(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記還元剤が、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸アンモニウム、亜リン酸、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸アンモニウム、ギ酸、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸アンモニウム及び/又はホルムアルデヒドである請求項8に記載のパラジウムめっき液。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲で任意に変形して実施することができる。
【0018】
<特定ピリジニウム化合物>
本発明のパラジウムめっき液は、少なくとも、可溶性パラジウム塩をパラジウム源として含有し、更に、以下に示す「特定ピリジニウム化合物」を含有することが必須である。
「特定ピリジニウム化合物」とは、1位の窒素原子にアルキル基が結合され、2位ないし6位の1個ないし5個が、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、アルコキシスルホニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれた1種又は2種以上の特定置換基で置換されたピリジニウム化合物をいう。
【0019】
「特定ピリジニウム化合物」においては、窒素原子にアルキル基(−R
1)が結合されていることによって、該窒素原子はプラス電荷を有し、ピリジニウム化合物となっている。本発明においては、「窒素原子に結合してピリジニウム化合物となる結合原子」から水素原子は除かれる。窒素原子に結合している結合原子が水素原子の場合には、前記した本発明の効果が得られ難い。
【0020】
窒素原子に結合したアルキル基(−R
1)は、直鎖アルキル基又は分岐アルキル基の何れでもよく、炭素数も特に限定はないが、前記した本発明の効果を発揮し易く、良好なめっき性能、入手の容易さ等の点から、炭素数1〜5個のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4個のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜3個が特に好ましく、炭素数1個又は2個が更に好ましい。
炭素数の多過ぎるアルキル基が結合していると、パラジウム皮膜のピンホールが増加したり、パラジウムの析出速度が低下したり、パラジウムの外観不良が発生したり、入手が困難であったりする場合がある。
【0021】
また、窒素原子に結合している基がアルキル基(−R
1)ではなく、水素原子である場合には、前記した本発明の効果が発揮されず、特に、パラジウムめっき液中のパラジウム濃度が高濃度の場合、高温度でめっき処理した場合等に、外観不良を発生させる場合がある。
【0022】
本発明における「特定ピリジニウム化合物」は、パラジウムめっき液中で上記化学構造を有していることが必須であり、パラジウムめっき液中で上記化学構造を有するものに変化したものでもよい。パラジウムめっき液の調液の際に添加する物質の化学構造については特に限定はないが、上記化学構造を有しているものを添加する(用いて調液する)ことが好ましい。
【0023】
本発明のパラジウムめっき液中に含有される「特定ピリジニウム化合物」の陰イオンについては特に限定はないが、具体的には、例えば、硫酸イオン、硝酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等が挙げられる。陰イオンの交換(塩交換)が、パラジウムめっき液中で起こっていてもよく、従って、調液時に配合された(添加された)可溶性パラジウム塩、還元剤、電導塩、緩衝剤塩等の陰イオンと塩交換したものも挙げられる。パラジウムめっき液中の組成として上記のものが本発明の範囲に含まれる。
ただし、上記陰イオン(硫酸イオン、硝酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等)を有しているものを添加する(を用いて調液する)ことが好ましい。
【0024】
本発明における「特定ピリジニウム化合物」は、2位ないし6位のうちの1個ないし5個の何れかの個数の箇所が、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、アルコキシスルホニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基及びシアノ基からなる群より選ばれた1種又は2種以上の置換基で置換されているものであることが必須である。本発明においては、かかる置換基を「特定置換基」という。
すなわち、本発明における「特定ピリジニウム化合物」は、6員環であるピリジン環(ピリジニウム環)において、窒素原子は1位であるので、窒素原子以外の環を構成する炭素原子5個に結合した5個の水素のうち、1個ないし5個の何れかの個数が、異なっていてもよい上記の特定置換基で置換されているものである。
【0025】
特定置換基としてのアルキル基は、直鎖アルキル基又は分岐アルキル基の何れでもよく、更にアルキル基以外の置換基を有していてもよく、炭素数も特に限定はないが、本発明の前記効果をより発揮するために、炭素数1〜6個のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5個のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4個のアルキル基、すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が特に好ましい。
炭素数の多過ぎるアルキル基が結合していると、パラジウム析出速度の低下や、パラジウム皮膜の外観不良を発生する場合がある。
【0026】
特定置換基としてのアリール基は、アルキル基等の置換基を有していてもよく、特に限定はないが、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
【0027】
特定置換基としてのカルボキシ基は、「−COOH」で表される基であり、「アルコキシカルボニル基」は、「−COOR
11」で表される基であり、カルボン酸エステルの残基である。上記式中で、R
11は、アルキル基又はアリール基を示し、好ましいものは、前記特定置換基としてのアルキル基やアリール基と同様であり、特に好ましくはメチル基である。
【0028】
特定置換基としてのスルホ基は、「−SO
3H」で表される基であり、スルホン酸基とも言われる。
特定置換基としてのアルコキシスルホニル基は、以下の一般式(a)で表される基であり、スルホン酸エステル残基である。
【0029】
【化1】
[一般式(a)中、R
12は、アルキル基又はアリール基を示す。]
【0030】
一般式(a)中、R
