(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
洗濯乾燥機は、洗濯から乾燥までを一つの回転槽内で行うものである。ドラム式洗濯乾燥機において、回転槽であるドラムは水平或いは略水平から10度程度に傾斜して配置された軸周りに回転可能に設置され、ドラムの回転によって、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の一連の工程を行うものである。乾燥運転時の熱源としては、ヒートポンプ装置を用いた乾燥方式、ヒータによる乾燥方式が使用されている。水分を含んだ衣類を乾燥させるには、湿度が高い空気をドラム内から除去し、除湿及び加熱した空気をドラム内に送り込む乾燥サイクルを連続して行うことが必要である。
【0003】
乾燥熱源としてヒートポンプ装置を用いた洗濯乾燥機においては、圧縮機、循環空気の加熱を行う熱交換器(凝縮器)、減圧手段、循環空気の除湿を行う熱交換器(蒸発器)を配管で順次接続した冷凍サイクルと乾燥用空気を循環させる送風装置と循環風路とを備えている。冷凍サイクルは、圧縮機により高温高圧に圧縮した冷媒を加熱用の熱交換器(凝縮器)に送って空気を加熱し、除湿用の熱交換器(蒸発器)によって空気を除湿して低温低圧となった冷媒を圧縮機に循環させ、再度圧縮するサイクルを繰り返している。送風装置は循環風路内に循環空気を循環させて衣類の乾燥を行う。循環空気は、ドラム内の衣類から水分を奪った後に蒸発器に流入して除湿され、凝縮器により加熱された後に低湿の空気として再びドラム内に吹き込まれるサイクルを繰り返すことで衣類の乾燥を行っている。
【0004】
ヒートポンプ装置を用いた乾燥工程では、凝縮器から空気に与えられる熱量は、蒸発器で空気から吸熱した熱量に圧縮機の動力を加えたものである。従って、空気循環経路等からの放熱量と圧縮機動力の差分の熱量が、過大に冷凍サイクル内に蓄積された状態で乾燥運転を継続すると、圧縮機が過負荷の状態となり、信頼性低下の原因となることが知られている。そこで、圧縮機の信頼性向上を図るために、循環風路17を流れる乾燥空気の一部を循環風路外に排気し、外気を吸入する構成がある。
【0005】
また、上述のような冷凍サイクルの状態では、乾燥運転に適した条件を得ることができず、乾燥効率の低下や、圧縮機入力の増加による、消費電力量増大の原因となることが分かっている。
【0006】
上記のような本技術分野の洗濯乾燥機の背景技術の一例として、特許文献1がある。この特許文献1で示された衣類乾燥機は、ヒートポンプと、乾燥室と、空気循環経路とを備えている。ヒートポンプは、圧縮機と凝縮器と絞り部と蒸発器と冷媒配管とを含む。冷媒配管は、圧縮機、凝縮器、絞り部、および、蒸発器の順に冷媒が循環するように、圧縮機と凝縮器と絞り部と蒸発器とを連結する。衣類乾燥装置は、空気循環経路を循環する乾燥用空気のうち、蒸発器を通過した乾燥用空気の一部を凝縮器に流通させ、蒸発器を通過した乾燥用空気の一部を凝縮器に流通させずに衣類乾燥装置の外部に排出させる、と記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施例について説明する。
図1は本実施例の洗濯乾燥機20の筺体の一部を切断して内部構造を示す斜視図、
図2は本実施例の洗濯乾燥機20の内部構造を示す側面図、
図3は本実施例の洗濯乾燥機20のヒートポンプ装置1の構成を示す模式図である。
【0014】
本実施の形態例の洗濯乾燥機20において、外槽101は洗濯乾燥機筺体100のベース105上にサスペンション104により弾性支持されている。外槽101の内側には前面が開放され、回転自在に軸支持された回転ドラム103が配置され、回転ドラム103は外槽101の背面に設けられた駆動モータ107の駆動力により回転する。洗濯乾燥機20の前面側には開口部106が形成され、開口部106を開閉するドア111が設けられている。ユーザは、開口部106から、衣類200を回転ドラム103内部に投入し、洗濯乾燥が終了した衣類200を取り出すことが出来る。
【0015】
