(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連動機構は、前記支持座に設けられている支持座側ブラケット及び前記台車枠に設けられている台車枠側ブラケットの少なくとも一方側のブラケットに回動可能に取り付けられているリンク部材を有するリンク機構であり、
前記リンク機構は、前記台車枠が下がって前記台車枠側ブラケットが下がると前記リンク部材が前記支持座側ブラケットを介して前記支持座を前記車両長手方向であって前記横梁に向かって変位させる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鉄道車両用操舵台車。
前記リンク機構は、前記支持座側ブラケットにおける前記リンク部材の回動中心と前記台車枠側ブラケットにおける前記リンク部材の回転中心との車両長手方向距離D、2つの前記回転中心の鉛直方向距離H、前記板ばねの上下方向の撓み量δ、及び前記リンク部材の長さLに対して前記支持座の変位量xが式(1)及び(2)の関係を有するように構成され、
x=D-Lcosθ …(1)
θ=sin-1((H+δ)/L) …(2)
前記リンク部材の長さL、前記車両長手方向距離D、及び前記鉛直方向距離Hは、前記撓み量δに対する前記支持座の変位量x及び前記板ばねの長手方向端部の変位量x0の差|x-x0|が5mm以下である、請求項4に記載の鉄道車両用操舵台車。
前記リンク部材は、前記車両長手方向に延在して且つ鉛直方向の厚みより車幅方向の幅が広い平板状の部材であり、前記板ばねに平面視で重なるように前記板ばねの上方に配置されている、請求項4又は5に記載の鉄道車両用操舵台車。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る第1及び第2実施形態の鉄道車両用操舵台車1,1Aについて図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する鉄道車両用操舵台車1,1Aは、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0013】
[第1実施形態]
図1に示す鉄道車両2は、地面等に敷設されたレール3を走行するようになっており、車体4と鉄道車両用操舵台車(以下、単に「台車」という)1とを備えている。車体4は、レール方向に長い大略箱状に形成されており、その中に乗客又は荷役等を収容するようになっている。車体4の下方には、台車1が配置されており、台車1は、二次サスペンションとなる空気ばね5を介して車体4を下方から支持している。以下では、台車1の構成について詳しく説明する。
【0014】
<台車>
台車1は、
図1に示すように台車枠11を有し、台車枠11は、横梁21を有している。横梁21は、左右方向である車幅方向に延び、且つ後述する枕梁46及び空気ばね5を介して車体4を支持している。なお、台車1は、従来の鉄道車両用台車の構成とは異なって側ばりを備えていない。横梁21は、車幅方向に延びる一対の角パイプ(図示せず)を車幅方向に間隔を空けて配置される接続板(図示せず)によって接続されて構成される。横梁21の前方及び後方である車両長手方向両側には、車幅方向に沿って延びる前後一対の輪軸12,12が配置されている。各輪軸12は、車軸13と一対の車輪14,14とを有している。また、車軸13の車幅方向両端部には、車輪14よりも車幅方向外側に軸受16,16が夫々設けられている。軸受16,16は、車軸13を回転自在に支持しており、軸箱17内に収容されている。
【0015】
軸箱支持装置18は、台車枠11に対して輪軸12を適切な位置に保持するとともに、上下方向の荷重を支持しており、軸箱17と一体となった軸梁22を有している。連結部材である軸梁22は、車両長手方向に延在する軸梁本体部22aを有し、軸梁本体部22aの基端部22bが軸箱17に繋がっている。また、軸梁本体部22aは、先端部に内周面が円筒形状で車幅方向両側に開口する筒状部22cが形成されている。筒状部22cには、ゴムブッシュ(図示せず)を介して心棒23が挿通されており、心棒23が一対の受け座24,24に取付けられている。一対の受け座24,24は、横梁21の車幅方向両端部に車両長手方向に突出させて夫々設けられており、横梁21と共に台車枠11を構成している。
