特許第6620127号(P6620127)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6620127清掃用シート及び清掃用シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620127
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】清掃用シート及び清掃用シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47L 13/17 20060101AFI20191202BHJP
   A47L 13/20 20060101ALI20191202BHJP
   D04H 1/54 20120101ALI20191202BHJP
【FI】
   A47L13/17 A
   A47L13/20 A
   D04H1/54
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-118980(P2017-118980)
(22)【出願日】2017年6月16日
(65)【公開番号】特開2019-467(P2019-467A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2018年10月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】新谷 尚己
(72)【発明者】
【氏名】伏見 朝子
【審査官】 岩谷 一臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−006610(JP,A)
【文献】 特開昭48−067507(JP,A)
【文献】 特開2014−113409(JP,A)
【文献】 特開2003−103677(JP,A)
【文献】 特開2007−014638(JP,A)
【文献】 特開2016−209489(JP,A)
【文献】 特開2005−319311(JP,A)
【文献】 特開2007−020615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 13/17
A47L 13/20
D04H 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液の付与された清掃用シートにおいて、
シートの表面から突出した凸部を有するエンボス部を備え、
前記凸部は、その頂部が平面状に形成されており、
前記頂部の突出方向の上面は、当該上面の繊維が起毛した起毛部を有し、
清掃用シートの表面を形成する疎水性繊維層と、
前記疎水性繊維層に挟まれ、液保持性を有する親水性繊維層と、
を備え、
前記親水性繊維層と前記疎水性繊維層の境界領域は、互いの繊維が交絡していることを特徴とする清掃用シート。
【請求項2】
前記エンボス部は、シートの一面から見て、当該一面側に突出した凸エンボスと、シートの他面側に突出した凹エンボスと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項3】
前記清掃用シートは矩形状に形成され、
前記凸エンボスと前記凹エンボスとは、前記清掃用シートの長手方向及び短手方向のいずれの方向においても交互に並ぶように配置されていることを特徴とする請求項に記載の清掃用シート。
【請求項4】
前記エンボス部が配されていない非エンボス部を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の清掃用シート。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の清掃用シートの製造方法において、
複数の繊維層が積層された積層シートを、一対のエンボスロールで加圧してエンボス加工を施すエンボス工程を有し、
前記一対のエンボスロールは、清掃用シートに形成される前記凸部前記頂部に対応する位置において前記積層シートの厚み以上の幅の間隙を有することを特徴とする清掃用シートの製造方法。
【請求項6】
清掃用シートの表面を形成する疎水性繊維層と、前記疎水性繊維層に挟まれる親水性繊維層とを、水流交絡法によって交絡させて前記積層シートを作製する積層工程を有することを特徴とする請求項に記載の清掃用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃用シート及び清掃用シートの製造方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば床面の清掃等に用いられる清掃用シートにおいては、嵩や厚みの向上、摩擦抵抗の低減、ごみの捕集性の向上等のため、様々なパターンによりシートに凹凸を形成することが行われている。
また、このような清掃用シートにおいては、薬液を付与した所謂ウエットシートが広く普及しており、薬液の保水性及び徐放性を高めるため、層構造とすることが行われている。
