(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成形空間にインサート材を配置した状態で、ポリオレフィン系発泡樹脂からなる予備発泡ビーズを成形空間にクラッキング充填し、その後型内発泡成形により、前記インサート材を発泡成形体に対して埋設状に一体成形してなる成形品を製作する金型において、
前記インサート材は、前記金型の型開閉方向に対して、前記発泡成形体から側方へ突出する突出部を有しており、
前記インサート材の突出部に対応させて両金型に分割型兼保持手段として、第1金型に、成形空間外へ突出する突出部の基部に対面する第1保持面を形成し、第2金型に、前記第1保持面に対面する第2保持面を有する分割型兼保持部材と、該分割型兼保持部材を型開閉方向へ移動自在に案内するとともに、該分割型兼保持部材を第1保持面側へ常時付勢する付勢手段とを設け、
前記第1保持面と第2保持面の少なくとも一方に、前記予備発泡ビーズが通り抜けできない隙間をあけて前記突出部の基部が嵌合可能な溝部を形成し、
前記両金型を完全に型閉じした状態と両金型間にクラッキング隙間を形成した状態とにわたって、前記分割型兼保持手段により両保持面間にインサート材の突出部の基部を保持可能となした、
ことを特徴とするポリオレフィン系樹脂型内発泡成形用金型。
前記付勢手段は、前記第2金型に一体成形したブラケットと、前記ブラケットに対して型開閉方向に移動自在に設けたガイドロッドと、前記ガイドロッドを第1保持面側へ常時付勢する付勢部材とを備え、前記ガイドロッドの先端部に前記分割型兼保持部材を取付けた請求項1〜3のいずれか1項記載のポリオレフィン系樹脂型内発泡成形用金型。
前記インサート材が、アンカー材と該アンカー材に付設した複数の留め具とを有する成形品留め部材からなり、前記アンカー材又は留め具の少なくとも一部に、前記突出部を形成した請求項1〜6のいずれか1項記載のポリオレフィン系樹脂型内発泡成形用金型。
成形空間にインサート材を配置した状態で、ポリオレフィン系発泡樹脂からなる予備発泡ビーズを成形空間にクラッキング充填し、その後型内発泡成形により、前記インサート材を発泡成形体に対して埋設状に一体成形してなる型内発泡成形品の製造方法において、
前記インサート材は、前記型内発泡成形品を成形する金型の型開閉方向に対して、前記発泡成形体から側方へ突出する突出部を有しており、
第1金型と第2金型間にクラッキング隙間が形成されるクラッキング充填時、前記成形空間に配置したインサート材のうちの成形空間外へ突出する突出部の基部を、第1金型の第1保持面と、第2金型に設けられ型開閉方向に移動自在で且つ第1保持面側へ付勢された分割型兼保持部材における第2保持面間に、前記第1保持面と第2保持面の少なくとも一方に形成した溝部に対して隙間をあけて嵌合させて保持し、前記突出部の基部に対応する位置において両金型間に、前記予備発泡ビーズが通り抜け可能な隙間が形成されないようにした状態で、予備発泡ビーズを成形空間にクラッキング充填し、
前記クラッキング充填後、前記突出部の基部を第1保持面と第2保持面間に保持しながら、第1金型と第2金型とを完全に型閉じして、前記成形空間内の予備発泡ビーズを加熱融着する、
ことを特徴とする型内発泡成形品の製造方法。
前記インサート材が、アンカー材と該アンカー材に付設した複数の留め具とを有する成形品留め部材からなり、前記アンカー材又は留め具の少なくとも一部に、前記突出部を形成した請求項9又は10記載の型内発泡成形品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、金属ワイヤーの一部が発泡成形体から外部へ突出するように、金属ワイヤーを発泡成形体に対して埋設状に一体成形してなる成形品を製作する場合には、発泡成形体から側方へ突出する金属ワイヤーの突出部の基部に対応させて、該突出部を成形空間外へ導出するための開口部を両金型に形成する必要がある。
【0008】
一方、成形空間に対する予備発泡ビーズの充填方法として、金型を完全に型閉じした状態で予備発泡ビーズを充填する加圧充填や圧縮充填以外に、特許文献3記載のようなクラッキング充填が知られている。このクラッキング充填では、僅かな隙間を残して金型を閉じた状態で、予備発泡ビーズを成形空間に充填し、充填後に金型を完全に閉じて、成形空間内の予備発泡ビーズを発泡成形するように構成している。
【0009】
このため、クラッキング充填により予備発泡ビーズを充填して、成形品を型内発泡成形する成形方法を採用する場合において、前述のような突出部を有する金属ワイヤーを埋設状に一体成形するときには、完全に型閉じした状態で、突出部の基部が両金型の保持部間に隙間なく保持されるように構成することになる。しかし、このように構成すると、クラッキング充填時に、クラッキング隙間に応じた大きさの、成形空間と蒸気室とを連通する開口が両金型の保持部間に形成されて、予備発泡ビーズが該開口を通じて蒸気室側へ漏れ出し、この漏れ出した予備発泡ビーズによりバリが成形され、成形後に該バリを除去する作業が必要となり、生産性を大きく低下させるという問題が発生する。
【0010】
本発明の目的は、クラッキング充填により予備発泡ビーズを充填して、突出部が発泡成形体から側方へ突出するように、インサート材をインサート成形してなる成形品を成形する金型において、突出部の基部におけるバリの発生を防止し得るポリオレフィン系樹脂型内発泡成形用金型及び型内発泡成形品の製造方法並びに型内発泡成形品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るポリオレフィン系樹脂型内発泡成形用金型は、成形空間にインサート材を配置した状態で、ポリオレフィン系発泡樹脂からなる予備発泡ビーズを成形空間にクラッキング充填し、その後型内発泡成形により、前記インサート材を発泡成形体に対して埋設状に一体成形してなる成形品を製作する金型において、前記インサート材は、前記金型の型開閉方向に対して、前記発泡成形体から側方へ突出する突出部を有しており、前記インサート材の突出部に対応させて両金型に分割型兼保持手段として、第1金型に、成形空間外へ突出する突出部の基部に対面する第1保持面を形成し、第2金型に、前記第1保持面に対面する第2保持面を有する分割型兼保持部材と、該分割型兼保持部材を型開閉方向へ移動自在に案内するとともに、該分割型兼保持部材を第1保持面側へ常時付勢する付勢手段とを設け、前記両金型を完全に型閉じした状態と両金型間にクラッキング隙間を形成した状態とにわたって、前記分割型兼保持手段により両保持面間にインサート材の突出部の基部を保持可能となしたものである。なお、第1保持面は、第1金型に一体的に形成してもよいし、第1金型に着脱可能に設けた別部材に形成して、この別部材を第1金型に固定して、第1金型に形成することもできる。また、前記突出部は、前記金型の型開閉方向に対して、前記発泡成形体から側方へ任意の角度を付けて突出させることができ、例えば型開閉方向と略直交方向へ突出させることができる。
