましくは30〜300μmである。
【0029】
本発明の成形体におけるハードコート層表面の鉛筆硬度は、例えば3H以上であり、好ましくは4H以上であり、より好ましくは6H以上であり、さらに好ましくは8H以上である。なお、鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に記載の方法に準じて評価することができる。
【0030】
本発明の成形体の曲げ(屈曲性)は、例えば30mm以下(例えば、1〜30mm)であり、好ましくは25mm以下であり、より好ましくは20mm以下であり、さらに好ましくは15mm以下である。なお、曲げ(屈曲性)は、円筒形マンドレルを使用してJIS K5600−5−1に準じて評価することができる。
【0031】
本発明の成形体のヘイズは、例えば1.5%以下であり、好ましくは1.0%以下である。なお、ヘイズの下限は、例えば0.1%である。ヘイズを特に1.0%以下とすることにより、例えば、非常に高い透明性が要求される用途(例えば、タッチパネル等のディスプレイの表面保護シート等)への使用に適する傾向がある。本発明の成形体のヘイズは、例えば、基材として後述の透明基材を使用することによって容易に上記範囲に制御することができる。なお、ヘイズは、JIS K7136に準拠して測定することができる。
【0032】
本発明の成形体の全光線透過率は、例えば85%以上であり、好ましくは90%以上である。なお、全光線透過率の上限は、例えば99%である。全光線透過率を特に90%以上とすることにより、例えば、非常に高い透明性が要求される用途(例えば、タッチパネル等のディスプレイの表面保護シート等)への使用に適する傾向がある。本発明の成形体の全光線透過率は、例えば、基材として後述の透明基材を使用することによって容易に上記範囲に制御することができる。なお、全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠して測定することができる。
【0033】
(ハードコート層)
本発明において上記ハードコート層は、後述する硬化性組成物の硬化物で形成されている。上記ハードコート層は、上記硬化性組成物(ハードコート層形成用硬化性組成物)により形成されたハードコート層(硬化性組成物の硬化物層)である。なお、上記ハードコート層は、後述する成形体の製造方法((A)ハードコート層形成工程)により、硬化性組成物から作製することができる。
【0034】
上記ハードコート層の厚みは、例えば0.1〜200μmであり、好ましくは1〜150μmであり、より好ましくは3〜100μmであり、さらに好ましくは5〜50μmであり、特に好ましくは10〜30μmである。特に、ハードコート層は、薄い場合(例えば、厚み5μm以下の場合)であっても、表面の高い硬度を維持すること(例えば、鉛筆硬度をH以上とすること)が可能である。また、厚い場合(例えば、厚み50μm以上の場合)であっても、硬化収縮等に起因するクラック発生等の不具合が生じにくいため、厚膜化によって鉛筆硬度を著しく高めること(例えば、鉛筆硬度を9H以上とすること)が可能である。
【0035】
上記ハードコート層のヘイズは、50μmの厚みの場合で、例えば1.5%以下であり、好ましくは1.0%以下である。なお、ヘイズの下限は、例えば0.1%である。ヘイズを特に1.0%以下とすることにより、例えば、非常に高い透明性が要求される用途(例えば、タッチパネル等のディスプレイの表面保護シート等)への使用に適する傾向がある。ハードコート層のヘイズは、JIS K7136に準拠して測定することができる。
【0036】
上記ハードコート層の全光線透過率は、50μmの厚みの場合で、例えば85%以上であり、好ましくは90%以上である。なお、全光線透過率の上限は、例えば99%である。全光線透過率を85%以上とすることにより、例えば、非常に高い透明性が要求される用途(例えば、タッチパネル等のディスプレイの表面保護シート等)への使用に適する傾向がある。ハードコート層の全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠して測定することができる。
【0037】
上記ハードコート層は、通常、耐擦傷性も高く、例えば、1.3kg/cm
2の荷重をかけて直径1cmのスチールウール♯0000で表面を100回往復摺動しても(擦っても)傷が付かない。
【0038】
上記ハードコート層は、表面の平滑性にも優れており、算術平均粗さR
aが、JIS B0601に準拠した方法において、例えば0.1〜20nmであり、好ましくは0.1〜10nmであり、より好ましくは0.1〜5nmである。
【0039】
上記ハードコート層は、表面の滑り性にも優れており、表面の水接触角が、例えば60°以上(例えば、60〜110°)であり、好ましくは70〜110°であり、より好ましくは80〜110°である。水接触角が低過ぎると、滑り性が低下するためか、耐擦傷性も低下するおそれがある。
【0040】
(硬化性組成物)
本発明において上記硬化性組成物は、カチオン硬化性シリコーン樹脂、レベリング剤を少なくとも含む。硬化性組成物は、上記以外にカチオン硬化性シリコーン樹脂以外のエポキシ化合物(以下、単に「エポキシ化合物」と称する場合がある)や硬化触媒等を含んでいてもよい。本発明において硬化性組成物の最も好ましい態様としては、カチオン硬化性シリコーン樹脂、エポキシ化合物、レベリング剤、硬化触媒を含むものを挙げることができる。特に本発明における硬化性組成物は、以下の特有のカチオン硬化性シリコーン樹脂を用いていることを特徴とする。
【0041】
(カチオン硬化性シリコーン樹脂)
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂は、単量体を構成する単位としてシルセスキオキサン単位を含み、全単量体単位のうちエポキシ基を有する単量体単位の割合が、50モル%以上であり、且つ数平均分子量が、1000〜3000である。なお、上記数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による標準ポリスチレン換算の値である。
【0042】
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂は、シルセスキオキサン単位として、下記式(1)で表される構成単位(「T3体」と称する場合がある)を有することが好ましい。
【化1】
【0043】
上記式(1)で表される構成単位は、一般に[RSiO
3/2]で表されるシルセスキオキサン構成単位(いわゆるT単位)である。なお、上記式中のRは、水素原子又は一価の有機基を示し、以下においても同じである。上記式(1)で表される構成単位は、対応する加水分解性三官能シラン化合物(具体的には、例えば、後述の式(a)で表される化合物)の加水分解及び縮合反応により形成される。
【0044】
式(1)中のR
1は、エポキシ基を含有する基(一価の基)、水素原子又は炭化水素基(一価の基)を示す。上記エポキシ基を含有する基としては、オキシラン環を有する公知乃至慣用の基が挙げられ、例えば、グリシジル基や脂環式エポキシ基を含む基を挙げることができる。
【0045】
上記グリシジル基を含む基としては、例えば、グリシジルオキシメチル基、2−グリシジルオキシメチル基、3−グリシジルオキシメチル基等のグリシジルオキシC
1-10アルキル基(特にグリシジルオキシC
1-4アルキル基)等を挙げることができる。
【0046】
上記脂環式エポキシ基を含む基としては、特に制限されないが、エポキシC
5-12シクロアルキル−直鎖状又は分岐鎖状C
1-10アルキル基、例えば、2,3−エポキシシクロペンチルメチル基、2−(2,3−エポキシシクロペンチル)エチル基、2−(3,4−エポキシシクロペンチル)エチル基、3−(2,3−エポキシシクロペンチル)プロピル基等のエポキシシクロペンチルC
1-10アルキル基、4,5−エポキシシクロオクチルメチル基、2−(4,5−エポキシシクロオクチル)エチル基、3−(4,5−エポキシシクロオクチル)プロピル基等のエポキシシクロオクチルC
1-10アルキル基等を挙げることができる。
【0047】
これらの脂環式エポキシ基を含む基は、C
5-12シクロアルカン環に置換基としてメチル基、エチル基などのC
1-4アルキル基を有していてもよい。置換基を有する脂環式エポキシ基を含む基としては、例えば、4−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル基、2−(3−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、2−(4−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(4−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、4−(4−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基等のC
1-4アルキル−エポキシC
5-12シクロアルキル−直鎖状又は分岐鎖状C
1-10アルキル基等を挙げることができる。
【0048】
上記のグリシジル基、脂環式エポキシ基を含む基としては、硬化性組成物の硬化性、硬化物の表面硬度や耐熱性の観点で、下記式(1a)〜(1d)で表される基が好ましく、より好ましくは下記式(1a)で表される基、下記式(1c)で表される基、さらに好ましくは下記式(1a)で表される基である。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0049】
上記式(1a)中、R
1aは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、デカメチレン基等の炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を挙げることができる。なかでも、R
1aとしては、硬化物の表面硬度や硬化性の観点で、炭素数1〜4の直鎖状のアルキレン基、炭素数3又は4の分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、より好ましくはエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、さらに好ましくはエチレン基、トリメチレン基である。
【0050】
上記式(1b)中、R
1bは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、R
1aと同様の基が例示される。なかでも、R
1bとしては、硬化物の表面硬度や硬化性の観点で、炭素数1〜4の直鎖状のアルキレン基、炭素数3又は4の分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、より好ましくはエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、さらに好ましくはエチレン基、トリメチレン基である。
【0051】
上記式(1c)中、R
1cは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、R
1aと同様の基が例示される。なかでも、R
1cとしては、硬化物の表面硬度や硬化性の観点で、炭素数1〜4の直鎖状のアルキレン基、炭素数3又は4の分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、より好ましくはエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、さらに好ましくはエチレン基、トリメチレン基である。
【0052】
上記式(1d)中、R
1dは、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、R
1aと同様の基が例示される。なかでも、R
1dとしては、硬化物の表面硬度や硬化性の観点で、炭素数1〜4の直鎖状のアルキレン基、炭素数3又は4の分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、より好ましくはエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、さらに好ましくはエチレン基、トリメチレン基である。
【0053】
式(1)中のR
1としては、特に、上記式(1a)で表される基であって、R
1aがエチレン基である基[なかでも、2−(3',4'−エポキシシクロヘキシル)エチル基]が好ましい。
【0054】
式(1)中のR
1である炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等を挙げることができる。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基を挙げることができる。上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。上記シクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプタニル基等を挙げることができる。上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等を挙げることができる。
【0055】
これらの炭化水素基は、置換基を有してもよく、置換基としては、これらの炭化水素基であってもよく、例えば、エーテル基、エステル基、カルボニル基、シロキサン基、ハロゲン原子、(メタ)アクリル基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロキシル基等を挙げることができる。
