【実施例】
【0108】
(実施例1)O
6-メチルグアニン-DNA-メチルトランスフェラーゼ(MGMT)を含むDNAコンストラクトの作製
(1)材料及び方法
NaCl、KCl、リン酸水素二ナトリウム・12水、リン酸二水素カリウム、6M NaOH、EDTA(エチレンジアミン四酢酸ナトリウム)、ホルムアミドは、和光純薬工業(株)より購入した。MgCl
2はナカライテスク(株)より購入した。HEPESは(株)同仁化学研究所より、ジチオスレイトール及びトライトンX-100はSIGMA社より、それぞれ購入した。
【0109】
(2)MGMTの活性の確認及びMGMTをコードするDNAの増幅
(2−1)溶液の調製
まず、蛍光強度によってMGMTの活性を評価するために、10xD-PBS(1.37M NaCl、27mM KCl、100mM リン酸水素二ナトリウム・12水和物、18mM リン酸二水素カリウム(6M NaOHでpH7.4に調整))、1x反応バッファー(10mM MgCl
2、1mM ジチオスレイトール、100mM NaCl、18mM HEPES(pH 7.5)、50mM KCl、0.025% トライトンX-100、1μg/mL BSA)、及び停止液(90%ホルムアミド及び20mM EDTA(pH8.0))を調製した。
【0110】
(2−2)酵素溶液等の準備
ついで、基質FQ(2.5pmol/μL:2μLの10μM MGMT F (FITC-MGMT23)、2μLの10μM MGMT Q (MGMT-BHQ1)、3.2μLの水及び0.8μLの10xD-PBS(-)を含む;合計8μL)又は基質F100(2.5pmol/μL:1μLの10μM MGMT F100、2.6μLの水及び0.4μLの10xD-PBS(-)を含む;合計4μL)という2種類の基質溶液を調製した。
【0111】
上記の2種類の基質溶液を、それぞれ95℃で1分インキュベートし、その後、1℃/秒で37℃まで降温させた。37℃で5分インキュベートした後に、1℃/秒で4℃までさらに降温させ、4℃でハイブリダイゼーションを行った。これらの基質溶液をMGMT基質ストック溶液として、使用まで−20℃で保存した。なお、基質の蛍光強度は時間とともに低下するため、調整した日のうちに使用した。また、MGMTの基質アナログであるO
6-ベンジルグアニン(以下、「O
6-BG」又は、単に「BG」ということがある。)のストック溶液を、上記の1x反応バッファーを用いて調製した。
【0112】
(2−3)BGリンカーの作製
本発明のmRNAディスプレイ法及びcDNAディスプレイ法に使用するリンカーは、つくばオリゴサービス(株)に合成を委託した。
【0113】
(実施例2)2つのDNAコンストラクトの調製
2つのコンストラクト(以下、「コンストラクト1」及び「コンストラクト2」という。)を以下のようにして調製した。これらのコンストラクトの模式的な全体構造を
図4(A)及び(B)に示す。また、コンストラクト1のDNA配列(839bp)、mRNA配列(809bp)及びタンパク質配列(230aa)を、配列表の配列番号2〜4に示した。同様に、コンストラクト2のDNA配列(896bp)、mRNA配列(866bp)及びタンパク質配列(249aa)を、配列表の配列番号5〜7に示した。
【0114】
(1)コンストラクト1の調製
(1−1)MGMT領域の増幅
MGMT領域を増幅させるために、MGMT増幅用溶液(0.5μLのプライムスター(タカラバイオ(株)製)、10μLの5xプライムスター反応バッファー、4μLの2.5 mM dNTP混合物、1μLの10μM MGMTプライマー1、1μLの10μM MGMTプライマー2、0.5μLのSF-コンストラクト-MGMT及び33μLのD.D.W.(二回蒸留水)を含む。合計50μL)を調製した。次いで、95℃で2分、95℃で20秒、65℃で5秒、72℃で30秒というサイクルを30回繰り返してPCRによる増幅を行ない、72℃で5分加熱した後に4℃に冷却して反応を停止させ、PCR産物1を得た。この後、得られたPCR産物1から1μLを取り、7μLの蒸留水及び8μLの2xSTRと混合し、95℃で3分間加熱し、ゲル電気泳動用サンプルとした。
【0115】
アクリルアミド、N,N’-メチレン-ビス(アクリルアミド)(BIS)、過硫酸アンモニウム(APS)、N,N,N’,N’-テトラメチル-エチレンジアミン(TEMED)、尿素、2−メルカプトエタノール、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)は、和光純薬工業(株)より購入し、ポリアクリルアミドゲルの調製に使用した。また、ホウ酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンも和光純薬工業(株)より購入し、5xTBEバッファーの調製に使用した。