【0012】
この金型を用いて成形品を製作するときには、先ず、両金型を型閉じしたときに、インサート材の突出部が成形空間外へ突出し、その他の部分が成形空間内に配置されるように、インサート材を一方の金型に取り付ける。次に、クラッキング隙間が形成されるように両金型を型閉じすることになるが、このとき分割型兼保持部材を第1保持面側へ付勢する付勢手段の付勢力により、突出部の基部が第1金型の第1保持面と分割型兼保持部材の第2保持面間に保持され、突出部の基部に対応する位置において、両金型間にクラッキング隙間に応じた開口が形成されることが防止される。次に、予備発泡ビーズを成形空間内にクラッキング充填することになるが、分割型兼保持部材に対応する位置以外の金型間にはクラッキング隙間が形成されるが、該クラッキング隙間は予備発泡ビーズが通過不能であり、また突出部の基部が配置される分割型兼保持部材に対応する位置は、分割型兼保持部材で閉塞されて開口が形成されないので、該開口から予備発泡ビーズが成形空間から蒸気室側へ漏れ出すという不具合が防止されることになる。こうして、予備発泡ビーズを成形空間内に充填した後、両金型を完全に型閉じすると、クラッキング隙間が閉塞されるとともに、付勢手段の付勢力に抗して、第1保持面と第2保持面間に突出部の基部を保持しながら分割型兼保持部材が後退し、両金型が完全に型閉じされ、この状態で成形空間内の予備発泡ビーズを加熱融着して、インサート材の突出部が発泡成形体から外部へ突出した成形品を製作することになる。ただし、分割型兼保持部材で開口を閉塞した状態において、該開口は必ずしも隙間なく完全に閉塞する必要はなく、予備発泡ビーズが通過不能な隙間が形成されていてもよく、予備発泡ビーズが通り抜け可能な隙間が形成されないように構成されていればよい。
【0013】
この金型では、両金型に分割型兼保持手段として、第1金型に、成形空間外へ突出する突出部の基部に対面する第1保持面を形成し、第2金型に、前記第1保持面に対面する第2保持面を有する分割型兼保持部材と、該分割型兼保持部材を型開閉方向へ移動自在に案内するとともに、該分割型兼保持部材を第1保持面側へ常時付勢する付勢手段とを設けるという簡単な構成で、突出部の基部に対応する位置において、予備発泡ビーズのクラッキング充填時に、両金型間にクラッキング隙間に応じた開口が形成されてしまうことを防止して、該開口を通じて成形空間内に充填した予備発泡ビーズの一部が漏れ出して、この漏れ出した予備発泡ビーズにより成形品にバリが形成されるという不具合を防止できる。このため、この金型を用いると、成形後に該バリを除去する作業が不要となり、成形品の生産性を向上できる。
【0014】
前記第1保持面と第2保持面の少なくとも一方に、前記突出部の基部が嵌合可能な溝部を形成することが好ましい実施の形態である。このように構成すると、突出部の基部を溝部に嵌合させて、インサート材を安定性良く成形空間内にセットできる。また、溝部の開口幅及び深さを適正に設定することで、クラッキング充填時において、溝部と突出部間の隙間から蒸気室側へ予備発泡ビーズが漏れ出すことを容易に且つ確実に防止できる。
【0015】
前記第1保持面又は第2保持面に突出部の基部を吸着保持する磁石を設け、前記第1金型又は第2金型に対してインサート材を固定保持可能となすことが好ましい実施の形態である。この場合には、両金型を型開きした状態で、第1金型又は第2金型に対してインサート材を容易に固定することができる。また、第1金型又は第2金型に対してインサート材を取り付けるときや、予備発泡ビーズを加熱発泡、融着させる型内発泡成形時において、インサート材の製作精度または加熱時における線膨張から生じる寸法ずれによるインサート材の変形を防止することができるので、自然状態のインサート材に対して発泡成形体が一体成形されることになり、成形品の成形後に、インサート材が元の形状に復帰しようとする力を略完全に無くして、成形後における成形品の変形を防止できる。
【0016】
前記付勢手段は、前記第2金型に一体成形したブラケットと、前記ブラケットに対して型開閉方向に移動自在に設けたガイドロッドと、前記ガイドロッドを第1保持面側へ常時付勢する付勢部材とを備え、前記ガイドロッドの先端部に前記分割型兼保持部材を取付けることが好ましい実施の形態である。ブラケットを第2金型とは別部材で構成することも可能であるが、金型の製作コストを安くするとともに、分割型兼保持部材の組付け精度を高めるため、第2金型に対してブラケットを一体成形することが好ましい。
【0017】
前記ブラケットに、前記ガイドロッドを型開閉方向に案内するスリーブを設けることが好ましい実施の形態である。この場合には、ガイドロッドとブラケット間における摺動抵抗を少なくして、型開閉方向に対するガイドロッドの移動を円滑にできる。
【0018】
前記分割型兼保持部材を付勢手段に対して着脱可能に設けることが好ましい。このように構成すると、第2金型と分割型兼保持部材との摺動部分などが摩耗した場合でも、分割型兼保持部材を交換するなどして、金型を容易に補修することができる。
【0019】
前記インサート材が、アンカー材と該アンカー材に付設した複数の留め具とを有する成形品留め部材からなり、前記アンカー材又は留め具の少なくとも一部に、前記突出部を形成したものであることが好ましい。このように構成すると、発泡成形体から外部へ突出する、アンカー材又は留め具の少なくとも一方の突出部を利用して、成形品を固定したりすることができる。
【0020】
前記成形品が車輛用シート芯材であることが好ましい実施の形態である。この場合には、インサート材により車両用シート芯材の保形性を高めたり、インサート材の突出部を利用して車両用シート芯材を車両に固定したりすることができる。
【0021】
本発明に係る型内発泡成形品の製造方法は、成形空間にインサート材を配置した状態で、ポリオレフィン系発泡樹脂からなる予備発泡ビーズを成形空間にクラッキング充填し、その後型内発泡成形により、前記インサート材を発泡成形体に対して埋設状に一体成形してなる型内発泡成形品の製造方法において、前記インサート材は、前記型内発泡成形品を成形する金型の型開閉方向に対して、前記発泡成形体から側方へ突出する突出部を有しており、第1金型と第2金型間にクラッキング隙間が形成されるクラッキング充填時、前記成形空間に配置したインサート材のうちの成形空間外へ突出する突出部の基部を、第1金型の第1保持面と、第2金型に型開閉方向に移動自在で且つ第1保持面側へ付勢した分割型兼保持部材における第2保持面間に保持して、前記突出部の基部に対応する位置において両金型間に、前記予備発泡ビーズが通り抜け可能な隙間が形成されないようにした状態で、予備発泡ビーズを成形空間にクラッキング充填し、前記クラッキング充填後、前記突出部の基部を第1保持面と第2保持面間に保持しながら、第1金型と第2金型とを完全に型閉じして、前記成形空間内の予備発泡ビーズを加熱融着するものである。
