【実施例1】
【0019】
本実施例では、出力可能な最大全電気ブレーキ力特性に基づいて、発車前に駅間の巡航速度を設定し、その後、停止制御開始までの間に、当該設定された巡航速度に基づいて、ブレーキパターンを決定する自動列車運転装置の例を説明する。
【0020】
まず、
図1を参照して、本発明の自動列車運転装置101の構成について説明する。自動列車運転装置101は、駅間の走行パターンを計画する走行パターン計画手段102と、前記走行パターン計画手段102で計画された走行パターンに従って列車を走行させるための制御指令を算出する制御指令算出手段103と、で構成される。走行パターンの一例として、位置に応じた目標走行速度が挙げられる。
図1に示すように本実施例では前記自動列車運転装置101を車上に搭載する例を示すが、前記走行パターン計画手段102を地上に、前記制御指令算出手段103を車上に分散させて配置することも可能である。
【0021】
前記走行パターン計画手段102は、最大全電気ブレーキ力特性設定手段104と、巡航速度設定手段105と、ブレーキパターン決定手段106とから構成される。
【0022】
前記最大全電気ブレーキ力特性設定手段104は、応荷重情報、天候情報、および列車駆動用の駆動装置の主回路の故障情報を入力とし、当該列車で現在出力できる最大の全電気ブレーキ力特性を設定する。本設定方法は後述する。前記最大全電気ブレーキ力特性設定手段104から出力されたブレーキ力特性は、前記巡航速度設定手段105と前記ブレーキパターン決定手段106とに入力される。
【0023】
前記巡航速度設定手段105は、自列車の現在駅の予定発車時刻と、自列車の次駅への目標到着時刻と、次駅までの駅間路線条件と自列車の車両条件と、前記最大全電気ブレーキ力特性設定手段104の出力である最大全電気ブレーキ力特性と、を入力とし、次駅までの走行パターンにおける巡航速度を設定する。本設定方法は後述する。ここで前記駅間路線条件には、少なくとも駅間距離と、路線勾配と、曲線情報と、制限速度情報のいずれかが含まれる。また、前記車両条件には、少なくとも、車両の加速特性が含まれる。また、前記巡航速度は、定速運転時の目標速度、あるいは、惰行と再力行を行って走行する区間の平均速度を規定する。前記巡航速度設定手段105から出力された巡航速度は、前記制御指令算出手段103と前記ブレーキパターン決定手段106とに入力される。
【0024】
前記ブレーキパターン決定手段106は、前記最大全電気ブレーキ力特性と、前記巡航速度と、前記目標到着時刻と、前記駅間路線条件と、前記車両条件と、を入力とし、次駅までの駅間走行の停止制御におけるブレーキパターンを決定する。本決定方法は後述する。ここでブレーキパターンは、位置に応じた目標速度として表現する方法が考えられる。前記ブレーキパターン決定手段106から出力されたブレーキパターンは、前記制御指令算出手段103に入力される。
【0025】
前記制御指令算出手段103は、前記巡航速度設定手段105から取得する巡航速度を加速および定速走行の目標速度(あるいは、惰行再力行走行における目標平均速度)とし、また、前記ブレーキパターン決定手段106から取得するブレーキパターンを停止制御時の目標速度とする。そして、前記自動列車運転装置101の外部から取得する自列車の車両速度と車両位置を入力として、これらの目標速度に沿った運転がなされるように、制駆動制御装置へ制御指令を出力する。
【0026】
以上が自動列車運転装置101の構成の説明である。
【0027】
次に、
図4を参照して、前記巡航速度設定手段105の内部構成を説明する。前記巡航速度設定手段105は、到達時刻遵守可否判定手段401と巡航速度決定手段402とから構成される。
【0028】
前記到着時刻遵守可否判定手段401は、前記予定発車時刻と、前記目標到着時刻と、前記駅間路線条件と、前記車両条件と、を入力として、自列車が次駅に前記目標到着時刻までに到着できるか否かを判定する。前記巡航速度決定手段402は、前記判定の結果に基づいて、前記巡航速度設定手段105として設定する巡航速度を決定する。前記到着時刻遵守可否判定手段401と前記巡航速度決定手段402における処理の詳細は後述する。
【0029】
以上が、前記巡航速度設定手段105の内部構成の説明である。
【0030】
次に、
図5のフローチャートを参照して、前記走行パターン計画手段102の内部で行われる処理を説明する。ステップ501では、自列車が駅に停止しているか否かを判定し、駅に停止している場合はステップ502へ進む。未停止の場合は処理を終える。