外槽101の上部には、洗濯乾燥機20の前面から見て左側前方に洗剤投入手段108が設けられ、左側後方には、給水ユニット112が設置されている。また、外槽101上部には乾燥手段の構成要素であるリントフィルタ90、送風ファン8が設置されている。送風ファン8は、遠心式の多翼ファンないしはターボ送風機である。また、外槽101を構成する外槽前面カバー102の右側上部には、回転ドラム103内への循環空気の吹出口14が設置されている。外槽101の背面部には、循環空気を回転ドラム103から排出する排出口15を備え、排出口15は排気ダクト73によりリントフィルタ90に接続されている。外槽101とダクト等の接続は、運転時の振動の伝達を抑制するためにゴム製のジャバラ113a、113b等を介して接続している。
【0016】
次にヒートポンプ装置1の構成と動作について説明する。
図3は本発明の一実施の形態例に係わるヒートポンプ装置1の構成を示す模式図で、ヒートポンプ装置1の冷媒回路16の構成と循環風路17の構成を示している。
図3に示すように、ヒートポンプ装置1は、圧縮機2と、空気への放熱用熱交換器(凝縮器3)、減圧装置5(膨張弁等)と、空気の除湿用熱交換器(蒸発器4)とを備え、これらの機器を冷媒配管6により順次接続してなる冷媒回路16を、樹脂製のケーシング18内に収納したものである。冷媒は図中R1で示した矢印の方向に、圧縮機2、凝縮器3、減圧装置5、蒸発器4の順に流れ、再度圧縮機2に戻る。
【0017】
ヒートポンプ装置1を構成する蒸発器4、凝縮器3は空気と熱交換を行うため、一般的に積層したアルミフィンに伝熱管を貫通するように取り付けたクロスフィンチューブ式の熱交換器が用いられることが多い。以降、凝縮器3と蒸発器4を合わせて熱交換器と呼ぶ。
【0018】
ヒートポンプ装置1のケーシング18は、下部ケーシング(図示せず)と上部ケーシング(図示せず)に分離可能な構成である。熱交換器(蒸発器4、凝縮器3)は側面側に流れる空気を阻害するように、上部ケーシングと下部ケーシングの間に挟み込むように設置され、空気の循環風路17を形成する。圧縮機2は防振ゴム等を介して、下部ケーシングに設置される。冷媒配管6は、圧縮機2の回転振動の伝搬により破断することを防ぐため、蛇行した状態で放熱用の凝縮器3と除湿用の蒸発器4のそれぞれと接続されている。
【0019】
圧縮機2は、制御が可能な圧縮機を用い、例としては、ピストン式、ロータリー式、スクロール式等を用いており、インバータ制御により、低速から高速まで回転速度が可変である。また、冷媒が液相で圧縮機2に戻ると、圧縮機2の摺動面での潤滑不良により信頼性を低下させることがある。これを抑止するために、冷媒の吸入側にアキュムレータ(図示せず)を設けるとよい。
【0020】
圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は、凝縮器3へ流入し、循環空気に放熱することにより凝縮して液化する。液化した冷媒は、所定の開度に調整された膨張弁(減圧装置5)により減圧され、低温低圧の気液二相状態となり、蒸発器4へ流入する。そして循環空気から吸熱することにより蒸発して気化する。気化した冷媒は、圧縮機2に吸入され、圧縮機2により再び圧縮され高温高圧のガス冷媒となる。このようにしてヒートポンプ装置1が形成される。前記冷媒回路16内には冷媒が封入され、冷媒として例えば、HFC単一冷媒、HFC混合冷媒、HFO‐1234yf、HFO‐1234ze、自然冷媒(例えばCO2冷媒)等を用いることができる。
【0021】
蒸発器4は回転ドラム103内の衣類200から蒸発した水分を含んだ高湿の空気を除湿冷却し、凝縮器3では蒸発器4で吸熱した熱量と圧縮機2の熱量を循環空気に放熱する。一般的にフィンチューブ式熱交換は積層したアルミフィンの表面にスリットを切り起こすことや、折り目を加工すること、フィンピッチを詰めること等で伝熱面積を増加させ、空気流に対する前縁効果により伝熱性能を向上させている。乾燥運転時には蒸発器4は循環空気の露点温度以下となるように制御されるため、蒸発器4を構成するフィンの表面には、循環空気中の水分が結露して付着する。このため、アルミフィンの表面には親水性処理等の表面処理が施され、フィン表面に結露した水分を流し落としやすくする構成となっている。また、ヒートポンプ装置1のケーシングには、蒸発器4において発生した結露水を排水するための排水部18aが設けられており、ポンプ等で循環風路17外へ排出される構成となっている。
