特許第6619983号(P6619983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6619983Head−to−Head架橋を用いるmRNAディスプレイ法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619983
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】Head−to−Head架橋を用いるmRNAディスプレイ法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20191202BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20191202BHJP
【FI】
   C12N15/11 ZZNA
   C12Q1/6806 Z
【請求項の数】6
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-202867(P2015-202867)
(22)【出願日】2015年10月14日
(65)【公開番号】特開2017-73999(P2017-73999A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】517377525
【氏名又は名称】メスキュージェナシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002332
【氏名又は名称】特許業務法人綾船国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100134153
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 富士子
(74)【代理人】
【識別番号】100112760
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 五雄
(74)【代理人】
【識別番号】100200344
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 昌己
(72)【発明者】
【氏名】西垣 功一
(72)【発明者】
【氏名】本江 彩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美穂
(72)【発明者】
【氏名】北村 幸一郎
【審査官】 清野 千秋
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0082768(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/161227(WO,A1)
【文献】 特開2007−029061(JP,A)
【文献】 日本分子生物学会年会プログラム・要旨集,2014年,第37回,1P-0926
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/11
C12Q 1/6806
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的ドメイン結合部位及び蛍光標識を含むリンカーを作製するリンカー作製工程と;
少なくとも、標的ドメイン、可変領域、及び終止コドンの塩基配列を含むDNAコンストラクトを作製する、DNAコンストラクト作製工程と;
前記DNAコンストラクトから転写によって対応するmRNAを調製する、転写工程と;
前記mRNAの5’末端を酵素処理して、前記リンカーの3’末端と結合させるmRNA−リンカー連結工程と;
前記mRNA−リンカー連結体に含まれる前記mRNAに1個のリボソームが結合して翻訳により前記標的ドメインを生成する翻訳工程と;
前記翻訳された標的ドメインが、前記リンカーの前記標的ドメイン結合部位に結合し、mRNA−リンカー−タンパク質連結体を形成するとともに、前記リボソームが前記終止コドンを認識して前記mRNA−リンカー−タンパク質連結体から自動的に遊離するリボソーム遊離工程と;
を備える、リボソームの代謝回転が可能なmRNAディスプレイ法。
【請求項2】
前記DNAコンストラクト作製工程で使用する所望のドメインは、O-メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ(MGMT)及びMGMTの機能性変異体タンパク質からなる群から選ばれるいずれかのものであることを特徴とする、請求項1に記載のリボソームの代謝回転が可能なmRNAディスプレイ法。
【請求項3】
前記DNAコンストラクトは、前記塩基配列の下流側に、所望の長さのスペーサー、所望の長さのαへリックス構造を有するαスタンドペプチド、及び精製用タグを含み、さらに可変ペプチド配列又は可変タンパク質のいずれか一方を含むことを特徴とする、請求項2に記載のリボソームの代謝回転が可能なmRNAディスプレイ法。
【請求項4】
前記スペーサーの長さは3〜5アミノ酸長であり、前記αスタンドペプチドの長さは17〜21アミノ酸長であることを特徴とする、請求項3に記載のリボソームの代謝回転が可能なmRNAディスプレイ法。
【請求項5】
前記精製用タグが、Hisタグ、FLAGタグ及びビオチン様ペプチドからなる群から選ばれるいずれかのものであることを特徴とする、請求項3又は4に記載のリボソームの代謝回転が可能なmRNAディスプレイ法。
【請求項6】
mRNAの5’三リン酸とリンカーを、mRNAの5’末端から三リン酸を除去する三リン酸除去酵素、三リン酸が除去されたmRNAの5’末端にリン酸を付加するキナーゼ、及びリンカーとmRNAの5’三リン酸状態の末端とを直接連結するT4 RNAリガーゼにより連結するか、または直接T4 RNAリガーゼで連結することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のリボソームの代謝回転が可能なmRNAディスプレイ法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子型−表現型対応付け技術である、mRNAディスプレイ法のうち、mRNAの3’末端とタンパク質のC末端との結合(tail-to-tail)を利用しない新規なmRNAディスプレイ法に関する。より詳細には、脱メチル化酵素とその基質とが共有結合する性質を利用したリボソームを代謝回転させることが可能なHead-to-Head架橋を用いるmRNAディスプレイ法に関する。
【背景技術】
【0002】
進化工学では、ランダムな配列を有する膨大な数のペプチド又はタンパク質のライブラリの中から、特定の分子に特異的に結合するペプチド等を選択するため、種々の技術が用いられる。こうした技術の中でも、「遺伝子型−表現型対応付け技術」の一種であるディスプレイ技術は重要である。
【0003】
タンパク質、ペプチドを用いる創薬のために用いられているディスプレイ技術としては、例えば、in vivoのディスプレイ技術としての細胞ディスプレイ及びファージディスプレイ、in vitroのディスプレイ技術としてのリボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ及びcDNAディスプレイ等を挙げることができる(非特許文献1参照)。そして、それらのディスプレイ技術で扱えるライブラリーサイズは、図1に示すようにin vivoのディスプレイ技術で107、in vitroのディスプレイ技術で1012とされている。
【0004】
こうしたディスプレイ技術は、「機能のあるペプチド分子を選択するために、ペプチド分子に対応する配列情報(DNA、RNA)をこれらの分子に連結させ、スクリーニングされた分子を機能によって選別し、それらの配列情報部分をPCRによって増幅した後、シーケンシングによって読み取る」という技術と定義づけられる。
【0005】
そして、上述したmRNAディスプレイ法及びcDNAディスプレイ法では、リンカー(分子間連結のための分子)が使用される。ここで使用するリンカーは、遺伝子をコードするmRNAと連結するmRNA連結部位と、このmRNAから合成されたタンパク質を連結するタンパク質連結部位とを有しており、タンパク質連結部位として、ピューロマイシン(Puromycin)等のアミノアシルtRNAアナログが用いられている。
【0006】
そして、上記のmRNAディスプレイ法は、mRNAを用いて、一般的に、以下のような工程で進められる。まず、DNAライブラリを作製し、このDNAライブラリからmRNAへの転写と、そのリンカーへの連結とを行う。ここでは、リンカーの5’末端と、mRNAの3’末端(mRNAのtail)とが連結される。次に、リンカーに連結されたmRNAを翻訳してタンパク質(ペプチド)を生成し、生成されたタンパク質をリンカーに連結させる(特許文献1及び2参照、以下、順に、それぞれを「従来技術1」及び「従来技術2」という)。この場合、リンカーを介してタンパク質のC末端のtailとmRNAのtailとが結合されるため、以下、従来技術1又は2の結合を、tail-to-tail結合という。
【0007】
ここで、リンカーに結合したmRNA上には幾つものリボソームが結合しており、リボソームは、mRNAを順次読み取りながらタンパク質やペプチドを合成してゆく。そして、あるタンパク質やペプチドの全長が合成されると、そのタンパク質やペプチドはリンカーのタンパク質連結部位にディスプレイされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2006/072773
【特許文献2】特許第4318721号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Patrick Amstutz, Patrik Forrer, Christian Zahnd and Andreas Plueckthun, Current Opinion in Biotechnology 2001, 12:400-405
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術1は、目的のタンパク質をディスプレイしたmRNA−リンカー−ペプチド連結体を得ることができるという点では、優れた技術である。従来技術1で使用するmRNAは、タンパク質合成が完了した時点でそのC末端をリンカーの端にあるピューロマイシンと連結させるための時間を稼ぐために、合成終了後のリボソームがmRNAから解離しないように終止コドンを除いている。このため、リボソームは自然に解離することなく、いつまでもmRNAと結合し続け、後続のリボソームが、丁度駅で立ち往生した電車の後ろに後続の電車が連なるようなポリソーム状態が出現する(図2参照)。
このため、mRNAに結合しているリボソームについては、最終的には、強制的に解離させる必要があり、この翻訳反応としては、リボソームを高濃度で使用しなければならないという問題があった。
【0011】
そして、タンパク質を合成途中のリボソームはmRNA上に滞留して、代謝回転して再利用することができない。このため、高価なリボソームを十分に活用できないという問題点があり、リボソームの再利用については強い社会的・経済的な要請があった。
【0012】
またインビトロ合成系では、ウサギ網状赤血球及び小麦胚芽の抽出物を用いるが、これらの中にはRNaseが含まれているため、mRNAが分解されて収率が低下するという問題があった。こうした問題を解決するために、Pure System(ジーンフロンティア(株)製)が開発された。Pure Systemはヌクレアーゼを含んでいないため、使用するヌクレオチド鎖が分解されないが、高価である。このPure systemを使用して、収率を維持するためには、代謝回転系とすることが必要である。
【0013】
ところで、mRNAディスプレイ法では、1012という大きなサイズのライブラリを扱うことができる。アフィニティの高い分子を取得するためには、通常のmRNAディスプレイ法だけで、最終的に数種の分子にまで絞り込むことができる。これによって目的が達成される一方、機能(一般的には、酵素阻害や、レセプターのアゴニスト等のようなアフィニティ以外の様々な機能)で淘汰を行なうためには、個々の候補分子の機能アッセイが必要となる。
【0014】