【0031】
ステップ502では、前記最大全電気ブレーキ力特性設定手段104が、自列車の応荷重情報、天候情報、および、駆動装置の故障情報を取得する。応荷重は車両毎に空気ばねの圧力から算出された値である。天候情報は例えば列車外部から無線通信等で取得する方法があり、少なくとも降雨や降雪の有無に関する情報が含まれる。駆動装置の故障情報は例えば車両情報制御装置から取得する方法がある。
【0032】
ステップ503では、前記最大全電気ブレーキ力特性設定手段104が、ステップ502で取得した情報を用いて、自列車の最大全電気ブレーキ力特性を設定する。ここでブレーキ力特性は、
図2の記号「K→D→E→F→C」で例示されるように、速度に応じたブレーキ力として表される。列車全体での最大全電気ブレーキ力特性は、各動力台車に搭載されたモータの最大全電気ブレーキ力特性の和である。ステップ502で取得した駆動装置の故障情報で、故障と判定されている駆動装置が駆動するモータがある場合、当該モータの分だけ、列車全体での最大全電気ブレーキ力特性が小さくなる。
【0033】
各モータの最大全電気ブレーキ力特性は、低速域のブレーキ力が一定の部分(
図2の記号「C→F」)と、速度増加に伴ってブレーキ力が減少する部分(
図2の記号「F→E→D→K」)に分けられる。前者の一定ブレーキ力の値は、予め設計値として定められた設計最大ブレーキ力以下の範囲で、ステップ502で取得した応荷重情報および天候情報によって決定される。
【0034】
具体的には、応荷重情報から計算される軸重に、天候情報から決まる粘着係数を乗じることで、各動力台車が滑走を発生させずに出力し得る最大ブレーキ力を推定計算し、当該推定値と前記設計最大ブレーキ力との大小関係で小さい方が、前記の一定ブレーキ力の値として採用される。ここで粘着係数は、降雨あるいは降雪の天候情報がある場合は、そうでない場合と比較して小さく設定される。
【0035】
ステップ504では、前記巡航速度設定手段105に含まれる前記到着時刻遵守可否判定手段401が、前記目標到着時刻と、前記駅間路線条件と、前記車両条件と、を取得する。
【0036】
ステップ505では、前記到着時刻遵守可否判定手段401において、所定の第一の巡航速度と前記の最大全電気ブレーキ力特性とに従って次駅間を走行した場合に、自列車が次駅の目標到着時刻を遵守できるか否かを判定する。当該判定の方法は後述する。前記第一の巡航速度は、各駅間について、駅間の制限速度から下方に一定の余裕(例えば5km/h)を持たせた速度に設定することが考えられる。
【0037】
ステップ506では、ステップ505の判定結果に基づき、前記巡航速度決定手段402において、遵守可の場合はステップ507aへ遷移し、遵守不可の場合はステップ507bへ遷移する。
【0038】
ステップ507aでは、前記巡航速度決定手段402において、次駅間の巡航速度として前記第一の巡航速度を設定する。ステップ507bでは、前記巡航速度決定手段402において、次駅間の巡航速度として、前記第一の巡航速度よりも高い第二の巡航速度を設定する。前記第二の巡航速度は、各駅間について、制限速度の範囲内で、前記第一の巡航速度よりも所定幅(例えば2km/h)高い速度に設定することが考えられる。
【0039】
なお、前記第一の巡航速度、および前記第二の巡航速度とは、定速運転を実施する場合には定速運転の目標速度であり、惰行と再力行を使用する運転方法においては、
当該運転方法で走行する区間における平均速度に対応する。
【0040】
ステップ508では、前記巡航速度設定手段105から前記制御指令算出手段103に対し、駅間の巡航速度が伝達され、発車準備完了となる。
【0041】
ステップ509では、前記ブレーキパターン決定手段106において、前記巡航速度設定手段105で設定された巡航速度で走行すると仮定した場合に、次駅への目標到着時刻を遵守可能なブレーキパターンを決定する。ここで決定されるブレーキパターンは、前記最大全電気ブレーキ力特性設定手段104で設定されたブレーキ力特性以下の範囲内で設定されることが望ましいが、発車後に次駅の目標到着時刻が前倒しされた場合のように、より強いブレーキ力が必要な場合には、空気ブレーキの補足を伴うブレーキパターンに設定されることも有り得る。残走行時分に応じて、複数のブレーキパターンから適切なものを選択する方法は、例えば特許文献3に開示されている方法を用いることができる。
【0042】
