特許第6620123号(P6620123)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6620123制限された電位を用いた亜鉛空気電池の充電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620123
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】制限された電位を用いた亜鉛空気電池の充電方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20191202BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20191202BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20191202BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20191202BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   H01M10/44 A
   H01M10/42 P
   H01M10/48 P
   H01M12/08 K
   H02J7/00 C
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-106397(P2017-106397)
(22)【出願日】2017年5月30日
(62)【分割の表示】特願2015-544513(P2015-544513)の分割
【原出願日】2013年11月25日
(65)【公開番号】特開2017-195187(P2017-195187A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2017年6月28日
【審判番号】不服2018-13571(P2018-13571/J1)
【審判請求日】2018年10月11日
(31)【優先権主張番号】1261398
(32)【優先日】2012年11月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504462489
【氏名又は名称】エレクトリシテ・ドゥ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グエナエル・トゥーサン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ステヴァン
【合議体】
【審判長】 酒井 朋広
【審判官】 五十嵐 努
【審判官】 須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭47−33220(JP,A)
【文献】 特開昭48−1750(JP,A)
【文献】 特開平7−282860(JP,A)
【文献】 特開昭48−70031(JP,A)
【文献】 特開2010−86924(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/156639パンフレット(WO,A1)
【文献】 特表2002−535818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42-10/48
H01M12/00-16/00
H02J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも負極、空気正極及び酸素発生正極を備える亜鉛空気電池を充電する方法であって、充電中における前記負極の電位が、臨界充電電位の値以下の絶対値に維持され、
前記臨界充電電位が、1.45Vから1.70Vの間であり、
前記負極の電位が、参照電極に対して測定され、
前記参照電極が、充電中に使用されない前記亜鉛空気電池の空気極であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記亜鉛空気電池の充電が、2つの段階:
−前記負極の電位が、臨界充電値以下の絶対値に達するまで、充電電流が印加され、前記負極の電位が自由に変化する第1の段階、次いで、
−前記負極の電位が、好ましくは前記臨界充電値に設定され、前記充電電流が自由に変化する第2の段階、
において行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
充電電流の絶対値が所定の最小値に達すると充電が停止することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記臨界充電電位が、1.47Vから1.58Vの間であることを特徴とする、請求項1からの何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
(a)請求項1からの何れか一項によって行われる充電段階、及び
(b)放電段階
を連続して含む、少なくとも負極及び空気正極を備える亜鉛空気電池を用いて電気エネルギーを貯蔵及び放出する方法。
【請求項6】
−負極端子、
−正極端子、
−前記負極端子に接続される負極、
−空気正極、
−酸素発生正極、
