特許第6620101号(P6620101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6620101MQ型シリコーン樹脂をキャッピングする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620101
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】MQ型シリコーン樹脂をキャッピングする方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/20 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
   C08G77/20
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-545350(P2016-545350)
(86)(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公表番号】特表2017-502153(P2017-502153A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】US2015010556
(87)【国際公開番号】WO2015105931
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2016年7月14日
【審判番号】不服2018-10086(P2018-10086/J1)
【審判請求日】2018年7月24日
(31)【優先権主張番号】61/924,798
(32)【優先日】2014年1月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・シフエンテス
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ロサマー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・エル・フォスディック
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・エヴァンス
(72)【発明者】
【氏名】スーザン・ジェスク
【合議体】
【審判長】 近野 光知
【審判官】 大熊 幸治
【審判官】 橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−234333(JP,A)
【文献】 特開2013−1813(JP,A)
【文献】 特開2013−14764(JP,A)
【文献】 特表2009−531469(JP,A)
【文献】 特開2013−79313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00- 77/62
CA(STN)
Registry(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップされたMQ樹脂を製造する方法であって、前記方法が、MQ型シリコーン樹脂、ハロシランキャッピング剤、及び極性有機化合物を75℃〜150℃の温度で2〜12時間組み合わせる工程を含み、
前記MQ型シリコーン樹脂が、式:R(RO)SiO((4−n−b)/2)を有し、式中、各Rは1価であり、かつ水素、ヒドロカルビル、オキシモ、エポキシド、カルボキシル、エーテル、ポリエーテル、アミド、及びアルキルアミノ基から独立して選択され、R部分は、R基の少なくとも60モル%がヒドロカルビルであるという条件で、同じでも異なっていてもよく、下付き文字nは1.1〜1.6であり、下付き文字bは、基(RO)がMQ型シリコーン樹脂の1重量%〜20重量%である値を有し、各Rは水素であり、
前記MQ型シリコーン樹脂が、1,500〜15,000ダルトンの数平均分子量を有し、
前記ハロシランキャッピング剤が、一般式RSiRを有し、式中、各Rはハロゲン原子であり、各RはH、シロキシ基又は1価のヒドロカルビル基であり、各Rはアルケニル基である、アルケニル官能性ハロシランキャッピング剤である、方法。
【請求項2】
縮合触媒を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ハロシランキャッピング剤が、前記MQ型シリコーン樹脂中の(RO)基1モル当たり0.05〜5モルのキャッピング剤を提供するのに十分な量で存在し、前記極性有機化合物が、前記MQ型シリコーン樹脂中の(RO)基1モル当たり0.005〜5モルの極性有機化合物を提供するのに十分な量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記縮合触媒が、前記成分の総重量を基準にして10ppm〜10,000ppmの量で添加される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、前記混合物を周囲条件下で液体にするのに十分な量で添加される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
各Rは水素であり、各Rは、メチル、ビニル、水素、及びフェニルから選択され、nは1.1〜1.5であり、bは基(RO)が前記MQ型シリコーン樹脂の1重量%〜4重量%となるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アルケニル官能性ハロシランキャッピング剤が、ジメチルヘキセニルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルフェニルビニルクロロシラン、ジメチルビニルブロモシラン、メチルフェニルビニルブロモシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
