(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619962
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】美容における皮膚用クレンジング具及び音波美容器
(51)【国際特許分類】
A45D 44/22 20060101AFI20191202BHJP
A61H 23/02 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
A45D44/22 Z
A61H23/02 386
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-141770(P2015-141770)
(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公開番号】特開2017-23184(P2017-23184A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 岩男
【審査官】
新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−173926(JP,A)
【文献】
特開平08−275944(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/192307(WO,A1)
【文献】
特開平09−108288(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/013546(WO,A1)
【文献】
特開2014−54514(JP,A)
【文献】
米国特許第6139553(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 44/22
A61H 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を発射し得る音波素子体と、この音波素子体に、その一側下面が固定的に設けられ、かつ該一側下面の反対側の一側上面に断面略弧状の凹所を有する金属製の音波照射台座と、前記音波照射台座とは前記音波の振動伝達率が異なる樹脂材料のキャップ状に成形されたカバー状振動媒体とから成る皮膚用クレンジング具であって、
前記カバー状振動媒体は、前記断面略弧状の凹所の曲面状接触面に接触する状態で該断面略弧状の凹所に充填される充填部分を有すると共に、該充填部分の表面は、外方向に凸レンズ状曲面又はドーム形状のいずれかであり、前記音波照射台座から照射された音波が集束する焦点は、空気層を挟まない該充填部分の表面又は充填部分内の表面付近のいずれかに位置し、前記充填部分の表面が生体の対象部位に対して圧力となり得る、美容における皮膚用クレンジング具。
【請求項2】
請求項1に於いて、カバー状振動媒体は、その材質はシリコンゴムであることを特徴とする美容における皮膚用クレンジング具。
【請求項3】
片手で握ることができる立体的形状の筺体と、該立体的形状の筺体の把手部に連設する先端部にヘッドとして設けられた皮膚用クレンジング具とから成る音波美容器に於いて、
前記立体的形状の筺体は、少なくも操作部からの操作信号に基づいて起動する制御手段と、該制御手段からの指令信号に基づき駆動して前記皮膚用クレンジング具に駆動信号を与える駆動部とを内蔵し、一方、前記皮膚用クレンジング具は、音波を発射し得る音波素子体と、この音波素子体に、その一側下面が固定的に設けられ、かつ該一側下面の反対側の一側上面に断面略弧状の凹所を有する金属製の音波照射台座と、前記音波照射台座とは前記音波の振動伝達率が異なる樹脂材料のキャップ状に成形されたカバー状振動媒体とから成る皮膚用クレンジング具を備え、
前記カバー状振動媒体は、前記断面略弧状の凹所の曲面状接触面に接触する状態で該断面略弧状の凹所に充填される充填部分を有すると共に、該充填部分の表面は、全体として外方向に凸レンズ状曲面又はドーム形状のいずれかであり、前記音波照射台座から照射された音波が集束する焦点は、空気層を挟まない該充填部分の表面又は充填部分内の表面付近のいずれかに位置し、前記充填部分の表面が生体の対象部位に対して圧力となり得る、音波美容器。