12は、アルキル基又はアリール基を示すが、好ましいもの等は、前記特定置換基としてのアルキル基やアリール基と同様であり、更に好ましくはメチル基である。
【0031】
特定置換基としてのアミノ基は、「−NH
2」で表される基であり、アルキルアミノ基は、「−NHR
13」で表される基であり、ジアルキルアミノ基は、「−NR
14R
15」で表される基である。
上記式中で、R
13、R
14、R
15は、それぞれ異なっていてもよいアルキル基又はアリール基を示し、好ましいものは、前記特定置換基としてのアルキル基やアリール基と同様であり、特に好ましくはメチル基である。
【0032】
特定置換基としてのシアノ基は、「−CN」で表される基である。
【0033】
上記特定置換基は、本願発明の効果を損なわない範囲において、上記特定置換基に更に置換基を有していてもよいが、前記した本発明の効果を発揮し易く、良好なめっき性能、入手の容易さ等の点から、限定される訳ではないが、上記特定置換基は更に置換基を有していないことが特に好ましい。
【0034】
6員環であるピリジン環(ピリジニウム環)の2位ないし6位には、本願発明の効果を損なわない範囲において、前記特定置換基以外の置換基を有していてもよいが、前記した本発明の効果を発揮し易く、良好なめっき性能、入手の容易さ等の点から、「前記特定置換基以外の置換基」は、限定される訳ではないが有していないことが特に好ましい。
【0035】
前記特定置換基の中でも、アルキル基、カルボキシ基、アルコキシスルホニル基及びアミノ基からなる群より選ばれた1種又は2種以上の置換基が置換しているものが、前記した本発明の効果を発揮し易く、良好なめっき性能、入手の容易さ等の点から特に好ましい。
【0036】
更に、本発明のパラジウムめっき液は、ピリジニウム環の2位ないし4位の1個ないし3個が、1種又は2種以上の上記特定置換基で置換されたピリジニウム化合物を含有することが、前記効果を更に好適に発揮する点で好ましい。
すなわち、言い換えれば、ピリジニウム環の2位、3位又は4位のうちの1個ないし3個の何れかの個数の箇所が、1種又は2種以上の上記特定置換基で置換されたピリジニウム化合物を含有することが好ましい。
より好ましくは、ピリジニウム環の2位ないし4位のうちの1個又は2個(特に好ましくは1個)が、1種又は2種(特に好ましくは1種)の上記特定置換基で置換されたピリジニウム化合物を含有するものである。
ピリジニウム環には、特定置換基以外の置換基を有していてもよいが、有していないことが好ましい。
【0037】
特に好ましいピリジニウム化合物は、下記一般式(1)で表されるものである。
【0038】
【化2】
[一般式(1)中、R
1はアルキル基を示し、R
2、R
3及びR
4は、互いに異なっていてもよい、水素原子、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、アルコキシスルホニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基又はシアノ基を示し、ただし、R
2、R
3及びR
4の全てが水素原子である場合を除く。]
【0039】
窒素原子に結合したアルキル基(R
1)は、直鎖アルキル基又は分岐アルキル基の何れでもよく、炭素数も特に限定はないが、炭素数1〜6個のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5個のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4個のアルキル基、すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が特に好ましい。
炭素数の多過ぎるアルキル基が結合していると、前記した本発明の効果が発揮されず、パラジウム皮膜のピンホールが増加したり、パラジウムの析出速度が低下したり、パラジウムの外観不良が発生したり、入手が困難であったりする場合がある。
また、窒素原子に結合している基がアルキル基ではなく、水素原子である場合には、前記した本発明の効果が発揮されず、特に、パラジウムめっき液中のパラジウム濃度が高濃度の場合、高温度でめっき処理した場合等に、外観不良を発生させる場合がある。
【0040】
R
2、R
3及びR
4は、互いに異なっていてもよい、水素原子、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、アルコキシスルホニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基又はシアノ基を示し、ただし、R
2、R
3及びR
4の全てが水素原子である場合は除かれる。
R
2、R
3及びR
4としては、「より好ましい」、「特に好ましい」等として前記した「特定置換基」が、前記効果を更に好適に発揮する点でより(特に)好ましい。
【0041】
一般式(1)の陰イオン(対イオン)については特に限定はないが、具体的には、例えば、好ましいものとして、硫酸イオン、硝酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等、前記したものが挙げられる。
一般式(1)の陰イオンは、本発明のパラジウムめっき液中に存在する形態を特定するものであり、調液時に配合された(添加された)可溶性パラジウム塩、還元剤、電導塩、緩衝剤塩等の陰イオンと塩交換したものも好ましい。
ただ、本発明のパラジウムめっき液の調液の際に、溶解(配合、添加)させる原料の陰イオン(対イオン)として、硫酸イオン、硝酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等が好ましい。
上記の特定ピリジニウム化合物についての記載は、本発明のパラジウムめっき液中に存在する形態を特定するものである。ただし、本発明のパラジウムめっき液の調液の際に、溶解させる原料として、上記の特定ピリジニウム化合物を用いることが好ましい。
【0042】
特定ピリジニウム化合物を含有することにより、ピンホールのないパラジウム皮膜を実現できる。また、特定ピリジニウム化合物を含有することにより、従来のパラジウム皮膜よりも飛躍的に優れた高耐熱性を有することから、従来のパラジウム皮膜の膜厚を大幅に薄膜化可能となり、また、パラジウム皮膜上に形成する金めっき皮膜を大幅に薄膜化可能となり、大幅なコストダウンが実現される。
【0043】
「ピンホール試験」において、「膜厚0.03μmのパラジウム皮膜」でピンホールのないパラジウム皮膜を実現できる本発明のパラジウムめっき液を用いると、それより薄いパラジウム皮膜であってもピンホールの相対的に少ないものが得られ、それより厚いパラジウム皮膜であれば、更にピンホールのないものが得られて更に信頼性が増す。
また、金皮膜は一般にピンホールができ難く、パラジウム皮膜は一般にピンホールができ易い。従って、ピンホールのでき難い本発明のパラジウムめっき液を用いると、金皮膜でパラジウム皮膜のピンホールをカバーする必要がなくなり、金皮膜の膜厚を下げることができ、コストダウンが可能となる。