酸触媒が存在し、かつHCl、HBr、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、及び強酸性イオン交換樹脂からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物を加熱する工程及び/又は前記キャップされたMQ型シリコーン樹脂を回収する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2014年1月08日出願の米国特許仮出願第61/924798号の利益を主張する。米国特許仮出願第61/924798号は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポリオルガノシロキサンは、M、D、T、及び/又はQ単位の組み合わせで構成される分子である。M単位は式R’SiO1/2を有し、D単位は式R’SiO2/2を有し、T単位は式R’SiO3/2を有し、Q単位は式SiO4/2を有し、式中、各R’は1価であり、有機及び無機部分から独立して選択されてもよい。一般的に、シリコーン樹脂は、分子内の単位の少なくとも30モル%がT及び/又はQ単位であるポリオルガノシロキサンである。MQ型シリコーン樹脂(MQ樹脂)は、主にM及びQ単位で構成されるポリオルガノシロキサン樹脂である。MQ樹脂は、製造されるとき、一般的に式(RO)の基を1%〜20%含有し、ここでRは、水素原子又は1〜4個の炭素原子のアルキル基である。
【0003】
キャッピングは、MQ樹脂の(RO)基含有量を低減するために、特にR部分の少なくとも一部が水素原子である場合に、使用されるプロセスである。キャップされたMQ樹脂は、ビニル官能性MQ樹脂のように、M単位のケイ素原子に結合したアルケニル基を有し、ヒドロシリル化及び/又はラジカル硬化機構によって硬化できる組成物に有用である。かかるMQ樹脂は、自動車用エアバッグコーティング組成物など、多数の産業及び用途で使用法が見つかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(RO)基含有量を低減するためにMQ樹脂をキャッピングする現在のプロセスは、時間がかかり、効率が悪い。このようなキャップされたMQ樹脂を製造するための反応を速めることが、産業界で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
キャップされたMQ樹脂を製造する反応を速めるための中間反応生成物が開示される。中間反応生成物は、MQ型シリコーン樹脂、ハロシランキャッピング剤、及び極性有機化合物を含む。任意選択的に、中間反応生成物を製造するために、縮合触媒及び溶媒を添加してもよい。キャップされたMQ樹脂を製造する反応を速めるための反応生成物の製造方法も開示される。上記方法は、MQ型シリコーン樹脂、ハロシランキャッピング剤、及び極性有機化合物を含む成分を組み合わせる工程を含む。任意選択的に、反応生成物を製造するために、縮合触媒及び溶媒を添加してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0006】
キャップされたMQ型シリコーン樹脂を含む反応生成物を製造する方法が開示される。方法は、成分を組み合わせて混合物を形成する工程を含む。配合物は、代表式R(RO)SiO((4−n−b)/2)を有するMQ型シリコーン樹脂を含み、式中、各Rは1価であり、かつ水素、ヒドロカルビル、オキシモ、エポキシド、カルボキシル、エーテル、ポリエーテル、アミド、及びアルキルアミノ基から選択される。R部分は、R基の少なくとも60モル%はヒドロカルビルであるという条件で、同じでも異なっていてもよく、下付き文字nは1.1〜1.6であり、下付き文字bは、基(RO)がMQ型シリコーン樹脂の1%〜20%であるような値を有し、各Rは水素又は1〜4個の炭素原子のアルキル基である。配合物は、代表式RSiR(4−x)を有するハロシランキャッピング剤も含み、式中、Rは1価のヒドロカルビル基であり、各Rはハロゲン原子であり、下付き文字xは1〜3の範囲である。配合物は、極性有機化合物も含む。任意選択的に、縮合触媒及び溶媒を配合物に添加してもよい。
【0007】
成分を組み合わせる工程は、混合などの任意の便利な手段により実施されてもよい。成分の添加順序は、重要ではない。しかし、1つの代表的な実施形態において、この組み合わせの工程は、次の添加順序によって実施される:(1)MQ型シリコーン樹脂を溶媒と混合して混合物を生成する;(2)極性有機化合物を混合物に添加する;(3)ハロシランキャッピング剤を混合物に添加する;及び(4)酸触媒を添加する。
【0008】
成分を組み合わせる工程は、周囲条件下で(例えば、外部加熱なしで)実施されてもよいが、混合物を加熱する工程を更に含んでもよい。混合物の加熱は、反応変換率を上げる場合がある。上記の工程は、別々に実施されても連続的に実施されてもよい。あるいは、上記の工程は、同時に実施されてもよい。成分を組み合わせる工程、並びに加熱する工程は(使用される場合)、キャッピング剤のR置換ケイ素原子がMQ型シリコーン樹脂中の式(RO)の基と十分に反応し、それによってRSi−基を二価酸素原子を介して樹脂のケイ素原子と結合し、キャップされたMQ型シリコーン樹脂を生成するのに十分な条件下で実施される。一つの代表的な実施形態において、上記の工程は、20℃〜200℃の温度で0.5〜24時間実施される。あるいは、加熱工程が存在する場合、加熱は、50℃〜180℃で1〜16時間、あるいは75℃〜150℃で2〜12時間実施されてもよい。必要な反応条件は、樹脂の(RO)含有量、キャッピング剤の反応性、及び酸触媒が存在するか否かなどの種々の要因によって変動し得る。キャップされたポリオルガノシロキサン樹脂に加えて、得られる反応生成物は、水、及びHCl又はHBr(キャッピング剤がクロロシラン又はブロモシランである場合)のような揮発性副生成物、並びに未反応成分、例えば、未反応の溶媒、極性有機化合物、及び/又はキャッピング剤を含んでもよい。