【0022】
ヒートポンプ装置1は、外槽101の下部、洗濯乾燥機筺体100の後方のベース105上に設置してある。循環空気は回転ドラム103から排出口15を経て排出され、リントフィルタ90通過後、外槽101上部から下部に向かって入口側流路70を経由してヒートポンプ装置1に流入する。ヒートポンプ装置1の内部には、循環空気の流れ方向の上流側から蒸発器4、凝縮器3が配置される。ヒートポンプ装置1において除湿及び加熱された循環空気は、外槽101下部から上部に向かって循環空気が流れる出口側流路71から、送風ファン入口ダクト72を通り、送風ファン8に接続され、外槽101の前面上部に設けた吹出し口14により回転ドラム103内に吹き込まれる。
【0023】
本実施の形態例における洗濯乾燥機20は、蒸発器4から凝縮器3へ至る循環風路17の途中に循環風路17の外へ連通した連通風路10を備えている。図中実線の矢印は、循環風路17の主流を流れる空気を示し、一点鎖線の矢印は循環空気の主流以外の空気の流れ、又は排気及び給気の空気の流れを示している。また、破線は循環風路17を主流と連通風路10へ流れる空気とに分ける循環風路仕切り40を示している。連通風路10には、循環風路17を流れる空気の一部を外部へ排気するための排気風路11と、循環風路17の外部から外気を導入するための給気風路12で構成されており、排気風路11の出口側には送風装置である排気ファン9を備え、給気風路12に入口には外気フィルタ19を備えている。さらに循環風路17外部への排気と、循環風路17内部への給気を相互に熱交換可能な給排気熱交換器7を備えた構成としている。
【0024】
蒸発器4では、回転ドラム103内の衣類から蒸発した水分を含んだ高湿度の循環空気と、冷媒との間で熱交換を行って、循環空気から熱を吸熱し、蒸発器4で得た熱量を凝縮器3での循環空気の加熱のエネルギーとして使用している。連通通路10は蒸発器4から凝縮器3へ至る循環風路17の途中に設けられているため、循環風路17外へ排気される空気は、蒸発器4を通過した後に排気風路11に入流する構成としている。上述のような構成とすることで、蒸発器4での吸熱量を減じることなく乾燥運転を行うことが可能となるため、乾燥効率を向上させ、省エネルギー化を図ることができる。
【0025】
また、循環風路17から排気風路11を通って排気される循環空気の一部は、連通風路10内に設けた給排気熱交換器7で、洗濯乾燥機20の外から循環風路17内への給気と熱交換を行う。排気される空気温度が、給気される空気温度よりも高い場合、給気される空気は外気温度よりも加熱されて循環風路17内へ流入する。従って、給気された空気と循環風路の主流を流れる循環空気との混合後の空気温度を著しく低下させることなく、凝縮器3に流入することができるため、凝縮温度の低下を抑制して、凝縮器3における加熱量を減じることなく乾燥運転を行うことが可能となり、乾燥効率を向上させ、省エネルギー化を図ることができる。
【0026】
また、加熱能力を増加させて乾燥運転を行う場合、冷媒循環量を増加させ、冷媒循環量に応じて循環風量を大としてヒートポンプ装置1を運転する必要がある。このような運転では、圧縮機2を駆動する電力が増加することにより、冷凍サイクルへの入熱量と、冷凍サイクルの構成要素からの放熱量の差分が冷凍サイクルに蓄熱されるため、冷凍サイクルの圧力が上昇していくことになる。この時、冷凍サイクルの運転点を保持するための方法のひとつとして、循環空気を循環風路17外へ排気することが考えられる。
【0027】
本実施の形態例における洗濯乾燥機では、蒸発器4から凝縮器3へ至る循環風路17の途中に循環風路17内外へ連通した連通風路10を備え、連通風路10には、循環風路17外部への排気と、循環風路17内部への給気を相互に熱交換可能な給排気熱交換器7を備えた構成となっている。従って、給排気熱交換器7により、排気する空気から排熱を回収して給気することが可能であるため、排気によるエネルギーの損失を抑制することが可能となり、乾燥効率を向上させ、省エネルギー化を図ることができる。
【0028】