−前記空気正極又は前記酸素発生正極の何れかが前記正極端子に接続されることを可能にするスイッチング手段、
−前記負極に接続され、前記酸素発生正極に接続されることが可能な、亜鉛空気電池を充電する手段、及び
−前記負極及び前記空気正極の間の電圧を測定し、この電圧の絶対値が電位の臨界値以下であるように充電手段に作用するために適合される前記亜鉛空気電池の充電を制御する手段であって、前記電圧が請求項1からの何れか一項に記載の方法によって確定され、前記臨界充電電位が、1.45Vから1.70Vの間であり、前記負極の電位が、参照電極に対して測定され、前記参照電極が、充電中に使用されない前記亜鉛空気電池の空気極である手段、
を備える亜鉛空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性電解質を有する亜鉛空気タイプの電池を充電する電気化学的方法、及び本発明による充電段階を含む電気エネルギーを貯蔵及び放出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属空気電池は、空気電極に結合される、亜鉛、鉄又はリチウム等の金属に基づく負極を使用する。最も頻繁に使用される電解質は、アルカリ水溶性電解質である。
【0003】
このような電池の放電中に、酸素は、正極において還元し、金属は、負極において酸化する。
負極における放電:M→Mn++ne
正極における放電:O+2HO+4e→4OH
【0004】
金属空気電池が電気的に再充電されなければならないとき、電流の方向は反転する。酸素は、正極において生成し、金属は、正極における還元によって再堆積する。
負極における再充電:Mn++ne→M
正極における再充電:4OH→O+2HO+4e
【0005】
金属空気システムは、無限容量の正極を用いる利点を有する。従って、金属空気タイプの電気化学的発電デバイスは、数百Wh/kgに達し得るそれらの高い比エネルギーで知られている。正極で消費される酸素は、電極に貯蔵される必要がなく、周囲空気から取り入れられ得る。空気電極はまた、アルカリ燃料電池において使用され、それは、電極のレベルにおいて高い反応速度論のために、また白金等の貴金属がないために他のシステムに比べて特に有利である。
【0006】
空気電極の開発及び最適化のために数十年にわたる多くの研究が行われている。
【0007】
空気電極は、液体電解質と接触する多孔性固体構造体である。空気電極及び液体電解質の界面は、所謂“三重接触”界面であり、電極の固体活性材料、ガス状酸化剤、すなわち空気、及び液体電解質は、同時に存在する。亜鉛空気電池の種々のタイプの空気電極の詳細な説明は、例えば、非特許文献1に与えられる。
【0008】
金属空気タイプの機能の電池は、放電中は非常に良好であるが、再充電中における幾つかの問題は、解決されなければならない。
【0009】
一方で、空気電極は、再充電方向において使用されるように設計されない。空気電極は、気体(空気の酸素)、液体(電解質)及び固体(電極及び触媒)の界面において電気化学的反応が電極の容積内で起こる、容積電極の形態の機能及び多孔性構造を有する。そのため、空気電極及び液体電解質の界面は、所謂“三重接触”界面であり、電極の活性固体材料、ガス状酸化剤、すなわち空気、及び液体電解質は、同時に存在する。空気電極は、通常、Cabot社によって市販されるVulcan(登録商標)XC72等の大きな表面積を有する炭素粒子で構成される。炭素の表面積は、空気電極における融合の前に、CO等の気体との反応によって増加され得る。次いで、多孔性の電極は、DuPont社によって市販されるFEP(フッ素化エチレンプロピレン)等のフッ素化疎水性ポリマーを用いた炭素粒子の凝集によって製造される。国際公開第2000/036677号には、金属空気電池用のこのような電極が開示されている。
【0010】
できるだけ高い電極の幾何学的表面積と比較した電流密度を有するために、できるだけ大きい空気電極の反応表面積を有することが望ましい。大きな反応表面積はまた、気体状の酸素の密度が液体と比較して低いので、有用である。電極の大きな表面積は、反応部位が増加されることを可能にする。逆に、この大きな反応面積は、活性材料の濃度が非常に高いので、再充電中における酸化の逆反応にもはや必要ない。
【0011】
酸化反応及び酸素の生成を引き起こすための再充電方向における空気電極の使用は、多くの欠点を与える。空気電極の多孔性構造は脆い。それが液体電解質の酸化によって酸素を生成するために使用されたときに、気体の発生によってこの構造が機械的に破壊されたことが本発明者によって観察された。気体の生成によって電極内に生成された水圧は、空気電極を構成する炭素粒子の間の結合が破裂するのを引き起こすのに十分である。
【0012】
マンガン酸化物又はコバルト酸化物等の酸素の還元反応のエネルギー収量を改善するために空気電極に加えられた触媒が、逆酸化反応に必要とされる電位において安定しないことも本発明者によって観察された。炭素の酸化によって酸素の存在下における炭素の腐食はまた、より高い電位において加速される。
【0013】
ある発明者は、米国特許第5306579号に記載されるように、場合によっては、2つの電気的に結合される層で構成される二機能の電極における酸素発生触媒に結合されるより抵抗性のある酸素還元触媒を使用することを提案する。しかしながら、この構成は、それにもかかわらず短い耐用寿命及び限られた数のサイクル数を有する電極を生成する。