【0009】
方法は、キャップされたMQ型シリコーン樹脂を回収する工程を更に含んでもよい。キャップされたMQ型シリコーン樹脂を回収する工程は、任意の便利な手法、例えば、工程1(又は、存在する場合には、工程2)の反応生成物を、周囲圧又は亜大気圧下でストリッピング又は蒸留に供することによって実施されてもよい。回収工程は、未反応成分及び/又は揮発性副生成物を、キャップされたMQ型シリコーン樹脂から除去する。回収されたキャップされたMQ型シリコーン樹脂は、未希釈でも溶媒を伴う溶液でもよい。溶媒は、この第3の工程に選択された条件下でキャップされたMQ型シリコーン樹脂と共に残される、本明細書に記載の成分(E)であってもよい。あるいは、キャップされたMQ型シリコーン樹脂は、未希釈で回収され、その後新しい溶媒(上記第1の工程で成分(E)として選択された溶媒と同じでも異なっていてもよい)に溶解されてもよい。
【0010】
1つの代表的実施形態において、MQ型シリコーン樹脂(成分A)は、一般式(I):R(RO)SiO(4−n−b/2)を有する。上記のように、各Rは1価であり、かつ水素、ヒドロカルビル(例えば、アルキル、アルケニル、アリール、及びアラルキル)、オキシモ、エポキシド、カルボキシル、エーテル、ポリエーテル、アミド、及びアルキルアミノ基から選択され、このR部分は、R基の少なくとも60モル%がヒドロカルビルであるという条件で、同じでも異なっていてもよい。Rに有用なアルキル基の例としては、1〜18個の炭素原子のアルキル基、あるいは1〜8個の炭素原子のアルキル基、例えば、Me、Et、Pr、ヘキシル及びオクチルが挙げられる。Rに有用なアルケニル基の例としては、2〜18個の炭素原子のアルケニル基、あるいは2〜8個の炭素原子のアルケニル基、例えば、ビニル、プロペニル、ヘキセニル、オクテニル挙げられる。Rに有用なアリール基の例としては、6〜18個の炭素原子のアリール基、あるいは6〜8個の炭素原子のアリール基、例えば、フェニルが挙げられる。Rに有用なアラルキル基の例としては、7〜18個の炭素原子のアラルキル基、例えば、ベンジル又は2−フェニルエチルが挙げられる。あるいは、各Rは、メチル、ビニル、水素、及びフェニルから選択される。あるいは、各Rはメチルである。
【0011】
本明細書に記載の方法において、1種のMQ樹脂を使用してもよく、又は上記一般式(I)の下付き文字nが平均で1.1〜1.6であるような2種以上のMQ樹脂のブレンドを使用してもよい。あるいは、平均で、nは1.1〜1.5である。あるいは、平均で、nは1.3〜1.5である。ブレンドを使用するとき、MQ樹脂は、構造、粘度、分子量、単位式、及び置換部分などの少なくとも1つの特性が異なる。MQ樹脂は、GPCで測定したときに、1,000〜40,000ダルトン、あるいは10,000〜25,000ダルトン、あるいは1,500〜15,000ダルトン、あるいは3,000〜7,500ダルトン、あるいは3,500〜6,500ダルトンの数平均分子量を有してもよい。あるいは、MQ樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,500〜7,000ダルトン、あるいは2,000〜5,000ダルトンであってもよい。
【0012】
第1工程での使用に好適なMQ樹脂及びその製造方法は、当業者に周知である。例えば、1957年11月26日公開の米国特許第2,814,601号(Currie et al.)は、参考として本明細書に援用されており、酸を用いて水溶性ケイ酸塩をケイ酸モノマー又は、ケイ酸オリゴマーに変換することによって、MQ樹脂を製造できることを開示している。MQ樹脂を製造する別の方法は、1958年10月21日公開の米国特許第2,857,356号(Goodwin)に開示されており、参考として本明細書に援用される。Goodwinは、アルキルシリケートと加水分解性トリアルキルシランオルガノシロキサンとの混合物を水を用いて共加水分解することによってMQ樹脂を製造する方法を開示している。MQ樹脂を製造する別の方法は、2011年9月13日公開の米国特許第8,017,712号(Berry et al.)に開示されており、これを参照により本明細書に援用する。
【0013】
上記一般式(I)における下付き文字bは、基(RO)がMQ樹脂の1%〜20%、あるいはMQ樹脂の1%〜5%であるように変動する。各Rは、水素又は1〜4個の炭素原子のアルキル基である。あるいは、各Rは、水素又は1〜3個の炭素原子のアルキル基である。あるいは、各Rは水素である。
【0014】
MQ樹脂は、当該技術分野において既知であり、RSiO1/2(M)単位及びSiO4/2(Q)単位を含み、式中、Rは上記の通りである。MQ樹脂のQ単位に対するM単位のモル比は、Q単位1つ当たりのM単位(M/Q比)が0.5〜1.5、あるいは0.6〜1.2、あるいは0.7〜0.9であってもよい。MQ樹脂は更に、式(RSiO)Siで表されるネオペンタマーを含む低分子量物質を少量含んでもよく、これは、上記樹脂の製造中に生成する揮発性シロキサン不純物である。本方法において成分(A)として好適なMQ樹脂は、全シロキサン単位のうちの少なくとも80モル%、あるいは90モル%がM及びQ単位であるという条件で、D及びT単位も含有してもよい。
【0015】
本明細書に記載の方法で使用されるMQ樹脂は、溶媒中に分散されてもよい。MQ樹脂は、別々に溶媒中に分散されてもよく、又は一般的には溶媒を使用して製造される。有用な溶媒の例としては、ヘキサン、ヘプタン、キシレン、及びトルエンなどの脂肪族又は芳香族炭化水素;及び10以下の重合度(DP)、あるいは10未満のDP、あるいは6未満のDPを有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。ポリオルガノシロキサン溶媒の例は、0.65〜1.5cStのトリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンである。その他の好適な溶媒は、以下に成分(E)として記載されている。