【0116】
ミニゲル(8Mの尿素を含む4%アクリルアミドゲル)にサンプルをアプライし、ランニングバッファーとして0.5xTBEバッファーを用いて、200V、60℃で90分間、ゲル電気泳動を行なった。ゲル電気泳動終了後に、SYBR Green II Nucleic Acid Gel Stains(SYBR Green 2と略すことがある(タカラバイオ(株)製)で一本鎖DNAを染色し、イメージャーで検出した。結果を
図11に示す。
【0117】
(1−2)増幅したMGMT領域へのT7領域の付加
オーバーラップPCRにより、上記(1−1)で得られたMGMT領域にT7領域を付加するために、T7領域付加用溶液(0.5μLのプライムスター、10μLの5xプライムスター反応バッファー、4μLの2.5 mM dNTP混合物、1μLの10μM T7プライマー、0.3μLの10μM T7-リンカーハイブリ-MGMT、1μLの10μM MGMTプライマー2、1μLのMGMT PCR産物及び33μLのD.D.W.を含む、合計50μL)を調製した。
【0118】
上記T7領域付加用溶液をサーマルサイクラーに入れ、95℃で2分処理した後に、[95℃で20秒、65℃で5秒、72℃で30秒]というサイクルを30回繰り返し、次いで72℃で5分加熱した後に、4℃に冷却した。1μLのPCR産物と7μLの蒸留水、及び8μLの2xSTRを混合し、95℃にて3分間加熱した。これをサンプルとして、ミニゲル(4%アクリルアミドゲル、8M尿素を含む。)にアプライし、ランニングバッファーとして0.5xTBEバッファーを用いて、200V、60℃で90分間ゲル電気泳動を行なった。ゲル電気泳動終了後に、SYBR Green 2で一本鎖DNAを染色し、イメージャーで検出した。
【0119】
目的とする621 bpの位置に現れたバンドからMGMT配列を含むPCR産物2を得た(
図11参照)。次いで、MGMTの上流にT7プロモーター領域の配列を、3’末端が相互にオーバーラップした2種のDNA(T7プロモーター用及びMGMT用)を等量で混合し、通常のPCR条件でオーバーラップPCRを行なって繋ぎ、733bpのT7-MGMT配列を得た(
図12参照)。
【0120】
(1−3)ランダム領域の増幅
次いで、ランダム領域を増幅させるために、ランダム領域増幅用バッファー(4μLのVent
R (exo-) DNAポリメラーゼ(BioLabs社製)、20μLの10xVent
R (exo-) DNAポリメラーゼ反応バッファー、4μLの100mM MgSO
4、16μLの2.5mM dNTP混合物、2μLの100μM MGMT-His tag Xaプライマー、2μLの100μMビオチン-cNew Ytagプライマー、1μLの10μMランダムテンプレート及び151μLのD.D.W.を含む。合計200μL)を調製した。このバッファーをサーマルサイクラーに入れ、95℃で2分処理した後に、[95℃で20秒、65℃で30秒、75℃で1分]というサイクルを30回繰り返し、72℃で5分加熱した後に、4℃に冷却してPCR産物3を得た。
【0121】
上記のようにして得られたPCR産物3から1μLを取り、1μLの2xSTRと混合して95℃で3分間加熱した。次いで、この溶液をサンプルとしてマイクロゲル(8Mの尿素を含む8%アクリルアミドゲル)にアプライし、ランニングバッファーとして1xTBEバッファー用いて、100V、55℃で10分間ゲル電気泳動を行なった。ゲル電気泳動終了後にSYBR Green 2で一本鎖DNAを染色し、イメージャーで検出した。
【0122】
次いで、上記のPCR産物3に、1/10倍容のQuick-Precip
TMPlus Solution (10mM トリス-塩酸(pH 8.0), 1mM EDTA及び5M NaClを含む。EdgeBio社製) と2.5倍容の99%エタノールとを加えて混合し、13,000rpm(12,000xg)で15分間遠心した。次いで、白い沈殿を落とさないように上清を捨て、70%エタノールを加えて混合し、再度、13,000rpmで10分間遠心した。白い沈殿を落とさないように上清を捨て、エバポレーターでエタノールを完全に飛ばし、その後、蒸留水にDNAペレットを溶解させ、ナノドロップ(Thermo Fischer Scientific社製)でDNA濃度を測定した。
【0123】
