特許第6620027号(P6620027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニック株式会社の特許一覧
<>
  • 特許6620027-電気化学エネルギー蓄積デバイス 図000002
  • 特許6620027-電気化学エネルギー蓄積デバイス 図000003
  • 特許6620027-電気化学エネルギー蓄積デバイス 図000004
  • 特許6620027-電気化学エネルギー蓄積デバイス 図000005
  • 特許6620027-電気化学エネルギー蓄積デバイス 図000006
  • 特許6620027-電気化学エネルギー蓄積デバイス 図000007
  • 特許6620027-電気化学エネルギー蓄積デバイス 図000008
  • 特許6620027-電気化学エネルギー蓄積デバイス 図000009
  • 特許6620027-電気化学エネルギー蓄積デバイス 図000010
  • 特許6620027-電気化学エネルギー蓄積デバイス 図000011
  • 特許6620027-電気化学エネルギー蓄積デバイス 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620027
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】電気化学エネルギー蓄積デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0568 20100101AFI20191202BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20191202BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20191202BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20191202BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20191202BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20191202BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20191202BHJP
【FI】
   H01M10/0568
   H01M10/0569
   H01M10/052
   H01M4/58
   H01G11/06
   H01G11/60
   H01G11/62
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-18293(P2016-18293)
(22)【出願日】2016年2月2日
(65)【公開番号】特開2016-149351(P2016-149351A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-24305(P2015-24305)
(32)【優先日】2015年2月10日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成26年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業 革新型蓄電池先端科学基礎研究開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(72)【発明者】
【氏名】松井 徹
(72)【発明者】
【氏名】平井 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】山木 準一
(72)【発明者】
【氏名】小久見 善八
【審査官】 松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/001803(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/157187(WO,A1)
【文献】 特開2008−171574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0568
H01M 10/0569
H01M 10/052
H01M 4/58
H01G 11/06
H01G 11/60
H01G 11/62
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含む正極、
負極活物質を含む負極、および
LiClと、Li(XSONSOY)(ただし、XおよびYは、F、C2n+1、(CFのいずれかである。また、(CFは環状のイミドアニオンを形成する)およびLiBFのうちの少なくともひとつと、テトラヒドロフランおよび両末端がアルキル基のポリエチレングリコールのうちの少なくともひとつとを含み、前記正極および前記負極と接する非水電解液
を備え、
前記正極活物質がCu、BiまたはAgの塩化物を含むか、または、前記負極活物質が塩化マグネシウムを含み、
前記正極と前記負極との間の電荷担体は、塩素イオンである、
電気化学エネルギー蓄積デバイス。
【請求項2】
前記正極活物質が、CuCl、CuCl、AgClまたはBiClを含む請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積デバイス。
【請求項3】
前記負極活物質が、MgClを含む請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積デバイス。
【請求項4】
前記非水電解液において、前記LiClと、前記Li(XSONSOY)および前記LiBFのうちの少なくともひとつとを含む、前記LiCl以外のすべてのリチウム塩とのモル数の比が20以下である請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積デバイス。
【請求項5】
前記非水電解液において、前記LiClと前記Li(XSONSOY)および前記LiBFのうちの少なくともひとつとを含むすべてのリチウム塩が前記非水電解液に溶解している請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積デバイス。
【請求項6】
前記非水電解液は、Li(CFSONおよびテトラヒドロフランを含み、
LiClとLi(CFSONとテトラヒドロフランのモル比が1:4:20である請求項5に記載の電気化学エネルギー蓄積デバイス。
【請求項7】
前記非水電解液は、LiBF、およびテトラヒドロフランを含み、
LiClとLiBFとテトラヒドロフランのモル比が、1:7:20である請求項5に記載の電気化学エネルギー蓄積デバイス。
【請求項8】
前記非水電解液において前記LiClは固体状態で存在し、一部がLiとClとに解離している、請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積デバイス。