【0016】
本明細書に記載の方法での使用に好適な樹脂は、市販されている。代表的な市販のMQ樹脂としては、Dow Corning(登録商標)MQ−1600 Solid Resinが挙げられ、これはDow Corning Corporation(Midland,Michigan,U.S.A)からのトリメチルシロキシシリケートである。
【0017】
ハロシランキャッピング剤(成分B)は、一般式(II):RSiR(4−x)を有してもよく、式中、各Rは、H、シロキシ基又は1価のヒドロカルビル基であり、各Rは独立してハロゲン原子であり、下付き文字xは1〜3である。したがって、xが3のとき、キャッピング剤はRSiRである。各Rは、H、シロキシ基又は1価のヒドロカルビル基、例えば、アルキル、アルケニル、アリール、又はアラルキル基である。Rに好適なアルキル基の例としては、1〜8個の炭素原子、あるいは1〜4個の炭素原子のアルキル基、例えば、Me、Et、Pr、及びBuが挙げられる。Rに好適なアルケニル基としては、2〜8個の炭素原子のアルケニル基、例えば、Vi及びヘキセニルが挙げられる。Rに好適なアリール基としては、Phが挙げられる。Rは、ハロゲン原子、例えば、Cl、Br、F、又はI;あるいはCl又はBr;あるいは、Clである。
【0018】
好適なハロシランキャッピング剤の例としては、ジメチルハイドロジェンクロロシラン、ジメチルヘキセニルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、メチルフェニルビニルクロロシラン、ジメチルビニルブロモシラン、トリメチルブロモシラン、ジフェニルメチルブロモシラン、ジメチルフェニルブロモシラン、メチルフェニルビニルブロモシラン及びこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、ハロシランキャッピング剤は、ジメチルハイドロジェンクロロシラン、ジメチルヘキセニルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、メチルフェニルビニルクロロシラン、ジメチルビニルブロモシラン、トリメチルブロモシラン、ジメチルフェニルブロモシラン、メチルフェニルビニルブロモシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。あるいは、ハロシランキャッピング剤は、ジメチルハイドロジェンクロロシラン、ジメチルヘキセニルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルブロモシラン、トリメチルブロモシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0019】
あるいは、成分Bは、アルケニル官能性ハロシランキャッピング剤であってもよい。アルケニル官能性ハロシランキャッピング剤は、一般式(III):RSiRを有してもよく、式中、各Rは上記の通りであり、各Rは、H、シロキシ基又は1価のヒドロカルビル基であり、各Rはアルケニル基である。各Rは、H、シロキシ基又は1価のヒドロカルビル基、例えば、アルキル、アルケニル、アリール、又はアラルキル基である。Rに好適なアルキル基の例としては、1〜8個の炭素原子、あるいは1〜4個の炭素原子のアルキル基、例えば、Me、Et、Pr、及びBuが挙げられる。Rに好適なアリール基としては、Phが挙げられる。R及び/又はRに好適なアルケニル基としては、2〜8個の炭素原子のアルケニル基、例えば、Vi及びヘキセニルが挙げられる。あるいは、各Rは、H、アルキル基、又はアリール基であってもよい。好適なアルケニル官能性ハロシランキャッピング剤の例としては、ジメチルヘキセニルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルフェニルビニルクロロシラン、ジメチルビニルブロモシラン、メチルフェニルビニルブロモシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、アルケニル官能性ハロシランキャッピング剤は、ジメチルヘキセニルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジメチルビニルブロモシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。あるいは、アルケニル官能性ハロシランキャッピング剤は、ジメチルビニルクロロシランであってもよい。
【0020】
本明細書に記載の方法で添加されるキャッピング剤の量は、成分(A)として選択されるMQ樹脂の(RO)基含有量及び選択されるキャッピング剤などの様々な要因に依存する。しかしながら、キャッピング剤の量は、成分(A)中の(RO)基1モル当たり0.05〜5モル、あるいは0.1〜2モル、あるいは0.2〜1モルのキャッピング剤を提供するのに十分であってもよい。あるいは、キャッピング剤の量は、成分(A)1重量部当たり0.01〜0.50重量部のキャッピング剤であってもよい。あるいは、キャッピング剤の量は、成分(A)1重量部当たり0.05〜0.3、あるいは0.10〜0.20重量部の範囲の成分(B)であってもよい。
【0021】