【0016】
各受け座24の車両長手方向外側(即ち、受け座24の先端側)には、下方に開口する嵌入溝24aが形成されており、嵌入溝24aには、心棒23の車幅方向両端部が嵌入されている。また、嵌入溝24aは、心棒23が嵌入された状態でその開口が蓋体25によって塞がれており、塞ぐことによって心棒23が嵌入溝24a内で蓋体25によって支持されている。このように取り付けられる軸梁22は、この心棒23及びゴムブッシュを介して受け座24に取付けられており、心棒23を中心に台車枠11に対して車両上下方向(即ち、鉛直方向)に揺動する。また、軸梁22は、ゴムブッシュを弾性変形させることによって、車幅方向に揺動すると共に、受け座24(即ち、台車枠11)に対して車両長手方向に相対変位させることができる。このように、軸梁22は、台車枠11に対して車両上下方向、車幅方向、及び車両長手方向に相対移動できるようになっており、軸梁22を動かすことによってその基端部22bに繋がる軸箱17を台車枠11に対して車両上下方向、車幅方向、及び車両長手方向に相対移動できるようになっている。
【0017】
次に軸箱17の上部の構成について
図2を用いて説明する。軸箱17の上面は、略平坦に形成される水平面を有しており、その上に間隙体27を介して支持座28が設けられている。支持座28は、支持台29と、受け部材30とを有している。支持台29は、側面視で三角形状(又は楔形状)に形成される台座であり、その上面が横梁21に向かうにつれて下方に傾斜している。また、支持台29の下面は、軸箱17の上面と平行に形成されており、支持台29と軸箱17との間には、間隙体27が設けられている。間隙体27は、水平方向に弾性変形可能(即ち、せん断変形が可能)な積層ゴムであり、その上下面に互いに平行な水平面を有している。本実施形態において、間隙体27は、ゴム板の上下面に金属又は樹脂から成るプレートが接着されてなる3つの弾性板31を上下方向に積層し、隣接する弾性板31,31の間に連結座32を介装することによって構成されている。
【0018】
間隙体27には、その下面中央に挿入孔27aが形成され、軸箱17の上面には、それに対応する位置に挿入ピン17aが形成されている。間隙体27は、挿入孔27aに挿入ピン17aが挿入されて軸箱17の上面に配置されており、挿入ピン17aによって軸箱17に対して位置決めされている。また、間隙体27の上面中央には、挿入孔27bが形成されており、支持台29の下面には、それに対応する位置に挿入ピン29aが形成されている。支持台29は、挿入ピン29aを挿入孔27bに挿入して間隙体27の上面に配置されており、挿入ピン29aによって間隙体27に対して位置決めされている。このように支持台29は、間隙体27を介して軸箱17上に配置されており、間隙体27を弾性変形(具体的には、せん断変形)させることで軸箱17に対して水平方向に相対変位するようになっている。支持台29の上面には、板ばね34の端部が載置される受け部材30が設けられている。
【0019】
受け部材30は、金属又は樹脂から成り、
図3に示すように平面視で矩形状に形成されている。また
図2に示すように、受け部材30の下面には、挿入ピン30aが形成されており、支持台29の上面には、それに対応する位置に挿入孔29bが形成されている。受け部材30は、挿入ピン30aを挿入孔29bに挿入して支持台29の上面に配置されており、挿入ピン30aによって支持台29の上面に対して位置決めされている。また、受け部材30の上面には、その外周縁部を車幅方向両側及び車両長手方向外側から囲む平面視U字状の外枠30bが形成されており、平面視で外枠30bの内側にある面が支持座28の座面28aを形成している。支持座28は、前後に夫々配置される一対の軸箱17の上方に配置され、2つの支持座の28の各座面28aが互いの方を向くように配置され、板ばね34が架け渡されている。
【0020】
板ばね34は、