【0022】
この製造方法では、突出部の基部を、第1金型の第1保持面と、第2金型に型開閉方向に移動自在で且つ第1保持面側へ付勢した分割型兼保持部材の第2保持面間に保持して、突出部の基部に対応する位置において両金型間に、予備発泡ビーズが通り抜け可能な隙間が形成されないようにした状態で、予備発泡ビーズをクラッキング充填するので、突出部の基部に対応する位置において両金型間に、クラッキング隙間に応じた開口が形成されてしまうことを防止して、該開口を通じて成形空間内に充填した予備発泡ビーズの一部が漏れ出して、この漏れ出した予備発泡ビーズにより成形品にバリが形成されるという不具合を防止できる。このため、この製造方法では、成形後に該バリを除去する作業が不要となり、成形品の生産性を向上できる。
【0023】
前記第1保持面と第2保持面の少なくとも一方に、前記突出部が嵌合可能な溝部を形成することが好ましい実施の形態である。このように構成すると、突出部の基部を溝部に嵌合させて、インサート材を安定性良く成形空間内にセットできる。また、溝部の開口幅及び深さを適正に設定することで、クラッキング充填時において、溝部と突出部間の隙間から蒸気室側へ予備発泡ビーズが漏れ出すことを容易に且つ確実に防止できる。
【0024】
前記成形品が車輛用シート芯材であることが好ましい実施の形態である。この場合には、インサート材により車両用シート芯材の保形性を高めたり、インサート材の突出部を利用して車両用シート芯材を車両に固定したりすることができる。
【0025】
本発明に係る型内発泡成形品は、前記型内発泡成形品の製造方法により製造した型内発泡成形品であって、前記発泡成形体に埋設状に一体成形されるインサート材に、前記型内発泡成形品を成形する金型の型開閉方向に対して、前記発泡成形体から側方へ突出する突出部を設けたものである。
【0026】
この型内発泡成形品では、発泡成形体に埋設状に一体成形されるインサート材に、前記型内発泡成形品を成形する金型の型開閉方向に対して、前記発泡成形体から側方へ突出する突出部を設けた型内発泡成形品でありながら、前記製造方法を採用することで、成形後における突出部の基端部周囲のバリの除去作業が不要な、生産性に優れた型内発泡成形品を実現できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るポリオレフィン系樹脂型内発泡成形用金型及び型内発泡成形品の製造方法によれば、両金型に分割型兼保持手段として、第1金型に、成形空間外へ突出する突出部の基部に対面する第1保持面を形成し、第2金型に、前記第1保持面に対面する第2保持面を有する分割型兼保持部材と、該分割型兼保持部材を型開閉方向へ移動自在に案内するとともに、該分割型兼保持部材を第1保持面側へ常時付勢する付勢手段とを設けるという簡単な構成で、突出部の基部に対応する位置において、予備発泡ビーズのクラッキング充填時に、両金型間にクラッキング隙間に応じた開口が形成されてしまうことを防止して、該開口を通じて成形空間内に充填した予備発泡ビーズの一部が漏れ出して、この漏れ出した予備発泡ビーズにより成形品にバリが形成されるという不具合を防止できる。このため、この金型を用いると、成形後に該バリを除去する作業が不要となり、成形品の生産性を向上できる。
【0028】
本発明に係る型内発泡成形品によれば、成形後における突出部の基端部周囲のバリの除去作業が不要な、生産性に優れた型内発泡成形品を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
先ず、本発明に係る金型にて成形する成形品の構成について説明する。なお、本実施の形態では、成形品として、車輛用シート芯材を成形する場合について説明する。
【0031】
図1〜
図3に示すように、成形品1は、アンカー材2と、アンカー材2に付設した複数の留め具3とを有するインサート材としての成形品留め部材4と、成形品留め部材4を埋設状に一体成形したポリオレフィン系発泡樹脂からなる発泡成形体5とを備え、アンカー材2と留め具3の少なくとも一方の少なくとも一部が突出部として該発泡成形体5から外部に突出し、成形品留め部材4のうちの突出部以外の部分が発泡成形体5に埋設されるように、成形品留め部材4を型内発泡成形により一体成形したものである。
図1は、成形品1としての自動車のシートクッションの芯材(以下、シート芯材)を縦置きにした状態での斜視図で、このシート芯材は、成形品1の発泡成形体5の上側にポリウレタンからなる成形体6を仮想線で示すように一体成形することで製作される。
【0032】
より具体的には、発泡成形体5は、シートクッションに適合する大きさの略U字状の厚手の板状に構成されている。アンカー材2は、鉄又はステンレスなどからなる金属ワイヤーを長方形枠状に折り曲げてその両端を溶接したもので、
図2を基準に上下左右を定義して説明すると、上側に配置されている上部アンカー2aと、左右両側に配置される側部アンカー2b、2cの上部とは、発泡成形体5の外側面に沿って発泡成形体5に埋設状に設けられ、左右の側部アンカー2b、2cの下部と、下側に配置されている下部アンカー2dとは発泡成形体5から下方へ突出され、外部に露出されている。左側の側部アンカー2bには上下1対の取付板7A、7Bが相互に間隔をあけて固定され、右側の側部アンカー2cの高さ方向の中央部には1つの取付板7Cが固定され、これら3つの取付板7A〜7Cは発泡成形体5に埋設状に設けられている。左上側の取付板7Aには前方(車体への組み付け状態での下方)へ突出するU字形状のフックからなる第1留め具3Aが固定され、第1留め具3Aの前部は発泡成形体5から前方へ突出されている。左下側の取付板7Bには前方(車体への組み付け状態での下方)へ突出するU字形状のフックからなる第2留め具3Bが固定され、第2留め具3Bの前部は発泡成形体5から前方へ突出されている。右側の取付板7Cには右方へ突出するU字形状のフックからなる第3留め具3Cが固定され、第3留め具3Cの右部は発泡成形体5から右方へ突出され、成形品1は、これら3つの留め具3A〜3Cを車体側の部材に固定することで、車体に固定されることになる。なお、本明細書では、留め具3A〜3Cを総称して留め具3と称することがあり、また取付板7A〜7Cを総称して取付板7と称することがある。
【0033】