【請求項9】
前記非水電解液は、Li(CFSONおよびテトラヒドロフランを含み、
LiClとLi(CFSONとテトラヒドロフランのモル比が20:s:t(s、tは、1.0≦s、1.5≦t≦3.0)である請求項8に記載の電気化学エネルギー蓄積デバイス。
【請求項10】
正極活物質を含む正極、
負極活物質を含む負極、および
LiClと、Li(XSONSOY)(ただし、XおよびYは、F、C2n+1、(CFのいずれかである。また、(CFは環状のイミドアニオンを形成する。)およびLiBFのうちの少なくともひとつと、テトラヒドロフランおよび両末端がアルキル基のポリエチレングリコールのうちの少なくともひとつとを含み、前記正極および前記負極と接する非水電解液
を備え、
前記負極活物質が塩化マグネシウムを含み、
前記正極と前記負極との間の電荷担体は、リチウムイオンである、
電気化学エネルギー蓄積デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電気化学エネルギー蓄積デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非水電解液二次電池のエネルギー密度を高める研究開発は、ますます、盛んになっている。非水電解液二次電池は、携帯電話、携帯情報機器、ラップトップコンピュータ、ビデオカメラ、携帯ゲーム機器などの電子機器の電源として、また、電動工具、掃除機、ロボットなどの駆動用電源として、さらに、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車などにおける電気モーターの駆動あるいは補助する電源として使用される。
【0003】
非水電解液二次電池のエネルギー密度を高めるためには、電気容量の大きい材料を電極の活物質として使うことが考えられる。たとえば、塩化第二銅(CuCl2)を正極活物質に、リチウム金属を負極活物質に使う場合には、(1)式および(2)式のような反応によって、399mAh/gの電気容量を得ることができる。この値は、今日リチウムイオン電池の正極活物質として使われているLi0.5CoO2の電気容量の約3倍に相当する。なお、(1)式および(2)式の先頭に記した電位は、塩化第二銅、塩化第一銅(CuCl)、および、塩化リチウム(LiCl)の標準生成自由エネルギーにもとづいて計算した値である。
3.40V: CuCl2+Li++e → CuCl+LiCl・・・(1)
2.74V: CuCl+Li++e → Cu+LiCl・・・(2)
【0004】
特許文献1は、塩化第二銅を正極活物質に用い、フッ素化溶媒を非水電解液の溶媒として用いる非水電解液二次電池を開示している。たとえば、トリフルオロプロピレンカーボネート(TFPCと略記)を用い、電解質塩としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を1M濃度で、塩化リチウム(LiCl)を2.4mM濃度(特許文献1では、100mg/リットルと記載)で溶解した非水電解液において、塩化第二銅の放電(還元)を行うと、(1)式に続いて(2)式の反応が起きると記載している。ここで、TFPCを使用する理由は、塩化第二銅の電解液への過剰な溶解および自己放電を抑制するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−47416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した金属塩化物を電極活物質として用いる二次電池において、より良好な反応可逆性、つまり、より良好な充放電の可逆性が求められていた。本願の、限定的ではない例示的なある実施形態は、金属塩化物を電極活物質として用い、反応可逆性に優れた電気化学エネルギー蓄積デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の一実施形態による電気化学エネルギー蓄積デバイスは、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、および、LiClと、Li(XSO2NSO2Y)(ただし、XおよびYは、F、Cn2n+1、(CF2mのいずれかである。また、(CF2mは環状のイミドアニオンを形成する)およびLiBF4のうちの少なくともひとつと、テトラヒドロフランおよび両末端がアルキル基のポリエチレングリコールのうちの少なくともひとつとを含み、正極および負極と接する非水電解液を備え、前記正極活物質がCu、BiまたはAgの塩化物を含むか、または、前記負極活物質が塩化マグネシウムを含む。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示された電気化学エネルギー蓄積デバイスによれば、非水電解液が塩素イオン電導性を備え、かつ、金属塩化物の溶解を抑制することができる。よって、金属塩化物を電極活物質とする高いエネルギー密度の電気化学エネルギー蓄積デバイスが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、LiTFSI/THF溶液および2種の濃度のLiCl/LiTFSI/THF溶液中で、Ag線のサイクリックボルタンメトリーを行ったときの電位−電流変化を表す。
図2図2は、4種の濃度のLiCl/LiTFSI/THF溶液中で、Ag線のサイクリックボルタンメトリーを行ったときの電位−電流変化を表す。
図3図3は、LiCl/LiBF4/THF溶液中で、Bi線のサイクリックボルタンメトリーを行ったときの電位−電流変化を表す。
図4図4は、LiCl/LiTFSI/THF溶液中で、塩化マグネシウム(MgCl2)電極の定電流還元と酸化を行ったときの電位−電流変化を表す。
図5図5は、Ag板の電極と塩化マグネシウム(MgCl2)電極からなる電池を定電流で充電および放電したときの容量−電圧変化を表す。
図6図6は、LiTFSI/THF/PEGDME溶液中で、Bi線のサイクリックボルタンメトリーを行ったときの電位−電流変化を表す。
図7図7は、LiCl/LiTFSI/THF/PEGDME溶液中で、Bi線の定電流酸化と還元を行ったときの容量−電位変化を表す。
図8図8は、LiCl/LiTFSI/THF/PEGDME溶液中で、Cu線の定電流酸化と還元を行ったときの容量−電位変化を表す。
図9図9は、LiCl/LiTFSI/THFスラリーを用いて、AgCl板の電極とAg板の電極からなる電池に、Ag板の電極に対して酸化電流を流したときの時間−電圧変化を表す。
図10図10は、LiCl/LiTFSI/THFスラリーを用いて、AgCl板の電極とCu粉末の電極からなる電池に、Cu粉末の電極に対して酸化電流を流したときの時間−電圧変化を表す。
図11図11は、コイン型非水電解液二次電池の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明者は、特許文献1に開示された非水電解液二次電池を詳細に検討した。上記の(1)式および(2)式において、左向きの反応、すなわち、充電反応は進みにくい。放電生成物である塩化リチウムが電解液に難溶性であり、析出した塩化リチウムは式(1)式および(2)の左向きの反応に関与しにくいからである。