ペプチドやタンパク質の機能は一分子では検出されないため、増幅する必要がある。この場合、従来の終止コドンを有さないタイプのmRNAディスプレイ法用のコンストラクトでは検出可能となるような量のタンパク質やペプチドの増幅を行なうことができず、本発明の終止コドンを有するコンストラクトを用いて初めてこのような増幅が可能となる。さらに、近年開発された新型マイクロアレイMMVを応用すれば、103〜106種の異なるペプチドやタンパク質の機能を並行的にアッセイすることができる。このためにも、mRNAには終止コドンが導入され、リボソームが代謝回転する必要がある(図2(A)及び図2(B)参照)。
【0015】
このため、リンカーをmRNAの3’末端側につけるのではなく、逆に5’末端側に連結させる必要があった。一方、タンパク質の方もC末端側ではなく、N末端側で連結する必要がある。すなわち、Head-to-Headの連結が必要とされる。ピューロマイシンを使用したリンカーを使用した方式とは全く異なる方式で、リボソームの再利用が可能なディスプレイ法に対する強い社会的要請があった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願発明は、以上のような状況の下で完成されたものである。
すなわち、本願発明のある実施態様は、標的ドメイン結合部位及び蛍光標識を含むリンカーを作製するリンカー作製工程と;少なくとも、標的ドメイン、可変領域、終止コドンの塩基配列を含むDNAコンストラクトを作製する、DNAコンストラクト作製工程と;前記DNAコンストラクトから転写によって対応するmRNAを調製する、転写工程と;前記mRNAの5’末端を酵素処理して、前記リンカーの3’末端と結合させるmRNA−リンカー連結工程と;前記mRNA−リンカー連結体に含まれる前記mRNAに1個のリボソームが結合して翻訳により前記標的ドメインを生成する翻訳工程と;前記翻訳された標的ドメインが、前記リンカーの前記標的ドメイン結合部位に結合し、mRNA−リンカー−タンパク質連結体を形成するとともに、前記リボソームが前記終止コドンを認識して前記mRNA−リンカー−タンパク質連結体から自動的に遊離するリボソーム遊離工程と;を備える、リボソームの代謝回転が可能なmRNAディスプレイ法である。
【0017】
ここで、前記DNAコンストラクト作製工程で使用する所望のドメインは、O-メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ(MGMT)及びMGMTの機能性変異体タンパク質からなる群から選ばれるいずれかのものであることが好ましい。これらの中でも、O-メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼであることが、さらに好ましい。
【0018】
また、前記DNAコンストラクトは、前記塩基配列の下流側に、所望の長さのスペーサー、所望の長さのαへリックス構造を有するαスタンドペプチド、及び精製用タグを含み、さらに可変ペプチド配列又は可変タンパク質のいずれか一方を含むことが好ましい。前記スペーサーの長さは3〜5アミノ酸長であり、前記αスタンドペプチドの長さは17〜21アミノ酸長であることが好ましく、前記精製用タグが、Hisタグ、FLAGタグ及びビオチン様ペプチドからなる群から選ばれるいずれかのものであることが好ましい。
【0019】
前記酵素処理に使用する酵素は、mRNAの5’末端から三リン酸を除去する三リン酸除去酵素、および三リン酸が除去されたmRNAの5’末端にリン酸を付加するキナーゼであることが好ましく、前記三リン酸除去酵素がアンタークティックホスファターゼであり、前記キナーゼがポリヌクレオチドキナーゼであることがさらに好ましい。より好ましくは、前記ポリヌクレオチドキナーゼは、T4ポリヌクレオチドキナーゼである。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、標的ドメイン結合部位及び蛍光標識を含むリンカーを作製するリンカー作製工程と;少なくとも、可変ペプチド配列又は可変タンパク質配列のいずれか一方、及び終止コドンに先行して標的ドメインの塩基配列を含む目的DNAコンストラクトを作製する、目的DNAコンストラクト作製工程と;前記目的DNAコンストラクトから転写によって対応するmRNAを調製する、転写工程と;前記mRNAの5’末端を酵素処理して、前記リンカーの3’末端と結合させるmRNA−リンカー連結工程と;前記mRNA−リンカー連結体に含まれる前記mRNAに1個のリボソームが結合して翻訳により前記標的ドメインを生成する翻訳工程と;前記翻訳された標的ドメインが、前記リンカーの前記標的ドメイン結合部位に結合してmRNA−リンカー−タンパク質連結体を形成するとともに、前記リボソームが前記終止コドンを認識して前記mRNA−リンカー−タンパク質連結体から自動的に遊離するリボソーム遊離工程と;前記mRNA−リンカー−タンパク質連結体中の前記mRNAを逆転写して、cDNAを合成する逆転写工程と;を備える、リボソームの代謝回転が可能なmRNAディスプレイ法である。
【0021】
前記mRNA−リンカー−タンパク質連結体を固相に結合させる固相結合工程をさらに備える物であることが好ましい。また、前記逆転写工程で得られた(mRNA+cDNA)−リンカー−タンパク質連結体を精製する精製工程をさらに備えるものであることが好ましい。
【0022】
前記コンストラクト作製工程で使用する所望のドメインは、O-メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ(MGMT)及びMGMTの機能性変異体タンパク質からなる群から選ばれるいずれかのものであることが好ましく、これらの中でもO-メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼであることがさらに好ましい。
【0023】
また、前記コンストラクトは、前記塩基配列の下流側に所望の長さのスペーサー、所望の長さのαへリックス構造を有するαスタンドペプチド、及び精製用タグを含み、可変ペプチド配列又はタンパク質配列のいずれかの配列をさらに含むことが好ましい。さらに、前記スペーサーの長さは3〜5アミノ酸長であり、前記αスタンドペプチドの長さは17〜21アミノ酸長であることが好ましい。
【0024】
前記精製用タグは、Hisタグ、FLAGタグ、及びビオチン様ペプチドからなる群から選ばれるいずれかのものであることが好ましい。また、前記酵素処理工程で使用する酵素は、mRNAの5’末端から三リン酸を除去する三リン酸除去酵素、三リン酸が除去されたmRNAの5’末端にリン酸を付加するキナーゼ、及びリンカーとmRNAの5’三リン酸状態の末端とを直接連結するT4 RNAリガーゼなどの酵素の組合せであることが好ましい。また、前記三リン酸除去酵素がアンタークティックホスファターゼであり、前記キナーゼがポリヌクレオチドキナーゼであることが好ましい。
【0025】
前記酵素処理工程で用いる、三リン酸除去酵素及びキナーゼという2つの酵素を用いることなく、前記リンカーと5’三リン酸状態のmRNAとを直接的にT4 RNAリガーゼで連結することもできる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、mRNAの5’末端と新生タンパク質のアミノ末端側領域を連結するリンカーを創生することにより、ピューロマイシンを使用した方式とは全く異なる方式で、リボソームの代謝回転利用に対する強い潜在的要請を満たすことができるmRNAディスプレイ法が提供される。
そして、所望の配列のmRNAの5’末端に結合させたリンカーに、このmRNAと対応付けしたいタンパク質の配列を含めておくことにより、前記所望の配列(mRNA)と翻訳された前記対応付けしたいタンパク質とを共有結合させ、情報と機能とを対応付けることが可能となる。
【0027】
さらに、mRNAの3’末端にプライマーが張り付く領域が含まれているため、逆転写によってcDNAを得ることができ、cDNAディスプレイ法としても応用することができる。
【0028】
本発明によれば、リボソームの代謝回転が可能なHead-to-Head結合したmRNAディスプレイ法及びcDNAディスプレイ法が提供される。これらの方法では、合成に使用したリボソームを代謝回転利用することができるため、従来法(Tail-to-Tail)に比べて、試薬の使用量は1桁近く減少する。同時に、このままのコンストラクトでタンパク質の試験管内翻訳(in vitro translation)を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、in vitro selectionのための種々のディスプレイ方法と、それぞれの方法で取り扱うことができるライブラリーサイズとを示した図である。
図2図2は、従来のディスプレイ法の1例(A)及び本発明のディスプレイ法(B)を模式的に示す図である。
図3図3は、本発明で使用するリンカーを表す図である。図3(A)はリンカーを表す模式図、図3(B)に上記リンカーの具体的な構造を示す。
【0030】
図4図4は、MGMTコード配列を含むDNAコンストラクトの作製例を示す模式図である。図4(A)はコンストラクト1、同(B)はコンストラクト2の模式図をそれぞれ示す。
図5図5は、脱メチル化の成否とPCR増幅を示す図である。
図6図6は、本発明のリンカーを用いた場合のリボソームの代謝回転及びリボソームが合成するタンパク質領域を示す模式図である。(A)はリボソームの代謝回転を、(B)は翻訳タンパク質の全体構造をそれぞれ示す。
【0031】
図7図7は、Head-to-head結合を行なう方法を示す模式図である。
図8図8は、αヘリックス構造のペプチドを設計する基としたミオグロビンの構造を示す模式図である。
【0032】
図9図9は、αへリックス構造を有するスペーサー(以下、「αスタンドスペーサー」という。)を所望のペプチドアプタマーに結合させる様式を示す模式図(1)である。
図10図10は、αスタンドスペーサーを所望のペプチドアプタマーに結合させる様式を示す模式図(2)である。
【0033】
図11図11は、MGMTの配列をPCRによって増幅した結果を示すゲル電気泳動像である。
【0034】
図12図12は、MGMTの上流にT7プロモーター領域の配列をオーバーラップPCRによってつないだT7プロモーター- MGMTのDNA断片を増幅させた結果を示すゲル電気泳動像である。
図13図13は、ランダム領域の上流にMGMTの下流の一部とHisタグ配列を付加するプライマーを用いてPCRを行なった結果を示すゲル電気泳動像である。
図14図14は、T7プロモーター-MGMT配列と、Hisタグ-ランダム領域配列とを、オーバーラップPCRを用いてつないで得られたフルコンストラクトDNAのゲル電気泳動像である。
【0035】
図15図15は、図14で得られたフルコンストラクトDNAを精製した結果を示すゲル電気泳動像である。
【0036】
図16図16は、図15で得られたフルコンストラクトDNAをPCRで増幅させ、鎖長を確認した結果を示すゲル電気泳動像である。
図17図17は、図16で得られたフルコンストラクトDNAを転写して得られたmRNAのゲル電気泳動像である。
【0037】
図18図18は、mRNAの5’末端にリンカーを結合させたときのゲル電気泳動像である。(A)はSyber Green 2で、また、(B)はFITCで、それぞれラベルしたときの検出結果を示すゲル電気泳動像である。
図19図19は、mRNAの脱リン酸化後にリンカーとのライゲーションを行なったときの結果を示すゲル電気泳動像である。(A)FITCによる検出結果を、また、(B)はSYBER Green 2による検出結果をそれぞれ示す。
図20図20は、リンカー同士の結合ではなく、mRNAの5’末端とリンカーの3’末端とで結合が形成されたことを示すゲル電気泳動像である。(A)はmRNAを図19に示すゲル電気泳動から切出した後のゲル電気泳動像、(B)は脱リン酸化後のmRNAのゲル電気泳動像、(C−1)はBGリンカー-mRNAのライゲーション産物のゲル電気泳動像のFITCによる検出結果、(C−2)はBGリンカー-mRNAのライゲーション産物のゲル電気泳動像のSYBER Green 2による検出結果をそれぞれ示す。
【0038】
図21図21は、別のT4 RNAリガーゼ(タカラバイオ(株)製)を用いたときのmRNAの三リン酸の5’末端と、リンカーの3’末端の-OHとの結合の結果を示すゲル電気泳動像である。(A)はFITCによる検出結果を、また、(B)SYBER Green 2による検出結果をそれぞれ示す。