例えば、芯層にエンボスを施したシート(特許文献1参照)や、芯層に吸水性ポリマーを使用したシート(特許文献2参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3450691号公報
【特許文献2】特許第4033725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1、2では、シート自体の保水性は高まるものの、清掃作業の初期段階で一気に薬液が放出されてしまい、清掃作業の後半では薬液を放出させることができない場合がある。
【0005】
本発明の課題は、清掃時に薬液を徐々に放出することができる清掃用シート及び清掃用シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
薬液の付与された清掃用シートにおいて、
シートの表面から突出した凸部を有するエンボス部を備え、
前記凸部は、その頂部が平面状に形成されており、
前記頂部の突出方向の上面は、当該上面の繊維が起毛した起毛部を有し、
清掃用シートの表面を形成する疎水性繊維層と、
前記疎水性繊維層に挟まれ、液保持性を有する親水性繊維層と、
を備え、
前記親水性繊維層と前記疎水性繊維層の境界領域は、互いの繊維が交絡していることを特徴とする。
本発明によれば、清掃時に薬液を徐々に放出することができる清掃用シートを提供することができる
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の清掃用シートにおいて、
前記エンボス部は、シートの一面から見て、当該一面側に突出した凸エンボスと、シートの他面側に突出した凹エンボスと、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、捕集性をより高めることができる。
【0010】
また、請求項に記載の発明は、請求項に記載の清掃用シートにおいて、
前記清掃用シートは矩形状に形成され、
前記凸エンボスと前記凹エンボスとは、前記清掃用シートの長手方向及び短手方向のいずれの方向においても交互に並ぶように配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、捕集性をより高めることができる。
【0011】
また、請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか一項に記載の清掃用シートにおいて、
前記エンボス部が配されていない非エンボス部を備えることを特徴とする。
本発明によれば、捕集性をより高めることができる。
【0012】
また、請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか一項に記載の清掃用シートの製造方法において、
複数の繊維層が積層された積層シートを、一対のエンボスロールで加圧してエンボス加工を施すエンボス工程を有し、
前記一対のエンボスロールは、清掃用シートに形成される前記凸部前記頂部に対応する位置において前記積層シートの厚み以上の幅の間隙を有することを特徴とする。
本発明によれば、清掃時に薬液を徐々に放出することができる清掃用シートを製造することができる。
【0013】
また、請求項に記載の発明は、請求項に記載の清掃用シートの製造方法において、
清掃用シートの表面を形成する疎水性繊維層と、前記疎水性繊維層に挟まれる親水性繊維層とを、水流交絡法によって交絡させて前記積層シートを作製する積層工程を有することを特徴とする。
本発明によれば、徐放性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、清掃時に薬液を徐々に放出することができる清掃用シート及び清掃用シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態の清掃用シートの使用時の状態を示す図である。
図2】清掃用シートの一例を示す平面図である。
図3図2のIII-III線における断面図である
図4図2におけるA部分の拡大図である。
図5図4のV-V線における断面図である。
図6】製造方法について説明するための図である。
図7】エンボスの変形例を示す図である。
図8】非エンボス部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態である清掃用シート100の具体的な態様について、図1から図8に基づいて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、図示例に限定されない。
なお、便宜的に、図1から図8に示したように、X方向、Y方向及びZ方向並びに前後、左右及び上下を定めて説明する。
【0017】
(実施の形態の構成)
図1は、本実施の形態の清掃用シート100の使用時の状態を示す図である。