【0044】
本発明において、「ピンホール試験」は後述するが、「試験開始」から「試験開始後5分」までの全ての間、通電電流が小さいパラジウム皮膜を与えるパラジウムめっき液を優れたものとし、その間、常に通電電流が100μA以下であるような皮膜物性を与えるパラジウムめっき液を優れたパラジウムめっき液とする。
【0045】
本発明において、「耐熱性」は、実施例記載の方法で評価し、そのように評価したものとして定義する。
「耐熱性」は、電子部品の接点部材に必須の性能である。電子部品の接点部材は、半田接合やワイヤーボンディングで他部材と接合する必要があり、その接合工程には、必ず100℃から300℃の加熱工程が含まれ、また、この加熱工程も1回ではなく複数回存在することが多い。
この加熱工程により、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金等の金属は酸化され、半田接合不良や、接触抵抗の上昇、ワイヤーボンディング接合不良といった不良発生の原因となる。従って、この銅、ニッケル等の酸化を防止する目的で、金めっきやパラジウムめっき等の貴金属めっきを施し表面保護層を形成することが重要である。
【0046】
しかしながら、金めっき皮膜やパラジウムめっき皮膜等の貴金属めっき皮膜を形成していたとしても、貴金属めっき皮膜にピンホールが存在すると、上記加熱工程により貴金属めっき皮膜の下地である銅、ニッケル等が、該ピンホールから最表面に拡散し、酸化され貴金属めっき皮膜を施した効果がなくなってしまうことがある。
そのため、貴金属めっき皮膜におけるピンホールの存在は、電子部品の接点部材に対して、その耐熱性を有するか否かの指標となる。金めっき皮膜やパラジウムめっき皮膜等の貴金属めっき皮膜のピンホールが少ないということは、優れた「耐熱性」を有しているということを表している。
【0047】
上記の特定ピリジニウム化合物の好ましい具体例としては、例えば、
1−メチル−2−メチルピリジニウム、1−メチル−2−エチルピリジニウム、1−メチル−2−ブチルピリジニウム、1−メチル−2−スルホピリジニウム、1−メチル−2−メトキシスルホニルピリジニウム、1−メチル−2−アミノピリジニウム、1−メチル−2−カルボキシピリジニウム、1−メチル−2−メトキシカルボニルピリジニウム、1−メチル−2−フェニルピリジニウム、1−メチル−2−シアノピリジニウム等の2位置換のメチルピリジニウム;
1−エチル−2−メチルピリジニウム、1−エチル−2−エチルピリジニウム、1−エチル−2−ブチルピリジニウム、1−エチル−2−スルホピリジニウム、1−エチル−2−メトキシスルホニルピリジニウム、1−エチル−2−アミノピリジニウム、1−エチル−2−カルボキシピリジニウム、1−エチル−2−メトキシカルボニルピリジニウム、1−エチル−2−フェニルピリジニウム、1−エチル−2−シアノピリジニウム等の2位置換のエチルピリジニウム;
1−プロピル−2−メチルピリジニウム、1−プロピル−2−エチルピリジニウム、1−プロピル−2−ブチルピリジニウム、1−プロピル−2−スルホピリジニウム、1−プロピル−2−メトキシスルホニルピリジニウム、1−プロピル−2−アミノピリジニウム、1−プロピル−2−カルボキシピリジニウム、1−プロピル−2−メトキシカルボニルピリジニウム、1−プロピル−2−フェニルピリジニウム、1−プロピル−2−シアノピリジニウム等の2位置換のプロピルピリジニウム;
1−ブチル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−2−エチルピリジニウム、1−ブチル−2−ブチルピリジニウム、1−ブチル−2−スルホピリジニウム、1−ブチル−2−メトキシスルホニルピリジニウム、1−ブチル−2−アミノピリジニウム、1−ブチル−2−カルボキシピリジニウム、1−ブチル−2−メトキシカルボニルピリジニウム、1−ブチル−2−フェニルピリジニウム、1−ブチル−2−シアノピリジニウム等の2位置換のブチルピリジニウム;
1−メチル−3−メチルピリジニウム、1−メチル−3−エチルピリジニウム、1−メチル−3−ブチルピリジニウム、1−メチル−3−スルホピリジニウム、1−メチル−3−メトキシスルホニルピリジニウム、1−メチル−3−アミノピリジニウム、1−メチル−3−カルボキシピリジニウム、1−メチル−3−メトキシカルボニルピリジニウム、1−メチル−3−フェニルピリジニウム、1−メチル−3−シアノピリジニウム等の3位置換のメチルピリジニウム;
1−エチル−3−メチルピリジニウム、1−エチル−3−エチルピリジニウム、1−エチル−3−ブチルピリジニウム、1−エチル−3−スルホピリジニウム、1−エチル−3−メトキシスルホニルピリジニウム、1−エチル−3−アミノピリジニウム、1−エチル−3−カルボキシピリジニウム、1−エチル−3−メトキシカルボニルピリジニウム、1−エチル−3−フェニルピリジニウム、1−エチル−3−シアノピリジニウム等の3位置換のエチルピリジニウム;
1−プロピル−3−メチルピリジニウム、1−プロピル−3−エチルピリジニウム、1−プロピル−3−ブチルピリジニウム、1−プロピル−3−スルホピリジニウム、1−プロピル−3−メトキシスルホニルピリジニウム、1−プロピル−3−アミノピリジニウム、1−プロピル−3−カルボキシピリジニウム、1−プロピル−3−メトキシカルボニルピリジニウム、1−プロピル−3−フェニルピリジニウム、1−プロピル−3−シアノピリジニウム等の3位置換のプロピルピリジニウム;
1−ブチル−3−メチルピリジニウム、1−ブチル−3−エチルピリジニウム、1−ブチル−3−ブチルピリジニウム、1−ブチル−3−スルホピリジニウム、1−ブチル−3−メトキシスルホニルピリジニウム、1−ブチル−3−アミノピリジニウム、1−ブチル−3−カルボキシピリジニウム、1−ブチル−3−メトキシカルボニルピリジニウム、1−ブチル−3−フェニルピリジニウム、1−ブチル−3−シアノピリジニウム等の3位置換のブチルピリジニウム;
1−メチル−4−メチルピリジニウム、1−メチル−4−エチルピリジニウム、1−メチル−4−ブチルピリジニウム、1−メチル−4−スルホピリジニウム、1−メチル−4−メトキシスルホニルピリジニウム、1−メチル−4−アミノピリジニウム、1−メチル−4−カルボキシピリジニウム、1−メチル−4−メトキシカルボニルピリジニウム、1−メチル−4−フェニルピリジニウム、1−メチル−4−シアノピリジニウム等の4位置換のメチルピリジニウム;
1−エチル−4−メチルピリジニウム、1−エチル−4−エチルピリジニウム、1−エチル−4−ブチルピリジニウム、1−エチル−4−スルホピリジニウム、1−エチル−4−メトキシスルホニルピリジニウム、1−エチル−4−アミノピリジニウム、1−エチル−4−カルボキシピリジニウム、1−エチル−4−メトキシカルボニルピリジニウム、1−エチル−4−フェニルピリジニウム、1−エチル−4−シアノピリジニウム等の4位置換のエチルピリジニウム;