(1−4)PCR増幅されたランダム領域のビーズ精製
50μLのストレプトアビジンビーズ(Dynabeads MyOne Streptavidin C1、Invtrogen社製)を低吸着チューブに入れ、このチューブを磁石に付けて、上清を捨てた。ここに、100μLの1x結合バッファーを入れて混合し、磁石に付けて、上清を捨てた。100μLの1x結合バッファーを入れて混合し、磁石に付けて、上清を捨てるという操作をさらに2回繰り返した。
【0124】
ここに上記(1−2)で得られたPCR産物3(ランダム領域)を20μL(約37μg)、蒸留水を30μL、及び2x結合バッファーを50μL加えて混合した。この溶液をローテーターに入れて4℃で回転させ、一晩置いた。このチューブを磁石に付けて、上清を捨てた。100μLの1x結合バッファーを入れて混合し、磁石に付けて、上清を捨てるという操作を3回繰り返した。
【0125】
50μLの解離バッファー(10 mM EDTA を含む95%ホルムアミド)を加えて、ローテーター中に入れ、70℃で15分間反応させ、磁石に付けて上清を回収した。50μLの解離バッファーを加えてローテーター中に入れ、70℃で15分間反応させ、磁石に付けて上清を回収するという操作を再度行った。
【0126】
回収した上清を、上記(1−3)のPCR産物3の精製と同様に、Quick-Precip Plus Solutionを用いたエタノール沈殿法によって精製した。蒸留水に遠心で得られたDNAペレットを溶解させ、ナノドロップでDNA濃度を測定した。目的とする128 bpの位置に現れたバンドから、Hisタグ-ランダム領域配列を含むPCR増幅産物を得た(
図13参照)。
【0127】
(1−5)フルコンストラクトの作製
以上のようにして得られたコンストラクト1作製用の各PCR増幅産物を用いて、コンストラクト1をフルコンストラクトとして作製するために、フルコンストラクト作製用バッファー(4μLのVent
R(exo-)DNAポリメラーゼ(BioLabs社製)、20μLの10xVent
R(exo-)DNAポリメラーゼ反応バッファー、4μLの100mM MgSO
4、16μLの2.5mM dNTP混合物、9μLのT7〜MGMT領域(15 pmol)、1.3μLのHis tag〜ランダム領域 (15pmol)及び141.7μLのD.D.W.を含む、合計196μL)を調製した。
【0128】
上記フルコンストラクト作製用バッファーをサーマルサイクラーに入れ、95℃で2分間、次いで75℃で6分間インキュベートした。ここに、2μLの100μMのT7プライマー及び2μLの100μMのBiotin-cNew Ytagプライマーを加えた。この混合物をサーマルサイクラーに入れ、95℃で10秒、65℃で30秒、75℃で1分というサイクルを30回繰り返し、次いで75℃で5分インキュベートし、4℃に冷却してコンストラクト1をフルコンストラクトとして得た。
【0129】
上記のようにして得られたPCR産物4(コンストラクト1)に、1/10倍容のQuick-Precip
TM Plus Solution (10mM トリス-HCl(pH 8.0), 1mM EDTA及び5M NaCl) と2.5倍容の99%エタノールとを加えて混合し、13,000rpm(12,000xg)で15分間遠心した。次いで、白い沈殿を落とさないように上清を捨て、70%エタノールを加えて混合し、再度、13,000 rpmで10分間遠心した。白い沈殿を落とさないように上清を捨て、エバポレーターでエタノールを完全に飛ばし、その後、蒸留水にDNAペレットを溶解させ、ナノドロップでDNA濃度を測定した。
【0130】
1μLのPCR産物4と7μLの蒸留水及び8μLの2xSTRを混合し、95℃で3分間加熱した。これをサンプルとして、ミニゲル(8Mの尿素を含む4%アクリルアミドゲル)にアプライし、ランニングバッファーとして0.5xTBEバッファーを用いて、200V、60℃で90分間ゲル電気泳動を行なった。ゲル電気泳動終了後に、SYBR Green 2で一本鎖DNAを染色し、イメージャーで検出した。
図14のフルコンストラクトを泳動させたレーンで見える2本のバンドのうち、下側に見えるバンドはT7プロモーター-MGMT配列(733bp)の残りで、上側に見えるバンドがランダム領域を含むフルコンストラクト(839bp)であると考えられた。鎖長を確認したところ、目的とする839bp付近にバンドが確認された。
【0131】
839bpのバンドの位置でメスを使ってゲルを切り取り、これを1.5mLチューブに入れてスパーテルですり潰した。ここに、800μLの希釈バッファー(10mMの酢酸マグネシウム、0.5Mの酢酸アンモニウム、1mMのEDTA(pH 8.0)、0.1%SDS)を加え、70℃で一晩インキュベートした。
