(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)マルチウェルデバイス内の複数のウェルの夫々に細胞懸濁液の分注量を分注し、前記細胞懸濁液は、平均して前記分注量にX個の細胞が存在するような濃度で前記細胞懸濁液中に存在する細胞を含み、前記分注が液体分注システムを用いて行われ、
(b)前記分注の前及び/又は後に、前記細胞の少なくとも一部を第1の検出可能な標識で標識し、
(c)前記複数のウェルのうちの少なくとも一部の夫々に存在する細胞の数を決定し、
(d)決定した細胞の数が1又は複数であるウェルに試薬を投入し、決定した細胞の数がゼロであるウェルに試薬を投入しない
方法。
前記決定するステップは、画像取得システムを用いて、前記複数のウェルの少なくとも一部の第1画像を取得するステップを含む、ここで、前記第1画像は、該第1画像中のウェルの夫々に現れる細胞の数を示す
請求項1に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、単一細胞を分配および視覚化するための方法、デバイス、アセンブリ、およびシステムを提供する。 例えば、マルチウェルデバイスの複数のウェルに分注量を分注するためのシステムおよび方法がここに提供される。ここで、平均して、所定数の細胞(例えば、1〜20)が分注量に存在し、細胞標識を介して、複数のウェルの各々に存在する細胞の数が決定される。 そのような分注及び細胞検出は、所望の数を含むマルチウェル装置中のウェルの数を増加させるために、所定数未満の細胞(例えば、単一細胞 )を有すると同定されたウェルに関して繰り返し実行され得る。 特定の実施形態では、単一細胞解析(例えば、シークエンシング)は、単一細胞を用いてウェル内で実行される。
【0006】
本開示の実施形態は、単一細胞を迅速に選択し、分注し、視覚化し、解析する方法を提供し、a)ポアソン分布を用いて、細胞をウェルあたり単一細胞に希釈してマイクロ流体デバイスの複数のウェルに分注し、b)顕微鏡及び高速顕微鏡画像解析ソフトウェアを用いて前記ウェルを可視化して、単一細胞を有するウェルを検出し、視覚化し、選択する。幾つかの実施形態では、本方法は、細胞カウントがゼロ(例えば、1回以上繰り返される)または1個以上として明確に同定される個々のウェルに、細胞含有溶液を更に分注するサイクルの実行を含む。他の実施形態では、(例えば、ディスペンスマップファイルを介して)画像解析およびチップマップ位置によって、生化学的、又は生物物理学的、及び/又は細胞生存性に基づく検査を可能にする更なる試薬及び材料の添加のためのウェルの選択が直接的に行われる。
【0007】
更なる実施形態は、a)マイクロ流体デバイス、並びに、b)単一の細胞を有するウェルを検出し、視覚化し、選択するために、顕微鏡、コンピュータソフトウェア、及び迅速顕微鏡画像解析ソフトウェアを実行するように構成されたコンピュータプロセッサを含む顕微鏡コンポーネントを備える。特定の実施形態では、システムは、分注マップファイルを更に含む。
【0008】
特定の実施形態では、本方法は、c)第1試薬を、定められた数の細胞を有する選択されたウェル(例えば、特定のウェル内の1つの唯一の細胞を有するウェル内)のうちの少なくとも1つ(例えば、1…5…10…500…5000…10000;マルチウェルチップの全部または大部分のウェル)に分注することを含む。幾つかの実施形態では、第1試薬は、細胞培養成分、細胞健康測定試薬、細胞分化試薬、薬剤、WTA、WGA、核酸、近接ライゲーションアッセイ(PLA)試薬、細胞表面マーカ、標識抗体、非標識抗体、抗体検出に関連する検出試薬、ナノ物質、細胞を溶解するための試薬、核酸または脂質または炭水化物またはタンパク質細胞成分の検出及び/又は分解のための試薬を含む。 特定の実施形態では、ウェルあたりの細胞の規定数は、1、又は2、又は1を超える任意の数、又はゼロである。
【0009】
特定の実施形態では、本明細書で提供される方法は以下のステップを含む。a)マルチウェルデバイスの複数のウェルのそれぞれに細胞懸濁液の分注量を分注する。ここで、細胞懸濁液は、 平均して、X細胞(例えば、0.1〜100細胞)が分注量内に存在するような濃度にて、細胞懸濁液の中に細胞が存在する。また、分注は、液体分注システムで行われる。b)分注の前及び/又は後に、細胞の少なくとも一部を第1の検出可能な標識で標識する。c)複数のウェルの少なくとも幾つかの各々に存在する細胞の数を決定する(例えば、染色細胞の視覚化、又はシークエンシング法による)。
【0010】
幾つかの実施形態では、Xは1から100細胞(例えば、1…5…10…15…20…30…40…50…60…70…80…90…又は100細胞)の間の数である。特定の実施形態では、Xは1である。更なる実施形態では、複数のウェルの少なくとも1つの中の細胞の数はゼロであると決定される(例えば、ウェルの少なくとも20%が液体を分注する、細胞は存在しない)。他の実施形態では、複数のウェルのうちの少なくとも1つのウェルの細胞数は0から40の間の数である。更なる実施形態では、本方法は、d)X細胞未満を有すると判定されたウェルの少なくとも幾つかに、細胞懸濁液の分注量を分注するステップをさらに含む。
【0011】
他の実施形態では、本方法は、e)(例えば、チップ上の全てのウェルに分注される液体の体積が同じままであるように)X細胞またはX細胞よりも多い細胞を有すると判定されたウェルの少なくとも幾つかに、分注量が略等しく、細胞が存在しない第1の追加容量を分注するステップを更に含む。他の実施形態では、本方法は、e)X細胞未満を有すると予め決定されたウェルの各々に存在する細胞の数を決定するステップを更に含む。更なる実施形態では、本方法は、f)X細胞未満を有すると判定されたウェルに細胞懸濁液の分注量を分注するステップを更に含む。他の実施形態では、本方法は、g)X細胞又はそれ以上を有すると判定されたウェルの少なくとも幾つかに、分注容量に等しく(又は、略等しく)、細胞が存在しない第2の追加容量を分注するステップを更に含む。
【0012】
幾つかの実施形態では、本方法は、分注及び/又は決定ステップの前及び/又は後に、細胞の少なくとも一部を第2の検出可能な標識で標識するステップを更に含む。更なる実施形態では、本方法は、複数のウェルのうちの何れかが存在する場合、第2の標識を有する細胞を含むかどうかを判定することを更に含む。更なる実施形態では、決定するステップは、複数のウェルの少なくとも幾つかのウェルのそれぞれにおいて、第1の検出可能な標識を視覚化することを含む。幾つかの実施形態では、決定するステップは、画像取得システムを使用して複数のウェルの少なくとも幾つかの第1の画像を取得することを含む。ここで、第1の画像は、第1の画像内における各ウェルに存在する細胞の数を示している。更なる実施形態では、画像取得システムは、拡大レンズに連結されたカメラを備える。他の実施形態では、画像取得システムは、コンピュータをさらに備え、コンピュータは、コンピュータプロセッサ、コンピュータメモリ、および画像解析ソフトウェアを備える。更なる実施形態では、画像解析ソフトウェアは、第1の画像を解析し、i)ウェルがX個未満の細胞を含む第1のリスト、ii)ウェルがX細胞を含む第2のリスト、及びiii)X細胞より多くを含むウェルの第3のリストを生成するように構成される。更なる実施形態では、画像解析ソフトウェアは、液体分注システムのために、第1のウェルリストのそれぞれに分注量を分注するための命令を生成する。更なる実施形態では、本方法は、d)第1の画像に基づいて、X細胞未満のウェルの少なくとも幾つかに分注量を分注するステップをさらに含む。他の実施形態では、本方法は、e)分注前にX個未満の細胞でウェルの少なくとも幾つかの第2の画像を取得するステップをさらに含む。ここで、第2の画像は、第1の検出可能な標識を介して、分注前にX細胞未満で各ウェルに存在する細胞の数を示している。
【0013】
他の実施形態では、液体分注システムは、i)複数の流体分注チャネル、ii)細胞懸濁液を収容する供給源容器、及び iii)流体分注チャネルに取り付けれ、供給源容器とマルチウェルデバイスとの間で移動可能であるロボット駆動要素を含む。他の実施形態では、液体分注システムは自動化され、画像解析ソフトウェアから命令を受信するように構成される。いくつかの実施形態では、第1の検出可能な標識は細胞染色を含む。特定の実施形態において、第1の検出可能な標識は、細胞培養成分、細胞健康測定試薬、細胞分化試薬、薬剤、WTA、WGA、核酸、近接ライゲーションアッセイ(PLA)試薬、細胞表面マーカ、標識抗体、非標識抗体、抗体検出に関連する検出試薬、ナノ物質、細胞を溶解するための試薬、核酸または脂質または炭水化物またはタンパク質細胞成分の検出及び/又は分解のための試薬を含む。特定の実施形態では、細胞は、上皮細胞、器官細胞、皮膚細胞、細菌細胞、ヒト細胞、循環癌細胞、幹細胞、造血幹細胞、または任意の他のタイプの細胞である。
【0014】
特定の実施形態では、本方法は、d)X細胞を有すると判定されたウェルの少なくとも1つにおいて生物学的反応を実施するステップをさらに含む。他の実施形態では、本方法は、d)X細胞を有すると判定されたウェルの少なくとも10%において生物学的反応を実施するステップをさらに含む。更なる実施形態では、生物学的反応はシークエンシング反応を含む。更なる実施形態において、シークエンシング反応は、核酸バーコード配列を用いる。更なる実施形態では、マルチウェルデバイスは、少なくとも30個のウェル(例えば、30…75…150…400…1000…4000… 10000…20000…又は30000個のウェル)を含む。他の実施形態では、マルチウェルデバイスは、少なくとも1000個のウェルを含む。特定の実施形態では、マルチウェルデバイスは、マルチウェルチップ(例えば、ナノまたはマイクロウェルを有する)を含む。他の実施形態では、第2の検出可能な標識は、循環癌細胞、及び/又は癌幹細胞、及び/又は検出されることが望ましい任意の他のタイプの標的細胞に特異的である。更なる実施形態では、更なる実施形態では、第2の検出可能な標識は、抗体、その複合物、または抗体の抗原結合部分を含む。
【0015】
特定の実施形態において、細胞懸濁液中の細胞は、腫瘍又は正常組織から精製される。他の実施形態では、分注量は、5〜9000nl(例えば、5…25…100…500…1000…4000…9000nl)である。更なる実施形態では、細胞を標識することは、投与の前である。更なる実施形態では、細胞の標識は分注後である。