図22図22は、インビトロ翻訳の時間を変化させた場合の各結合体の生成量の変化を示すゲル電気泳動像である。
図23図23は、インビトロ翻訳産物をプロテイナーゼK(以下、「PNK」ということがある。Invitrogen社製)で処理した結果を示すゲル電気泳動像である。
【0039】
図24図24は、インビトロ翻訳産物をRNase Aで処理した結果を示すゲル電気泳動像である。
図25図25は、Hisタグ精製の結果を示すゲル電気泳動像である。
図26図26は、SWISS-MODELによる構造予測に基づくコンストラクトのMGMT-スペーサー(4アミノ酸-αスタンド)-Hisタグ構造を模式的に示す図である。(A)はコンストラクト1、(B)はコンストラクト2の構造をそれぞれ模式的に示す。
図27図27は、スペーサー導入後のHisタグ精製の結果を示すゲル電気泳動像である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、図1〜27を参照しつつ、本発明をさらに詳細に説明する。
図2(B)に示すように、本発明は、リボソームの代謝回転利用が可能なmRNAディスプレイ法であり、(a1)標的ドメイン結合部位及び蛍光標識を含むリンカーを作製するリンカー作製工程と;(a2)少なくとも、可変領域、終止コドン、及び標的ドメインの塩基配列を含むDNAコンストラクトを作製する、DNAコンストラクト作製工程と;(a3)前記DNAコンストラクトから転写によって対応するmRNAを調製する、転写工程と;(a4)前記mRNAの5’末端を酵素処理して、前記リンカーの3’末端と結合させるmRNA−リンカー連結工程と;(a5)前記mRNA−リンカー連結体に含まれる前記mRNAに1個のリボソームが結合して翻訳により前記標的ドメインを生成する翻訳工程と;(a6)前記翻訳された標的ドメインが、前記リンカーの前記標的ドメイン結合部位に結合し、前記リボソームが前記終止コドンを認識してmRNA−リンカー−タンパク質連結体から自動的に遊離するリボソーム遊離工程と;を備えている。
【0041】
次に、上記(a1)前記リンカーに含まれる標的ドメインとしては、特に限定はされないが、例えば、O-メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ(以下、「MGMT」ということがある。)、及びそれらの機能性変異体タンパク質からなる群から選ばれるいずれかのものであることが、これらのドメインが結合する対象ペプチドを、的確に捕捉し、共有結合させることができることから好ましい。
【0042】
ここでいう「機能性変異体タンパク質」とは、あるタンパク質、例えば、MGMT、が突然変異したにもかかわらず、突然変異前に有していた機能を維持しているものを指す。
【0043】
例えば、MGMTを用いる場合を例に挙げて説明する。MGMTは、本来、塩基対のミスマッチを修復する酵素であり、メチル転移活性を有する。例えば、脳腫瘍の中でも悪性のグリオブラストーマの治療剤として知られているテモゾロミド(アルキル化剤)にMGMTが作用すると、この薬剤の効果が低下する。また、基質の1つであるO-メチルグアニンに作用すると、これを脱メチル化してグアニンにする。このような作用をするMGMTを、ペプチド又はタンパク質の探索のためのmRNAディスプレイに使用することができる(図6(A)参照)。
【0044】
一方、O-ベンジルグアニン(以下、「OBG」ということがある。)は、MGMTの阻害剤でありMGMTに強く共有結合する。このためにMGMTとの連結に利用することができる。
【0045】
上記(a1)のリンカーに含まれる前記蛍光標識としては、FITC、Cy3、TAMRA、BODIPY等を挙げることができ、FITCを使用することが検出器のフィルター普及度の点から好ましい。可変領域としては、種々の酵素阻害ペプチド、レセプターのアゴニスト等を挙げることができる。
【0046】
MGMTの配列を含むコンストラクトを作製する場合には、MGMTとその基質アナログであるOBGが共有結合を形成することを利用したリンカーを作製することができる。例えば、mRNAの5’末端にOBGを修飾したリンカーを結合させ、mRNAにMGMTの配列と対応付けしたいタンパク質の配列を入れることにより、翻訳されたMGMTとOBGとが共有結合を形成し、これらの配列が有する情報と、これらの配列で表されるペプチドの機能とを対応付けすることができる。
【0047】
さらに、mRNAの3’末端にプライマーが張り付く領域(プライマーハイブリダイゼーション領域)を入れておくことにより(図4(A)及び(B)参照)、mRNAディスプレイ構造が完成した後に逆転写を行ってcDNAを得ることができるようになる。この状態のディスプレイをcDNAディスプレイと称する。mRNAとタンパク質とは、mRNAの先頭の5’末端とタンパク質の先頭のN末端側とが結合することになるため、以下、Head-to-Head Linking(H2H)型mRNAディスプレイと呼ぶ。
【0048】
具体的なリンカーの塩基配列としては、配列表の配列番号1に示すものを挙げることができる。また、リンカーは、主鎖と側鎖とを有しており、側鎖の先端部には標的ドメインを含むペプチドが結合できるペプチド結合部位を備えるとともに、検出用のFITCが結合されている(図3参照)。
【0049】
次いで、上記(a2)DNAコンストラクト作製工程では、例えば、オーバーラップPCR法を用いて、標的ドメインを含む所望のDNA断片をつなぎ、以下のような配列を有するコンストラクトを作製することができる。標的ドメインは、例えば、O6−メチルグアニン−DNA−メチルトランスフェラーゼ(MGMT)、MGMTの誘導体等の酵素の配列を使用することができる。
【0050】
配列表の配列番号2に記載の塩基配列を有するコンストラクト(以下、「コンストラクト1」という。)を作製する場合を例に挙げて説明する。コンストラクト1は839bpで、図4(A)に模式的に示したように、6つのスペーサー、T7プロモーター、リンカーハイブリダイゼーション領域、RBS(リボソーム結合部位)、MGMTコード配列、His−Tag、可変領域配列、終止コドン及びプライマーハイブリダイゼーション領域を含んでおり、上記プライマーハイブリダイゼーション領域としてはcNewYTagを用いている。
【0051】
本発明のコンストラクトはオーバーラップPCR法を用いて作製する。上記のようにMGMTの塩基配列を含むコンストラクトの場合には、MGMTプライマー1及び2、T7プライマー、ビオチン-cNew Ytagプライマー、逆転写プライマー等のプライマーを用いてオーバーラップPCRを行なう。こうしたプライマーは、例えば、下記の配列番号2〜7に示す塩基配列を有するものとすることができる。
【0052】
(1)PCRによる標的ドメインの増幅
例えば、所望の量のTaqポリメラーゼ、Taq反応バッファー、dNTP混合物及び2種類のプライマー(フォワードプライマー及びリバースプライマー)、テンプレート、スキーム1の反応産物を、及び蒸留水を含むPCRミックスを調製する。こうしたPCRミックスとしては、例えば、後述するような組成の混合液を使用することが、反応効率の面から好ましい。本明細書においては、MGMTの本来の機能である脱メチル化反応を用いるのではなく、単に、基質アナログに共有結合する性質を利用している。このため、スキーム1の反応では、作製したコンストラクトで翻訳まで行ったときに、MGMTが正しく発現されているかどうかを確認している。
【0053】
次いで、上記のPCRミックスを、約95℃で約1.5〜2.5分、その後、約95℃で約15〜25秒、次いで、約66℃で約25〜35秒、約72℃で約25〜35秒インキュベートするというサイクルを25〜35回行い、その後、約72℃で約3〜7分間し、次いで約4℃に冷却して反応を止めるという条件で、サーマルサイクラー中で行なうことができる。
【0054】
(2)オーバーラップPCRによる標的ドメインへのT7領域の付加
所望の量のプライムスター、プライムスター反応バッファー、dNTP混合物及び2種類のプライマー(フォワードプライマー及びリバースプライマー)、テンプレート、標的ドメインのPCR産物及び蒸留水を含む、オーバーラップPCR用溶液を調製する。こうしたオーバーラップPCR用溶液としては、例えば、プライムスター(タカラバイオ(株)製)に添付された説明書に従って調製することが、反応効率の面から好ましい。
【0055】
次いで、この増幅用溶液を、95℃で1.5〜2.5分、95℃で10〜30秒、65℃で3〜7秒、72℃で15〜45秒インキュベートするというサイクルを25〜35回行い、72℃で4〜6分、ついで4℃に冷却し、標的ドメイン−T7領域増幅産物を得る。得られたこの増幅産物を、所望の量、例えば、1μLとって、所望の量の蒸留水と2xSTR(Promega社製)、例えば、7μLの蒸留水及び8μLの2xSTRを混ぜ、95℃で約2〜4分間加熱し、ゲル電気泳動に供する。
【0056】
例えば、ミニゲル(6〜9M尿素を含む3〜5%アクリルアミドゲル)に試料をアプライし、ランニングバッファーとして0.25〜1xTBEバッファーを用いて、150〜250V、60℃にて60〜120分間、という条件で電気泳動を行なうことができる。泳動後、染色試薬を使用して染色しイメージャーで検出することができる。こうした試薬としては、例えば、SYBR Green II Nucleic Acid Gel Stains (以下、「SYBR Green 2」と略すことがある。タカラバイオ(株)製)、エチジウムブロマイド等の染色試薬を挙げることができる。
【0057】
(3)ランダム領域の増幅
所望の量のDNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ反応バッファー、硫酸マグネシウム及び2種類のプライマー(標的ドメイン−タグプライマー(例えば、配列表の配列番号8)及びビオチンタグプライマー(例えば、配列表の配列番号6))、ランダムテンプレート(例えば、配列表の配列番号14)、標的ドメインのPCR産物及び蒸留水を含む、ランダム領域増幅用溶液を調製する。こうした溶液としては、後述する実施例2(1)(1−3)に示すようなランダム領域増幅用バッファーを使用することが、反応効率の面から好ましい。
【0058】
次いで、このランダム領域増幅溶液を、例えば、95℃で1.5〜2.5分、95℃で10〜30秒、65℃で15〜45秒インキュベートするというサイクルを25〜35回行い、その後、75℃で0.5〜2分、72℃で4〜6分、ついで4℃に冷却し、ランダム領域の増幅産物を得ることができる。所望の量のPCR産物、例えば、1μL及び等量の2xSTRを混合し、95℃で2〜4分間加熱し、ゲル電気泳動に供する。
【0059】
次いで、例えば、マイクロゲル(6〜9M尿素を含む6〜10%アクリルアミドゲル)に試料をアプライし、ランニングバッファーとして1xTBEバッファーを用い、100V、55℃で5〜15分間という条件で電気泳動を行なう。ゲル電気泳動終了後に、上記と同様の染色試薬を用いて、一本鎖DNAを染色し、イメージャーで検出する。
【0060】
引き続き、生成されたDNAの濃度を測定するために、例えば、1/10倍容のQuick-Precip(登録商標)Plus Solution (EdgeBio社製;10mMトリス塩酸(pH 7.5〜8.5)、1mMのEDTA、5M NaClを含む)と2.5倍容の99%エタノールとPCR産物とを混合し、所望のg、例えば、13,000rpm(ロータの直径:60mm)で10〜20分間遠心する。得られた白い沈殿を残して上清を捨て、70%エタノールを加えて混合し、再度、同じgで5〜15分間遠心する。上清を捨て、エバポレーターを用いてエタノールを完全に揮発させ、DNAのペレットを得る。得られたDNAのペレットを蒸留水に溶解させ、DNA濃度を測定する。DNA濃度の測定には、例えば、ナノドロップ(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社製)等を使用することができる。
【0061】
(4)ランダム領域のビーズを用いた精製
所望量、例えば、50μL、のストレプトアビジンビーズ(タカラバイオ(株)製)を低吸着チューブ((株)バイオメディカルサイエンス製)に入れ、磁石に付けて上清を捨てる。次いで、所望量、例えば、100μL、の1x結合バッファーを加えて混合する。このチューブを磁石に付けて、上清を捨てる。この操作をさらに2〜3回繰り返す。次いで、所望量、例えば、20μL(約37μg)のランダム領域のPCR産物と、所望量、例えば30μLの蒸留水、所望量、例えば50μLの2x結合バッファーとを混合する。
