【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解決するための手段として本発明に係る車椅子用防寒着は、[1]前身頃、後身頃、及び左右の袖を備え、前記前身頃は、左前身頃と右前身頃からなり、前記前身頃の前中心が上下方向に沿って、前記左前身頃と右前身頃とを前開きに分離する前開き部を有すると共に、該前開き部が留め具により開閉自在に構成されてなり、前記後身頃は、左後身頃と右後身頃からなり、前記後身頃の背中線に沿って、前記左後身頃と右後身頃とを後開きに分離する後開き部を有すると共に、該後開き部が留め具により開閉自在に構成されてなり、前記後身頃は、前記袖が縫合されてなる左右の袖付け部の上下中央部同士を結ぶ線で上下に分離する切れ込み部が形成されてなり、前記後開き部が、前記切れ込み部を境界として、上側後開き部と下側後開き部の上下に分離されてなることによって、前記左後身頃は、左上後身頃及び左下後身頃から構成されてなり、前記右後身頃は、右上後身頃及び右下後身頃から構成されてなり、前記左上後身頃及び前記右上後身頃を車椅子に着座した使用者の背面側に掛け回して前記上側後開き部が係着された状態で、前記下側後開き部が脱離された前記左下後身頃と前記右下後身頃とを左右に大きく開くことにより、該左下後身頃と右下後身頃とが前記車椅子の背もたれの左右両側面までを被覆でき、前記下側後開き部の留め具と前記背もたれの左右両側部に設けた被留め具とが係着可能であることを特徴とする車椅子用防寒着である。
【0009】
また本発明は、[2]前記前開き部及び前記後開き部をそれぞれ左右に脱離することで、左手側部と右手側部に2分割できることを特徴とする車椅子用防寒着である。
【0010】
また本発明は、前記[1]又は[2]に記載の車椅子用防寒着を備えると共に、前記背もたれの左右両側部に前記下側後開き部の留め具と係着可能な被留め具が設けられてなる車椅子を提供することもでき、これにより車椅子の胸ベルトや肩ベルトを簡単に留めることが可能となる。
【0011】
このようにしてなる車椅子用防寒着は、冬季において、身体が不自由な車椅子使用者に対する防寒着の着装作業の簡便化、及び防寒効果の向上等に寄与することができると共に、使用者及び介護者への負担を軽減するものである。
【0012】
本発明によれば、布帛からなり、所謂、ジャンパー型の構造をしてなり、前記前身頃を前開きに、且つ前記後身頃を後開きに開閉可能とすることによって、前記左手側部と右手側部に2分割できると共に、前記後身頃が前記切れ込み部を境界にして上側後開き部と下側後開き部の上下に分離されてなることによって、前記後身頃が、前記左上後身頃及び左下後身頃と、右上後身頃及び右下後身頃にそれぞれ分離して構成されてなることにより、身頃の各部位を単独、若しくは相互に機能させることができる。
【0013】
その構成によって、(1)車椅子用防寒着の前記後身頃を前記後開き部において開いた状態として、車椅子に着座した使用者の正面側を覆いつつ使用者の両手を前記左右の袖に通し、(2)前記左上後身頃及び前記右上後身頃を車椅子に着座した使用者の背面側に掛け回し、(3)前記左上後身頃及び前記右上後身頃の前記上側後開き部の留め具を係着した状態で、(4)前記下側後開き部が脱離された前記左下後身頃と前記右下後身頃とを左右に大きく開き、(5)前記左下後身頃と前記右下後身頃とで前記車椅子の背もたれの左右両側面までを覆い、(6)前記左下後身頃及び前記右下後身頃の前記下側後開き部の留め具と、前記背もたれの左右両側部に設けた被留め具とを係着し、(7)前記前開き部の留め具を係着することにより、車椅子用防寒着の使用者への着装が段階的、且つ容易に完了することができる。
【0014】
また、両手の袖通しについても、前記左手側部と右手側部に2分割可能とされてなるので、車椅子使用者が着座したままの状態で、前記左手側部と右手側部とをそれぞれ単独に着装することが可能となり、両手の袖通し等が容易にできる。一方、使用者が車椅子に着座する前において、別々に着装するか、2分割せずに一体で着装するかは、使用者の状況に応じて選択することができる。
【0015】
また、前記後開き部の前記留め具は、例えば、複数の面ファスナーで構成されてなり、前記背もたれの左右両側部の前記被留め具も、例えば、複数の面ファスナーで構成されてなることにより、前記後開き部の前記留め具同士を、或いは前記下側後開き部の前記留め具と前記背もたれの左右両側部の前記被留め具とを、それぞれ着脱自在に係着することができる。なお、前記前開き部の前記留め具は、例えば、1本の線ファスナーで構成されてなる。
【0016】
