(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619988
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】管用内張り材の反転方法及び管用内張り材
(51)【国際特許分類】
B29C 63/36 20060101AFI20191202BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20191202BHJP
F16L 55/162 20060101ALI20191202BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
B29C63/36
F16L1/00 K
F16L55/162
F16J12/00 P
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-213810(P2015-213810)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-81063(P2017-81063A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】大西 信二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 順一
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−094519(JP,A)
【文献】
特開平08−281801(JP,A)
【文献】
特開2001−322168(JP,A)
【文献】
特開2001−018291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00−63/48
F16L 1/00
F16L 55/00−55/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密性筒状体の内側に少なくとも補強用筒状体が設けられ、前記の気密性筒状体と補強用筒状体とが筒長方向の伸びが異なる材料で構成されてなる管用内張り材の内外面を反転させる管用内張り材の反転方法において、前記の気密性筒状体の一方の端部を圧力容器内の口金に開口させた状態で固定させると共に、前記の補強用筒状体の一方の端部を、前記の開口された気密性筒状体の先端部から反転送り出し方向に突出させて固定させ、この状態で、前記の圧力容器内に流体圧力を作用させて、圧力容器内から前記の口金を通して管用内張り材の内外面を反転させながら送り出すことを特徴とする管用内張り材の反転方法。
【請求項2】
請求項1に記載の管用内張り材の反転方法において、前記の気密性筒状体の一方の端部を圧力容器内の口金に開口させて固定させた後、前記の圧力容器内に流体圧力を作用させて、前記の気密性筒状体を端部が固定された口金から反転させながら所定長さ送り出すと共に、前記の補強用筒状体の一方の端部を送り出された気密性筒状体の先端部から突出させ、気密性筒状体の先端部から突出された補強用筒状体の端部を反転させるようにして固定させることを特徴とする管用内張り材の反転方法。
【請求項3】
請求項2に記載の管用内張り材の反転方法において、送り出された気密性筒状体の先端部から突出された補強用筒状体の端部の少なくとも2ヶ所に切込みを突出方向に沿って設け、この切込み部分において補強用筒状体の端部を反転させるようにして固定させたことを特徴とする管用内張り材の反転方法。
【請求項4】
請求項3に記載の管用内張り材の反転方法において、送り出された気密性筒状体の先端部から突出された補強用筒状体の端部に切込みを突出方向に沿って設けるにあたり、前記の切込みを、反転して送り出された気密性筒状体により押さえられて扁平になった補強用筒状体の両側部に設けたことを特徴とする管用内張り材の反転方法。
【請求項5】
請求項1に記載の管用内張り材の反転方法に使用する管用内張り材であって、気密性筒状体の内側に少なくとも補強用筒状体が設けられ、前記の気密性筒状体と補強用筒状体とが筒長方向の伸びが異なる材料で構成されると共に、前記の気密性筒状体の送り出し方向先端部から突出される補強用筒状体の端部の少なくとも2ヶ所に切込みが突出方向に沿って設けられてなることを特徴とする管用内張り材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管用内張り材の反転方法及び管用内張り材に関するものである。特に、老朽化した既設管を補修するにあたり、気密性筒状体の内側に少なくとも補強用筒状体が設けられ、気密性筒状体と補強用筒状体とが筒長方向の伸びが異なる材料で構成された管用内張り材の内外面を反転させて、この管用内張り材を既設管内に装着させることが簡単且つ適切に行えるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、老朽化した上下水道管や農業用水管等の既設管を補修する工法として、特許文献1,2においては、樹脂製の被膜で覆われた気密性筒状体の内側に、ガラス繊維や不織布からなる1つ以上の補強用筒状体が設けられた管用内張り材を用い、このように気密性筒状体の内側に補強用筒状体が設けられた管用内張り材の一方の端部を圧力容器の口金に開口させた状態で固定させ、この状態で前記の圧力容器内に流体圧力を作用させ、管用内張り材の端部が固定された口金を通して、前記の管用内張り材をこの圧力容器内から内外面を反転させながら送り出し、このように反転された送り出された管用内張り材を既設管の内周面に装着させて、この管用内張り材により、既設管を補修するようにしたものが示されている。