成形品留め部材4のうちの発泡成形体5の上下左右方向へ突出する部分、即ち成形品1の成形時に金型の型開閉方向と直交する方向へ突出する部分が、本発明における突出部に相当することになる。具体的には、アンカー材2の下部のU字状のアンカー突出部2Aと、第3留め具3Cの先端側半分のU字部分が突出部に相当する。ただし、突出部は、金型の型開閉方向に対して任意の角度を付けて突出させることもできる。
【0034】
なお、アンカー材2としては、鉄又はステンレスなどの金属材料や、合成樹脂材料からなる、細長いパイプ状や棒状や板状、正方形や長方形などの板状、或いはそれ以外の任意の形状のものを採用することができる。また、アンカー材2は、留め具3を発泡成形体5に対して固定するための機能を有するものであれば、シート形状に応じた任意の枠形状に構成することも可能であるし、直線状やU字状に構成することも可能である。更に、アンカー材2のうちの発泡成形体5からの露出箇所に関しても、車輌用シートの形状などに応じて適宜に設定できるし、露出しないように構成することも可能である。また、留め具3の個数や配設位置や形状は、車輌側の構成に応じて任意に設定できる。更に、取付板7を介してアンカー材2に留め具3を固定したが、アンカー材2に直接的に留め具3を固定することも可能である。
【0035】
発泡成形体5の大きさや形状は、車輌用シートの大きさや形状に応じて適宜の形状に構成できる。発泡成形体5を構成するポリオレフィン系樹脂は、オレフィン系単量体75重量%以上含んでなる重合体である。
【0036】
(ポリオレフィン系樹脂)
オレフィン系単量体の具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブテン、ペンテン−1、3−メチル−ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、3,4−ジメチル−ブテン−1、へプテン−1、3−メチル−ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1などの炭素数2〜12のα−オレフィンなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
また、前記オレフィン系単量体と共重合性を有するその他の単量体の具体例としては、例えば、シクロペンテン、ノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,8,8a,6−オクタヒドロナフタレンなどの環状オレフィン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエンなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレンを主成分とするポリエチレン系樹脂、プロピレンを主成分とするポリプロピレン系樹脂が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
ポリプロピレン系樹脂としては、単量体の主成分としてプロピレンを含んでいれば、特に限定はなく、例えば、プロピレンホモポリマー、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体、α−オレフィン−プロピレンブロック共重合体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0040】
特に、α−オレフィンがエチレンである、エチレンを共重合単量体成分として含有するポリプロピレン系樹脂が、入手が容易であり、加工成形性に優れていることから、型内発泡成形への使用が好まれる。
【0041】
ポリプロピレン系樹脂としては、単量体の主成分としてプロピレンを含んでいれば、特に限定はなく、例えば、プロピレンホモポリマー、オレフィン−プロピレンランダム共重合体、オレフィン−プロピレンブロック共重合体などが挙げられる。
【0042】
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において用いられるポリエチレン系樹脂としては、エチレンホモポリマー、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどが挙げられる。ここで言う、α−オレフィンとしては、炭素数3〜15のα−オレフィンなどが挙げられ、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
これらのポリエチレン系樹脂の中でも、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体であってエチレン以外のコモノマー含量が1〜10重量%である場合、あるいは直鎖状低密度ポリエチレンである場合に良好な発泡性を示し、型内発泡成形に好適に使用し得る。
【0044】
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂は、さらに必要に応じて、タルク等のセル造核剤を始め、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、滑剤、可塑剤、充填剤、強化剤、無機系顔料、有機系顔料、導電性改良剤、難燃性改良剤、界面活性剤型もしくは高分子型の帯電防止剤等の添加剤が添加されたポリオレフィン系樹脂組成物として使用されうる。
【0045】
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂組成物は、通常、予備発泡に利用されやすいように予め押出機、ニーダー、バンバリミキサー、ロール等を用いてポリオレフィン系樹脂を、必要に応じて前記添加剤と共に溶融混合し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状等のような所望の粒子形状のポリオレフィン系樹脂粒子に成形加工される。
【0046】
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂予備発泡ビーズを製造する方法には、特に限定はないが、密閉容器内にポリオレフィン系樹脂粒子を発泡剤存在下、分散剤等と共に分散媒中に分散させ、加圧下で所定の発泡温度まで加熱するとともに発泡剤を樹脂粒子に含浸させた後、容器内の温度、圧力を一定に保持しながら、密閉容器内の分散物を低圧域に放出・発泡させる方法、いわゆる除圧発泡が好ましい。
【0047】
密閉容器内の加熱温度は、好ましくはポリオレフィン系樹脂粒子の融点−25℃以上ポリオレフィン系樹脂粒子の融点+25℃以下、更に好ましくはポリオレフィン系樹脂粒子の融点−15℃以上ポリオレフィン系樹脂粒子の融点+15℃以下の範囲の温度である。当該温度に加熱し、加圧して、ポリオレフィン系樹脂粒子内に発泡剤を含浸させたのち、密閉容器の一端を開放してポリオレフィン系樹脂粒子を密閉容器内よりも低圧の雰囲気中に放出することによりポリオレフィン系樹脂予備発泡ビーズを製造することができる。