【0132】
上記のPCR産物4の精製と同様にして精製し、ナノドロップでDNA濃度を測定した。ゲルから切り出して精製したDNAを、ミニゲルでさらにゲル電気泳動を行ない、単一のバンドになっているかどうかを確認した。結果を
図15及び
図16に示す。引き続き、ダイレクトシーケンス解析を行ない、配列が正しいか否かを確認した。
【0133】
(1−6)mRNAへの転写(濃度測定用)
得られたコンストラクト1をmRNAに転写するために、転写用バッファー(2μLのDNAフルコンストラクト(3.6pmol)、3μLの2.5mM rNTP混合物、2μLの5xT7トランスバッファー、2μLのT7酵素混合物及び1μLのRNaseインヒビターを含む。合計10μL)を調製した。上記転写用バッファーをサーマルサイクラーに入れ、37℃で2時間インキュベートした。次いで、ここに1μLのRQ1 RNase-Free DNase (1U/μL、Promega社製)を加え、37℃で15分間インキュベートしてRNA精製用試料とした。RNAの精製には、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を使用した。まず、上記RNA精製用試料に、RNA精製用バッファー(90μLのRNase free water、350μLのRLTバッファー及び250μLの99%エタノール)を加えて、混合液とした。
【0134】
上記混合液をRNeasy 精製カラムに入れ、12,000rpmで15秒間遠心した。コレクションチューブを捨てて、新しいコレクションチューブにカラムを入れ、カラムにRPEバッファーを500μL入れ、12,000rpmで15秒間遠心した。コレクションチューブを捨てて、新しいコレクションチューブにカラムを入れ、80%エタノールを500μL加えて12,000rpmで2分間遠心した。コレクションチューブを捨てて、新しいコレクションチューブにカラムを入れ、カラムの蓋を開け、さらに12,000rpmで5分間遠心した。
【0135】
コレクションチューブを捨てて、新しいコレクションチューブにカラムを入れ、15μLのRNase free waterを加えて室温で3分間置いた。12,000rpmで1分間遠心した。再度15μLのRNase free waterを加えて室温で1分間置いた。その後、12,000rpmで1分間遠心し、ナノドロップでRNAの濃度を測定した。
【0136】
(2)mRNAへの転写(サイズ測定用)
上記(1−5)で得られたDNAコンストラクト1をmRNAへ転写するために、転写用バッファー溶液(2μLのDNAフルコンストラクト(3.6pmol)、3μLの2.5mM rNTP混合物、2μLの5xT7トランスファーバッファー、2μLのT7酵素ミックス、1μLのRNaseインヒビター(RNasin Plus PNase Inhibitor, Promega社製)を含む。合計10μL)を調製した。この転写用バッファーをサーマルサイクラーに入れ、37℃で2時間インキュベートした。ついで、ここにRQ1 RNase-Free DNase (1U/μL)を1μL加え、37℃で15分間インキュベートした。
【0137】
RNeasy Mini Kitを使用し、RNAの精製を行った。まず、RNA精製用バッファー(90μLのRNase free water、350μLのRLTバッファー及び250μLの99%エタノールを含む。合計700μL)を調製し、これをRNeasy Mini Kit中に入れ、12,000rpmで15秒間遠心した。コレクションチューブを捨てて、新しいコレクションチューブにカラムを入れ、このカラムに500μLのRPEバッファーを入れて、再度、12,000rpmで15秒間遠心した。遠心後、このコレクションチューブを捨てて、新しいコレクションチューブにカラムを入れ、このカラムに500μLの80%エタノールを入れて、12,000rpmで2分間遠心した。遠心終了後にコレクションチューブを捨てて、新しいコレクションチューブにカラムを入れ、カラムの蓋を開けて、さらに12,000rpmで5分間遠心した。
【0138】
遠心終了後に、このコレクションチューブを捨てて新しいコレクションチューブにカラムを入れ、ここに15μLのRNase free waterを入れて、室温にて3分間静置し、その後、12,000rpmで1分間遠心した。遠心終了後に、このコレクションチューブを捨てて新しいコレクションチューブにカラムを入れ、ここに15μLのRNase free waterを入れ、室温で1分間静置し、12,000rpmで1分間遠心した。その後、RNAの濃度を測定した。