ここで、目標到着時刻を遵守するブレーキパターンの生成が、自列車の停止制御開始タイミングに間に合わない恐れがあることを判定する仕組みを設け、間に合わないと判定された場合に、既定の固定ブレーキパターンを使用して駅への停止制御を行うよう、バックアップの仕組みを設けておいても良い。こうすることで、ブレーキパターンの生成が遅れた場合でも、確実に停止制御を開始できるという効果がある。前記判定基準の例として、駅間の中間地点で前記ブレーキパターン決定手段106によるブレーキパターン生成が終わっているか否かを判定基準とすることが考えられる。
【0043】
以上が、前記走行パターン計画手段102の内部で行われる処理の説明である。
【0044】
次に、
図6を参照して、前記到着時刻遵守可否判定手段401の構成要素、および前記ステップ505の処理内容詳細を説明する。前記到着時刻遵守可否判定手段401は、駅間走行時分シミュレーション手段601と到着時刻比較手段602とから構成される。
【0045】
前記駅間走行時分シミュレーション手段601は、前記駅間路線条件と、前記車両条件と、前記最大全電気ブレーキ力特性と、を入力として数値シミュレーションにより駅間走行時分を出力する。この数値シミュレーションにおいては、前記第一の巡航速度を前提とする。したがって、駅間の走行パターンは、前記車両条件と前記駅間路線条件で決まる加速パターンと、前記第一の巡航速度による定速走行パターンもしくは惰行再力行による走行パターンと、前記最大全電気ブレーキ力特性と前記駅間路線条件で決まる減速パターンとの組み合わせとなる。
【0046】
前記到着時刻比較手段602は、前記予定発車時刻と、前記目標到着時刻と、前記駅間走行シミュレーション手段601から取得する駅間走行時分と、を入力とし、自列車の次駅における到着時刻遵守可否を出力する。前記到着時刻比較手段602内部では、前記予定発車時刻に前記駅間走行時分を加えた時刻である予定到着時刻と前記目標到着時刻とを比較し、前記目標到着時刻よりも前記予定到着時刻が早いか(同時刻も含む)、あるいは、前記目標到着時刻に対する前記予定到着時刻の遅れが所定範囲内であれば、到着時刻遵守可の判定結果を出力する。それ以外の場合は到着時刻遵守不可の判定結果を出力する。
【0047】
ここで前記所定範囲は、運用上の都合や利用客の利便性を考慮して定められる。運用上の都合に関しては、自列車の次駅到着遅れが後続列車のダイヤ乱れに波及しないようにする必要がある。したがって、ダイヤが稠密な路線では、前記所定範囲は小さく設定される。利用客の利便性に関しては、自列車の次駅到着遅れが、次駅での他列車への乗換えに支障することとないようにする必要がある。したがって、次駅での他列車への乗換え時間に余裕がない場合には、前記所定範囲は小さく設定される。
【0048】
以上が、前記到着時刻遵守可否判定手段401の説明である。
【0049】
最後に、本発明によって、全電気ブレーキによる省エネ効果と定時性を両立できる走行パターンが、少ない演算負荷で作成可能となる仕組みを説明する。まず、本発明では、駅間走行パターンの計画にあたり、巡航速度を先に決定し、その後にブレーキパターンを決定する。これは、巡航速度は発車後、加速する際の目標速度であるため、発車前に優先して決定する必要があるのに対し、ブレーキパターンの決定は、自列車が発車して巡航速度に到達した後、このブレーキパターンに基づく停止制御を開始するタイミングまでに実施されればよい、という原理に基づく。
【0050】
本発明によれば、巡航速度を先に決定して制御指令算出手段に出力し、その後にブレーキパターンを決定して制御指令算出手段に出力する構成としたため、発車前に駅間の走行パターンを全て演算し終える必要は無く、巡航速度決定の演算処理は発車前に実施し、ブレーキパターン決定の演算処理は発車した後、遅くとも停止制御前までに完了させれば良い。したがって、走行パターンの演算処理を時間的に分散させられるため、発車前に駅間走行パターンを全て決定する方法と比較して、発車前の演算負荷の低減が可能になる。発車前の演算負荷の低減は、必要となる車上の演算装置の性能を抑えることによる低コスト化や、空いたリソースを活かした他機能の演算を可能にすることによる車上装置の高付加価値化に貢献する。
【0051】
本発明は、走行パターンの演算処理を時間的に分散させる方法の中でも、発車前に行う巡航速度決定の演算において、最大全電気ブレーキ力特性を考慮している点が特徴である。走行パターンの演算処理を時間的に分散させる他の方法として、ブレーキパターンの限界とは無関係に巡航速度を決定し、走行しながらブレーキパターンを決定する方法も考えられるが、この方法では、定時性や省エネ性に課題がある。