図1に示すように、清掃用シート100は、例えば、矩形の平板状のヘッド部201と、ヘッド部201の上面に取り付けられた柄部202と、を備える清掃具200に、交換可能に装着されるウエットシートである。
清掃用シート100は、清掃具200のヘッド部201の底面を覆って清掃面を形成し、清掃具のヘッド部201の長手縁部201aに沿って折り曲げられてヘッド部201の上面に係止され、装着された状態となる。
なお、長手縁部201aとは、ヘッド部201の長手方向に沿った縁部を指す。即ち、矩形のヘッド部201の4つの縁部のうちの、長い方の2つの縁部を指す。
【0018】
図2は、本実施の形態の清掃用シート100の一例を示す平面図である。
図2に示すように、清掃用シート100は、X方向に長尺な矩形状であって、例えば、X方向(長手方向)において250mmから300mm、好ましくは260mmから290mm、Y方向(短手方向)において180mmから230mm、好ましくは200mmから210mmに形成されている。
【0019】
図3は、図2のIII-III線における断面図である。
清掃用シート100は、複数枚の繊維層がプライ加工(積層)されて薬液が付与されたものであり、例えば、図3に示すように、清掃用シート100の表面層を形成する外層11,11と、外層11,11に挟まれた内層12と、を備えた層構造を有している。
【0020】
(外層:疎水性繊維層)
外層11は、清掃用シート100の表面を形成する疎水性繊維層である。
疎水性繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどを主成分とする化学繊維が適用される。
また、外層11は、ポリエチレンテレフタレート繊維の配合率は80%以上であることが好ましく、その繊維径は、3.3dtex以上であることが好ましい。繊維径を3.3dtex以上とすることで、繊維の剛性(クッション性)が向上し、軽い力でも操作できるようになる。また、3.3dtex以上の太い繊維径のポリエチレンテレフタレート繊維により、繊維間空隙が確保され、毛細管現象が起きにくく、内層12から外層11に薬液が過度に出てしまうことを防止することができる。
なお、外層11における外側の面が、清掃用シート100の表面となる。
【0021】
(内層:親水性繊維層)
内層12は、外層11,11に挟まれ、液保持性を有する親水性繊維層である。
内層12は、液保持性を有する保水層として機能しており、その親水性繊維に薬液が含浸されている。なお、親水性繊維としては、例えば、パルプ、綿、麻などの天然繊維又はレーヨン、アセテートなどのセルロース系化学繊維が適用されるが、保水性を維持する観点からパルプあるいはパルプエアレイドを適用することが好ましい。
また、内層12は、親水性繊維のみで構成することが好ましいが、補強層としてポリプロピレンスパンボンドなど疎水性繊維が適宜含有されていてもよい。
【0022】
また、清掃用シート100において、外層11,11と内層12の境界領域は、互いの繊維が交絡しており、この繊維の交絡している部分の保持する空気により、薬液を保持することができるので、清掃用シート100使用時の薬液の徐放性をより高めることができる。
【0023】
薬液としては、エタノールなどの低級アルコールと、塩化ベンザルコニウムなどの界面活性剤や殺菌剤と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と、を水に溶かしたものが例として挙げられる。
【0024】
なお、上記した清掃用シート100のシート構造はあくまで一例であって、層の数や、各層に含有され得る繊維などは、適宜変更が可能である。
【0025】
図2に戻って、清掃用シート100において、清掃具200のヘッド部201の長手縁部201aに沿って折り曲げられる部分を折曲部Sと称する。
この折曲部Sは、規定の清掃具200のヘッド部201に合わせて、予めおおよその位置が設定されている。即ち、清掃用シート100のY方向の所定位置において、X方向に延在する2列の折曲部Sが設定されている。なお、折曲部Sは、使用者が認識できるように、例えば、清掃用シート100に予め折曲部Sに対応する直線を印刷しても良いし、清掃用シート100に折曲部Sに対応する折れ線を形成しても良い。
そして、清掃用シート100の折曲部Sに沿って、非エンボス部30がX方向に所定間隔ごとに複数配置され、清掃用シート100の非エンボス部30が配された領域を除く全体に亘って、エンボス部20が配置されている。
これにより、清掃用シート100において清掃具200のヘッド部201の長手縁部201aに対応する位置には、エンボス部20と、非エンボス部30が交互に配されることとなる。
【0026】
(エンボス部)
エンボス部20は、清掃用シート100において、シートが厚み方向に圧縮された部分である。
【0027】
図4は、図2のA領域の拡大図である。また、図5は、図4のV-V線における断面図である。
図4及び図5に示すように、エンボス部20には、上側(清掃用シート100の一面側)に凸型となる凸エンボス21と、下側(清掃用シート100の他面側)に凸型(即ち、上側に凹型となる)凹エンボス22と、が形成されている。
