特許第6619980号(P6619980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619980
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】水栓の吐水量調節装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/44 20060101AFI20191202BHJP
   E03C 1/044 20060101ALI20191202BHJP
   F16K 35/04 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   F16K31/44 B
   E03C1/044
   F16K35/04
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-194032(P2015-194032)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-67183(P2017-67183A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】国枝 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 喜好
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 純也
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−028017(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3067026(JP,U)
【文献】 特開2009−133096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/44
E03C 1/044
F16K 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水流量を調節するための吐水量調節弁と、その吐水量調節弁を調節動作させるために手動により回転操作される吐水量調節ハンドルとを備えた水栓において、
前記吐水量調節弁は、アウタケースと、そのアウタケース内に回転可能に収容され、端部に前記吐水量調節ハンドルを有するスピンドルとを備え、前記アウタケース及びスピンドルには互いに対向する開口をそれぞれ設けて、前記スピンドルの回転にともなう前記両開口間の通水面積の変化によって吐水量が調節されるように構成し、前記アウタケースとスピンドルとの間には前記スピンドルの回転にともなってクリックを発生するクリック機構を設け、そのクリック機構は、前記アウタケース及び前記スピンドルの一方に一体形成した突起と、他方に設けた窪みとにより構成し
前記クリック機構は、前記アウタケースの内周面に形成した環状突部の側面と、前記スピンドルの外周に一体回転可能に支持されたカラーの側面とに設けられ、
前記カラーは、前記スピンドルの軸線方向に移動可能であって、前記カラーを前記環状突部に向かって付勢するためのスプリングを設け、
前記カラーは、前記アウタケースの内周に位置することを特徴とする水栓の吐水量調節装置。
【請求項2】
前記突起及び窪みをそれぞれ複数設け、それらを等角度間隔に配置した請求項に記載の水栓の吐水量調節装置。
【請求項3】
前記突起の数を窪みの数より少なくした請求項に記載の水栓の吐水量調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水混合水栓等の水栓の吐水量調節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には開閉弁が開示されている。この開閉弁は、水栓に内装され、水栓内の流路を切り換えるためのものである。この特許文献1の開閉弁においては、ハウジングにV型ばねが設けられ、スピンドルにはV型空隙が設けられ、スピンドルが閉塞方向等に回転されたときに、V型ばねとV型空隙との係合によりスピンドルの回転に節度感が与えられるとしている。
【0003】
特許文献2には、弁ユニットが開示されている。この弁ユニットは、水栓に内装され、水の吐水・止水及び流量調節を行なうためのものである。そして、弁ユニットの内部には、板ばね部と押圧部とが設けられ、スピンドルの回転により水栓が、止水状態、吐水口からの吐水状態、シャワーエルボからの吐水状態にそれぞれ切換えられたとき、板ばね部と押圧部との作用により、クリック感が発生される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−360873号公報
【特許文献2】特開2015−10636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2の技術は、いずれも、流路が切換えられるときに、使用者に対して節度感あるいはクリック感が発生されるものであるが、節度感やクリック感が発生されなくても、使用者は、カランやシャワーの吐水、止水状態を見れば、その現状を確認できる。従って、特許文献1及び特許文献2の技術は、有用性に乏しい。しかも、使用者は、節度感やクリック感を受けたとしても、吐水量のレベル,言い換えれば水栓の開放度合いを明確に認識することは困難である。
【0006】