【0062】
ローテーター(タイテック社製)に入れ、約4℃で回転させて一晩置く。その後、磁石に付けて上清を捨てるという操作を3回繰り返す。この後に、所望量、例えば、50μL、の解離バッファー(10mMのEDTAを含む93〜98% ホルムアルデヒド)を加えて、65〜75℃にて、15分間ローテーター中でインキュベートし、磁石に付けて上清を回収する。再び、所望量、例えば50μLの解離バッファーを加え、65〜75℃にて、10〜20分間ローテーター中でインキュベートし、磁石に付けて上清を回収する。回収した上清から、上記と同様の操作によってDNAを得て、その濃度を上記と同様に測定する。
【0063】
(5)フルコンストラクト作製
所望の量のDNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ反応バッファー、硫酸マグネシウム及びdNTP混合物、上記のようにして得られた標的ドメイン−T7付加産物及びタグ付きのランダム領域、及び蒸留水を含む、フルコンストラクト作製用溶液を調製する。こうした溶液としては、例えば、後述する実施例2(1)(1−5)に示す組成のコンストラクト作製用バッファーを使用することが、反応効率の面から好ましい。
【0064】
次いで、この溶液をサーマルサイクラーに入れ、例えば、95℃で1.5〜2.5分、75℃で5〜7分インキュベートする。次いで、例えば、所望量のT7プライマー及び同量のBiotin-cNew Ytagプライマーを加えてサーマルサイクラー中に入れ、95℃で5〜15秒、65℃で15〜45秒、75℃で1分というサイクルを25〜35回繰り返し、75℃で3〜7秒でインキュベートした後に4℃に冷却して、増幅産物を得る。
【0065】
この後、得られた増幅産物に、1/10倍容のQuick-Precip Plus Solution (10mMトリス塩酸(pH7.5〜8.5),0.5〜2mM EDTA及び4〜6M NaClを含む。QIAGEN社製)と2.5倍容の99%エタノールとを加えて混合し、10,000〜15,000rpm(7,000〜14,000xg)で10〜20分間遠心するという操作を繰り返し、蒸留水で溶かしたペレットを用いて、上記と同様の操作でDNA濃度を測定する。その後、例えば、ミニゲル(6〜9M尿素を含む2〜6%アクリルアミドゲル)に試料をアプライし、ランニングバッファーとして0.25〜0.75xTBEバッファーを用い、約200V、約60℃で60〜120分間という条件で電気泳動を行ない、ゲル電気泳動終了後に上記と同様の染色試薬で一本鎖DNAを染色し、イメージャーで検出する。
【0066】
ついで、所望の位置、例えば、839bpの位置にあるバンドを、メスを用いてゲルから切出す。所望の大きさのチューブ、例えば、1.5mLのチューブに切り出したゲルを入れてスパーテル等ですり潰し、所望量、例えば、600〜1,000μLの希釈バッファー(5〜15mM 酢酸マグネシウム、0.25〜0.75M 酢酸アンモニウム、0.5〜2mM EDTA、及び0.05〜0.2%SDSを含む、pH7.5〜8.5)をこのチューブに加え、65〜75℃で一晩インキュベートする。
【0067】
この後、上述したと同様に、1/10倍容のQuick-Precip Plus Solutionと2.5倍容の99%エタノールを加えて混合し、例えば、10,000〜15,000rpmで10〜20分遠心し、白い沈殿残して上清を捨て、70%エタノールを加えて混合し、再度同様に遠心を行なう。白い沈殿を残して上清を捨て、エタノールをエバポレートさせて完全に揮発させ、このDNAペレットを蒸留水で溶解させて上記と同様にDNA濃度を測定する。また、切り出して精製した後のDNAを、上記のような条件下にてミニゲルを用いた電気泳動に供し、単一のバンドになっているか否かを確認する。引き続き、ダイレクトシーケンス解析を行ない、配列が正しいかどうかを確認する。
【0068】
(6)mRNAへの転写
上記のようにして得られたDNAフルコンストラクト、rNTP混合物、T7トランスバッファー、T7酵素ミックス及びRNaseインヒビターを所望の量で含む転写用溶液を調製する。こうした転写用溶液としては、例えば、後述する実施例2(1)(1−6)に示す組成の転写用バッファーを使用することが転写効率の点から好ましい。
【0069】
次いで、この転写用溶液をサーマルサイクラーに入れて、例えば、37℃で1.5〜2.5時間インキュベートする。次いで、RNAの精製を行なう。例えば、0.5〜2μLのRQ1 RNase-Free DNase (0.5〜2U/μL)を加え、37℃で10〜20分間インキュベートし、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を使用してRNAの精製を行うことができる。
【0070】
所望量のRNase free water、RLTバッファー(QIGEN社製RNeasy Mini Kit中で提供される)及び99%エタノールを含むRNA精製用溶液を調製する。こうしたRNA精製用溶液としては、例えば、後述する実施例2(2)に示す組成のRNA精製用バッファーを使用することが精製効率の点から好ましい。
【0071】
RNeasy purificationカラムにこのRNA精製用溶液を入れ、所望のgで所望の時間、例えば、10,000〜15,000rpm(7,000〜14,000xg)で10〜20秒間遠心する。カラムにRPEバッファー(上記キット中で提供される)を所望の量、例えば、500μL入れ、12,000rpmで10〜20秒間遠心する。次いで、ここに所望の量の80%エタノール、例えば、400〜600μLを加えて、10,000〜15,000rpmで1〜4分間遠心し、エタノール沈殿を行なう。引き続き、ここにRNase free waterを所望の量、例えば、10〜20μL加え、室温で2〜4分間置いた後に、所望のgで所望の時間、例えば、10,000〜15,000 rpmで0.5〜2分間遠心する。その後、ナノドロップでRNAの濃度を測定する。以上のようにして得られた試料をすぐに使用しない場合は、−80℃で保存する。
【0072】
(7)リンカーのライゲーション
(7−1)一段階でのライゲーション
一段階でのライゲーションは、例えば、所望の組成のインキュベーション溶液中でmRNAとリンカーとを連結させる。こうしたインキュベーション溶液としては、例えば、後述する実施例2(3)(3−1)に示す組成の一段階結合用バッファーを使用することが反応効率の点から好ましい。反応条件は、例えば、88〜92℃で1〜3分インキュベートし、0.05〜0.15℃/秒で65〜75℃まで降温させ、約65〜75℃で1〜3分インキュベートし、引き続き、0.05〜0.15℃/秒で20〜30℃まで降温させるようにすることができる。
【0073】
ここに、ライゲーション溶液を加えて混合液とし、上記の混合液を、20〜30℃で45分〜1.5時間インキュベートし、ライゲーション産物を得る。このライゲーション産物から、所望の量、例えば、0.5〜2μLを取り、同量のバッファー、例えば、2xSTRと混合して92〜98℃で2〜4分間加熱する。その後、上記と同様に、マイクロゲルに試料をアプライし、ゲル電気泳動を行なう。電気泳動の条件としては、例えば、ランニングバッファーとして1xTBEバッファーを使用し、約100V、50〜60℃で10〜15分間とすることができる。
【0074】
電気泳動終了後にイメージャーでFITCを検出し、ライゲーションの成否を確認する。次いで、染色液を用いて染色を行ない、RNAの分解産物の有無を確認する。こうした染色液としては、例えば、SYBR Green 2等の一本鎖DNAを染色することができるものを使用することが好ましい。以上のようにして得られたライゲーション産物をすぐに使用しない場合には、−80℃で保存することが好ましい。
【0075】
(7−2)三段階でのライゲーション
三段階でのライゲーションは、リン酸基除去バッファー中で、リン酸基の除去を行なう。こうしたリン酸基除去用溶液としては、例えば、後述する後述する実施例2(3)(3−2)に示す組成のリン酸基除去用バッファーを使用することが、反応効率の点から好ましい。反応条件としては、36〜38℃で10〜20分間インキュベートし、その後68〜72℃で4〜8分間インキュベートし、次いで3〜5℃に冷却するようにすることができる。次いで、ここにリン酸基付加用溶液を添加して所望の温度で所望の時間、混合し、インキュベートする。こうしたリン酸基付加用バッファーとしては、後述する実施例2(3)(3−2)に示すライゲーションバッファーを使用することが反応効率の点から好ましい。
【0076】
反応条件としては、36〜38℃で25〜35分間インキュベートし、引き続き、所望の量、例えば、5〜15μMのリンカーを0.5〜1.5M加え、85〜95℃で1〜3分間インキュベートし、0.05〜0.15℃/秒で65〜75℃まで降温させ、同じ降温割合で20〜30℃まで降温させるようにすることができる。
【0077】
ここに、所望量のRNAリガーゼを加えて所望の時間インキュベートし、ライゲーション産物を得る。例えば、5〜100 unit /μLのT4 RNAリガーゼ(New England Biolabs製)を0.05〜0.15μL加え、20〜30℃で約45分〜1.5時間インキュベートし、ライゲーション産物を得るようにすることができる。得られたライゲーション産物を所望量、例えば、0.5〜2μLとり、同量のバッファー、例えば、2xSTR Loading Buffer(以下、「2xSTR」と略すことがある、Promega社製)と混合し、90〜98℃で2〜4分間加熱する。
【0078】
その後、上記と同様の条件でマイクロゲルにサンプルをアプライしてゲル電気泳動を行ない、イメージャーでFITCを検出し、ライゲーションされているか否かを確認する。次いで、上記と同様に染色液を用いて染色を行ない、RNA分解産物の有無を確認する。こうした染色液としては、SYBR Green 2などの一本鎖DNAを染色できるものであることが、検出感度の点から好ましい。ライゲーション産物をすぐに使用しない場合には、−80℃で保存することが好ましい。
【0079】
(8)試験管内翻訳
まず、ライゲーション産物、RNaseインヒビター等を含む翻訳用溶液1を調製し、36〜38℃で10分〜4時間インキュベートする。こうした翻訳用溶液1としては、例えば、後述する実施例3(1)に示す組成の翻訳用バッファーを使用することが反応効率の点から好ましい。次いで、ここに所望量のローディング用溶液を加えて、所望の時間インキュベートする。例えば、92〜96℃で1〜5分間インキュベートし、翻訳産物を得るようにすることができる。こうしたローディング溶液としては、後述する実施例3(1)に示す組成のローディングバッファーを使用することが、分離精度の点から好ましい。
【0080】
得られた翻訳産物を、SDSゲル電気泳動に供して確認する。ゲル電気泳動には、例えば、後述する実施例3(1)に示す組成のSDS-PAGE用ランニングバッファー等を使用することが、分離効率の点から好ましい。次いで、スタッキングゲルとランニングゲルとを調製し、ゲル電気泳動を行なう。こうしたゲルとしては、後述する実施例3(1)に示す組成のスタッキングゲル及びランニングゲルを使用することが分離効率の点から好ましい。常法に従ってゲルを作製し、例えば、約15〜30 mAで、1〜4時間ゲル電気泳動を行なうようにすることができる。
【0081】
(9)タグ精製
次いで、得られた翻訳産物を、タグを用いて精製する。まず、所望の組成のPBSと下記のような溶出バッファーとを調製し、タグ付きの磁性ビーズを用いて、低吸着チューブ中で反応させて精製を行なう。例えば、Hisタグを利用する場合には、以下のようにして精製する。まず、130〜140mMのNaCl、2.5〜3.0mMのKCl、5〜15mMのリン酸水素二ナトリウム、1.5〜2.0mMのリン酸二水素カリウムを含む1xPBS(6M NaOHでpH 7.2〜7.4に調整)、及び5〜15mMのリン酸ナトリウムと450〜550mMのイミダゾールを含む2xHisMag溶出バッファー(6M NaOHでpH 7.2〜7.6に調整)を調製する。
【0082】
例えば、所望量のHis Mag セファロース Ni(GEヘルスケアサイエンス社製;例えば、30〜50μL)をとり、所望の大きさ、例えば、1.5mLの低吸着チューブに入れ、ここに所望量、例えば、150〜250μLの1xPBSを入れて懸濁し、磁石でビーズを引き付けて上清を捨て、所望量の1xPBSを入れて懸濁するという操作を、所望の回数繰り返す。