【0016】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるシステム及びキットは、a)複数のウェルを含むマルチウェルデバイス、b)複数のウェルの各々に分注量を分注するように構成された液体分注システム、及びc)平均してX細胞(例えば、0.1〜100細胞)が分注量中に存在するような濃度で細胞懸濁液中に存在する細胞を含む細胞懸濁液を含む。
【0017】
他の実施形態では、Xは1〜20細胞(例えば、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10…15…20細胞)である。更なる実施形態では、Xは1である。特定の実施形態では、液体分注システムは、自動又は半自動方式で複数のウェルのそれぞれに分注量を分注するように構成される。他の実施形態では、システムはさらに、d)複数のウェルの少なくとも一部の第1画像を取得し、第1画像内の各ウェルに存在する細胞の数を決定する画像取得システムを含む。他の実施形態では、画像取得システムは、拡大レンズに連結されたカメラを備える。更なる実施形態では、画像取得システムは、コンピュータをさらに備え、コンピュータは、コンピュータプロセッサ、コンピュータメモリ、および画像解析ソフトウェアを備える。更なる実施形態では、画像解析ソフトウェアは、第1画像を解析し、i)ウェルがX個未満の細胞を含む第1のリスト、及び/又はii)ウェルがX細胞を含む第2のリスト、及び/又はiii)ウェルがX個以上の細胞を含む第3のリストを生成する。幾つかの実施形態では、画像解析ソフトウェアは、液体分注システムが分注量を第1のリストのウェルのそれぞれに分注するように命令を生成するように構成されている。他の実施形態では、液体分注システムは、i)複数の流体分注チャネル、ii)細胞懸濁液を収容する供給源容器、 iii)流体分注チャネルに取り付けられたロボット運動構成要素であって、供給源容器とマルチウェルデバイスとの間で移動可能であるロボット駆動要素を含む。追加の実施形態では、システムは、細胞懸濁液中の細胞を標識することができる第1及び/又は第2の検出可能な標識(例えば、細胞のすべてを標識するための一の標識、及び幹細胞や循環腫瘍細胞のような目的の細胞を標識するための他の標識)を含む。他の実施形態において、細胞懸濁液中の細胞は、第1及び/又は第2の検出可能な標識で標識される。特定の実施形態では、第1の検出可能な標識は細胞染料を含む。幾つかの実施形態において、第1の検出可能な標識は、細胞培養成分、細胞健康測定試薬、細胞分化試薬、薬物、WTA、WGA、核酸、近接ライゲーションアッセイ(PLA)試薬、細胞表面マーカ、標識抗体、非標識抗体、抗体検出に関連する検出試薬、ナノ材料、細胞を溶解するための試薬、核酸または脂質または炭水化物またはタンパク質細胞成分の検出及び/又は分解のための試薬を含む。
【0018】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供される方法は以下のステップを含む。a)マルチウェルデバイスの複数のウェルのそれぞれに細胞懸濁液の分注量を分注する。ここで、細胞懸濁液は、 平均して、1個の細胞が分注量内に存在するような濃度にて、細胞懸濁液の中に細胞が存在する。また、分注は、液体分注システムで行われる。b)分注の前及び/又は後に第1の検出可能な標識で細胞を標識する。c)複数のウェルの少なくとも幾つかの各々に0個、1個、又は複数個(例えば、2個、3個、4個またはそれ以上)の細胞が存在するかどうかを判定する(例えば、顕微鏡で視覚化し、デジタルイメージを生成し、各ウェルの細胞の数を示すコンピュータデータを生成する)。特定の実施形態では、本方法は、d)複数のウェルのうちの少なくとも幾つかのウェルのそれぞれに0個、1個、又は複数個のセルがあるかどうかを示すレポート(例えば、コンピュータコード、コンピュータファイル、書面レポート、又は電子レポート)を生成する。
【0019】
特定の実施形態では、本方法は、d)ゼロ細胞を有すると判定されたウェルの少なくとも1つに細胞懸濁液の分注量を分注するステップを更に含む。他の実施形態では、本方法は、d)ゼロ細胞を有すると判定されたウェルの少なくとも50%(例えば、50%…67%…75%…85%…95%…又は100%)に細胞懸濁液の分注量を分注するステップを更に含む。他の実施形態では、本方法は、e)細胞がゼロであることと以前に判定されたウェルの各々に0個、1個、または複数個の細胞が存在するかどうかを決定するステップを更に含む。追加の実施形態では、本方法は、f)細胞懸濁液の分注量を、ゼロ細胞を有すると2回判定されたウェルに分注するステップを更に含む。他の実施形態では、本方法は、g)マルチウェルデバイス内に存在する複数のウェルの全ての少なくとも50%が単一細胞を有すると判定する(例えば、少なくとも50%…55%…60%…65%…75%…80%…85%…又は90%)。
【0020】
幾つかの実施形態では、決定するステップは、複数のウェルの少なくとも幾つかのそれぞれの中に検出可能な標識を視覚化することを含む。他の実施形態では、決定するステップは、画像取得システムを使用して複数のウェルの少なくとも一部の第1の画像を取得することを含む。ここで、第1の画像は、第1の画像内の各ウェルに0個、1個、又は複数個の細胞を含むかどうかを示す。他の実施形態では、画像取得システムは、拡大レンズに連結されたカメラを備える。更なる実施形態では、画像取得システムは、コンピュータをさらに備え、コンピュータは、コンピュータプロセッサ、コンピュータメモリ、および画像解析ソフトウェアを備える。追加の実施形態では、画像解析ソフトウェアは、第1の画像を分析し、i)ウェルがゼロセルを含む第1のリスト、及び/又はii)ウェルが1つの細胞を含む第2のリストを生成するように構成される。更なる実施形態では、画像解析ソフトウェアは、液体分注システムのために、第1のウェルリストのそれぞれに分注量を分注するための命令を生成する。幾つかの実施形態では、本方法は、d)第1の画像に基づいて、ゼロセルを有するウェルの少なくとも幾つかに分注量を分注するステップを更に含む。更なる実施形態では、本方法は、e)分注前にゼロ細胞でウェルの少なくともいくつかの第2の画像を取得する構成を更に含み、第2の画像は、第1の検出可能な標識を介して、分注の前に各ウェルに0個、1個、又は複数個の細胞が存在するどうかを示す。特定の実施形態では、本方法は、決定するステップの前に、(例えば、各ウェルの底部に細胞を収集するために)マルチウェルデバイスを遠心分離するステップを更に含む。
【0021】
特定の実施形態では、液体分注システムは、i)複数の流体分注チャネル、ii)細胞懸濁液を含む供給源容器、及びiii)流体分注チャネルに取り付けられ、供給源容器とマルチウェルデバイスとの間で移動可能であるロボット駆動要素を含む。他の実施形態では、液体分注システムは自動化され、コンピュータから(例えば、画像解析ソフトウェアから)命令を受信するように構成されている。他の実施形態において、第1の検出可能な標識は、細胞染料(例えば、ヘキスト染料)を含む。他の実施形態において、第1の検出可能な標識は、細胞培養成分、細胞健康測定試薬、細胞分化試薬、薬剤、WTA、WGA、核酸、近接ライゲーションアッセイ(PLA)試薬、細胞表面マーカ、標識抗体、非標識抗体、抗体検出に関連する検出試薬、ナノ物質、細胞を溶解するための試薬、核酸または脂質または炭水化物またはタンパク質細胞成分の検出及び/又は分解のための試薬を含む。特定の実施形態において、第1の検出可能な標識は、循環癌細胞、及び/又は幹細胞、及び/又は癌幹細胞(例えば、CD44、CD133、ALDH1など)に特異的である。
【0022】
幾つかの実施形態では、細胞は、循環癌細胞である。他の実施形態では、細胞は幹細胞である。更なる実施形態では、細胞は癌幹細胞(例えば、乳房CSC、卵巣CSC、結腸CSC、前立腺CSC、膵臓CSCなど)である。更なる実施形態では、本方法は、d)単一細胞を有すると判定されたウェルの少なくとも1つにおいて生物学的反応を実施するステップを更に含む。他の実施形態では、本方法は、d)1つの細胞を有すると判定されたウェルの少なくとも50%(例えば、少なくとも50%…70%…90%又は100%)に生物学的反応を行うステップを更に含む。幾つかの実施形態では、生物学的反応は、シークエンシング反応、及び/又はPCR反応、及び/又は細胞溶解反応を含む。特定の実施形態において、シークエンシング反応は核酸バーコード配列を用いる。
【0023】
特定の実施形態では、マルチウェルデバイスは、少なくとも50個のウェル(例えば、50…100…150…400…689…900…又はそれ以上)を含む。更なる実施形態では、マルチウェルデバイスは、少なくとも1000個のウェル(例えば、1000…1500…2500…5000…5184…10000…20000…又はそれ以上)を含む。他の実施形態では、マルチウェルデバイスはマルチウェルチップを含む。
【0024】
特定の実施形態では、本方法は、ステップa)における分注の前及び/又は後に、細胞の少なくともいくつかを第2の検出可能な標識で標識するステップを更に含む。特定の実施形態では、第2の検出可能な標識は、循環癌細胞及び/又は癌幹細胞に特異的である。他の実施形態では、第2の検出可能な標識は、抗体又は抗体の抗原結合部分を含む。幾つかの実施形態において、細胞懸濁液中の細胞は、腫瘍組織から精製される。他の実施形態では、分注量は25〜500nl又は500nl〜1μlである。更なる実施形態において、細胞を標識することは分注前である。更なる実施形態では、細胞を標識することは分注後である。
【0025】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供されるシステムは以下の少なくとも2つを備える。a)複数のウェルを含むマルチウェルデバイス。b)複数のウェルの各々に分注量を分注するように構成された液体分注システム。及びc)以下から選択した少なくとも1つの構成要素。i)平均して、X個の細胞が分注量内に存在するような濃度にて、細胞懸濁液の中に細胞が存在する細胞懸濁液、ii)X個の細胞を含むマルチウェルデバイス内の細胞に液体を分注するための液体分注システムに対し、命令を提供する分注マップファイル。
【0026】
特定の実施形態では、液体分注システムは、自動又は半自動方式で複数のウェルのそれぞれに分注量を分注するように構成される(例えば、
図14−
図16を参照)。
【0027】