【0052】
すなわち、強い全電気ブレーキが使用できないのにも関わらず、高い巡航速度を設定した場合、定時性を遵守するために空気ブレーキ補足を伴うブレーキを使用することとなり、エネルギ損失が増加する。あるいは、空気ブレーキ補足をしないことを優先すると、早いタイミングでのブレーキ開始が必要となり、定時性が損なわれる。逆に強い全電気ブレーキが使用できるのにも関わらず、低い巡航速度を設定した場合、停止制御自体は全電気ブレーキの範囲で実施できるものの、巡航速度を不必要に低く設定しているため、定時性が損なわれる。
【0053】
本発明では、発車前に行う巡航速度決定の演算において、最大全電気ブレーキ力特性を考慮しているため、定時性を維持しつつ、省エネ性を損なわない、適切な巡航速度の設定が可能となる。以上が、本発明によって、演算負荷を低減しつつ省エネと定時性を向上できる仕組みの説明である。
【0054】
以上が実施例1の説明である。
【実施例2】
【0055】
本実施例では、出力可能な最大全電気ブレーキ力特性に基づいて決定された駅間の巡航速度に関する情報を、発車前に運転士に教示し、その後、停止制御開始までの間に、当該巡航速度に基づいて決定されたブレーキパターンに関する情報を運転士に教示する列車運転支援装置の例を説明する。本実施例の列車運転支援装置によれば、運転士が列車を運転する路線において、全電気ブレーキを活用しつつ、省エネ性や定時性に優れた手動運転が可能である。
【0056】
まず、
図7を参照して、列車運転支援装置701の構成について説明する。
【0057】
前記列車運転支援装置701は、駅間の走行パターンを計画する走行パターン計画手段102と、前記走行パターン計画手段102で計画された走行パターンに従って列車を走行させるための運転操作に関して、運転士への教示内容を作成する教示内容作成手段703と、で構成される。前記走行パターン計画手段102は、実施例1と同一であるため、構成およびその内部処理の説明は省略する。
【0058】
前記教示内容作成手段703は、前記巡航速度設定手段105から取得する巡航速度を加速および定速走行の目標速度とし、また、前記ブレーキパターン決定手段106から取得するブレーキパターンを停止制御時の目標速度とする。そして、前記列車運転支援装置701の外部から取得する自列車の車両速度と車両位置を入力として、これらの目標速度に沿った運転がなされるように、運転操作の教示内容を作成する。教示内容は、運転操作の内容が表示された画面や、適当なタイミングで出力される音声によって運転士に伝達される。前記教示内容作成手段703は液晶モニタやスピーカなどの出力装置を備えて構成される。
【0059】
以上が列車運転支援装置701の構成の説明である。
【0060】
次に、前記教示内容作成手段703で作成される教示内容の具体例を
図8、
図9、
図10を参照して説明する。
【0061】
図8は、運転操作を教示する画面表示の一形態であり、画面上には次駅までの駅間走行パターンの描画と運転操作のポイント表示がある。駅間走行パターンは、発駅からの加速と、所定速度での定速走行と、次駅に向けた減速と、から成る。走行パターンの表示には、自列車の現在位置と速度を表すマークが重ね合わせて描画される。運転操作のポイント表示は、加速と定速に関しては目標速度が、減速に関しては制動開始位置やノッチ操作が教示される。運転操作を教示する画面表示の本形態によれば、駅間走行全体のイメージを予め把握して運転操作を行うことができる。
【0062】
本実施例の列車運転支援装置における
図8の画面表示の特徴として、加速と定速の目標速度に関する内容は発車前に教示され、減速に関する内容は、加速と定速の目標速度に関する教示より後のタイミングで教示される。画面上に描かれる走行パターンを表す線についても、加速と定速の部分が先に描画され、減速の部分は後から描画される。
【0063】
減速に関する教示方法の別の方法としては、ブレーキパターンの決定前は、おおよその減速開始位置やブレーキパターン表示(色を薄くするなど)に留め、ブレーキパターン決定後に正確な情報を教示する方法も考えられる。この方法であれば、運転士が駅間走行の全体感を予め把握し易くなる。なお、教示方法は
図8に示すような画面上の表示に限らず、音声による伝達手段が伴っていても良い。音声による伝達手段が伴うことで、運転士の前方注視への影響を小さくすることができる。