【0056】
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂は、上記式(1)で表される構成単位を1種のみ有するものであってもよいし、上記式(1)で表される構成単位を2種以上有するものであってもよい。
【0057】
一般に完全カゴ型シルセスキオキサンは、上記式(1)で表される構成単位(「T3体」)のみで形成されているが、本発明のカチオン硬化性シリコーン樹脂では、さらに、下記式(2)で表される構成単位(「T2体」と称する場合がある)を含むことが好ましい。上記硬化性組成物では、T3体に対して特定割合のT2体を含むことにより、不完全カゴ型を形成できるためか、硬化物の硬度を向上できる。
【化2】
【0058】
式(2)中のR
1は、上記式(1)と同様のエポキシ基を含有する基(一価の基)、水素原子又は炭化水素基(一価の基)を示し、式(2)における好ましいエポキシ基を含有する基、炭化水素基も式(1)と同様である。式(2)中のR
2は、水素原子又はC
1-4アルキル基を示す。R
2のC
1-4アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができ、なかでもメチル基、エチル基(特にメチル基)が好ましい。
【0059】
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂における上記式(1)で表される構成単位(T3体)と、上記式(2)で表される構成単位(T2体)の割合[T3体/T2体]は、例えば5以上であり、好ましくは5〜18、より好ましくは6〜16、さらに好ましくは7〜14である。上記割合[T3体/T2体]を5以上であると、硬化物やハードコート層の表面硬度や接着性が著しく向上する。
【0060】
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂のシルセスキオキサン単位における上記割合[T3体/T2体]は、例えば、
29Si−NMRスペクトル測定により求めることができる。
29Si−NMRスペクトルにおいて、上記式(1)で表される構成単位(T3体)におけるケイ素原子と、上記式(2)で表される構成単位(T2体)におけるケイ素原子とは、異なる位置(化学シフト)にシグナル(ピーク)を示すため、これらそれぞれのピークの積分比を算出することにより、上記割合[T3体/T2体]が求められる。具体的には、例えば、シルセスキオキサン単位が、上記式(1)で表され、R
1が2−(3',4'−エポキシシクロヘキシル)エチル基である構成単位を有する場合には、上記式(1)で表される構造(T3体)におけるケイ素原子のシグナルは−64〜−70ppmに現れ、上記式(2)で表される構造(T2体)におけるケイ素原子のシグナルは−54〜−60ppmに現れる。従って、この場合、−64〜−70ppmのシグナル(T3体)と−54〜−60ppmのシグナル(T2体)の積分比を算出することによって、上記割合[T3体/T2体]を求めることができる。シルセスキオキサン単位の上記割合[T3体/T2体]が、5以上であることは、T3体に対し一定以上のT2体が存在していることを意味する。
【0061】
カチオン硬化性シリコーン樹脂の
29Si−NMRスペクトルは、例えば、下記の装置及び条件により測定することができる。
測定装置:商品名「JNM−ECA500NMR」(日本電子(株)製)
溶媒:重クロロホルム
積算回数:1800回
測定温度:25℃
【0062】
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂のシルセスキオキサン単位が、カゴ型(不完全カゴ型)シルセスキオキサン構造を有することは、ポリオルガノシルセスキオキサンが、FT−IRスペクトルにおいて1050cm
-1付近と1150cm
-1付近にそれぞれ固有吸収ピークを有せず、1100cm
-1付近に一つの固有吸収ピークを有することから確認される[参考文献:R.H.Raney, M.Itoh, A.Sakakibara and T.Suzuki, Chem. Rev. 95, 1409(1995)]。これに対して、一般に、FT−IRスペクトルにおいて1050cm
-1付近と1150cm
-1付近にそれぞれ固有吸収ピークを有する場合には、ラダー型シルセスキオキサン構造を有すると同定される。なお、FT−IRスペクトルは、例えば、下記の装置及び条件により測定することができる。
測定装置:商品名「FT−720」((株)堀場製作所製)
測定方法:透過法
分解能:4cm
-1
測定波数域:400〜4000cm
-1
積算回数:16回
【0063】
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂は、シルセスキオキサン単位として、上記式(1)で表される構成単位を含んでいればよいが、下記式(3)で表される構成単位と、下記式(4)で表される構成単位との組合せであってもよい。式(3)中のR
3は、脂環式エポキシ基を含む基であり、式(4)中のR
4は、置換基を有してもよいアリール基である。
【化7】
【化8】
【0064】
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂は、シルセスキオキサン単位として、上記式(1)及び(2)で表される構成単位(T単位)以外にも、他の単量体単位(シルセスキオキサン構成単位)として、単官能性の[(R
1)
3SiO
1/2]で表される構成単位(いわゆるM単位)、二官能性の[(R
1)
2SiO
2/2]で表される構成単位(いわゆるD単位)、及び四官能性の[SiO
4/2]で表される構成単位(いわゆるQ単位)からなる群より選択される少なくとも1種のシロキサン構成単位を有していてもよい。なお、M単位及びD単位において、R
1で表される基は、上記式(1)と同様の基である。
【0065】
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂におけるシロキサン構成単位の全量[全シロキサン構成単位;M単位、D単位、T単位、及びQ単位の全量]に対する、エポキシ基を有する単量体単位の割合は、50モル%以上(50〜100モル%)であり、好ましくは55〜100モル%であり、より好ましくは65〜99.9モル%であり、さらに好ましくは80〜99モル%であり、特に好ましくは90〜99モル%である。エポキシ基を有する単量体単位の割合が少な過ぎると、硬化物の表面硬度が低下する。
【0066】
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂におけるシロキサン構成単位の全量[全シロキサン構成単位;M単位、D単位、T単位、及びQ単位の全量](100モル%)に対する、上記式(1)で表される構成単位(T3体)の割合は、例えば50モル%以上(50〜100モル%)であり、好ましくは60〜99モル%であり、より好ましくは70〜98モル%であり、さらに好ましくは80〜95モル%であり、特に好ましくは85〜92モル%である。上記割合が50モル%未満であると、適度な分子量を有する不完全カゴ型形状を形成するのが困難になるためか、硬化物の表面硬度が低下するおそれがある。
【0067】
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂におけるシロキサン構成単位の全量[全シロキサン構成単位;M単位、D単位、T単位、及びQ単位の全量](100モル%)に対する、上記式(1)で表される構成単位(T3体)及び上記式(2)で表される構成単位(T2体)の合計の割合(総量)は、例えば55〜100モル%であり、好ましくは65〜100モル%であり、より好ましくは80〜99モル%である。上記割合を55モル%以上であると、硬化性組成物の硬化性が向上し、また、硬化物の表面硬度や接着性が著しく高くなる。
【0068】
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂のGPCによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、1000〜3000であり、好ましくは1000〜2800であり、より好ましくは1100〜2600である。数平均分子量を1000以上とすることにより、硬化物の耐熱性、耐擦傷性、接着性がより向上する。一方、数平均分子量を3000以下とすることにより、硬化性組成物における他の成分との相溶性が向上し、硬化物の耐熱性がより向上する。
【0069】
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂のGPCによる標準ポリスチレン換算の分子量分散度(Mw/Mn)は、例えば1.0〜3.0であり、好ましくは1.1〜2.0であり、より好ましくは1.2〜1.9であり、さらに好ましくは1.45〜1.8である。分子量分散度を3.0以下とすることにより、硬化物の表面硬度や接着性がより高くなる。一方、分子量分散度を1.0以上とすることにより、液状となりやすく、取り扱い性が向上する傾向がある。
【0070】
なお、上記の数平均分子量、分子量分散度は、下記の装置及び条件により測定することができる。
測定装置:商品名「LC−20AD」((株)島津製作所製)
カラム:Shodex KF−801×2本、KF−802、及びKF−803(昭和電工(株)製)
測定温度:40℃
溶離液:THF、試料濃度0.1〜0.2重量%
流量:1mL/分
検出器:UV−VIS検出器(商品名「SPD−20A」、(株)島津製作所製)
分子量:標準ポリスチレン換算
【0071】
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂の空気雰囲気下における5%重量減少温度(T
d5)は、例えば330℃以上(例えば、330〜450℃)であり、好ましくは340℃以上であり、より好ましくは350℃以上である。5%重量減少温度が330℃以上であることにより、硬化物の耐熱性がより向上する傾向がある。特に、ポリオルガノシルセスキオキサンが、上記割合[T3体/T2体]が5以上であって、数平均分子量が1000〜3000、分子量分散度が1.0〜3.0であり、FT−IRスペクトルにおいて1100cm
-1付近に一つの固有ピークを有するものであることにより、その5%重量減少温度は330℃以上に制御することができる。なお、5%重量減少温度は、一定の昇温速度で加熱した時に加熱前の重量の5%が減少した時点での温度であり、耐熱性の指標となる。上記5%重量減少温度は、TGA(熱重量分析)により、空気雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件で測定することができる。
【0072】
硬化性組成物におけるカチオン硬化性シリコーン樹脂の含有量(配合量)は、溶媒を除く硬化性組成物の全量に対して、例えば70重量%以上100重量%未満であり、好ましくは80〜99.8重量%であり、より好ましくは90〜99.5重量%である。カチオン硬化性シリコーン樹脂の含有量を70重量%以上とすることにより、硬化物の表面硬度や接着性がより向上する傾向がある。一方、カチオン硬化性シリコーン樹脂の含有量を100重量%未満とすることにより、硬化触媒を含有させることができ、これにより硬化性組成物の硬化をより効率的に進行させることができる傾向がある。
【0073】
硬化性組成物に含まれるカチオン硬化性化合物の全量(100重量%)に対するカチオン硬化性シリコーン樹脂の割合は、例えば70〜100重量%であり、好ましくは75〜98重量%であり、より好ましくは80〜95重量%である。カチオン硬化性シリコーン樹脂の含有量を70重量%以上とすることにより、硬化物の表面硬度や接着性がより向上する傾向がある。
【0074】
(カチオン硬化性シリコーン樹脂の製造方法)
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂は、公知乃至慣用のポリオルガノシロキサンの製造方法により製造することができ、例えば、1種又は2種以上の加水分解性シラン化合物を加水分解及び縮合させる方法により製造できる。但し、上記加水分解性シラン化合物としては、上述の式(1)で表される構成単位を形成するための加水分解性三官能シラン化合物(下記式(a)で表される化合物)を必須の加水分解性シラン化合物として使用する必要がある。
【0075】
より具体的には、例えば、カチオン硬化性シリコーン樹脂におけるシルセスキオキサン構成単位(T単位)を形成するための加水分解性シラン化合物である下記式(a)で表される化合物(加水分解性三官能シラン化合物)を、加水分解及び縮合させる方法により、カチオン硬化性シリコーン樹脂を製造できる。
【化9】
【0076】
上記式(a)で表される化合物は、上記式(1)で表される構成単位を形成する化合物である。式(a)中のR
1は、上記式(1)におけるR
1と同じく、エポキシ基を含有する基(一価の基)、水素原子又は炭化水素基(一価の基)を示す。即ち、式(a)中のR
1としては、上記式(1a)〜(1d)で表される基が好ましく、より好ましくは上記式(1a)で表される基、上記式(1c)で表される基、さらに好ましくは上記式(1a)で表される基、特に好ましくは上記式(1a)で表される基であって、R
1aがエチレン基である基[なかでも、2−(3',4'−エポキシシクロヘキシル)エチル基]である。
【0077】
上記式(a)中のX
1は、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。X
1におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基等を挙げることができる。また、X
1におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。なかでもX
1としては、アルコキシ基が好ましく、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。なお、3つのX
1は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0078】
上記カチオン硬化性シリコーン樹脂は、上記式(a)で表される化合物以外の加水分解性三官能シラン化合物を併用してもよい。上記式(a)で表される化合物以外の加水分解性三官能シラン化合物として、例えば、M単位を形成する加水分解性単官能シラン化合物[(R
1)
3SiX
1]、D単位を形成する加水分解性二官能シラン化合物[(R
1)
2Si(X
1)
2]、Q単位を形成する加水分解性四官能シラン化合物[Si(X
1)
4]を挙げることができる。なお、これらの単量体におけるR
1やX
1は、式(a)におけるものと同様である。
【0079】
上記加水分解性シラン化合物の使用量や組成は、所望するカチオン硬化性シリコーン樹脂の構造に応じて適宜調整できる。例えば、上記式(a)で表される化合物の使用量は、使用する加水分解性シラン化合物の全量(100モル%)に対して、例えば55〜100モル%であり、好ましくは65〜100モル%、より好ましくは80〜99モル%である。
【0080】
また、上記加水分解性シラン化合物として2種以上を併用する場合、これらの加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、同時に行うこともできるし、逐次行うこともできる。上記反応を逐次行う場合、反応を行う順序は特に限定されない。
【0081】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、溶媒の存在下で行うこともできるし、非存在下で行うこともできる。なかでも溶媒の存在下で行うことが好ましい。上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール等を挙げることができる。上記溶媒としては、なかでも、ケトン、エーテルが好ましい。なお、溶媒は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0082】
上記溶媒の使用量は、特に限定されず、加水分解性シラン化合物の全量100重量部に対して、0〜2000重量部の範囲内で、所望の反応時間等に応じて、適宜調整することができる。
【0083】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、触媒及び水の存在下で進行させることが好ましい。上記触媒は、酸触媒であってもアルカリ触媒であってもよい。上記酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸;リン酸エステル;酢酸、蟻酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸;活性白土等の固体酸;塩化鉄等のルイス酸等を挙げることができる。上記アルカリ触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム等のアルカリ金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);酢酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属のフェノキシド;トリエチルアミン、N−メチルピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン等のアミン類(第3級アミン等);ピリジン、2,2'−ビピリジル、1,10−フェナントロリン等の含窒素芳香族複素環化合物等を挙げることができる。なお、触媒は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、触媒は、水や溶媒等に溶解又は分散させた状態で使用することもできる。
【0084】
上記触媒の使用量は、特に限定されず、加水分解性シラン化合物の全量1モルに対して、0.002〜0.200モルの範囲内で、適宜調整することができる。
【0085】
上記加水分解及び縮合反応に際しての水の使用量は、特に限定されず、加水分解性シラン化合物の全量1モルに対して、0.5〜20モルの範囲内で、適宜調整することができる。
【0086】
上記水の添加方法は、特に限定されず、使用する水の全量(全使用量)を一括で添加してもよいし、逐次的に添加してもよい。逐次的に添加する際には、連続的に添加してもよいし、間欠的に添加してもよい。
【0087】
上記加水分解及び縮合反応の反応温度は、例えば40〜100℃であり、好ましくは45〜80℃である。反応温度を上記範囲に制御することにより、上記割合[T3体/T2体]をより効率的に5以上に制御できる傾向がある。また、上記加水分解及び縮合反応の反応時間は、例えば0.1〜10時間であり、好ましくは1.5〜8時間である。また、上記加水分解及び縮合反応は、常圧下で行うこともできるし、加圧下又は減圧下で行うこともできる。なお、上記加水分解及び縮合反応を行う際の雰囲気は、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下、空気下等の酸素存在下等のいずれであってもよいが、不活性ガス雰囲気下が好ましい。
【0088】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応により、本発明のカチオン硬化性シリコーン樹脂が得られる。上記加水分解及び縮合反応の終了後には、エポキシ基の開環を抑制するために触媒を中和することが好ましい。また、本発明のカチオン硬化性シリコーン樹脂を、例えば、水洗、酸洗浄、アルカリ洗浄、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段等により分離精製してもよい。
【0089】
(エポキシ化合物)
硬化性組成物は、上記カチオン硬化性シリコーン樹脂以外のエポキシ化合物を含んでいてもよい。上記カチオン硬化性シリコーン樹脂に加えて、エポキシ化合物を含むことにより、高い表面硬度を有し、可とう性及び加工性に優れた硬化物を形成できる。
【0090】
上記エポキシ化合物としては、分子内に1以上のエポキシ基(オキシラン環)を有する公知乃至慣用の化合物を使用することができ、特に限定されないが、脂環式エポキシ化合物(脂環式エポキシ樹脂)、芳香族エポキシ化合物(芳香族エポキシ樹脂)、脂肪族エポキシ化合物(脂肪族エポキシ樹脂)等を挙げることができる。なかでも、脂環式エポキシ化合物が好ましい。
【0091】
上記脂環式エポキシ化合物としては、分子内に1個以上の脂環と1個以上のエポキシ基とを有する公知乃至慣用の化合物が挙げられ、特に限定されないが、(1)分子内に脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(「脂環エポキシ基」と称する)を有する化合物;(2)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物;(3)分子内に脂環及びグリシジルエーテル基を有する化合物(グリシジルエーテル型エポキシ化合物)等を挙げることができる。
【0092】
上記(1)分子内に脂環エポキシ基を有する化合物としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することができる。なかでも、上記脂環エポキシ基としては、シクロヘキセンオキシド基が好ましく、特に、下記式(i)で表される化合物が好ましい。
【化10】
【0093】
上記式(i)中、Yは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、これらが複数個連結した基等を挙げることができる。
【0094】
上記二価の炭化水素基としては、炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等を挙げることができる。炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の二価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等を挙げることができる。
【0095】
上記炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2〜8の直鎖又は分岐鎖状のアルケニレン基等を挙げることができる。特に、上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素−炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、より好ましくは炭素−炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2〜4のアルケニレン基である。
【0096】
上記式(i)で表される脂環式エポキシ化合物の代表的な例としては、3,4,3',4'−ジエポキシビシクロヘキサン、下記式(i−1)〜(i−10)で表される化合物等を挙げることができる。なお、下記式(i−5)、(i−7)中のl、mは、それぞれ1〜30の整数を表す。下記式(i−5)中のR'は炭素数1〜8のアルキレン基であり、なかでも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。下記式(i−9)、(i−10)中のn1〜n6は、それぞれ1〜30の整数を示す。また、上記式(i)で表される脂環式エポキシ化合物としては、その他、例えば、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エタン、2,3−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)オキシラン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル等を挙げることができる。
【化11】
【化12】
【0097】
上述の(2)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物としては、例えば、下記式(ii)で表される化合物等を挙げることができる。
【化13】
【0098】
式(ii)中、R"は、p価のアルコールの構造式からp個の水酸基(−OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、nはそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R"(OH)
p]としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノール等の多価アルコール(炭素数1〜15のアルコール等)等を挙げることができる。pは1〜6が好ましく、nは1〜30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの( )内(外側の括弧内)の基におけるnは同一でもよく異なっていてもよい。上記式(ii)で表される化合物としては、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)等]等を挙げることができる。
【0099】
上述の(3)分子内に脂環及びグリシジルエーテル基を有する化合物としては、例えば、脂環式アルコール(特に、脂環式多価アルコール)のグリシジルエーテルを挙げることができる。より詳しくは、例えば、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン等のビスフェノールA型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールA型エポキシ化合物);ビス[o,o−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[o,p−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[p,p−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[3,5−ジメチル−4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン等のビスフェノールF型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールF型エポキシ化合物);水素化ビフェノール型エポキシ化合物;水素化フェノールノボラック型エポキシ化合物;水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;ビスフェノールAの水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;水素化ナフタレン型エポキシ化合物;トリスフェノールメタンから得られるエポキシ化合物の水素化エポキシ化合物;下記芳香族エポキシ化合物の水素化エポキシ化合物等を挙げることができる。
【0100】