凸エンボス21と、凹エンボス22とは、X方向、Y方向のいずれにおいても交互に並ぶように互い違いに配置されている。このように、規則的に凸エンボス21と凹エンボス22が交互に配置されることにより、ごみの捕集性を向上させることができる。
【0028】
エンボス部20において、互い違いに配置された、凸エンボス21と凹エンボス22との間には、中間部23が形成されている。中間部23は、凸エンボス21及び凹エンボス22が形成されていない部分であり、このため、中間部23は、Z方向において、凸エンボス21よりも低く、凹エンボス22よりも高い位置となる。
【0029】
なお、上記のようなエンボスパターンとすることは必須ではなく、ごみの捕集性を向上するという効果は弱まるものの、凸エンボス21又は凹エンボス22が一列に並んでいるエンボスパターンや、不規則に並んでいるエンボスパターンとしてもよい。また、例えば、凸エンボス21又は凹エンボス22のいずれかのみが備えられるようにすることも可能である。
【0030】
(凸エンボス)
凸エンボス21は、図4に示すように、平面視において、X方向に幅が狭く、Y方向中央部にくびれ部を有する、所謂ひょうたん形に形成されている。
凸エンボス21は、X方向において2mmから5mm、好ましくは3mmから4mmであり、Y方向5mmから10mm、好ましくは6mmから8mmであり、Z方向において(中間部23からの高さ)0.5mmから2mm、好ましくは0.7mmから1.5mmに形成される。
【0031】
また、凸エンボス21は、図5に示すように、断面視において、シートの表面(上面)から突出し、その頂部21bが平面状に形成された凸部21aを備えている。
【0032】
(頂部)
頂部21bは、凸部21aの上部に形成された平面状の部分である。
頂部21bの突出方向の上面は、当該上面から起毛した起毛部21cを有している。
【0033】
(起毛部)
上記したように、起毛部21cは、凸部21aの頂部21bの、突出方向の上面(シートの上面)に設けられている。
ここで、「起毛」とは、熱エンボスを行う前(シートを厚み方向に圧縮する前)の不織布がもともと持つ、毛羽立って空気を保持する部分を指す。起毛部21cは、その起毛の保持する空気により、薬液を保持することができるので、清掃用シート100使用時の薬液の徐放性をより高めることができる。
起毛部21cに存在する起毛のZ方向の高さは、例えば、0.05mmから5mm、好ましくは0.1mmから3mmである。
また、起毛部21cの頂部21bにおける広さとしては、頂部21bの全体面積に対して、例えば、10%から99%、好ましくは30%から60%である。
また、起毛部21cの平面形状は、例えば、円形、三角形、四角形等に形成されるが、その形状に特に限定はない。
【0034】
(凹エンボス)
凹エンボス22は、図4に示すように、平面視において凸エンボス21と略同一の形状となる所謂ひょうたん形に形成されている。なお、凸エンボス21と異なる形状としてもよい。
【0035】
また、凹エンボス22は、図5に示すように、断面視において、シートの表面(下面)から突出し、その頂部22bが平面状に形成された凹部22aを備えている。即ち、凹エンボス22は凸エンボス21と上下逆さまとなっており、かかる構成により、清掃用シート100のクッション性を向上させることができる。
【0036】
(頂部)
頂部22bは、凹部22aの上部に形成された平面状の部分である。
頂部22bの突出方向の上面(シートの下面)は、当該上面から起毛した起毛部22cを有している。
【0037】
(起毛部)
上記したように、起毛部22cは、凹部22aの頂部22bの、突出方向の上面(シートの下面)に設けられている。
起毛部22cは、上記した起毛部21cと同一の高さ、広さ、形状とすることができるが、その高さ、広さ、形状を、起毛部21cと異ならせても良い。
【0038】
(非エンボス部)
非エンボス部30は、清掃用シート100の、シートが厚み方向に圧縮なされておらず、起毛を有している部分であり、清掃用シート100の列状の折曲部Sに沿って複数配置されている。
ここで、「起毛」とは、起毛部21c,22cと同様に、熱エンボスを行う前(シートを厚み方向に圧縮する前)の不織布がもともと持つ、毛羽立って空気を保持する部分を指す。非エンボス部30は、この起毛の保持する空気により、薬液を保持することができるので、清掃用シート100使用時の薬液の徐放性をより高めることができる。
なお、非エンボス部30は、全く圧縮がなされていない場合に限られず、起毛が残存する程度に、エンボス部20の圧縮がなされている部分と比較して軽度な圧縮がなされていてもよい。また、非エンボス部30には、起毛していない部分が含まれていても良い。
非エンボス部30の大きさとしては、X方向において40mmから70mm、好ましくは50mmから60mm、Y方向において15mmから70mm、好ましくは20mmから50mmに形成される。