特定の実施形態では、システムは更に、d)複数のウェルのうちの少なくとも幾つかの第1画像を取得し、第1画像中のウェルのそれぞれに0個、1個、又は複数の細胞が含まれるかどうかを決定する画像取得システムを含む。他の実施形態では、画像取得システムは、拡大レンズ(例えば、顕微鏡光学系に連結されたCCDカメラ)に連結されたカメラを含む。他の実施形態では、画像取得システムは、コンピュータをさらに備え、コンピュータは、コンピュータプロセッサ、コンピュータメモリ、及び画像解析ソフトウェアを備える。幾つかの実施形態では、画像解析ソフトウェアは、第1画像(および第2画像、第3画像、第4画像など)を解析し、i)ゼロ細胞を有するウェルの第1リスト、及び/又はii)1個の細胞を含むセルの第2リストを生成する。特定の実施形態では、画像解析ソフトウェアは、液体分注システムが分注量を第1のウェルリストのそれぞれに分注する命令を生成するように構成されている。
【0028】
特定の実施形態では、液体分注システムは、i)複数の流体分注チャネル、ii)細胞懸濁液を含む供給源容器、及びiii)流体分注チャネルに取り付けられ、供給源容器とマルチウェルデバイスとの間で移動可能であるロボット駆動(例えばアーム)要素を備える。
【0029】
幾つかの実施形態では、システムは、細胞懸濁液中の細胞を標識することができる第1及び/又は第2の検出可能な標識を更に含む。他の実施形態において、細胞懸濁液中の細胞は、第1及び/又は第2の検出可能な標識で標識される。特定の実施形態では、検出可能な標識は細胞染料を含む。幾つかの実施形態において、第1の検出可能な標識は、細胞培養成分、細胞健康測定試薬、細胞分化試薬、薬物、WTA、WGA、核酸、近接ライゲーションアッセイ(PLA)試薬、細胞表面マーカ、標識抗体、非標識抗体、抗体検出に関連する検出試薬、ナノ材料、細胞を溶解するための試薬、核酸または脂質または炭水化物またはタンパク質細胞成分の検出及び/又は分解のための試薬を含む。
【0030】
特定の実施形態において、マルチウェルデバイスは、少なくとも50個のウェルを含む。 他の実施形態では、マルチウェルデバイスは、少なくとも1000個のウェルを含む。 さらなる実施形態では、マルチウェルデバイスはマルチウェルチップを含む。 他の実施形態では、システムは、循環癌細胞及び/又は癌幹細胞に特異的な第2の検出可能な標識を更に含む。 他の実施形態では、第2の検出可能な標識は、抗体又は抗体の抗原結合部分を含む。 特定の実施形態において、細胞懸濁液中の細胞は、腫瘍組織から精製される。 他の実施形態では、分注量は25〜500nl、又は50nl〜1μlである。
【0031】
以下は、添付の図面を参照した本願発明の詳細な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】MSDNを使用して細胞をチップに移し、顕微鏡で視覚化し、Wafergen Celldetectorソフトウェアを使用して細胞を選択するプロセスフローのフロー図である。
【
図2】350nLディープウェルチップにおいて、付着した(トリプシン処理した)U87MGニューロン細胞及び懸濁U937リンパ球を視覚化した4倍対物顕微鏡視野を示す図である。単一の細胞は、チップウェル内の明るいドットとして容易に同定される。
【
図3】ディープウェルWafergenチップを使用したオンチップ分注実験からの相対セル数を示すバーグラフである。ヘキスト33342で染色した培養U937細胞(表1の理論的割合と比較して)は、入力の相対濃度の増加関数として、1に等しいか1より大きい細胞数の相対百分率を示す。 7つの視野(FOV、典型的には36ウェル/FOV)は、UV励起を用いて手動で計数することにより、入力細胞の各濃度について解析された。グラフ上の入力セルの相対濃度ごとに、「セル数=0」、「セル数=1」および「セル数>1」がそれぞれ黒、ダークグレー、ライトグレーで示されている。
【
図4】ポアソン分布の分注ステップを1つだけ使用する場合について、5184ウェルチップフォーマット(72×72フォーマット)への細胞の理想的なポアソン分布にフィットする理論曲線を示す図である。第1の分注後にウェル当たり単一細胞を含む理論的ウェルの数は、第1ラムダ(平均)値の関数として示される。この初期分注のデータポイントは、このグラフ及び続く
図5−9のグラフにおいて黒い菱形で示されている。
【
図5】2つの分注ステップを使用した場合について、5184ウェルチップフォーマット(72×72フォーマット)への細胞の理想的なポアソン分布にフィットする理論曲線を示す図である。ここでは、第1の分注に続いてゼロセルを含むと予測される残りのウェルの数が同定され、第2のMSNDポアソン分布分注(再帰的ポアソン分布;RPD)が行われる。第2の分注後にウェル当たり単一細胞を含む理論的ウェルの数は、第1のラムダ(平均)値の関数として示される。この2つの分注フォーマットのデータポイントは、このグラフ及び続く
図6−9のグラフにおいて黒丸で示される。
【
図6】2つの分注ステップを使用する場合について、5184ウェルチップフォーマット(72×72フォーマット)への理想化されたポアソン分布にフィットする理論曲線を示す図である。ここでは、第1の分注に続いてゼロセルを含むと予測される残りのウェルの数が同定され、第2のMSNDポアソン分布分注(PRD)が行われる。第2の分注後に1ウェルあたり単一細胞を含む理論ウェルの数は、第2のラムダ(平均)値の関数として示される。
【
図7】3つの分注ステップを使用する場合について、5184ウェルチップフォーマット(72×72フォーマット)への細胞の理想的なポアソン分布にフィットする理論曲線を示す図である。ここでは、第2の分注に続いてゼロセルを含むと予測される残りのウェルの数が同定され、第3のMSNDポアソン分布分注(RPD)が行われる。3回目の投与後に1ウェルあたり単一細胞を含む理論的ウェルの数は、最初のラムダ(平均)値の関数として示されている。この3つのディスペンスフォーマットのデータポイントは、このグラフ及び続く
図8−9のグラフに黒丸で示される。
【
図8】3つの分注ステップを使用する場合について、5184ウェルチップフォーマット(72×72フォーマット)への細胞の理想的なポアソン分布にフィットする理論曲線を示す図である。ここでは、第2の分注に続いてゼロセルを含むと予測される残りのウェルの数が識別され、第3のMSNDポアソン分布分注(RPD)が行われる。 3回目の分注後に1ウェルあたり単一の細胞を含む理論的ウェルの数は、第2ラムダ(平均)値の関数として示されている。
【
図9】3つの分注ステップを使用する場合について、5184ウェルチップフォーマット(72×72フォーマット)への細胞の理想的なポアソン分布にフィットする理論曲線を示す図である。ここでは、第2の分注に続いてゼロセルを含むと予測される残りのウェルの数が識別され、第3のMSNDポアソン分布分注(RPD)が行われる。 3回目の分注後に1ウェルあたり単一細胞を含む理論ウェルの数は、3番目のラムダ(平均)値の関数として示されている。
【
図10】5184ウェルフォーマット(72×72フォーマット)への細胞の理論反復ポアソン分布のデータモデリングを示す図である。モデル化は、ホールド数を5に設定し、隠れノードを3に設定したK倍検証方法を使用して、ニューラルネットワークモデルフィッティング(JMPバージョン11ソフトウェア)を用いて行った。1(すなわち、単一細胞を有するウェル)に等しい細胞カウントに対する2つの分注の合計に対する応答限界は最大に設定され、予測プロファイラは最大の望ましさに設定された。 2つのx軸上の予測プロファイラにおける灰色のタイプセットは、(1回の操作による)合計2回の分注の後に示された最大数(単一細胞のy軸上の灰色のタイプセットで示される)を達成するための各反復に対する最適な予測ラムダを示す。 2つの分注のそれぞれについての最適な予測ラムダ値は、
図5及び
図6に見られるグラフのラムダ値に対応する。
【
図11】5184ウェルフォーマット(72×72フォーマット)への細胞の理論反復ポアソン分布のデータモデリングを示す図である。モデル化は、ホールド数を10に設定し、隠れノードを6に設定したK倍検証方法を使用して、ニューラルネットワークモデルフィッティング(JMPバージョン11ソフトウェア)を用いて行った。1(すなわち、単一細胞を有するウェル)に等しい細胞カウントに対する3回の分注の合計に対する応答限界は最大に設定され、予測プロファイラは最大の望ましさに設定された。3つのx軸上の予測プロファイラの灰色タイプセットは、(2回の操作による)合計3回の分注の後に示された最大数(単一細胞のy軸上の灰色のタイプセットで示される)を達成するための各反復に対する最適な予測ラムダを示す。3回の分注のそれぞれについての最適な予測されたラムダ値は、
図7、8及び9に見られるグラフのものと一致する。
【
図12】150nLチップ内で視覚化された5184ウェルのうちの36個を表示する4倍対物レンズ視野を示す図である。 SK−BR−3細胞をヘキスト33342色素及びHER2/neu抗原を標的とするAPC結合モノクローナル抗体で二重染色した。全てのSK−BR−3細胞は、ヘキスト333342超生体染料で染色される(左パネル)。隣接する右のパネルは、SK−BR−3(HER2 / neu / ERBB2陽性)細胞をこの細胞表面抗原に特異的な抗体で処理した同じ36個のウェルのFOVを示す。
図12の2つの画像の比較は、ヘキストシグナルが、Cy5フィルタセットから得られた結合体化抗体生成シグナルと特異的に重なることを示している。
【
図13】150nLチップ内で視覚化された5184ウェルのうちの36個を表示する4倍対物レンズ視野を示す図である。 SK−BR−3細胞をヘキスト33342色素で二重染色し、ネガティブコントロールAbをマウスlgG2B−APCを標的とした。全てのSK−BR−3細胞は、ヘキスト333342超生体染料で染色される(左パネル)。隣接する右パネルは、SK−BR−3(HER2 / neu / ERBB2陽性)細胞がこの細胞表面抗原に特異的ではない抗体で処理された同じ36個のウェルのFOVを示す。
図13の2つの画像の比較は、ヘキストシグナルが、Cy5フィルタセットから得られた陰性対照抗体生成シグナルと重複しないことを示している。
【
図14】フード内に収まる例示的なロボット液体分注システムを示す図である。
【
図15】フードが除去された例示的なロボット液体分注システムを示す図である。
【
図16】例示的なロボット流体分注システムの拡大図である。液体分注システムは、複数の流体チャネルを含む流体駆動構成要素、384個の個々のサンプル供給源区画及び供給源容器を定位置に保持する第1固定要素と共に示される供給源容器、並びに、WAFERGEN5184ナノウェルチップであってもよく、第2固定要素によって定位置に固定されるマルチウェル試験装置を含む。
【
図17】単一種のサンプル(U87−MG−RFP及びNIH3T3)および実施例2に記載された混合種のサンプルについて、非相同ゲノム領域に対する整列したゲノムリードのグラフである。軸外にクラスタ化されたデータ点は、 1ウェル当たり1つ以上の細胞型を有するウェル集団を表す。