上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール類[例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等]と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;これらのエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を上記ビスフェノール類とさらに付加反応させることにより得られる高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール類[例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等]とアルデヒド[例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等]とを縮合反応させて得られる多価アルコール類を、さらにエピハロヒドリンと縮合反応させることにより得られるノボラック・アルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フルオレン環の9位に2つのフェノール骨格が結合し、かつこれらフェノール骨格のヒドロキシ基から水素原子を除いた酸素原子に、それぞれ、直接又はアルキレンオキシ基を介してグリシジル基が結合しているエポキシ化合物等を挙げることができる。
【0101】
上記脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、q価の環状構造を有しないアルコール(qは自然数である)のグリシジルエーテル;一価又は多価カルボン酸[例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸等]のグリシジルエステル;エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、エポキシ化ひまし油等の二重結合を有する油脂のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン等のポリオレフィン(ポリアルカジエンを含む)のエポキシ化物等を挙げることができる。なお、上記q価の環状構造を有しないアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール等の一価のアルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の二価のアルコール;グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等の三価以上の多価アルコール等を挙げることができる。また、q価のアルコールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等であってもよい。
【0102】
上記エポキシ化合物の含有量(配合量)は、本発明のカチオン硬化性シリコーン樹脂の全量100重量部に対して、例えば0.5〜100重量部であり、好ましくは1〜80重量部であり、より好ましくは5〜50重量部である。上記エポキシ化合物の含有量を0.5重量部以上とすることにより、硬化物の表面硬度がより高くなり、可とう性及び加工性により優れる傾向がある。一方、上記エポキシ化合物の含有量を100重量部以下とすることにより、硬化物の耐擦傷性がより向上する傾向がある。
【0103】
(レベリング剤)
上記硬化性組成物は、表面平滑性の向上ため、レベリング剤を含む。レベリング剤としては、表面張力低下能を有していればよく、慣用のレベリング剤を使用することができる。レベリング剤としては、表面張力低下能に優れる点から、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤が好ましく、特にシリコーン系レベリング剤が好ましい。本発明では、カチオン硬化性シリコーン樹脂とレベリング剤とを組合せることにより、表面平滑性を向上でき、透明性や光沢(外観)、滑り性等を向上できる。さらに、特定のレベリング剤を特定量用いることにより、表面硬度や耐擦傷性をより向上させることができる。
【0104】
上記シリコーン系レベリング剤は、ポリシロキサン骨格を有する化合物を含むレベリング剤であり、ポリオルガノシロキサン骨格としては、上記カチオン硬化性シリコーン樹脂と同様に、M単位、D単位、T単位、Q単位で形成されたポリオルガノシロキサンであればよいが、通常、D単位で形成されたポリオルガノシロキサンが好ましく使用される。ポリオルガノシロキサンの有機基としては、通常、C
1-4アルキル基、アリール基が使用され、メチル基、フェニル基(特にメチル基)が汎用される。シロキサン単位の繰り返し数(重合度)は、例えば2〜3000であり、好ましくは3〜2000であり、より好ましくは5〜1000である。
【0105】
上記フッ素系レベリング剤は、フルオロ脂肪族炭化水素骨格を有するレベリング剤であり、フルオロ脂肪族炭化水素骨格としては、例えば、フルオロメタン、フルオロエタン、フルオロプロパン、フルオロイソプロパン、フルオロブタン、フルオロイソブタン、フルオロt−ブタン、フルオロペンタン、フルオロヘキサン等のフルオロC
1-10アルカン等を挙げることができる。
【0106】
これらのフルオロ脂肪族炭化水素骨格は、少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されていればよいが、耐擦傷性、滑り性及び防汚性を向上できる点から、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロ脂肪族炭化水素骨格が好ましい。
【0107】
さらに、フルオロ脂肪族炭化水素骨格は、エーテル結合を介した繰り返し単位であるポリフルオロアルキレンエーテル骨格を形成していてもよい。繰り返し単位としてのフルオロ脂肪族炭化水素基は、フルオロメチレン、フルオロエチレン、フルオロプロピレン、フルオロイソプロピレン等のフルオロC
1-4アルキレン基からなる群より選択された少なくとも1種であってもよい。ポリフルオロアルキレンエーテル単位の繰り返し数(重合度)は、例えば10〜3000であり、好ましくは30〜1000であり、より好ましくは50〜500である。
【0108】
これらの骨格のうち、カチオン硬化性シリコーン樹脂との親和性に優れ、ポリオルガノシロキサン骨格が好ましい。
【0109】
このような骨格を有するレベリング剤は、各種の機能性を付与するために、加水分解縮合性基、エポキシ基に対する反応性基、ラジカル重合性基、ポリエーテル基、ポリエステル基、ポリウレタン基等の機能性基を有していてもよい。また、シリコーン系レベリング剤がフルオロ脂肪族炭化水素基を有していてもよく、フッ素系レベリング剤がポリオルガノシロキサン基を有していてもよい。
【0110】
上記加水分解縮合性基としては、例えば、ヒドロキシシリル基、トリクロロシリル基等のトリハロシリル基、ジクロロメチルシリル基等のジハロC
1-4アルキルシリル基、ジクロロフェニルシリル基等のジハロアリール基、クロロジメチルシリル基等のクロロジC
1-4アルキルシリル等のハロジC
1-4アルキルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリC
1-4アルコキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基等のジC
1-4アルコキシC
1-4アルキルシリル基、ジメトキシフェニルシリル基、ジエトキシフェニルシリル基等のジC
1-4アルコキシアリールシリル基、メトキシジメチルシリル基、エトキシジメチルシリル基等のC
1-4アルコキシジC
1-4アルキルシリル基、メトキシジフェニルシリル基、エトキシジゲニルシリル基等のC
1-4アルコキシジアリールシリル基、メトキシメチルフェニルシリル基、エトキシメチルフェニルシリル基等のC
1-4アルコキシC
1-4アルキルアリールシリル基等を挙げることができる。これらのうち、反応性等の点から、トリメトキシシリル基等のトリC
1-4アルコキシシリル基が好ましい。
【0111】
上記エポキシ基に対する反応性基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基(無水マレイン酸基等)、イソシアネート基等を挙げることができる。これらのうち、反応性等の点から、ヒドロキシル基、アミノ基、酸無水物基、イソシアネート基等が汎用され、取り扱い性や入手容易性等の点から、ヒドロキシル基が好ましい。
【0112】
上記ラジカル重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基等を挙げることができる。これらのうち、(メタ)アクリロイルオキシ基が汎用される。
【0113】
上記ポリエーテル基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基等のポリオキシC
2-4アルキレン基等を挙げることができる。ポリエーテル基において、オキシアルキレン基の繰り返し数(付加モル数)は、例えば2〜1000、好ましくは3〜100であり、より好ましくは5〜50である。これらのうち、ポリオキシエチレンやポリオキシプロピレン等のポリオキシC
2-3アルキレン基(特にポリオキシエチレン基)が好ましい。
【0114】
上記ポリエステル基としては、例えば、ジカルボン酸(テレフタル酸等の芳香族カルボン酸やアジピン酸等の脂肪族カルボン酸等)とジオール(エチレングリコール等の脂肪族ジオール等)との反応により形成されるポリエステル基、環状エステル(例えば、カプロラクトン等のラクトン類)の開環重合により形成されるポリエステル基等を挙げることができる。
【0115】
上記ポリウレタン基としては、例えば、慣用のポリエステル型ポリウレタン基、ポリエーテル型ポリウレタン基等を挙げることができる。
【0116】
これらの機能性基は、ポリオルガノシロキサン骨格又はフルオロ脂肪族炭化水素骨格に対して、直接結合で導入されていてもよく、連結基(例えばアルキレン基、シクロアルキレン基、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、又はこれらを組み合わせた連結基等)を介して導入されていてもよい。
【0117】
これらの機能性基のうち、カチオン硬化性シリコーン樹脂と反応して、硬化物の硬度を向上できる点から、加水分解縮合性基、エポキシ基に対する反応性基が好ましく、エポキシ基に対する反応性基(特にヒドロキシル基)が特に好ましい。
【0118】
なお、ヒドロキシル基は、(ポリ)オキシアルキレン基[(ポリ)オキシエチレン基等]の末端ヒドロキシル基であってもよい。このようなレベリング剤としては、例えばポリジメチルシロキサン等のポリオルガノシロキサン骨格の側鎖に(ポリ)オキシエチレン基等の(ポリ)オキシC
2-3アルキレン基が導入されたシリコーン系レベリング剤(ポリジメチルシロキサンポリオキシエチレン等)、(ポリ)オキシエチレン等の(ポリ)オキシC
2-3アルキレン骨格の側鎖にフルオロ脂肪族炭化水素基が導入されたフッ素系レベリング剤(フルオロアルキルポリオキシエチレン等)等を挙げることができる。
【0119】
上記シリコーン系レベリング剤としては、市販のシリコーン系レベリング剤を使用でき、例えば、商品名「BYK−300」、「BYK−301/302」、「BYK−306」、「BYK−307」、「BYK−310」、「BYK−315」、「BYK−313」、「BYK−320」、「BYK−322」、「BYK−323」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−331」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−341」、「BYK−344」、「BYK−345/346」、「BYK−347」、「BYK−348」、「BYK−349」、「BYK−370」、「BYK−375」、「BYK−377」、「BYK−378」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」、「BYK−UV3570」、「BYK−3550」、「BYK−SILCLEAN3700」、「BYK−SILCLEAN3720」(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製);商品名「AC FS 180」、「AC FS 360」、「AC S 20」(以上、Algin Chemie製);商品名「ポリフローKL−400X」、「ポリフローKL−400HF」、「ポリフローKL−401」、「ポリフローKL−402」、「ポリフローKL−403」、「ポリフローKL−404」(以上、共栄社化学(株)製);商品名「KP−323」、「KP−326」、「KP−341」、「KP−104」、「KP−110」、「KP−112」(以上、信越化学工業(株)製);商品名「LP−7001」、「LP−7002」、「8032 ADDITIVE」、「57 ADDITIVE」、「L−7604」、「FZ−2110」、「FZ−2105」、「67 ADDITIVE」、「8618 ADDITIVE」、「3 ADDITIVE」、「56 ADDITIVE」(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)等の市販品を使用することができる。
【0120】