図1に示すように車両長手方向に延在し且つ下に凸の弓形である。また、板ばね34は、一次サスペンションの機能と従来の側ばりの機能とを兼ね備えており、その車両長手方向中央部34aが横梁21の車幅方向端部21aの下方に配置されている。横梁21の車幅方向端部21aの下面には、大略円弧状の当接部材35が形成されており、当接部材35は、固定されていない状態で板ばね34の車両長手方向中央部34aの上に載せられている。
【0021】
また、板ばね34は、その車両長手方向中央部34aから車両長手方向両端まで斜め上方向に向かって延びており、板ばね34の車両長手方向両端部34b,34bが軸箱17の上方まで達している。板ばね34の車両長手方向両端部34b,34bは、各支持座28の上面、即ち座面28aの傾斜に合うように斜め上方向に向かって延在しており、固定されていない状態で座面28aに載せられている。このように、板ばね34は、その車両長手方向両端部34b,34bが前後一対の軸箱17の各々の上方で支持座28に支持され、その車両長手方向中央部34aが固定されない状態で横梁21の下方に配置されている。
【0022】
このように構成される台車1では、乗車率が上昇して車体4の下方荷重が増加すると、その下方荷重が横梁21及び当接部材35を介して板ばね34の車両長手方向中央部34aに作用し、板ばね34の車両長手方向中央部34aが下方に沈み込む。これに伴って板ばね34の車両長手方向両端部34b,34bと受け部材30との接触位置が車両長手方向中央部34a側(横梁21側)に近づいていく。すなわち、板ばね34の車両長手方向両端部34b及び中央部34aで固定されていないので、線路不整等により前後車輪に高低差が生じた場合に、板ばね34が当接部材35を中心にシーソーのように回転して高低差を吸収し、輪重抜けを防止する。
【0023】
このように構成されている台車1は、ボルスタ付きの操舵台車であって、枕梁46を有している。枕梁46は、支持軸47を介して横梁21に設けられ、横梁21に対して鉛直軸線L0回りに相対回動するようになっている。また、枕梁46は、空気ばね5を介して車体4を支持し、且つボルスタアンカー48によって車体4と連結されている。それ故、枕梁46は、車体4と一体的に旋回するようになっている。また、台車1は、枕梁46の旋回動作に応じて一対の輪軸12を操舵する(即ち、一対の輪軸12をヨーイング方向に回動させる)ために一対の操舵機構50を備えている。
【0024】
<操舵機構>
一対の操舵機構50(一方は図示せず)は、台車枠11の車幅方向両側面部に1つずつ設けられており、互いに車体4の中心線に対して鏡面対称に配置されている。各操舵機構50は、同様の構成を有しており、連結リンク51、操舵テコ52、第1操舵リンク53、及び第2操舵リンク54を有している。連結リンク51は、略車両長手方向に延在する部材である。連結リンク51の車両長手方向一端部は、枕梁側リンク受部材55を介して枕梁46に連結されており、連結リンク51は、枕梁46と横梁21との相対旋回動作に連動して車両長手方向に動くようになっている。また、連結リンク51の車両長手方向一端部は、車両上下方向に相対回動可能に枕梁側リンク受部材55に取付けられており、連結リンク51の車両長手方向他端部は、操舵テコ52に連結されている。
【0025】
操舵テコ52は、車両上下方向に延在しており、その上下方向一端部に連結リンク51が回動可能に取り付けられている。また、操舵テコ52は、ピン部材56を介して台車枠11の側面部に取付けられている。ピン部材56は、車幅方向に延在しており、操舵テコ52は、ピン部材56の軸線である支点軸線L3回りに回動可能である。更に、操舵テコ52には、第1ピン部材56を挟んで上下方向に等間隔で離間させられている2つのピン部材57,58が設けられており、これらのピン部材57,58を介して第1操舵リンク53、及び第2操舵リンク54が設けられている。
【0026】
