特許第6619989号(P6619989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6619989
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】育苗容器
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/029 20180101AFI20191202BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20191202BHJP
   A01G 23/04 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   A01G9/029 C
   A01G9/02 101E
   A01G9/02 D
   A01G23/04 503H
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-215208(P2015-215208)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-79706(P2017-79706A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年9月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根岸 直希
(72)【発明者】
【氏名】浦田 信明
(72)【発明者】
【氏名】河岡 明義
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−215689(JP,A)
【文献】 特開2014−087283(JP,A)
【文献】 特開2014−195407(JP,A)
【文献】 実開昭51−010264(JP,U)
【文献】 米国特許第04763443(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00−9/029
A01G 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広葉樹又は針葉樹である植物を育苗するための連結一体化せずに使用する育苗容器であって、
前記植物を培養する培地を収容する筒状の収容部を有し、
前記収容部は、一端部に前記植物の種又は苗を植え付けるための多角形状の開口部と、
前記一端部とは反対側の他端部に近づくに従い内径が小さくなるように設定された多角錐台状の輪郭形状を有する角筒部と、
前記他端部に当該収容部の内部と外部とを連通する連通部と、
前記他端部に近づくに従い内径が小さくなるように設定された円錐台状の輪郭形状を有する円筒部と、
を備え、
前記連通部が、前記円筒部の内部輪郭によって画成された開口を仕切る仕切り壁により画成された連通孔である育苗容器。
【請求項2】
前記収容部の内壁には、前記一端部から前記他端部方向に延びるリブが設けられている請求項1に記載の育苗容器。
【請求項3】
前記リブは前記角筒部の角に対応して形成されている請求項2に記載の育苗容器。
【請求項4】
前記角筒部の内壁と前記円筒部の内壁とが、面一状に連なっている請求項1〜3のいずれか1項に記載の育苗容器。
【請求項5】
前記開口部が方形状である請求項1〜4のいずれか1項に記載の育苗容器。
【請求項6】
前記植物がマツである請求項1〜5のいずれか1項に記載の育苗容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗容器に関する。
【背景技術】
【0002】
スギやヒノキ等の植栽においては、根がむき出しになっている裸苗が用いられることが一般的であるが、その植栽時期が植物の生長が良い春季または秋季に限定されるため、時期を問わず一年中植栽が可能なコンテナ苗への期待が高まっている。コンテナ苗は、硬質樹脂製の容器で育成された鉢付き苗であり、コルク栓状の根鉢が形成されてそのまま植栽することが可能である。
このようなコンテナ苗としては、多数の苗育成用のコンテナが一体となった硬質プラスチック製の育苗容器が知られている(非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】小澤 光二 外1名、“北海道現地研修会 林業専用道とマルチキャビティコンテナ苗について”、[online]、2013年4月9日、[平成27年7月27日検索]、インターネット<URL:http://www.forest-pro.jp/2013-04-09-forest-consal-2gatugou-watanabe-hokkaidou.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