上記フッ素系レベリング剤としては、市販のフッ素系レベリング剤を使用でき、例えば、商品名「オプツールDSX」、「オプツールDAC−HP」(以上、ダイキン工業(株)製);商品名「サーフロンS−242」、「サーフロンS−243」、「サーフロンS−420」、「サーフロンS−611」、「サーフロンS−651」、「サーフロンS−386」(以上、AGCセイミケミカル(株)製);商品名「BYK−340」(ビックケミー・ジャパン(株)製);商品名「AC 110a」、「AC 100a」(以上、Algin Chemie製);商品名「メガファックF−114」、「メガファックF−410」、「メガファックF−444」、「メガファックEXP TP−2066」、「メガファックF−430」、「メガファックF−472SF」、「メガファックF−477」、「メガファックF−552」、「メガファックF−553」、「メガファックF−554」、「メガファックF−555」、「メガファックR−94」、「メガファックRS−72−K」、「メガファックRS−75」、「メガファックF−556」、「メガファックEXP TF−1367」、「メガファックEXP TF−1437」、「メガファックF−558」、「メガファックEXP TF−1537」(以上、DIC(株)製);商品名「FC−4430」、「FC−4432」(以上、住友スリーエム(株)製);商品名「フタージェント 100」、「フタージェント 100C」、「フタージェント 110」、「フタージェント 150」、「フタージェント 150CH」、「フタージェント A−K」、「フタージェント 501」、「フタージェント 250」、「フタージェント 251」、「フタージェント 222F」、「フタージェント 208G」、「フタージェント 300」、「フタージェント 310」、「フタージェント 400SW」(以上、(株)ネオス製);商品名「PF−136A」、「PF−156A」、「PF−151N」、「PF−636」、「PF−6320」、「PF−656」、「PF−6520」、「PF−651」、「PF−652」、「PF−3320」(以上、北村化学産業(株)製)等の市販品を使用することができる。
【0121】
これらのレベリング剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらのレベリング剤のうち、カチオン硬化性シリコーン樹脂との親和性に優れ、エポキシ基と反応でき、硬化物の硬度や外観を向上できる点から、ヒドロキシル基を有するシリコーン系レベリング剤が好ましい。
【0122】
上記ヒドロキシル基を有するシリコーン系レベリング剤としては、例えば、ポリオルガノシロキサン骨格(ポリジメチルシロキサン等)の主鎖又は側鎖にポリエーテル基を導入したポリエーテル変性ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノシロキサン骨格の主鎖又は側鎖にポリエステル基を導入したポリエステル変性ポリオルガノシロキサン、(メタ)アクリル系樹脂にポリオルガノシロキサンを導入したシリコーン変性(メタ)アクリル系樹脂等を挙げることができる。これらのレベリング剤において、ヒドロキシル基は、ポリオルガノシロキサン骨格を有していてもよく、ポリエーテル基、ポリエステル基、(メタ)アクリロイル基を有していてもよい。このようなレベリング剤の市販品としては、例えば、商品名「BYK−370」、「BYK−SILCLEAN3700」、「BYK−SILCLEAN3720」等を使用することができる。
【0123】
上記レベリング剤の割合は、カチオン硬化性シリコーン樹脂100重量部に対して、例えば0.01〜20重量部であり、好ましくは0.05〜15重量部であり、より好ましくは0.01〜10重量部であり、さらに好ましくは0.2〜5重量部である。レベリング剤の割合が少な過ぎると、硬化物の表面平滑性が低下するおそれがあり、多過ぎると、硬化物の表面硬度が低下するおそれがある。
【0124】
特にシリコーン系レベリング剤の割合は、カチオン硬化性シリコーン樹脂100重量部に対して、例えば0.01〜10重量部であり、好ましくは0.05〜5重量部であり、より好ましくは0.1〜3重量部であり、さらに好ましくは0.2〜2重量部であり、特に好ましくは0.3〜1.5重量部である。また、ヒドロキシル基を有するシリコーン系レベリング剤の割合は、カチオン硬化性シリコーン樹脂100重量部に対して、例えば0.01〜5重量部であり、好ましくは0.05〜4重量部であり、より好ましくは0.1〜3重量部であり、さらに好ましくは0.2〜2重量部であり、特に好ましくは0.3〜1.5重量部である。
【0125】
特にフッ素系レベリング剤の割合は、カチオン硬化性シリコーン樹脂100重量部に対して、例えば0.05〜5重量部であり、好ましくは0.1〜3重量部であり、より好ましくは0.15〜2重量部であり、さらに好ましくは0.2〜1重量部であり、特に好ましくは0.3〜0.8重量部である。レベリング剤の割合をこれらの範囲に調整すると、硬化物の表面平滑性を向上できるだけでなく、従来はレベリング剤の機能として想定されていなかった硬化物の表面硬度も向上できる。
【0126】
(硬化触媒)
上記硬化性組成物は、さらに、硬化触媒を含むことが好ましい。なかでも、よりタックフリーとなるまでの硬化時間が短縮できる点で、硬化触媒として光カチオン重合開始剤を含むことが特に好ましい。
【0127】
上記硬化触媒は、カチオン硬化性シリコーン樹脂等のカチオン硬化性化合物のカチオン重合反応を開始乃至促進することができる化合物である。上記硬化触媒としては、特に限定されないが、例えば、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)、熱カチオン重合開始剤(熱酸発生剤)等の重合開始剤を挙げることができる。
【0128】
上記光カチオン重合開始剤としては、公知乃至慣用の光カチオン重合開始剤を使用することができ、例えば、スルホニウム塩(スルホニウムイオンとアニオンとの塩)、ヨードニウム塩(ヨードニウムイオンとアニオンとの塩)、セレニウム塩(セレニウムイオンとアニオンとの塩)、アンモニウム塩(アンモニウムイオンとアニオンとの塩)、ホスホニウム塩(ホスホニウムイオンとアニオンとの塩)、遷移金属錯体イオンとアニオンとの塩等を挙げることができる。
【0129】
上記スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウム塩、トリ−p−トリルスルホニウム塩、トリ−o−トリルスルホニウム塩、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム塩、1−ナフチルジフェニルスルホニウム塩、2−ナフチルジフェニルスルホニウム塩、トリス(4−フルオロフェニル)スルホニウム塩、トリ−1−ナフチルスルホニウム塩、トリ−2−ナフチルスルホニウム塩、トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム塩、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム塩、4−(p−トリルチオ)フェニルジ−(p−フェニル)スルホニウム塩等のトリアリールスルホニウム塩;ジフェニルフェナシルスルホニウム塩、ジフェニル4−ニトロフェナシルスルホニウム塩、ジフェニルベンジルスルホニウム塩、ジフェニルメチルスルホニウム塩等のジアリールスルホニウム塩;フェニルメチルベンジルスルホニウム塩、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム塩、4−メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム塩等のモノアリールスルホニウム塩;ジメチルフェナシルスルホニウム塩、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム塩、ジメチルベンジルスルホニウム塩等のトリアルキルスルホニウム塩等を挙げることができる。
【0130】
上記ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム塩としては、例えば、商品名「CPI−101A」(サンアプロ(株)製、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート50%炭酸プロピレン溶液)、商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート50%炭酸プロピレン溶液)等の市販品を使用できる。また、上記トリアリールスルホニウム塩としては、例えば、[4−(4−ビフェニルチオ)フェニル]−4−ビフェニルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート等の市販品を使用できる。
【0131】
上記ヨードニウム塩としては、例えば、商品名「UV9380C」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート45%アルキルグリシジルエーテル溶液)、商品名「RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074」(ローディア・ジャパン(株)製、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート [(1−メチルエチル)フェニル](メチルフェニル)ヨードニウム)、商品名「WPI−124」(和光純薬工業(株)製)、ジフェニルヨードニウム塩、ジ−p−トリルヨードニウム塩、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム塩、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム塩等を挙げることができる。
【0132】
上記セレニウム塩としては、例えば、トリフェニルセレニウム塩、トリ−p−トリルセレニウム塩、トリ−o−トリルセレニウム塩、トリス(4−メトキシフェニル)セレニウム塩、1−ナフチルジフェニルセレニウム塩等のトリアリールセレニウム塩;ジフェニルフェナシルセレニウム塩、ジフェニルベンジルセレニウム塩、ジフェニルメチルセレニウム塩等のジアリールセレニウム塩;フェニルメチルベンジルセレニウム塩等のモノアリールセレニウム塩;ジメチルフェナシルセレニウム塩等のトリアルキルセレニウム塩等を挙げることができる。
【0133】
上記アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、エチルトリメチルアンモニウム塩、ジエチルジメチルアンモニウム塩、トリエチルメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、トリメチル−n−プロピルアンモニウム塩、トリメチル−n−ブチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム塩;N,N−ジメチルピロリジウム塩、N−エチル−N−メチルピロリジウム塩等のピロリジウム塩;N,N'−ジメチルイミダゾリニウム塩、N,N'−ジエチルイミダゾリニウム塩等のイミダゾリニウム塩;N,N'−ジメチルテトラヒドロピリミジウム塩、N,N'−ジエチルテトラヒドロピリミジウム塩等のテトラヒドロピリミジウム塩;N,N−ジメチルモルホリニウム塩、N,N−ジエチルモルホリニウム塩等のモルホリニウム塩;N,N−ジメチルピペリジニウム塩、N,N−ジエチルピペリジニウム塩等のピペリジニウム塩;N−メチルピリジニウム塩、N−エチルピリジニウム塩等のピリジニウム塩;N,N'−ジメチルイミダゾリウム塩等のイミダゾリウム塩;N−メチルキノリウム塩等のキノリウム塩;N−メチルイソキノリウム塩等のイソキノリウム塩;ベンジルベンゾチアゾニウム塩等のチアゾニウム塩;ベンジルアクリジウム塩等のアクリジウム塩等を挙げることができる。
【0134】
上記ホスホニウム塩としては、例えば、テトラフェニルホスホニウム塩、テトラ−p−トリルホスホニウム塩、テトラキス(2−メトキシフェニル)ホスホニウム塩等のテトラアリールホスホニウム塩;トリフェニルベンジルホスホニウム塩等のトリアリールホスホニウム塩;トリエチルベンジルホスホニウム塩、トリブチルベンジルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、トリエチルフェナシルホスホニウム塩等のテトラアルキルホスホニウム塩等を挙げることができる。
【0135】
上記遷移金属錯体イオンの塩としては、例えば、(η
5−シクロペンタジエニル)(η
6−トルエン)Cr
+、(η
5−シクロペンタジエニル)(η
6−キシレン)Cr
+等のクロム錯体カチオンの塩;(η
5−シクロペンタジエニル)(η
6−トルエン)Fe
+、(η
5−シクロペンタジエニル)(η
6−キシレン)Fe
+等の鉄錯体カチオンの塩等を挙げることができる。
【0136】
上述の塩を構成するアニオンとしては、例えば、SbF
6-、PF
6-、BF
4-、(CF
3CF
2)
3PF
3-、(CF
3CF
2CF
2)
3PF
3-、(C
6F
5)
4B
-、(C
6F
5)
4Ga
-、スルホン酸アニオン(トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等)、(CF
3SO
2)
3C
-、(CF
3SO
2)
2N
-、過ハロゲン酸イオン、ハロゲン化スルホン酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、アルミン酸イオン、ヘキサフルオロビスマス酸イオン、カルボン酸イオン、アリールホウ酸イオン、チオシアン酸イオン、硝酸イオン等を挙げることができる。
【0137】
上記熱カチオン重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩、アレン−イオン錯体、第4級アンモニウム塩、アルミニウムキレート、三フッ化ホウ素アミン錯体等を挙げることができる。
【0138】