【0139】
以上のようにして得られたmRNAのおよそのサイズをゲル電気泳動によって確認した(
図17参照)後に、809nts(塩基数)mRNAとして、以下の実験に用い、後続の実験でその正当性を確認した。この段階で厳密な測定はmRNAの量が少なく、また不安定であることから、極めて困難であることによる。
【0140】
(3)リンカーのライゲーション
(3−1)一段階での結合
次いで、得られた809 bpのmRNAの5’末端に、上記(2)で得たFITCラベルしたBGリンカー配列を、ハイブリダイゼーション法で相補結合させ、その後、T4 RNAリガーゼで酵素的に結合した。mRNAに結合したリンカーを、ゲル電気泳動後にFITCの蛍光で検出した。以下、手順に従って詳細を述べる。
【0141】
リンカーのライゲーション用に、下記表1に示す濃度のmRNAとBGリンカーとを用いて、4種類の一段階結合用バッファー(xμLのmRNA(xpmol)、yμLの10μM BG-PEG-リンカー(20xpmol)、及び21.5−(x+y)μLのRNase free waterを含む。合計21.5μL)を調製した。このバッファーをサーマルサイクラーに入れ、90℃で2分間インキュベートし、0.1℃/秒で70℃まで降温させ、70℃で2分間インキュベートし、0.1℃/秒で25℃まで降温させた。次いで、ライゲーションバッファー(2μLのRNase インヒビター(40ユニット/μL)、2.5μLの10xT4 RNAリガーゼバッファー及び1μLのT4 RNAリガーゼ(10〜50ユニット/μL)を含む。合計5.5μL)を調製してここに加え、混合物とした。
【0142】
【表1】
【0143】
上記混合物を25℃で1時間インキュベートして、リンカーをライゲーションさせた。得られたライゲーション産物から1μLを取り、1μLの2xSTRと混合して、95℃で3分間加熱した。この溶液をサンプルとして、上記と同様のマイクロゲル(8Mの尿素を含む8%アクリルアミドゲル)にアプライし、ランニングバッファーとして1xTBEバッファーを用いて、100V、55℃で10〜15分間ゲル電気泳動を行なった。
【0144】
ゲル電気泳動終了後、イメージャーでFITCを検出し、ライゲーションされているか否かを確認した。次いで、SYBR Green 2で一本鎖DNAを染色し、RNAの分解産物があるか否かを確認した。結果を
図18に示す。
【0145】
図18に示すように、FITCによる検出でバンドは見られず、ライゲーション産物が確認されなかったことから、ライゲーションがされていないことが示された。これは、T4 RNA リガーゼが5’リン酸末端のオリゴヌクレオチドと3’-OHのオリゴヌクレオチドとを連結させる酵素であることから、mRNAの三リン酸の5’末端がBG-リンカーと結合されないことによるものと思われた。
【0146】
(3−2)三段階での結合
リンカーのライゲーション用にリン酸基除去用バッファー(8μLのmRNA (8pmol)、1μLの10xアンタークティックリン酸バッファー及び1μLのアンタークティックホスファターゼ(New England Biolabs社製)を含む。合計10μL)を調製した。このバッファーをサーマルサイクラーに入れ、37℃で15分間インキュベートした。次いで70℃で5分間インキュベートし、4℃に冷却してmRNAの5’末端からリン酸基を除去した。この溶液に、ライゲーションバッファー(10.5μLのRNase free water、2.5μLの10xT4 RNAリガーゼバッファー及び1μLのT4ポリヌクレオチドキナーゼ(10ユニット/μL)を含む。合計24μL)を調製して加え、混合物とした。
【0147】
この混合物を37℃で30分間インキュベートし、次いで、1μLの10μMのBG-リンカーを加えて、サーマルサイクラーに入れ、90℃で2分間インキュベートした。0.1℃/秒で70℃まで降温し、70℃で2分間インキュベートした後に、0.1℃/秒で25℃まで降温させた。
【0148】
この試料に、1μLのT4 RNAリガーゼ(10〜50ユニット/μL)を加え、25℃で1時間インキュベートしてライゲーション産物を得た。得られたライゲーション産物から1μLを取り、1μLの2xSTRと混合し、95℃で3分間加熱した。このサンプルを上記(2)と同様にマイクロゲルにアプライし、ランニングバッファーとして1xTBEバッファーを用いて、100V、55℃で10〜15分間ゲル電気泳動を行なった。結果を