【0003】
そして、特許文献1,2に示されるものにおいては、前記の管用内張り材の一方の端部において、気密性筒状体と補強用筒状体とを圧力容器の口金に一緒にまとめて開口させた状態で固定させ、この状態で、圧力容器内に流体圧力を作用させて、管用内張り材の端部が固定された口金を通し、管用内張り材を気密性筒状体と補強用筒状体とを一緒にして、管用内張り材の内外面を反転させながら送り出すようにしている。
【0004】
ここで、前記のように管用内張り材の内外面を反転させて既設管の内周面に装着させる場合、気密性筒状体の内側に設けられる補強用筒状体の径を、気密性筒状体の径よりも大きくする必要があり、またガラス繊維や不織布からなる補強用筒状体は一般に厚みが大きく、伸びも少なくなっている。
【0005】
そして、前記のように気密性筒状体と補強用筒状体とを一緒にして、管用内張り材の端部を圧力容器の口金に固定させ、気密性筒状体と補強用筒状体とが一緒になった管用内張り材を圧力容器内から口金を通して、その内外面を反転させながら送り出す場合に、気密性筒状体と補強用筒状体とがそれぞれ反転されながら口金内に導かれて、口金内を通過する管用内張り材全体の厚みが厚くなり、管用内張り材の内外面を反転させながら口金を通して、管用内張り材を送り出すことが非常に困難であった。
【0006】
このため、前記のようにして管用内張り材の内外面を反転させながら送り出すためには、圧力容器内に作用させる流体圧力を非常に高めることが必要になり、装置が大型化して、設備コストが高く付いたりする等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−86386号公報
【特許文献2】特開2014−113732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、老朽化した既設管路を補修する場合における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0009】
すなわち、本発明においては、老朽化した既設管を補修するにあたり、気密性筒状体の内側に少なくとも補強用筒状体が設けられ、気密性筒状体と補強用筒状体とが筒長方向の伸びが異なる材料で構成された管用内張り材の内外面を反転させて、この管用内張り材を既設管内に装着させる作業が簡単且つ適切に行えるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る管用内張り材の反転方法においては、前記のような課題を解決するため、気密性筒状体の内側に少なくとも補強用筒状体が設けられ、前記の気密性筒状体と補強用筒状体とが筒長方向の伸びが異なる材料で構成されてなる管用内張り材の内外面を反転させる管用内張り材の反転方法において、前記の気密性筒状体の一方の端部を圧力容器の口金に開口させた状態で固定させると共に、前記の補強用筒状体の一方の端部を、前記の開口された気密性筒状体の先端部から反転送り出し方向に突出させて固定させ、この状態で、前記の圧力容器内に流体圧力を作用させて、圧力容器内から前記の口金を通して管用内張り材の内外面を反転させながら送り出すようにした。
【0011】
このように、気密性筒状体の一方の端部を圧力容器の口金に開口させた状態で固定させる一方、この気密性筒状体の内側に位置する補強用筒状体の一方の端部を、前記の開口された気密性筒状体の先端部から反転送り出し方向に突出させて固定させ、この状態で、前記の圧力容器内に流体圧力を作用させて、圧力容器内から口金を通して管用内張り材を送り出すようにすると、補強用筒状体の端部は口金を通過した状態にあるため、口金の部分では気密性筒状体だけが反転されながら送り出されるようになり、口金の部分において反転されて送り出される管用内張り材の全体の厚みが従来に比べて薄くなる。
【0012】
ここで、本発明に係る管用内張り材の反転方法においては、前記の気密性筒状体の一方の端部を圧力容器の口金に開口させて固定させた後、前記の圧力容器内に流体圧力を作用させて、前記の気密性筒状体を端部が固定された口金から反転させながら所定長さ送り出すと共に、前記の補強用筒状体の一方の端部を送り出された気密性筒状体の先端部から突出させ、気密性筒状体の先端部から突出された補強用筒状体の端部を反転させるようにして固定させるようにすることができる。
【0013】