上記アリールスルホニウム塩としては、例えば、ヘキサフルオロアンチモネート塩等を挙げることができる。上記硬化性組成物においては、例えば、商品名「SP−66」、「SP−77」(以上、(株)ADEKA製);商品名「サンエイドSI−60L」、「サンエイドSI−80L」、「サンエイドSI−100L」、「サンエイドSI−150L」(以上、三新化学工業(株)製)等の市販品を使用することができる。上記アルミニウムキレートとしては、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等を挙げることができる。また、上記三フッ化ホウ素アミン錯体としては、例えば、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イミダゾール錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体等を挙げることができる。
【0139】
なお、上記硬化性組成物において硬化触媒は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0140】
上記硬化触媒の含有量(配合量)は、カチオン硬化性シリコーン樹脂100重量部に対して、例えば0.01〜3.0重量部であり、好ましくは0.05〜3.0重量部であり、より好ましくは0.1〜1.0重量部である。硬化触媒の含有量を0.01重量部以上とすることにより、硬化反応を効率的に十分に進行させることができ、硬化物の表面硬度や接着性がより向上する傾向がある。一方、硬化触媒の含有量を3.0重量部以下とすることにより、硬化性組成物の保存性がいっそう向上したり、硬化物の着色が抑制される傾向がある。
【0141】
上記硬化性組成物は、さらに、上記カチオン硬化性シリコーン樹脂、エポキシ化合物以外のカチオン硬化性化合物(その他のカチオン硬化性化合物)を含んでいてもよい。その他のカチオン硬化性化合物としては、公知乃至慣用のカチオン硬化性化合物を使用することができ、例えば、ビニルエーテル化合物等を挙げることができる。
【0142】
(その他の添加剤)
上記硬化性組成物は、さらに、その他任意の成分として、沈降シリカ、湿式シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化チタン、アルミナ、ガラス、石英、アルミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機質充填剤、これらの充填剤をオルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により処理した無機質充填剤;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂微粉末;銀、銅等の導電性金属粉末等の充填剤、硬化助剤、溶剤(有機溶剤等)、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤、重金属不活性化剤等)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤等)、難燃助剤、補強材(他の充填剤等)、核剤、カップリング剤(シランカップリング剤等)、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃改良剤、色相改良剤、透明化剤、レオロジー調整剤(流動性改良剤等)、加工性改良剤、着色剤(染料、顔料等)、帯電防止剤、分散剤、表面改質剤(スリップ剤等)、艶消し剤、消泡剤、抑泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、光増感剤、発泡剤等の慣用の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0143】
(硬化性組成物の製造方法)
上記硬化性組成物は、特に限定されないが、上記の各成分を室温で又は必要に応じて加熱しながら攪拌・混合することにより調製することができる。なお、硬化性組成物は、各成分があらかじめ混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物として使用することもできるし、例えば、別々に保管しておいた2以上の成分を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系(例えば、2液系)の組成物として使用することもできる。
【0144】
上記硬化性組成物は、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であることが好ましい。より具体的には、硬化性組成物は、溶媒20%に希釈した液[特に、メチルイソブチルケトンの割合が20重量%である硬化性組成物(溶液)]の25℃における粘度は、例えば300〜20000mPa・sであり、好ましくは500〜10000mPa・sであり、より好ましくは1000〜8000mPa・sである。上記粘度を300mPa・s以上とすることにより、硬化物の耐熱性がより向上する傾向がある。一方、上記粘度を20000mPa・s以下とすることにより、硬化性組成物の調製や取り扱いが容易となり、また、硬化物中に気泡が残存しにくくなる傾向がある。なお、硬化性組成物の粘度は、粘度計(商品名「MCR301」、アントンパール社製)を用いて、振り角5%、周波数0.1〜100(1/s)、温度:25℃の条件で測定される。
【0145】
(硬化物)
上記硬化性組成物におけるカチオン硬化性化合物の重合反応を進行させることにより、該硬化性組成物を硬化させることができ、硬化物を得ることができる。硬化の方法は、周知の方法より適宜選択でき、例えば、活性エネルギー線の照射、及び/又は、加熱する方法を挙げることができる。上記活性エネルギー線としては、例えば、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等のいずれを使用することもできる。なかでも、取り扱い性に優れる点で、紫外線が好ましい。
【0146】
上記硬化性組成物を活性エネルギー線の照射により硬化させる際の条件(活性エネルギー線の照射条件等)は、照射する活性エネルギー線の種類やエネルギー、硬化物の形状やサイズ等に応じて適宜調整することができ、紫外線を照射する場合には、例えば1〜10000mJ/cm
2程度であり、好ましくは50〜10000mJ/cm
2である。なお、活性エネルギー線の照射には、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光、LEDランプ、レーザー等を使用することができる。活性エネルギー線の照射後には、さらに加熱処理(アニール、エージング)を施してさらに硬化反応を進行させることができる。
【0147】
一方、硬化性組成物を加熱により硬化させる際の条件は、例えば30〜200℃であり、好ましくは50〜190℃である。硬化時間は適宜設定可能である。
【0148】
上記硬化性組成物は、上述のように、硬化させることによって、高い表面硬度かつ耐熱性を有し、可とう性及び加工性に優れた硬化物を形成できる。従って、上記硬化性組成物は、特に、ハードコートフィルムにおけるハードコート層を形成するための「ハードコート層形成用硬化性組成物」(「ハードコート液」や「ハードコート剤」等と称される場合がある)として特に好ましく使用できる。上記硬化性組成物をハードコート層形成用硬化性組成物として用い、該組成物より形成されたハードコート層を有するハードコートフィルムは、高硬度及び高耐熱性を維持しながら、可とう性を有し、ロールトゥロールでの製造や加工が可能である。
【0149】
(基材層)
本発明の成形体における基材層に用いる基材としては、例えば、プラスチック基材、金属基材、セラミックス基材、半導体基材、ガラス基材、紙基材、木基材(木製基材)、表面が塗装表面である基材等の公知乃至慣用の基材を用いることができる。なかでも、プラスチック基材(プラスチック材料により構成された基材)が好ましい。
【0150】
上記プラスチック基材を構成するプラスチック材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリイミド;ポリカーボネート;ポリアミド;ポリアセタール;ポリフェニレンオキサイド;ポリフェニレンサルファイド;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ノルボルネン系モノマーの単独重合体(付加重合体や開環重合体等)、ノルボルネンとエチレンの共重合体等のノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマーの共重合体(付加重合体や開環重合体等の環状オレフィンコポリマー等)、これらの誘導体等の環状ポリオレフィン;ビニル系重合体(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂(ABS樹脂)等);ビニリデン系重合体(例えば、ポリ塩化ビニリデン等);トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;メラミン樹脂;ユリア樹脂;マレイミド樹脂;シリコーン等の各種プラスチック材料を挙げることができる。なお、上記プラスチック基材は、1種のみのプラスチック材料により構成されたものであってもよいし、2種以上のプラスチック材料により構成されたものであってもよい。
【0151】
なかでも、上記プラスチック基材としては、ハードコートフィルムとして透明性に優れたハードコートフィルムを得ることを目的とする場合には、透明性に優れた基材(透明基材)を用いることが好ましく、より好ましくはポリエステルフィルム(特に、PET、PEN)、環状ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、TACフィルム、PMMAフィルムである。
【0152】
上記プラスチック基材は、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定剤、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、補強剤、分散剤、帯電防止剤、発泡剤、抗菌剤等のその他の添加剤を含んでいてもよい。なお、添加剤は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0153】
上記プラスチック基材は、単層の構成を有していてもよいし、多層(積層)の構成を有していてもよく、その構成(構造)は特に限定されない。上記プラスチック基材は、プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面にハードコート層以外の層(「その他の層」と称する場合がある)が形成された、「プラスチックフィルム/その他の層」又は「その他の層/プラスチックフィルム/その他の層」等の積層構成を有するプラスチック基材であってもよい。上記その他の層としては、例えば、ハードコート層以外のハードコート層等を挙げることができる。なお、上記その他の層を構成する材料としては、例えば、上述のプラスチック材料等を挙げることができる。
【0154】
上記プラスチック基材の表面の一部又は全部には、粗化処理、易接着処理、静電気防止処理、サンドブラスト処理(サンドマット処理)、コロナ放電処理、プラズマ処理、ケミカルエッチング処理、ウォーターマット処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理、酸化処理、紫外線照射処理、シランカップリング剤処理等の公知乃至慣用の表面処理が施されていてもよい。なお、上記プラスチック基材は、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルム(一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム等)であってもよい。
【0155】
上記基材の厚みは、例えば0.01〜10000μmの範囲から適宜選択することができ、好ましくは1μm以上(例えば1〜10000μm)であり、より好ましくは20〜10000μmであり、さらに好ましくは50〜1000μmである。上記基材が透明基材である場合、透明基材の厚みは、例えば1〜300μmであり、好ましくは20〜250μmであり、より好ましくは40〜200μmであり、さらに好ましくは50〜150μmである。
【0156】
ハードコート層表面に表面保護フィルムを有していてもよい。本発明の成形体が表面保護フィルムを有することにより、打ち抜き加工性がいっそう向上する傾向がある。このように表面保護フィルムを有する場合には、例えば、ハードコート層の硬度が非常に高く、打ち抜き加工時に基材からの剥離やクラックが発生しやすいものであっても、このような問題を生じさせることなくトムソン刃を使用した打ち抜き加工を行うことができる。
【0157】
上記表面保護フィルムとしては、公知乃至慣用の表面保護フィルムを使用することができ、例えば、プラスチックフィルムの表面に粘着剤層を有するものが使用できる。上記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン等)、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド等のプラスチック材料より形成されたプラスチックフィルムを挙げることができる。上記粘着剤層としては、例えば、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体系粘着剤、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体系粘着剤、スチレン−イソプレンブロック共重合体系粘着剤、スチレン−ブタジエンブロック共重合体系粘着剤等の公知乃至慣用の粘着剤の1種以上より形成された粘着剤層を挙げることができる。上記粘着剤層中には、各種の添加剤(例えば、帯電防止剤、スリップ剤等)が含まれていてもよい。なお、プラスチックフィルム、粘着剤層は、それぞれ単層構成を有していてもよいし、多層(複層)構成を有していてもよい。また、表面保護フィルムの厚みは、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0158】