【請求項4】
請求項3に於いて、前記駆動部は、少なくとも間欠発信器を含み、前記制御手段は、間欠発信器により高周波の超音波を間欠的に発生させるとともに、当該間欠部分は低周波の間隔であるような駆動信号を音波素子体に与えるように制御することを特徴とする音波美容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として人体の顔や頭の皮膚の汚れを叩き落とす
美容における皮膚用クレンジング具及び音波美容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は出願人が提案したものである。従来、この種の皮膚用クレンジング具及び音波美容器は、多目的なので、構造が複雑化するという問題点があった。そこで、イオン効果や温度効果に重点を置かず、「簡易な構成」により、「主として人体の顔や頭の皮膚の汚れを叩き落とす皮膚用クレンジング具及び音波美容器」の出現が要望されている。その場合、クレンジング効果が十分に発揮するものが期待されている。
【0003】
ところで、超音波を利用した発明として特許文献2が存在する。この特許文献2は、治療の技術分野に関するもので、本発明の如く、音波美容器の技術分野に関するものではないが、例えば癌細胞死滅を目的とした治療法或いは超音波治療装置である。この超音波治療装置の盤状音波発射体7の一側上面は、全体として内方向に凹レンズ状曲面(発射面)7aに形成され、該凹レンズ状曲面(発射面)7aが人体に対して正面となり、袋状の冷却部材10を介して、該凹レンズ状曲面(発射面)7aから発射された超音波の焦点Pは、前記盤状音波発射体7の外、すなわち、人体3内の治療部位(癌細胞・腫瘍のあるところ)にある。このように、治療法或いは超音波治療装置の技術分野では、一側上面が凹レンズ状曲面(発射面)7aの盤状音波発射体7を使用しているものの、超音波が集束する焦点Pは体内に位置していた(符号は特許文献2のもの)。
【0004】
上記の技術をそのまま
美容における皮膚用クレンジング具及び音波美容器に応用した場合には、人体の顔や頭の皮膚にクレンジング効果を得るための圧力(振動)を得ることができない。そこで、特許文献2に記載の技術の応用が、美容器具の技術分野でも期待されている。その際、発明の課題との関係で、低周波信号のみ、又は高周波信号のみではないことが好ましい。そこで、このような要望や期待に鑑みて本発明が出現した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4444839号公報
【特許文献2】特開2003−38514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の主たる目的は、要望や期待に鑑みて、金属製の音波照射台座の振動と同一振動で伝播しないと共に、生体の対象部位(特に、主として人体の顔や頭の皮膚)に直接又は間接的(例えばコットンを介して)に触れる樹脂成形体としてのカバー状振動媒体の表面の揺れが、「クレンジング効果(振動圧力)」として十分となり得る、望ましくは前記金属製の音波照射台座の凹所に充填された前記カバー状振動媒体の充填部分の中央部の表面又は表面付近のいずれかが最も振動伝達率が大きい(人体の顔や頭の皮膚に十分な圧力を与えることができる)
美容における皮膚用クレンジング具、及び該皮膚用クレンジング具をヘッドに有する音波美容器を提供することである。本願発明の第2の目的は、簡易な構造により、本願発明の主たる目的を実現することである。その他の付随的目的は、生体の皮膚に金属製の音波照射台座が直接触れないこと、クレンジング効果を高めるために単数又は複数の音波素子に低周波信号と高周波信号を含む複数種類の駆動信号を順番に与えることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の