古くから、海岸には防潮のためマツが植栽されているが、マツの経年による枯死や病気、さらには災害などで防潮林が失われた場合、その復元は急務で広範囲にわたるため、コンテナ苗の活用が期待される。
しかし、非特許文献1に記載のコンテナ育苗容器は全体として円筒形であるため、根鉢も円筒形になり、定植後に強風に煽られると回転して根鉢が浮き上がってきてしまい、生育不良につながる場合があった。ところで、育苗した苗を定植する際には容器から苗を取り出す必要がある。また、育苗中の苗が未発芽苗や生育不良苗である場合、別の種や苗に植え替える必要があるため、育苗容器から未発芽苗や生育不良苗等を取り出す必要があるため、育苗容器においては、容器から苗を取り出す際の作業性を改善することも求められている。
本発明は、植え付けや植え替えの際の作業性に優れ、定植後の強風に強い根鉢を作ることができる育苗容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、育苗容器の種又は苗を植え付ける側の形状を角筒状とし、かつ、その反対側を円筒状とすることが課題解決に有用であることを見出し、本発明に達した。
すなわち、本発明は、以下の態様を提供する。
[1] 植物を育苗するための育苗容器であって、前記植物を培養する培地を収容する筒状の収容部を有し、前記収容部は、一端部に前記植物の種又は苗を植え付けるための多角形状の開口部と、前記一端部とは反対側の他端部に近づくに従い内径が小さくなるように設定された多角錐台状の輪郭形状を有する角筒部と、前記他端部に当該収容部の内部と外部とを連通する連通部と、前記他端部に近づくに従い内径が小さくなるように設定された円錐台状の輪郭形状を有する円筒部と、を備える育苗容器。
[2] 前記収容部の内壁には、前記一端部から前記他端部方向に延びるリブが設けられている[1]に記載の育苗容器。
[3] 前記リブは前記角筒部の角に対応して形成されている[2]に記載の育苗容器。
[4] 前記角筒部の内壁と前記円筒部の内壁とが、面一状に連なっている[1]〜[3]のいずれかに記載の育苗容器。
[5] 前記開口部が方形状である[1]〜[4]のいずれかに記載の育苗容器。
[6] 前記植物がマツである[1]〜[5]のいずれかに記載の育苗容器。
【発明の効果】
【0006】
本発明の育苗容器は、種や苗を植え付けるための開口部側に、他端部に近づくに従い内径が小さくなるように設定された多角錐台状の輪郭形状の角筒部を備えるので、育苗容器内で育成した苗をつかみやすい。また、開口部が多角形状であるので、本発明の容器を使用して育成した苗を定植した場合に、強風を受けて定植後の苗が回転するのを抑制することが出来る。さらに、本発明の育苗容器は、他端側に、他端部に近づくに従い内径が小さくなるように設定された円錐台状の輪郭形状を有する円筒部を備えるので、他端部側は容器から分離しやすい構造となっている。
その結果、本発明によれば、全体が円筒状をなす容器よりも、育苗容器内の苗を小さい力で取り出すことができ、植え付けや植え替えの際の作業性に優れ、定植後の強風に強い根鉢を作ることができる育苗容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態1に係る育苗容器の斜視図である。
図2図2は、育苗容器の側面図である。
図3図3は、育苗容器の平面図(一端部側から示した図)である。
図4図4は、図3のA−A線における断面図である。
図5図5は、育苗容器の底面図(一端部とは反対側の端部側から示した図)である。
図6図6は、育苗容器の使用状態を側面から示した図である。
図7図7は、育苗容器から取り出した苗を模式的に示した模式図である。
図8図8は、実施形態2に係る育苗容器の使用状態を側面から示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態1]
本発明に係る実施形態1の育苗容器1を図1図7を参照しつつ説明する。本実施形態の育苗容器1は、植物を育苗するためのものであって、植物を培養する培地Mを収容する筒状の収容部1Aを有する。
【0009】
本実施形態の育苗容器1により育苗する植物としては、限定されないが、クロマツ、アカマツ、カラマツ、エゾマツ、トドマツ、スギ、ヒノキ等の針葉樹、ユーカリ、ミズキ、サクラ、シイ、カシ等の広葉樹、ナス、トマト等の野菜等が挙げられる。本実施形態の育苗容器1を用いると、直根を深く成長させることが可能であるという観点から、植物としては、針葉樹が好ましく、クロマツ、アカマツ、カラマツ、エゾマツ、トドマツ等のマツがより好ましく、クロマツがさらに好ましい。育苗容器1に植え付ける植物は、種であっても苗であってもよい。また、本実施形態の育苗容器1により挿し木を行うことも可能である。