表面保護フィルムとしては、例えば、商品名「サニテクト」シリーズ((株)サンエー化研製)、商品名「E−MASK」シリーズ(日東電工(株)製)、商品名「マスタック」シリーズ(藤森工業(株)製)、商品名「ヒタレックス」シリーズ(日立化成工業(株)製)、商品名「アルファン」シリーズ(王子エフテックス(株)製)等の市販品が市場より入手可能である。
【0159】
(熱可塑性樹脂層)
本発明の成形体における上記熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、ビニル系重合体(付加重合系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース誘導体、ポリイミド系樹脂等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、成形性、機械的特性などの点から、オレフィン系樹脂、ビニル系重合体(スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂等)、ポリエステル系樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。上記熱可塑性樹脂層の好ましい態様としては、シート状の熱可塑性樹脂シート、上記熱可塑性樹脂を射出成形等で成形した熱可塑性樹脂の成形物の態様を挙げることができる。
【0160】
上記オレフィン系樹脂としては、オレフィンの単独又は共重合体挙げることができる。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのC
2-10−α−オレフィン等を挙げることができる。
【0161】
上記スチレン系樹脂としては、具体的には、ポリスチレン(GPPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA樹脂)や、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ABS樹脂)、α−メチルスチレン変性ABS樹脂、イミド変性ABS樹脂、スチレン−メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体(MBS樹脂)等を挙げることができる。
【0162】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等の(メタ)アクリル酸C
1-8アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシC
2-8アルキルエステル等を挙げることができる。
【0163】
上記塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−C
2-4オレフィン共重合体(塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体など)、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(塩化ビニル−メタクリル酸メチルなど)、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体等を挙げることができる。
【0164】
上記ビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等を挙げることができる。
【0165】
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのC
2-4アルキレンC
6-10アリレート単位を含むポリC
2-4アルキレンC
6-10アリレート系樹脂やポリ−1,4−シクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCT)等を挙げることができる。
【0166】
これらの熱可塑性樹脂は、共重合可能な単量体(共重合性単量体)と組み合わせたものであってもよい。共重合性単量体としては、例えば、不飽和多価カルボン酸又はその酸無水物(例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸又はその酸無水物など)、イミド系単量体[例えば、マレイミド、N−アルキルマレイミド(例えば、N−C
1-4アルキルマレイミド等)、N−シクロアルキルマレイミド(例えば、N−シクロヘキシルマレイミドなど)、N−アリールマレイミド(例えば、N−フェニルマレイミドなど)などのN−置換マレイミド]、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル系モノマーなど]等を挙げることができる。これらの共重合可能な単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0167】
上記熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂のみから構成されてもよく、熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂以外の樹脂(例えば、熱硬化性樹脂)や、その他の有機物(例えば、ゴム)、無機物(例えば、金属)との混合物であってもよい。熱可塑性樹脂層中の熱可塑性樹脂の割合は、例えば50重量%以上であり、好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上である。
【0168】
上記熱可塑性樹脂層は、単層の構成を有していてもよいし、多層(積層)の構成を有していてもよく、その構成(構造)は特に限定されない。
【0169】
上記熱可塑性樹脂層は、表面の一部又は全部に、粗化処理、易接着処理、静電気防止処理、サンドブラスト処理(サンドマット処理)、コロナ放電処理、プラズマ処理、ケミカルエッチング処理、ウォーターマット処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理、酸化処理、紫外線照射処理、シランカップリング剤処理等の公知乃至慣用の表面処理が施されていてもよい。なお、上記熱可塑性樹脂層がシート状である場合、未延伸シートであってもよいし、延伸シートであってもよい。
【0170】
上記熱可塑性樹脂層の厚みは、例えば0.1〜10000μmの範囲から適宜選択することができ、好ましくは1〜1000μmであり、より好ましくは10〜500μmであり、さらに好ましくは20〜300μmである。厚みが0.1μm未満であると、加熱により容易に破れるおそれがあり、厚みが10000μmを超えると、成形体を曲面形状に加工しにくくなる。
【0171】
上記熱可塑性樹脂層の融点は、例えば100〜1000℃であり、好ましくは150〜500℃であり、より好ましくは180〜400℃であり、さらに好ましくは200〜350℃である。融点が100℃未満であると、成形体の耐熱性が悪くなるおそれがあり、融点が1000℃を超えると、成形体を曲面形状に加工しにくくなる。
【0172】
上記熱可塑性樹脂層としては、市販品の熱可塑性樹脂を用いることもでき、例えば、商品名「セビアン V」(ABS、ダイセルポリマー(株)製)、「クリアパクト」(スチレン系樹脂、DIC社製)、「トーヨー AS」(アクリロニトリル・スチレン(AS)、東洋スチレン(株)社製)、「アセチ」(酢酸繊維素樹脂、ダイセルファインケム(株)社製)、「エバテート」(EVA、住友化学(株)社製)、「アーレン」(変性ポリアミド6T(PA)、三井化学(株)社製)、「UBEナイロン」(ナイロン樹脂(PA)、宇部興産(株)社製)、「ジュラネックス」(PBT、ウィンテックポリマー社製)、「パンライト」(PC、帝人化成(株)社製)、「ノバペックス」(PET、三菱化学(株)社製)、「オーラム」(ポリイミド樹脂(PI)、三井化学(株)社製)、「アクリペット」(PMMA、三菱レイヨン(株)社製)、「TPX」(ポリメチルペンテン、三井化学(株)社製)、「ジュラコン」(ポリオキシメチレン(POM)、ポリプラスチックス(株)社製)、「プライムポリプロ」(PP、(株)プライムポリマー社製)、「ザイロン」(変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、旭化成ケミカルズ(株)社製)、「ジュラファイド」(PPS、ポリプラスチックス(株)社製)、「クリアレン」(スチレン系特殊透明(SBC)樹脂、電気化学工業(株)社製)、「トーヨースチロール」(PS、東洋スチレン(株)社製)、「スミフレックス」(PVC、三菱化学(株)社製)、「クラミロン U」(ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(TPU)、(株)クラレ社製)、「TOPAS」(環状オレフィン・コポリマー(COC)、ポリプラスチックス(株)社製)、「アサフレックス」(スチレン系特殊透明樹脂、旭化成ケミカルズ(株)社製)、「エコフレックス」(生分解プラスチック、BASFジャパン社製)等を使用することができる。市販の上記熱可塑性樹脂を公知乃至慣用の方法でシート状に加工したものを熱可塑性樹脂層(シート)として用いてもよい。
【0173】
また、市販の熱可塑性樹脂シートを熱可塑性樹脂層として用いてもよく、市販の熱可塑性樹脂シートとしては、例えば、商品名「NOACRYSTAL」(A−PET、RP東プラ(株)社製)、「クリアーヌ」(ポリプロピレン・シート(PP)、シーダム(株)社製)、「アクリプレン」(PMMAシート、三菱レイヨン(株)社製)、「エスビロンシート」(PVCシート、積水成型工業(株)社製)等を使用することができる。
【0174】
(成形体の製造方法)
本発明の成形体は、特に制限されないが、以下の(A)〜(C)の工程を含む方法により製造することができる。本発明の成形体は、以下の(A)〜(C)以外の工程(例えば、アンカー層や粘着剤層を設ける工程)を含む製造方法にて製造してもよい。なかでも本発明の成形体では、後述する(A)(B)(C)の順で製造する方法(一体成形)、又は(A)(C)(B)の順で製造する方法(後貼り)が好ましい。
(A)基材層上にハードコート層を形成する(ハードコート層形成工程)
(B)基材層と熱可塑性樹脂層を貼り合せる(貼合工程)
(C)成形体を所望の曲面形状に成形する(成形工程)
【0175】
((A)ハードコート層形成工程)
上記ハードコート層形成工程は、基材層上にハードコート層を形成させ、基材付きハードコートフィルムを作製する工程である。ハードコート層の形成は、公知乃至慣用のハードコートフィルムの製造方法に準じて製造することができ、その製造方法は特に限定されないが、上記基材の少なくとも一方の表面に上記硬化性組成物(ハードコート層形成用硬化性組成物)を塗布し、必要に応じて溶剤を乾燥によって除去した後、硬化性組成物(硬化性組成物層)を硬化させることにより製造できる。硬化性組成物を硬化させる際の条件は、特に限定されず、上述の硬化物を形成する際の条件から適宜選択可能である。なお、基材付きハードコートフィルムは、基材付きハードコートシートであってもよい。
【0176】
特に、ハードコート層は、可とう性及び加工性に優れた硬化物を形成できる上記硬化性組成物(ハードコート層形成用硬化性組成物)より形成されたハードコート層であるため、本発明の成形体は、ロールトゥロール方式での製造が可能である。本発明の成形体をロールトゥロール方式で製造することにより、その生産性を著しく高めることが可能である。公知乃至慣用のロールトゥロール方式の製造方法を採用することができ、例えば、ロール状に巻いた基材を繰り出す工程と、繰り出した基材の少なくとも一方の表面に硬化性組成物(ハードコート層形成用硬化性組成物)を塗布し、次いで、必要に応じて溶剤を乾燥によって除去した後、該硬化性組成物(硬化性組成物層)を硬化させることによりハードコート層を形成する工程と、その後、得られた基材付きハードコートフィルムを再びロールに巻き取る工程とを必須の工程として含み、これら工程を連続的に実施する方法等を挙げることができる。なお、当該方法は、これらの工程以外を含んでいてもよい。
【0177】
ハードコート層の硬化は、一段階で行わなくてもよく、ハードコート層形成時に硬化性組成物の一部を反応させることによって、不完全硬化状態(Bステージ化)にし、上記(A)〜(C)の工程(特に、成形工程)の後に、完全硬化させてもよい。このように硬化性組成物の硬化を2段階で行うことで、特に成形工程におけるハードコート層の割れを防止することができる。
【0178】
また、ハードコート層の形成方法としては、上記ロールトゥロール方式以外にも、スプレーコートを挙げることができる。スプレーコートは、例えば、上記硬化性組成物(ハードコート層形成用硬化性組成物)を公知乃至慣用のスプレー方法により、一方の基材層表面に塗布し、必要に応じて溶剤を乾燥によって除去した後、硬化性組成物(硬化性組成物層)を硬化させる方法である。スプレーコートは、特に成形工程後の曲面に対して行うことが、ハードコート層の割れを防止できる点で有効である。また、一度ロールトゥロール方式等によりハードコート層を形成させた層の上に、成形工程後、さらにスプレーコートによりハードコート層を形成させてもよい。
【0179】