1−プロピル−4−メチルピリジニウム、1−プロピル−4−エチルピリジニウム、1−プロピル−4−ブチルピリジニウム、1−プロピル−4−スルホピリジニウム、1−プロピル−4−メトキシスルホニルピリジニウム、1−プロピル−4−アミノピリジニウム、1−プロピル−4−カルボキシピリジニウム、1−プロピル−4−メトキシカルボニルピリジニウム、1−プロピル−4−フェニルピリジニウム、1−プロピル−4−シアノピリジニウム等の4位置換のプロピルピリジニウム;
1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−エチルピリジニウム、1−ブチル−4−ブチルピリジニウム、1−ブチル−4−スルホピリジニウム、1−ブチル−4−メトキシスルホニルピリジニウム、1−ブチル−4−アミノピリジニウム、1−ブチル−4−カルボキシピリジニウム、1−ブチル−4−メトキシカルボニルピリジニウム、1−ブチル−4−フェニルピリジニウム、1−ブチル−4−シアノピリジニウム等の4位置換のブチルピリジニウム;
等が挙げられる。
【0048】
これらの特定ピリジニウム化合物は、前記した本発明の効果を発揮し易く、更に、良好なパラジウムめっき性能、水への溶解のし易さ、入手のし易さ、低コスト等の観点からも好ましい。
【0049】
それらの中でも、上記点等から、特に好ましい具体例としては、
1−メチル−2−メチルピリジニウム、1−メチル−2−エチルピリジニウム、1−メチル−2−ブチルピリジニウム、1−メチル−2−スルホピリジニウム、1−メチル−2−メトキシスルホニルピリジニウム、1−メチル−2−アミノピリジニウム、1−メチル−2−カルボキシピリジニウム等の2位置換のメチルピリジニウム;
1−エチル−2−メチルピリジニウム、1−エチル−2−エチルピリジニウム、1−エチル−2−ブチルピリジニウム、1−エチル−2−スルホピリジニウム、1−エチル−2−メトキシスルホニルピリジニウム、1−エチル−2−アミノピリジニウム、1−エチル−2−カルボキシルピリジニウム等の2位置換のエチルピリジニウム;
1−メチル−3−メチルピリジニウム、1−メチル−3−エチルピリジニウム、1−メチル−3−ブチルピリジニウム、1−メチル−3−スルホピリジニウム、1−メチル−3−メトキシスルホニルピリジニウム、1−メチル−3−アミノピリジニウム、1−メチル−3−カルボキシルピリジニウム等の3位置換のメチルピリジニウム;
1−エチル−3−メチルピリジニウム、1−エチル−3−エチルピリジニウム、1−エチル−3−ブチルピリジニウム、1−エチル−3−スルホピリジニウム、1−エチル−3−メトキシスルホニルピリジニウム、1−エチル−3−アミノピリジニウム、1−エチル−3−カルボキシルピリジニウム等の3位置換のエチルピリジニウム;
1−メチル−4−メチルピリジニウム、1−メチル−4−エチルピリジニウム、1−メチル−4−ブチルピリジニウム、1−メチル−4−スルホピリジニウム、1−メチル−4−メトキシスルホニルピリジニウム、1−メチル−4−アミノピリジニウム、1−メチル−4−カルボキシルピリジニウム等の4位置換のメチルピリジニウム;
1−エチル−4−メチルピリジニウム、1−エチル−4−エチルピリジニウム、1−エチル−4−ブチルピリジニウム、1−エチル−4−スルホピリジニウム、1−エチル−4−メトキシスルホニルピリジニウム、1−エチル−4−アミノピリジニウム、1−エチル−4−カルボキシルピリジニウム等の4位置換のエチルピリジニウム;
等が挙げられる。
【0050】
これらの特定ピリジニウム化合物は、前記した本発明の効果をより発揮し易く、更に、良好なパラジウムめっき性能、水への溶解のし易さ、入手のし易さ、低コスト等の観点から特に好ましいものとして挙げられる。
【0051】
本発明において、特定ピリジニウム化合物の含有量については特に限定はないが、パラジウムめっき液全体に対して、質量で、好ましくは1ppm〜50000ppm、より好ましくは10ppm〜30000ppm、特に好ましくは20ppm〜10000ppm、更に好ましくは、50ppm〜5000ppm、最も好ましくは、100ppm〜3000ppmである。なお、上記の特定ピリジニウム化合物を2種以上含有するときは、上記数値はそれらの合計含有量を示す。
【0052】
パラジウムめっき液中の特定ピリジニウム化合物の含有量が少な過ぎると、前記した本発明の効果を発揮し難くなり、パラジウム皮膜に生成するピンホールの数(密度)が増加したり、パラジウム皮膜の外観不良を起こしたりする場合がある。一方、含有量が多過ぎると本発明の上記効果の更なる増加は期待できず不経済となる場合がある。
【0053】
上記の特定ピリジニウム化合物についての記載は、本発明のパラジウムめっき液中に存在する形態を特定するものであるが、本発明のパラジウムめっき液の調液の際に、溶解させる原料として、上記の特定ピリジニウム化合物を用いることが好ましい。
【0054】
<可溶性パラジウム塩>
本発明のパラジウムめっき液は、可溶性パラジウム塩を含有することが必須である。該可溶性パラジウム塩は、本発明のパラジウムめっき液のパラジウム源として用いられる。可溶性パラジウム塩は、1種の使用に限定されず2種以上を併用することができる。「可溶性」の意味は、水に可溶という意味である。
【0055】
該可溶性パラジウム塩としては、特に限定がなく公知のものが使用できるが、具体的には、例えば、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、酸化パラジウム、ジクロロテトラアンミンパラジウム、ジニトロジアンミンパラジウム、ジクロロジエチレンジアミンパラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及び/又はビス(アセチルアセトナト)パラジウムが、水への溶解性、入手の容易さ等から好ましいものとして挙げられる。
【0056】
その中でも、水溶液で供給されることによって、パラジウム塩補充の際に手間が掛からない点等から、ジクロロテトラアンミンパラジウム又はジニトロジアンミンパラジウムがより好ましい。更に、同様の観点から、ジクロロテトラアンミンパラジウムが特に好ましい。
【0057】
本発明のパラジウムめっき液中の該パラジウム塩の含有量は特に限定はなく、パラジウムめっき液全体に対して、金属パラジウムとして、通常0.001g/L〜50g/L、好ましくは0.005g/L〜30g/L、特に好ましくは0.01g/L〜20g/Lである。
パラジウムめっき液中の可溶性パラジウム塩の含有量が少な過ぎると、正常の均一な色調のパラジウム皮膜の形成が困難になる場合がある。すなわち、パラジウム皮膜の色や付き回りを目視で観察したときにパラジウムの析出異常が認められる場合がある。
一方、パラジウムめっき液中のパラジウム塩の含有量が多過ぎる場合は、パラジウムめっき液の性能としては特に問題はないが、パラジウム塩は非常に高価であり、パラジウムめっき液中に含有した状態で保存するのは不経済となる場合がある。
【0058】
上記のパラジウム塩についての記載は、本発明のパラジウムめっき液中に存在する形態を特定するものであるが、本発明のパラジウムめっき液の調液の際に溶解させる原料として、上記のパラジウム塩を用いることが好ましい。