また、前記のように気密性筒状体の先端部から突出された補強用筒状体の端部を反転させるようにして固定させるにあたっては、気密性筒状体の先端部から突出された補強用筒状体の端部の少なくとも2ヶ所に切込みを突出方向に沿って設け、この切込み部分において補強用筒状体の端部を反転させるようにして固定させることができる。
【0014】
また、このように気密性筒状体の先端部から突出された補強用筒状体の端部に切込みを突出方向に沿って設けるにあたり、前記の切込みを、反転して送り出された気密性筒状体により押さえられて扁平になった補強用筒状体の両側部に設けるようにすることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る管用内張り材においては、前記の管用内張り材の反転方法に使用する管用内張り材として、気密性筒状体の内側に少なくとも補強用筒状体が設けられ、前記の気密性筒状体と補強用筒状体とが筒長方向の伸びが異なる材料で構成されたものを用いるようにした。
【0016】
また、前記の管用内張り材
としては、前記の気密性筒状体の送り出し方向先端部から突出される補強用筒状体の端部の少なくとも2ヶ所に、予め切込みが突出方向に沿って設けられたものを用いるように
した。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る管用内張り材の反転方法においては、前記のように気密性筒状体の一方の端部を圧力容器の口金に開口させた状態で固定させる一方、この気密性筒状体の内側に位置する補強用筒状体の一方の端部を、前記の開口された気密性筒状体の先端部から反転送り出し方向に突出させて固定させ、この状態で、前記の圧力容器内に流体圧力を作用させて、圧力容器内から口金を通して管用内張り材を送り出すようにしたため、口金の部分では気密性筒状体だけが反転されながら送り出されるようになり、口金の部分において反転されて送り出される管用内張り材の全体の厚みが従来に比べて大幅に薄くなり、圧力容器内から口金を通して管用内張り材を送り出して、管用内張り材を反転させるにあたり、圧力容器内に作用させる流体圧力を従来のように高めなくても、管用内張り材を適切に反転させて送り出すことができるようになる。
【0018】
また口金の内方部分において、従来では
図8矢印で示すように、反転前の管用内張り材が通過する空間が狭いが、本発明においては補強用内張り材の厚み分だけ空間を広げることができるので、固定された内張り材と通過する内張り材とで生じる摩擦抵抗、つまり反転にブレーキをかける力が大幅に低減され、反転作業全体を通じて流体圧力を従来より低くすることが可能となる。従って、圧力容器に過大な力を加える必要がないので、圧力容器の厚さを抑えることができ、設備コストを大幅に低減することが可能であると共に、反転作業をスムーズに実施することが可能となる。
【0019】
この結果、本発明に係る管用内張り材の反転方法においては、老朽化した既設管を補修するにあたり、気密性筒状体の内側に少なくとも補強用筒状体が設けられ、気密性筒状体と補強用筒状体とが筒長方向の伸びが異なる材料で構成された管用内張り材の内外面を反転させて、この管用内張り材を既設管内に装着させる作業が簡単且つ適切に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態における管用内張り材の反転方法において、使用する管用内張り材の構成を示した概略説明図である。
【
図2】前記の実施形態における管用内張り材の反転方法において、熱硬化性樹脂液を含浸させた管用内張り材をリールに巻き取った状態で圧力容器内に収容させると共に、この管用内張り材の一端側における気密性筒状体の端部を圧力容器の口金に固定させて開口させた状態を示した概略断面説明図である。
【
図3】前記の実施形態における管用内張り材の反転方法において、気密性筒状体の端部を固定させた圧力容器の口金から、管用内張り材における気密性筒状体の内外面を反転させながら所定長さ送り出して、気密性筒状体の先端部から補強用筒状体の先端部を所定長さ突出させた状態を示した部分拡大断面説明図である。
【
図4】前記の実施形態における管用内張り材の反転方法において、気密性筒状体の先端部から突出された補強用筒状体の先端部に2つの切込みを突出方向に沿って設けた状態を示し、(A)は側面側の部分拡大断面説明図、(B)は正面側の概略説明図である。
【
図5】前記の実施形態における管用内張り材の反転方法において、2ヶ所の切込みにより分割された補強用筒状体の各先端部を、それぞれ気密性筒状体外側に向け折り返すようにして反転させて、圧力容器の口金より半径方向外方に設けられた各保持部材に固定させた状態を示した部分拡大断面説明図である。
【
図6】前記の実施形態における管用内張り材の反転方法において、圧力容器内から口金を通して管用内張り材を送り出して、前記の管用内張り材の内外面を反転させながら、管用内張り材を送り出す状態を示した部分拡大断面説明図である。
【
図7】前記の実施形態における管用内張り材の反転方法において、反転されて送り出された管用内張り材を既設管内に導入させた状態を示した概略断面説明図である。
【