図19に示す。
【0149】
図19に示すように、約200塩基付近にFITCラベルのバンドが見られた。SYBER Green2で染色した場合も、同様の位置にバンドが検出され、さらに、809塩基に相当する位置にバンドが検出された。809塩基のmRNAと50塩基のmRNA断片とが結合すると859塩基のバンドが見られるはずであるが、今回見られたバンドはそれよりもはるかに遅く移動しているように見えるのは、リンカーが分枝構造を有する、かさばった構造となっているためと考えられた。
【0150】
また、転写して得られたmRNAには、150塩基又は180塩基程度の大きさのmRNA断片が含まれていた。こうした断片のmRNAにリンカーが結合すると、FITCで見られたバンドの大きさと一致することから、染色で検出されたバンドは、これらのmRNA断片にリンカーが結合したものであるか、又はリンカー同士が結合したものではないかと考えられた。
【0151】
リンカー同士の結合ではなく、mRNAの5’末端とリンカーの3’末端との結合が形成されたことを確認するために、上記のゲル電気泳動結果から、mRNAのバンドを切り出して上記と同様の条件にて精製を行ない、mRNAをシングルバンドにして、上記と同様の条件でライゲーションを行った。結果を
図20に示す。
【0152】
図20に示すように、リンカー・mRNAのライゲーション産物は、実際にはmRNAより50塩基程大きいはずだが、400〜500ntsに見られるのは、mRNAの一部が分解しているものと考えられた。逆に言えば、リンカー(50nts)同士の結合物としてはサイズが大きすぎて説明がつかない。このことから、リンカーとmRNAとが結合していることが確認された。
一方で、反応を進めていく過程でmRNAが徐々に短くなっていることが明らかになり、引き続く反応で使用するためには、mRNAの分解を防ぐ必要があることが示された。mRNAが短くなった原因としては、mRNAが不安定な物質であり、RNaseによる分解や加熱による加水分解等が起こりやすいこと、及び脱リン酸化酵素の反応溶液に亜鉛イオンが含まれているため、加熱時の加水分解が促進されてしまった可能性があること等が考えられた。
【0153】
(3−3)転写及びリンカーとの結合−その2
別のロットのT4 RNAリガーゼを用いて、再度、mRNAの5’末端の三リン酸とリンカーの3’末端の-OHとの結合を試みた。今回は、mRNAに対してBG-リンカーが過剰量となるように加えてハイブリダイズさせ(表2参照)、T4 RNAリガーゼを100ユニット/μL加えて反応させたところ、mRNAにBG-リンカーが結合したことが確認できた。結果を
図21に示す。
【0154】
【表2】
【0155】
通常、T4 RNAリガーゼは、5’リン酸末端のオリゴヌクレオチドと3’-OHのオリゴヌクレオチドとを連結させるが、ここで用いた別のロットの酵素は先に使用したものよりも活性が高いため、スター活性的にmRNAの三リン酸の5’末端とリンカーの3’-OHとを結合したものと考えられた。さらに、1段階の反応でリンカーとmRNAとを結合させることができたため、mRNAの分解も抑えられた。したがって、この方法がリンカーとmRNAとの連結に適していることが確認された。
【0156】
(実施例3)PUREflexを用いたin vitro 翻訳
(1)in vitro 翻訳
上記実施例1で作製したBGリンカー・mRNAのライゲーション産物を、PUREflex(日本ミリポア(株)社製)を用いて翻訳した。まず、xμLのライゲーション産物(xpmol)、25μLの溶液1、2.5μLの溶液2、2.5μLの溶液3、5μLのRNase インヒビター(40ユニット/μL)及び(15−x)μLのRNase free waterを含む翻訳用バッファー(合計50μL)を調製し、37℃で、1〜4時間インキュベートして翻訳産物を得た。
【0157】
次に、6μLの翻訳産物、4μLの0.5M EDTA及び10μLの2xローディングバッファーを含むゲル電気泳動用溶液を調製し、95℃で3分間インキュベートした。以上のようにしてゲル電気泳動用サンプルを得た。
【0158】
ゲル電気泳動用に、1.5Mトリス−塩酸(pH8.8)、0.5Mトリス−塩酸(pH6.8)、2xSDS-PAGE用ランニングバッファー(25mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、192mMのグリシン及び0.1%SDSを含む)、2xSDSローディングバッファー(0.1MのTris-HCl (pH6.8)、4%のSDS、20%グリセロール、色素BPB及びXCを含む)、PBS-Tバッファー(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na