【0011】
(1)式を例にとると、塩化第二銅、塩化第一銅、および、塩化リチウムは、電池の開回路状態(平衡状態)において、それぞれ、(3)から(5)式のような平衡反応が起きている。
CuCl2 ⇔Cu2+ + 2Cl-・・・(3)
CuCl ⇔ Cu+ + Cl-・・・(4)
LiCl ⇔ Li+ + Cl-・・・(5)
【0012】
すなわち、それぞれの物質は解離して塩素イオンを放出し得る。(1)式の反応を左方向に進ませるは、(4)式や(5)式における平衡反応を右方向にずらすことによって、塩素イオンを生成し、(1)式の充電反応に利用できるようにすることが好ましい。具体的には、塩素イオンを十分な濃度で電解液に溶解させることが好ましい。このような電解液は塩素イオン電導性を有する。一方、そのような電解液は、(3)式に示されるように、充電で生成した塩化第二銅の溶解を促進すると考えられ、電池の自己放電の原因となる。
【0013】
塩素イオンを授受できる、すなわち、塩素イオン伝導性を有する非水電解液についての報告例は少ない。それは、たとえば塩化リチウムを高い濃度で溶解できる非水溶媒が少ないためである。特開平10−106625号公報はトリエチルホスフェートのようなリン酸エステルを含む電解液を開示している。特開2008−171574号公報は、1,3-ジオキソランやテトラヒドロフランのような環状エーテル、1,2−ジメトキシエタンのような鎖状エーテルを含む電解液を開示している。これら電解液はハロゲン化リチウムをさらに含んでいる。しかし、これらの電解液が塩素イオン伝導性を有するとの記載はない。
【0014】
以上述べたように、従来技術によれば、正極活物質として、例えば、金属塩化物を用いる電気化学エネルギー蓄積デバイスを実現する場合、放電生成物である塩化リチウムが難溶性であるため、充電によって元の金属塩化物に戻すことが難しかった。一方で、塩化リチウムを解離させる有機溶媒では、金属塩化物の有機溶媒への溶解度が高くなり、自己放電が進行しやすくなるという問題があった。
【0015】
本願発明者は、このような課題に鑑み、金属塩化物の電極活物質としての反応可逆性に優れた電気化学エネルギー蓄積デバイスを想到した。本願の一実施形態による電気化学エネルギー蓄積デバイスの概要は以下の通りである。
【0016】
本願の一実施形態による電気化学エネルギー蓄積デバイスは、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、および、LiClと、Li(XSO2NSO2Y)(ただし、XおよびYは、F、Cn2n+1、(CF2mのいずれかである。また、(CF2mは環状のイミドアニオンを形成する)およびLiBF4のうちの少なくともひとつと、テトラヒドロフランおよび両末端がアルキル基のポリエチレングリコールのうちの少なくともひとつとを含み、正極および負極と接する非水電解液を備え、前記正極活物質がCu、BiまたはAgの塩化物を含むか、または、前記負極活物質が塩化マグネシウムを含む。この構成によれば、金属塩化物の電極活物質の、非水電解液への溶解度を低減し、かつ、充放電反応によって生じた金属塩化物に由来する塩素イオンの非水電解液への出し入れを繰り返し行えるようになる。したがって、金属塩化物を電極活物質とする高いエネルギー密度の非水電解液二次電池やハイブリッドキャパシタ等の電気化学エネルギー蓄積デバイスを実現することができる。
【0017】
前記正極活物質が、CuCl2、CuCl、AgClまたはBiCl3を含んでいてもよい。
【0018】
前記負極活物質が、MgCl2を含んでいてもよい。
【0019】
前記非水電解液において、前記LiClと、前記Li(XSO2NSO2Y)および前記LiBF4のうちの少なくともひとつとを含む、前記LiCl以外のすべてのリチウム塩とのモル数の比が20以下であってもよい。この構成によれば、高い濃度でリチウム塩を含み、かつ、非水電解液への金属塩化物の溶解を抑制することが可能な、液体の非水電解液を含む電気化学エネルギー蓄積デバイスを実現することができる。
【0020】
前記非水電解液において、前記LiClと前記Li(XSO2NSO2Y)および前記LiBF4のうちの少なくともひとつとを含むすべてのリチウム塩が前記非水電解液に溶解
していてもよい。
【0021】
前記非水電解液は、Li(CF3SO22Nおよびテトラヒドロフランを含み、LiClとLi(CF3SO22Nとテトラヒドロフランのモル比が1:4:20であってもよい。
【0022】
前記非水電解液は、LiBF4、およびテトラヒドロフランを含み、LiClとLiBF4とテトラヒドロフランのモル比が、1:7:20であってもよい。
【0023】
前記非水電解液において前記LiClは固体であってもよい。前記非水電解液は、Li(CF3SO22Nおよびテトラヒドロフランを含み、LiClとLi(CF3SO22Nとテトラヒドロフランのモル比が20:s:t(s、tは、1.0≦s、1.5≦t≦3.0)であってもよい。この構成によれば、高い濃度でリチウム塩を含み、かつ、非水電解液への金属塩化物の溶解を更に抑制することが可能な、スラリーから半固体の粘度を有する非水電解液を含む電気化学エネルギー蓄積デバイスを実現することができる。 以下、本開示による電気化学エネルギー蓄積デバイスの実施形態を詳細に説明する。電気化学エネルギー蓄積デバイスは二次電池、キャパシタ、ハイブリッドキャパシタ等、充電および放電によって繰り返し電荷を蓄積することが可能なデバイスおよび一次電池を含む総称である。
【0024】
本実施形態の電気化学エネルギー蓄積デバイスは、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、および正極および負極と接する非水電解液を備える。正極活物質および負極活物質の少なくとも一方は金属塩化物を含む。具体的には、正極活物質がCu、BiまたはAgの塩化物を含むか、または、負極活物質が塩化マグネシウムを含む。非水電解液は、LiClと、Li(XSO2NSO2Y)(ただし、XおよびYは、F、Cn2n+1、(CF2mのいずれかである。また、(CF2mは環状のイミドアニオンを形成する)およびLiBF4のうちの少なくともひとつと、テトラヒドロフランおよび両末端がアルキル基のポリエチレングリコールのうちの少なくともひとつとを含む。この組成を有する非水電解液は、塩素イオン伝導性に優れる。よって、円滑な充放電が可能な電気化学エネルギー蓄積デバイスを実現することができる。以下、本実施形態の各構成要素を詳細に説明する。
【0025】
1.電気化学エネルギー蓄積デバイスの各構成要素
(1)非水電解液