【0059】
<還元剤>
本発明のパラジウムめっき液は、可溶性パラジウム塩、特定ピリジニウム化合物に加えて、更に還元剤が含有されていることが好ましい。該還元剤としては、次亜リン酸、次亜リン酸塩、亜リン酸、亜リン酸塩、ギ酸、ギ酸塩、ホルムアルデヒド等が特に好ましい。
上記の還元剤は、1種の使用に限定されず2種以上を併用することができる。
【0060】
上記還元剤としては、具体的には、例えば、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸アンモニウム、亜リン酸、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸アンモニウム、ギ酸、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸アンモニウム、ホルムアルデヒド等が、良好なパラジウムめっき性能、水への溶解のし易さ、薬品としての取り扱いの容易さ、入手の容易さ、低コスト等の観点から、好ましいものとして挙げられる。
【0061】
本発明のパラジウムめっき液中の上記還元剤の含有量については特に限定はないが、パラジウムめっき液全体に対して、好ましくは1ppm〜100000ppm、より好ましくは10ppm〜60000ppm、特に好ましくは50ppm〜30000ppm、更に好ましくは100ppm〜10000ppmである。なお、還元剤を2種以上使用するときは、上記数値はそれらの合計含有量を示す。
含有量が少な過ぎると、正常の均一な色調のパラジウム皮膜の形成が困難になる場合がある。すなわち、パラジウム皮膜の色や付き回りを目視で観察したときにパラジウムの析出異常が認められる場合がある。一方、含有量が多過ぎると、パラジウムめっき浴が不安定となり、保存容器中に高価なパラジウムが異常析出してしまい、パラジウム回収に余計なコストが必要となってしまったり、パラジウム皮膜の色調不良を引き起こしたりする場合がある。
【0062】
<その他の添加剤>
本発明のパラジウムめっき液には、上記の成分以外に必要に応じて、パラジウムめっき液のpHを一定に保つための緩衝剤、パラジウムめっき液の導電性を確保するための電導塩、パラジウムめっき液中に不純物金属が混入した場合にその影響を除去するための金属イオン封鎖剤、パラジウムめっき液の泡切れを良好にするための界面活性剤、パラジウム皮膜を平滑にするための光沢剤等を適宣含有させて用いることができる。
【0063】
本発明のパラジウムめっき液に必要に応じて含有される緩衝剤としては、周知の緩衝剤であれば特に限定はないが、好ましいものとして、ホウ酸、リン酸等の無機酸;クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等のオキシカルボン酸;等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0064】
本発明のパラジウムめっき液中の緩衝剤の含有量は特に限定はないが、パラジウムめっき液全体に対して、通常1g/L〜500g/L、好ましくは10g/L〜100g/Lである。
パラジウムめっき液中の緩衝剤の含有量が少な過ぎると、緩衝効果が発揮され難い場合があり、一方、多過ぎる場合は緩衝効果の上昇が見られず不経済の場合がある。
【0065】
本発明のパラジウムめっき液に必要に応じて含有される電導塩としては、周知の電導塩であれば特に限定はないが、好ましいものとして、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、マロン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等のカルボン酸;等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0066】
本発明のパラジウムめっき液中の電導塩の含有量は特に限定はないが、パラジウムめっき液全体に対して、通常1g/L〜500g/L、好ましくは10g/L〜100g/Lである。
パラジウムめっき液中の電導塩の含有量が少な過ぎると、電導効果が発揮され難い場合があり、一方、多過ぎる場合は、電導効果の上昇が見られず不経済の場合がある。
また、前記緩衝剤と同一の成分で共用することも可能である。
【0067】
本発明のパラジウムめっき液に必要に応じて含有される金属イオン封鎖剤としては、周知の金属イオン封鎖剤であれば特に限定はないが、好ましいものとして、イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸等のアミノカルボン酸系キレート剤;ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸等のホスホン酸系キレート剤;等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0068】
本発明のパラジウムめっき液中の金属イオン封鎖剤の含有量は特に限定はないが、パラジウムめっき液全体に対して、通常0.1g/L〜100g/L、好ましくは0.5g/L〜50g/Lである。
パラジウムめっき液中の金属イオン封鎖剤の含有量が少な過ぎると、不純物金属の影響を除去する効果が発揮され難い場合があり、一方、多過ぎる場合は不純物金属の影響を除去する効果の上昇が見られず不経済の場合がある。
【0069】
本発明のパラジウムめっき液に必要に応じて含有される界面活性剤としては、周知の界面活性剤であれば特に限定はなく、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤又はカチオン系界面活性剤が用いられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0070】
ノニオン系界面活性剤としては、好ましいものとして、ノニフェノールポリアルコキシレート、α−ナフトールポリアルコキシレート、ジブチル−β−ナフトールポリアルコキシレート、スチレン化フェノールポリアルコキシレート等のエーテル型ノニオン系界面活性剤;オクチルアミンポリアルコキシレート、ヘキシニルアミンポリアルコキシレート、リノレイルアミンポリアルコキシレート等のアミン型ノニオン系界面活性剤;等が挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、好ましいものとして、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンノニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩;等が挙げられる。
【0071】