第1操舵リンク53及び第2操舵リンク54は、車両長手方向に延在する部材であり、各々の車両長手方向一端部がピン部材57、58を介して操舵テコ52に取付けられている。これにより、第1操舵リンク53及び第2操舵リンク54の各々は、ピン部材57,58回りに回動可能に操舵テコ52に取付けられている。また、第1操舵リンク53の車両長手方向他端部は、第1軸梁側リンク受部材59を介して車両長手方向一方側の軸梁22Fに連結され、第2操舵リンク54の車両長手方向他端部が第2軸梁側リンク受部材60を介して車両長手方向他方側の軸梁22Bに連結されている。
【0027】
このような操舵機構50は、台車1が曲線区間を走行している際に枕梁46と横梁21とが相対旋回すると、その旋回動作に連動して作動する。即ち、枕梁46と横梁21とが相対旋回すると、旋回動作に連動して連結リンク51が車両長手方向一方(又は他方)に移動する。これにより、操舵テコ52が支点軸線L3を中心に時計回り方向(又は、反時計周り方向)に回動する。そうすると、2つのピン部材57,58もまた操舵テコ52と一体となって支点軸線L3を中心に時計回り方向(又は、反時計周り方向)に回動する。この回動動作により、第1操舵リンク53及び第2操舵リンク54の各々が長手方向に互いに異なる方向に移動する。これにより、前後一対の軸梁22F,22Bを旋回動作に応じて互いに近づけたり離したりすることができる。
【0028】
台車1では、一対の操舵機構50が鏡面対称で配置されているので、旋回動作時に各々の連結リンク51が互いに逆方向に移動する。そのため、曲線区間の内軌側にある前後一対の軸梁22F,22B、即ち前後一対の軸箱17F,17Bが互いに近づくように移動し、外軌側にある前後一対の軸梁22F,22B、即ち前後一対の軸箱17F,17Bが互いに離れるように移動する。これにより、前後の一対の輪軸12,12のアタック角を減少させることができる。このように、操舵機構50は、一対の輪軸12,12をレール3の曲線形状に合わせて操舵し、曲線区間において台車1を円滑に走行させることができる。
【0029】
このように台車1では、曲線区間において台車枠11に対して前後一対の軸箱17F,17Bを相対変位させることによって一対の輪軸12,12を操舵しており、内軌側にある前後一対の軸箱17F,17Bが
図5に示すように台車枠11の受け座24の方へと近づく(
図5の二点鎖線の変位前の軸箱17F参照)。他方、各軸箱17F,17B上に配置されている支持座28は、板ばね34の車両長手方向端部34bとの相対変位量とを抑えるべく、台車枠11との間で一定の間隔を維持する。それ故、操舵時において軸箱17F,17Bとその上にある支持座28とが相対変位するが、それらの間にせん断弾性変形可能な間隙体27を介在させて軸箱17F,17Bと支持座28との相対変位を許容している。これにより、前後一対の軸箱17F,17Bを受け座24の方へと近づけても、板ばね34の車両長手方向端部34bを支持している支持座28が軸箱17F,17Bに連れられて動くことを抑制することができるので、軸箱17F,17Bが台車枠11に向かって近づいても軸箱17F,17Bに作用する車体支持荷重の水平分力が増加することを抑制できる。従って、操舵時において車体支持荷重によって軸箱17F,17Bが近づくことが阻害されることを抑制することができ、台車1における操舵性能の低下を抑制することができる。
【0030】
外軌側にある前後一対の軸箱17F,17Bは、台車枠11の受け座24から離れる。他方、各軸箱17F,17B上に配置されている支持座28は、板ばね34の車両長手方向端部34bとの相対変位量とを抑えるべく、台車枠11との間で一定の間隔を維持する。それ故、操舵時において軸箱17F,17Bとその上にある支持座28とが相対変位するが、それらの間にせん断弾性変形可能な間隙体27を介在させて軸箱17F,17Bと支持座28との相対変位を許容している。これにより、前後一対の軸箱17F,17Bを受け座24から離れても、板ばね34の車両長手方向端部34bを支持している支持座28が軸箱17F,17Bに連れられて動くことを抑制することができるので、軸箱17F,17Bが台車枠11から離れても軸箱17F,17Bに作用する車体支持荷重の水平分力が増加することを抑制できる。
【0031】