非水電解液は溶媒および電解質を含み、液体の溶媒に電解質が分散または溶解している。非水電解液全体としては、均一な溶液であってもよいし、溶質が溶媒に完全には溶解しておらず、非水電解液全体として流動性を有していてもよいし、流動性が低下したスラリー状または電解質が電解液によって湿った半固体であってもよい。非水電解液は、溶媒としてテトラヒドロフラン(THFと略記)および両末端がアルキル基のポリエチレングリコールのうちの少なくともひとつを含む。THFはLiClを高濃度で溶解することができる。また、両末端がアルキル基のポリエチレングリコールはLiClをTHFのようには高濃度で溶解することができないが、Li(XSO2NSO2Y)やLiBF4と組み合わせることで塩素イオン(Cl-)伝導性の電解液を調製することができる。両末端がアルキル基のポリエチレングリコールの分子量は末端がメチル基のとき、およそ、200以上2000以下の範囲である。さらに、両末端がアルキル基のポリエチレングリコールは、THFとの相溶性がよく、非水電解液の粘度調整を行うことができる。ポリエチレングリコールの末端は、エチル基やプロピル基であってもよい。
【0026】
非水電解液は、LiClと、Li(XSO2NSO2Y)およびLiBF4のうちの少なくともひとつとを含む。ここで、Li(XSO2NSO2Y)は、Li+をカチオンとし、(XSO2NSO2Y)-をアニオンとする塩である。(XSO2NSO2Y)-中、XおよびYは、F、Cn2n+1、(CF2mのいずれかである。XとYとは同じであってもよいし、異なっていてもよい。Xが(CF2mである場合、Yも(CF2mであることが好ましい。この場合、(XSO2NSO2Y)-は、NおよびSを含む複素環状のイミドアニオンを形成する。例えば、鎖状のイミドアニオンを含む塩として、Li(FSO22N、Li(FSO2)(CF3SO2)N、Li(CF3SO22N、Li(C25SO22N、Li(CF3SO2)(C49SO2)Nなどがあげられる。また、環状のイミドアニオンを含む塩として、Li(CF2SO22N(5員環を形成)やLiCF2(CF2SO22N(6員環を形成)などがあげられる。Li(CF3SO22N(リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、以下、LiTFSIと略す。)がもっとも好ましい。
【0027】
THFおよび両末端がアルキル基のポリエチレングリコールはLiClを溶解する。このため、本実施形態の非水電解液は、上述した(1)式および(2)式によって放電時に生成したLiClを溶解する。また、非水電解液がLiClを含むため、充電時、つまり、(1)式および(2)式の逆向きの反応に利用できるLiClが正極の近傍に十分に存在し得る。
【0028】
Li(XSO2NSO2Y)およびLiBF4は、THFや両末端がアルキル基のポリエチレングリコール中のLiClのアニオンおよびカチオンへの解離を高める。これにより、非水電解液中に、Li+およびCl-の反応性が高まり、(1)式および(2)式の逆向きの反応が円滑に進む。
【0029】
上述した塩を電解質の主成分として含む限り、非水電解液は、他の塩を助剤や添加剤等として含んでいてもよい。具体的には、LiClと、Li(XSO2NSO2Y)およびLiBF4のうちの少なくともひとつとの合計に対し10mol%以下の割合で他の塩を含んでいてもよい。ただし、4級アンモニウム塩は、非水電解液の粘度を増大させる。このため、4級アンモニウム塩の含有量は、上述した他の塩の含有量の範囲内であっても少ないほうが好ましく、非水電解液は、4級アンモニウム塩を含まないほうがより好ましい。
【0030】
単相で透明な非水電解液を調製する場合、例えば、溶媒としてのTHFと、電解質としてのLiClおよびLiTFSIとを含む非水電解液を調製することができる。この場合、LiClとLiTFSIとTHFとはモル比で1:4:20の割合であることが好ましい。この混合比は、すべてのリチウム塩を室温で溶解できる最高の濃度に相当し、電極活物質である金属塩化物の溶解を抑制することができる。この混合比でのLiClの濃度は、電解液1kgあたり0.38モルである。
【0031】
また、例えば、溶媒としてのTHFと、電解質としてのLiClおよびLiBF4とを含む非水電解液を調製することができる。この場合、LiClとLiBF4とTHFとは、モル比で1:7:20の割合であることが好ましい。この混合比でのLiCl濃度は、非水電解液1kgあたり0.47モルである。
【0032】
電極活物質である金属塩化物の非水電解液への溶解をさらに抑制するため、非水電解液中の溶媒の含有量を減らし、塩化リチウムやその他のリチウム塩が固体状態で存在するようにしてもよい。この場合には、非水電解液はスラリーから半固体の粘度を有する。混合比は、たとえば、LiCl、LiTFSI、および、THFの組み合わせからなる場合、モル比で、LiClと、LiTFSIと、THFとは、20:s:tの割合であることが好ましい。ここでs、tは、1.0≦s、1.5≦t≦3.0を満たす。LiTFSIは、THFによって溶媒和されたLiClに付加し、Li+とCl-イオンとを解離させることによって、非水電解液に塩素イオン(Cl-)伝導性を付与するとともにスラリーに柔軟性を与える。s(LiTFSI)が1でt(THF)が1.5のとき、非水電解液は流動性がほとんどない粘土状になり、tが3.0のときは傾けると自然に流れる乳液状になる。
【0033】
本実施形態の非水電解液は、THFおよび両末端がアルキル基のポリエチレングリコールの他に、以下の溶媒を含んでいてもよい。ただし、しかし、以下の溶媒を含むことにより非水電解液は、特に正極に用いる金属塩化物を溶解する傾向が大きくなる。このため、以下の溶媒は、電解液全体の50wt%以下、好ましくは、30wt%以下である。
【0034】
環状カーボネートしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなどがあげられる。
【0035】
環状エステルとしては、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、フラノン、3−メチル−2(5H)−フラノン、α−アンゲリカラクトンなどがあげられる。
【0036】
鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネートなどがあげられる。
【0037】
環状エーテルとしては、2−メチルテトラヒドロフラン、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロピラン、2−メチル−テトラヒドロピランなどがあげられる。
【0038】
鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、メチルブチルエーテル、1−メトキシ−2−エトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどがあげられる。
【0039】
ニトリル類では、アセトニトリル、プロピオニトリル、アジポニトリルなどがあげられる。
【0040】
窒素や硫黄元素を含む有機溶媒では、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどがあげられる。
【0041】