【
図18A】CellSelectソフトウェアからの例示的な出力を示す図である。
図18Aにおいて、ウェルは、18/21の行/列位置に示される。このウェル及びそれに関連する画像からの結果が提示され、これを分注ファイルまたは分注マップに含める候補として識別する。このウェルは、適切な画像解析閾値及び/又はユーザの好みに合致するオブジェクトの存在を示す単一の実行可能なセル(矢印によって示される)を含む。単一のウェル(右上のパネル)のヘキスト蛍光画像では、ヨウ化プロピジウムチャネル(右下パネル)に明らかな対応するシグナルは存在しない。
【
図18B】CellSelectソフトウェアからの例示的な出力を示す図である。
図18Bは、分析のために分注マップに含める候補として選択されていないウェルの例を示しており、その結果、オブジェクトは潜在的なセルマルチプレット、セルクラスタとしてフラグ付けされる。
【
図18C】CellSelectソフトウェアからの例示的な出力を示す図である。
図18Cは、1個より多い細胞を含むウェルの排除、又はヨウ化プロピジウムチャネルのシグナル検出による排除を示す。
【
図18D】CellSelectソフトウェアからの例示的な出力を示す図である。3つのセルを含むのでソフトウェアによって除外されるウェルの例を示す。
【
図18E】CellSelectソフトウェアからの例示的な出力を示す図である。ウェル選択ソフトウェアによって生成された分注マップを示す。分注マップは、試薬を適切なウェルに選択的に送達するようにディスペンス装置をプログラムするために使用される。
【
図19】基準ウェルを含むウェルの6×6アレイの画像を示す図である。これらの基準ウェル(この例では5つ)には、蛍光色素(赤い矢印で強調表示される)が含まれており、ユーザは取得中のチップの正確な向きを保証し、アレイのウェル位置を推測することができきる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示は、単一細胞を分注及び視覚化するための方法、デバイス、アセンブリ、及びシステムを提供する。例えば、マルチウェルデバイスの複数のウェルに、平均で予め定められた数の細胞(例えば1〜20)が存在する分注量を分注し、細胞標識を介して、複数のウェルの夫々に存在する細胞の数が決定するためのシステム及び方法がここに提供される。このような分注及び細胞検出は、要求される数(例えば1つの細胞)を含んでいるマルチウェルデバイス中のウェルの数を増加させるために、所定数未満の細胞を有するものとして識別されるウェルについて、数回繰り返され得る。特定の実施形態では、単一細胞解析(例えば、配列決定)が単一細胞を用いてウェルにおいて実施される。
【0034】
細胞の異種性は、生物学的組織及び細胞の一般的な特徴である。遺伝学者は、癌、自己免疫疾患及び神経学的疾患を含む複雑な疾患を特徴付けるために努力している。しかしながら、これらの疾患を引き起こす内在的なメカニズムを決定することは、依然として手に入れていない。細胞が新たな突然変異を累積するにつれて、それらの細胞は、正常な細胞と共存するポリクローナル細胞群を形成するかもしれない。結果として、配列しているバルク細胞群は、これら独特の希少細胞タイプの根底にある異種性を隠すことができ、「干し草中の針を見つける」ことが困難となる。群内/細胞間の差異を明らかにするための別のアプローチは、ある群から選択された個々の細胞における核酸配列を評価することである。単一細胞分析は、個別のDNA及びRNA発現プロファイルを有する亜集団を定義するために使用されてきた。要約すると、単一細胞分析は、複雑な疾患の以前より「隠れた」機構を明らかにする可能性があると広く考えられている。
【0035】
単一細胞分野の中核となる要件は、評価されるべき試料が単一細胞のみを含んでいることを明白かつ曖昧さなく検出することである。伝統的な単一細胞の単離手法は、FACS装置(Becton Dickinson)マイクロ流体キャプチャ(Fluidigm)の限定され又は広く分散された細胞希釈法は、高価であり、労働集約的であり、大きなサンプル入力方法を必要とし、標準的な分子生物学ワークフロー内のより多くの細胞の必要性に容易に適合しない。一方、細胞のランダムな沈着は、予測困難であり、確率的に分布することがあり、細胞分布の予測が扱いにくくなる。
【0036】
別の手法は、多くの分注の平均が分注すべき単一細胞となるように、反応チャンバに細胞を分注することである。この現象の統計的記述は、ポアソン分布として知られている。理論的には、1ウェル当たりの単一細胞の分注(nは正確には1細胞であり、0,2,3,4,5,6個などの細胞ではない)は、正確に1細胞を含むウェルの36.8%(理論上の最大値)に制約される。しかしながら、ポアソン分布は、入力セル濃度を非常に広い範囲の占有率に変更することに活用され得る。ウェル当たりの所望の細胞数(例えば1細胞/ウェル)を最適化する際のトレードオフが存在する。より具体的には、単一細胞を含んでいるウェルの所望の比率(ラムダが0.185に近づく10:1の比率)を達成するように最適化することは、如何なる細胞も存在しないウェルの思わしくない割合(>82%)をもたらす結果となり得る。サイズ分離手法と並んでウェル当たり1細胞を特に標的にしようとした同様の手法が最近報告されている。しかしながら、その場合、おそらく使用される細胞捕獲装置の物理的制約のために、ウェルの10%のみが単一細胞を含有しただけであった。しかしながら、その方法論は複雑であり、特殊な試薬が必要である。その場合、おそらくそのシステムの物理的制約のために、ウェルの10%のみが単一細胞を含有しただけであった。重要なことに、このようなデバイスのサイズ制限要素は、各ウェルが単一細胞のみを含む可能性を排除することはできない。
【0037】
エマルジョンベースの方法は、単一細胞を選択するために、油中水滴のエマルジョンに細胞を配置することを含む。このようなシステムは、相互混合から隔離できるという利点を提供する。しかしながら、これらの油分離区画は操作が難しい。さらに、そのようなエマルジョンは、クローン性を達成するために標準的な未選択のポアソン統計に依存するボルテックスを必要とすることが多い。しかしながら、これらの手法は、少数部分の占有されている区画と、多数の占有されていない区画とを導く。結果として、エマルジョンは、コストを増加させ、一旦エマルジョンが形成された場合、制御された方法でウェル中の追加物質を交換することが困難なマイクロ流体システムで生成される。更に、エマルジョンPCRは、容易に一般化することができない条件を用いて任意に実施される。
【0038】
高価で複雑な装置を使用せずに単一細胞を単離することは困難である。更に、このようなシステムは、典型的には384個より多くの単一細胞を捕獲することはできない。結果として、マイクロ流体チップ(例えば、Wafergen、Freemont、CAにより販売されているもの)中の細胞を視覚化するための顕微鏡検査を組み合わせた統計的方法がここに提供される。本開示の実施形態の進展の際に行われた研究は、細胞を分注するためにポアソン分布を使用し、ポアソン分布に関連する問題を解決する。簡潔に言えば、マイクロチップは、細胞が存在しない非常に多くのウェルを有するか(チップ容量の広範な利用率)、又は2個以上の細胞を含む非常に多くのウェルを有する(単一細胞解析を妨げ、悪化させる)ため、ポアソン分布は、細胞を分注するために統計的に制限されている(表1)。
【0040】
本開示は、例えば(a)それらの処理における1度だけの分注機会、及び/又は、(b)単一細胞を実際に含むウェルの非視覚的確認を有する技術の統計的限界を克服する。いくつかの実施例では、下流のゲノム又は他の分析のために提出されたサンプルは1つの唯一の細胞を含むことが99%(又はそれ以上)の信頼性で確立される。本開示は、特定の実施形態において、ポアソン統計、ロボット液体処理、顕微鏡検査に基づく画像解析(例えば、ソフトウェアの組み合わせ)を反復的に使用して、マルチウェルデバイスのウェルに含まれる単一細胞(例えば5184ウェル形式のチップ当たり2000個より多くの単一細胞)を迅速かつ正確に同定する、単純かつ強固に商業的に適用できる方法を提供する。このような方法は、必要に応じて大きな数に拡張し得る。この問題を解決することは、商業的、科学的、そして最終的に医学的価値を有する。
【0041】
本開示は、DNA、RNA及び又はその他の適用例を単離し、処理するためのマイクロ流体(例えば、WaferGen SmartChip)技術の使用を記載する。細胞は、分注体積当たり平均で1細胞が分注されるようにポアソン統計を用いて希釈される。特定の実施形態では、顕微鏡検査(例えば、拡大光学系)は、個々のウェルを視覚化し、そのウェルが単一細胞を含むか否かを直接的に把握するために使用される。特定の実施形態では、(例えば、
図14−16に示すように)マルチサンプルディスペンサは、特に単一細胞のみを余有するウェル内の溶解、DNA又はRNAの増幅、及びサンプルのバーコード化を含む一連の生化学ステップを実施するようにプログラムされる。実施可能な分析の例には、WGA、PCR、又は次世代配列決定が含まれる。
【0042】
特定の実施形態では、ウェルがゼロ細胞を受け取ったと識別される場合、ポアソン分布の統計的限界を回避するために、第2(及び第3)の付加的な再帰的ポアソン分布(RPD)ステップを使用してもよい。それゆえ、単一細胞のチップ上の占有率を理論上の最大値である37%から50%以上に上昇させることができる。本開示におけるRPDは、(a)チップ上の反応容器(ウェル、チャンバなど)に細胞含有溶液を分注すること、(b)個々のウェルにおけるチップ上の細胞を視覚化すること、(c)ソフトウェア援助による顕微鏡検査によって個々のウェルにおけるチップ上の細胞数(0に等しい、1に等しい、及び1より大きい)を計数すること、及び、(d)前回のラウンドで細胞数が0と特に同定された個々のウェルへの細胞含有溶液の更なる分注サイクルを実行する反復サイクルに言及する。RPDの目的は、1つの分注に対するポアソン分布の理論的限界を上回る単一細胞(又は他の所望の数の細胞)を含む、占有された反応容器(ウェル、チャンバなど)の数を最大化することにある。本開示は、反復サイクルの回数に制限を設けていない。
【0043】
要約すると、このアプローチの有用性、簡単明瞭性、及び堅牢性は、例えば、実施すべき単一細胞核酸に関する、商業的に関連する研究開発、スクリーニング、化学物解析、及び/又は診断などの様々な状況下における使用に推薦する。
【0044】