美容における皮膚用クレンジング具は、音波を発射し得る音波素子体と、この音波素子体に、その一側下面が固定的に設けられ、かつ該一側下面の反対側の一側上面に断面略弧状の凹所を有する金属製の音波照射台座と、
前記音波照射台座とは前記音波の振動伝達率が異なる樹脂材料
のキャップ状に成形されたカバー状振動媒体とから成る皮膚用クレンジング具
であって、前記カバー状振動媒体は、前記断面略弧状の凹所の曲面状接触面に接触する状態で該断面略弧状の凹所に充填される充填部分
を有すると共に、該充填部分の表面は、外方向に凸レンズ状曲面又はドーム形状のいずれかであり、前記音波照射台座から照射された音波が集束する焦点は、空気層を挟まない該充填部分の表面又は充填部分内の表面付近のいずれかに位置し、前記充填部分の表面が生体の対象部位に対して圧力となり得る、ことを特徴とする。
【0008】
上記構成に於いて、カバー状振動媒体は、その材質はシリコンゴムであることを特徴とする。
【0009】
また本発明の音波美容器は、片手で握ることができる立体的形状の筺体と、該立体的形状の筺体の把手部に連設する先端部にヘッドとして設けられた皮膚用クレンジング具とから成る音波美容器に於いて、
前記立体的形状の筺体は、少なくも操作部からの操作信号に基づいて起動する制御手段と、該制御手段からの指令信号に基づき駆動して前記皮膚用クレンジング具に駆動信号を与える駆動部とを内蔵し、一方、前記皮膚用クレンジング具は、音波を発射し得る音波素子体と、この音波素子体に、その一側下面が固定的に設けられ、かつ該一側下面の反対側の一側上面に断面略弧状の凹所を有する金属製の音波照射台座と、
前記音波照射台座とは前記音波の振動伝達率が異なる樹脂材料
のキャップ状に成形されたカバー状振動媒体とから成る皮膚用クレンジング具
を備え、前記カバー状振動媒体は、前記断面略弧状の凹所の曲面状接触面に接触する状態で該断面略弧状の凹所に充填される充填部分
を有すると共に、該充填部分の表面は、全体として外方向に凸レンズ状曲面又はドーム形状のいずれかであり、前記音波照射台座から照射された音波が集束する焦点は、空気層を挟まない該充填部分の表面又は充填部分内の表面付近のいずれかに位置し、
前記充填部分の表面が生体の対象部位に対して圧力となり得る、ことを特徴とする。
【0010】
上記構成に於いて、前記駆動部は、少なくとも間欠発信器を含み、前記制御手段は、間欠発信器により高周波の超音波を間欠的に発生させるとともに、当該間欠部分は低周波の間隔であるような駆動信号を音波素子体に与えるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
(a)
請求項1に記載の発明は、
音波照射台座とは音波の振動伝達率が異なる樹脂材料
のキャップ状に成形されたカバー状振動媒体を備え、
その焦点Pが
該カバー状振動媒体に存在して空気層を挟まない(焦点Pが物質内にある)、カバー状振動媒体が金属製の音波照射台座の振動と同一振動で伝播しない等の理由から、生体の対象部位(特に、主として
美容における人体の顔や頭の皮膚)に直接又は間接的(例えばコットンを介して)に触れる樹脂成形体として、カバー状振動媒体の表面の揺れが大きくし、「クレンジング効果(振動圧力)」として十分な効果を発揮させることができる。
付言すると、音波照射台座とカバー状振動媒体とは互いに
音波の振動伝達率が異なる材質で成形され、前記カバー状振動媒体の表面が、全体として外方向に凸レンズ状曲面又はドーム形状のいずれかに形成され、かつ、焦点Pがカバー状振動媒体に存在して空気層を挟まない(焦点Pが物質内にある)構成であることから、カバー状振動媒体の充填部分の中央部の表面又は表面付近のいずれかが最も振動伝達率が大きい(
美容における人体の顔や頭の皮膚に十分な圧力を与えることができる)効果を確実に得ることができる。またカバー状振動媒体を金属製の音波照射台座を簡単に装着することができる、カバー状振動媒体が金属製の音波照射台座に対して動かない、金属製の音波照射台座が汚れない
、というような効果がある。
(b)請求項
2に記載の発明は、材質がシリコンゴム