このように設定することで、製造時において、清掃用シート100に折曲部Sに対応する折れ線を形成する場合に、装置による折れ線の蛇行が発生したとしても、適切な位置に折れ線を形成することができる。
【0039】
(凹部)
非エンボス部30の各々は、清掃用シート100が清掃具200に装着された状態において、ヘッド部201の長手縁部201aに対して開口した凹部31を有する形状であることが好ましい。
具体的には、例えば、図2に示すように、非エンボス部30は、右方向又は左方向、即ち、矩形状の清掃用シート100の中央部から長辺に向かい開口した平面視V字状に形成することができる。即ち、平面視V字状の非エンボス部30であれば、V字状の凹部31を有することとなる。
これによって、清掃用シート100をY方向、即ち、清掃用シート100の短辺と平行な方向に動かして清掃を行った場合に、凹部31にごみが溜まりやすく、ごみの捕集性をより高めることができる。
【0040】
また、非エンボス部30は、図2に示すように、列ごとにX方向の位置がずれ、互い違いとなるように配置されている。即ち、ヘッド部201の長手縁部201aの一方に対応する折曲部Sに沿った非エンボス部30と、ヘッド部201の長手縁部201aの他方に対応する折曲部Sに沿った非エンボス部30とは、折曲部Sの延在方向において、異なる位置に配されている。
これによって、清掃用シート100をY方向、即ち、清掃用シート100の短辺と平行な方向に動かして清掃を行った場合に、捕集性を互いに補完し合うこととなり、床面を隙間なく非エンボス部30が通過するので、ごみの捕集性を高めることができる。
【0041】
(清掃用シートの製造方法)
次に、清掃用シート100の製造方法について説明する。
清掃用シート100は、複数の繊維層を積層する積層工程と、積層シートを一対のエンボスロールで加圧してエンボス加工を施すエンボス工程と、エンボス加工の施されたシートに薬液を付与する薬液付与工程と、を有する。
【0042】
積層工程においては、水流交絡法によって、図6(a)に示すように、疎水性繊維層(外層11,11)と親水性繊維層(内層12)が、その境界領域において互いの繊維が交絡した積層シートを作製することができる。
【0043】
エンボス工程においては、例えば、温度80〜130℃、エンボス圧0.2〜1.0MPaの条件による熱エンボスにて、清掃用シート100にエンボス部20を形成することができる。
図6(b)は、このとき用いる一対のエンボスロールER1、ER2の一例を示す図である。
図6(b)に示すように、一対のエンボスロールER1、ER2は、清掃用シート100の凸部21a(凹部22a)の頂部21b(頂部22b)に対応する位置において積層シートの厚み以上の幅の間隙Kを有する。
これにより、頂部21b(頂部22b)の突出方向の上面は加圧されず、当該上面はシートが本来有する起毛が残った状態となって、起毛部21c(起毛部22c)が形成される。なお、図6(b)では、頂部21b(頂部22b)の突出方向の下面は加圧された状態となるものを例示しているが、間隙Kを適宜変更することで、当該下面も加圧されない状態となるように形成しても良い。
また、非エンボス部30は、図示は省略するが、上記エンボス部20を形成するエンボスロールを、非エンボス部30の形状を除くようにデザインすることで、形成することができる。
【0044】
(清掃用シートの使用方法)
次に、清掃用シート100の使用方法について説明する。
使用に際し、清掃用シート100は、清掃具200の矩形の平板状のヘッド部201に装着される。
具体的には、清掃用シート100のX方向に延在する2列の折曲部Sに、ヘッド部201の長手縁部201aを合わせるようにして、清掃用シート100上にヘッド部201が載置される。次いで、清掃用シート100はヘッド部201の長手縁部201aに沿って折り曲げられ、折り曲げられたシート両側部はヘッド部201の上面に係止される。
これにより、例えば、図1に示すように、清掃用シート100のY方向の中央部は、清掃具200のヘッド部201の底面を覆って清掃面を形成し、清掃用シート100においてヘッド部201の長手縁部201aに対応する位置には、即ち、折曲部Sに沿って、エンボス部20と非エンボス部30が交互に配される状態となる。
【0045】
この状態において、主として清掃用シート100のY方向、すなわち短手方向にこれを動かして清掃を行うと、ヘッド部201の底面から清掃用シート100に加わる押圧力により、エンボス部20に保持されている薬液が徐々に放出される。
具体的には、清掃面に対向する凸エンボス21の起毛部21c(或いは、凹エンボス22の起毛部22c)から薬液が放出され、清掃に伴って凸エンボス21(或いは、凹エンボス22)が徐々に潰れると、これに伴って、起毛部21cやその他の部分に保持された薬液が徐々に放出される。
ここで、起毛部21c(起毛部22c)は、その保水性が高く、これにより押圧力で放出される薬液の量を、起毛部21c(起毛部22c)がない場合と比較して少なくすることができ、長時間の液放出性を実現することが可能となっている。