【0048】
ポリオレフィン系樹脂予備発泡ビーズを製造するに当たり、発泡剤に特に制限はなく、例えば、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の脂肪族炭化水素;空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス;水等およびこれらの混合物を用いることができる。
【0049】
(金型装置)
次に、金型装置の構成について説明する。
図4〜
図12に示すように、型内発泡成形用金型装置Mは、凹型11とそれを保持する凹型ハウジング12とを有する凹型ユニット10と、凸型21とそれを保持する凸型ハウジング22とを有する凸型ユニット20と、凹型ユニット10と凸型ユニット20間にインサート材としての成形品留め部材4を固定保持する保持手段とを備え、保持手段により凸型ユニット20に成形品留め部材4を固定保持して、凹型ユニット10と凸型ユニット20とを組み合わせ、金型としての凹型11と凸型21とで形成される成形空間CA内に成形品留め部材4の埋設部分を固定保持した状態で、該成形空間CA内に発泡性樹脂粒子を充填し、成形空間CA内において発泡性樹脂粒子を加熱、発泡融着させて、突出部が側方へ突出するように発泡成形体5に成形品留め部材4を埋設状に一体成形した成形品1を得るようになしたものである。
【0050】
凹型11及び凸型21からなる金型は、成形品1の加熱や冷却が円滑になされるように、低比熱で熱伝導率の高い素材、例えばアルミニウム合金からなる鋳物で構成され、両ハウジング12、22は、金型装置Mの製作コストを安くするとともに、強度剛性を十分に確保するため、鉄系金属で構成されている。
【0051】
凹型ハウジング12は、角筒状の凹型フレーム13と、凹型フレーム13の正面側(金型の合わせ面側)の開口を閉塞するようにセンタープレート14を介して凹型フレーム13に固定した凹型11と、凹型フレーム13の背面側の開口を閉塞する凹型背面板15とを有し、凹型11の背面側において凹型ハウジング12内には凹型チャンバ16が形成されている。
【0052】
凹型ユニット10には凹型チャンバ16内に開口する蒸気供給管18aと冷却水供給管18bとドレン管18cとが接続され、これらの配管18a〜18cの途中部に介装した制御弁19a〜19cの操作により、凹型チャンバ16内へ蒸気を供給して発泡性樹脂粒子を加熱発泡させたり、凹型11の背面側へノズル18dから冷却水を噴き付けて、成形品1を冷却したり、不要なドレンを凹型チャンバ16から排出したりできるように構成されている。凹型11には多数の通気孔11aが形成され、この通気孔11aを通じて凹型チャンバ16から成形空間CA内へ蒸気を供給できるように構成されている。凹型背面板15には充填器17が固定され、充填器17の先端部は凹型11を挿通して成形空間CA内に開口され、発泡性樹脂粒子は充填器17から成形空間CA内へ供給されて、成形空間CA内に充填されるように構成されている。また、図示していないが、凹型背面板15には凹型11を挿通して成形空間CA内に突出可能なエジェクターピンが挿通支持されている。
【0053】
凸型ハウジング22は、角筒状の凸型フレーム23と、凸型フレーム23の正面側(金型の合わせ面側)の開口を閉塞するようにセンタープレート24を介して凸型フレーム23に固定した凸型21と、凸型フレーム23の背面側の開口を閉塞する凸型背面板25とを有し、凸型21の背面側において凸型ハウジング22内には凸型チャンバ26が形成されている。
【0054】
凸型ユニット20には凸型チャンバ26内に開口する蒸気供給管28aと冷却水供給管28bとドレン管28cとが接続され、これらの配管28a〜28cの途中部に介装した制御弁29a〜29cの操作により、凸型チャンバ26内へ蒸気を供給して発泡性樹脂粒子を加熱発泡させたり、凸型21の背面側へノズル28dから冷却水を噴き付けて、成形品1を冷却したり、不要なドレンを凸型チャンバ26から排出したりできるように構成されている。凸型21には多数の通気孔21aが形成され、この通気孔21aを通じて凸型チャンバ26から成形空間CA内へ蒸気を供給できるように構成されている。
【0055】
(保持手段)
本発明に係る凹型11及び凸型21からなる金型は、
図4〜
図11に示すように、前述のような金型装置Mに成形品留め部材4を固定保持する保持手段として、成形品留め部材4の第1留め具3A及び第2留め具3Bを凹型11及び凸型21に対して保持する1対の保持手段30と、発泡成形体5から外部へ突出するアンカー材2のU字状のアンカー突出部2Aの基部を保持する1対の分割型兼保持手段40Aと、発泡成形体5から外部へ突出する第3留め具3Cを保持する分割型兼保持手段40Bとを備えている。なお、金型装置Mとしては、少なくとも1つの分割型兼保持手段を備えていれば、それ以外の構成に関しては、周知の金型装置Mと同様の構成のものを採用することもできる。
【0056】
先ず、第1留め具3A及び第2留め具3Bを固定保持する1対の保持手段30について説明するが、両保持手段30は保持する留め具3A、3Bが異なる点と、金型における配設位置が異なる点以外は同じ構成なので、第2留め具3Bを固定保持する保持手段30についてのみ説明し、第1留め具3Aを固定保持する保持手段30については、同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0057】
保持手段30は、
図4〜
図9、
図11に示すように、第2留め具3Bを相対移動不能に保持する嵌合凹部32を有する凸型21側に設けた保持部材33と、保持部材33を凹型11側へ突出するように付勢する保持部材付勢手段34と、保持部材33の先端部に当接可能に凹型11に設けた保持面39aとを備え、嵌合凹部32に第2留め具3Bを位置決め嵌合させた状態で、第2留め具3Bの取付板7Aを保持部材33の先端部と保持面39a間に保持部材付勢手段34の付勢力で挟持して、凹型11と凸型21間に第2留め具3Bを位置決め保持するものである。
【0058】
保持部材33は、金属製の扁平な有底のパイプ状部材で構成され、保持部材33の中央部には、第2留め具3Bが略隙間なく着脱可能に内嵌する、型開閉方向に延びる細長い長孔状の嵌合凹部32が形成されている。ただし、嵌合凹部32としては、第2留め具3Bを保持可能な構成であれば、第2留め具3Bの形状などに応じて、任意の構成のものを採用することができる。
【0059】
保持部材付勢手段34は、
図4〜