((B)貼合工程)
上記貼合工程は、
図2に示すように基材付きハードコートフィルム(基材側)と熱可塑性樹脂層を貼り合せる工程であり、公知乃至慣用の貼合方法にて行うことができる。貼合方法は特に限定されないが、容易に貼り合わせることができ、生産性が良い点から、基材と熱可塑性樹脂層の一方又は両方を加熱し、圧力をかけてヒートプレスする方法が好ましい。上記ヒートプレスは、枚葉方式で行っても、ロールトゥロール方式で行ってもよい。加熱する温度は、基材や熱可塑性樹脂の融点以上の温度であればよいが、例えば100〜500℃であり、好ましくは150〜300℃である。圧力は、例えば0.1〜100Paであり、好ましくは1〜50Paである。上記貼合工程では、上記ヒートプレス以外にも、粘着剤を用いる方法等を挙げることができる。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤等の公知乃至慣用の粘着剤を用いることができる。
【0180】
((C)成形工程)
上記成形工程は、所望の曲面形状に成形する工程であり、公知乃至慣用の成形方法にてすることができ、その方法は特に限定されないが、真空成形、射出成形等の型を用いた成形方法を挙げることができる。なかでも容易に成形できる点から、真空成形が好ましい。
【0181】
上記真空成形は、例えば、金属等の材質からなる所望の曲面形状を有する型の上に成形するもの(シート状物)を置き、成形するものを加熱後、真空引きして型の形状に成形する方法である。市販の真空成形機(例えば、浅野研究所製、真空圧空成機「FK−0431−10」)を用いることができる。加熱する温度としては、使用する基材等により異なり特に制限されないが、100〜300℃程度である。
【0182】
上記(A)(B)(C)の順で製造する方法(一体成形)では、(A)ハードコート層形成工程にて基材付きハードコートフィルムを作製し、(B)貼合工程にて
図2の(B−1)に示すように基材付きハードコートフィルムの基材側に熱可塑性樹脂層を貼り合せ、(C)成形工程にて所望の曲面形状に成形する。特にこの一体成形は、熱可塑性樹脂層がシート状である場合に有効であり、多くの工程をロールトゥロール方式で行うことができるため、特に生産性に優れる。
【0183】
上記(A)(C)(B)の順で製造する方法(後貼り)では、(A)ハードコート層形成工程にて基材付きハードコートフィルムを作製し、(C)成形工程にて所望の曲面形状に成形し、(B)貼合工程にて
図2の(B−2)に示すように基材付きハードコートフィルムの基材側に熱可塑性樹脂層を貼り合せる。(C)成形工程では、基材付きハードコートフィルムを成形する以外に、熱可塑性樹脂層も、別途射出成形や真空成形等により成形して、基材付きハードコートフィルムの形状に合う成形品としておくことが好ましい。この後貼りは、特に熱可塑性樹脂層が厚肉で上記一体成形による成形が困難であるときに有効である。
【0184】
本発明の成形体は、高硬度及び高耐熱性を維持しながら、可とう性を有し、ロールトゥロール方式での製造や加工が可能であるため、高い品質を有し、生産性にも優れる。よって、本発明の成形体は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置;タッチパネル等の入力装置:太陽電池;各種家電製品;各種電気・電子製品;携帯電子端末(例えば、ゲーム機器、パソコン、タブレット、スマートフォン、携帯電話等)の各種電気・電子製品;各種光学機器等の各種製品に好ましく使用できる。また、本発明の成形体が各種製品やその部材又は部品の構成材として使用される態様としては、例えば、タッチパネルにおけるハードコートフィルムと透明導電フィルムの積層体等に使用される態様等を挙げることができる。
【実施例】
【0185】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、生成物の分子量の測定は、Alliance HPLCシステム 2695(Waters製)、Refractive Index Detector 2414(Waters製)、カラム:Tskgel GMH
HR−M×2(東ソー(株)製)、ガードカラム:Tskgel guard column H
HRL(東ソー(株)製)、カラムオーブン:COLUMN HEATER U−620(Sugai製)、溶媒:THF、測定条件:40℃、標準ポリスチレン換算により行った。また、生成物におけるT2体とT3体のモル比[T3体/T2体]の測定は、JEOL ECA500(500MHz)による
29Si−NMRスペクトル測定により行った。生成物のT
d5(5%重量減少温度)は、TGA(熱重量分析)により、空気雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件で測定した。表1における各組成の単位は、重量部である。
【0186】
[実施例1]
(カチオン硬化性シリコーン樹脂の調製)
温度計、攪拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付けた300ミリリットルのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下で2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(以下、「EMS」と称する)161.5ミリモル(39.79g)、フェニルトリメトキシシラン(以下、「PMS」と称する)9ミリモル(1.69g)、及びアセトン165.9gを仕込み、50℃に昇温した。このようにして得られた混合物に、5%炭酸カリウム水溶液4.70g(炭酸カリウムとして1.7ミリモル)を5分で滴下した後、水1700ミリモル(30.60g)を20分かけて滴下した。なお、滴下の間、著しい温度上昇は起こらなかった。その後、50℃のまま、重縮合反応を窒素気流下で4時間行った。
重縮合反応後の反応溶液中の生成物を分析したところ、数平均分子量は1911であり、分子量分散度は1.47であった。上記生成物の
29Si−NMRスペクトルから算出されるT2体とT3体のモル比[T3体/T2体]は10.3であった。生成物のFT−IRスペクトルを上述の方法で測定したところ、1100cm
-1付近に一つの固有吸収ピークを有することが確認された。
その後、反応溶液を冷却し、下層液が中性になるまで水洗を行い、上層液を分取した後、1mmHg、40℃の条件で上層液から溶媒を留去し、無色透明の液状の生成物(エポキシ基を有するシルセスキオキサン単位を含むカチオン硬化性シリコーン樹脂;硬化性樹脂A)を得た。上記生成物のT
d5は370℃であった。
【0187】
(ハードコートフィルムの作製)
得られた硬化性樹脂A5.0重量部、硬化触媒0.1重量部、レベリング剤0.05重量部の混合溶液を作製し、これをハードコート液(硬化性組成物)として使用した。
【0188】
得られたハードコート液を、ワイヤーバー#30を用いてPETフィルムの表面に塗布した後、70℃のオーブンで1分間放置(プレベイク)し、次いで、高圧水銀ランプ(アイグラフィックス(株)社製)を用いて、400mJ/cm
2の照射量で紫外線を5秒間照射した。その後、15℃で1時間熱処理(エージング処理)することによってハードコート液の塗工膜を硬化させ、ハードコート層を有する基材付きハードコートフィルムを作製した。
【0189】
(成形体の作製)
得られた基材付きハードコートフィルムの基材層側に熱可塑性樹脂層として熱可塑性樹脂(PMMA)シート(商品名「アクリプレン」、三菱レイヨン(株)社製、厚み200μm)を温度110℃、2.5kg/cm
2の条件でヒートプレスして、基材付きハードコートフィルムと熱可塑性樹脂シートを一体化させた。その後、真空成形機(浅野研究所製、真空圧空成機「FK−0431−10」)内にて、一体化したシート(250mm×250mm)が150℃になるまで予熱し、真空成形用の金型として、凸型の曲面形状を有するアルミ製金型を使用し、予熱されたシートをハードコート層が上になるように金型上に移動させ、金型内で吸引して曲面形状の成形体を得た。
【0190】
[実施例2〜5]
実施例2〜5については、表1に示すように、硬化性樹脂の配合量を変更し、エポキシ化合物を0.5重量部添加して混合物(組成物)を調製する以外は実施例1と同様にして基材付きハードコートフィルムを作製し、成形体を作製した。なお、実施例2〜5で得られた組成物におけるポリオルガノシルセスキオキサンのFT−IRスペクトルを上述の方法で測定したところ、いずれも1100cm
-1付近に一つの固有吸収ピークを有することが確認された。なお、ハードコート層の厚みは、表1に示すとおりである。
【0191】
[実施例6]
(カチオン硬化性シリコーン樹脂の調製)
温度計、攪拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付けた300ミリリットルのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下でEMS161.5ミリモル(39.79g)、PMS9ミリモル(1.69g)、及びアセトン165.9gを仕込み、50℃に昇温した。このようにして得られた混合物に、5%炭酸カリウム水溶液4.70g(炭酸カリウムとして1.7ミリモル)を5分で滴下した後、水1700ミリモル(30.60g)を20分かけて滴下した。なお、滴下の間、著しい温度上昇は起こらなかった。その後、50℃のまま、重縮合反応を窒素気流下で4時間行った。
重縮合反応後の反応溶液中の生成物を分析したところ、数平均分子量は1799であり、分子量分散度は1.57であった。上記生成物の
29Si−NMRスペクトルから算出されるT2体とT3体のモル比[T3体/T2体]は10.1であった。生成物のFT−IRスペクトルを上述の方法で測定したところ、1100cm
-1付近に一つの固有吸収ピークを有することが確認された。
その後、反応溶液を冷却し、下層液が中性になるまで水洗を行い、上層液を分取した後、1mmHg、40℃の条件で上層液から溶媒を留去し、無色透明の液状の生成物(エポキシ基を有するシルセスキオキサン単位を含むカチオン硬化性シリコーン樹脂;硬化性樹脂B)を得た。上記生成物のT
d5は370℃であった。
【0192】
(ハードコートフィルムの作製)
得られた硬化性樹脂B4.5重量部、エポキシ化合物0.5重量部、硬化触媒0.05重量部、レベリング剤0.05重量部の混合溶液を作製し、これをハードコート液(硬化性組成物)として使用した。得られたハードコート液から、実施例1と同様にして基材付きハードコートフィルムを作製し、成形体を作製した。
【0193】
[実施例7、8]
ハードコート液(硬化性組成物)の組成及びハードコート層の厚みを表1に示すように変更したこと以外は実施例6と同様にして、ハードコート液を作製し、成形体を作製した。
【0194】
[比較例1〜4]
比較例1〜4については、表1に示す硬化性樹脂を使用し、レベリング剤を使用せずに、混合物(組成物)を調製したこと以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製し、成形体を作製した。
【0195】
[鉛筆硬度(表面硬度)]
上記で得た成形体におけるハードコート層表面の鉛筆硬度(表面硬度)を、JIS K5600−5−4に準じて評価した。この評価結果を表1に示す。なお、評価は3回行い最も硬いものを評価結果とした。
【0196】
[曲げ(耐屈曲性)]
上記で得たハードコートフィルムの曲げ(耐屈曲性)を、円筒形マンドレルを使用してJIS K5600−5−1に準じて評価した。この評価結果を表1に示す。
【0197】
【表1】
【0198】
表1に示す略号は、以下の通りである。
(硬化性樹脂)
PETIA:ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、商品名「PETIA」(ダイセル・オルネクス(株)製)
IRR214K:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、商品名「IRR214K」(ダイセル・オルネクス(株)製)
TA−100:アクリルシリコーン樹脂、商品名「SQ TA−100」(東亜合成(株)製)
SI−20:アクリルシリコーン樹脂、商品名「SQ SI−20」(東亜合成(株)製)
(エポキシ化合物)
セロキサイド2021P:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、商品名「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製)
エポキシ化合物A:ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル
EHPE3150:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)
エポキシ化合物B:2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)プロパン
(溶剤)
MEK:メチルエチルケトン
(硬化触媒)
WPI−124:商品名「WPI−124」、(和光純薬工業(株)製、光酸発生剤の50%溶液)
硬化触媒A:[4−(4−ビフェニルチオ)フェニル]−4−ビフェニルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート50%溶液
イルガキュア 184:光重合開始剤、商品名「IRGACURE 184」(BASFジャパン(株)製)
(レベリング剤)
サーフロン S−243:フッ素化合物のエチレンオキサイド付加物、商品名「サーフロン S−243」(AGCセイミケミカル(株)製)