両性界面活性剤としては、好ましいものとして、2−ウンデシル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリウム、N−ステアリル−N,N−カルボキシメチルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、好ましいものとして、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルアンモニウムベタイン、ラウリルピリジニウム塩、オレイルイミダゾリウム塩又はステアリルアミンアセテート等が挙げられる。
【0072】
これらの界面活性剤は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。好ましくはノニオン系界面活性剤又は両性界面活性剤である。
【0073】
本発明のパラジウムめっき液中の界面活性剤の含有量は、パラジウムめっき液全体に対して、好ましくは0.01g/L〜20g/Lであるが、所望の性能を発揮すればよく、特に含有量を限定するものではない。
【0074】
本発明のパラジウムめっき液に必要に応じて含有される光沢剤としては、周知の光沢剤であれば特に限定はないが、パラジウムめっき中で本発明における特定ピリジニウム化合物になり得ない「ピリジン骨格を有するアミン化合物」等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
ピリジン骨格を有するアミン化合物としては、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン等が挙げられる。
【0075】
本発明のパラジウムめっき液中の光沢剤の含有量は、パラジウムめっき液全体に対して、好ましくは0.01g/L〜20g/Lであるが、所望の性能を発揮すればよく、特に含有量を限定するものではない。
【0076】
<パラジウムめっき液の物性>
本発明のパラジウムめっき液は、パラジウムめっき液の物性として、パラジウムめっき液を用いて、パラジウム皮膜の膜厚が0.03μmになるようにめっき処理した基材を、5質量%硫酸水溶液に浸漬し、一定電圧300mVでピンホール試験をしたときに、試験開始から試験開始後5分までの全ての間、通電電流が100μA以下であるような皮膜物性を与えるようなパラジウムめっき液である。
かかる物性を有するパラジウムめっき液は、前記した組成のパラジウムめっき液で初めて実現された新規なパラジウムめっき液である。
【0077】
本発明のパラジウムめっき液は、パラジウムめっき液の物性として、銅板上に、無電解ニッケルめっき皮膜5μm、パラジウム皮膜膜厚を0.03μmになるようにめっき処理した銅板基材を、5質量%硫酸溶液に浸漬し、電圧300mVでピンホール試験をした場合に試験開始から5分までの間、電流が100μAより多く流れないような物性を有するものであることが好ましい。
【0078】
本発明の「ピンホール試験」とは、常法により、無電解ニッケルめっき処理、その後、パラジウムめっき処理された銅板材を、口径10mmの円状に銅を除去して開口して陽極とし、銅材を陰極として5質量%硫酸溶液に浸漬し300mVの電圧を加え続け、通電する電流値を観察する試験をいう。
パラジウム皮膜にピンホール等の不良部が生成していると、陽極であるパラジウム皮膜のピンホールからニッケルイオンや銅イオンが溶解し、流れる電流値が大きな値を示す。また、パラジウム皮膜にピンホール等の不良部が生成していない評価用サンプルに比べると比較的早く電流が流れ始める。
【0079】
上記物性の限定は、パラジウムめっき液の物性を限定するものであって、かかるパラジウムめっき液の使用方法を限定するものではない。かかるパラジウムめっき液にて実際に形成されるパラジウム皮膜は0.03μmである必要はなく、本発明のパラジウムめっき液を用いて、例えば、膜厚0.03μm未満のパラジウム皮膜を形成してもよいし、膜厚0.03μmより厚いパラジウム皮膜を形成してもよい。
【0080】
本発明のピンホール試験を実施した場合に、パラジウムめっき膜厚が0.05μm以下のパラジウム膜厚では(従って0.03μm以下のパラジウム膜厚では)、試験開始から「試験開始後5分」までの間、電流が100μAより多く流れないような物性を有するパラジウムめっき液は従来存在しなかった。
【0081】
<パラジウムめっき液の製造方法>
本発明のパラジウムめっき液の製造方法は、特に限定はなく、各成分の配合順序等を含めて公知の方法が用いられる。
【0082】
<パラジウム皮膜>
本発明のパラジウムめっき液を用いてパラジウムめっきを行うことによって得られたパラジウム皮膜は、前記した効果を奏する。
本発明のパラジウム皮膜中のパラジウムの濃度(パラジウム純度)は特に限定はないが、「パラジウム皮膜」全体に対して、パラジウムが90質量%以上であることが好ましく、95.0質量%〜99.9質量%が特に好ましい。
【0083】
<パラジウムめっきの条件>
上記した本発明のパラジウムめっき液のめっき条件は特に限定されるものではないが、温度条件としては、20℃〜90℃であることが好ましく、特に好ましくは30℃〜70℃である。また、めっき液のpHはpH2.0〜9.0であることが好ましく、特に好ましくは、pH3.0〜8.0である。
【0084】
本発明のパラジウムめっき液を用いてパラジウムめっきを行うことによって得られるパラジウム皮膜の膜厚に特に限定はないが、好ましくは0.0001μm〜5μm、より好ましくは0.001μm〜1μm、特に好ましくは0.005μm〜0.5μm、更に好ましくは0.01μm〜0.3μmである。
【0085】
従来のパラジウムめっき液を用いて作製したパラジウムめっき皮膜の膜厚は、用途にもよるが、コネクターの場合は、通常は、0.01μm〜0.5μmであった。本発明のパラジウムめっき液を用いて作製したパラジウムめっき皮膜は、膜厚を従来の30%〜60%の範囲に減少させたときでも、ほぼ同等のピンホール試験や耐熱性の結果が得られる。
【0086】
本発明のパラジウムめっき液を用いて、ニッケル、ニッケル合金、銅又は銅合金の皮膜上にパラジウムめっきを行うことによって得られたパラジウム皮膜は、前記した効果を奏するために好ましい。中でも、ニッケル又はニッケル合金の皮膜上が、耐熱性、パラジウムめっきに混入し悪影響を及ぼす可能性がない等の点からより好ましく、ニッケル皮膜上が特に好ましい。
【0087】
<パラジウムめっき液の用途と積層された全体のめっき皮膜>
本発明のパラジウムめっき液は、特に限定はないが、電子部品の接点部材の製造に用いられることが更に好ましい。
従って、本発明のパラジウムめっき液を用いてパラジウムめっきを行うときは、下地めっき処理としてニッケルめっき皮膜を形成させておくことが更に好ましい。
このときのニッケルめっき液は特に限定されるものではないが、一般的に実用されている無電解ニッケル液が好ましく、無電解ニッケル−リン液が特に好適である。ニッケルめっき液の使用方法は、特に限定はなく常法に従って使用する。
【0088】
該ニッケルめっき皮膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、0.01μm〜20μmであることが好ましく、0.05μm〜5μmが特に好ましい。
【0089】