【0064】
図9は、運転操作を教示する画面表示の別形態であり、現在速度表示領域(
図9左側)と、運転操作教示領域(
図9右側)とから構成される。そして現在速度表示領域には、自列車の現在の速度を指した円形状の速度メータが表示される。また速度メータの周囲には環状の目標速度範囲表示部が表示され、この目標速度範囲表示部のうち、そのとき自列車が目標とすべき速度範囲と対応する箇所が所定色で強調表示される。
【0065】
また運転操作教示領域には、前記走行パターン計画手段102が計画した走行パターンで自列車を走行させるために、運転士が行うべき運転操作の操作内容が表示される。例えば
図9の例では、まず「80km/hまで加速」し、その後「80km/hの速度を維持」した後、「23.10km地点から減速」すべきことが示されている。そして、これら操作内容のうち、現在、運転士が行うべき運転操作の操作内容を表示した部分が所定色で強調表示される。
【0066】
運転操作を教示する画面表示の本形態では、運転士は、現在速度表示領域に表示された速度メータを参照しながら、運転操作教示領域に表示された各操作内容に従って運転操作を行うことによって、前記走行パターン計画手段102が作成した速度パターンに追従するよう自列車を走行させることができる。
【0067】
本実施例の列車運転支援装置における
図9の画面表示の特徴として、加速と速度維持に関する内容は発車前に教示されているのに対し、減速に関する内容は、加速と速度維持に関する教示より後のタイミングで教示される。減速に関する教示方法の別の方法としては、ブレーキパターンの決定前は、おおよその減速開始位置の教示に留め、ブレーキパターン決定後に、より明確な情報を教示する方法も考えられる。この方法であれば、運転士が駅間走行の全体感を予め把握し易くなる。なお、教示方法は
図9に示すような画面上の表示に限らず、音声による伝達手段が伴っていても良い。音声による伝達手段が伴うことで、運転士の前方注視への影響を小さくすることができる。
【0068】
図10は、運転操作を教示する画面表示の別形態であり、自列車が目標とすべき速度(以下、これを目標速度と呼ぶ)の範囲に現在の自列車の速度を重ねて表示することにより、速度のコントロールを運転士に促す場合の画面表示例である。
【0069】
この画面表示では、画面の縦方向と平行に時間軸が表示され、画面の横方向と平行に速度を表す速度軸が表示される。この速度軸は、自列車が前の停車駅を出発してからの経過時間に応じて画面の下側から上側に移動してゆくように表示される。またこの速度軸上のそのときの自列車の速度に応じた位置には、これを表すマークが表示される。
【0070】
さらにこの画面表示には、前記走行パターン計画手段102が作成した速度パターンに従って走行するために、自列車が目標とすべき経過時間ごとの速度範囲を表す帯状の模様が表示される。
【0071】
従って、運転操作を教示する画面表示の本形態では、運転士は、自列車の速度を表すマークが目標速度の範囲を表す模様内に位置するように自列車の速度をコントロールすることによって、前記走行パターン計画手段102が作成した速度パターンに追従するよう自列車を走行させることができる。
【0072】
本実施例の列車運転支援装置における
図10の画面表示の特徴として、加速区間と定速走行区間の目標速度範囲が発車前に表示されているのに対し、減速区間の目標速度範囲は加速区間と定速区間の表示よりも後のタイミングで表示される。減速区間に関する別の表示方法としては、ブレーキパターンの決定前は、目標速度範囲を示す領域の色を薄くするなど、おおよその目標速度範囲表示に留め、ブレーキパターン決定後に色をはっきりさせるなどして、明確な情報を表示する方法も考えられる。この方法であれば、運転士が駅間走行の全体感を予め把握し易くなる。なお、教示方法は
図9に示すような画面上の表示に限らず、音声による伝達手段が伴っていても良い。音声による伝達手段が伴うことで、運転士の前方注視への影響を小さくすることができる。
【0073】
以上のように本実施例の列車運転支援装置701では、走行パターン計画手段102が計画した走行パターンで自列車を走行させるための運転操作を運転士に教示する。従って、運転士が列車を運転する路線に本列車運転支援装置701を適用することによって、第1の実施例の自動列車運転装置と同様の効果を得ることができる。
【0074】
以上が実施例2の説明である。