また、内層12と外層11,11は、その境界領域は互いの繊維が交絡していることで、保水性が高く、これにより押圧力で放出される薬液の量を、例えば接着されたシート等と比較して少なくすることができ、長時間の液放出性を実現することが可能となっている。
【0046】
なお、清掃用シート100を、裏返して再度装着して使用することも可能である。この場合には、一度目の清掃時に清掃用シート100の上側にあった起毛部により保持されていた薬液が、徐々に放出される。
【0047】
そして、清掃作業の後期段階においては、ヘッド部201の長手縁部201aにおいて、非エンボス部30に押圧力を加えることにより、非エンボス部30の起毛に保持されている薬液を放出することができ、例えば清掃箇所の仕上げ拭きなどの段階まで、薬液を放出させることができる。
【0048】
また、清掃用シート100においては、エンボス部20により、砂塵やハウスダストといった微細ダストを掻き取ることができ、非エンボス部30の起毛により、毛髪や繊維埃といった粗大ダストを絡め取ることができる。
より具体的には、非エンボス部30の凹部31に粗大ダストが溜まり、非エンボス部30の間のエンボス部20及び清掃面に配されたエンボス部20により、微細ダストを掻き取ることができる。
【0049】
また、清掃用シート100においては、エンボス部20及び非エンボス部30を形成するにあたって、各部で清掃用シート100の目付を変えることはないため、清掃用シート100の強度が損なわれることがなく、清掃中に、清掃用シート100がよれたり、破れたりすることがない。
【0050】
(実施形態の効果)
以上のように、本実施の形態の清掃用シート100は、薬液の付与された清掃用シート100において、シートの表面から突出した凸部21a(凹部22a)を有するエンボス部20を備え、凸部21a(凹部22a)は、その頂部21b(頂部22b)が平面状に形成されており、頂部21b(頂部22b)の突出方向の上面は、当該上面の繊維が起毛した起毛部21c(起毛部22c)を有する。
このため、起毛部21c(起毛部22c)により押圧がかかった際に薬液が放出されにくくなるため、長時間の液保持性を実現でき、清掃時に薬液を徐々に放出することができる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、清掃用シート100の表面を形成する外層11,11と、外層11,11に挟まれ、液保持性を有する内層12と、を備える。
このため、内層12により、保持する薬液量を増やすことができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、内層12と外層11,11の境界領域は、互いの繊維が交絡している。
このため、交絡した繊維により押圧がかかった際に薬液が放出されにくくなるため、除放性をより高めることができる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、エンボス部20は、シートの一面(上面)から見て、当該一面側に突出した凸エンボス21と、シートの他面(下面)側に突出した凹エンボス22と、を備える。
このため、清掃時において、エンボス部20が、凸エンボス21から凹エンボス22にかけて徐々に潰れ、清掃面の面積が徐々に広がっていくので、長時間、ごみの捕集性を維持することが可能となる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、清掃用シート100は矩形状に形成され、凸エンボス21と凹エンボス22とは、清掃用シート100の長手方向及び短手方向のいずれの方向においても交互に並ぶように配置されている。
このため、規則的に凸エンボス21と凹エンボス22が交互に配置されることにより、ごみの捕集性を向上させることができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、エンボス部20が配されていない非エンボス部30を備える。
エンボス部20が微細ダストを捕集し、非エンボス部30が粗大ダストを捕集するので、ごみの捕集性を向上させることができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、清掃用シート100の製造方法において、複数の繊維層が積層された積層シートを、一対のエンボスロールER1、ER2で加圧してエンボス加工を施すエンボス工程を有し、一対のエンボスロールER1、ER2は、シートの凸部21a(凹部22a)の頂部21b(頂部22b)に対応する位置において積層シートの厚み以上の幅の間隙を有する。
このため、頂部21b(頂部22b)の突出方向の上面に、起毛部21c(起毛部22c)を有する清掃用シート100を製造することができる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、清掃用シート100の製造方法において、外層11,11と内層12とを水流交絡法によって交絡させて積層シートを作製する積層工程を有する。