このように台車1では、内軌側及び外軌側において間隙体27によって操舵時でも支持座28と台車枠11との間で一定の間隔を保つようにし、軸箱17F,17Bに作用する車体支持荷重の水平分力の増加を抑制して、曲線通過時に操舵軸の動きを阻害しないようになっている。また、支持座28が軸箱17F,17Bに連れられて動くことを抑制することができるので、支持座28の座面28aと板ばね34の車両長手方向端部34bとの相対変位量を抑えることができる。それ故、支持座28の座面28aと板ばね34の車両長手方向端部34bとが摺動して座面28a及び板ばね34の車両長手方向端部34bが摩耗することを抑制することができる。更に、台車1は、支持座28と板ばね34との摩耗を抑えるべく連動機構40を更に備えており、連動機構40は、支持座28と台車枠11との間に架け渡されている。
【0032】
連動機構40は、
図2及び
図3に示すように一対の支持座側ブラケット41,41と、リンク部材42と、一対の台車枠側ブラケット43,43とを有している。一対の支持座側ブラケット41,41は、車両上下方向に延在する板状の部材であり、支持台29の車幅方向両側に夫々配置されている。支持座側ブラケット41の下端部は、支持台29に向かって折れ曲がって支持台29の側面部に固定され、その上端部には、支持座側軸部材44が架け渡されている。支持座側軸部材44は、その軸線方向中央部に球面ブッシュ44aを有しており、この球面ブッシュ44aにリンク部材42が取り付けられている。リンク部材42は、支持座28と台車枠11とを接続し、車両長手方向に延在する板状の部材であり、その一端部が球面ブッシュ44aにその中心回りに転動可能に取り付けられている。即ち、リンク部材42は、支持座側軸部材44の軸線L1回りに車両上下方向に揺動できると共に、球面ブッシュ44aにより車幅方向にも揺動できるようになっている。このように構成されるリンク部材42の他端部は、台車枠側軸部材45を介して一対の台車枠側ブラケット43,43に取付けられている。
【0033】
一対の台車枠側ブラケット43,43は、車両上下方向に延在する板状の部材であり、各々を車幅方向に離して台車枠11に設けられている。具体的には、台車枠側ブラケット43は、一対の受け座24,24の各々の上面に立設されている。また、一対の台車枠側ブラケット43,43の上端部には、台車枠側軸部材45が架け渡されており、台車枠側軸部材45は、その軸線方向中央部に球面ブッシュ45aを有している。リンク部材42の他端部は、台車枠側軸部材45の球面ブッシュ45aにその中心回りに転動可能に取り付けられている。即ち、リンク部材42は、台車枠側軸部材45に対してもその軸線L2回りに車両上下方向に揺動できると共に、球面ブッシュ45aにより車幅方向にも揺動できるようになっている。
【0034】
このように構成される連動機構40は、車体4の下方荷重が増加することによって横梁21が下方に沈み込み、それに伴って一対の受け座24,24が下方に沈み込む(
図4の沈み込む前の二点鎖線の受け座24も参照)と、一対の台車枠側ブラケット43,43が下がる。そうすると、リンク部材42は、台車枠側軸部材45の軸線L2回りに上方に揺動させて支持座側ブラケット41,41を車両長手方向内側に変位させようとする。支持座側ブラケット41,41が繋がる支持座28は、間隙体27によって軸箱17に対する車両長手方向の相対変位が許容されているので、リンク部材42は、支持座側ブラケット41,41を介して支持座28を車両長手方向内側に変位させる、即ち、横梁21側に寄せることができる(
図4の沈み込む前の二点鎖線の支持座28も参照)。これにより、下方荷重によって横梁21及び板ばね34の車両長手方向中央部34aが下方に沈み込む際、板ばね34の車両長手方向両端部34b,34bの動きに合わせて支持座28を車両長手方向内側に相対変位させることができ、横梁21が沈み込んだ場合における板バネ34の車両長手方向両端部34b,34bと支持座28との相対スベリ変位量を抑えることができる。
【0035】