上記構成により、車椅子使用者が車椅子に着座した状態における防寒着の着装が簡単になる。つまり、防寒着の身頃として、前記左手側部と右手側部に2分割できると共に、前記後身頃が左上後身頃及び左下後身頃と、右上後身頃及び右下後身頃とに、それぞれ分離できる構成とされてなるので、使用者への防寒着の着装が簡便となる。
【0017】
より詳しくは、使用者が車椅子に着座した状態で防寒着を着装する場合、身体が不自由な方になる程、着装作業に労力と時間を要することになるが、本発明によれば、着装に当たって、身頃の各部位を単独、若しくは相互に機能させることができることにより、着座した使用者に対して、身頃の各部位毎に、段階的に着装させることが可能となるので、防寒着の着装作業が容易になると共に、スピーディーに完了することができる。
【0018】
また、防寒着の着装作業は、上述したように、使用者の正面側を覆いつつ両手を袖に通すことから始まって、前記前開き部の前記留め具の係着で完了することになるが、自分の意志で身体を制御できない程の使用者であっても、本発明の身頃の左右分割及び上下分離の構成により、介護者が使用者の身体の動きに惑わされることなく、段階的に着装させることができることになり、車椅子に着座した状態での着装作業が簡便となる。
【0019】
また、身体の不自由が軽い方の場合であっても、例えば、家の中で使用者に防寒着を着装させておき、家の外に置いてある車椅子に着座してから、前記下側後開き部の前記留め具同士を脱離して、次に前記左下後身頃と前記右下後身頃とを左右に大きく開き、前記左下後身頃と前記右下後身頃とで前記車椅子の背もたれの左右両側面までを被覆して、最後に前記下側後開き部の前記留め具と前記背もたれの左右両側部に設けた前記被留め具とをそれぞれ係着するだけで、防寒着が着装できることになり、介護者の負担を軽減することができる。
【0020】
さらに、使用者が車椅子から退座する際も、前記下側後開き部の前記留め具と前記背もたれの左右両側部に設けた前記被留め具とをそれぞれ脱離して、その後使用者を退座させてから、次に着装したままの状態で前記下側後開き部の前記留め具同士を係着することにより、そのまま通常の防寒着のように継続して使用することができるので、防寒着としての使い道に自由度が広がる。
【0021】
また、車椅子は、防寒着を係着するための接続部材として、前記下側後開き部の前記留め具に対応するように、車椅子の前記背もたれの左右両側部には複数の前記被留め具が設けられてなる。
【0022】
また、前記前身頃及び前記後身頃の内面に、起毛素材で構成される部分保温用の当て布を縫着することにより、さらに防寒効果を向上させることが可能となる。
【0023】
また本発明は、[3]車椅子に着座した使用者の正面及び該車椅子の周面を被覆可能な前身頃と後身頃とを備え、前記前身頃は、左前身頃と右前身頃からなり、前記前身頃の前中心が上下方向に沿って、前記左前身頃と右前身頃とを前開きに分離する前開き部を有すると共に、該前開き部が留め具により開閉自在に構成されてなり、前記後身頃は、左後身頃と右後身頃からなり、前記後身頃の背中線に沿って、前記左後身頃と右後身頃とを後開きに分離する後開き部を有すると共に、該後開き部が留め具により開閉自在に構成されてなり、前記後身頃の内側面には、前記後開き部の中央部を架け渡されてなるベルト部材が設けられ、前記ベルト部材は、前記前身頃を車椅子に着座した使用者に引き付けつつ該使用者の背面側に配置されると共に、該車椅子の手押しハンドルと背もたれとの間に掛け止めることができることを特徴とする車椅子用防寒着である。
【0024】
また本発明は、[4]前記前身頃は、裾部が車椅子に着座した使用者の足元を被覆可能な長さとなるように形成され、前記裾部の内側面には、前記前開き部を架け渡されて、該裾部の端部を絞り込み可能とする絞りベルト部材が取り付けられてなることを特徴とする車椅子用防寒着である。
【0025】
また本発明は、前記[3]又は[4]に記載の車椅子用防寒着を備えている車椅子を提供することもできる。
【0026】
このようにしてなる車椅子用防寒着は、冬季において、身体が不自由な車椅子使用者に対する防寒着の着装作業の簡便化、及び防寒効果の向上等に寄与することができると共に、使用者及び介護者への負担を軽減するものである。
【0027】
本発明によれば、略矩形で布帛からなり、所謂、ポンチョ型の構造をしてなり、車椅子に着座した使用者の正面、及び車椅子の周面を被覆可能な前身頃と後身頃とを備え、前記前身頃を前開きに、且つ前記後身頃を後開きに開閉可能とすることによって、前記前開き部と前記後開き部で左右に分離できるように構成されてなる。
【0028】