【0014】
空気電極の劣化は、それが金属空気電池を再充電するために使用されるとき、電池の耐用寿命を非常に低下させる。これは、電気的に再充電可能な金属空気蓄電池の低レベルの商業的開発における主要な理由の1つである。
【0015】
劣化に対して空気電極を保護するための手段は、酸素生成反応で使用される第2の正極を使用することからなる。次いで、空気電極は、酸素発生電極から切り離され、酸素発生電極のみが、充電段階中に使用される。例えば、Z.Starchurskiによる米国特許第3532548号には、充電段階中に使用される第2の補助的な電極を有する亜鉛空気電極が記載されている。
【0016】
一方で、特定の問題はまた、金属空気電池、特に亜鉛空気電池の電子再充電中に負極側で起こり得る。
【0017】
再充電中に、Zn2+金属イオンが負極において生成し、この電極のレベルにおける電位が十分に負であるとすれば、それらの金属形態Znで堆積する。電極における金属の均一で均質な堆積が、この電極の充電及び放電のサイクル中に良好な耐久性を保証するために望まれる。
【0018】
特定の条件において、金属が電極の表面にほとんど付着しない発泡体の形態で堆積され、次いで、この発泡体が、電極から取り外され、活性材料の損失及びそれに続く電池の比容量の損失を引き起こすことが見出された。他の場合には、この金属がデンドライト形態で堆積され得ることも見出された。これらのデンドライトは、それらが、充電中に正極に達し、内部短絡回路を引き起こし、再充電を妨害するまで成長し得る。
【0019】
これらの問題を解決し、再充電中に均質な亜鉛堆積物を生成するための試みにおいて、特定の解決方法が提案されている。
−電解質に添加剤を加える(非特許文献2及び3を参照)。
−電極にセパレータを適合させる(非特許文献4及び5を参照)。
−固体電解質として高分子ヒドロゲル電解質を使用する(非特許文献6から8を参照)。
【0020】
さらに、Lawrence Berkeley Laboratory (LBL)及びMATSI社は、表面電流密度が高いときに、デンドライトの形成の原因となる表面電流密度を減少させるために電極の多孔性を増加せることを探求している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第2000/036677号
【特許文献2】米国特許第5306579号明細書
【特許文献3】米国特許第3532548号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】V.Neburchilov et al., with the title "A review on air cathodes for zinc-air fuel cells", Journal of Power Sources 195 (2010) pp.1271-1291
【非特許文献2】C.W. Lee et al., "Effect of additives on the electrochemical behaviour of zinc anodes for zinc/air fuel cells", Journal of Power Sources 160 (2006) 161-164
【非特許文献3】C.W. Lee et al., "Novel electrochemical behavior of zinc anodes in zinc/air batteries in the presence of additives", Journal of Power Sources 159 (2006) 1474-1477
【非特許文献4】Alternative separation evaluations in model rechargeable silver-zinc cells", Journal of Power Sources 80 (1999) 61-65
【非特許文献5】E.L. Dewi et al., "Cationic polysulfonium membrane as separator in zinc-air cell", Journal of Power Sources 115 (2003) 149-152
【非特許文献6】C. Iwakura et al., "Charge-discharge characteristics of nickel/zinc battery with polymer hydrogel electrolyte" Journal of Power Sources 152 (2005) 291-294
【非特許文献7】G.M. Wua et al., "Study of high-anionic conducting sulfonated microporous membranes for zinc-air electrochemical cells", Materials Chemistry and Physics 112 (2008) 798-804
【非特許文献8】H. Ye et al., "Zinc ion conducting polymer electrolytes based on oligomeric polyether/PVDF-HFP blends" Journal of Power Sources 165 (2007) 500-508