このように、連動機構40は、板バネ34の車両長手方向両端部34b,34bと支持座28とを連動させることによって、板ばね34の車両長手方向両端部34b,34bと支持座28との相対スベリ変位量を抑えることができる。また、相対スベリ変位量を小さくして支持座28と板ばね34との摩耗を防ぐためには、連動機構40が以下のように構成されていることが好ましい。即ち、連動機構40では、支持座の車両長手方向の変位量xが軸線L1と軸線L2との車両長手方向距離D、軸線L1と軸線L2との車両上下方向距離H、板ばね34の車両長手方向中央部34aの下方への撓み量δ(即ち、台車枠11の沈み込み量δ)、及びリンク部材42の長さLに対して式(1)及び(2)の関係を有している。
x=D−Lcosθ …(1)
θ=sin
―1((H+δ)/L) …(2)
そして、前述する連動機構40における車両長手方向距離D、車両上下方向距離H、及びリンク部材の長さLは、板ばね34の車両長手方向中央部34aの撓み量δに対する車両長手方向端部34bの車両長手方向の変位量x
0と支持座の車両長手方向の変位量xとの差の絶対値|x−x
0|が5mm以下になるように設定される。
【0036】
なお、撓み量δに対する板ばね34の車両長手方向端部34bの車両長手方向の変位量x
0は、シミュレーション又は実験によって取得される値である。例えば、シミュレーション又は実験によって板ばね34の車両長手方向中央部34aの撓み量δを最小値(例えば、空車時の撓み量)から最大値(例えば、満車時の撓み量)の範囲において撓み量δを変化させ、変化させた撓み量δに対する板ばね34の車両長手方向端部34bの車両長手方向の変位量x
0の各種値を取得する。そして、同じ撓み量δに対して得られる変位量x
0と変位量xとの差の絶対値|x−x
0|が全ての撓み量δに対して5mmを越えないように、車両長手方向距離D、車両上下方向距離H、及びリンク部材の長さLが決められる。
【0037】
このようにして構成される連動機構40は、下方荷重によって横梁21及び板ばね34の車両長手方向中央部34aが下方に沈み込む際に、車両長手方向両端部34bと支持座28とを一緒に変位させて相対スベリ変位量を5mm以下に抑えることができる。これにより、車両長手方向両端部34b、及び支持座28の座面28aが摩耗することを抑制することができ、板ばね34の耐久年数を向上させることができる。
【0038】
また、上述のとおり、前後車輪の高さに高低差が生じた場合に、板ばね34が当接部材35を支点にしてシーソーのように動いて輪重変動を吸収することができる。このような動きをした際でも、連動機構40は、支持座28の座面28aと板ばね34の車両長手方向端部34bとの相対変位量を抑えることができ、支持座28の座面28aと板ばね34の車両長手方向端部34bとが摺動して座面28a及び車両長手方向端部34bの摩耗を抑制することができる。
【0039】
また、台車1では、連動機構40においてリンク部材42の車両長手方向両端部が球面ブッシュ44a,45aに転動可能に取付けられており、座面28aと台車枠11との車幅方向の相対変位が許容されている。これにより、操舵時において、軸箱17F,17Bと台車枠11とが車幅方向に相対変位しても、リンク部材42に対して車幅方向の過度な荷重が作用することを抑制することができる。更に、台車1では、支持座28の座面28aを傾斜させることによって板ばね34の長手方向両端部34bを曲げることなく真直ぐ延びた状態で支持座28に支持させることができる。それ故、板ばね34の強度低下を抑えることができる。
【0040】
<第2実施形態>
第2実施形態の操舵台車1Aは、第1実施形態の操舵台車1と構成が類似しているが、リンクの長さ及び傾きの微調整が可能である点で異なる。以下では、第2実施形態の操舵台車1Aの構成について、第1実施形態の操舵台車1の構成と異なる構成について主に説明し、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
連動機構40Aは、
図6及び