極性有機化合物(成分C)は、アルコール、エステル、ケトン、アミド、アミン、カルボン酸、又はこれらの組み合わせであってもよい。好適なアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、アリルアルコール、n−プロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、イソブチルアルコール、メチルイソプロピルカルビノール、n−ブチルアルコール、ジエチルカルビノール、sec−アミルアルコール、1−クロロ−2−プロパノール、sec−ブチルカルビノール、エチレンクロロヒドリン、イソアミルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、2−クロロ−1−プロパノール、3−ヘキサノール、メチルイソブチルカルビノール、n−アミルアルコール、シクロペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−ブロモエタノール、ジ−n−プロピルカルビノール、n−へキシルアルコール、2−ヘプタノール、2−メチルシクロヘキサノール、フルフリルアルコール、4−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、シクロヘキサノール、トリクロロエチルアルコール、ラウリルアルコール、シンナミルアルコール、α−テルピネオール、o−トリルカルビノール、ミリスチルアルコール、メントール、アニシルアルコール、p−トリルカルビノール、トリフェニルカルビノール、ボルネオ−ル、ジイソブチルカルビノール、n−ヘプチルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、2−オクタノール、シクロヘキシルカルビノール、2,3−ジクロロ−1−プロパノール、2−エチル−1−ヘキサノール、n−オクチルアルコール、メチルフェニルカルビノール、ベンジルアルコール、n−ノニルアルコール、m−トリルカルビノール(tolycarbinol)、β−フェニルエチルアルコール、エチルフェニルカルビノール、n−デシルアルコール、γ−フェニルプロピルアルコール、ベンゾヒドロール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。γあるいは、極性有機化合物は、1〜6個の炭素原子の1価アルコールであってもよい。あるいは、1価アルコールは、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0022】
あるいは、極性有機化合物は、エステル、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、又はこれらの組み合わせであってもよい。あるいは、極性有機化合物は、ケトン、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0023】
成分Cは、MQ樹脂中の(RO)基とキャッピング剤のR部分の反応の変換率を、同じ方法で成分Cがない場合と比べて改善するのに十分な量で存在する。1つの代表的な実施形態において、成分Cの量は、成分Aの(RO)基1モル当たり0.005〜5モルの成分Cを提供するのに十分な量である。あるいは、成分Cの量は、成分Aの(RO)基1モル当たり0.005〜0.5モルの成分Cを提供するのに十分な量である。あるいは、成分Cの量は、成分Aの(RO)基1モル当たり0.01〜0.2モルの成分Cを提供するのに十分な量である。あるいは、成分Cの量は、成分A、B、C、D、及びEの総重量を基準にして、0.1%〜1.5%であってもよい。
【0024】
触媒(例えば、HCl又はHBr)として作用する成分(例えば、酸)が、キャッピングの間にその場(in situ)で生成する場合があることから、酸触媒のような縮合触媒(成分D)の添加は、任意選択である。酸触媒は、HCl、HBr、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カルボン酸、又は強酸性イオン交換樹脂であってもよい。強酸触媒は、市販されており、例えば、Amberlyst15として販売されている強酸性イオン交換樹脂である。縮合触媒の量は、成分Bとして選択されるキャッピング剤の種類、及び成分Aの(RO)含有量などの様々な要因に依存する。ただし、存在する場合、成分Dの量は、成分A、B、C、D、及びEの総重量を基準にして、10ppm〜10,000ppmであってもよい。あるいは、成分Dは、同じ基準で、50ppm〜5,000ppm、あるいは100ppm〜2,500ppmであってもよい。
【0025】
上記のように、成分Aは、成分Aが任意の他の成分と組み合わされる前に、溶媒(成分E)の全部又は一部に溶解されてもよい。例えば、成分Aは、溶媒中で調製されてもよい。成分Eに好適な有機溶媒の例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、若しくはこれらの組み合わせなどの芳香族炭化水素、又はヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、若しくはこれらの組み合わせなどの脂肪族炭化水素で例証される炭化水素液体が挙げられる。あるいは、有機溶媒は、ナフサ又はミネラルスピリットなどの炭化水素混合物であってもよい。あるいは、有機溶媒は、クロロカーボンのようなハロゲン化炭化水素であってもよい。あるいは、成分Eは、成分Aと非反応性のポリオルガノシロキサン溶媒を含んでもよい。有用なポリオルガノシロキサン溶媒の例としては、限定するものではないが、ヘキサメチルジシロキサンのような直鎖シロキサン、並びにオクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンのような環状シロキサンが挙げられる。選択される溶媒の量は、組み合わせたときの成分の粘度及び方法を実施するために選択された装置の操作能力などの種々の要因に依存する。ただし、存在する場合、溶媒の量は、成分A及びEの総重量を基準にして5%〜90%の範囲であってもよい。
【0026】
本明細書に記載の方法の工程を実施するために、様々な種類の反応容器を使用してもよい。1つの代表的実施形態において、反応容器は、撹拌器、撹拌パドル、又はその他の混合手法を用いて混合される回分又は半回分式反応器である。あるいは、反応容器の内容物は、一連の混合ループ及び混合チャンバを用いて混合されてもよい。反応容器には、不活性ガスパージも取り付けられてよい。不活性ガスパージは、窒素、アルゴン、又は反応容器の内容物と非反応性であるその他の不活性ガスを含んでもよい。