本発明の目的は、使用者が水栓の開放度合いを明確に認識できて、吐水量のレベルを簡単に知ることができる水栓の吐水量調節装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、吐水流量を調節するための吐水量調節弁と、その吐水量調節弁を調節動作させるために手動により回転操作される吐水量調節ハンドルとを備えた水栓において、前記吐水量調節弁は、アウタケースと、そのアウタケース内に回転可能に収容され、端部に前記吐水量調節ハンドルを有するスピンドルとを備え、前記アウタケース及びスピンドルには互いに対向する開口をそれぞれ設けて、前記スピンドルの回転にともなう前記両開口間の通水面積の変化によって吐水量が調節されるように構成し、アウタケースとスピンドルとの間には前記スピンドルの回転にともなってクリックを発生するクリック機構を設け、そのクリック機構は、前記アウタケース及び前記スピンドルの一方に一体形成した突起と、他方に設けた窪みとにより構成したことを特徴とする。なお、ここで、吐水量とは、積算吐水量ではなく、瞬間吐水量を指す。
【0008】
以上の構成においては、吐水量調節ハンドルが回転操作されると、所定角度ごとにクリックが発生されるため、そのクリック数が吐水量を認識するための目安となる。従って、使用者は吐水量を適切かつ容易に調節できる。また、使用者は、クリック数を記憶しておけば、簡単に任意の量の吐水状態にすることができる。しかも、突起がアウタケース及びスピンドルの一方に一体形成され、窪みが他方に形成されるため、使用者に対して遊びやガタ付きのないクリックがダイレクトに伝えられて、使用者に対して高級感を与えることができる。また、クリック機構は、突起と窪みとを設けただけであるから構成が簡単である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吐水量のレベルを容易に知ることができ、使いやすい水栓を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】水栓の斜視図。
図2】水栓の吐水量調節ハンドルの部分を示す一部断面図。
図3】水栓の吐水量調節弁の部分を示す一部断面図。
図4】水栓の吐水量調節弁を示す斜視図。
図5】水栓の吐水量調節弁を示す分解斜視図。
図6】水栓の吐水量調節弁を示す断面図。
図7】クリック機構を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
本実施形態は、水,湯及び水と湯との混合水を吐水できるようにした湯水混合水栓(以下、単に水栓という)に具体化したものである。
【0012】
図1及び図2に示すように、カバー11により覆われた水栓本体12の後部の給水口及び給湯口(ともに図示しない)には、給水側ジョイント14及び給湯側ジョイント15が接続され、それらの両ジョイント14,15は給水源から延びる給水管(ともに図示しない)及び給湯源から延びる給湯管(ともに図示しない)に連結される。
【0013】
水栓本体12の後部のシャワー吐出口(図示しない)には、先端にシャワーヘッド(図示しない)を有するシャワーホース(図示しない)が接続されている。水栓本体12の下面のカラン吐出口には、カラン吐水管19が接続されている。
【0014】
図1及び図2に示すように、水栓本体12の右端には、吐水量調節ハンドル20が設けられ、水栓本体12の左端には温度調節ハンドル21が設けられている。水栓本体12の内部には、同じ構造のシャワー側開閉弁24及びカラン側開閉弁(図示しない)が内装されている。このシャワー側開閉弁24及びカラン側開閉弁と対向するように、前記カバー11の前面には、シャワー側押しボタン22及びカラン側押しボタン23が配置されている。シャワー側押しボタン22に対する操作により、このシャワー側開閉弁24が切換えられてシャワーヘッドからのシャワー吐水及び止水が行なわれる。カラン側押しボタン23に対する操作より、カラン側開閉弁が切換えられて、カラン吐水管19からの吐水が行なわれる。これらの吐水の場合、前記吐水量調節ハンドル20の手動による回転操作により、吐水量が調節される。また、温度調節ハンドル21の手動による回転操作により、吐水の温度が調節される。
【0015】
図3に示すように、前記水栓本体12の内部には、前記温度調節ハンドル21によって操作される温度調節弁(図示しない)と、前記シャワー側開閉弁24及びカラン側開閉弁との間に位置する流路31が形成されている。この流路31内には、前記吐水量調節ハンドル20の操作によって吐水流量の調節動作が行なわれる吐水量調節弁32が設けられている。そこで、以下に、この吐水量調節弁32の構成を説明する。
【0016】
図3図6に示すように、前記流路31の内周面には、両端を開放した筒状のアウタケース41が固定され、その外周2箇所にはパッキン42が設けられている。両パッキン42間において、アウタケース41には開口としての通水口43が透設されている。
【0017】
アウタケース41内にはスピンドル45が自身の軸線を中心に回転可能に挿入され、その一端の取付部46に前記吐水量調節ハンドル20が取付けられている。従って、吐水量調節ハンドル20の手動操作によってスピンドル45が自身の軸線を中心に回転される。スピンドル45の取付部46側には、アウタケース41の端面に当接してスピンドル45の軸方向移動を規制する止め輪47が取付けられている。スピンドル45の端部には筒状部48が形成され、その外周の2箇所にはアウタケース41の内周面に係合する一対のパッキン50が巻着されている。この筒状部48には、両パッキン50間に位置する開口としての三角形状の調節口49が透設されており、この調節口49は、前記通水口43と対向し、スピンドル45の回転によって前記通水口43の内側を移動する。この移動によって、調節口49の三角形状に従い、通水口43と調節口49とで構成される通水面積が変化されて、つまり、前記両開口間の通水面積が変化されて、吐水水量が調節される。