以上のような溶媒の中でも、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エーテル、鎖状エーテルが好ましい。
【0042】
これらの溶媒は、単独種で用いてもよいし、複数種で混合して用いてもよい。
【0043】
(2)正極および負極
本発明の非水電解液二次電池では、正極または負極の少なくとも一方に活物質として金属塩化物を用いる。具体的には、正極活物質がCu、BiまたはAgの塩化物を含むか、または、負極活物質が塩化マグネシウムを含んでいる。具体的には、正極活物質は、充電状態で、塩化銅(CuClまたはCuCl2)、塩化ビスマス(BiCl3)、または、塩化銀(AgCl)のいずれかであり、負極活物質は、放電状態で塩化マグネシウム(MgCl2)である。これらの金属塩化物は、上記の(1)式から(5)式で示したように、電解液中の塩素イオンやリチウムイオンと平衡関係にあって、充電を行うと活物質粒子が極めて細かくなるため、元の金属塩化物として検出することが困難となる場合がある。特に、塩化銅や塩化ビスマスにおいて、充電状態の結晶形態を特定することが困難になる。
【0044】
正極に用いる金属塩化物は、電池の放電において還元され、Cu、Bi、Agのいずれかの金属を明確に生成する。また、負極に用いる塩化マグネシウム(MgCl2)においては、充電において還元された後、Mg金属を明確に検出することができる。
【0045】
金属塩化物を正極活物質に用い、電気化学エネルギー蓄積デバイスとして非水電解液二次電池を作製する場合には、負極活物質として、上記の金属塩化物のほかに、リチウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、リチウムイオン電池で採用されているリチウムと黒鉛との層間化合物、リチウムを含む合金や酸化物などを用いることもできる。合金は、たとえば、ケイ素、スズ、鉛、ビスマスを成分として含む。酸化物は、たとえば、ケイ素、スズを成分として含む。
【0046】
また、電気化学エネルギー蓄積デバイスとしてハイブリッドキャパシタを作製する場合には、負極材料に電気二重層容量を蓄えることができる炭素材料などを用いることもできる。炭素材料には、活性炭があげられ、ヤシ殻等の天然植物系活性炭、フェノール等の合成樹脂系活性炭、コークス等の化石燃料系活性炭などがあげられる。また、カーボンブラックを賦活化することによって得られる超微粉末活性炭を使用してもよい。
【0047】
金属塩化物を負極活物質に用い、電気化学エネルギー蓄積デバイスとして非水電解液二次電池を作製する場合には、正極活物質として、上記金属塩化物のほかに、アルカリ金属イオンを挿入・放出させることができるLiCoO2、LiNiO2、Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O2、LiMn24、Li(LixMn1-x)O2、LiFePO4などの酸化物を用いることもできる。一方、ハイブリッドキャパシタを組み立てる場合には、上記と同じく、活性炭などの炭素材料を使うこともできる。
【0048】
本実施形態の電気化学エネルギー蓄積デバイスの正極および負極は、上記金属塩化物を含む正極合剤および負極合剤と、集電体とによって構成されていてもよい。たとえば、金属塩化物を正極活物質に用いる場合は、上記金属塩化物とアセチレンブラックなどの導電性助剤とポリフッ化ビニリデンなどの結着剤とを混合し、正極合剤を構成することができる。これらの粉末は、そのまま粉体混合したあと成型してもよいし、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶媒に分散あるいは溶解して集電体上に塗布することもできる。集電体には、炭素、モリブデン、タングステン、金、白金などを使用することができる。
【0049】
金属塩化物を負極活物質に用いる場合、上記金属塩化物の粉末とニッケルなどの導電助剤とポリブタジエンなどの結着剤を混合し、負極合剤を構成することができる。これらの粉末は、そのまま粉体混合したあと成型してもよいし、アセトニトリルなどの溶媒に分散あるいは溶解して集電体上に塗布することもできる。集電体には、炭素、鉄、ニッケル、銅などを使用することができる。また、上記金属塩化物の粉末を、そのまま、ニッケルなどの導電性多孔体の空孔に詰め込んで負極を構成してもよい。
【0050】
(3)セパレータ
正極と負極とが電気的に絶縁されており、かつ非水電解液が正極及び負極と接した状態が維持される限り、本実施形態の電気化学エネルギー蓄積デバイスは充放電が可能である。実用上、安定な形態で電気化学エネルギー蓄積デバイスを実現するためには、電気化学エネルギー蓄積デバイスは、二次電池などに一般的に用いられるセパレータをさらに備えていてもよい。セパレータは、電子伝導性を有しない樹脂によって構成された樹脂層であり、大きなイオン透過度を有し、所定の機械的強度および電気的絶縁性を備えた微多孔膜である。セパレータは、上述した非水電解液に対して耐性を有する材料によって構成されていることが好ましく、例えば、リチウム二次電池に一般的に用いられる。ポリプロピレン、ポリエチレンなどを単独または組み合わせたポリオレフィン樹脂を用いることができる。
【0051】
(4) 電気化学エネルギー蓄積デバイス全体の構成
電気化学エネルギー蓄積デバイスとして、二次電池を構成する一例を示す。図11は、電気化学エネルギー蓄積デバイスの1つであるコイン形二次電池101の一例を示す断面図である。図11に示すコイン形二次電池101は、正極31と、負極32と、セパレータ24とを備えている。正極31は、正極活物質層23および、正極活物質層23に接触している正極集電体22を含む。負極32は負極活物質層26および負極活物質層26に接触している負極集電体27を含む。正極活物質層23および負極活物質層26のすくなくとも一方は上述した金属塩化物を含む。
【0052】
正極31および負極32は正極活物質層23および負極活物質層26がセパレータ24と接するようにセパレータ24を挟んで対向し、電極群を構成している。
【0053】
電極群はケース21の内部の空間に収納されている。また、ケース21の内部の空間には上述した非水電解液29が注入され、正極31、負極32およびセパレータ24は非水電解液29に含浸されている。セパレータ24は、非水電解液29を保持する微細な空間を含んでいるため、微細な空間に非水電解液29が保持され、非水電解液29が正極31と負極32との間に配置された状態をとっている。ケース21の開口は、ガスケット28を用いて封口板25により封止されている。
【0054】
図11では、コイン型の二次電池の形態を示したが、本実施形態の電気化学エネルギー蓄積デバイスは、他の形状を有していてもよい。たとえば、円筒形や角形形状を有していてもよい。また、電気自動車等に用いる大型の形状を有していてもよい。
【0055】
2.電気化学エネルギー蓄積デバイスにおける電極反応
次に、正極活物質としてBiCl3を使用した場合、および、負極活物質としてMgCl2を使用した場合を例として、本実施形態の電気化学エネルギー蓄積デバイスである非水電解液二次電池における主な反応形式を説明する。