【0010】
収容部1Aに収容される培地Mとしては、限定されないが、例えば、砂、赤玉土等の自然土壌;籾殻燻炭、ココナッツ繊維、バーミキュライト、パーライト、ピートモス、ガラスビーズ等の人工土壌;発泡フェノール樹脂、ロックウール等の多孔性成形品などを例示することができる。培地Mには、無機成分、炭素源、ビタミン類、アミノ酸類及び植物ホルモン類、肥料等、植物に適合した他の成分を添加することができる。
【0011】
育苗容器1を構成する材料としては、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、生分解性樹脂等が挙げられる。
【0012】
育苗容器1の収容部1Aは、植物の種又は苗を植え付けるための正方形状(多角形状の一例)の開口部2を一端部(図1における上端部)に有し、開口部2とは反対側の他端部(図1における下端部、育苗容器1の底部7)に収容部1Aの内部と外部とを連通する連通部7Aを有する。
【0013】
収容部1Aの上端部に形成されている開口部2の開口面積は、植物の種や苗を植え付け可能な大きさであって、水分や肥料等を供給可能な大きさに設定されている。収容部1Aの上端部には図2に示すように、上端部の外周面に沿って外側方向に張り出すフランジ3が、形成されており、このフランジ3は、例えば、環状の固定具(図示せず)に掛止可能である。
【0014】
収容部1Aの底部7においては、図5に示すように、円形に開口した底部7を仕切る仕切り壁7Bが設けられており、これにより複数の連通孔7A(連通部の一例)が形成されている。開口した底部7を仕切り壁7Bにより仕切ることで、培地Mが収容部1A外へ排出されるのを防止している。連通孔7Aを介して、水分、栄養、空気等の排出・吸収が行われる。また、開口した底部により、伸長してきた根の空気根切りが可能となる。
【0015】
本実施形態において、育苗容器1の収容部1Aは、図1に示すように、一端部(上端部)側に、四角錐台状(多角錐台状の一例)の角筒部8と、他端部(下端部)側に円錐台形状の円筒部9と、を一体的に備える。
【0016】
角筒部8は、開口部2を含む面の面積が他の部分(他端部側)よりも大きい四角錐台状の輪郭形状をなしている。角筒部8の内径S1は開口部2において最大であり、底部7側(他端部側、下方)に近づくに従い内径S2が小さくなるように設定されている。ここで角筒部8の内径S1とは育苗容器1の軸線方向(図2の上下方向)に対し垂直な方向の断面における内壁間の距離をいう。角筒部8の角部が対向する位置で内径が最大となっており、図3においては角筒部8(開口部2)の最大内径S1を示している。
【0017】
円筒部9は、底部7の連通孔7Aを含む面が円形状をなすとともに、連通孔7Aを含む面の面積が他の部分よりも小さい円錐台状の輪郭形状をなしている。円筒部9の内径S2は、底部7側(他端部側)に近づくに従い小さくなるように設定されており、底部7で最小である。ここで円筒部9の内径S2とは育苗容器1の軸線方向(図2の上下方向)に対し垂直な方向の断面における内壁間の距離をいう。図3においては、円筒部9のうち底部7の内径S2を示している。
【0018】
つまり、角筒部8においても円筒部9においても内径は底部7側に近づくに従い小さくなっており、円筒部9は角筒部8と一体的に連なっているので、図3に示すように、収容部1Aの内径は開口部2において最大であり底部7において最少である。
【0019】
収容部1Aの外側面4において角筒部8の角は下端部に近づくに従い弧状の輪郭形状をなし、円筒部9に連なっている。円筒部9の外側面4には、角筒部8の角の間に対応する位置に、溝6が形成されている。円筒部9に形成された溝6は、育苗容器1を重ねて収容するときのガイド溝として機能する。育苗容器1の下端部は円筒状をなしているので、固定具(図示せず)に嵌め込んで固定することも可能である。
【0020】
収容部1Aの内壁には、開口部2の形成された一端部(上端部)から、開口部2とは反対側の他端部(下端部)方向に延びるリブ5が8本、等間隔で設けられている。各リブ5は上端部から下端部に至って直線状に設けられている。8本のリブ5のうち4本のリブ5は前記角筒部8の4つの角に対応する位置に形成され、他の4本のリブ5は隣り合う2つの角の間に位置して形成されている。隣り合う2つの角の間に形成されているリブ5は収容部1Aの下端部において仕切り壁7Bに連なっている。収容部1Aの内壁に形成されているリブ5は、太い根を正しい方向に成長させる機能を有する。