図9に示すように、先端部が保持部材33に固定され、途中部が保持部材33を収容する収容凹部36の底部を貫通して凸型21の背面側へ突出するガイドロッド37と、保持部材33と収容凹部36の底部間においてガイドロッド37に外装した、保持部材33を凹型11側へ常時付勢する付勢部材としての圧縮コイルバネからなるバネ部材38とを備えている。ガイドロッド37の後端部には収容凹部36の底部の背面側に当接可能なストッパー37aが設けられ、
図8に示すように、型開きした状態において、保持部材33は収容凹部36から脱落しないように一定距離だけ凹型11側へ突出するように構成されている。保持部材33に対応する位置において凹型11には成形空間CA内へ突出する受圧突起39が形成され、受圧突起39の先端には保持面39aが形成され、
図8に示すように、凹型11と凸型21とを型開きした状態で、凸型21に対して第1留め具3Aを嵌合凹部32に内嵌させて、成形品留め部材4を凸型21に位置決め保持させた後、凹型11と凸型21とを型閉じすると、
図7に示すように、凹型11と凸型21とを完全に型閉じした状態と、
図9に示すように、クラッキング隙間CLをあけて型閉じした状態とにわたって、保持部材33の先端部と受圧突起39の保持面39a間に取付板7Aが挟持されて、成形品留め部材4が位置決め保持されるように構成されている。
【0060】
(分割型兼保持手段)
次に、発泡成形体5から外部へ突出するアンカー材2のU字状のアンカー突出部2Aの基部の側部アンカー2b、2cを保持する1対の分割型兼保持手段40Aについて説明するが、両分割型兼保持手段40Aは保持する側部アンカー2b、2cが異なる点と、金型における配設位置が異なる点以外は同じ構成なので、側部アンカー2bを保持する
図4(b)の右側の分割型兼保持手段40Aについてのみ説明し、側部アンカー2cを保持する
図4(b)の左側の分割型兼保持手段40Aについては、同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図4、
図6〜
図11に示すように、成形空間CA外へ突出するアンカー突出部2Aを収容する溝部11bが凹型11に形成され、成形空間CAから外部へ突出する側部アンカー2bの基部に対応させて凹型11には、凹型チャンバ16側へ突出する収容凹部41が溝部11bの基端部に連なって形成されている。収容凹部41には凹型11の内側へ向けて型開閉方向の全長にわたって開口する略長方形状の開口部42が形成され、収容凹部41の型開閉方向の奥部側の端面には成形空間CAから外部へ突出する側部アンカー2bの基部に対面する第1保持面43が形成されている。ただし、収容凹部41の奥部側の端部に別部材を固定して、該別部材に第1保持面43を形成することも可能である。
【0062】
凸型21は、第1保持面43に対面する第2保持面45を有する分割型兼保持部材46であって、型閉じにより収容凹部41に内嵌されて凹型11の一部を構成する分割型兼保持部材46と、分割型兼保持部材46を型開閉方向へ移動自在に案内するとともに、分割型兼保持部材46を第1保持面43側へ常時付勢する分割型付勢手段47とを備えている。
【0063】
分割型兼保持部材46は、直方体のブロック状に構成され、分割型兼保持部材46の幅は開口部42を閉塞し得るように開口部42の幅と同じに設定され、分割型兼保持部材46の長さは、
図9に示すように、クラッキング隙間CLをあけて、両型11、21を型閉じした状態において、成形空間CAに対応する位置における開口部42を閉塞可能な長さ以上に設定されている。分割型兼保持部材46の素材としては、任意の金属材料を採用することができるが、加工性、アンカー材や留め具との接触強度、熱伝導性の観点から真鍮を採用することが好ましい。
【0064】
分割型兼保持部材46の先端部には第1保持面43に対面する第2保持面45が形成され、第2保持面45の幅方向の中央部には側部アンカー2bが挿通する第1溝部48が形成され、分割型兼保持部材46には第1溝部48の底面の途中部に露出するように磁石49が埋設状に設けられ、成形空間CAから外部へ突出する側部アンカー2bの基部は第1溝部48内に装填されて、磁石49で第1溝部48内に保持されるように構成されている。第1溝部48の深さは、側部アンカー2bを型開閉方向にガタなく保持できるように、側部アンカー2bの直径と略同じ寸法に設定されている。
【0065】
分割型付勢手段47について説明すると、
図4、
図6〜
図10に示すように、凸型21の下面には下方へ突出するブラケット50が凸型21と一体的に設けられ、ブラケット50にはスリーブ51が型開閉方向に嵌合固定され、スリーブ51にはガイドロッド52が型開閉方向に移動自在に挿通されている。ガイドロッド52の凹型11側の先端部にはネジ部52bが形成され、ガイドロッド52のネジ部52bには分割型兼保持部材46が着脱可能に固定され、後端部にはブラケット50に当接可能なストッパー52aが固定されている。分割型兼保持部材46とブラケット50間においてガイドロッド52には付勢部材として圧縮コイルバネからなるバネ部材53が外装され、
図8、
図10(a)に示すように、型開きした状態において、分割型兼保持部材46は一定距離だけ凹型11側へ突出するように構成されている。また、
図8に示すように、成形品留め部材4を凸型21に取り付けた状態で、凹型11と凸型21とを型閉じすると、
図7に示すように、凹型11と凸型21とを完全に型閉じした状態と、
図9に示すように、クラッキング隙間CLをあけて型閉じした状態とにわたって、分割型付勢手段47の付勢力で第1保持面43と第2保持面45間に側部アンカー2bが挟持されるように構成されている。スリーブ51及びガイドロッド52の素材としては、任意の金属材料を採用できるが、スリーブ51に関しては、加工性の観点から真鍮を採用することが好ましく、ガイドロッド52に関しては、スリーブ51との良好な滑り性を確保するため、ステンレスを採用することが好ましい。
【0066】
なお、ガイドロッド52のネジ部52bに対して分割型兼保持部材46を着脱可能に構成したが、ストッパー52aをガイドロッド52に着脱自在に固定し、ストッパー52aを取り外して、分割型兼保持部材46をブラケット50から取り外せるように構成することも可能である。このように、分割型兼保持部材46を凸型21に対して取外し可能に構成すると、摩耗や破損時に分割型兼保持部材46を容易に交換できるので好ましい。また、スリーブ51は、ガイドロッド52の摺動抵抗を低減する上で設けることが好ましいが、省略することも可能である。また、分割型付勢手段47としては、分割型兼保持部材46を型開閉方向に移動自在に案内するとともに、分割型兼保持部材46を第1保持面43側へ付勢し得る構成のものであれば、前述した以外の構成のものを採用することも可能である。