【0056】
(A)BiCl3//Mg電池の放電反応
正極:BiCl3 + 3Li+ + 3e → Bi + 3LiCl・・・(6)
生成したLiClは解離するので、
3LiCl → 3Li+ + 3Cl-・・・(7)
負極:1.5Mg + 3Cl- → 1.5MgCl2 + 3e・・・(8)
(6)式から(8)式を足すと、全体の放電反応を示す(9)式が得られる。
全体:BiCl3 + 1.5Mg → Bi + 1.5MgCl2・・・(9)
(9)式は、正極活物質から負極活物質へ塩素が移ったような形になっている。この電池において、充電時には、(9)式の逆向きの反応が生じる。
なお、(6)式と(7)式を足すと、(10)式となり、正極で塩素イオンの授受が行われることを表す放電時の正極の反応を示す式になる。
正極:BiCl3 + 3e → Bi + 3Cl-・・・(10)
【0057】
(B)Bi//MgCl2電池の充電反応
負極:1.5MgCl2 + 3Li+ + 3e → 1.5Mg + 3LiCl
・・・(11)
生成したLiClは解離するので、
3LiCl → 3Li+ + 3Cl-・・・(12)
正極:Bi + 3Cl- → BiCl3 + 3e・・・(13)
(11)式から(13)式を足すと、全体の充電反応を示す(14)式が得られる。
全体:Bi + 1.5MgCl2 → BiCl3 + 1.5Mg・・・(14)
(14)式は、負極活物質から正極活物質へ塩素が移ったような形になっている。この電池において、放電時には、(14)式の逆向きの反応が生じる。
【0058】
なお、(11)式と(12)式を足すと、(15)式となり、負極で塩素イオンの授受が行われることを表す充電時の負極の反応を示す式になる。
負極:1.5MgCl2 + 3e → 1.5Mg + 3Cl-・・・(15)
【0059】
(C)BiCl3//Li電池の放電反応
正極:BiCl3 + 3Li+ + 3e → Bi + 3LiCl・・・(16)
負極:3Li → 3Li+ + 3e・・・(17)
(16)式と(17)式を足すと、全体の放電反応を示す(18)式が得られる。
全体:BiCl3 + 3Li → Bi + 3LiCl・・・(18)
【0060】
(16)式および(17)式から分かるように、負極活物質にリチウム金属を使用する場合には、放電によって負極でリチウムイオンが生成し、正極でリチウムイオン使われるため、非水電解液はリチウムイオン伝導性の電解液として機能する。(18)式では、正極活物質から負極活物質へ塩素が移ったような形になっているが、放電後のLiClは正極内に存在する。しかし、(6)と(16)式とは同じであり、たとえば(16)式の左向きの反応、つまり、充電時において塩化リチウムの解離性が重要であることには変わりない。この電池において、充電時には、(18)式の逆向きの反応が生じる。
【0061】
(D)LiCoO2//MgCl2電池の充電反応
正極:4LiCoO2 → 4Li0.5CoO2 + 2Li+ + 2e・・・(19)
負極:MgCl2 + 2Li+ + 2e → Mg + 2LiCl・・・(20)
(19)と(20)式を足すと、全体の充電反応を示す(21)式が得られる。
全体:4LiCoO2 + MgCl2 → 4Li0.5CoO2 + Mg + 2LiCl・・・(21)
【0062】
正極活物質にコバルト酸リチウム(LiCoO2)を使用する場合には、本発明での非水電解液はリチウムイオン伝導性となる。(20)式で生成したLiClは負極内に存在する。しかし、(11)と(20)式とは同じであり、たとえば(20)式の左向きの反応において塩化リチウムの解離性が重要であることには変わりない。
【0063】
この電池において、放電時には、(21)式の逆向きの反応が生じる。
【0064】
このように、本実施形態によれば、非水電解液は、塩化リチウムを溶解するTHFおよび両末端がアルキル基のポリエチレングリコールのうちの少なくともひとつと、LiClと、Li(XSO2NSO2Y)(ただし、XおよびYは、F、Cn2n+1、(CF2mのいずれかである。また、(CF2mは環状のイミドアニオンを形成する)およびLiBF4のうちの少なくともひとつを含む。このため、非水電解液は塩素イオンの授受に優れ、高い塩素イオン電導性を備える。また、リチウムイミドやLiBF4は、THFを分解しにくいため、調製した電解液は長期にわたって安定である。
【0065】
さらに、非水電解液が高い濃度で塩化リチウムを溶解しており、THFが塩化リチウムの溶媒和に使用されるため、電極活物質である金属塩化物の溶解に利用可能なTHFは非水電解液中に少ない。よって金属塩化物の非水電解液への溶解を抑制でき、電池の自己放電を防ぐことができる。
【0066】
そのため、本実施形態の非水電解液を使用すると、金属塩化物を電極活物質に用いた場合でも、その溶解度を低減し、かつ、充放電反応によって生じた金属塩化物に由来する塩素イオンの出し入れを繰り返し行えるようになる。したがって、金属塩化物を電極活物質とする高いエネルギー密度の非水電解液二次電池やハイブリッドキャパシタ等の電気化学エネルギー蓄積デバイスを実現することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、二次電池を例に挙げて電気化学エネルギー蓄積デバイスを説明したが、電気化学エネルギー蓄積デバイスは一次電池であってもよい。従来、金属ハロゲン化物、特に、溶解性の高い金属塩化物を使った一次電池は注液式電池に見られるように、使用する直前に電極活物質と電解液を接触させるという使い方がされていた。本実施形態によれば、電極活物質である金属ハロゲン化物とイオン液体とを接触させ、一次電池を完成させた状態でも、金属ハロゲン化物がイオン液体に溶解しにくいため、一次電池の特性が低下することが抑制される。
【実施例】
【0068】
以下に実施例をあげ、本開示の気化学エネルギー蓄積デバイスを具体的に説明する。なお、実験は、すべて、室温で、アルゴン雰囲気のグローブボックス中で行った。
【0069】
(実施例1)
塩化リチウム(LiCl、アルドリッチ製)とリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSIと略記、キシダ化学製)とを溶解した溶液が塩素イオン(Cl-)伝導性を有することを確かめた。
【0070】
両方のリチウム塩を溶解する溶媒としてテトラヒドロフラン(THFと略記、和光純薬工業製)を用い、以下のモル比で混合し、いずれも単相で透明な溶液を調製できた。
(a)LiCl:LiTFSI:THF=0.0:4:20(比較例)
(b)LiCl:LiTFSI:THF=0.01:4:20
(c)LiCl:LiTFSI:THF=0.1:4:20
(d)LiCl:LiTFSI:THF=0.2:4:20
(e)LiCl:LiTFSI:THF=0.5:4:20
(f)LiCl:LiTFSI:THF=0.8:4:20
(g)LiCl:LiTFSI:THF=1.0:4:20
【0071】