このため、内層12と外層11,11が、互いの繊維が交絡している清掃用シート100を製造することができる。
【0058】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、具体的な構造について適宜変更可能であるのは勿論である。
【0059】
例えば、上記実施の形態においては、所謂ひょうたん形に形成されている凸エンボス21を例示して説明したが、凸エンボス21の形状はこれに限定されない。
具体的には、例えば、図7(a)(b)に示すように、U字状の起毛部21cを有する、U字状の凸エンボス21でも良い。
また、図7(b)に示すように、楕円形状の起毛部21cを有する、三日月状の凸エンボス21でも良い。
また、図7(c)に示すように、略円形の凸エンボス21に、U字状の起毛部21cを形成した形状であっても良いし、図7(d)に示すように、芒星形の凸エンボス21に、十字状の起毛部21cを設けても良い。
また、図7(e)に示すように、楕円形の凸エンボス21に、相似した楕円形状の起毛部21cを設けても良いし、図7(f)に示すように、ハート形の凸エンボス21に、相似したハート形の起毛部21cを設けても良い。
これ以外にも、例えば、円形、多角形等種々の形状に形成することが可能であり、各形状を組み合わせたものとしてもよい。
なお、図示は省略するが、凹エンボス22の形状も、凸エンボス21と同様に諸々の形状にすることが可能であるのは勿論である。
【0060】
また、上記実施の形態においては、V字状の非エンボス部30を例示して説明したが、ヘッド部201に装着された状態において、ヘッド部201の長手縁部201aに対して開口した凹部31を有する形状であれば、非エンボス部30の形状はこれに限定されない。
さらに、非エンボス部30の形状としては、上述したような、ヘッド部201の長手縁部201aに対して開口した凹部31を有する形状であることが捕集性の観点から最も好ましいが、図8に示すように、ヘッド部201の長手縁部201aに対して斜めの方向に延在した形状であれば良い。
かかる形状であれば、ヘッド部201の長手縁部201aに対して、非エンボス部30が斜めに配されることとなるため、ごみを捕集することが可能である。
【0061】
また、上記実施の形態においては、清掃用シート100のY方向にこれを動かして清掃を行う場合を例示して説明したが、清掃用シート100の長辺と平行な方向に動かして清掃を行うことを念頭に、非エンボス部30を、矩形状の清掃用シート100の中央部から短辺に向かって開口した形状となるように形成してもよい。
この場合、清掃用シート100はヘッド部201の短手縁部(ヘッド部201の短手方向に沿った縁部)に沿って折り曲げられ、折り曲げられたシート両端部がヘッド部201の上面に係止される。
【実施例】
【0062】
次に、本発明の実施例及び比較例について、清掃時の捕集性及び徐放性を評価した結果を説明する。以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
外層として、ポリエチレンテレフタレートが80%含有され、バインダー繊維としてポリプロピレンとポリエチレンの芯鞘繊維が20%含有されている、疎水性繊維100%で構成された不織布を準備した。なお、ポリエチレンテレフタレート繊維は、繊度が3.3dtex、バインダー繊維は、繊度1.7dtexのものを用いた。外層の目付は25gsmであった。
また、内層として、パルプエアレイド不織布33gsmと、100%のポリプロピレンスパンボンド不織布17gsmの二層を準備した。
上記した外層と内層とを水流交絡法により交絡させ、四層構造のスパンレース不織布である積層シートを作製した。
この積層シートに、温度120℃、エンボス圧0.7MPaにてエンボス加工を行い、含浸率270%となるように薬液を付与して、図2に示したような、エンボス部及び非エンボス部を備えた矩形状のウエットシートを作製し、実施例1の清掃用シートとした。
【0064】
この清掃用シートの目付は100gsmであり、長辺が300mm、短辺が200mmの寸法であった。
また、エンボス部は、ひょうたん形の凸エンボスと凹エンボスが、長辺方向及び短辺方向に交互に配されたものを用い、凸エンボス及び凹エンボスのサイズはいずれも、長辺が8mm、短辺が3mm、突出方向の高さが0.8mmであった。また、凸エンボスと凹エンボスはいずれも平面視長方形状の起毛部を備え、そのサイズは、長辺が4.4mm、短辺が1mm、高さが0.3mmであった。
非エンボス部は、清掃用シートの中央部から長辺に向かい開口した平面視V字状であり、非エンボス部の長辺方向の全長は45mmで、短辺方向の全長は35mmであった。また、非エンボス部の凹部の、長辺方向の最も長い部分の長さは、20mmであった。
また、長辺方向に隣接する非エンボス部の間の距離は、10mmであった。