幾つかの実施形態において、本開示は、個々の細胞を単離し、マイクロ流体の個々のウェル(例えば、Wafergen's SmatChip wells)に移送する方法を開示する。例えば、細胞は、DNAに結合すると強い青色の蛍光を発する一般に入手可能な超生体染料ヘキスト33342で最初に染色される。細胞は計数され、分注量当たり1細胞を含むように希釈され、供給源容器(例えば、384ウェルプレート)に補給され、ロボットマイクロ流体分注器(例えば、Wafergen Multiple Sample Nano Dispenser (MSND))を用いて、ディープウェルチップに直接分注される。マルチウェルチップは、各ウェルの底に細胞を集めるために遠心分離機にかけられる。次いで、各ウェルは、0個、1個、2個、3個、又は4個の細胞が各ウェルに分注されたか否かをはっきりと確認するために、自動顕微鏡検査及び画像解析によって視覚化される。この品質管理ステップは、チップにおける各ウェルの内容物を迅速かつ確実に識別できる点で重要かつ特異的である。この例示的なステップを
図1に示す。
【0045】
図2はディープウェル内で視覚化された接着性(トリプシン処理)U87−MGニューロン細胞(パネル1)及び懸濁U937リンパ球(パネル2)の4倍対物顕微鏡の図を示す。
図2は、接着性細胞又は懸濁培養細胞のいずれかを分注するこの系の能力を示している。このプロセスは、5154ウェルチップに細胞を分注するのに〜10分を要し、顕微鏡イメージを取得するのに3分を要する。分注された細胞は、例えば、下流側の解析で使いやすいように、直接的に又は−80℃に冷凍されて使用される。このチップで可視化された細胞は、
図1に示すように用意された。
【0046】
本開示の実施形態の開発中に行われた言葉では、5184ウェルチップ(異なる能動の細胞を播種したn=5のチップ)の14%〜29%が単一細胞を有することが日常的に観測された。これらの単一細胞占有率は、単一の5184ウェルチップ内で、725〜1451個の単一細胞に変換する。これらの占有率は、単一細胞の市場先導者(Fluidigm)の単一細胞96細胞回収率よりも7倍から15倍高い。MSND(
図4;表2)を使用して単一分注後の「オンチップ」細胞数分布プロファイルを評価するために、入力細胞を4倍相対濃度範囲にわたって滴定する実験が行われた。
【0048】
この研究では、単一細胞数は、見かけの最大値(例えば、入力細胞の相対濃度=3.0)での細胞濃度に対して29.8%であった。全体として、適切に検査された入力細胞分布範囲に対する細胞数の相対分布(例えば、ゼロに等しい、1に等しい、及び1より大きい)は、ポアソン分布を反映する(テーブル1を参照)。
【0049】
特定の実施形態では、本開示の方法及びシステムは、比較的単純明快であり、最小のトレーニングで非常に堅牢であるという利点を有する。本開示は、複雑で高価な低スループットマイクロ流体システム(例えば、Fluidigm C1チップ)及び細胞(FACS)の過剰な物理的操作の排除を取り除く、現在の単一細胞単離アプローチと比較して多くの利点を提供する。様々な生化学的及び分子生物学的プロコトルをこれらのウェルで実行できるようなオープンシステムであるという利点を有する。エマルジョンPCRは必要がない。更に、必要最小限の訓練または装置で、他のシステムよりも著しい多くの単一細胞を単離する。特定の実施形態では、1又は複数の再帰的ポアソン分布ステップを実行することは、例えば50%より多く(例えば、50%…60%…75%…85%…より多く)まで単一細胞占有率を上昇させるポアソン分布の統計的限界(テーブル1)を回避すると予想される。
【0050】
単一分注ステップ(
図4)においてポアソン分布の統計的限界を超えて単一細胞占有率を上昇させる理論的基礎は、統計ソフトウェアパッケージを用いてモデル化された。本開示の一態様は、どのマイクロウェルがゼロ細胞を含むかを決定するために再帰的ポアソン分布(RPD)を利用し、特に、2回、3回等の繰り返しのためにウェルに細胞含有溶液を引き続いて分注することができることである。
【0051】
特定の実施形態では、自動化されたシステム及び方法は、マルチウェル試験装置のどのウェルが所望の数の分注された細胞(例えば、1つのウェルにつき1つの細胞)
を含むのかを決定するのに用いられる。特定の実施形態では、自動イメージング及び自動細胞選択のためのソフトウェアは、どの細胞が所望の数の細胞を含むのかを決定するのに用いられる。これに関して、どのウェルが所望の数の細胞を含み、そのような細胞に試薬が投与され、更なる解析に使用されることを示すために、(例えば
図18eに示すような)分注マップが生成され得る。
【0052】
Wafergen 5184ウェルチップ及びHoechst 33342タイプ及びヨウ化プロピジウム蛍光を使用する1つの典型的な実施形態は、
図18及び
図19を参照し、以下の通りである。分注装置(例えば、Wafergenのマルチサンプル・ナノディスペンサー)を介して、マルチウェル試験装置(例えば、5185ウェルを有するチップ)に細胞を(例えば、本明細書に記載のポアソン分注を使用して)一旦沈着させると、機械化された顕微鏡ステージのような機械化されたプラットフォームを使用して、全てのウェルの画像取得が行われる。画像取得は、幾つかの実施形態では、Hoechst33342及びヨウ化プロピジウム蛍光の検出と共通して、2つの波長で収集される。各画像は、5184ウェルチップアレイ内の6×6配列のウェルから構成されてもよい。5184ウェルの全配列の画像化は、検査した各波長で144個の顕微鏡画像ファイルを生成し、2つの波長で計測された場合、合計288個の画像を生成する。Wafergen のCellSelectソフトウェアのようなウェル選択ソフトウェアは、与えられたチップアレイ(例えば、SmartChipアレイ)に関連する画像の全セットを開くことを可能にする。画像解析は、1)基準ウェル配列(
図19を参照)による画像取得中のチップの正しい向きの確認、2)288個の画像ファイルのそれぞれにおける各ウェルの位置の評価、3)各画像ファイルにおける各ウェル内の潜在的な細胞の照合、4)チップウェル、バーコードシーケンス、検査波長及び関心のある追加のパラメータによる注釈を付けたユーザフレンドリーな出力を生成する解析の提示、の4つの主なステップから構成されている。
【0053】
ウェル位置の定位及び評価の確認は、各チップ(
図19を参照)の既知のウェル位置(基準ウェル)に配置された投与された色素(例えば蛍光色素)の解析によって実現される。基準ウェルは、画像取得中に正しいチップの向きを確認するために、非対称的な方法でチップアレイのコーナに配置されてもよい。同様に、非基準ウェルのウェル位置は、基準ウェル間の既知の距離と、チップアレイ上のアレイ構造の寸法の情報とに基づいて、推測され得る。
【0054】
ウェル位置が特定された場合、細胞の存在又は非存在を定義する自動又はユーザ定義の画像解析閾値を満たす各ウェル内のオブジェクトの数を特定するために、画像解析が実行される。これらのパラメータは、対象物及びバックグラウンドの蛍光強度、サイズ及び丸み率が含まれるが、これらに限定されない。更に、複数の波長からの結果は、細胞生存率などのパラメータを評価するために、各オブジェクトについて組み合わせてもよい。次いで、画像解析結果は、アレイ位置(行又は列位置)によって集約され、良好なレベルのユーザ評価が可能となるように、与えられたアレイ位置のバーコード及び画像解析値に関連付けられる。
【0055】
重要なことに、ウェル選択ソフトウェア(例えば、Wafergen のCellSelectソフトウェア)は、続く試薬の分注を受けるために、ウェルが単一細胞の候補であるか、若しくは他のユーザ定義されたウェルであるかを示す報告書を生成する。そして、これらのウェルは、後段の生化学ステップで使用される分注マップ又はファイル又はフィルタファイルを構築するために使用される。
【0056】
CellSelectソフトウェアの出力例を
図18A−18Dに示す。
図18Aでは、1つのウェルは、行/列の18/21の位置に存在する。このウェル及び関連する画像からの結果は提示され、このウェルが分注ファイル又は分注マップに含める候補として特定する。このウェルは、画像解析閾値及び/又はユーザの選択に適合するオブジェクトの存在を示す単一の生存可能な細胞(矢印によって示される)を含む。単一のウェルのHoechst蛍光イメージでは、ヨウ化プロピジウムチャネル(右下パネル)に明らかに対応する信号は存在しない。
図18Bは、潜在的なセル多重線、セルクラスタとしてフラグが立てられたオブジェクトという結果になる解析のために、分注マップに含める候補として選択されないウェルの例を示している。
図18Cは、1個より多い細胞を含むウェルの排除、又はヨウ化プロピジウムチャネルの信号検出による排除を示している。
図18Dは、3個の細胞を含むのでソフトウェアによって排除されるウェルの例を示している。
【0057】
全ての画像化されたウェルの解析が完了すると、試薬分注マップ(「分注又はフィルタファイル」とも称する)が作成される。ウェル選択及び続く分注ファイルマッピングは完全に自動化され得る。若しくは、ユーザの必要性に応じてウェルを取捨選択するために、CellSelectソフトウェア(若しくは他のウェル選択ソフトウェア)内で、ユーザにより編集され得る。この分注マップは、逆転写などの更なる処理のために試薬を適切なウェルに選択的に与えるために、WafergenのMSNDなどの分注要素をプログラムするために使用される。
図18Eは、標準的なWaferGen72×72チップアレイに配置された単一細胞を局在化させる標本分注マップを生成する典型的なCellSelectソフトウェアを示している。典型的には、各分注及び分析イベントは、固有のチップIDで注釈を付けられた固有の分注マップを生成する。
図18Eは、更なる上段の処理のために、試薬分注のために選択された特定のウェルを強調する分注マップの概略図を提供する。
【0058】
本開示は、使用される細胞のタイプによって限定されない。特定の実施形態では、癌細胞、循環癌細胞、幹細胞、及び癌幹細胞が用いられる。大部分の癌死亡は、遠位の器官に腫瘍細胞を循環させることによる転移の広がり及び増殖によって引き起こされるようである。循環腫瘍細胞(CTC)、CTCクラスタ(2個以上の個々のCTCが結合している)、及び癌幹細胞(CSC)は、最初に局在化され、潜伏性全身性又はアジュバンド治療後に枯渇してもよい。したがって、CTC及び関連する幹細胞は、正常な非癌性細胞の大きなバックグラウンド内にしばしば少ない数で存在する。これらの細胞の低頻度は、大きな「ノイズ」バックグラウンド内で必要な癌細胞シグナルを検出するための複雑な解析問題(干し草の中の針)を生み出す。細胞表面マーカに特有の癌細胞の検出、及びこれらの細胞の解析は、転移性拡散の生物学を理解することと深く関連する。本願明細書で提供される方法及びシステムは、そのような重要な癌細胞の単離及び分析を可能にする。