【0027】
あるいは、連続混合装置を使用できる。連続混合装置は、成分が装置を通過する際に、成分を連続的に混合、加熱、及び任意選択的に脱揮発分できる任意の装置であってもよい。連続混合装置の例は、脱揮押出機である。脱揮押出機は、一軸でも、二軸押出機のような多軸押出機でもよい。
【実施例】
【0028】
実施例は、本発明のいくつかの代表的な実施態様を説明することを意図しており、本請求項に記載された本発明の範囲を限定するかのように解釈してはならない。比較例は、非発明的な実施例である。
【0029】
「MQ−1」は、第1のバッチのMQ樹脂(71%)と溶媒(29%)との溶液を指し、溶媒は、キシレンである。MQ樹脂は、式(MeSiO1/2)のM単位と式(SiO4/2)のQ単位とを0.75/1.0のM/Qモル比で有し、21,295ダルトンの重量平均分子量(Mw)、及び溶液の重量を基準にして2.85%のシラノール含有量を有する、トリメチルシリル化シリカポリマーである。「MQ−2」は、第2のバッチのMQ樹脂(72%)とキシレン(28%)との溶液を指す。MQ樹脂は、式(MeSiO1/2)のM単位と式(SiO4/2)のQ単位とを0.75/1.0のM/Qモル比で有し、20,260ダルトンのMw、及び溶液の重量を基準にして2.9%のシラノール含有量を有する、トリメチルシリル化シリカポリマーである。「MQ−3」は、第3のバッチのMQ樹脂(72%)とキシレン(28%)との溶液を指す。MQ樹脂は、式(MeSiO1/2)のM単位と式(SiO4/2)のQ単位とを0.75/1.0のM/Qモル比で有し、21,186ダルトンのMw、及び溶液の重量を基準にして3%のシラノール含有量を有する、トリメチルシリル化シリカポリマーである。「MQ−4」は、第4のバッチのMQ樹脂(71%)とキシレン(29%)との溶液を指す。MQ樹脂は、式(MeSiO1/2)のM単位と式(SiO4/2)のQ単位とを0.75/1.0のM/Qモル比で有し、20,849ダルトンのMw、及び溶液の重量を基準にして2.8%のシラノール含有量を有する、トリメチルシリル化シリカポリマーである。「MQ−5」は、第5のバッチのMQ樹脂(72%)とキシレン(28%)との溶液を指す。MQ樹脂は、式(MeSiO1/2)のM単位と式(SiO4/2)のQ単位とを0.75/1のM/Qモル比で有し、19,724ダルトンのMw、及び溶液の重量を基準にして2.8%のシラノール含有量を有する、トリメチルシリル化シリカポリマーである。「MQ−6」は、第6のバッチのMQ樹脂(72%)とキシレン(28%)との溶液を指す。MQ樹脂は、式(MeSiO1/2)のM単位と式(SiO4/2)のQ単位とを0.75/1のM/Qモル比で有し、20,645ダルトンのMw、及び溶液の重量を基準にして2.9%のシラノール含有量を有する、トリメチルシリル化シリカポリマーである。「MQ−7」は、第6のバッチのMQ樹脂(72%)とキシレン(28%)との溶液を指す。MQ樹脂は、式(MeSiO1/2)のM単位と式(SiO4/2)のQ単位とを0.75/1のM/Qモル比で有し、21,555ダルトンのMw、及び溶液の重量を基準にして2.8%のシラノール含有量を有する、トリメチルシリル化シリカポリマーである。「MeViSiCl」はジメチルビニルクロロシランである。使用した反応容器は、撹拌棒、凝縮器、及び温度プローブを取り付けた3つ口フラスコであった。
【0030】
実施例1では、2.44gの2−プロパノールを、フラスコ内の499gのMQ−1に撹拌下で添加し、その後すぐに50gのMeViSiClを添加した。次いで、得られた混合物を75℃で4時間反応させた。140℃及び大気圧で加熱することによって、未反応のMeViSiCl及び揮発性副生成物を反応混合物からストリッピングした。次いで、得られたキャップされたMQ樹脂溶液の試料を、FTIRによってビニル含有量について分析し、反応の程度を判定した。ビニル濃度は、溶液中のキャップされたMQ樹脂固体を基準にして、1.84%と判定された。
【0031】
比較例1では、50gのMeViSiClを、フラスコ内の497gのMQ−1に撹拌下で添加した。得られた混合物を、75℃で4時間反応させた。137℃及び大気圧で加熱することによって、未反応のMeViSiCl及び揮発性副生成物を反応混合物からストリッピングした。ストリッピングは、キャップされたMQ樹脂のキシレン(MQ−1から存在した)溶液が生成した条件下で施した。次いで、得られたキャップされたMQ樹脂溶液の試料を、FTIRによってビニル含有量について分析し、反応の程度を判定した。ビニル濃度は、溶液中のキャップされたMQ樹脂固体を基準にして、1.02%と判定された。
【0032】
実施例1は、極性有機溶媒、すなわち、2−プロパノールを、加工助剤として添加することによって、比較例1で用いた条件と同じキャッピング条件下で反応変換率が改善されることを例証する。
【0033】
実施例2では、1.0gの2−プロパノールを、フラスコ内の496gのMQ−2に撹拌下で添加し、その後すぐに50gのMeViSiClを添加した。次いで、得られた混合物を75℃で4時間反応させた。135℃及び大気圧で加熱することによって、未反応のMeViSiCl及び揮発性副生成物を反応混合物からストリッピングした。次いで、得られたキャップされたMQ樹脂溶液の試料を、FTIRによってビニル含有量について分析し、反応の程度を判定した。ビニル濃度は、溶液中のキャップされたMQ樹脂固体を基準にして、1.85%と判定された。
【0034】
比較例2では、50gのMeViSiClを、フラスコ内の497gのMQ−2に撹拌下で添加した。得られた混合物を75℃で4時間反応させた。136℃及び大気圧で加熱することによって、未反応のMeViSiCl及び揮発性副生成物を反応混合物からストリッピングした。次いで、得られたキャップされたMQ樹脂溶液の試料を、FTIRによってビニル含有量について分析し、反応の程度を判定した。ビニル濃度は、溶液中のキャップされたMQ樹脂固体を基準にして、1.70%と判定された。