なので、皮膚を傷つけない、音感効果により、皮膚の毛穴の拡張を促す、錆びない等の効果がある。
(
c)請求項
3に記載の発明は、
請求項1に記載の美容における皮膚用クレンジング具を備えているので、上記(a)の効果を有する音波美容器を、簡易な構成により実現することができる。
(
d)請求項
4に記載の発明は、駆動部は、少なくとも間欠発信器を含み、前記制御手段は、間欠発信器により高周波の超音波を間欠的に発生させるとともに、当該間欠部分は、例えば低周波の間隔であるような駆動信号を音波素子体に与えるように制御するので、ユーザの感触を含め、「クレンジング効果(振動圧力)」を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1乃至
図8は本発明の第1実施形態を示す各説明図、
図9及び
図10は本発明の
美容における皮膚用クレンジング具Y1の第2実施形態を示す各説明図。
【
図1】音波美容器Xの全体の外観構成を示す斜視図。
【
図2】皮膚用クレンジング具Yを構成する部材の分解説明図(部材の一部を切欠いた断面図を含む)。
【
図6】皮膚用クレンジング具及び音波美容器Xの主要部を示す説明図(複数種類の周波数の概略説明図も含む)。
【
図7】制御系における駆動部の具体的構成を示す概略説明図。
【
図8】音波美容器Xの使用態様の一例を示す説明図。
【
図9】第2実施形態の皮膚用クレンジング具Y1の説明図。
【
図10】皮膚用クレンジング具Y1のカバー状振動媒体31Aの斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、
図1乃至
図8を参照して本発明の第1実施形態を説明する。まず
図1は、
美容における肌のクレンジングを目的として使用されるハンディタイプの音波美容器Xの全体の外観構成を示す斜視図であり、この音波美容器Xのヘッドに相当する先端部には、皮膚用クレンジング具Yが一体的に設けられている。なお、ここでは
図1を基準として、基端部と先端部の用語を用いる。
図1の下方の片手で握ることができる基端部は把持部分1に相当し、一方、
図1の上方の先端部2は、主として人体の顔や頭の皮膚に当る皮膚用クレンジング具Yの取付け部分に相当する。
【0014】
把持部分1と該把持部分に連続する取付け部分2は音波美容器Xの筐体3を構成し、前記把持部分1は、ある程度の厚みを持たせるように円柱状の外周壁をその半径内方向に押しつぶした扁平的形状に形成されている。もちろん、把持部分1の立体的形状の大きさ・長さ・厚み等は、片手で握り易い形状に形成するのが望ましく、例えばその背面壁側を掌にフィットする円弧状に形成し、一方、正面壁側を中心部に向かって絞った形状にするのが最も好ましい。
【0015】
また前記先端部2の正面壁には、略円形の上面向き、或いはやや斜め向きの開口部4が形成され、この開口部4に皮膚用クレンジング具Yの下端部が一体的に嵌め込まれている。この嵌め込み手段(例えば緊嵌合、係着、螺着等)や一体的に固定する手段(例えば固着具、接着剤等)は特に問わない。
【0016】
ところで、把持部分1の正面壁の適宜箇所には単数又は複数(実施形態)の操作部5が設けられており、1つの操作部5は、少なくとも主電源をON・OFFするスイッチの役割を果たす。また他の操作部6は、駆動部の発信器が、3個以上あって、それらの組み合わせが複数である場合の実施形態に於いて、例えば図示しない第1発信器と第2の発信器の組み合わせから、第1発信器と第3の発信器の組み合わせに変える場合に用いられる周波数切替え用操作ボタンである。
【0017】
さらに、把持部分1の下縁部には、AC(交流)アダプタの電源出力端子を接続するための電源入力端子部7(
図5参照)が設けられている。なお、特に図示しないが、把持部分1の正面壁、背面壁等の適宜箇所に、周知の如く、単数又は複数の表示部(例えばLED)を設けても良い。
【0018】
次に、
図2は皮膚用クレンジング具Yを構成する部材の分解説明図であり、
図2の下方の部材が音波を発射し得る音波素子体11、この音波素子体11の上方に描いている部材が金属製の音波照射台座21、そして、この音波照射台座21の上方に描いている部材がキャップ状に形成されたカバー状振動媒体31である。