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
これらの様々な提案にもかかわらず、亜鉛空気電池の再充電中に遭遇する問題は、解決されていない。本発明の目的の1つは、電池の適切な動作に有害である亜鉛堆積物、特に負極における発泡体の形態又はデンドライトの形態の堆積物の形成を引き起こさない亜鉛空気電池を充電する方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
このような改善された充電方法は、亜鉛空気電池の充電及び放電のサイクルの数を増加させることができるものでなければならず、従って有利には、長い耐用寿命を有する電池を提供するものでなければならない。
【0025】
充電中に負極の電位を、それが大きくなり過ぎることを避けるために制御することが、発泡体又はデンドライトの形態の亜鉛堆積物の形成を制限することを可能にすることが本発明者によって観察された。
【0026】
本発明の主題は、少なくとも負極、第1空気正極及び第2酸素発生正極を備える亜鉛空気電池を充電する方法であって、充電中における前記負極の電位が、臨界充電電位の値以下の絶対値に維持されることを特徴とする方法である。
【0027】
さらに、本発明の主題は、
(a)上記のような充電段階、及び
(b)放電段階を連続して含む、少なくとも負極及び空気正極を備える亜鉛空気電池を用いて電気エネルギーを貯蔵及び放出する方法である。
【0028】
最後に、
−負極端子、
−正極端子、
−前記負極端子に接続される負極、
−第1空気正極、
−第2酸素発生正極、
−前記第1空気正極又は前記第2酸素発生正極の何れかが前記正極端子に接続されることを可能にするスイッチング手段、
−前記負極に接続され、前記第2酸素発生正極に接続されることが可能な、前記電池を充電する手段、及び
−前記負極及び前記第1空気正極の間の電圧を測定し、この電圧の前記絶対値が電位の臨界値以下であるように前記充電手段に作用するために構成される前記電池の充電を制御する手段、
を備える亜鉛空気電池はまた、本発明の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、再充電形態における、本発明の主題をなす電池の一実施形態の概略代表図である。
図2図2は、時間の関数として充電段階中における亜鉛空気電池における負極及び空気電極の間の電圧及び充電電流を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願において、「充電」及び「再充電」という用語は、類義語として使用され、互換性がある。
【0031】
本発明による充電方法は、亜鉛空気タイプの電池で実施される。この亜鉛空気電池は、通常、少なくとも負極、第1空気正極及び第2酸素発生電極を備える。負極は、亜鉛電極(Zn/Zn2+)である。
【0032】
本発明による電池の第1正極は、空気電極である。このタイプの電極は、一般に上述されている。あらゆるタイプの空気電極は、本発明による電池に使用され得る。特に、電池の第1空気正極は、国際公開第2000/036677号に記載されるような、大きな比表面積を有するカーボン粒子によって構成されるカーボン粉末の凝集体によって得られる電極であり得る。カーボン粒子に基づく空気電極は、少なくとも1つの酸素還元触媒をさらに含有する。この酸素還元触媒は、好ましくは、マンガン酸化物及びコバルト酸化物によって構成される群から選択される。
【0033】
本発明による電池の第2正極は、酸素発生電極である。当業者に周知のこの機能を発揮するあらゆるタイプの電極は、本発明による電池で使用され得る。第2酸素発生正極は、例えば、銀、ニッケル又はステンレススチールで作られる電極等の、電池の電解質で安定な金属電極であり得る。
【0034】
この電池は、1つ又はそれ以上の充電段階及び1つ又はそれ以上の放電段階に晒され得る。
【0035】
本発明による方法は、特に充電段階に関連する。負極における、電池の適切な動作に有害である亜鉛堆積物、特に発泡体の形態又はデンドライトの形態の堆積物の形成に関係する課題を解決するために、充電中の負極の電位が、臨界充電電位の値以下の絶対値に維持されなければならないことを本発明者は見出した。
【0036】
電池の臨界充電電位の値は、対象となる電池の性質に依存して、例えば電極の性質に依存して変化し得る。臨界充電電位は、所定の電池に予め確立されることができ、それは、従って、例えば製造者によって電池が供給されるデータのアイテムであり得る。この電位はまた、それを充電する前に実験的に決定され得る。
【0037】
特に、本発明による亜鉛空気電池の臨界充電電位は、
−前記亜鉛電極及び前記第2酸素発生正極の間に一定の電流を流すことによって前記亜鉛空気電池の充電を開始し、
−1分間充電した後、前記第1空気電極に対して前記亜鉛電極の電位を測定し、
−前記測定された電位の絶対値に20mVを加えることによって前記臨界電位を決定することによって決定され得る。
【0038】
臨界充電電位は、1.45Vから1.70Vであり得、好ましくは1.47Vから1.58Vであり得る。
【0039】