本発明のパラジウムめっき液は、パラジウム皮膜の上に金めっきを行って金皮膜を形成させるための、下地のパラジウム皮膜形成用に用いることが好ましい。
該金めっき皮膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、0.0001μm〜5μmであることが好ましく、0.001μm〜1μmがより好ましく、0.01μm〜0.5μmが特に好ましい。
本発明の好ましい皮膜の態様は、パラジウム皮膜の上に金皮膜が施された態様であり、特に好ましい態様は、ニッケル皮膜の上にパラジウム皮膜が施され、その上に金皮膜が施された態様である。
【0090】
従来のパラジウムめっき液を用いて作製したパラジウムめっき皮膜の上に形成させる金皮膜の膜厚は、用途にもよるが、コネクターの場合は、通常は、0.05μm〜0.2μmであった。本発明のパラジウムめっき液を用いて作製したパラジウムめっき皮膜の上に形成させる金皮膜の膜厚は、膜厚を従来の20%〜60%の範囲に減少させたときでも、ほぼ同等のピンホール試験や耐熱性の結果が得られる。
【0091】
本発明の前記パラジウムめっき液は、無電解パラジウムめっき液としても、電解パラジウムめっき液としても用いられる。すなわち、本発明は、前記のパラジウムめっき液よりなる無電解パラジウムめっき液であり、前記のパラジウムめっき液よりなる電解パラジウムめっき液でもある。
前記した「特定ピリジニウム化合物」は、無電解パラジウムめっき液中に含有されても、電解パラジウムめっき液中に含有されても、前記した効果を発揮する。
【0092】
前記した、可溶性パラジウム塩、特定ピリジニウム化合物、緩衝剤、電導塩、金属イオン封鎖剤、界面活性剤、還元剤及び光沢剤のうち、無電解パラジウムめっき液は、可溶性パラジウム塩、特定ピリジニウム化合物及び還元剤を必須成分とし、緩衝剤、金属イオン封鎖剤、界面活性剤及び/又は光沢剤を含有好適成分とする。
また、電解パラジウムめっき液は、可溶性パラジウム塩、特定ピリジニウム化合物及び電導塩を必須成分とし、緩衝剤、金属イオン封鎖剤、界面活性剤及び/又は光沢剤を含有好適成分とする。
無電解パラジウムめっき液、電解パラジウムめっき液とも、それぞれの成分の含有量は、前記した範囲が好ましい(より好ましい、特に好ましい)。
【0093】
無電解パラジウムめっきの場合は、常法に従って行なえばよく特に限定はないが、液温30℃〜90℃が好ましく、40℃〜80℃が特に好ましい。また、時間は、前記のパラジウム膜厚となるように適宣調整する。
【0094】
電解パラジウムめっきの場合は、常法に従って行なえばよく特に限定はないが、液温30℃〜90℃が好ましく、40℃〜80℃が特に好ましい。また、電流密度0.1A/dm
2〜100A/dm
2が好ましく、0.5A/dm
2〜50A/dm
2が特に好ましい。また、時間は、前記のパラジウム膜厚となるように適宣調整する。
【0095】
<作用・原理>
本発明のパラジウムめっき液が、著しくピンホール等の不良部分が少ないパラジウム皮膜を形成できる作用・原理は明らかではないが、以下のことが考えられる。ただし本発明は、以下の作用・原理が成り立つ範囲に限定されるわけではない。
【0096】
本発明のパラジウムめっき液の必須成分である特定ピリジニウム化合物は、一種の結晶調整剤としての効果を持つと考えられる。めっき反応でパラジウム皮膜が形成されようとするときには、なにも制御されずにパラジウム皮膜が成長すると非常に粗い皮膜が成長すると考えられる。粗い皮膜ということは、凹凸が存在する皮膜ということである。
この凸部分に選択的に「特定ピリジニウム化合物」が吸着し、成長を阻害しているものと考えられる。めっき成長の速かった凸部分でめっき成長が阻害されることにより、凹部分へのめっき反応が促進され、凹部分が埋められて行き、結果的に凹凸のないめっき皮膜を形成することができたと考えられる。凹部分がないめっき皮膜とは、均一にパラジウム皮膜で下地金属を被覆し、ピンホールが著しく少ないパラジウム皮膜である。
【実施例】
【0097】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
また、パラジウムめっき液の組成中の濃度の数値は、その成分が結晶水を含むものである場合は、結晶水を入れない質量から求めた濃度の数値である。
含有量に関する「%」は、特に記載がない限り「質量%」を示し、「ppm」は「質量ppm」を示す。また、耐熱性の評価方法における、ニッケルと銅の「%」は、「atm%(原子基準濃度)」を示す。
【0098】
実施例1〜8、比較例1〜7
<無電解パラジウムめっき液の評価>
パラジウムめっき液全体に対して、ジクロロテトラアンミンパラジウム溶液を、パラジウム換算で1g/L、表1に示す各実施例及び各比較例に記載の特定ピリジニウム化合物若しくはその比較化合物をそれぞれ1000ppm、還元剤としてギ酸を1000ppm、及び、電導塩と緩衝剤を兼ねた成分としてクエン酸を100g/Lとなるように溶解し、pHを6.5に調整して無電解パラジウムめっき液とした。ただし、比較例7は特定ピリジニウム化合物も比較化合物も含有させなかった。
【0099】
「比較化合物」としては、ピリジン、ピリジン−3−スルホン酸、ピコリン、キノリンスルホン酸、2,3−ジアミノピリジン、3−(3−ピリジル)アクリル酸を用いた。
また、比較例7として、「特定ピリジニウム化合物」も「比較化合物」も含有させずに、同様に調製したパラジウムめっき液も評価した。
【0100】
無電解パラジウムめっき液のpHは、20質量%水酸化カリウム水溶液とクエン酸にて調整し、パラジウムめっき液の浴温は、70℃に設定し、以下に記載の評価を行った。
【0101】
【表1】
【0102】
<試験用(評価用)のパラジウム皮膜の形成方法>
各実施例及び各比較例で調製したパラジウムめっき液を用いて、表2に示す工程にて、10mm×10mmの銅板上の無電解ニッケルめっき皮膜5.0μm上に、パラジウム皮膜を、その膜厚が0.03μmとなるように、無電解パラジウムめっき処理の時間を30秒〜3分の範囲で調整して施した。
【0103】
なお、無電解ニッケルめっき皮膜は、「無電解ニッケルめっき液 ICPニコロン GM」(商品名)(奥野製薬工業株式会社製)を用いて、常法に従いめっき処理し、膜厚5.0μmに形成した。
【0104】
【表2】
【0105】
<ピンホール試験の方法>
上記したように、銅板上のニッケルめっき皮膜上に形成させた膜厚が0.03μmのパラジウム皮膜を、5質量%硫酸水溶液に浸漬し、POTENTIONSTAT/GALVANOSTAT(北斗電工株式会社製)を用い、常に一定電圧300mVを印加した。
試験開始から1分、3分、5分における電流値(μA)を測定した。
【0106】
ピンホールがあると電流値が大きくなるので、試験開始から「試験開始から5分」までの間、常に通電電流が100μA以下である場合に優れたパラジウムめっき液であると判定し、より小さい通電電流の場合により優れたパラジウムめっき液であると判定した。
【0107】
<パラジウム皮膜の外観(色調均一性)の評価方法>