図7に示すように一対の支持座側ブラケット41A,41Aと、リンク部材42Aと、一対の台車枠側ブラケット43A,43Aとを有している。一対の支持座側ブラケット41A,41Aは、支持台29の車幅方向両側に夫々配置されており、それらの下端部が支持台29の側面部に固定されている。支持座側ブラケット41Aは、上端部に軸部材取付面41aを有しており、軸部材取付面41aは、車両上下方向に延び且つ車両外側に向いている平坦な面である。軸部材取付面41aには、調整板71を介して支持座側軸部材44Aが取り付けられている。調整板71は、リング状の部材であり、且つその厚み方向両側(即ち、車両長手方向両側)の表面が平坦に形成されている。調整板71は、その厚み方向一表面を軸部材取付面41aに当接させて軸部材取付面41a上に配置され、更に厚み方向他表面が支持座側軸部材44Aの端部44bと当接している。支持座側軸部材44Aの両端部44b,44bの各々は、平板状に形成されており、その一表面(即ち、車両長手方向の一表面)を調整板71の厚み方向他表面に当接させて配置されている。また、支持座側軸部材44Aの両端部44b,44bの各々には、厚み方向他表面(即ち、車両長手方向の他表面)からボルト72が挿通されている。ボルト72は、調整板71及び支持座側ブラケット41Aの上端部を貫通し、その先端部にナット73が螺合されている。これにより、支持座側軸部材44Aの端部44bが調整板71を介して支持座側ブラケット41Aに取付けられ、支持座側軸部材44Aの軸線方向中央部にはリンク部材42Aが取り付けられている。
【0042】
リンク部材42Aは、円柱状の部材であり、その軸線方向両端部に円筒状の挿通部42a,42bを有している。挿通部42a,42bは、共に車幅方向に挿通する内孔を有している。一方の挿通部42aには、支持座側軸部材44Aが挿通されており、他方の挿通部42bには、台車枠側軸部材45Aが挿通されている。このように構成されるリンク部材42Aでは、一端部が支持座側軸部材44Aを介して一対の支持座側ブラケット41A,41Aに取付けられ、他端部が台車枠側軸部材45Aを介して一対の台車枠側ブラケット43A,43Aに取付けられている。
【0043】
一対の台車枠側ブラケット43A,43Aは、各々を車幅方向に離して台車枠11に設けられており、それらの下端部が一対の受け座24,24の各々の上面に立設されている。また、台車枠側ブラケット43Aは、上端部に軸部材取付面43aを有しており、軸部材取付面43aは、車両上下方向に延び且つ車両外側に向いている平坦な面である。軸部材取付面43aには、調整板74を介して台車枠側軸部材45Aが取り付けられている。なお、
図6では、図面の都合上、以下で説明する調整版74等を省略しているので、
図7を参照する。調整板74は、調整板71と同じくリング状の部材であり、且つその厚み方向両側(即ち、車両長手方向両側)の表面が平坦に形成されている。調整板74は、その厚み方向一表面を軸部材取付面43aに当接させて軸部材取付面43a上に配置され、更に厚み方向他表面が台車枠側軸部材45Aの端部45bと当接している。台車枠側軸部材45Aの両端部45b,45bの各々は、支持座側軸部材44Aの両端部44b,44bと同じく平板状に形成されており、その一表面(即ち、車両長手方向の一表面)を調整板74の厚み方向他表面に当接させて配置されている。また、台車枠側軸部材45Aの両端部45b,45bの各々には、厚み方向他表面(即ち、車両長手方向の他表面)からボルト75が挿通されている。ボルト75は、調整板74及び台車枠側ブラケット43Aの上端部を貫通し、その先端部にナット76が螺合されている。これにより、台車枠側軸部材45Aの端部45bが調整板74を介して台車枠側ブラケット43Aに取付けられ、支持座28と台車枠11との間に連動機構40Aが架け渡される。
【0044】
ここで、調整板71,74は、厚さの異なる複数のものが用意されており、リンク部材42の長さLの調整が可能である。すなわち、異なる厚みの調整板71を支持座側軸部材44Aと支持座側ブラケット41Aとの間に配置し、また異なる厚みの調整板74を台車枠側軸部材45Aと台車枠側ブラケット43Aとの間に介在させることができる。このように、介在させる調整板71,74の厚みを変えることによって軸部材44A,45Aの車両長手方向の位置を変更することができる(