図4は本発明の一実施形態例の洗濯乾燥機の連通風路の構成を示す模式図である。本実施例では、循環風路17と連通風路10の間に風路切替機構30を設けた構成としている。図中実線の矢印は、循環風路17の主流を流れる空気を示し、一点鎖線の矢印は循環空気の主流以外の空気の流れ、又は排気及び給気の空気の流れを示している。また破線は循環風路を主流と連通風路へ流れる空気とに分ける循環風路仕切り40を示している。
【0029】
図4(a)に示すように、風路切替機構30を開とした場合には、蒸発器4を通過した循環空気の一部は、排気風路11を通り、給排気熱交換器7において、外気からの給気と熱交換後に循環風路17の外へ排気される。一方、
図4(b)に示すように風路切り替え機構30を閉とした場合は、連通風路10は閉鎖されて、給排気間の熱交換は行われずに、乾燥運転時に乾燥空気は全量がヒートポンプ装置1と回転ドラム103循環をして乾燥運転を行う。上記の構成とすることで、乾燥工程の進行に伴い、必要に応じて、給排気を行うことが可能となる。従って排気によるエネルギーの損失を抑制することが可能となり、乾燥効率を向上させ、省エネルギー化を図ることができる。
【0030】
また、風路切替機構30の構成として、全閉と全開が可能な構造を図示しているが、この構造に限定するものでなく、ダンパーを用いた構造や、風量を調節可能な構造、切替機構を半開あるいは所定の開度とする構成であってもよい。上述のような構成とすることで、乾燥工程において、循環風路17内を流れる循環空気温度を上昇させる場合には、連通風路10を閉じて排気風路11への流れを閉止することや、排気風路11へ流れる風量を減じるように制御が可能となる。循環空気を排気する場合においては、連通風路10を開いて循環風路17から排気風路11への排気、給気風路12からの循環風路17への給気を行う。この時給気風路12に流れる空気量を多くするように制御することで、循環空気温度を低下させることが可能となる。このように、排気風路11と給気風路12を流れる空気量を制御することで、排気からの熱を回収し、エネルギーの損失を抑制することが可能となる。さらに乾燥効率を向上させ、省エネルギー化を図ることができる。
【0031】
図5は、本発明の一実施形態例の循環風路17とヒートポンプ装置1の冷媒回路16を示す模式図である。図中実線の矢印は、循環風路17の主流を流れる空気を示し、一点鎖線の矢印は排気及び給気の空気の流れを示している。また破線は循環風路17を主流と連通風路10へ流れる空気とに分ける循環風路仕切り40を示している。本実施例では循環風路内に配置された凝縮器3を,二相域3aと単相域3bに分割した構成とし、循環風路17の外部から給気した空気は凝縮器3の特定領域を通過するように構成している。
図5は一例として、凝縮器3の外部からの給気が通過する領域を単相域3b(過冷却域)とした構成について示している。
【0032】
上記のような構成で給排気を行うと、循環風路17の外部からの給気温度が、蒸発器4を通過して循環風路17の外へ排気される排気温度よりも高い場合、給排気熱交換器7での熱交換後の給気温度は外気温度に対して低下するが、凝縮器3の単相域3b(過冷却域)を通過して熱交換することで、凝縮器3の過冷却を促進し、蒸発器4での冷却能力を向上させることが可能となる。また、循環風路17外部からの給気温度が蒸発器4を通過して循環風路17外へ排気される排気温度と同等の場合においても、上記同様、凝縮器3の単相域3b(過冷却域)に流入することで、凝縮器3の過冷却を促進し、蒸発器4での冷却能力を向上させることが可能となる。
また、循環風路17外部からの給気温度が、蒸発器4を通過して循環風路17外へ排気される排気温度よりも低い場合、給排気熱交換器7において給気は排気により加熱されて凝縮器3に流れるため、給排気熱交換器7により、排気する空気から排熱を回収して給気することが可能である。このため、排気によるエネルギーの損失を抑制することが可能となり、乾燥効率を向上させ、省エネルギー化を図ることができる。循環風路17から洗濯乾燥機20の外部へ排気する空気の露点温度が洗濯乾燥機20外部の外気温度よりも高い場合には、洗濯乾燥機20の設置場所の周囲の壁などの表面で結露を生じることがある。しかしながら、本実施の形態例の洗濯乾燥機20においては、循環風路17からの排気を給排気熱交換器7で外部からの給気と熱交換後に洗濯乾燥機20外部へ排気している。このため、排気と給気の露点温度差による結露は給排気熱交換器7において発生するため、洗濯乾燥機20の外部環境で生じることを抑制することができる。