【0083】
次いで、ここに精製したい試験管内翻訳産物を加え、総容量が、例えば、100μLになるように所望のバッファー、例えば、1xPBS等を加える。このチューブを8〜12℃で一晩置き、上清を捨てる。その後、所望量の1xPBSを入れて懸濁し、磁石でビーズを引き付けて上清を捨てるという操作を所望の回数繰り返す。次いで、10〜30μLの溶出バッファーを入れて懸濁し上清を回収する。同量の溶出バッファーを入れて懸濁し、再度上清を回収する操作を行って翻訳産物を回収し、SDS-PAGEに供して翻訳産物を確認する。以上のようにして、所望の標的ドメイン結合部位を含むリンカー及び所望のドメインを含むフルコンストラクトを得ることができる。
【0084】
なお、作製したコンストラクトのタグ精製が、このタグと酵素タンパク質との相互作用等が原因でうまくいかない場合には、ランダム領域と所望のタグとの間に何らかのスペーサーを含めるようにする。これによって、タグと上記酵素タンパク質本体との相互作用を防止することができ、精製を効率よく進めることができるようになる。
【0085】
(10)標的ドメインと標的ドメイン結合部位との共有結合を用いた新規ディスプレイ法
以上のようにして得られたDNAコンストラクトを用いてHead-to-Head結合でリンカーとmRNAとを結合させる方法を以下に説明する。
【0086】
まず、アンタークティックホスファターゼ(例えば、タカラバイオ(株)製)を用いて、mRNAの5’末端から三リン酸を除去し、ついで、ポリヌクレオチドキナーゼ(例えば、タカラバイオ(株)製)を作用させてmRNAの5’末端にリン酸基をつけ、上述したように作製したリンカーと連結する(図7)。
もしくは、これらのホスファターゼ処理及びキナーゼ処理を省いて、T4 RNAリガーゼ処理を行ない、リンカーとmRNAとを直接連結することもできる。
【0087】
下記の条件で翻訳を行なうと、まず、リボソームがmRNAに結合する。そして、このリボソームが標的ドメインを含むタンパク質を合成し、前記合成されたタンパク質が前記標的ドメイン結合部位に結合する。リボソームは、上記mRNAに含まれる終止コドンを読み取ってタンパク質の合成を終了しmRNAから離れる。mRNAから離れたリボソームは代謝回転して、次のタンパク質合成に利用される(リボソームの代謝回転、図6(A)参照)。
【0088】
例えば、上述したPCRによって得られたPCR産物である、配列表の配列番号9に示す809bpのmRNA(以下、それぞれ、「コンストラクト1」又は「mRNA1」ということがある。)を得た場合を例に挙げて説明する。
【0089】
ここで、Nは、G,A,U,及び Cからなる群から選ばれるいずれかの塩基を表し、KはG又はUを表す。上記mRNA1は、230アミノ酸で構成されるタンパク質(配列表の配列番号10)を表している。
【0090】
以上のようにして得られたPCR産物から、所望の量の産物を取り、同量の所望のバッファーと混合して測定用試料を調製し、所望の温度で所望の時間加熱する。その後、蛍光観察によってリンカーとコンストラクト1、PCR産物(mRNA1)との結合を確認する。例えば、上記のPCR産物を0.5〜1.5μLを取って同量の2xSTRと混合して測定用試料を調製し、93〜96℃で1〜5分間加熱した後に蛍光測定を行うことで、上記のリンカーと上記のmRNA1とが結合しているか否かを確認することができる。
【0091】
次いで、合成されたタンパク質に予めスペーサー配列を仕組むことにより、後のHisタグを用いたタンパク質のつり上げ精製を容易なものとすることができる。このようなスペーサーとしては、αへリックス構造を有するもの(以下、「αスタンドスペーサー」という。)を使用することができる。
【0092】
所望のタンパク質、例えば、ミオグロビンA鎖(A1〜A16、配列表の配列番号11及び図8参照)中の疎水性アミノ酸をGlnに置換し、この配列を使用して作製することができる(特許出願中)。
【0093】
このペプチドのアミノ酸配列を使用して、後述するインビトロセレクションにより、下記の配列を有する、N末端フリータイプのαスタンドペプチド(配列表の配列番号12)及びC末端フリータイプのαスタンドペプチド(配列表の配列番号13)を得ることができる。
【0094】
インビトロ選択法は、以下のようにして行う。ここで、mRNAとリンカーとの連結は、公知の手法を用いて、直接的又は間接的に、化学的又は物理的に行うことができる。例えば、mRNAの3’末端にリンカーの末端と相補的な配列を設けておくと、両者をハイブリダイゼーションによって連結することができる。
【0095】
本発明において、「ライゲーション」又は「ライゲーション反応」は、酵素により促進される反応をいい、具体的には、T4 RNAリガーゼ、TS2126耐熱性ファージ由来DNAリガーゼ等のリカーゼを好適に利用することができ、T4 RNAリガーゼ(タカラバイオ(株)製)を利用することが、連結効率の理由からさらに好ましい。
【0096】
ライゲーション反応前のアニーリングは、60〜100℃にて2〜60分間、ヒートブロック、アルミブロック、ウォーターバスその他の加温用器具にて温めた後、室温で約2〜60分間放置して液温を穏やかに低下させ、さらに−5〜10℃に冷却して行うことが好ましい。例えば、約90℃で約5分間アルミブロック上にて温め、次に約70℃で約5分間アルミブロック上にて温め、最後に室温で約10分間放置した後、氷上に置くようにすることが好ましい。
【0097】
ライゲーション反応液の組成は、0.1〜2.5U/μLのT4ポリヌクレオチドキナーゼ(タカラバイオ(株)製);0.4〜5U/μLのT4 RNAリガーゼ(タカラバイオ(株)製);10〜250mMのTris-塩酸(pH約7.0〜約8.0);2.0〜50mMの塩化マグネシウム;2.0〜50mMのジチオスレイトール(DTT);0.2〜5.0のmMのATPを含むものであることが好ましい。反応効率の点から、約0.5U/μLのT4ポリヌクレオチドキナーゼ;約2.0U/μLのT4 RNAリガーゼ;約50mMのTris-塩酸(約pH 7.5);約10mMの塩化マグネシウム;約10mMのDTT;約1.0mMのATPを含有するものであることが好ましい。この反応液には、必要に応じて、SUPERase・InTM RNase inhibitor(Ambion社製)などのRNA分解酵素阻害剤を添加してもよい。
【0098】
ライゲーション反応を行う反応系の体積は、4.0〜100μLであることが好ましい。反応効率の点から20〜40μLとすることが好ましく、約20μLとすると最も反応効率が高い。この反応系中でのRNAとリンカーとの量比は、5.0〜100pmolのリンカーに対するmRNAの量を、5.0〜100pmolとすることが好ましい。
【0099】
アニーリング反応は、T4ポリヌクレオチドキナーゼ及びT4 RNAリガーゼを除いたライゲーション反応液中で行うことができる。そして、アニーリングの終わった反応液中に、これらの酵素を必要量投入することで、ライゲーション反応を開始させることができる。このライゲーション反応は、10〜40℃で約1分間〜数時間行うのが好ましい。作業効率及び反応効率の面から、20〜30℃で4〜12時間とすることが好ましく、約25℃で約8時間とすることが最も好ましい。
【0100】
次に、連結体A(mRNAとリンカーとの連結体)を無細胞翻訳系と混合することによって、タンパク質の合成を行う。ここで、タンパク質を合成するための無細胞翻訳系は、動物由来細胞、植物由来細胞、菌類及び細菌類からなる群から選択することができる。具体的には大腸菌、ウサギ網状赤血球、小麦胚芽抽出物などを使用することができる(Lamfrom H., Grunberg-Manago M., Biochem. Biophys. Res. Commun., 27, 1 (1967))。
生物種により翻訳に利用されるコドンの種類が異なるので、対象となる遺伝子や遺伝子の由来に合わせて無細胞翻訳系を選択することが好ましい。
【0101】
本発明の実施形態においては、前記無細胞翻訳系として、ウサギの血液から得られた網状赤血球細胞のライセートを利用することが好ましい。前記ライセートは、マイクロコッカルヌクレアーゼによって細胞由来のmRNAを分解し、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)を加えてカルシウムをキレートし、前記ヌクレアーゼを不活化処理したもの(以下、「マイクロコッカルヌクレアーゼ処理済」という。)とすることが、より好ましい。
【0102】
翻訳反応液の組成は、4〜85μLのウサギ網状赤血球ライセート(マイクロコッカルヌクレアーゼ処理済)と0.24〜10 pmolの上記連結体を含む反応バッファー(最終濃度:16〜400mMの酢酸カリウム;0.1〜2.5mMの酢酸マグネシウム;0.2〜50mMのクレアチンリン酸;各0〜0.25mMのアミノ酸を含む)を10〜100μL用いるのが好ましい。反応効率の点から、17μLのウサギ網状赤血球ライセート(同上)と1.2〜2.0pmolの上記連結体とを含む反応バッファー(最終濃度:80 mMの酢酸カリウム;0.5mMの酢酸マグネシウム;10mMのクレアチンリン酸;各0.05mMのアミノ酸(メチオニン及びロイシンは各々0.025mM))を25μL用いるのが、さらに好ましい。また必要に応じて、この反応液に、SUPERase・InTM RNase inhibitor(Ambion社製)などのRNA分解酵素阻害剤を添加してもよい。
【0103】
翻訳反応は約20〜約40℃で約10〜約90分間行うことが好ましく、生成効率と作業効率の点から、約30℃で約20分間行うことが特に好ましい。
【0104】
上記連結体は、あらかじめリンカーに標識化合物を結合させておくことによって、容易に検出することができる。そのような標識化合物としては、蛍光性化合物、抗原のエピトープ、放射性同位体等を挙げることができる。ただし、放射性同位体は後の実験操作を行なう上で特別な施設(放射性物質取扱施設)を要求されるため、本実験には適さない。
【0105】
放射性同位体の利用が困難な場合には、蛍光性化合物を利用することが好ましい。蛍光性化合物としては、フリーの官能基(例えば、活性エステルに変換可能なカルボキシル基、ホスホロアミダイトに変換可能な水酸基、又はアミノ基など)を持ち、標識された塩基としてリンカーに連結可能な種々の蛍光色素を用いることが好ましい。このような蛍光色素としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコビリタンパク質、希土類金属キレート、ダンシルクロライド又はテトラメチルローダミンイソチオシアネート等を挙げることができる。また、各種GFP等も使用することができる。
【0106】
以上のような手順で、リンカー、標的ドメイン及びαスタンドを含むフルコンストラクトを作製し、標的ドメインを含むタンパク質を合成することができる。αスタンドスペーサーの塩基配列を、標的ドメインを含むタンパク質の塩基配列とタグ精製に使用するタグ配列との間に挟み込んでおくことにより、標的ドメインを含むタンパク質の表面に、タグをうまく配置させることができる。これによって、精製効率を飛躍的に上げることができる。
【0107】
さらに、本発明では、上記標的ドメインを転写したmRNAの5’末端にリンカーを結合させるため、終止コドンを入れたmRNAを設計することが可能であり、リボソームを代謝回転させることができるようになっている。
【実施例】
【0108】
(実施例1)O6-メチルグアニン-DNA-メチルトランスフェラーゼ(MGMT)を含むDNAコンストラクトの作製
(1)材料及び方法
NaCl、KCl、リン酸水素二ナトリウム・12水、リン酸二水素カリウム、6M NaOH、EDTA(エチレンジアミン四酢酸ナトリウム)、ホルムアミドは、和光純薬工業(株)より購入した。MgCl2はナカライテスク(株)より購入した。HEPESは(株)同仁化学研究所より、ジチオスレイトール及びトライトンX-100はSIGMA社より、それぞれ購入した。
【0109】
(2)MGMTの活性の確認及びMGMTをコードするDNAの増幅
(2−1)溶液の調製