【0019】
まず、音波素子体11の構成から説明する。本実施形態の音波素子体11は、圧電素子(ピエゾ素子)が用いられている。周知のように、圧電素子とは、強誘電体の一種で、振動や圧力などの力が加わると電圧が発生し、また逆に電圧が加えると音波を発生するもので、例えば超音波モータ用圧電素子、圧電バイモルフ素子、積層電圧アクチュエータ、高周波用振動子等として用いられている。
【0020】
しかして、本発明の目的は、人体の皮膚、主として人体の顔や頭の皮膚の汚れを叩き落とすこと(クレンジング)を目的としているので、電圧素子は一対の対向電極に電圧を同時にかけると音波(超音波も含む)を発射する音波振動子として用いている。したがって、音波素子体11は、
図2で示すように、例えば円盤状に加工され、かつ三元系金属酸化物であるチタン酸鉛とジルコン酸鉛の結晶(「チタン酸ジルコン酸鉛」と称されている)の電圧素子本体12と、互いに厚み方向に対向する両面(上面と下面)にそれぞれ固定された薄板状、あるいはフイルム状の第1電極13及び第2電極14と、これらの第1電極13及び第2電極14にそれぞれ接続された一対のケーブル15、16とから構成され、前記電極13、14に同じ電圧が同時にかかると、前記第1電極13及び第2電極14が周波数に対応して変動し、その結果、音波17を少なくとも音波照射台座21に向かって発射する。なお、音波素子体11の内部構造は適宜に設計し得る事項である。
【0021】
次に、金属製の音波照射台座21の構成を説明する。
図2及び
図3で示すように、この音波照射台座21は、多角形或いは円形でやや厚みのある板状の形態(円盤状)のものであり、例えば円形の周端部23aの厚みが中心部25aに向かうにしたがって次第に薄くなっている。本実施形態では、一側下面22と、該一側下面の反対側の一側上面23と、この一側上面23及び前記一側下面22と略直交する周側面24と、前記一側上面23に形成された断面略弧状の凹所25とを有する。
【0022】
しかして、前記一側下面22は音波素子体11の第1電極12と固定的に接合する面である。一方、少なくとも前記凹所25を含む一側上面23及び周側面24は、キャップ状のカバー状振動媒体31の内壁面が密着状態に接合する外壁面であることから、該外壁面24、23、25はカバー状振動媒体31が外嵌合する装着部分となる。
【0023】
金属製の音波照射台座21の厚さ・材質・大きさ等は音波17の伝播速度、耐食性等を考慮して、好ましくはアルミニュームを用いている。もちろん、ステンレス等の材料を用いることもできる。また音波照射台座21の断面略弧状の凹所25の曲率半径は、音波素子体11から発射された音波17が、後述するカバー状振動媒体31の充填部分の表面又は充填部分内の表面付近のいずれかに位置するように適宜に設定されている(
図6参照)。さらに、音波照射台座21の一側下面を含む外面全体は、周知の手段により、適宜に表面処理されている。
【0024】
次に、例えば
図2及び
図4を参照にしてカバー状振動媒体31の構成を説明する。このカバー状振動媒体31は、例えば接着層を介して金属製の音波照射台座21の外面に固定される。しかして、カバー状振動媒体31は、
音波照射台座21とは音波の振動伝達率が異なる樹脂材料のキャップ状に成形され、音波照射台座21の前述した断面略弧状の凹所25の曲面状接触面25aに接触する状態で該断面略弧状の凹所25に充填される充填部分32、該充填部分から外方向に鍔状に連設し、かつ少なくとも前記音波照射台座21の一側上面23を全体的にカバーするやや平坦状周端部33、該やや平坦状周端部から下方方向に略直交状態に連続する弾性の環状周壁部34、該環状周壁部の下縁部に水平方向に略直交状態に連続し、かつ、音波照射台座21を嵌め込むことができる開口部35を有する弾性の環状底壁部36を有する。
【0025】
そして、該カバー状振動媒体31は、