【0021】
本実施形態において、角筒部8の内壁と円筒部9の内壁とは、面一状に、滑らかな面で連なっている。
【0022】
本実施形態において、育苗容器1のサイズは、例えば内容量が300mlの育苗容器の場合において、上径(上端部の最大内径)は5cmを超え8cm以下、好ましくは6cm以下であり、下径(下端部の最大内径)は1.5cmを超え4.0cm以下、好ましくは3.5cm以上4.5cm以下であり、高さは15cmを超え20cm以下、好ましくは17cm以上19cm以下としてもよい。なお、本発明はこの構成に限定されない。たとえば、内容量が300ml未満や300ml以上であってもよいし、上径が7cmを超えているものや5cm以下のものでもよいし、下径が1.5cm以下のものや4.0cmを超えるものでもよいし、高さが15cm以下のものでも20cmを超えるものであってもよい。なお、育苗容器1は、複数個を連結し、数十箇の単位で一体化させたトレイまたは育苗トレイと称される形で使用することもできる。未発芽苗や生育不良苗が発生した場合に別の種や苗に植え替える際の作業性が優れるという観点から、連結一体化せずに使用することが好ましい。
【0023】
次に、本実施形態の作用について説明する。
育苗容器1の収容部1Aに培地Mおよび必要に応じて肥料等を収容し、植物の種又は苗を開口部2側から植え付け、所定の条件で植栽可能な状態まで苗10を育成し(図6参照)、育苗容器1から取り出す。
【0024】
育苗容器1の内壁面と育成した植物の根部分との間に隙間を作るようにしてから育成後の苗10の幹をつかみ引っ張り上げて育苗容器1から外に取り出す。育苗容器1内には8本のリブ5が形成され、角筒部8と円筒部9とは内壁面において面一状に滑らかな面で連なっているので、下方の根の部分10Bも容器内壁に引っかかることなく円滑に取り出すことができる。取り出した苗10の根の部分10Bのうち、リブ5が配されていた部分10Cはリブ5の形状に対応してへこんでいる(図7参照)。図7中、10Aは苗の地上部である。
【0025】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態の育苗容器1は、種や苗を植え付けるための開口部2側に、他端部に近づくに従い内径が小さくなるように設定された四角錐台状の輪郭形状の角筒部8を備えるので、育苗容器1内で育成した苗10をつかみやすい。特に本実施形態では開口部2が正方形状であるので、つかみやすい形状である。そして、本実施形態の育苗容器1は、他端部側に、他端部に近づくに従い内径が小さくなるように設定された円錐台状の輪郭形状を有する円筒部9を備えるので、他端部側は育苗容器1から分離しやすい構造となっている。その結果、本実施形態によれば、全体が円筒状をなす容器よりも、育苗容器1内の苗10を小さい力で取り出すことができ、植え付けや植え替えの際の作業性に優れた育苗容器1を提供することができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、開口部2が四角形状であるから、本容器を使用して育成した苗を定植した場合に、強風を受けて定植後の苗が回転するのを抑制することが出来、定植後の強風に強い根鉢を作ることができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、収容部1Aの内壁には、開口部2の形成された一端部から、開口部2とは反対側の他端部方向に延びるリブ5が設けられているから、太い根を正しい方向に成長させることができるとともに、ハンドリング性(育苗容器1から苗を取り出す際の作業性)に優れる。
【0028】
特に本実施形態においては、リブ5が角筒部8の角に対応して形成されているから角筒部8の角内に根が引っかかりにくくなり、育苗容器1から苗10を取り出す作業の作業性がより向上し好適である。
【0029】
さらに、本実施形態によれば、角筒部8の内壁と円筒部9の内壁とが、面一状に連なっているから、育苗した苗10を取り出す際に角筒部8と円筒部9との接続部分に引っかかることなく、円滑に取り出すことができる。
【0030】
[実施形態2]
本発明の実施形態2の育苗容器11について図8を参照しつつ説明する。実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し重複した説明は省略する。
本実施形態の育苗容器11は側面4に上下方向に伸びるスリット12を複数本備える点で実施形態1と相違する。その他の構成は実施形態1とおおむね同様である。