まず、蛍光強度によってMGMTの活性を評価するために、10xD-PBS(1.37M NaCl、27mM KCl、100mM リン酸水素二ナトリウム・12水和物、18mM リン酸二水素カリウム(6M NaOHでpH7.4に調整))、1x反応バッファー(10mM MgCl2、1mM ジチオスレイトール、100mM NaCl、18mM HEPES(pH 7.5)、50mM KCl、0.025% トライトンX-100、1μg/mL BSA)、及び停止液(90%ホルムアミド及び20mM EDTA(pH8.0))を調製した。
【0110】
(2−2)酵素溶液等の準備
ついで、基質FQ(2.5pmol/μL:2μLの10μM MGMT F (FITC-MGMT23)、2μLの10μM MGMT Q (MGMT-BHQ1)、3.2μLの水及び0.8μLの10xD-PBS(-)を含む;合計8μL)又は基質F100(2.5pmol/μL:1μLの10μM MGMT F100、2.6μLの水及び0.4μLの10xD-PBS(-)を含む;合計4μL)という2種類の基質溶液を調製した。
【0111】
上記の2種類の基質溶液を、それぞれ95℃で1分インキュベートし、その後、1℃/秒で37℃まで降温させた。37℃で5分インキュベートした後に、1℃/秒で4℃までさらに降温させ、4℃でハイブリダイゼーションを行った。これらの基質溶液をMGMT基質ストック溶液として、使用まで−20℃で保存した。なお、基質の蛍光強度は時間とともに低下するため、調整した日のうちに使用した。また、MGMTの基質アナログであるO6-ベンジルグアニン(以下、「O6-BG」又は、単に「BG」ということがある。)のストック溶液を、上記の1x反応バッファーを用いて調製した。
【0112】
(2−3)BGリンカーの作製
本発明のmRNAディスプレイ法及びcDNAディスプレイ法に使用するリンカーは、つくばオリゴサービス(株)に合成を委託した。
【0113】
(実施例2)2つのDNAコンストラクトの調製
2つのコンストラクト(以下、「コンストラクト1」及び「コンストラクト2」という。)を以下のようにして調製した。これらのコンストラクトの模式的な全体構造を図4(A)及び(B)に示す。また、コンストラクト1のDNA配列(839bp)、mRNA配列(809bp)及びタンパク質配列(230aa)を、配列表の配列番号2〜4に示した。同様に、コンストラクト2のDNA配列(896bp)、mRNA配列(866bp)及びタンパク質配列(249aa)を、配列表の配列番号5〜7に示した。
【0114】
(1)コンストラクト1の調製
(1−1)MGMT領域の増幅
MGMT領域を増幅させるために、MGMT増幅用溶液(0.5μLのプライムスター(タカラバイオ(株)製)、10μLの5xプライムスター反応バッファー、4μLの2.5 mM dNTP混合物、1μLの10μM MGMTプライマー1、1μLの10μM MGMTプライマー2、0.5μLのSF-コンストラクト-MGMT及び33μLのD.D.W.(二回蒸留水)を含む。合計50μL)を調製した。次いで、95℃で2分、95℃で20秒、65℃で5秒、72℃で30秒というサイクルを30回繰り返してPCRによる増幅を行ない、72℃で5分加熱した後に4℃に冷却して反応を停止させ、PCR産物1を得た。この後、得られたPCR産物1から1μLを取り、7μLの蒸留水及び8μLの2xSTRと混合し、95℃で3分間加熱し、ゲル電気泳動用サンプルとした。
【0115】
アクリルアミド、N,N’-メチレン-ビス(アクリルアミド)(BIS)、過硫酸アンモニウム(APS)、N,N,N’,N’-テトラメチル-エチレンジアミン(TEMED)、尿素、2−メルカプトエタノール、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)は、和光純薬工業(株)より購入し、ポリアクリルアミドゲルの調製に使用した。また、ホウ酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンも和光純薬工業(株)より購入し、5xTBEバッファーの調製に使用した。
【0116】
ミニゲル(8Mの尿素を含む4%アクリルアミドゲル)にサンプルをアプライし、ランニングバッファーとして0.5xTBEバッファーを用いて、200V、60℃で90分間、ゲル電気泳動を行なった。ゲル電気泳動終了後に、SYBR Green II Nucleic Acid Gel Stains(SYBR Green 2と略すことがある(タカラバイオ(株)製)で一本鎖DNAを染色し、イメージャーで検出した。結果を図11に示す。
【0117】
(1−2)増幅したMGMT領域へのT7領域の付加
オーバーラップPCRにより、上記(1−1)で得られたMGMT領域にT7領域を付加するために、T7領域付加用溶液(0.5μLのプライムスター、10μLの5xプライムスター反応バッファー、4μLの2.5 mM dNTP混合物、1μLの10μM T7プライマー、0.3μLの10μM T7-リンカーハイブリ-MGMT、1μLの10μM MGMTプライマー2、1μLのMGMT PCR産物及び33μLのD.D.W.を含む、合計50μL)を調製した。
【0118】
上記T7領域付加用溶液をサーマルサイクラーに入れ、95℃で2分処理した後に、[95℃で20秒、65℃で5秒、72℃で30秒]というサイクルを30回繰り返し、次いで72℃で5分加熱した後に、4℃に冷却した。1μLのPCR産物と7μLの蒸留水、及び8μLの2xSTRを混合し、95℃にて3分間加熱した。これをサンプルとして、ミニゲル(4%アクリルアミドゲル、8M尿素を含む。)にアプライし、ランニングバッファーとして0.5xTBEバッファーを用いて、200V、60℃で90分間ゲル電気泳動を行なった。ゲル電気泳動終了後に、SYBR Green 2で一本鎖DNAを染色し、イメージャーで検出した。
【0119】
目的とする621 bpの位置に現れたバンドからMGMT配列を含むPCR産物2を得た(図11参照)。次いで、MGMTの上流にT7プロモーター領域の配列を、3’末端が相互にオーバーラップした2種のDNA(T7プロモーター用及びMGMT用)を等量で混合し、通常のPCR条件でオーバーラップPCRを行なって繋ぎ、733bpのT7-MGMT配列を得た(図12参照)。
【0120】
(1−3)ランダム領域の増幅
次いで、ランダム領域を増幅させるために、ランダム領域増幅用バッファー(4μLのVentR (exo-) DNAポリメラーゼ(BioLabs社製)、20μLの10xVentR (exo-) DNAポリメラーゼ反応バッファー、4μLの100mM MgSO4、16μLの2.5mM dNTP混合物、2μLの100μM MGMT-His tag Xaプライマー、2μLの100μMビオチン-cNew Ytagプライマー、1μLの10μMランダムテンプレート及び151μLのD.D.W.を含む。合計200μL)を調製した。このバッファーをサーマルサイクラーに入れ、95℃で2分処理した後に、[95℃で20秒、65℃で30秒、75℃で1分]というサイクルを30回繰り返し、72℃で5分加熱した後に、4℃に冷却してPCR産物3を得た。
【0121】
上記のようにして得られたPCR産物3から1μLを取り、1μLの2xSTRと混合して95℃で3分間加熱した。次いで、この溶液をサンプルとしてマイクロゲル(8Mの尿素を含む8%アクリルアミドゲル)にアプライし、ランニングバッファーとして1xTBEバッファー用いて、100V、55℃で10分間ゲル電気泳動を行なった。ゲル電気泳動終了後にSYBR Green 2で一本鎖DNAを染色し、イメージャーで検出した。
【0122】
次いで、上記のPCR産物3に、1/10倍容のQuick-PrecipTMPlus Solution (10mM トリス-塩酸(pH 8.0), 1mM EDTA及び5M NaClを含む。EdgeBio社製) と2.5倍容の99%エタノールとを加えて混合し、13,000rpm(12,000xg)で15分間遠心した。次いで、白い沈殿を落とさないように上清を捨て、70%エタノールを加えて混合し、再度、13,000rpmで10分間遠心した。白い沈殿を落とさないように上清を捨て、エバポレーターでエタノールを完全に飛ばし、その後、蒸留水にDNAペレットを溶解させ、ナノドロップ(Thermo Fischer Scientific社製)でDNA濃度を測定した。
【0123】
(1−4)PCR増幅されたランダム領域のビーズ精製
50μLのストレプトアビジンビーズ(Dynabeads MyOne Streptavidin C1、Invtrogen社製)を低吸着チューブに入れ、このチューブを磁石に付けて、上清を捨てた。ここに、100μLの1x結合バッファーを入れて混合し、磁石に付けて、上清を捨てた。100μLの1x結合バッファーを入れて混合し、磁石に付けて、上清を捨てるという操作をさらに2回繰り返した。
【0124】
ここに上記(1−2)で得られたPCR産物3(ランダム領域)を20μL(約37μg)、蒸留水を30μL、及び2x結合バッファーを50μL加えて混合した。この溶液をローテーターに入れて4℃で回転させ、一晩置いた。このチューブを磁石に付けて、上清を捨てた。100μLの1x結合バッファーを入れて混合し、磁石に付けて、上清を捨てるという操作を3回繰り返した。
【0125】
50μLの解離バッファー(10 mM EDTA を含む95%ホルムアミド)を加えて、ローテーター中に入れ、70℃で15分間反応させ、磁石に付けて上清を回収した。50μLの解離バッファーを加えてローテーター中に入れ、70℃で15分間反応させ、磁石に付けて上清を回収するという操作を再度行った。
【0126】
回収した上清を、上記(1−3)のPCR産物3の精製と同様に、Quick-Precip Plus Solutionを用いたエタノール沈殿法によって精製した。蒸留水に遠心で得られたDNAペレットを溶解させ、ナノドロップでDNA濃度を測定した。目的とする128 bpの位置に現れたバンドから、Hisタグ-ランダム領域配列を含むPCR増幅産物を得た(図13参照)。
【0127】
(1−5)フルコンストラクトの作製
以上のようにして得られたコンストラクト1作製用の各PCR増幅産物を用いて、コンストラクト1をフルコンストラクトとして作製するために、フルコンストラクト作製用バッファー(4μLのVentR(exo-)DNAポリメラーゼ(BioLabs社製)、20μLの10xVentR(exo-)DNAポリメラーゼ反応バッファー、4μLの100mM MgSO4、16μLの2.5mM dNTP混合物、9μLのT7〜MGMT領域(15 pmol)、1.3μLのHis tag〜ランダム領域 (15pmol)及び141.7μLのD.D.W.を含む、合計196μL)を調製した。
【0128】
上記フルコンストラクト作製用バッファーをサーマルサイクラーに入れ、95℃で2分間、次いで75℃で6分間インキュベートした。ここに、2μLの100μMのT7プライマー及び2μLの100μMのBiotin-cNew Ytagプライマーを加えた。この混合物をサーマルサイクラーに入れ、95℃で10秒、65℃で30秒、75℃で1分というサイクルを30回繰り返し、次いで75℃で5分インキュベートし、4℃に冷却してコンストラクト1をフルコンストラクトとして得た。
【0129】
上記のようにして得られたPCR産物4(コンストラクト1)に、1/10倍容のQuick-PrecipTM Plus Solution (10mM トリス-HCl(pH 8.0), 1mM EDTA及び5M NaCl) と2.5倍容の99%エタノールとを加えて混合し、13,000rpm(12,000xg)で15分間遠心した。次いで、白い沈殿を落とさないように上清を捨て、70%エタノールを加えて混合し、再度、13,000 rpmで10分間遠心した。白い沈殿を落とさないように上清を捨て、エバポレーターでエタノールを完全に飛ばし、その後、蒸留水にDNAペレットを溶解させ、ナノドロップでDNA濃度を測定した。
【0130】
1μLのPCR産物4と7μLの蒸留水及び8μLの2xSTRを混合し、95℃で3分間加熱した。これをサンプルとして、ミニゲル(8Mの尿素を含む4%アクリルアミドゲル)にアプライし、ランニングバッファーとして0.5xTBEバッファーを用いて、200V、60℃で90分間ゲル電気泳動を行なった。ゲル電気泳動終了後に、SYBR Green 2で一本鎖DNAを染色し、イメージャーで検出した。図14のフルコンストラクトを泳動させたレーンで見える2本のバンドのうち、下側に見えるバンドはT7プロモーター-MGMT配列(733bp)の残りで、上側に見えるバンドがランダム領域を含むフルコンストラクト(839bp)であると考えられた。鎖長を確認したところ、目的とする839bp付近にバンドが確認された。