【0035】
実施例2は、2−プロパノールを加工助剤として添加することによって、比較例2で用いた条件と同じキャッピング条件下で反応変換率が改善されることを再度例証する。
【0036】
実施例3では、酸触媒を添加した。この実施例では、2.5gの0.1N HCl(2−プロパノール溶液)を、500gの撹拌MQ−3に添加し、その後すぐに49.5gのMeViSiClをフラスコに添加した。次いで、得られた混合物を75℃で4時間反応させた。次いで、135℃及び大気圧で加熱することによって、未反応のMeViSiCl及び揮発性副生成物を反応混合物からストリッピングした。次いで、得られたキャップされたMQ樹脂溶液を、FTIRによってビニル含有量について分析し、反応の程度を判定した。ビニル濃度は、溶液中のキャップされたMQ樹脂固体を基準にして、1.78%と判定された。
【0037】
実施例4では、2.5gの0.1N HCl(2−プロパノール溶液)を、500gの撹拌MQ−4に添加し、その後すぐに49.5gのMeViSiClをフラスコに添加した。次いで、得られた混合物を75℃で4時間反応させた。反応工程の完了後、135℃及び大気圧で加熱することによって、未反応のMeViSiCl及び揮発性副生成物を反応混合物からストリッピングした。30gの脱イオン水及び36gのキシレンを添加して反応混合物を洗浄した後、ストリッピング工程で水をトラップし、残留HClを除去することによって、キャップされたMQ樹脂溶液を回収した。次いで、得られたキャップされたMQ樹脂溶液の試料を、(FTIRによって)ビニル含有量について分析し、反応の程度を判定した。ビニル濃度は、溶液中のキャップされたMQ樹脂固体を基準にして、1.76%と判定された。
【0038】
実施例5では、2.5gの2−プロパノールを、500gの撹拌MQ−5に添加し、その後すぐに49.5gのMeViSiClをフラスコに添加した。次いで、得られた混合物を75℃で4時間反応させた。反応工程の完了後、反応混合物を130℃に加熱し、更に2時間還流した。次いで、反応混合物を135℃でストリッピングして、未反応のMeViSiCl及び揮発性副生成物を除去した。次いで、得られたキャップされたMQ樹脂の試料を、(FTIRによって)ビニル含有量について分析し、反応の程度を判定した。ビニル濃度は、キャップされたMQ樹脂固体1g当たり、1.92%と判定された。
【0039】
実施例6〜12では、樹脂MQ−6をMeViSiClと組み合わせ、アルコール化合物の不在又は存在下で、75℃で4時間反応させた。反応工程の完了後、反応混合物を130℃に加熱し、更に2時間還流した。次いで、反応混合物を135℃でストリッピングして、未反応のMeViSiCl及び揮発性副生成物を除去した。次いで、得られたキャップされたMQ樹脂の試料を、(FTIRによって)ビニル含有量について分析し、反応の程度を判定した。結果を下記の表1にまとめる。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例13〜16では、樹脂MQ−7をMeViSiClと組み合わせ、極性添加剤の不在又は不在下で、75℃で4時間反応させた。反応工程の完了後、反応混合物を130℃に加熱し、更に2時間還流した。次いで、反応混合物を135℃でストリッピングして、未反応のMeViSiCl及び揮発性副生成物を除去した。次いで、得られたキャップされたMQ樹脂の試料を、(FTIRによって)ビニル含有量について分析し、反応の程度を判定した。結果を下記の表2にまとめる。
【0042】
【表2】
【0043】
MQ樹脂は、他の種類のポリオルガノシロキサン樹脂(例えば、DT、MDT、DTQ、又はMQ/T樹脂)と比べて大きい立体障害が存在するため、MQ樹脂のキャッピングは、このような他の種類のポリオルガノシロキサン樹脂よりも困難となり得ると考えられる。実施例に例証されるように、実際には、極性有機化合物が加工助剤として作用して、キャップされたMQ型シリコーン樹脂を生成するキャッピング反応を促進する。具体的には、極性有機化合物の使用は、反応変換率を改善する。
【0044】
独立請求項及び従属請求項(単一項従属及び多数項従属の両方とも)の全ての組合せの主題が明白に想到されるが、簡潔にするために詳細には記載されていない。本開示は例示的に記載したものであり、使用されている用語は、限定ではなく説明の言葉としての性質を持つものであることが理解されるべきである。前述した教示に照らして本開示の多くの修正形態及び変形形態が可能であり、本開示は、具体的に記述されているものとは異なる方法で実施することができる。
【0045】
全ての比、パーセンテージ及びその他の量は、特に指定のない限り、重量による。冠詞「a」、「an」、及び「the」はそれぞれ、明細書の文脈により別途記載のない限り、1つ又はそれ以上を指す。本明細書で使用される略語は以下の表3に定義される。
【0046】
【表3】
【0047】
「アルキル」とは、非環式、分岐状又は非分岐状、飽和1価炭化水素基を意味する。アルキル基の例として、Me、Et、Pr、1−メチルエチル、Bu、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、ペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、オクチル、ノニル及びデシル、−−並びに6個以上の炭素原子を有する他の分岐状飽和1価炭化水素基もまた挙げられる。アルキル基は少なくとも1個の炭素原子を有する。あるいは、アルキル基は1〜12個の炭素原子、あるいは1〜10個の炭素原子、あるいは1〜6個の炭素原子、あるいは1〜4個の炭素原子、あるいは1〜2個の炭素原子、あるいは1個の炭素原子を有してもよい。
【0048】