【0067】
なお、第1溝部48に代えて、第1保持面43に側部アンカー2bの基部が嵌合可能な溝部を形成したり、第1保持面43と第2保持面45とに溝部をそれぞれ形成して、両溝部を組み合わせることで側部アンカー2bの基部を収容可能に構成したりすることもできる。また、開口部42及び収容凹部41の幅を、例えば第1溝部48の溝幅と同じ幅に構成し、分割型兼保持部材46を開口部42と同じ幅に構成して、分割型兼保持部材46から第1溝部48を省略することも可能である。この場合には、クラッキング充填のため型閉じした状態で、開口部42の内面と側部アンカー2bの基部との間に予備発泡ビーズが通過不能な隙間が形成されるように構成することになる。
【0068】
第3留め具3Cを固定保持する分割型兼保持手段40Bは、
図4、
図5、
図11に示すように、第1保持面43に代えて、凹型11のうちの第3留め具3Cに対面する位置に第1保持面43Bを形成し、分割型兼保持部材46に代えて、第1保持面43Bに対面する第2保持面60と、第3留め具3Cに嵌合するU溝状の第2溝部61とを有する直方体のブロック状の分割型兼保持部材62を設け、分割型兼保持部材62に2個の磁石63を第2溝部61内に露出するように埋設した以外は、前記分割型兼保持手段40Aと同様に構成されているので、分割型兼保持手段40Aと同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。なお、分割型兼保持部材62は、分割型兼保持部材46と異なる素材で構成することも可能であるが、同じ素材で構成することが好ましい。ただし、分割型兼保持手段40Bに代えて、第3留め具3Cの1対の基部に対応させて、前記分割型兼保持手段40Aをそれぞれ設けて、第3留め具3Cを固定保持することもできる。
【0069】
成形品留め部材4は、保持手段30、40A、40Bにより、成形空間CA内において型開閉方向と直交方向へ移動しないように保持することもできるが、成形品留め部材4が型開閉方向と直交方向へ一定距離だけ移動し得るように構成することが好ましい。具体的には、2つの嵌合凹部32と2つの第1溝部48と1つの第2溝部61のいずれか1つに対して、成形品留め部材4を型開閉方向と直交方向に隙間なく移動不能に位置決め保持し、残り4つに対して型開閉方向と直交方向に一定距離だけ移動し得るように構成することになる。例えば、
図11(a)に示すように、第1留め具3Aが嵌合凹部32に対して略隙間なく嵌合するように構成し、
図11(b)に示すように、第2留め具3Bが嵌合凹部32に隙間Cをあけて嵌合するように構成し、
図11(c)に示すように、側部アンカー2b、2cが隙間Cをあけて第1溝部48に嵌合するように構成し、
図11(d)に示すように、第3留め具3Cが隙間Cをあけて第2溝部61に嵌合するように構成することになる。
【0070】
このように構成すると、凸型21に対して成形品留め部材4を取り付けるときや、予備発泡ビーズを加熱発泡、融着させる型内発泡成形時において、成形品留め部材4の製作精度または加熱時における線膨張から生じる寸法ずれによるワイヤーの変形を防止することができるので、自然状態の成形品留め部材4に対して発泡成形体5が一体成形されることになり、成形品1の成形後に、成形品留め部材4が元の形状に復帰しようとする力を略完全に無くして、成形後における成形品1の変形を防止できる。隙間Cは、0.5mm以上3.0mm以下が好ましい。隙間Cが0.5mm未満では、成形品留め部材4の製作精度のばらつきにより、所定の箇所に固定できずアンカー材2または留め具3に変形が生じる傾向がある。隙間Cが3.0mm超では、隙間Cからビーズが漏れ発泡成形体5にバリが生じるため好ましくない。
【0071】
なお、前記実施の形態では、凹型11と凸型21とを型開きした状態において、成形品留め部材4を凸型21側に取り付けるように構成したが、凹型11側に取り付けるように構成することも可能である。この場合には、磁石49、63及び溝部48、61は凹型11側に設けることになる。また、凸型21に保持面を形成し、凹型11に分割型兼保持部材を設け、磁石49、63及び溝部48、61を凸型21に形成した保持面に設けることもできる。更に、1つのアンカー材2に発泡成形体5から外方へ突出する突出部を複数設けて、これら複数の突出部を複数組の保持面と分割型兼保持部材とで個別に保持する場合には、凹型11に保持面と分割型兼保持部材の一方のみを設け、凸型21に保持面と分割型兼保持部材の他方のみを設けることになる。つまり、凹型11と凸型21とに保持面と分割型兼保持部材とをそれぞれ混在させて設けると、アンカー材2の高さ位置が統一されずアンカー材2が斜めに取り付けられてしまうという不具合が発生するので、凹型11に保持面と分割型兼保持部材の一方のみを設け、凸型21に保持面と分割型兼保持部材の他方のみを設けることになる。ただし、複数のアンカー材2を設ける場合には、アンカー材2毎に、凹型11に保持面と分割型兼保持部材の一方のみを設け、凸型21に保持面と分割型兼保持部材の他方のみを設けるように構成してあれば、凹型11と凸型21とに保持面と分割型兼保持部材とをそれぞれ混在させて設けることができる。更にまた、アンカー2の突出部を型開閉方向に対して直交方向以外の角度を付けて設ける場合には、第1保持面及び第2保持面も、アンカー2の突出部の型開閉方向に対する角度と同じ角度を付けて型開閉方向に対して傾斜状に設け、第1保持面と第2保持面間に突出部を隙間なく保持できるように構成することになる。
【0072】
(型内発泡成形方法)
この金型装置Mを用いて成形品1を製作する際には、先ず、凹型11と凸型21を型開きした状態で、
図8、
図4(b)に示すように、凸型21に対して成形品留め部材4を取り付けるべく、保持部材33の嵌合凹部32に第1留め具3A及び第2留め具3Bを嵌合し、分割型兼保持部材46の第1溝部48にアンカー材2を嵌合して磁石49で吸着保持し、分割型兼保持部材62の第2溝部61に第3留め具3Cを嵌合して磁石63で吸着保持することで、凸型21に対して成形品留め部材4を取り付ける。
【0073】
次に、ポリオレフィン系樹脂予備発泡ビーズ(図示略)を成形空間CA内にクラッキング充填するため、
図9に示すように、クラッキング隙間CLが形成されるように、凸型21と凹型11とを型閉じする。このとき、1対の保持手段30の保持部材付勢手段34の付勢力で、保持部材33の先端部と1対の受圧突起39の保持面39a間に取付板7A,7Bがそれぞれ挟持され、また1対の分割型兼保持手段40Aの分割型付勢手段47の付勢力で、1対の分割型兼保持部材46と1対の第1保持面43間に側部アンカー2b、2cがそれぞれ保持され、更に分割型兼保持手段40Bの分割型付勢手段47により、分割型兼保持部材62と第1保持面43B間に第3留め具3Cが保持される。また、アンカー突出部2Aの1対の基部及び第3留め具3Cに対応して凹型11に形成される3つの開口部42のうちの成形空間CAに対応する部分が、1対の分割型兼保持部材46及び分割型兼保持部材62によりそれぞれ閉塞され、予備発泡ビーズがこれら3つの開口部42から成形空間CA外へ漏れ出すことが防止される。