上記したように、銅板上のニッケルめっき皮膜上に形成させた膜厚が0.03μmのパラジウム皮膜について、そのパラジウム皮膜の真上30cmのところから目視で観察して、パラジウム皮膜の表面の色調を観察した。
【0108】
下地金属がニッケルであることから、色調が似ており判定が難しいが、均一なパラジウム皮膜が形成されていない場合には、大きさ0.5mm〜3mm程度のまだら模様(ムラ)が観察されるので、該まだら模様(ムラ)が全く観察されないパラジウムめっき液を優れたパラジウムめっき液であると判定し、より少ないまだら模様(ムラ)しか観察されない場合により優れたパラジウムめっき液であると判定した。
【0109】
<パラジウム皮膜の膜厚の測定方法>
パラジウムめっきが施されたパラジウム皮膜の中心付近を、蛍光X線分析装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製、SFT9255)を使用して、常法に従ってパラジウム皮膜の膜厚を測定した。
【0110】
<耐熱性の評価方法>
ピンホール試験用に作製した評価用サンプルと同じ工程で、銅板上のニッケルめっき皮膜上に膜厚0.03μmでパラジウム皮膜を形成させて評価用サンプルを作製した。
パラジウム皮膜の上に金皮膜を施す場合は、パラジウム皮膜を形成させた後に、常法に従い所定の膜厚で金皮膜を形成させて評価用サンプルを作製した。
その評価用サンプルを、庫内が200℃に調整されたオーブンで15時間加熱した。
加熱後の評価用サンプルの表面を、表面オージェ;SAM−4300(アルバックファイ株式会社製)を用い、加速電圧5kVで測定した。
【0111】
ニッケル10%未満であり、かつ銅0.5%未満であることを満足する評価用サンプル及びパラジウムめっき液を「良品」と判定し、ニッケル、銅の何れかが上記規定値以上である評価用サンプル及びパラジウムめっき液を「不良品」と判定した。
【0112】
【表3】
【0113】
表3から分かるように、本発明の無電解パラジウムめっき液を用いると、ピンホール試験で、試験開始から「試験開始後5分まで」の時間、常に100μAより大きい電流が流れず、かつ、パラジウム皮膜の目視での外観に、まだら模様やムラが観察されず、色調均一性が良好で、パラジウムの析出異常が認められなかった。
また、耐熱性試験では、何れもニッケルが10%未満であり、かつ銅が0.5%未満であり全て「良品」と判定された。
一方、特定ピリジニウム化合物を含有しない電解パラジウムめっき液では、ピンホール試験結果、又は、パラジウム皮膜の外観(色調均一性)の何れか又は両方が劣っていた。
また、耐熱性試験では、何れもニッケルが10%以上であり、全て「不良品」と判定された。
【0114】
実施例11〜18
実施例1〜8で用いたものと同様の評価用サンプルを作成し、その上に、0.01μm、0.05μm及び0.1μmの金皮膜をそれぞれ形成させた。
【0115】
耐熱性試験を実施したところ、実施例11〜18の何れもが、何れの膜厚の金皮膜の場合でも、ニッケルが10%未満であり、かつ銅が0.5%未満であったため、全て良品と判定された。
【0116】
比較例11〜17
比較例1〜7で用いたものに対応させて同様の評価用サンプルを作成し、その上に、0.01μm、0.05μm及び0.1μmの金皮膜をそれぞれ形成させた。
【0117】
耐熱性試験を実施したところ、比較例11〜17の何れもが、0.1μmの金皮膜の場合は、ニッケル10%未満、かつ銅0.5%未満であり、良品と判定されたものの、0.01μm及び0.05μmの金皮膜の場合は、何れもニッケルが10%以上であるか、又は、銅が0.5%以上検出され、何れも不良品と判定された。
比較例11〜17は、パラジウム皮膜の耐熱性能が劣っているため、パラジウム皮膜の上の金皮膜を十分に薄くできないことが分かった。
【0118】
実施例21
<電解パラジウムめっき液の評価>
パラジウムめっき液全体に対して、ジクロロテトラアンミンパラジウム溶液を、パラジウム換算で1g/L、実施例1と同様の特定ピリジニウム化合物(1−メチル−3−カルボキシピリジニウム塩酸塩)を1000ppm、及び、電導塩と緩衝剤を兼ねた成分としてクエン酸を100g/Lとなるように溶解し、pHを6.5に調整して、電解パラジウムめっき液とした。
【0119】
比較例21
実施例21において、特定ピリジニウム化合物を用いる代わりに、比較例1の比較化合物(ピリジン)を用いた以外は、実施例21と同様にして電解パラジウムめっき液を調液した。
【0120】
<試験用(評価用)のパラジウム皮膜の形成方法>
前記無電解パラジウムめっき液を用いた場合の、「その膜厚が0.03μmとなるように、無電解パラジウムめっき処理の時間を30秒〜3分の範囲で調整して施した。」の部分を、「その膜厚が0.03μmとなるように、電解パラジウムめっき処理の電流密度を0.5A/dm
2で、5秒間の前後で調整して施した。」と代えた以外は、前記無電解パラジウムめっき液を用いた場合の「試験用(評価用)のパラジウム皮膜の形成方法」と同様にして、評価用サンプルを作製した。
【0121】
【表4】
【0122】
表4から分かるように、本発明の電解パラジウムめっき液(実施例21)を用いると、ピンホール試験で、試験開始から「試験開始後5分まで」の時間、常に100μAより大きい電流が流れず、かつ、パラジウム皮膜の目視での外観に、まだら模様やムラが観察されず、色調均一性が良好で、パラジウムの析出異常が認められなかった。
また、耐熱性試験では、ニッケルが10%未満であり、かつ銅が0.5%未満であり、「良品」と判定された。
一方、特定ピリジニウム化合物を含有しない電解パラジウムめっき液(比較例21)では、ピンホール試験結果が劣っていた。
また、耐熱性試験では、ニッケルが10%以上であり、かつ銅が0.5%以上であり、「不良品」と判定された。
【0123】
実施例22〜28、比較例22〜27
<電解パラジウムめっき液の評価>
実施例22〜28、比較例22〜27に対応させて、表1に示した実施例2〜8及び比較例2〜7に記載の特定ピリジニウム化合物若しくはその比較化合物をそれぞれ1000ppm用いた以外は、実施例21と同様に電解パラジウムめっき液を調液して同様に評価した。ただし、比較例27は特定ピリジニウム化合物も比較化合物も含有させなかった。
【0124】
本発明の電解パラジウムめっき液(実施例22〜28)を用いると、ピンホール試験で、試験開始から「試験開始後5分まで」の時間、常に100μAより大きい電流が流れず、かつ、パラジウム皮膜の目視での外観に、まだら模様やムラが観察されず、色調均一性が良好で、パラジウムの析出異常が認められなかった。
また、耐熱性試験では、何れもニッケルが10%未満であり、かつ銅が0.5%未満であり全て「良品」と判定された。
一方、特定ピリジニウム化合物を含有しない電解パラジウムめっき液では、ピンホール試験結果、又は、パラジウム皮膜の外観(色調均一性)の何れか又は両方が劣っていた。
また、耐熱性試験では、全てニッケルが10%以上であるか、又は、銅が0.5%以上であり「不良品」と判定された。