負極の電位の制御は、この電位を測定し、それと臨界充電電位の値とを比較し、所望の値に電位の絶対値を維持するために充電段階にフィードバックすることを含み得る。
【0040】
亜鉛空気電池の負極の電位は、当業者に周知の方法によって測定され得る。しかしながら、金属空気電池の場合、充電中に、正極の電位が負極の電位より非常に急速に増加することが知られている。このために、電池の正極端子及び負極端子の間で測定される電位差が、瞬間的に負極端子の電位を正確に反映させることができず、電池の端子の電圧の制御が、負極の電位の制御を与えるために十分に正確ではないものとなり得ることが可能である。
【0041】
これが、負極の電位が、有利には参照電極と比較して測定され得る理由である。参照電極は、測定中にその電位が設定される電極である。差動電極、すなわち電気化学反応中に活性である電極は、その電位が電流の通過によって変化するので参照電極であり得ない。
【0042】
好ましくは、前記参照電極は、充電中に使用されない電池の空気電極である。負極の電位は、従って、第1空気正極に対して測定され得る。実際、電池の充電段階中において、第1空気電極は、作動電極はなく、電流は、それに流れない。
【0043】
電池の充電段階中に負極の電位の測定のために参照電極として空気正極を使用することは、この機能のためにだけに捧げられる電極をデバイスに加える必要がないので、特に有利である。この実施形態は、実施されるために既存の電池に対して重要な構造的な修正を要求しないので、単純で安価であるという利点を有する。有利には、後者は、追加の電極を備えることなく、それらの重量及びそれらの全体寸法は、影響を受けない。
【0044】
本発明による充電方法は、2つの段階:
−前記負極の電位が、臨界充電値以下の絶対値に達するまで、前記充電電流が印加され、前記負極の電位が自由に変化する第1の段階、次いで、
−前記負極の電位が、好ましくは前記臨界充電値に設定され、前記充電電流が自由に変化する第2の段階、
を含む。
【0045】
好ましくは、充電は、充電電流の絶対値が所定の最小値に達するとき停止する。前記所定の最小値は、充電開始時における電流の5%から30%、好ましくは充電開始時における電流の8%から20%、より好ましくは充電開始時における電流の10%から15%であり得る。充電段階のこの停止は、有利には、亜鉛のデンドライト及び発泡体の形成を避けることを可能にし、それは、水素への水の還元の反応が優位になると充電の終了で生じ得る。
【0046】
上記の充電段階は、電気エネルギーを貯蔵及び放出する方法の一部を形成し得る。本発明の他の主題は、
(a)上記のような充電段階、及び
(b)放電段階
を連続して含む、少なくとも負極及び空気正極を備える亜鉛空気電池を用いて電気エネルギーを貯蔵及び放出する方法である。
【0047】
充電段階(a)中に、第2酸素発生正極は、電池の作動負極として使用され得、すなわち電池の再充電中に起こる電気化学反応が起こる活性正極として使用され得る。
【0048】
放電段階(b)中に、第2酸素発生正極は、接続が切られ、第1空気正極は、作動電極、すなわち電池の放電中に起こる電気化学反応が起こる活性正極としてとして使用され得る。
【0049】
さらに、本発明の主題は、本発明の主題でもある電気エネルギーを貯蔵及び放出するための方法に加えて、本発明による充電方法を実施するための亜鉛空気電池である。前記亜鉛空気電池は、
−負極端子、
−正極端子、
−前記負極端子に接続される負極、
−第1空気正極、
−第2酸素発生正極、
−前記第1空気正極又は前記第2酸素発生正極の何れかが前記正極端子に接続されることを可能にするスイッチング手段、
−前記負極に接続され、前記第2酸素発生正極に接続されることが可能な、前記電池を充電する手段、及び
−前記負極及び前記第1空気正極の間の電圧を測定し、この電圧の前記絶対値が電位の臨界値以下であるように前記充電手段に作用するために適合される前記電池の充電を制御する手段、
を備える。
【0050】
上記の3つの電極に加えて、この亜鉛空気電池は、負極端子及び正極端子を備える。これらの2つの端子は、電力回路、すなわち電池にエネルギーを供給する充電手段に電池が接続される充電回路、又は、エネルギーを供給するあらゆるデバイスに電池が接続される放電回路を形成するために電池が接続されることを可能にする。負極は、恒久的に、すなわち充電中及び放電中に、電池の負極端子に接続される。充電段階(a)中に、第2酸素発生正極は、電池の正極端子に接続可能であり、第1空気正極は、電池の正極端子から接続が切られる。放電段階(b)中に、第1空気正極は、電池の正極端子に接続され、第2酸素発生正極は、電池の正極端子から接続が切られる。
【0051】
電池はまた、第1空気正極又は第2酸素発生正極の何れかが正極端子に接続されることを可能にするスイッチング手段を備える。一実施形態によれば、第1及び第2正極の間の正極端子の接続のスイッチングは、手動的に行われ得る。しかしながら、有利には、スイッチング手段は、スイッチング制御手段に接続可能である。この手段は、電子的であり、それは、有利には、電子制御システム又はBMSの要素であり得る。スイッチング制御手段は、それが、電池が放電されるときに電池の正極端子に接続される第1空気正極であるように、また、それが、電池が再充電されるときに電池の正極端子に接続される第2空気発生正極であるように、スイッチング手段を動作し得る。