【0059】
単一細胞、多細胞及び細胞クラスタは、たんぱく質、脂質、炭水化物(例えば糖鎖付加)翻訳後修飾、核酸及びそれらの収束、又はこれらの部分の様々な組み合わせを含むが、これらに限定されない抗原/表現型細胞表面又は細胞内マーカの存在に基づいて、細胞又は組織環境又は個体群から初期的に濃縮又は枯渇され得る。癌細胞を含む単一細胞中の細胞表面マーカの検出、及びマイクロ流体デバイスの個々の離散的なウェルにこれらの細胞を移すことは、本願明細書に記載の方法及びシステムを用いて実行される。他の実施形態では、標識化された細胞は、広く利用可能な様々な蛍光フィルタを用いて標準化又は自動化された顕微鏡検査を介して直接的に検出されるウェル及び抗原部分に直接的に分注され得る。
【0060】
循環腫瘍細胞(CTC)の濃縮及び視覚化の方法は、当技術分野で公知であり、本願明細書に記載の方法及びシステムで用いられる初期細胞懸濁液を生成する(及び後で視覚化する)ために使用され得る。例えば、Krebs et al. Nat Rev Clin Oncol. 2014 Mar;11(3):129-44の表1(本願明細書に参考として援用され、特に表1に関する)。CTCを濃縮及び視覚化し得るマーカの例は、CD45、EpCAM、MUC1及びHER2が含まれるが、これらに限定されない。このようなマーカに対する抗体は、そのような細胞を標識化かつ視覚化するために使用され得る。フローサイトメトリ、カラム結合などの任意のタイプの適切な方法が、CTCを単離及び濃縮するために使用され得る。
【0061】
本開示は、使用されるマルチウェル試験デバイス(例えば、プレート又はチップ)の種類によって限定されない。一般に、このようなデバイスは、液体(例えば、呪力のみでウェルから流れ出ないようにウェルに閉じ込められた液体)を含む、若しくは含むように寸法が定められた複数のウェルを備える。1つの典型的なチップは、WAFERGENの5184ウェルスマートチップである。他の典型的なチップは、米国特許第8,252,581号明細書、米国特許第7,833,709号明細書、及び米国特許第7,547,556号明細書にて提供される。例えば、そこで使用されるチップ、ウェル、熱循環条件、及び関連する試薬を含む全体が参照により本願明細書に組み込まれる。他の典型的なチップは、QUANTSTUDIOリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)で使用されるOPENARRAYプレートを含む。他の典型的なマルチウェルデバイスは、96ウェル又は384ウェルプレートである。
【0062】
マルチウェルデバイスの全体的なサイズは変動してもよく、例えば数ミクロンから数センチメートルの厚さ、数ミリメートルから50センチメートルの幅又は長さの範囲であってもよい。典型的には、装置全体のサイズは、幅及び/又は長さが約10mmから約200mm、厚さが約1mmから約10mmの範囲である。幾つかの実施形態では、チップは、幅が約40mm、長さが約40mm、厚さが約3mmである。
【0063】
マルチウェルデバイス上のウェル(例えばナノウェル)の総数は、対象チップが使用される特定の用途に応じて変化し得る。チップ表面上のウェルの密度は、特定の用途に応じて変化し得る。ウェルの密度、及びウェルのサイズ及び容積は、所望の用途や本開示の方法が使用される生物種などの要因に依存して変化し得る。
【0064】
本開示は、マルチウェルデバイス内のウェルの数、又はマルチウェルソースデバイス内のウェルの数によって制限されない。多数のウェルをデバイスに組み込んでもよい。様々な実施形態において、デバイス上のウェルの総数は、約100から約200000、又は約5000から約10000である。他の実施形態では、デバイスは、より小さなチップを含み、その各々は約5000から約20000のウェルを含む。例えば、正方形のチップは、直径が0.1mmの125×125のナノウェルを含んでもよい。
【0065】
マルチウェルデバイス内のウェル(例えばナノウェル)は、任意の都合の良いサイズ、形状又は容積で作製され得る。ウェルは、長さが約100μmから約1mm、幅が約100μmから約1mm、深さが約100μmから約1mmであってもよい。様々な実施形態において、各ナノウェルは、約1から約4のアスペクト比(幅に対する深さの比)を有する。一実施形態では、各ナノウェルは約2のアスペクト比を有する。横断面の領域は、円形、楕円形、長円形、円錐形、長方形、三角形、多面体、又は他の任意の形状であってもよい。ウェルの任意の与えられた深さでの横断面の領域もまたサイズ及び形状が変化し得る。
【0066】
特定の実施形態において、ウェルは、約0,1nlから約1μlの容積を有する。ナノウェルは、典型的には1μl未満、好ましくは500nl未満の容積を有する。容積は、200nl未満、又は100nl未満であり得る。ある実施形態では、ナノウェルの容積は約100nlである。必要に応じて、容積に対する表面積の比を増加させるようにナノウェルを作製することができ、ユニットを介した熱伝導が促進され、熱サイクルのランプ時間を減少させることができる。各ウェル(例えばナノウェル)のキャビティは、様々な構成を採り得る。例えば、ウェル内のキャビティは、直線状又は湾曲した壁によって分割されて、別個であるが隣接する区画を形成してもよく、又は環状壁によって内側及び外側環状区画を形成してもよい。
【0067】
容積に対する内表面の比が高いウェルは、所望であれば、含有される反応物質がウェルの内表面と相互作用する可能性を低減させる物質でコーティングされてもよい。試薬が望ましくない内表面と相互作用したり、内表面に付着したりする傾向がある場合、コーティングは特に有効である。反応物質の特性に依存して、疎水性又は親水性コーティングを選択することができる。様々な適切なコーティング材料が当技術分野で利用可能である。幾つかの材料は表面に共有結合してもよく、他は非共有結合相互作用を介して表面に結合してもよい。コーティング材料の非限定的な例は、ジメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザンまたはトリメチルクロロシランのようなシラン化試薬、ポリマレイミド、および、酸化ケイ素、アクアシルおよびサーファシルのようなケイ素化試薬を含む。追加の適切なコーティング材料は、アミノ酸のようなブロッキング剤、又はポリビニルピロリドン、ポリアデニル酸およびポリマレイミドを含むがこれらに限定されないポリマーである。特定のコーティング材料は、加熱、放射線、及び化学反応によって表面に架橋することができる。当業者は、マルチウェルデバイスのナノウェルをコーティングするための他の適切な手段を知っているであろう。または、当業者は、必要以上の実験をすることなく、それを確認することができるであろう。
【0068】
典型的なマルチウェルデバイス(例えばチップ)は、長さ及び幅が約0.25mm(250μm)の寸法のウェルを有し、約0.625mmの厚みを有してもよい。ナノウェルの深さは約0.525mm(525μm)であり、所与のウェルの下に約0.1mmのチップを残してもよい。ナノウェルの開口は、円形、正方形、矩形、または任意の他の所望の幾何学的形状などの任意の形状を含み得る。一例として、ナノウェルは、約100μmから約1mmの直径又は幅、約150μmから約1mmのピッチ又は長さ、約10μmから約1mmの深さを含んでもよい。各ウェルのキャビティは、様々な構成を採り得る。例えば、ナノウェル内のキャビティは、直線状又は湾曲した壁によって分割されて、別々であるが隣接する区画を形成してもよい。
【0069】
マルチウェルデバイスのウェル(例えばナノウェル)は、例えば、一般的に知られているフォトリソグラフィを用いて形成され得る。ナノウェルは、湿式KOHエッチング技術、異方性ドライエッチング技術、機械的穿孔、射出成形、及び/又は、熱成形(例えばホットエンボス加工)を使用して形成され得る。
【0070】
マルチウェルデバイス内の液体に含まれる試薬は、各ウェルに配置される単一のセル内で進行する反応に依存する。一実施形態では、ウェルは核酸増幅反応を実施するための試薬を含む。試薬は、免疫学的分析、核酸増幅を含むがこれに限定されない核酸検出分析のための試薬であり得る。試薬は、チップ単位で乾燥状態又は液体状態であり得る。一実施形態では、以下の試薬:プローブ、ポリメラーゼ、及びdNTPの少なくとも1つを含む。別の実施形態では、ウェルは、プローブ、プライマ、及びポリメラーゼを備えた溶液を含む。様々な実施形態において、各ウェルは、(1)標準ゲノム内のポリヌクレオチド標的用のプライマ、及び(2)プライマが標的に結合する場合に濃度依存性信号を発するプライマに関連するプローブを含む。別の実施形態では、チップの少なくとも1つのウェルは、順方向PCRプライマ、逆方向PCRプライマ、及びFAM標識MGBクエンチPCRプローブの少なくとも1つを備えた溶液を含む。一実施形態では、プライマ対はウェルに分注され、次いで凍結などによって乾燥させる。次いで、ユーザは、試料、プローブ、及び/又はポリメラーゼをナノディスペンサのように、選択的に分注することができる。
【0071】
本開示の他の実施形態では、ウェルは上記溶液の何れかを乾燥形態で含んでもよい。この実施形態では、この乾燥形態をウェルに塗布してもよいし、ウェルの底部に向けてもよい。ユーザは、分析の前に、水及び捕らえられた細胞の混合物を各ウェルに加えることができる。この実施形態では、乾燥した反応混合物を含むチップは、ライナーで封止されてもよく、別の場所に保管及び送り出されてもよい。
【0072】
各ウェルに単一細胞を有するマルチウェルデバイスは、遺伝子タイピング、遺伝子発現、またはPCRによって実行される他のDNA検査のために使用され得る。プレートで実施される検査は、TAQMAN、TAQMAN Gold、SYBR gold、SYBR greenなどのDNA検査に限定されず、レセプタ結合、酵素、及びその他の高スループットスクリーニング検査も含む。
【0073】