【0074】
こうして、予備発泡ビーズをクラッキング充填した後、
図5〜
図7に示すように、凹型11と凸型21とを完全に型閉じし、成形品留め部材4を成形空間CAの厚さ方向の適正位置に保持することになる。このとき、凹型11と凸型21間に成形品留め部材4を挟持しながら、保持部材33及び分割型兼保持部材46、62が付勢手段34、47の付勢力に抗して後退し、凹型11と凸型21とが完全に型閉じされることになる。
【0075】
そして、凹型11と凸型21とを完全に型閉じした状態で、凹型チャンバ16と凸型チャンバ26とに、水蒸気を0.10〜0.40MPa(G)程度の加熱水蒸気圧で3〜60秒程度だけ供給して、予備発泡ビーズを加熱発泡、融着させて発泡成形体5を成形する。このとき、前述のように3つの開口部42における成形空間CAに対する開口が、分割型兼保持部材46、62により閉塞されて、これら3つの開口部42を通じて成形空間CAから予備発泡ビーズが漏れ出すことが防止されるので、型開閉方向と直交する方向へ突出する突出部分を有するインサート材を備えながらも、該突出部分付近におけるバリの発生が確実に防止された成形品を得ることができ、バリ除去のための後工程が不要となるので好ましい。
【0076】
こうして、予備発泡ビーズを加熱発泡、融着させた後、凹型11及び凸型21に背面側から冷却水を噴き付けて成形品1を冷却してから、凹型11と凸型21を型開きして、成形品1を得ることになる。
【0077】
なお、前記実施の形態の金型装置Mにおける分割型兼保持手段40A、40Bでは、凹型11側に第1保持面43、43Bを形成し、凸型21側に分割型兼保持部材46、62及び分割型付勢手段47を設けたが、凹型11側に分割型兼保持部材46、62及び分割型付勢手段47を設け、凸型21に第1保持面43、43Bを形成することも可能である。
【0078】
例えば、側部アンカー2bを保持する分割型兼保持手段40Aに代えて、次のような構成の分割型兼保持手段70を設けることができる。なお、分割型兼保持手段40Aと同一部材には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0079】
図12に示すように、分割型兼保持手段70は、凸型21に、成形空間CAから側方へ突出する側部アンカー2bの基部に対面させて第1保持面43Cを形成し、凹型11に、第1保持面43Cに対面する第2保持面45を有する分割型兼保持部材46と、該分割型兼保持部材46を型開閉方向へ移動自在に案内するとともに、該分割型兼保持部材46を第1保持面43C側へ常時付勢する分割型付勢手段47とを設け、第1保持面43Cに対面させて凹型11に形成した開口部71を分割型兼保持部材46で閉塞するように構成したものである。
【0080】
分割型付勢手段47を凹型11に支持するため、凹型11の開口部71の口縁には型開閉方向の外方側へ延びる支持アーム72が一体的に設けられ、支持アーム72にはブラケット73が一体的に設けられ、分割型付勢手段47のガイドロッド52はブラケット73に設けたスリーブ51に型開閉方向に移動自在に装着され、分割型兼保持部材46はバネ部材53により第1保持面43C側へ常時付勢されている。
【0081】
この分割型兼保持手段70では、凹型11と凸型21を完全に型閉じした状態と、クラッキング隙間をあけた状態とにわたって、分割型兼保持部材46と第1保持面43C間に側部アンカー2bが保持されるとともに、分割型兼保持部材46により開口部71が閉塞されるので、予備発泡ビーズのクラッキング充填時に開口部71が閉塞されて、開口部71から予備発泡ビーズが成形空間CA外へ漏れ出すことが防止されることになる。なお、この場合には、保持手段30の受圧突起39を凸型21側に設け、保持部材33及び保持部材付勢手段34を凹型11側に設けることが好ましい。
【0082】
なお、本発明に係る金型は、インサート材の一部が発泡成形体から型開閉方向に対して側方へ突出するように構成した成形品であれば、発泡成形体から外部へ突出するインサート材の基部を保持する前述と同様の構成の分割型兼保持手段を備えた金型を用いることで、前記成形品1以外の構成の車輛用シート芯材を成形できるし、車輛用シート芯材以外に、車輛用のバンパー芯材や、ヘッドレスト芯材などの自動車内装部材などの任意の構成の成形品を成形したり、車輛用以外の任意の用途の各種成形品を成形したりすることもできる。
【0083】
(評価試験)
次に、本発明の実施例により、さらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
実施例において、使用したビーズは以下の通りである。
・ポリプロピレン系樹脂予備発泡ビーズ:エペラン−PP36倍(株式会社カネカ製)
エチレン−プロピレンランダム共重合体樹脂を36倍の発泡倍率で発泡したもの。
【0085】
(実施例)
[成形品留め部材]
図1および
図2に示すような、鉄製、直径5mm、縦450mm×横400mmの四角形状ワイヤーからなるアンカー材2を有する成形品留め部材4を用いた。
【0086】
[ポリオレフィン系樹脂発泡成形体の作製]
金型として分割型兼保持手段40A、40Bを有する
図4に示す縦450mm×横450mm×厚さ50mmのコの字(縦325mm×横125mm)型平板金型を用い、これをP300成形機(東洋機械金属株式会社製)に搭載した。
そして、凸型21に成形品留め部材4を固定した後、耐圧容器内にて加圧空気を含浸させて内圧を約0.1MPa(G)にした予備発泡ビーズを、成形空間CAにクラッキング充填した。その後、完全に型閉じしてから、23秒間かけて水蒸気圧力0.33MPa(G)まで昇圧し、そのまま2秒間加熱、該予備発泡ビーズ同士を融着させ、110秒間水冷した後、金型から取り出し、
図1〜
図3に示すような成形品1を得た。
【0087】
発泡成形体5から露出したアンカー突出部2Aの基部及び留め具3Cの基部にはバリが発生しなかった。留め具3A,3Bについては、留め具3A,3BのU字の外側にバリは発生しなかったが、U字の内側に僅かなバリが見られた。
【0088】
このように、分割型兼保持手段40A、40Bを用いて、型開閉方向に対して側方(直交方向)へ突出するアンカー突出部2Aの基部及び留め具3Cを保持することで、バリ防止効果が得られることは明白である。