【0131】
839bpのバンドの位置でメスを使ってゲルを切り取り、これを1.5mLチューブに入れてスパーテルですり潰した。ここに、800μLの希釈バッファー(10mMの酢酸マグネシウム、0.5Mの酢酸アンモニウム、1mMのEDTA(pH 8.0)、0.1%SDS)を加え、70℃で一晩インキュベートした。
【0132】
上記のPCR産物4の精製と同様にして精製し、ナノドロップでDNA濃度を測定した。ゲルから切り出して精製したDNAを、ミニゲルでさらにゲル電気泳動を行ない、単一のバンドになっているかどうかを確認した。結果を図15及び図16に示す。引き続き、ダイレクトシーケンス解析を行ない、配列が正しいか否かを確認した。
【0133】
(1−6)mRNAへの転写(濃度測定用)
得られたコンストラクト1をmRNAに転写するために、転写用バッファー(2μLのDNAフルコンストラクト(3.6pmol)、3μLの2.5mM rNTP混合物、2μLの5xT7トランスバッファー、2μLのT7酵素混合物及び1μLのRNaseインヒビターを含む。合計10μL)を調製した。上記転写用バッファーをサーマルサイクラーに入れ、37℃で2時間インキュベートした。次いで、ここに1μLのRQ1 RNase-Free DNase (1U/μL、Promega社製)を加え、37℃で15分間インキュベートしてRNA精製用試料とした。RNAの精製には、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を使用した。まず、上記RNA精製用試料に、RNA精製用バッファー(90μLのRNase free water、350μLのRLTバッファー及び250μLの99%エタノール)を加えて、混合液とした。
【0134】
上記混合液をRNeasy 精製カラムに入れ、12,000rpmで15秒間遠心した。コレクションチューブを捨てて、新しいコレクションチューブにカラムを入れ、カラムにRPEバッファーを500μL入れ、12,000rpmで15秒間遠心した。コレクションチューブを捨てて、新しいコレクションチューブにカラムを入れ、80%エタノールを500μL加えて12,000rpmで2分間遠心した。コレクションチューブを捨てて、新しいコレクションチューブにカラムを入れ、カラムの蓋を開け、さらに12,000rpmで5分間遠心した。
【0135】
コレクションチューブを捨てて、新しいコレクションチューブにカラムを入れ、15μLのRNase free waterを加えて室温で3分間置いた。12,000rpmで1分間遠心した。再度15μLのRNase free waterを加えて室温で1分間置いた。その後、12,000rpmで1分間遠心し、ナノドロップでRNAの濃度を測定した。
【0136】
(2)mRNAへの転写(サイズ測定用)
上記(1−5)で得られたDNAコンストラクト1をmRNAへ転写するために、転写用バッファー溶液(2μLのDNAフルコンストラクト(3.6pmol)、3μLの2.5mM rNTP混合物、2μLの5xT7トランスファーバッファー、2μLのT7酵素ミックス、1μLのRNaseインヒビター(RNasin Plus PNase Inhibitor, Promega社製)を含む。合計10μL)を調製した。この転写用バッファーをサーマルサイクラーに入れ、37℃で2時間インキュベートした。ついで、ここにRQ1 RNase-Free DNase (1U/μL)を1μL加え、37℃で15分間インキュベートした。
【0137】
RNeasy Mini Kitを使用し、RNAの精製を行った。まず、RNA精製用バッファー(90μLのRNase free water、350μLのRLTバッファー及び250μLの99%エタノールを含む。合計700μL)を調製し、これをRNeasy Mini Kit中に入れ、12,000rpmで15秒間遠心した。コレクションチューブを捨てて、新しいコレクションチューブにカラムを入れ、このカラムに500μLのRPEバッファーを入れて、再度、12,000rpmで15秒間遠心した。遠心後、このコレクションチューブを捨てて、新しいコレクションチューブにカラムを入れ、このカラムに500μLの80%エタノールを入れて、12,000rpmで2分間遠心した。遠心終了後にコレクションチューブを捨てて、新しいコレクションチューブにカラムを入れ、カラムの蓋を開けて、さらに12,000rpmで5分間遠心した。
【0138】
遠心終了後に、このコレクションチューブを捨てて新しいコレクションチューブにカラムを入れ、ここに15μLのRNase free waterを入れて、室温にて3分間静置し、その後、12,000rpmで1分間遠心した。遠心終了後に、このコレクションチューブを捨てて新しいコレクションチューブにカラムを入れ、ここに15μLのRNase free waterを入れ、室温で1分間静置し、12,000rpmで1分間遠心した。その後、RNAの濃度を測定した。
【0139】
以上のようにして得られたmRNAのおよそのサイズをゲル電気泳動によって確認した(図17参照)後に、809nts(塩基数)mRNAとして、以下の実験に用い、後続の実験でその正当性を確認した。この段階で厳密な測定はmRNAの量が少なく、また不安定であることから、極めて困難であることによる。
【0140】
(3)リンカーのライゲーション
(3−1)一段階での結合
次いで、得られた809 bpのmRNAの5’末端に、上記(2)で得たFITCラベルしたBGリンカー配列を、ハイブリダイゼーション法で相補結合させ、その後、T4 RNAリガーゼで酵素的に結合した。mRNAに結合したリンカーを、ゲル電気泳動後にFITCの蛍光で検出した。以下、手順に従って詳細を述べる。
【0141】
リンカーのライゲーション用に、下記表1に示す濃度のmRNAとBGリンカーとを用いて、4種類の一段階結合用バッファー(xμLのmRNA(xpmol)、yμLの10μM BG-PEG-リンカー(20xpmol)、及び21.5−(x+y)μLのRNase free waterを含む。合計21.5μL)を調製した。このバッファーをサーマルサイクラーに入れ、90℃で2分間インキュベートし、0.1℃/秒で70℃まで降温させ、70℃で2分間インキュベートし、0.1℃/秒で25℃まで降温させた。次いで、ライゲーションバッファー(2μLのRNase インヒビター(40ユニット/μL)、2.5μLの10xT4 RNAリガーゼバッファー及び1μLのT4 RNAリガーゼ(10〜50ユニット/μL)を含む。合計5.5μL)を調製してここに加え、混合物とした。
【0142】
【表1】
【0143】
上記混合物を25℃で1時間インキュベートして、リンカーをライゲーションさせた。得られたライゲーション産物から1μLを取り、1μLの2xSTRと混合して、95℃で3分間加熱した。この溶液をサンプルとして、上記と同様のマイクロゲル(8Mの尿素を含む8%アクリルアミドゲル)にアプライし、ランニングバッファーとして1xTBEバッファーを用いて、100V、55℃で10〜15分間ゲル電気泳動を行なった。
【0144】
ゲル電気泳動終了後、イメージャーでFITCを検出し、ライゲーションされているか否かを確認した。次いで、SYBR Green 2で一本鎖DNAを染色し、RNAの分解産物があるか否かを確認した。結果を図18に示す。
【0145】
図18に示すように、FITCによる検出でバンドは見られず、ライゲーション産物が確認されなかったことから、ライゲーションがされていないことが示された。これは、T4 RNA リガーゼが5’リン酸末端のオリゴヌクレオチドと3’-OHのオリゴヌクレオチドとを連結させる酵素であることから、mRNAの三リン酸の5’末端がBG-リンカーと結合されないことによるものと思われた。
【0146】
(3−2)三段階での結合
リンカーのライゲーション用にリン酸基除去用バッファー(8μLのmRNA (8pmol)、1μLの10xアンタークティックリン酸バッファー及び1μLのアンタークティックホスファターゼ(New England Biolabs社製)を含む。合計10μL)を調製した。このバッファーをサーマルサイクラーに入れ、37℃で15分間インキュベートした。次いで70℃で5分間インキュベートし、4℃に冷却してmRNAの5’末端からリン酸基を除去した。この溶液に、ライゲーションバッファー(10.5μLのRNase free water、2.5μLの10xT4 RNAリガーゼバッファー及び1μLのT4ポリヌクレオチドキナーゼ(10ユニット/μL)を含む。合計24μL)を調製して加え、混合物とした。
【0147】
この混合物を37℃で30分間インキュベートし、次いで、1μLの10μMのBG-リンカーを加えて、サーマルサイクラーに入れ、90℃で2分間インキュベートした。0.1℃/秒で70℃まで降温し、70℃で2分間インキュベートした後に、0.1℃/秒で25℃まで降温させた。
【0148】
この試料に、1μLのT4 RNAリガーゼ(10〜50ユニット/μL)を加え、25℃で1時間インキュベートしてライゲーション産物を得た。得られたライゲーション産物から1μLを取り、1μLの2xSTRと混合し、95℃で3分間加熱した。このサンプルを上記(2)と同様にマイクロゲルにアプライし、ランニングバッファーとして1xTBEバッファーを用いて、100V、55℃で10〜15分間ゲル電気泳動を行なった。結果を図19に示す。
【0149】
図19に示すように、約200塩基付近にFITCラベルのバンドが見られた。SYBER Green2で染色した場合も、同様の位置にバンドが検出され、さらに、809塩基に相当する位置にバンドが検出された。809塩基のmRNAと50塩基のmRNA断片とが結合すると859塩基のバンドが見られるはずであるが、今回見られたバンドはそれよりもはるかに遅く移動しているように見えるのは、リンカーが分枝構造を有する、かさばった構造となっているためと考えられた。
【0150】
また、転写して得られたmRNAには、150塩基又は180塩基程度の大きさのmRNA断片が含まれていた。こうした断片のmRNAにリンカーが結合すると、FITCで見られたバンドの大きさと一致することから、染色で検出されたバンドは、これらのmRNA断片にリンカーが結合したものであるか、又はリンカー同士が結合したものではないかと考えられた。
【0151】
リンカー同士の結合ではなく、mRNAの5’末端とリンカーの3’末端との結合が形成されたことを確認するために、上記のゲル電気泳動結果から、mRNAのバンドを切り出して上記と同様の条件にて精製を行ない、mRNAをシングルバンドにして、上記と同様の条件でライゲーションを行った。結果を図20に示す。
【0152】
図20に示すように、リンカー・mRNAのライゲーション産物は、実際にはmRNAより50塩基程大きいはずだが、400〜500ntsに見られるのは、mRNAの一部が分解しているものと考えられた。逆に言えば、リンカー(50nts)同士の結合物としてはサイズが大きすぎて説明がつかない。このことから、リンカーとmRNAとが結合していることが確認された。
一方で、反応を進めていく過程でmRNAが徐々に短くなっていることが明らかになり、引き続く反応で使用するためには、mRNAの分解を防ぐ必要があることが示された。mRNAが短くなった原因としては、mRNAが不安定な物質であり、RNaseによる分解や加熱による加水分解等が起こりやすいこと、及び脱リン酸化酵素の反応溶液に亜鉛イオンが含まれているため、加熱時の加水分解が促進されてしまった可能性があること等が考えられた。
【0153】
(3−3)転写及びリンカーとの結合−その2
別のロットのT4 RNAリガーゼを用いて、再度、mRNAの5’末端の三リン酸とリンカーの3’末端の-OHとの結合を試みた。今回は、mRNAに対してBG-リンカーが過剰量となるように加えてハイブリダイズさせ(表2参照)、T4 RNAリガーゼを100ユニット/μL加えて反応させたところ、mRNAにBG-リンカーが結合したことが確認できた。結果を図21に示す。
【0154】
【表2】
【0155】
通常、T4 RNAリガーゼは、5’リン酸末端のオリゴヌクレオチドと3’-OHのオリゴヌクレオチドとを連結させるが、ここで用いた別のロットの酵素は先に使用したものよりも活性が高いため、スター活性的にmRNAの三リン酸の5’末端とリンカーの3’-OHとを結合したものと考えられた。さらに、1段階の反応でリンカーとmRNAとを結合させることができたため、mRNAの分解も抑えられた。したがって、この方法がリンカーとmRNAとの連結に適していることが確認された。