【0052】
スイッチング手段は、電池の正極及び負極端子の間の電圧を測定するために構成され得る。これは、2つの作動電極の間、すなわち充電中における負極及び第1空気正極の間、及び再充電中における負極及び第2酸素発生正極の間の電位差を測定することを含む。
【0053】
電池はまた、負極及び第2酸素発生正極に接続され得る電池を充電する手段、及び、負極及び第1空気正極の間の電圧を測定し、この電圧の絶対値が電位の臨界値以下であるように充電手段に作用するために適合される電池の充電を制御する手段を備える。
【0054】
この充電制御手段は、電子制御システム又はBMSの要素であり得る。充電制御手段は、連続的に、充電中に、本発明によって測定された負極の電位の値を設定値、ここでは電位の臨界値に対して比較し、測定される電位の絶対値が設定値以下であるように電池の充電手段に対して制御信号を送るように構成される。
【0055】
さらに、この充電制御手段は、連続的に、充電中に、充電電流の値を設定値、ここでは所定の制限電流に対して比較し、測定される電流がこの設定値以下に下がると充電が停止するように電池の充電手段に制御信号を送るように構成される。
【0056】
本発明は、ここで、充電配置において、本発明の主題を形成する亜鉛空気電池の実施形態を概略的に示す添付の図1を参照して詳細に記載される。
【0057】
電池1は、負極端子2、正極端子3、正極端子2に接続された負極4、第1空気正極5及び第2酸素発生正極6を備える。電池が充電段階中であると見なされ得る構成である図1に示される構成において、それは、セルの正極端子3に接続される第2酸素発生正極6である。しかしながら、電池1はまた、放電段階中にスイッチング手段7に第1空気正極5を接続するために、第2酸素発生電極6が正極端子3から接続を切られることを可能にするスイッチング手段7を備える。充電手段11は、電池の負極端子2及び正極端子3に接続される。
【0058】
電池1は、さらに、負極8の電位を測定するための手段を備える。この電位は、負極4及び第1空気正極5の間の電圧Vを測定することによって測定される。示される電池の充電段階中に、第1空気電極5は、電池の正極端子3に接続されないので、参照電極としての役割を果たす。
【0059】
電池1は、さらに、充電制御手段9を備える。この充電制御手段9は、再充電中に測定手段8によって測定される値Vを設定値Vcと連続的に比較し、測定された電位の絶対値が、前述で定義された臨界充電電位の以下のままであるように、充電制御手段9は、制御信号10を電池の充電手段11に送る。
【0060】
(実施例)
30cmの亜鉛負極、亜鉛電極の何れかの側に平行に接続され、対称的に配置されるAero Tech groupのElectric Fuel社によって市販されるE4タイプの30cmの2つの電極で構成される第1空気正極、及び、亜鉛電極の何れかの側に平行に接続され、対称的に配置される30cmのニッケル金属の2つの格子で構成される第2酸素発生正極を備える亜鉛空気電池が使用された。
【0061】
この電池において、負極の電位の臨界値は、以下のように決定された。
【0062】
充電電流は、700mA程度の一定値に設定された。この電流で1分間充電した後、負極の電位は、空気電極に対して測定され、1.50V程度の値を有した。負極の電位は、従って、この測定された電位の絶対値、又は1.52mVに20mVを加えることによって決定された。
【0063】
この電池は、本願の主題を形成する方法に従って再充電された。充電曲線は、図2に示される。時間の関数として負極及び空気電極の間の電圧が曲線12で示され、時間の関数として充電電流が曲線13で示される。
【0064】
第1の期間において、充電電流は、700mA程度に設定された。負極及び空気正極の間の電圧は、この段階中に自由に変化するようにされ、1.52mV程度の制限値を超えないようにチェックされた。
【0065】
第1の時間中に1.52mV程度のこの値に達するとき、負極の電位は、1.52mV程度のこの値に設定された。電池の充電は、次いで、設定電圧を用いて第2の期間中に継続され、充電電流は、次いで自由に変化するようにされた。
【0066】
充電電流の絶対値が、予め設定された最小値、120mA程度に達すると、充電が停止された。
【0067】
本発明者は、この充電方法に従うことによって、亜鉛空気電池が、負極における発泡体の形態又はデンドライトの形態の堆積物の形成による劣化の信号を示さなかったことを見出した。亜鉛空気電池は、劣化の信号を示すことなく、上記のような500サイクルのシリーズの充電及び放電を経ることができた。
【0068】
同一の構成における同一のデバイスを用いた他の実施例において、充電電流は、700mA程度に設定されたが、負極及び空気正極の間の電圧は、如何なる制御もなく、充電を通した如何なる上限値もなく自由にされた。空気正極に対する負極の電位は、1.68Vまで増加した。充電中に使用される負極及び空気正極の短絡回路は、12サイクル後に観察された。
【符号の説明】
【0069】
1 電池
2 負極端子
3 正極端子
4 負極
5 第1空気正極
6 酸素発生正極
7 スイッチング手段
8 電位
9 充電制御手段
10 制御信号
11 充電手段
図1
図2