2HPO
4・12H
2O、1.8mM K
2HPO
4(6M NaOHでpH7.4に調整)及び0.1%のTween 20を含む)、及び40%アクリルアミドストック(アクリルアミド/ビスアクリルアミド=19/1;38%(w/v)のアクリルアミド及び2%(w/v)のN,N’-メチレン-ビスアクリルアミドを含む)を調製した。
【0159】
0.5mLの40%アクリルアミドストック、1.25mLの0.5Mトリス−塩酸(pH6.8)、250μLの2%SDSを含み(必要に応じて、16μLの20%APS及び5μLのTEMEDを加える)、蒸留水で5mLにメスアップして、スタッキングゲルを調製した。また、1.5mLの40%アクリルアミドストック、2.5mLの1.5Mトリス−塩酸(pH8.8)、500μLの2%SDSを含み(必要に応じて、33μLの20%APS及び10μLのTEMEDを加える)、蒸留水で10mLにメスアップして、ランニングゲルを調製した。
【0160】
以上のようにして得られたゲル電気泳動用サンプルをゲルの各ウェルにアプライし、20mAで2時間、ゲル電気泳動を行なった。ゲル電気泳動終了後にイメージャーでFITCを検出し、ライゲーションされているか否かを確認した。引き続き、SYBR Green 2で一本鎖DNAを染色し、RNAの分解産物があるか否かを確認した。
【0161】
翻訳後、BGリンカー・mRNAのライゲーション産物よりも大きなサイズの位置にバンドが見られ、翻訳されたMGMTがリンカーのBGに結合したものと考えられた。さらに、mRNAと未反応の残存するBGリンカーが翻訳されたタンパク質と結合してできたタンパク質・BGリンカー結合体のバンドも確認された。これは、MGMTの合成の成功と、リンカーのBGとMGMTとが結合したことを示していた。
【0162】
翻訳時間を、0.5時間、1時間、3.5時間として、試験管内翻訳産物の変化を調べたところ、インビトロ翻訳の時間が長くなるにつれて、タンパク質・BGリンカー結合体の量が増加していた。これは、リボソームが代謝回転して過剰量のMGMTタンパク質が作られたためと考えられた(
図22参照)。
【0163】
また、得られた翻訳産物500pgに0.1μgのプロテイナーゼKを作用させたところ、MGMTタンパク質-BGリンカー・mRNA結合体と思われるバンド及びMGMTタンパク質・BGリンカー結合体のバンドが薄くなった。このことから、いずれのバンドも、タンパク質との結合体であることが確認された。また、MGMTとBGリンカーとを、上記のリンカー−mRNA結合体を翻訳するときの反応の条件で反応させ、タンパク質・BGリンカー結合体のバンドの位置を確認した(
図23参照)。
【0164】
得られた翻訳産物0.5pmolを6μgのRNase Aで37℃にて30分間処理したところ、タンパク質-BGリンカー・mRNA結合体と思われるバンド及びBGリンカー・mRNA結合体のバンドがいずれも消失した。このため、これら2つのバンドはいずれもRNA結合体であることが確認された。さらに、タンパク質(MGMT)-BGリンカー結合体のバンドのみが残ることも確認された(
図24参照)。このことはBGリンカーが目的どおり、mRNAおよびタンパク質(MGMT)の両者と結合していることを表している。
【0165】
(2)翻訳産物のHisタグ精製
次に、Hisタグ精製用に、137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM リン酸二ナトリウム・12水和物及びリン酸二水素カリウムを含む1xPBS(6M NaOHでpH 7.4に調整)及び20mM リン酸ナトリウム及び500mMのイミダゾール(6M NaOHでpH 7.4に調整)を含むHisMag溶出バッファーを調製した。
【0166】
His Magセファロース Niを40μL取って、1.5mLの低吸着チューブに入れた。ここに、200μLのPBSを入れて懸濁し、磁石に付けて上清を捨てた。200μLのPBSを入れて懸濁し、磁石に付けて上清を捨てるという操作を2回繰り返した。次いで、精製したいインビトロ翻訳産物を入れ、全量が100μLとなるようにPBSを加え、ローテーターに入れ、10℃で一晩置いた。PBSを入れて懸濁し、上清を捨てるという上記と同じ操作を2回繰した。ここに20μLの溶出バッファーを加えて懸濁し、磁石に付けて上清を回収した。上清を回収する操作を再度行い、回収した産物をSDS-PAGEで確認した。その結果、Hisタグ精製の溶出液をゲル電気泳動に供しても、バンドは見られず、Hisタグ精製ができないことが明らかになった。結果を