「アラルキル」及び「アルカリール」はそれぞれ、側鎖及び/又は末端アリール基を有するアルキル基、又は側鎖アルキル基を有するアリール基を指す。例示的なアラルキル基には、ベンジル、トリル、キシリル、フェニルエチル、フェニルプロピル、及びフェニルブチルが挙げられる。アラルキル基は、少なくとも6個の炭素原子を有する。単環アラルキル基は6〜12個の炭素原子、あるいは6〜9個の炭素原子、あるいは6〜7個の炭素原子を有してもよい。多環アラルキル基は7〜17個の炭素原子、あるいは7〜14個の炭素原子、あるいは9〜10個の炭素原子を有してもよい。
【0049】
「アルケニル」は、非環状、分枝状、又は非分枝状の不飽和の、2重結合を有する1価炭化水素基を意味する。アルケニル基は、Vi、アリル、プロペニル、及びヘキセニルを含む。アルケニル基は少なくとも2個の炭素原子を有する。あるいは、アルケニル基は、2〜12個の炭素原子、あるいは2〜10個の炭素原子、あるいは2〜6個の炭素原子、あるいは2〜4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有してもよい。
【0050】
「アルキニル」は、非環状、分枝状、又は非分枝状の不飽和の、3重結合を有する1価炭化水素基を意味する。アルキニル基は、エチニル及びプロピニルを含む。アルキニル基は、少なくとも2個の炭素原子を有する。あるいは、アルキニル基は、2〜12個の炭素原子、あるいは2〜10個の炭素原子、あるいは2〜6個の炭素原子、あるいは2〜4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有してもよい。
【0051】
「アリール」は環状、完全不飽和の炭化水素基を意味する。アリールには、以下に限定されないが、Ph及びナフチルによって例示される。アリール基は、少なくとも5個の炭素原子を有する。単環式アリール基は5〜9個の炭素原子、あるいは6〜7個の炭素原子、及びあるいは6個の炭素原子を有し得る。多環アリール基は、10〜17個の炭素原子、あるいは10〜14個の炭素原子、あるいは12〜14個の炭素原子を有してもよい。
【0052】
「炭素環」及び「炭素環式」は、炭化水素環を指す。炭素環は単環式であってもよく、又は代替として、縮合環、架橋環、又はスピロ多環式環であってもよい。炭素環は、少なくとも3個の炭素原子を有する。単環炭素環は、3〜9個の炭素原子、あるいは4〜7個の炭素原子、あるいは5〜6個の炭素原子を有してもよい。多環式炭素環は、7〜17個の炭素原子、代替的には7〜14個の炭素原子、及び、代替的には9〜10個の炭素原子を有してもよい。炭素環は飽和又は部分的に不飽和であってもよい。
【0053】
「シクロアルキル」は、炭素環を含む飽和炭化水素基を指す。シクロアルキル基は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びメチルシクロヘキシルによって例示される。シクロアルキル基は、少なくとも3個の炭素原子を有する。単環シクロアルキル基は、3〜9個の炭素原子、あるいは4〜7個の炭素原子、あるいは5〜6個の炭素原子を有してもよい。多環シクロアルキル基は、7〜17個の炭素原子、あるいは7〜14個の炭素原子、あるいは9〜10個の炭素原子を有してもよい。
【0054】
様々な実施形態の特定の特徴又は態様を記載するために本明細書が依拠するマーカッシュ群に関して、他の全てのマーカッシュ要素から独立したそれぞれのマーカッシュ群の各要素から、異なる、特別な、及び/又は予期しない結果が得られる可能性があることが理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個別に、及び/又はマーカッシュ群の任意の他の1つ若しくはそれ以上の要素と組み合わせて依拠されてもよく、各要素は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態のための適切な根拠を提供する。例えば、マーカッシュ群「アルキル、アリール、及び炭素環式」の開示には、その要素である個々のアルキル、部分集合であるアルキル及びアリール、並びに本明細書に包含される任意の他の個々の要素及び部分集合が含まれる。
【0055】
また、本開示の種々の実施形態を記載する際に依存する任意の範囲及び部分範囲が、添付の特許請求の範囲内に個別かつ集合的に入ることも理解されるべきであり、またかかる値が明白に記載されていない場合でも、全体及び/又は部分値を含む全ての範囲を記載し、考慮することが理解される。列挙された範囲及び部分範囲は、本開示の種々の実施形態を十分に記述しかつ可能にし、そのような範囲及び部分範囲は更に、関連する2分の1、3分の1、4分の1、5分の1などまで詳述されてもよい。ほんの一例として、範囲「200〜1400」は、下の方の3分の1、すなわち、200〜600、中間の3分の1、即ち、600〜1000、及び上の方の3分の1、即ち、1000〜1400更に詳述でき、これらは、個別的かつ集合的に添付の特許請求の範囲内であり、添付の特許請求の範囲内の特定の実施態様が個別的及び/又は集合的に依拠することがあり、適切な根拠を提供する。更に、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「以下」などの範囲を定義又は修飾する用語に関して、かかる用語が部分範囲及び/又は上限又は下限を含むことを理解されたい。別の例として、「少なくとも0.1%」の範囲は、本質的に、0.1%〜35%の部分範囲、10%〜25%の部分範囲、23%〜30%の部分範囲などを含み、各部分範囲は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施態様が個別的及び/又は集合的に依拠することがあり、適切な根拠を提供する。最終的には、開示された範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態が依拠することがあり、適切な根拠を提供する。例えば、範囲「1〜9」は、様々な個々の整数、例えば、3、並びに小数点(又は分数)を含む個別の数、例えば、4.1を含み、これは添付の特許請求の範囲内の特定の実施態様が依拠することがあり、適切な根拠を提供する。