【0018】
そして、流路31内の水がスピンドル45の通水口43及び調節口49から前記筒状部48端面開口を通って前記開閉弁24等側へ流れる。
アウタケース41の内周面の環状突部51及びスピンドル45の外周面には、それぞれ段部52,53が形成され、これらの段部52,53は、スピンドル45の回転にともなう2位置において互いに当接して、スピンドル45の回転範囲を所定角度(本実施形態では90度)に規制する。
【0019】
図5及び図7に示すように、スピンドル45の外周面には、環状域の複数箇所に平面541を有する断面ほぼ六角形の回り止め部54が形成されている。前記環状突部51より吐水量調節ハンドル20側において、前記回り止め部54には、内周面をほぼ六角形にしたカラー55が軸方向に移動可能に外嵌され、スピンドル45と一体回転されるようになっている。図6に示すように、カラー55は、スプリング56によって環状突部51側に押されている。
【0020】
前記環状突部51の吐水量調節ハンドル20側の複数個所(本実施形態では4箇所)には、突起57が等角度間隔をおいて形成されている。前記カラー55の両側面には、複数の窪み58が等角度(本実施形態では10度)間隔をおいて形成されている。そして、前記スプリング56により、カラー55が環状突部51側に押された状態で、吐水量調節ハンドル20が回転操作されると、窪み58が突起57上を移動して、使用者に対して音と振動とによるクリック感が与えられる。本実施形態においては、突起57と窪み58とによってクリック機構が構成されている。
【0021】
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態の水栓においては、シャワー側押しボタン22の押し込み操作によりシャワー吐水が実行され、カラン側押しボタン23の操作によりカラン吐水が実行される。
【0022】
このとき、吐水量調節ハンドル20の操作により、シャワー吐水及びカラン吐水の量が調節される。
そして、吐水量調節ハンドル20の回転に際しては、突起57と窪み58との作用により、吐水量調節ハンドル20の回転角度10度ごとに、使用者に対して音と振動とによるクリック感が与えられ、このクリックの数に従って吐水量を容易に調節できる。従って、使用者は、クリックの数を覚えておけば、任意の量の吐水を適切に行なうことができる。
【0023】
本実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)吐水量の調節のために、吐水量調節ハンドル20を回転操作すると、その回転操作にともなって、所定角度ごとにクリックが発生されるため、そのクリック数が吐水量を認識するための目安となる。従って、使用者は吐水量を適切かつ容易に調節できる。
【0024】
(2)使用者は、クリック数を記憶しておけば、簡単に任意の量の吐水を得ることができ、従って、クリック数に従って、好みのカラン水量やシャワー水量を簡単に得ることができる。
【0025】
(3)突起57がアウタケース41に一体形成され、各窪み58がスピンドル45の外周においてスピンドル45と一体に回転されるカラー55に形成されているため、使用者に対して遊びやガタ付きのないクリックがダイレクトに伝えられ、高級感を与えることができる。
【0026】
(4)クリック感を発生させるために、カラー55とスプリング56とを設けただけであるから、構成が簡単である。
(5)突起57が窪み58間の高いところを乗り越える場合、カラー55が軸方向に移動して後退するため、突起57の頂部や窪み58の周縁の摩耗を抑えることができる。そして、この場合、複数の突起57が等間隔に配置されているため、カラー55の後退及びスプリング56のばね力による復帰において、カラー55がスピンドル45の軸線に対して傾斜することなく、円滑に移動される。
【0027】
(6)突起57の数が窪み58の数より少なくなっているため、吐水量調節ハンドル20の回転操作において、突起57と窪み58との間の抵抗を小さくできて、吐水量調節ハンドル20を軽い力で回転操作できる。これに対し、突起57の数が多い場合、例えば、突起57と窪み58とが同数の場合は、吐水量調節ハンドル20の回転時において突起57と窪み58との間の抵抗が大きくなって、吐水量調節ハンドル20の回転操作に強い力が必要となる。
【0028】
(7)窪み58がカラー55の両側面に形成されているため、カラー55の表裏に関係なくカラー55をアウタケース41内に組込むことができる。つまり、カラー55の組付けにおいて方向性を考慮する必要がなく、カラー55の組付けが容易になる。
【0029】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化することも可能である。
・前記実施形態において、クリック機構は、アウタケース41とスピンドル45との間に設けられたが、他の部分、例えば、吐水量調節ハンドル20とカバー11との間に設けること。
【0030】
・クリック機構の凹凸関係を逆にすること。すなわち、アウタケース41側に窪み58を、カラー55に突起57を設けること。
・吐水量調節ハンドル20の回転操作にともなうクリック感の発生が、不等間隔になるようにすること。例えば、吐水量が少ない領域や多い領域における間隔を狭くすれば、同領域における微調節が可能になる。
【符号の説明】
【0031】
11…水栓本体、20…吐水量調節ハンドル、31…流路、32…吐水量調節弁、41…アウタケース、45…スピンドル、51…環状突部、55…カラー、56…スプリング、57…突起、58…窪み。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7