図6で示すように、前記音波照射台座21から照射された音波17が集束し、その焦点Pを含む前記充填部分32の表面32aが顔や頭の皮膚に対して圧力(叩き付けような振動)となり得るもので、当業者にとって、音波素子体11と、音波照射台座21と、カバー状振動媒体31を上下方向に一体的に結合した厚みのあるブロック形態は、「超音波トランスジューサ」、「音響レンズ」等と称することも可能である。
【0026】
実施形態では、本発明の付随的な目的を考慮して、生体の皮膚に金属製の音波照射台座が直接触れないように、弾性の環状周壁部34と弾性の環状底壁部36とを有するが、前記弾性の環状底壁部36は、筺体3の開口部の内壁面に設けた図示しない支持片に支持されるので、カバー状振動媒体31のズレ防止や抜脱防止という効果を有するという観点から有った方が好ましいが、必ずしも必要ではない。
【0027】
付言すると、カバー状振動媒体31は、少なくとも金属製の音波照射台座21の一側上面23及び該一側上面と略直交する周側面34を全て包むようにキャップ状に成形され、その材質はシリコンゴムである。また本発明の主たる目的で、好ましくは、少なくともカバー状振動媒体31の充填部分32の表面は、全体として外方向に凸レンズ状曲面又はドーム形状のいずれかであり、焦点Pは充填部分の表面32a又は充填部分内の表面付近のいずれかに位置する。
【0028】
次に、
図5を参照にして、音波美容器Xの制御系を簡単に説明する。立体的形状の筺体3は、少なくも単数又は複数の操作部5からの操作信号に基づいて起動する制御手段41と、該制御手段41からの指令信号に基づき駆動して前記皮膚用クレンジング具Yに駆動信号(交番する交流電圧)を与える駆動部42とを内蔵し、好ましくは充電可能な内部電源(例えば二次電池)45を有する。そして、前述したように電源入力端子部7を適宜箇所に備えている。
【0029】
しかして、前記制御手段41は、プログラムを格納する記憶部44とタイマ43を有している。付言すると、制御手段41の記憶部44は、音波美容器Xの全体的な制御や各種演算を実行するプロセッサ、RAM、ROMを内蔵する。ROMには実行される制御や演算のためのプログラムや各種パラメータなどのソフトウェアが格納されており、プロセッサはこのROMからソフトウェアを読み込み、命令文を解釈し、RAMのメモリ空間を用いて命令を実行する。また前記タイマ43は、例えば操作部5からの操作信号に基づいて該制御手段41の作動時間を決めるもので、5分間、7分間、10分間等の所定時間経過後に制御手段41の指令信号を停止するために用いられる。したがって、この制御手段41のソフトウェアの一機能として、前述したようにクレンジングを自動的に終了させることができる。
【0030】
さらに、制御手段41は、
図7で示すように、駆動部(例えば間欠発振器)42を介して音波素子体11の一対の電極13,14に高周波の超音波が間欠的に発生し、当該間欠部分は低周波の間隔であるような駆動信号を音波素子体に与えるように制御する。
【0031】
駆動部は、少なくとも間欠発信器42を含み、前記制御手段41は、間欠発信器42により高周波の超音波を間欠的に発生させるとともに、当該間欠部分は、例えば低周波の間隔であるような駆動信号を音波素子体11に与えるように制御する
より詳しく説明すると、前記駆動部42は、少なくとも間欠発振器42を含み、前記制御手段41は、間欠発信器42により高周波の超音波(例えば、1MHz)を間欠的に発生させるとともに、当該間欠部分は低周波の間隔、例えば、10Hz(0.1秒とか、0.2とか、0.3秒とか)であるような駆動信号Sを一つの音波素子体11に与えるように制御する。
【0032】
ここで、本実施例では音波素子体11自体が共振周波数(固有振動数)を持っており、本実施例で使用している音波素子体11(超音波振動子)では、その値が1MHzとなっている。
【0033】