幾つかの実施形態において、細胞は、(例えば、溶解後及び/又は他の処理工程の後)増幅及び/又は配列決定分析にかけられる。1つ以上の増幅反応の実行は、1又は複数のPCRベースの増幅、非PCRベースの増幅、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。核酸増幅技術の実例となる非限定的な例は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ネステッドPCR、線形増幅、多重変位増幅(MDA)、実時間SDA、ローリングサークル増幅、サークルツーサークル増幅転写媒介増幅(TMA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、及び核酸配列ベース増幅(NASBA)を含むが、これらに限定されない。当業者は、ある種の増幅技術(例えばPCR)では、増幅(例えばRT−PCR)の前にRNAをDNAに逆転写する必要があるが、他の増幅技術では、RNAを直接的に増幅する(例えばTMA及びNASBA)ことを認識しているであろう。
【0074】
一般的にPCRとして参照されるポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第4,683,195号明細書、米国特許第4,683,202号明細書、米国特許第4,800,159号明細書、及び米国特許第4,965,188号明細書、各々は全体が参照により本願明細書に組み込まれる)は、変性の複数サイクル、対向鎖へのプライマのアニーリング、及び、標的核酸の複製数を指数関数的に増加させるプライマ伸長を使用する。逆転写(RT)は、RNAから相補的なDNA(cDNA)を作製するために使用され、cDNAは、DNAの複数の複製を生成するためにPCRによって増幅される。PCRの他の置換については、米国特許第4,683,195号明細書、米国特許第4,800,159号明細書、Mullis et al., Meth. Enzymol. 155: 335 (1987)、及び、Murakawa et al., DNA 7: 287 (1988)を参照し、各々は全体が参照により本願明細書に組み込まれる。
【0075】
一般的にTMAとして参照される転写媒介増幅(米国特許第5,480,784号明細書及び米国特許第5,399,491号明細書、各々は全体が参照により本願明細書に組み込まれる)は、実質的に一定の温度、イオン強度及びpHの条件下で自己触媒的に標的核酸配列の複数の複製を合成し、標的配列の複数のRNAの複製が自己触媒的に追加複製を生成する。米国特許第5,399,491号明細書及び米国特許第5,824,518号明細書を参照し、各々は全体が参照により本願明細書に組み込まれる。米国特許出願公開第2006/0046265号明細書(その全体は参照により組み込まれる)に記載されている変形例では、TMAは、TMAプロセスの感度及び精度を改善するために、必要に応じてブロック部分、末端部分、及び他の修飾部分の使用を組み込んでいる。
【0076】
一般的にLCRとして参照されるリガーゼ連鎖反応(Weiss, R., Science 254: 1292 (1991)、その全体は参照により組み込まれる)は、標的核酸の隣接領域にハイブリダイズする二組の相補的DNAオリゴヌクレオチドを使用する。DNAオリゴヌクレオチドは、検出可能な二本鎖連結のオリゴヌクレオチド生成物を作製するために、熱変性、ハイブリダイゼーション及びライゲーションの反復サイクルでDNAリガーゼによって共有結合される。
【0077】
一般的にSDAとして参照される鎖置換増幅(Walker, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 392-396 (1992)、米国特許第5,270,184号明細書、及び米国特許第5,455,166号明細書、各々は全体が参照により本願明細書に組み込まれる)は、標的配列の反対鎖にプライマシーケンス対をアニーリングするサイクル、二本鎖ヘミホスホロチオエートプライマー伸長産物を生成するためのdNTPaSの存在下でのプライマー伸長、エンドヌクレアーゼヘミ改変制限エンドヌクレアーゼ認識部位の仲介ニッキング、及び、次のラウンドのプライマアニーリング、ニッキングおよび鎖置換のために、既存の鎖を置換し、新たな鎖を生成するニックの3 '末端からのポリメラーゼ媒介プライマー伸長を使用して、幾何学的増幅産物をもたらす。好熱性SDA(tSDA)は、本質的に同じ方法において、高温で好熱性末端ヌクレアーゼ及びポリメラーゼを使用する(欧州特許第0684315号明細書)。
【0078】
他の増幅方法は、例えば、一般的にNASBAとして参照される核酸ベース増幅(米国特許第5,130,238号明細書)、転写ベース増幅法(Kwoh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173 (1989))、及び、自己持続性配列複製(Guatelli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 1874 (1990)、各々は全体が参照により本願明細書に組み込まれる)を含む。核酸ベース増幅は、プローブ分子自体(Lizardi et al., BioTechnol. 6: 1197 (1988)、その全体は参照により組み込まれる)を増幅するために、一般的にQβレプリカーゼとして参照されるRNAレプリカーゼを使用する。既知の増幅方法の更なる考察については、Diagnostic Medical Microbiologyの
Persing, David H., “In Vitro Nucleic Acid Amplification Techniques”、Principles and Applications (Persing et al., Eds.), pp. 51-87 (American Society for Microbiology, Washington, DC (1993))を参照せよ。
【0079】
幾つかの実施形態では、(例えば、増幅された核酸の検出のために)核酸配列決定法が使用される。幾つかの実施形態では、本願明細書で提供される技術は、第2世代(次世代またはNext-Genとも呼ばれる)、第3世代(Next-Next-Genとも呼ばれる)、第4世代(N3-Genとも呼ばれる)配列決定法の使用を見出す。これらの配列決定技術は、パイロシークエンシング、ライゲーションによる配列決定、単一分子配列決定、合成による配列決定(SBS)、半導体配列決定、大規模並列クローン、大規模並列単一分子SBS、大規模並列単一分子実時間、大規模並列分子実時間ナノ微細孔法などを含むが、これらに限定されない。MorozovaおよびMarraは、Genomics, 92: 255 (2008)の中で幾つかのそのような技術の概説を提供する。Genomics, 92: 255 (2008)の全体は参照により本願明細書に組み込まれる。当業者であれば、RNAは細胞内で安定性が低く、実験的にヌクレアーゼ攻撃を受ける傾向にあるので、RNAは通常、配列決定前にDNAに逆転写されることを認識するであろう。
【0080】
多くのDNA決定法は適切であり、蛍光ベースの配列決定法(例えば、Birren et al., Genome Analysis: Analyzing DNA, 1, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照、全体は参照により本願明細書に組み込まれる)を含んでいる。幾つかの実施形態では、本技術は、当該分野で理解されている自動配列決定法での使用を見出す。幾つかの実施形態では、幾つかの実施形態では、本技術は、分割された増幅産物(Kevin McKernanらの国際公開第2006/084132号、その全体は参照により本願明細書に組み込まれる)の並列配列決定での使用を見出す。幾つかの実施形態では、本技術は、並列オリゴヌクレオチド伸長(Maceviczらの米国特許第5,750,341号明細書、Maceviczらの米国特許第6,306,597号明細書を参照、共に全体が参照により本願明細書に組み込まれる)によるDNA配列決定での使用を見出す。本技術が仕様を見出す配列決定の付加的な例は、Church polony技術(Mitra et al., 2003, Analytical Biochemistry 320, 55-65、Shendure et al., 2005 Science 309, 1728-1732、米国特許第6,432,360号明細書、米国特許第6,511,803号明細書、それの全体は参照により本願明細書に組み込まれる)、454 picotiter pyrosequencing法(Margulies et al., 2005 Nature 437, 376-380、米国特許出願公開第2005/0130173号明細書、それらの全体は参照により本願明細書に組み込まれる)、Solexa single base addition法(Bennett et al., 2005, Pharmacogenomics, 6, 373-382、米国特許第6,787,308号明細書、米国特許第6,833,246号明細書、それらの全体は参照により本願明細書に組み込まれる)、Lynx massively parallel signature sequencing法(Brenner et al. (2000). Nat. Biotechnol. 18:630-634、米国特許第5,695,934号明細書、米国特許第5,714,330号明細書、それらの全体は参照により本願明細書に組み込まれる)、Adessi PCR colony法(Adessi et al. (2000). Nucleic Acid Res. 28, E87、国際公開第2000/018957号、それらの全体は参照により本願明細書に組み込まれる)を含む。
【0081】
次世代配列決定(NGS)法は、従来の配列決定法(Voelkerding et al., Clinical Chem., 55: 641-658, 2009、MacLean et al., Nature Rev. Microbiol., 7: 287-29、それらの全体は参照により本願明細書に組み込まれる)と比較して低コストを目指して、大規模に並列であり、高スループット戦略という共通の特徴を共有する。NGS法は、典型的に鋳型増幅を使用する方法と、使用しない方法とに大別される。増幅が必要な方法は、Rocheによって454テクノロジ・プラットフォーム(例えば、GS 20及びGS FLX)として商用化されたパイロシークエンシング、Illuminaによって商用化されたLife Technologies/Ion Torrent、Solexaプラットフォーム、及びApplied Biosystemsによって商用化されたSupported Oligonucleotide Ligation and Detection(SOLiD)プラットフォームを含む。単一分子配列決定としても知られる非増幅アプローチは、Helicos BioSciencesによって商用化されたHeliScopeプラットフォーム、VisiGen、Oxford Nanopore Technologies Ltd.、及びPacific Biosciencesのそれぞれによって商用化された新たなプラットフォームによって例示される。