【0033】
給排気熱交換器7の熱交換器の形態としては、排気風路11を流れる空気と、給気風路12を流れる空気が伝熱面を介して熱交換可能であれば構造を限定するものでない。また、給排気熱交換器7には、結露水が重力で給排気熱交換器7から流下する構造であることが望ましい。
【0034】
給排気熱交換器7が上記のような構造を備えていれば、循環風路17外部へ排気される空気と、循環風路17へ給気される空気の温度湿度条件により、給排気熱交換器7に結露水が発生した場合に、結露水は速やかに給排気熱交換器7から除去されることになる。また、給排気熱交換器7に発生した結露水が洗濯乾燥機20の機外へ排出されることを抑止できるため、洗濯乾燥機20が設置された外部環境に結露等の影響を及ぼすことを抑止できる。さらに、結露水が流動抵抗になることを防ぎ、排気ファン9を効率よく運転することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0035】
給排気熱交換器7から流下した結露水は例えば、ヒートポンプ装置1のケーシングの排水部18aに導入される構造であってもよい。このような構成であれば、給排気熱交換器7の結露水は蒸発器4で除湿した水分とともに、循環風路17の外へ排出することが可能であり、別途排出のための機構を設けなくてもよい。
【0036】
ここで、圧縮機2の吐出側に四方弁(図示せず)を設置することにより、冷媒の流れを順方向と逆方向に切り替えることが可能となる。通常の乾燥運転時は、冷媒は圧縮機2、四方弁(図示せず)、凝縮器3、減圧機構5、蒸発器4、を通過し、アキュムレータ(図示せず)から圧縮機2に戻る構成となっている。四方弁(図示せず)により冷媒の流れを逆にすると、蒸発器4には高温高圧のガス冷媒が流入して凝縮器として機能する。この時、蒸発器4のフィン表面に生成された霜や氷は融解し、蒸発器4表面の水滴は乾燥する。この除霜運転を行うことで、乾燥運転終了時に蒸発器4は乾燥した状態となり、伝熱面に残留した水滴や不純物による臭い発生を抑制する効果を得る。
【0037】
本実施の形態例の洗濯乾燥機20は、制御装置13を備えている。制御装置13は、少なくとも洗濯運転、乾燥運転、あるいは洗濯乾燥運転の開始時に回転ドラム103内に投入された衣類200の容量のセンシングを行い、判定値に基づいて、投入する洗剤量、運転時間を決定し、表示部(図示せず)に表示するが、運転途中においても、再度容量のセンシングを行うことで、運転時間の見直しを行い、衣類の容量に応じた最適な運転時間と運転工程を選択し、乾燥消費電力量の増大を抑制することが可能となる。
【0038】
さらに、ヒートポンプ装置1は、熱交換器(凝縮器3、蒸発器4)を流れる冷媒温度を検出するセンサを備えている。
図3には冷媒配管6に温度センサT1、T2、T3を設置した一例を示している。通常、冷凍サイクルにおいては運転状態を把握するために、冷媒配管6や熱交換器(凝縮器3、蒸発器4)に圧力センサや温度センサを設置している。一例として、センサ類は圧縮機2の吸込側、吐出側、熱交換器(蒸発器4、凝縮器3)の出入口、膨張弁(減圧装置5)前などに設置され、検出量により冷凍サイクルの状態を表すモリエル線図を推定し、冷凍サイクルの制御が行われている。本実施例の冷媒回路16では温度センサで冷凍サイクルの性能を推定しているが、圧力センサを取り付けた構成としてもよい。圧力データを制御装置13で利用することで、冷凍サイクルの成績係数(COP)が最適となるように制御可能となり、乾燥運転時の消費電力量を低減することが可能となる。
【0039】
乾燥運転時の循環空気は、回転ドラム103から排出され、リントフィルタを90通過後、ヒートポンプ装置1により、除湿・加熱されて送風ファン8により再び回転ドラム103内に吹きこまれる。本実施例の洗濯乾燥機20は、上記の循環空気の状態をモニターするために、温湿度センサTH1、TH2を備えている。乾燥運転時に回転ドラム103への吹出口14、回転ドラム103からの排出口15での温度及び湿度データを把握することにより、衣類200からの水分の概略の蒸発量を推定し、衣類200の乾燥状態を推測することで、乾燥運転時間を最適に設定することが可能となる。このため、乾燥運転時の消費電力量を抑え、省エネルギー化を得ることができる。