上述した各周波数(すなわち、高周波の超音波と、低周波の間隔)の数値は、必ずしも臨界的意義(最適な数値)を有するものではないが、前記低周波の間隔、例えば上述したように「10Hz」であり、一方、前記高周波の超音波は、例えば上述したように「1MHz(低周波の一万倍)」である。発明の課題を考慮すると、高周波の超音波は低周波の間隔に対して各段に高い超音波であることが望ましい。なお、実施形態では、一つの音波素子体11に対して、高周波の超音波(例えば、1MHz)を略正弦波形状にして低周波の間隔(例えば、10Hz(0.1秒)で間欠的に発生させるものであるが、低周波の間隔は10Hz(0.1秒)の例に限らず、例えば「0.3秒」、「0.4秒」、「0.5秒」、「0.6秒」、「0.7秒」等の略1秒範囲内の周期で繰り返し可変させるようにしても良い。
【0034】
また、発明の目的を逸脱しない範囲に於いて、高周波の超音波を低周波の間隔で間欠的に発生させる場合に、前記高周波と前記低周波の数値の組み合せは上述した実施例の数値に限らず、その他の数値でよく、実験を行って最適な複数の組み合せにしても、同様の効果を得ることができる。さらに、実施態様如何によっては複数個の音波素子体11を設けることも可能である。
【0035】
最後に
図8は、音波美容器Xの使用態様の一例を示す説明図である。使用時、音波美容器Xの先端部に設けた皮膚用クレンジング具Yに例えば「コットン50(発明の特定要件ではない)」を適宜に装着して、カバー状振動媒体31の中央部(中央部寄りの部位も含む)を顔や頭に宛がって使用する。駆動部(発振器)42からの駆動信号a、b(交番する交流電圧)が低周波信号Lの場合には「トン・トン・トン」と軽く叩くような感じとなり、一方、超音波としての高周波信号Hの場合には、「ドン・ドン・ドン」と速くかつ強く叩き付けるような感じとなり、「クレンジング効果(振動圧力)」を十分に発揮することができる。
【実施例】
【0036】
実施形態では、皮膚用クレンジング具Y及び音波美容器Xは、適宜箇所に温度センサを備えていないが、該温度センサを構成要件とすることもできる。温度センサを加味する実施形態の場合には、図示しない温度センサを、例えば皮膚用クレンジング具Yのカバー状振動媒体31の内壁面又は外壁面に固定的に配設し、一方、制御手段41の記憶部43に温度閾値(例えば40度)を設定し、前記カバー状振動媒体31の温度が前記温度閾値を超える場合に音波美容器Xの駆動が自動的に停止するように構成しても良い。もちろん、カバー状振動媒体31の温度が、例えば40度を超えないように設計するのが好ましい。
次に、
図9及び
図10は本発明の第2実施形態を示す各説明図である。なお、この第2実施形態の説明に当って、第1実施形態と同一の部分には同一又は同様の符号を付して重複する説明を割愛する。
【0037】
図9は第2実施形態の皮膚用クレンジング具Y1の説明図、
図10は皮膚用クレンジング具Y1のカバー状振動媒体31Aの斜視図である。この第2実施形態のカバー状振動媒体31Aと第1実施形態のカバー状振動媒体31の表面の形態を比較すると明らかなように、第1実施形態のカバー状振動媒体31の表面の半径の曲率が、例えばドーム形状の如く緩やかであり、やや弧状であるのに対して、第2実施形態のカバー状振動媒体31Aのそれは第1実施形態より大きく、例えば半球面の如く形成されている。この場合、発明の目的を逸脱しない範囲に於いて、カバー状振動媒体31Aの頂点付近をやや平面にし、いわゆる「略球台形状」にしても良い。なお、カバー状振動媒体31Aの表面を半球面の如く形成した場合、当然のことながら、金属製の音波照射台座21Aの凹所25の半径の大きさも、好ましくは、焦点Pが充填部分の表面又は充填部分内の表面付近のいずれかに位置するように変更する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、人体の顔や頭の皮膚の汚れを叩き落とす
美容における皮膚用クレンジング具及び音波美容器として用いられる。
【符号の説明】
【0039】
X…音波美容器、
Y、Y1…皮膚用クレンジング具、
P…焦点、
S…駆動信号、
3…筺体、
5、6…操作部、
11…音波素子体、
21、21A…音波照射台座、
25…凹所、
31…カバー状振動媒体、
32…充填部分、
41…制御手段、
42…駆動部(少なくとも間欠発信器を含む)、
43…タイマ、
44…記憶部、
45…内部電源(例えば二次電池)。