直径1mmの銀線(ニラコ製)を作用極とし、ニッケル網集電体に貼り付けたリチウム箔(本城金属製)を2本準備し、それぞれを参照極と対極とした。
【0072】
3つの電極を(a)〜(g)の溶液に浸漬し、サイクリックボルタンメトリーを行った。測定条件は、1mV/secの掃引速度、1.8〜3.8Vの掃引範囲である。
【0073】
図1は、(a)〜(c)の溶液において、そのときの3サイクル目の波形を記録したものであり、図2は、同様に(d)〜(f)の溶液における波形を記録したものである。
【0074】
LiClを含まない溶液(a)では、およそ3.6V付近から酸化電流が流れ、以下の反応によって銀線の溶解が見られた。
Ag → Ag+ + e・・・(22)
【0075】
溶液(b)ではわずかだが、(c)においては明確におよそ2.9Vから立ち上がる酸化電流を観測した。この電流は以下の塩化銀(AgCl)が生成する反応に相当する。
2.85V: Ag + Cl- → AgCl + e・・・(23)
【0076】
溶液(d)〜(g)においては、溶液中のLiCl濃度が高くなるにしたがい、(22)式の酸化電流は抑制され、(23)式で示され、2.9Vから3.1V程度の範囲にピークがみられるAgClの生成と、(23)式の逆向きの反応であり、2.3Vから2.4V程度の範囲にピークがみられる対応する還元電流が優勢になった。
【0077】
この結果から本実施形態で用いる非水電解液には塩素イオン(Cl-)伝導性があり、正極活物質である塩化銀(AgCl)とのCl-授受が可能であることがわかる。また、LiClの濃度に応じた塩素イオン伝導性を示すことが分かる。
【0078】
(実施例2)
塩化リチウム(LiCl、アルドリッチ製)とテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4、キシダ化学製)とを溶解した溶液が塩素イオン(Cl-)伝導性を有することを確かめた。
【0079】
両方のリチウム塩を溶解する溶媒としてテトラヒドロフラン(THFと略記、和光純薬工業製)を用い、以下のモル比で混合し、単相で透明な溶液を調製できた。
(h)LiCl:LiBF4:THF=1:7:20
【0080】
直径1mmの銀線(ニラコ製)を作用極とし、ニッケル網集電体に貼り付けたリチウム箔(本城金属製)を2本準備し、それぞれを参照極と対極とした。
【0081】
3つの電極を(h)の溶液に浸漬し、サイクリックボルタンメトリーを行った。測定条件は、1mV/secの掃引速度、1.8〜3.8Vの掃引範囲である。
【0082】
図3は、そのときの3サイクル目の波形を記録したものであり、溶液(h)では、(23)式に相当する酸化電流と、酸化電流に対して2.85Vを点対称とする銀への還元電流((23)式の逆向きの反応に相当)が流れている。
【0083】
本実施形態で用いる非水電解液には塩素イオン(Cl-)伝導性があり、正極活物質である塩化銀(AgCl)とのCl-授受が可能であることがわかる。
【0084】
(実施例3)
実施例1で調製した(g)の溶液:LiCl:LiTFSI:THF=1:4:20を電解液として用い、塩化マグネシウム(MgCl2)のマグネシウム金属(Mg)への還元と、生成したMgの酸化が可能であることを確かめた。
【0085】
塩化マグネシウムを含む合剤電極は、以下のようにして作製した。塩化マグネシウム(MgCl2、アルドリッチ製)を乳鉢で粉砕してアセチレンブラック(ABと略記、電気化学工業製)と混合し、ポリブタジエン(PBと略記、アルドリッチ製)を結着剤として、合剤シートを作製した。合剤シートの組成は、重量比で、MgCl2:AB:PB=85:10:5である。この合剤シートから直径5mmのディスクを抜き、100メッシュのニッケル金網に圧着して作用極とした。
【0086】
また、ニッケル網集電体に貼り付けたリチウム箔を2本準備し、それぞれを参照極と対極とした。
【0087】
3つの電極を電解液に浸漬し、MgCl2の重量あたりおよそ140mAh/gの電気量となるように、0.3mAの還元電流を作用極に流し、10分の休止後、作用極の電位が2.0Vになるまで、0.3mAの酸化電流を流した。
【0088】
図4は、そのときの作用極の電位変化を記録したもので、実線が作用極に還元電流を流した場合、点線が酸化電流を流した場合の電位変化を表している。マグネシウム(Mg)金属が塩素イオン(Cl-)を授受する電位は、(24)式で計算でき、図4の電位変化は(24)式に準じて起きていることがわかる。
0.917V: MgCl2 + 2Li → Mg + 2LiCl・・(24)
【0089】
(実施例4)
正極に銀(Ag)板、負極に塩化マグネシウム(MgCl2)の合剤電極、電解液に実施例1で調製した(g)の溶液:LiCl:LiTFSI:THF=1:4:20を用いて、電池を組み立てた。
【0090】
銀板(ニラコ製)は直径14.8mmのディスクとし、塩化マグネシウムの合剤電極は、実施例3と同様に作製して、直径15.8mmのディスクとした。
【0091】
2枚のセパレータを使用し、正極側セパレータはポリプロピレン製多孔質フィルムとし、負極側セパレータはガラス濾紙(アドバンテック製)とした。
【0092】
これらの電極、セパレータ、電解液を、模擬電池ケース(イーシーフロンティア製)に組み込んだ。
【0093】
30mAの充電電流を、MgCl2の重量に対しておよそ140mAh/gとなるように流し、続いて、同じ値の放電電流を、電池の電圧が1.0Vになるまで流した。
【0094】
図5は、そのときの充電曲線を実線で、放電曲線を点線で示したものである。
【0095】
放電曲線の平坦部分は、1.88Vであり、(23)式と(24)式の電位差:1.93Vに近い。したがって、組み立てた電池を充放電することにより、正極と負極との間で塩素イオンの移動が起きることがわかる。
【0096】
なお、充電において過電圧がやや大きいのは、MgCl2が電気的絶縁性であり塩素イオン(Cl-)を放出しにくいためと考えられる。
【0097】
(実施例5)
有機溶媒の含有量が減っても塩素イオン(Cl-)伝導性を有する電解液を調製できることを確かめた。
【0098】
まず、比較として、塩化リチウム(LiCl)を含まない電解液を調製した。リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSIと略記、キシダ化学製)とテトラヒドロフラン(THFと略記、和光純薬工業製)を、モル比で、LiTFSI:THF=4:5となるように混合し、分子量が1000のポリエチレングリコールジメチルエーテル(PEGDMEと略記、アルファエーサー製)を全体の8wt%となるように混合し、撹拌した。溶液は、粘稠ではあるが、単相で透明な液体となった。
【0099】
この比較の電解液に塩化リチウム(アルドリッチ製)を、モル比で、LiCl:LiTFSI=1:4となるように混合し、撹拌した。塩化リチウム(全体の2.5wt%)は溶けきれずに、乳白の溶液となった。
【0100】
直径がおよそ1mmのビスマス(Bi)線(アルファエーサー製)を作用極とし、ニッケル網集電体に貼り付けたリチウム箔(本城金属製)を2本準備し、それぞれを参照極と対極とした。