【0156】
(実施例3)PUREflexを用いたin vitro 翻訳
(1)in vitro 翻訳
上記実施例1で作製したBGリンカー・mRNAのライゲーション産物を、PUREflex(日本ミリポア(株)社製)を用いて翻訳した。まず、xμLのライゲーション産物(xpmol)、25μLの溶液1、2.5μLの溶液2、2.5μLの溶液3、5μLのRNase インヒビター(40ユニット/μL)及び(15−x)μLのRNase free waterを含む翻訳用バッファー(合計50μL)を調製し、37℃で、1〜4時間インキュベートして翻訳産物を得た。
【0157】
次に、6μLの翻訳産物、4μLの0.5M EDTA及び10μLの2xローディングバッファーを含むゲル電気泳動用溶液を調製し、95℃で3分間インキュベートした。以上のようにしてゲル電気泳動用サンプルを得た。
【0158】
ゲル電気泳動用に、1.5Mトリス−塩酸(pH8.8)、0.5Mトリス−塩酸(pH6.8)、2xSDS-PAGE用ランニングバッファー(25mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、192mMのグリシン及び0.1%SDSを含む)、2xSDSローディングバッファー(0.1MのTris-HCl (pH6.8)、4%のSDS、20%グリセロール、色素BPB及びXCを含む)、PBS-Tバッファー(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4・12H2O、1.8mM K2HPO4(6M NaOHでpH7.4に調整)及び0.1%のTween 20を含む)、及び40%アクリルアミドストック(アクリルアミド/ビスアクリルアミド=19/1;38%(w/v)のアクリルアミド及び2%(w/v)のN,N’-メチレン-ビスアクリルアミドを含む)を調製した。
【0159】
0.5mLの40%アクリルアミドストック、1.25mLの0.5Mトリス−塩酸(pH6.8)、250μLの2%SDSを含み(必要に応じて、16μLの20%APS及び5μLのTEMEDを加える)、蒸留水で5mLにメスアップして、スタッキングゲルを調製した。また、1.5mLの40%アクリルアミドストック、2.5mLの1.5Mトリス−塩酸(pH8.8)、500μLの2%SDSを含み(必要に応じて、33μLの20%APS及び10μLのTEMEDを加える)、蒸留水で10mLにメスアップして、ランニングゲルを調製した。
【0160】
以上のようにして得られたゲル電気泳動用サンプルをゲルの各ウェルにアプライし、20mAで2時間、ゲル電気泳動を行なった。ゲル電気泳動終了後にイメージャーでFITCを検出し、ライゲーションされているか否かを確認した。引き続き、SYBR Green 2で一本鎖DNAを染色し、RNAの分解産物があるか否かを確認した。
【0161】
翻訳後、BGリンカー・mRNAのライゲーション産物よりも大きなサイズの位置にバンドが見られ、翻訳されたMGMTがリンカーのBGに結合したものと考えられた。さらに、mRNAと未反応の残存するBGリンカーが翻訳されたタンパク質と結合してできたタンパク質・BGリンカー結合体のバンドも確認された。これは、MGMTの合成の成功と、リンカーのBGとMGMTとが結合したことを示していた。
【0162】
翻訳時間を、0.5時間、1時間、3.5時間として、試験管内翻訳産物の変化を調べたところ、インビトロ翻訳の時間が長くなるにつれて、タンパク質・BGリンカー結合体の量が増加していた。これは、リボソームが代謝回転して過剰量のMGMTタンパク質が作られたためと考えられた(図22参照)。
【0163】
また、得られた翻訳産物500pgに0.1μgのプロテイナーゼKを作用させたところ、MGMTタンパク質-BGリンカー・mRNA結合体と思われるバンド及びMGMTタンパク質・BGリンカー結合体のバンドが薄くなった。このことから、いずれのバンドも、タンパク質との結合体であることが確認された。また、MGMTとBGリンカーとを、上記のリンカー−mRNA結合体を翻訳するときの反応の条件で反応させ、タンパク質・BGリンカー結合体のバンドの位置を確認した(図23参照)。
【0164】
得られた翻訳産物0.5pmolを6μgのRNase Aで37℃にて30分間処理したところ、タンパク質-BGリンカー・mRNA結合体と思われるバンド及びBGリンカー・mRNA結合体のバンドがいずれも消失した。このため、これら2つのバンドはいずれもRNA結合体であることが確認された。さらに、タンパク質(MGMT)-BGリンカー結合体のバンドのみが残ることも確認された(図24参照)。このことはBGリンカーが目的どおり、mRNAおよびタンパク質(MGMT)の両者と結合していることを表している。
【0165】
(2)翻訳産物のHisタグ精製
次に、Hisタグ精製用に、137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM リン酸二ナトリウム・12水和物及びリン酸二水素カリウムを含む1xPBS(6M NaOHでpH 7.4に調整)及び20mM リン酸ナトリウム及び500mMのイミダゾール(6M NaOHでpH 7.4に調整)を含むHisMag溶出バッファーを調製した。
【0166】
His Magセファロース Niを40μL取って、1.5mLの低吸着チューブに入れた。ここに、200μLのPBSを入れて懸濁し、磁石に付けて上清を捨てた。200μLのPBSを入れて懸濁し、磁石に付けて上清を捨てるという操作を2回繰り返した。次いで、精製したいインビトロ翻訳産物を入れ、全量が100μLとなるようにPBSを加え、ローテーターに入れ、10℃で一晩置いた。PBSを入れて懸濁し、上清を捨てるという上記と同じ操作を2回繰した。ここに20μLの溶出バッファーを加えて懸濁し、磁石に付けて上清を回収した。上清を回収する操作を再度行い、回収した産物をSDS-PAGEで確認した。その結果、Hisタグ精製の溶出液をゲル電気泳動に供しても、バンドは見られず、Hisタグ精製ができないことが明らかになった。結果を図25に示す。
【0167】
(実施例4)コンストラクトの改良によるHisタグの提示の改善
(1)コンストラクト1の立体構造の予測
既に述べた通り、実施例1で得られたコンストラクト1は、MGMTの後ろに4アミノ酸長のスペーサーを挟んでHisタグ配列が来るように設計されている。このため、本来ならば、HisタグがNi-NTAビーズに結合して、翻訳産物が回収されるはずである。しかし、逆の結果が出たことから、SWISS-MODEL構造予測にもとづき、コンピューターシミュレーションでHisタグ部分がどのようにフォールディングしているかを検討した。
【0168】
上記コンストラクト1では、HisタグがMGMTのβシートと相互作用しているものと推定され、これによってHisタグ精製が上手くいかなかったと考えられた。これは、立体障害、又はタンパク質のフォールディングの際にHisタグがタンパク質の内部に巻き込まれてしまい、精製用のタグとしての役割を果たしていないこと、その結果、Ni-NTAビーズに結合しないことに起因することによるものと考えられた。
【0169】
(2)コンストラクト2の立体構造の予測
そこで、MGMTとHisタグ配列との間に、4アミノ酸長のスペーサーと、19アミノ酸長のαスタンドペプチドとを挟んだ構造を、SWISS-MODEL構造予測法にもとづいて、コンピューターシミュレーションした(図26(A)及び(B)参照)。この結果、このコンストラクト2では、Hisタグ部分はタンパク表面に出ており、Hisタグ精製に好適な構造をとることが明らかになった。このため、以下のようにしてDNAコンストラクト2を作製し、Hisタグ精製を試みた。
【0170】
(3)コンストラクト2の作製と実践評価
コンストラクト1の作製と同様にして、コンストラクト2を構成する各領域を増幅させ、最後にこれらを連結し、オーバーラップPCR法を用いて896bpのコンストラクト2(コンストラクト2に挿入されたHis Tag提示用部分(57nts)の配列については、配列表の配列番号15を参照)を作製した。
【0171】
すなわち、MGMT領域をコンストラクト1を作製した場合と同様にPCRで増幅させた。次いで、上記と同様にオーバーラップPCR法を用いて、MGMT領域にT7領域を付加した。その後、ランダム領域をビーズにて精製し、T7領域を付加したMGMT領域、及びスペーサーを含むHis-タグを付加したランダム領域を、上記と同様にしてPCRで増幅させ、コンストラクト2(フルコンストラクト)を得た。
【0172】
上述したのと同じ方法で上記コンストラクト2をmRNAに転写させ、866merのmRNA(配列表の配列番号16)を得た。ここで、Nは、G,A,U,及びCからなる群から選ばれるいずれかの塩基を表し、KはG又はUを表す。
【0173】
このmRNAを、上記コンストラクト1と同様に処理したところ、先ず、in vitro 翻訳のレーンから、“タンパク質・BGリンカー・mRNA”の三者結合体、及び過剰に翻訳されたタンパク質と余剰なBGリンカーとが結合してできる“タンパク質・BGリンカー”の結合体とがそれぞれ確認された。そのHisタグ精製物からHisタグによって釣り上げられたことを示すバンド(三者結合体)は精製前から痕跡的で、ゲルのトップにわずかに検出される。この写真では確認できないが、一方で、His-tag精製溶出液(左から3番目及び4番目のレーン)では、過剰に翻訳されてできた“タンパク質−BGリンカー”の結合体が鮮明に現れており、一方、Hisタグを含まないBGリンカー・mRNA連結体は消失しており、これは、明らかにHisタグで精製されるタンパク質配列の存在を意味していた。
【0174】
この結果、コンストラクト2がうまくいっていることが示された。なお、ここで得られたタンパク質は249アミノ酸で構成されるタンパク質(配列表の配列番号17)と推定された(図27参照)。ここで、Xはいずれかのアミノ酸を表す。
【0175】
(4)結果
以上より、mRNAの5’末端側にBGリンカーを結合させること、さらにそのBGリンカーに翻訳されたタンパク質が結合することを確認し、Head-to-Head Linking(H-to-H 結合)を形成させることができた。この技術では、大量のリボソームを使用することなく、インビトロ翻訳が可能である。なお、H-to-H 結合を実際のインビトロセレクションに使用する際には、翻訳前に未反応のリンカーを取り除くステップを加えることで、この方法が改善されることが期待された。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明は、進化工学分野、ペプチド創薬スクリーニング分野、医療分野、及び診断分野で有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0177】
配列番号1:H2Hリンカーの塩基配列
配列番号2:MGMTのDNA配列
配列番号3:MGMT DNA増幅用プライマー
配列番号4:MGMT DNA増幅用プライマー
配列番号5:T7プライマー
配列番号6:ビオチン−cNew Ytagプライマー
【0178】
配列番号7:逆転写用プライマー
配列番号8:His tag−XaR プライマー
配列番号9:PCRで増幅されたMGMTのmRNA
配列番号10:配列番号9から翻訳されたタンパク質のアミノ酸配列
配列番号11:人工的なミオグロビンタンパク質のアミノ酸配列
【0179】
配列番号12:N末端遊離型スタンドペプチド
配列番号13:C末端遊離型スタンドペプチド
配列番号14:ランダムプライマー
配列番号15:コンストラクト2に挿入されたHis−tag提示配列
配列番号16:コンストラクト2のmRNA
配列番号17:配列番号16から翻訳されたタンパク質のアミノ酸配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
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図20
図21
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図23
図24
図25
図26
図27
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]