【0040】
温湿度センサTH1、TH2から得られた循環空気の温湿度データからは、循環空気の露点温度を算出することができる。ヒートポンプ装置1の冷凍サイクルの運転条件として、循環空気のヒートポンプ装置1の入口での露点温度を把握することが出来れば、蒸発器4を流れる冷媒温度が循環空気の露点温度以下となるように制御することで、除湿性能を向上させることが出来る。なお、
図3において、温湿度センサTH1、TH2は回転ドラム103への吹出口14、および回転ドラム103からの排出口15に配置した例を示しているが、この構造に限定するものでなく、ヒートポンプ装置1の出入口などに設置してもよい。
【0041】
また、制御装置13は、衣類200の容量に基づいて決定された運転工程により、ヒートポンプ装置1の膨張弁5の開度、圧縮機2の回転速度、送風ファン8の回転速度を制御する。乾燥運転時に衣類200から蒸発させるべき水分量は、衣類200の種類及びその重量と、脱水後の衣類の重量から推定され、推定された水分を衣類200から蒸発させて除去するために、制御装置13はヒートポンプ装置1の凝縮温度、蒸発温度、冷媒の循環量、回転ドラム103へ吹き出す空気温度、循環風量等を制御する。なお、
回転ドラム103内へ吹き込む空気温度は、衣類200の種類、脱水後の衣類200の重量、乾燥に要する運転時間の推定値から決定され、凝縮温度は、ドラム内へ吹き込む空気温度よりも高く設定される。
【0042】
また、制御装置13は、回転ドラム103から排出された空気を除湿するために、蒸発温度を蒸発器4の入口の循環空気の露点温度以下となるように設定するが、この時、蒸発温度と循環空気との温度差が極度に大きくなることを抑制するように制御する。このような制御を行うことで、循環空気が蒸発器4において過度に冷却されることを防ぎ、凝縮器3での加熱量の不足を抑制することができる。さらに、乾燥工程での冷媒循環量と循環風量を変更することで、蒸発温度と凝縮温度を変化させ、圧縮機2を効率よく運転することが可能となる。従って圧縮機2の消費電力の大幅な増大を防ぎ、乾燥効率の低下を抑制することが可能となる。上述のように、乾燥運転時の消費電力量を低減し、乾燥運転時間の最適化を図ることで、乾燥運転時の消費電力量を抑え、省エネルギー化を図る効果を得ることができる。
【0043】
さらに、
図1〜
図3に示しているように、送風ファン8から回転ドラム103への吹出口14への風路の長さを短くする構成とすることで、吹出口14から、高速、高風量の空気を衣類に吹き付けることが可能となり、乾燥運転時に高い仕上がり性を得る効果がある。加えて、送風ファン8により昇圧された速い流速の空気が流れる風路を構成する吹出しダクト74から吹出口14までを短い風路にでき、圧力損失の増加を抑制可能である。このため、送風ファンモータ81の消費電力を低くできるので、乾燥運転時の消費電量を抑えた高い省エネルギー性を有することが可能である。
【0044】
ここで、吹出口14の位置は必ずしも前面側の上部でなくても良い。例えば、吹出口14を回転ドラム103の背面側に設けた場合には、吹出口14の面積を大きくし易いので、大風量での乾燥により乾燥性能を高めることが可能となる。また、回転ドラム103を斜めに配置する洗濯乾燥機の場合、衣類200は回転ドラム103の後方に集まり易いので、吹出口14を背面側にすることにより、衣類の撹拌(入れ替わり)を促進する効果も得られる。ただし、吹出口14を背面側に設けた場合、スリット状やメッシュ状のカバー等を設置する必要があるため、吹出空気の抵抗になって衣類200に直接当たり難くなる。従って、衣類200に直接高速の風を吹き付けることを重視する場合は、吹出口14を前面側に設ける構成の方がより望ましい。
【0045】