【0101】
3つの電極を比較の電解液に浸漬し、サイクリックボルタンメトリーを行った。測定条件は、1mV/secの掃引速度、1.7〜4.2Vの掃引範囲である。
【0102】
図6は、そのときの3サイクル目の波形を記録したものであり、比較の電解液では、3.4V以上から酸化電流が流れはじめ、それに対応する還元電流が流れていることがわかる。すなわち、Bi金属は、LiClを含まない電解液において、3.4V以上で酸化されることがわかる。
【0103】
次に、3つの電極をLiClが分散した電解液に浸漬し、作用極の電位が3.3Vになるまで2μAの酸化電流を流し、続いて、1.7Vになるまで2μAの還元電流を流した。図7は、そのときの10サイクル目の作用極の電位変化を記録したものである。作用極の電位が3.3VになるまでにBi金属が酸化される電流が流れ(図7において赤線)、対応する還元電流が流れていることから(図7において青線)、分散したLiClの一部は溶解して解離し、塩素イオン(Cl-)がBi金属に出入りしていることがわかる。
【0104】
(実施例6)
実施例5で用いた塩化リチウム(LiCl)が分散した電解液を用いて、銅(Cu)金属においても、塩素イオン(Cl-)の出し入れが可能であることを確かめた。
【0105】
直径1mmのCu線(ニラコ製)を作用極とし、ニッケル網集電体に貼り付けたリチウム箔(本城金属製)を2本準備し、それぞれを参照極と対極とした。
【0106】
3つの電極をLiClが分散した電解液に浸漬し、作用極の電位が3.1Vになるまで2μAの酸化電流を流し、続いて、1.7Vになるまで2μAの還元電流を流した。図8は、そのときの10サイクル目の作用極の電位変化を記録したものである(赤線は酸化電流を流しているときの電位変化、青線は還元電流を流しているときの電位変化)。図8より以下の(2')に相当する反応が起きており、Cu金属は塩素イオン(Cl-)の出し入れを行っていることがわかる。
2.74V: CuCl+Li++e ⇔ Cu+LiCl・・・(2')
【0107】
(実施例7)
塩化リチウム(LiCl)とリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSIと略記)とテトラヒドロフラン(THFと略記)を用いて、スラリー状の電解液を調製でき、塩素イオン(Cl-)伝導性を有していることを確かめた。
【0108】
LiCl(アルドリッチ製)とLiTFSI(キシダ化学製)とTHF(和光純薬工業製)を、モル比で、
(i)20:1:3
(j)20:1:2
(k)20:1:1.5
となるように混合し、撹拌した。
【0109】
いずれの混合比でも、混合物は固体のLiClを含む白色であり、(i)の混合比では、混合物はスポイトで吸い上げることができる程度の乳液状であり、(j)の混合比では、流動性が少なくなりスパーテルで採取できる程度のクリーム状のものになり、(k)の混合比では、スパーテルで採取できるもののほとんど流動性がなくなった。
【0110】
模擬電池ケース(イーシーフロンティア製)内に、塩化銀(AgCl)板の電極と銀(Ag)板の電極を対向させ、それらの間に、上記のスラリー状の電解液(i)を含ませた200メッシュのポリエチレン網を配置した。なお、AgCl板は、Ag板をNaCl水溶液に浸漬し、3mAh/cm2の酸化電流を流すことで作製した。このように組み立てたAgCl//Ag模擬電池において、Ag板の電極に10μA/cm2の酸化電流を流し、セル電圧(=Ag電極−AgCl電極)の変化を調べた。
【0111】
図9は、そのときの電圧変化を記録したものであり、およそ300時間までは電圧が0であり、その後、急峻に電圧が上昇している。電池を分解して調べたところ、AgCl極ではAgが生成し、Ag極ではAgClが生成していた。したがって、電解液(i)には、Cl-伝導性があることがわかる。
【0112】
なお、スラリー状のもの(j)および(k)においても、同様な実験を行い、Cl-伝導性があることを確認できた。
【0113】
(実施例8)
実施例7で調製した(j)のスラリー状のものを用い、銅(Cu)のナノ粉末が、酸化によって、塩素イオン(Cl-)を取り込むことを確かめた。
【0114】
塩化リチウム(LiCl、アルドリッチ製)と、Cuのナノ粉末(アルドリッチ製、40〜60nm径)と、アセチレンブラック(ABと略記、電気化学工業製)と、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFEと略記、ダイキン工業製)を、混合して圧延し、作用極を作製した。ここで、LiCl:Cuのモル比は2:1、ABの含有量は40wt%、PTFEの含有量は10wt%とした。
【0115】
対極は、6mAh/cm2の塩化銀(AgCl)板とし、実施例7と同様にして作製した。
【0116】
模擬電池ケース(イーシーフロンティア製)内に、作用極と対極を対向させ、それらの間に、上記のスラリー状の電解液(j)を含ませた200メッシュのポリエチレン網を配置した。このように組み立てたAgCl//Cu模擬電池において、作用極に10μA/cm2の酸化電流を流し、セル電圧(=Cu電極−AgCl電極)の変化を調べた。
【0117】
図10は、そのときの電圧変化を記録したものであり、以下の反応式に相当する反応がおよそ50mVの過電圧とともに見られる。したがって、Cu粉末は、Cl-を取り込んでいることがわかる。
0.56V: CuCl+AgCl→ CuCl2+Ag・・・(25)
−0.10V: Cu+AgCl → CuCl+Ag・・・(26)
【0118】
なお、充電後の作用極をX線回折法によって分析を行ったが、粒子が極めて細かいため、CuCl2を検出することができなかった。
【0119】
なお、実施例1〜8では、リチウムイミドにLiTFSIを用いたが、Li(XSO2NSO2Y)(ただし、XおよびYは、F、Cn2n+1、(CF2mのいずれかである。また(CF2mは、環状のイミドアニオンを形成する)で表されるリチウムイミドを用いても、同じような効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本願に開示された電気化学エネルギー蓄積デバイスは、スマートフォン、携帯電話、携帯情報端末、パーソナルコンピュータ、ビデオカメラ、携帯用ゲーム機器などの電源として有用である。また、電動工具、掃除機、ロボットなどの駆動用電源として、さらに、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車などにおける電気モーターの駆動あるいは補助する電源として利用できる。
【符号の説明】
【0121】
21 ケース
22 正極集電体
23 正極活物質層
24 セパレータ
25 封口板
26 負極活物質層
27 負極集電体
28 ガスケット
29 非水電解液
31 正極
32 負極
101 コイン形二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11