本実施形態によれば実施形態1で説明した効果に加え以下の効果が得られる。本実施形態によれば、側面4に形成されたスリット12を介して、育苗容器11内において側方に延びた根(側根)と育苗容器11の外部の空気とが接触し、側根の成長が止まるが、植栽後、再び側根が成長することにより、放射状に根を伸ばし植物の生長を促進するという効果が得られる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0032】
実施形態1の育苗容器1(実施例1)および、市販のマルチキャビティコンテナ(比較例1:全体として円筒状の容器が複数一体化され連結されているもの)、全体として四角筒状をなし内壁に8本のリブが形成された容器(比較例2)、全体として円筒状をなし内壁にリブが4本形成された容器(比較例3)を用いて以下の手順によりクロマツの苗を育成し、評価試験を行った。なお、これら実施例および比較例における容器の容量はいずれも300mlであり、実施例1の育苗容器の上径、下径、高さは、それぞれ7.0cm、3.7cm、18cmである。比較例1の容器の上径は5.3cm、下径は4.3cm、高さは15cm、比較例2の上径は6.8cm、下径は4.1cm、容器の高さは18cm、比較例3の上径は5.6cm、下径は3.4cm、高さは18cm、である。
【0033】
[育苗方法]
実施例1と比較例1の育苗容器を12個ずつ用意し、各育苗容器の開口部まで肥料を混合した培地を入れ、当該培地にクロマツの種を播種した。培地としてはピートモスとバーミキュライトを1:1(質量比)の割合で混合したものを用い、肥料としては窒素とリンとカリウムの割合が10:8:5で360日効果が持続するものを12.5g/1Lの割合で用いた。クロマツの種としては茨城県産の種子を用いた。
播種した育苗容器をビニルハウス内において、3月から10月まで育苗した。
【0034】
[評価試験]
育苗後の各苗の苗高及び根元径を測定し、その後各苗を育苗容器から取り出すときの力を測定し結果を表1に示した。測定方法は以下のとおりである。
(1)苗高の測定:苗の根元から苗の頂芽先端までを定規で測定
(2)根元径の測定:苗の根元の幹の太さをノギスで測定
(3)取り出し力の測定:張力計測器(シンワ測定株式会社社製パイプ手ばかり)を使用して、苗を抜く際に掛かる力を測定
(4)定植後の根の浮き上がり防止についての評価試験:
各苗を海岸付近の砂地に定植し、1カ月程度風に晒し、根鉢の浮き上がりの様子を目視により観察し以下の評価基準により評価した。
○:根鉢の浮き上がりは見られない
△:根鉢の浮き上がりがまれに見られる
×:根鉢の浮き上がりが散見される
【0035】
【表1】
【0036】
実施形態1の育苗容器1(実施例1)を用いると、従来の育苗容器(比較例1)や全体に角筒状をなす容器及び全体に円筒状をなす容器(比較例2及び3)を用いた場合よりも苗高が高く根元径が太い苗を育成することができることが確認された。また、実施形態1の育苗容器1を用いると、比較例1〜3の育苗容器を用いた場合よりも、育成した苗を取り出すときの力を低減することができることが確認された。さらに実施形態1の育苗容器を用いると、定植後の根の浮き上がりが防止できることが確認された。
【0037】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものでなく、例えば以下のような実施形態であってもよい。
(1)上記実施形態では、内壁に、開口部2の形成された一端部から、開口部2とは反対側の他端部方向に延びるリブ5が設けられている収容部1Aを有する育苗容器1を示したが、内壁にリブが設けられていない収容部を有する育苗容器であってもよい。
(2)上記実施形態では、8本のリブ5が、角筒部8の4つの角部に対応する位置及び、隣り合う2つの角部の間に設けられている収容部1Aを有する育苗容器1を示したが、リブ5の本数や形成位置はこれに限定されない。たとえば、角筒部の角部に対応するリブのみが形成された構成、2つの角部の間に形成されているリブのみが形成された構成、リブが1〜7本あるいは9本以上形成されている構成などであってもよい。
(3)上記実施形態では、開口部2が正方形状である育苗容器1を示したが、開口部が三角形状、長方形状、台形状、ひし形状、及び五角形以上の多角形形状などであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1,11…育苗容器
1A…収容部
2…開口部
3…フランジ
4…側面
5…リブ
6…溝
7…底部
7A…連通孔(連通部)
7B…点仕切り壁
8…角筒部
9…円筒部
10…苗
10A…地上部
10B…根の部分
M…培地
S1…角筒部の内径
S2…円筒部の内径
12…スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8