図6の二点鎖線参照)。例えば、台車1Aでは、連動機構40Aの変位量xの微調整を行うべくリンク部材42Aの長さLを変更するとリンク部材42Aの端部の位置も変わるので、支持座側軸部材44A及び台車枠側軸部材45Aの少なくとも一方の車両長手方向の位置を変更する必要がある。そこで、調整板71,74の厚みを変えることで、支持座側軸部材44A及び台車枠側軸部材45Aの少なくとも一方の車両長手方向の位置を変更することができる。それ故、連動機構40Aの変位量xの微調整を行うべく、長さの異なるリンク部材42Aを入れ替える際の入れ替え作業が容易である。それ故、板ばね34と支持座28との相対スベリ変位量の微調整の作業を容易にすることができる。
【0045】
その他、第2実施形態の台車1Aは、第1実施形態の台車1と同様の作用効果を奏する。
【0046】
<その他の実施形態>
第1及び第2実施形態の台車1、1Aでは、連動機構40Aのリンク部材42の車両長手方向両端部が軸部材44,45を介してブラケット41,43に回動可能に夫々取り付けられているが、必ずしもブラケット41,43の両方に対して回動可能に構成されている必要はなく、少なくとも一方のブラケット41,43に対して回動可能に構成されていればよい。また、リンク部材42は、板ばね34の中心線に沿って配置されているが、必ずしもこのような配置である必要はない。例えば、リンク部材42を板ばね34の中心線から外して配置してもよく、また一対のリンク部材42を用い且つ各々のリンク部材42をブラケット41,43の車幅方向外表面に回動可能に配置するようにしてもよい。
【0047】
また、リンク部材42は、板ばね34上に配置され、車幅方向の長さ(即ち、リンク部材42の厚み)が板ばね34の幅に比べて小さくなっているが、必ずしもこのような形状である必要はない。例えば、
図8に示すように、連動機構40Bのリンク部材42Bは、車幅方向の長さ(即ち、リンク部材42Bの幅)が車両上下方向の長さ(即ち、リンク部材42Bの厚み)より広い平板であって、平面視で板ばね34に部分的に重なるように配置されてもよい。この場合、リンク部材42Bの幅は、板ばね34の幅と同じ又はそれ以上であることが好ましく、このような形状のリンク部材42Bを板ばね34上に配置することによって、走行中に車輪等によって跳ね上げられた小石等の飛来物から板ばね34を保護することができる。
【0048】
また、第1及び第2実施形態の台車1、1Aでは、軸箱17と台車枠11とを連結する連結部材として軸梁22が採用されている場合について説明しているが、連結部材は、必ずしも軸梁22である必要はない。例えば、モノリンク式の台車のようにリンクであってもよい。
【0049】
更に、第1及び第2実施形態の台車1、1Aでは、間隙体27として積層ゴムが採用されているが、積層ゴムに限定されず弾性変形可能な部材であればよい。また、間隙体27は、必ずしも弾性変形可能な部材である必要はなく、支持座28と軸箱17との相対変位を許容するような構成であればよい。例えば、間隙体を自己潤滑ゴム部材で構成してもよい。この場合、自己潤滑ゴムからなる間隙体は、支持座28及び軸箱17の何れか一方に固定し、支持座28が軸箱17の上面を摺動するように構成する。これにより、支持座28と軸箱17との相対変位を許容することができ、第1及び第2実施形態の台車1,1Aと同様に操舵時における車体支持荷重の水平分力の増加を抑制することができる。
【0050】
更に、第1及び第2実施形態の台車1、1Aでは、操舵機構50を備えているが、必ずしも操舵機構50を備えている必要はない。また、操舵機構50は、前後一対の軸箱17F,17Bを動かすようになっているが、少なくとも一方だけを動かすような構成であってもよい。また、第1及び第2実施形態の台車1,1Aは、ボルスタ付き台車であるが、必ずしも枕梁46を有する必要はない。即ち、台車1,1Aは、ボルスタレス台車であってもよく、その場合、連結リンク51が車体4の下面から下方に突出するリンク受部材に回動可能に連結される。これにより、車体4の旋回動作に連動させて輪軸12を操舵することができる。