図8】従来の管用内張り材の反転方法において、気密性筒状体および強用筒状体の端部を固定させた圧力容器の口金から、管用内張り材の内外面を反転させた状態を示した部分拡大断面説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る管用内張り材の反転方法及び管用内張り材を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る管用内張り材の反転方法及び管用内張り材は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0022】
この実施形態においては、管用内張り材10として、
図1に示すように、気密性筒状体11の内側に補強用筒状体12が設けられ、前記の気密性筒状体11と補強用筒状体12とが筒長方向の伸びが異なる材料で構成されたものを用いるようにしている。
【0023】
ここで、前記の気密性筒状体11として、この実施形態においては、ポリエステル繊維等の汎用繊維で製織された筒状織布11aの外面に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる気密性の筒状被膜11bが設けられたものを用いるようにしている。
【0024】
また、前記の補強用筒状体12として、この実施形態においては、ポリエステル繊維等で製織された筒状織布12aの外面に、ガラス繊維からなるロービングクロスと不織布が積層されたガラスマットを筒状になるように折り曲げて両端部を重ね合わせた筒状補強シート12bが設けられたものを用いている。なお、前記の筒状補強シート12bにおいては、前記のガラスマットを筒状になるように折り曲げて重ね合わせた両端部を、筒状補強シート12bの筒長方向に沿ってホットメルト接着剤等によって接着させるようにすることができる。また、前記の補強用筒状体12としては、前記の筒状織布12aと筒状補強シート12bとを交互に複数層設けたものを用いることもできる。また筒状補強シート12bの補強メンバとしてはガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維等のいわゆるスーパー繊維が好適であり、それをクロスやマット等に加工したものが使用される。また使用態様としては、前述のシートの両端部を重ねて筒状補強シート12bにしても良いし、初めから幅方向がシームレスな筒状体である円筒織物や円筒組物を使用しても良い。
【0025】
ここで、この実施形態において、前記の管用内張り材10の内外面を反転させながら送り出し、反転された管用内張り材10を上下水道管や農業用水管等の既設管P内に導入させて、反転された管用内張り材10によって既設管Pを補修するにあたっては、既設管Pと現地で設置した圧力容器20との距離や立坑・マンホール深さなどを考慮し、前記の管用内張り材10において反転を開始させる一端側から前記所要長さの部分を除くようにして、この管用内張り材10の内部に熱硬化性樹脂液を含浸させるようにする。なお、このように管用内張り材10の内部に熱硬化性樹脂液を含浸させるにあたっては、管用内張り材10の内部に熱硬化性樹脂液を注入させ、このように熱硬化性樹脂液が注液された管用内張り材10をニップローラ(図示せず)によって絞るようにすることができる。
【0026】
そして、前記のように熱硬化性樹脂液を含浸させた管用内張り材10を、
図2に示すように、リール21に巻き取った状態で圧力容器20内に収容させると共に、熱硬化性樹脂液を含浸させていない管用内張り材10の一端側における前記の気密性筒状体11を開口させて、この気密性筒状体11の端部を圧力容器20の口金22に環状に開口させた状態で固定させ、このように開口された気密性筒状体11の端部を通して、前記の補強用筒状体12の端部を露出させるようにする。
【0027】
次いで、前記の気密性筒状体11の端部を圧力容器20の口金22に開口させて固定させた状態で、前記の圧力容器20に設けられた圧縮空気導入口23から圧力容器20内に圧縮空気を導入させ、この圧縮空気による流体圧力により、
図3に示すように、前記の口金22を通して管用内張り材10における気密性筒状体11の内外面を反転させながら、管用内張り材10を口金22から所定長さ送り出すようにする。このようにすると、気密性筒状体11の内側における補強用筒状体12は反転されずに口金22から送り出され、反転されながら送り出される気密性筒状体11の先端部よりも、この補強用筒状体12が口金22からほぼ2倍の長さが送り出されて、この補強用筒状体12の先端部が気密性筒状体11の先端部から突出された状態になる。
【0028】
そして、このように気密性筒状体11の先端部から突出された補強用筒状体12の先端部において、
図4(A),(B)に示すように、反転して送り出された気密性筒状体11により押さえられて扁平になった補強用筒状体12の両側部に、それぞれ切込み12cを突出方向に沿って設けた後、この両側部における2ヶ所の切込み12cにより分割された補強用筒状体12の各先端部を、それぞれ気密性筒状体11の外側に向け折り返すようにして反転させ、このように反転された補強用筒状体12の各先端部を、