その構成によって、(1)車椅子用防寒着の前記後身頃を前記後開き部において開いた状態として、車椅子に着座した使用者の正面側から車椅子の前側の周面を覆い、(2)前記左後身頃及び前記右後身頃で車椅子の後側の周面から使用者の背面側を覆い、(3)前記ベルト部材で前記前身頃を車椅子に着座した使用者に引き付けつつ、(4)前記左後身頃と右後身頃を使用者の背面側に配置して、前記後開き部の前記留め具同士を係着し、(5)車椅子の手押しハンドルと背もたれとの間に前記ベルト部材を掛け止め、(6)最後に前記絞りベルト部材で足元の前記裾部を絞り込んで掛け止めることにより、車椅子用防寒着の使用者への着装が段階的、且つ容易に完了することができる。
【0029】
また、前記前開き部の前記留め具は、例えば、1本の線ファスナーで構成されてなり、前記前開き部の前記左前身頃と右前身頃を開閉自在に係着できる。また、前記後開き部の前記留め具は、例えば、面ファスナーで構成されてなり、前記後開き部の前記左後身頃と右後身頃を着脱自在に係着できる。
【0030】
また、前記ベルト部材は、ベルトとバックルとベルト押えからなり、前記後開き部の中央部で前記左後身頃と右後身頃とを架け渡すように前記後身頃の内側面に設けられてなり、身体に被覆して余った身頃を折り畳むようにしつつ前記手押しハンドルと背もたれとの間に挿し入れて、防寒着を着装した後に身体からずり落ちないように掛け止めるものである。
【0031】
また、前記絞りベルト部材は、ベルトとバックルとベルト押えからなり、前記前開き部の前記裾部で前記左前身頃と右前身頃とを架け渡すように前記前身頃の内側面に設けられてなり、前記裾部を絞り込んで係着するものである。
【0032】
上記構成により、使用者が車椅子に着座した状態で防寒着を着装する場合、身体が不自由な方になる程、着装作業に労力と時間を要することになるが、本発明によれば、防寒着の身頃として、前記前開き部と前記後開き部で左右に分離できるので、例えば、前記左前身頃と前記左後身頃で身体の左側を覆い、次に前記右前身頃と前記右後身頃で身体の右側を覆い、次に前記前身頃の前記留め具を係着し、次に前記後身頃の前記留め具を係着し、次に前記ベルト部材を掛け止め、最後に絞りベルト部材を掛け止めることにより着装を段階的に完了することもできるので、使用者への防寒着の着装が簡便となる。
【0033】
また、車椅子に着座した使用者の足元を被覆できる長さに前記前身頃が形成されてなることにより、身体の上半身から下半身にかけて被覆することができると共に、前記絞りベルト部材で足元から外方へ乱れる前記裾部を係着することができることにより、該裾部を整えることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、車椅子に着座した状態の使用者の正面側から被せて、使用者の背面側で着装ができるので、自己の手足等の身体が動いてしまうことを自分の意志で制御できない使用者に対しても、介護者が使用者の身体の動きに惑わされることなく、容易に、且つスピーディーに着装作業を完了することができる。
【0035】
また、車椅子の周面を被覆した状態で、左下後身頃及び右下後身頃の下側後開き部の留め具と、車椅子の背もたれの左右両側部に設けた被留め具とを確実に係着することができるので、防寒着が風の煽りで捲れ上がったりすることがなく、防寒効果が向上すると共に、長時間に亘って着崩れを防止することができる。
【0036】
また、左手側部と右手側部に2分割可能としてなるので、使用者に左手側部と右手側部とそれぞれ単独に着装することが可能となり、自分の意志で身体を制御できない使用者に対する手の袖通し等、容易に着装させることができ、着装作業の負担を大幅に減らすことができる。
【0037】
また、下後身頃が車椅子の背もたれの左右両側面までを被覆することができ、左右の下側後開き部の留め具と背もたれの左右両側部に設けた被留め具とを係着することにより、防寒着が着装されてなるので、外観的にも見栄えが良く、使用者にとっても違和感の無い車椅子用防寒着を実現することができる。
【0038】
また、ベルト部材を設けてなることにより、着装した後に身体からずり落ちることを防ぐと共に、身体に被覆して余った身頃をベルト部材で折り畳むようにして、車椅子の手押しハンドルと背もたれとの間に挿し入れて掛け止めることができる。
【0039】
また、車椅子に着座した使用者の足元を被覆できる長さに前身頃が形成され、前開き部の裾部に絞りベルト部材を設けてなることにより、身体の上半身から下半身にかけて被覆することができると共に、被覆された足元から外方へ乱れる裾部の端部を、絞りベルト部材で絞り込むように係着することができるので、防寒的にも外観的にも好適である。
【0040】
また、車椅子の背もたれの左右両側部に、防寒着の下側後開き部の留め具と係着可能な被留め具を設けることにより、使用者と車椅子を防寒着で一体に被覆することが可能な車椅子を実現できる。