【0065】
(比較例1)
実施例1と同様の外層及び内層を水流交絡法ではなく貼りあわせて積層シートを作製した以外、実施例1と同様にしてウエットシートを作製し、比較例1の清掃用シートとした。
【0066】
(比較例2)
エンボス部の形状を以下のように変更した以外、実施例1と同様にしてウエットシートを作製し、比較例2の清掃用シートとした。
エンボス部は、ひょうたん形の凸エンボスと凹エンボスが、長辺方向及び短辺方向に交互に配されたものを用い、凸エンボス及び凹エンボスのサイズはいずれも、長辺が8mm、短辺が3mm、突出方向の高さが0.8mmであった。また、凸エンボスと凹エンボスは、いずれも起毛部を備えないものであった。
【0067】
(比較例3)
実施例1と同様の外層及び内層を水流交絡法ではなく貼りあわせて積層シートを作製し、エンボス部の形状を比較例2と同様にした以外、実施例1と同様にしてウエットシートを作製し、比較例3の清掃用シートとした。
【0068】
(比較例4)
実施例1と同様に水流交絡法にて製造した積層シートに、エンボス加工を施さずに、含浸率270%となるように薬液を付与して、ウエットシートを作製し、比較例4の清掃用シートとした。
【0069】
(比較例5)
実施例1と同様の外層及び内層を貼りあわせて積層シートを作製し、エンボス加工を施さずに、含浸率270%となるように薬液を付与して、ウエットシートを作製し、比較例5の清掃用シートとした。
【0070】
上記実施例1、比較例1〜比較例5のシートの捕集性、徐放性について、以下の基準により評価した。その結果を、表Iに示す。
【0071】
<捕集性の評価>
次に、上記実施例1、比較例1〜比較例5の清掃用シートを、図1に示したような、治具に装着した状態として、清掃用シートの短手方向にこれを動かして清掃を行い、ごみの捕集性を評価した。
【0072】
ここで使用した掃除具は、図1に示したような、清掃用シートが取り付けられるヘッド部と、柄部と、を備えたものであった。
ヘッド部は、天面部と底面部とが貼付されて構成されており、天面部は、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)製の、長辺240mm、短辺95mmの長方形状であって、底面部は、硬度70°のTPE(熱可塑性エラストマー)製の、長辺248mm、短辺98mmの長方形状であった。
また、柄部の長さは、ヘッド部との連結部からハンドルキャップ先端までの長さで、215mmであった。
【0073】
評価の基準は、以下のとおりである。その結果は、表Iに示した。
◎:満足感が得られた
○:多少の塵など残るものの、ほぼ満足感が得られた
△:ごみが残ってしまい、不満がのこった
×:ごみをうまく捕集できず、全く満足感を得られなかった
【0074】
<徐放性の評価>
次に、上記実施例1、比較例1〜比較例3の清掃用シートを、図1に示したような、治具に装着した状態として、清掃用シートの短手方向にこれを動かして清掃を行い、このときの薬液の徐放性を、以下の基準により評価した。その結果は、表Iに示した。
◎:薬液の放出が持続し、満足感が得られた
○:問題ない程度に薬液が放出された
△:薬液の放出量に物足りなさを感じた
×:薬液の放出が持続されず、満足感を得られなかった
【0075】
<総合評価>
上記4点の評価に基づき、以下の基準により総合評価を行った。その結果は、表Iに示した。
○:◎のみ、又は、◎と○である
○:○のみ
△:1つでも△がある
×:1つでも×がある
【0076】
【表1】
【0077】
表Iの結果から、実施例1のシートにおいては、ごみの捕集性及び薬液の徐放性ともに良好で、満足感を得られることがわかる。
また、比較例1のシートから、積層シートを貼りあわせて製造すると、ごみの捕集性及び薬液の徐放性ともに、実施例1と比べて劣ることがわかった。
また、比較例2から、エンボス部に起毛部を備えない形状とすると、ごみの捕集性及び薬液の徐放性ともに、実施例1と比べて劣ることがわかった。
また、比較例2、3から、エンボス部に起毛部を備えない形状であっても、積層シートの製造方法が水流交絡法であると、貼りあわせた場合よりも、ごみの捕集性及び薬液の徐放性が良好であることがわかった。
また、比較例4、5から、エンボス部がない清掃用シートでは、積層シートの製造方法に関わらず、ごみの捕集性及び薬液の徐放性とも満足感を得られなかった。
【符号の説明】
【0078】
100 清掃用シート
11 外層(疎水性繊維層)
12 内層(親水性繊維層)
20 エンボス部
21 凸エンボス
21a 凸部
21b 頂部
21c 起毛部
22 凹エンボス
22a 凹部
22b 頂部
22c 起毛部
23 中間部
30 非エンボス部
31 凹部
S 折曲部
200 清掃具
201 ヘッド部
201a 長手縁部
202 柄部
ER1、ER2 エンボスロール
K 間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8