図5に示すように、それぞれ圧力容器20の口金22より半径方向外方に設けられた各保持部材24に固定させるようにしている。なお、この実施形態においては、前記のように反転して送り出された気密性筒状体11により押さえられて扁平になった補強用筒状体12の両側部にそれぞれ切込み12cを設けるようにしたが、気密性筒状体11の先端部よりも突出された補強用筒状体12の先端部に設ける切込み12cの数や位置は特に限定されない。
【0029】
次いで、前記のように反転された補強用筒状体12の先端部を、圧力容器20の口金22より半径方向外方に設けられた各保持部材24に固定させた状態で、前記の圧縮空気導入口23から圧力容器20内に圧縮空気を導入させ、この圧縮空気による流体圧力により、
図6に示すように、圧力容器20内から前記の口金22を通して管用内張り材10を送り出し、前記の口金22の部分において前記の気密性筒状体11を反転させると共に、前記の保持部材24によって固定された前記の補強用筒状体12を反転させるようにして、前記の管用内張り材10の内外面を反転させながら、管用内張り材10を送り出すようにする。
【0030】
ここで、この実施形態においては、前記のように反転して送り出された気密性筒状体11により押さえられて扁平になった補強用筒状体12の両側部に切込み12cを設けるようにしているため、前記のように圧力容器20内から口金22を通して管用内張り材10を送り出し、口金22の部分において気密性筒状体11を反転させながら管用内張り材10を送り出す際に加わる負荷が軽減され、前記のように管用内張り材10の内外面を反転させながら、管用内張り材10を送り出す作業が簡単に行えるようになる。
【0031】
また、気密性筒状体11と補強用筒状体12とが筒長方向の伸びが異なる材料で構成されたものを用いている。
本実施例では、気密性筒状体11には汎用繊維を、補強用筒状体12にはスーパー繊維を使用しているので、通常であれば筒長方向の伸びは、気密性筒状体11が大きく、補強用筒状体12が小さいものとなる。
【0032】
そして、反転の先端部分では、構成する繊維の伸びの違いによる整長作用、つまり伸びの小さい補強用筒状体12が伸びの大きい気密性筒状体11の過剰な伸びを抑止する働きが生じる。逆に言えば、補強用筒状体12に余剰なタルミが生じていたとき、気密性筒状体11がそのタルミを内側から押し伸ばす働きをする。
具体的な事象としては、リール21に巻かれた管用内張り材10が巻軸の内外周差で折れ皺を生じることがある。この折れ皺は筒長方向の伸びが小さい補強用筒状体12に顕著なものとなるが、前記整長作用によって容易にこのような皺を解除することができ、補修後の内張り材の内面仕上がりが平滑なものとなる。
本事象の例からも、反転前の管用内張り材10の内面側に、筒長方向の伸びが小さい筒状体が配置されていることが望ましいが、筒長方向の伸びが大きい筒状体が内面側に配置されても、その作用効果は生じる。
さらにそれらの筒長方向の伸びの差が5%以上あると、その効果はより顕著なものとなる。
【0033】
そして、
図7に示すように、前記のように反転されて送り出された管用内張り材10を前記の既設管P内に導入させ、この管用内張り材10における補強用筒状体12を既設管Pの内面に接触させる一方、管用内張り材10における気密性筒状体11を内周側に位置させるようにする。
【0034】
次いで、管用内張り材10を全長にわたって既設管P内に設置した後、既設管P内において管用内張り材10に含浸させた熱硬化性樹脂液を硬化させ、このように熱硬化性樹脂液が硬化された管用内張り材10によって既設管Pを補修する。硬化手段としては蒸気等を使用する加熱方式や、保圧状態保つ常温方式が採用される。
【0035】
なお、この実施形態においては、反転された補強用筒状体12の各先端部を、それぞれ圧力容器20の口金22より半径方向外方に設けられた各保持部材24に固定させるようにしたが、補強用筒状体12の筒状補強シート12bだけを各保持部材24に固定し、筒状織布12aは筒状補強シート12bの外面上でテーピング等により固定しても良い。
【0036】
また、気密性筒状体11の先端部よりも補強用筒状体12の先端部を所定長さ突出させた後に、補強用筒状体12の先端部に切込み12cを設けるようにしたが、管用内張り材10として、補強用筒状体12の端部に予め切込み12cを設けたものを用いるようにすることもできる。そうすることで、カッター等を用いる切込み作業時の人的ミスで、気密性筒状体11まで傷つける恐れを無くすことができる。特に切込み難いガラス繊維やアラミド繊維等のスーパー繊維を使用した場合に、効果的である。
【0037】
なお、補強用筒状体12の筒状織布12aは、強度層である筒状補強シート12bを保護する役割として用いられるものであるから、その使用要否は補修対象となる既設管Pの状況から適宜決めれば良い。
【符号の説明】
【0038】
10:管用内張り材
11:気密性筒状体、11a:筒状織布、11b:筒状被膜
12:補強用筒状体、12a:筒状織布、12b:筒状補強シート、12c:切込み
20:圧力容器
21:リール
22:口金
23:圧縮空気導入口
24:保持部材
P:既設管