乾燥運転前に、衣類を高速脱水することにより衣類が含有する水分量を減らすことができ、乾燥運転時の消費電力量を削減可能となる。また、回転ドラム103が高速で回転することにより駆動モータ107が発熱し、衣類や回転ドラム103内部を含めた循環風路17内を加熱する。このため、循環風路17内部に設置された熱交換器(蒸発器4、凝縮器3)内部の冷媒が温められる。
【0046】
また、高速脱水時開始から送風ファン8、圧縮機2を運転し、冷凍サイクルの運転を開始することにより冷媒の圧力を上昇させ、凝縮器3を流れる冷媒温度をさらに上昇させることができる。
【0047】
また、送風ファン8により、回転ドラム103内に循環空気を送ることにより、脱水の遠心力で回転ドラム103内面に張り付いた衣類200をほぐす効果や、衣類200の温度を上昇させる効果がある。
【0048】
このような構成とすることで、乾燥運転時に衣類200からの水分の蒸発が促進され、乾燥効率を向上させることが可能となる。このため、乾燥消費電力量の増加を抑えた省エネルギー化を図る効果と、高速、高風量の空気を衣類に吹き付けることによる乾燥運転時の高い仕上がり性を得る効果がある。
【0049】
また、ユーザの選択により、衣類200を短時間で乾燥させるコースを選ぶことが可能である。上記のコースでは、循環空気の回転ドラム103への吹込み温度を高く設定するために圧縮機2の回転速度を増加させることや、除湿速度を上げるために送風ファン8の風量を増加させること、および脱水運転中にヒートポンプ装置1を運転し、冷凍サイクルを暖機することが行われる。このような運転を行うと、圧縮機2の入力が増大する可能性があるが、回転ドラム103とヒートポンプ装置1を循環している循環空気の温湿度の変化から、衣類200の乾燥状態を推定することにより、乾燥運転時間を決定し、消費電力量の大幅な増大や、衣類200への過大な加熱を抑制することが可能となる。上述の構成により、省エネルギー化を図った乾燥運転を実現することができる。また、脱水運転時には、衣類200から脱水された水分と回転ドラム103内の高湿の空気は排水ホース110から洗濯乾燥機20外部へ排出される。同時にヒートポンプ装置1を運転することにより、排水ホースからの排出に加えて蒸発器4で循環空気を除湿することが可能となる。これらの運転より、乾燥運転時の循環空気から効率よく水分を除去することが可能となり、乾燥運転時の時間短縮と消費電力量の大幅な増大を抑える効果を得ることができる。
【0050】
また、循環空気の吹出口14を外槽前面カバー102に設け、循環空気の排出口15を、外槽101の背面部のいずれも回転ドラム103の回転軸よりも上方に設け、さらに排出口15の位置を、吹出口14の位置に対して回転ドラム103の回転中心軸に近い位置とする構成とする。このような構成とすれば、吹出口14から回転ドラム103内へ流れる空気流は、洗濯乾燥機20の前面から見て左斜め下方に向かって吹出される。循環空気の排出口15をその対角となる背面側に設けることで、吹き込まれた空気が排出口15へショートカットして流れることを抑制できる。上記の構成により、回転ドラム103内の衣類200に高速高圧空気を吹き付けることにより、乾燥時にしわの少ない、高い乾燥仕上り性を実現することが可能となる。また、衣類200と乾燥空気が直接当たりやすくなると、衣類200からの水分の蒸発が促進される。排出口15からは衣類200から蒸発した水分を含んだ空気をヒートポンプ装置1に導入しやすくなるため、乾燥効率を向上させた運転が可能となる。したがって、乾燥運転時の消費電力量を抑えて省エネルギー化を図ることができる。
【0051】
なお、上記の各実施例では、ヒートポンプ装置1を洗濯乾燥機筺体100の下部に設置した例を用いて説明しているが、この構成に限定されるものではない。別の例として、洗濯乾燥機筺体100の上部に配置してもよい。また、ヒートポンプ装置1を構成する、蒸発器4、凝縮器3、減圧機構5等を循環風路17内に配置して洗濯乾燥機100筺体の上部に配置し、圧縮機2を冷媒配管6で接続して洗濯乾燥機筺体100の下部に別置きとした構成であってもよい。
【0052】
また、上記各実施例においては、適用装置として、ドラム式洗濯乾燥機を例として説明したが、乾燥方式にヒートポンプ装置1を用いた縦型の洗濯乾燥機についても適用可能である。また、乾燥機能のみを有する乾燥機についても適用可能である。