図25に示す。
【0167】
(実施例4)コンストラクトの改良によるHisタグの提示の改善
(1)コンストラクト1の立体構造の予測
既に述べた通り、実施例1で得られたコンストラクト1は、MGMTの後ろに4アミノ酸長のスペーサーを挟んでHisタグ配列が来るように設計されている。このため、本来ならば、HisタグがNi-NTAビーズに結合して、翻訳産物が回収されるはずである。しかし、逆の結果が出たことから、SWISS-MODEL構造予測にもとづき、コンピューターシミュレーションでHisタグ部分がどのようにフォールディングしているかを検討した。
【0168】
上記コンストラクト1では、HisタグがMGMTのβシートと相互作用しているものと推定され、これによってHisタグ精製が上手くいかなかったと考えられた。これは、立体障害、又はタンパク質のフォールディングの際にHisタグがタンパク質の内部に巻き込まれてしまい、精製用のタグとしての役割を果たしていないこと、その結果、Ni-NTAビーズに結合しないことに起因することによるものと考えられた。
【0169】
(2)コンストラクト2の立体構造の予測
そこで、MGMTとHisタグ配列との間に、4アミノ酸長のスペーサーと、19アミノ酸長のαスタンドペプチドとを挟んだ構造を、SWISS-MODEL構造予測法にもとづいて、コンピューターシミュレーションした(
図26(A)及び(B)参照)。この結果、このコンストラクト2では、Hisタグ部分はタンパク表面に出ており、Hisタグ精製に好適な構造をとることが明らかになった。このため、以下のようにしてDNAコンストラクト2を作製し、Hisタグ精製を試みた。
【0170】
(3)コンストラクト2の作製と実践評価
コンストラクト1の作製と同様にして、コンストラクト2を構成する各領域を増幅させ、最後にこれらを連結し、オーバーラップPCR法を用いて896bpのコンストラクト2(コンストラクト2に挿入されたHis Tag提示用部分(57nts)の配列については、配列表の配列番号15を参照)を作製した。
【0171】
すなわち、MGMT領域をコンストラクト1を作製した場合と同様にPCRで増幅させた。次いで、上記と同様にオーバーラップPCR法を用いて、MGMT領域にT7領域を付加した。その後、ランダム領域をビーズにて精製し、T7領域を付加したMGMT領域、及びスペーサーを含むHis-タグを付加したランダム領域を、上記と同様にしてPCRで増幅させ、コンストラクト2(フルコンストラクト)を得た。
【0172】
上述したのと同じ方法で上記コンストラクト2をmRNAに転写させ、866merのmRNA(配列表の配列番号16)を得た。ここで、Nは、G,A,U,及びCからなる群から選ばれるいずれかの塩基を表し、KはG又はUを表す。
【0173】
このmRNAを、上記コンストラクト1と同様に処理したところ、先ず、in vitro 翻訳のレーンから、“タンパク質・BGリンカー・mRNA”の三者結合体、及び過剰に翻訳されたタンパク質と余剰なBGリンカーとが結合してできる“タンパク質・BGリンカー”の結合体とがそれぞれ確認された。そのHisタグ精製物からHisタグによって釣り上げられたことを示すバンド(三者結合体)は精製前から痕跡的で、ゲルのトップにわずかに検出される。この写真では確認できないが、一方で、His-tag精製溶出液(左から3番目及び4番目のレーン)では、過剰に翻訳されてできた“タンパク質−BGリンカー”の結合体が鮮明に現れており、一方、Hisタグを含まないBGリンカー・mRNA連結体は消失しており、これは、明らかにHisタグで精製されるタンパク質配列の存在を意味していた。
【0174】
この結果、コンストラクト2がうまくいっていることが示された。なお、ここで得られたタンパク質は249アミノ酸で構成されるタンパク質(配列表の配列番号17)と推定された(
図27参照)。ここで、Xはいずれかのアミノ酸を表す。
【0175】
(4)結果
以上より、mRNAの5’末端側にBGリンカーを結合させること、さらにそのBGリンカーに翻訳されたタンパク質が結合することを確認し、Head-to-Head Linking(H-to-H 結合)を形成させることができた。この技術では、大量のリボソームを使用することなく、インビトロ翻訳が可能である。なお、H-to-H 結合を実際のインビトロセレクションに使用する際には、翻訳前に未反応のリンカーを取り除くステップを加えることで、この方法が改善されることが期待された。