【0082】
パイロシークエンシング(Voelkerding et al., Clinical Chem., 55: 641-658, 2009、MacLean et al., Nature Rev. Microbiol., 7: 287-296、米国特許第6,210,891号明細書、米国特許第6,258,568号明細書、それらの全体は参照により本願明細書に組み込まれる)では、アダプタに相補的なオリゴヌクレオチドに関連する微粒子と共に単一鋳型分子を捕捉することにより、鋳型DNAを断片化し、末端を修復し、アダプタに連結し、その場でクローン増幅を行う。単一テンプレート型に関連する各微粒子は、油中水滴微細小胞に区画化され、鋳型はエマルジョンPCRとして参照される技術を用いてクローン増幅される。増幅後にエマルジョンは破壊され、微粒子は配列反応の間にフローセルとして機能するピコトール・プレートの個々の壁に沈着される。配列酵素及びルシフェラーゼのような蛍光レポータの存在下で、順序付けられた4つのdNTP試薬のそれぞれの反復導入がフローセル内で発生する。適切なdNTPが配列プライマの3’末端に付加された場合、結果としてのATP生成物は、CCDカメラを用いて記録された、ウェル内のバースト発行を引き起こす。400塩基以上のリード長を実現することが可能であり、106配列のリードが達成され、5億塩基対(Mb)までの配列が得られる。
【0083】
Solexa/Illuminaプラットフォーム(Voelkerding et al., Clinical Chem., 55: 641-658, 2009、 MacLean et al., Nature Rev. Microbiol., 7: 287-296、米国特許第6,833,246号明細書、米国特許第7,115,400号明細書、米国特許第6,969,488号明細書、それらの全体は参照により本願明細書に組み込まれる)では、配列データは、より短いリードの形態にて生成される。この方法では、5’−リン酸化平滑末端を生成するために一本鎖断片化DNAを末端修復し、続いてクレノウを介して、単一A塩基を断片の3’末端に付加する。A−付加は、T−突出アダプタ・オリゴヌクレオチドの添加を容易にし、オリゴヌクレオチド・アンカーでスタッドされたフローセルの表面上の鋳型アダプタ分子を捕捉するために使用される。アンカーはPCRプライマとして使用されるが、鋳型の長さ及び他の近傍のアンカー・オリゴヌクレオチドへのその近接性のために、PCRによる伸長は、隣接するアンカー・オリゴヌクレオチドとハイブリダイズしてフローセルの表面に橋構造を形成する分子の「arching over」を生じさせる。これらのDNAループは変性され、切断される。次いで、前方鎖は、可逆性染料ターミネータにより配列決定される。取り込まれたヌクレオチドの配列は、導入後の蛍光検出によって決定され、dNTP添加の次のサイクルの前に各蛍光体及びブロックが除去される。配列のリード長は36ヌクレオチドから250ヌクレオチド以上であり、分析動作あたり10億ヌクレオチド対を超える総出力を有する。
【0084】
SOLiD技術(Voelkerding et al., Clinical Chem., 55: 641-658, 2009、MacLean et al., Nature Rev. Microbiol., 7: 287-296、米国特許第5,912,148号明細書、米国特許第6,130,073号明細書、それらの全体は参照により本願明細書に組み込まれる)を用いた核酸分子の配列決定もまた、鋳型の断片化、オリゴヌクレオチド・アダプタへの連結、微粒子への結合、及びエマルジョンPCRによるクローン増幅を伴う。これに続いて、鋳型に関連する微粒子はガラス製フローセルの誘導体表面に固定され、アダプタ・オリゴヌクレオチドに相補的なプライマはアニールされる。しかしながら、このプライマを3’伸長に利用するのではなく、6縮重塩基に続く2つのプローブ特異的塩基と4つの蛍光標識の1つとを含むインタロゲイション・プローブへのライゲーションに5’リン酸塩基を提供するために利用する。SOLiDシステムでは、インタロゲイション・プローブは、各プローブの3’末端における2つの塩基、及び5’末端の4つの蛍光のうちの1つの16個の可能な組み合わせを有する。蛍光色、したがって各プローブの同一性は、特定の色空間コード体系に対応する。プローブ・アニーリング、ライゲーション、及び蛍光検出の複数のラウンド(通常は7回)に続いて変性を行い、次いで最初のプライマに対して1塩基だけオフセットしたプライマを用いて2回目のシークエンシングを行う。このようにして、鋳型シークエンスは計算的に再構成され、鋳型塩基は2回検索されて精度を高めることができる。シークエンス・リード長の平均は35ヌクレオチドであり、全出力はシークエンシング動作あたり40億塩基を超える。
【0085】
特定の実施形態では、本技術は、ナノ細孔シークエンシング(例えば、Astier et al., J. Am. Chem. Soc. 2006 Feb 8; 128(5):1705-10を参照、その全体は参照により本願明細書に組み込まれる)の使用を見出す。ナノ細孔シークエンシングの背後にある理論は、ナノ細孔が導電性流体に浸漬され、電位(電圧)が印加される場合に起こる現象と関係している。この条件下では、ナノ細孔を通るイオンの伝導による僅かな電流が観測され、電流の量はナノ細孔のサイズに対して非常に敏感である。核酸の各塩基がナノ細孔を通過すると、これにより、4つの塩基のそれぞれについて別個のナノ細孔を通過する電流の大きさが変化し、それによりDNA分子の配列を決定することが可能となる。
【0086】
特定の実施形態では、本技術は、Helicos BioSciencesによるHeliScope(Voelkerding et al., Clinical Chem., 55: 641-658, 2009、 MacLean et al., Nature Rev. Microbiol., 7: 287-296、米国特許第7,169,560号明細書、米国特許第7,282,337号明細書、米国特許第7,482,120号明細書、米国特許第7,501,245号明細書、米国特許第6,818,395号明細書、米国特許第6,911,345号明細書、米国特許第7,501,245号明細書、それらの全体は参照により本願明細書に組み込まれる)の使用を見出す。鋳型DNAは3’末端で断片化かつポリアデニル化され、最終的なアデノシンは蛍光標識される。変性ポリアデニル化鋳型断片は、フローセル表面上のポリ(dT)オリゴヌクレオチドに連結される。捕捉された鋳型分子の初期物理位置はCCDカメラによって記録され、次いで標識が切断されて洗い流される。シークエンシングは、ポリメラーゼの添加及び蛍光標識されたdNTP試薬の連続添加によって実現される。混合事象はdNTPに対応する蛍光シグナルをもたらし、シグナルは、dNTP添加の各ラウンドの前にCCDカメラによって取り込まれる。配列のリード長は25−50ヌクレオチドの範囲であり、全体出力は分析動作あたり10億ヌクレオチド対を超える。
【0087】
イオントレント技術は、DNAの重合の間に放出される水素イオンの検出に基づくDNAシークエンシング法である(例えば、Science 327(5970): 1190 (2010)、米国特許出願公開第2009/0026082号明細書、第2009/0127589号明細書、第2010/0301398号明細書、第2010/0197507号明細書、第2010/0188073号明細書、及び第2010/0137143号明細書、それらの全体は参照により本願明細書に組み込まれる)。マイクロウェルは、配列決定される鋳型DNA鎖を含む。マイクロウェルの層の下には、過敏性ISFETイオンセンサがある。全ての層は、エレクトロニクス産業で使用されるものと同様に、CMOS半導体チップ内に含まれる。成長中の相補鎖にdNTPが組み込まれた場合、水素イオンが放出され、過敏性イオンセンサを作動させる。ホモポリマー・リピートが鋳型シークエンスに存在するならば、複数のdNTP分子が単一サイクルに組み込まれるであろう。これは、放出された水素の対応する数と比例して高い電気信号をもたらす。本技術は、改変されたヌクレオチド又は光学系が使用されない点で他のシークエンシング技術とは異なる。イオントレント・シークエンサの塩基毎の精度は50塩基長に対し、〜99.6%であり、〜100Mbから100Gbが生成される。リード長は100から300塩基対である。長さ5のリピートを有するホモポリマー・リピートの精度は、〜98%である。イオン半導体シークエンシングの利点は、迅速なシークエンシングスピード、並びに、低い初期コスト及び運用コストである。
【0088】
本技術は、Stratos Genomics, Inc.によって開発された別の核酸シークエンシングアプローチの使用を見出し、Xpandomersの使用を含む。このシークエンシングプロセスは、典型的には、鋳型指向合成により生成された娘鎖の提供を含む。娘鎖は、一般的に、個々のサブユニットはつなぎ鎖、少なくとも1つのプローブ又は核酸塩基残基、及び少なくとも1つの選択的に切断可能な結合を備え、標的核酸の全部又は一部の隣接するヌクレオチドシーケンスに対応したシーケンス中に結合された複数のサブユニットを含む。選択的に切断可能な結合は、娘鎖の複数のサブユニットよりも長いXpandomerを得るために切断される。Xpandomerは、典型的には、標的核酸の全部又は一部の隣接するヌクレオチド配列にたいおうするシークエンス中の遺伝子情報を解析するためのつなぎ鎖及びレポータ要素を含む。次いで、Xpandomerのレポータ要素が検出される。Xpandomerに基づくアプローチに関する更なる詳細は、例えば、2008年6月19日に出願された「拡張によるハイスループット核酸シークエンシング」と題する米国特許出願公開第2009/0035777号明細書に記載されており、その全体は参照により本願明細書に組み込まれる。
【0089】
他の単一分子シークエンシング法は、VisiGenプラットフォーム(Voelkerding et al., Clinical Chem., 55: 641-58, 2009、米国特許第7,329,492号明細書、米国特許出願公開第11/671956号明細書、それらの全体は参照により本願明細書に組み込まれるVoelkerding et al., Clinical Chem., 55: 641-58, 2009)を利用した合成による実時間シークエンシングを含む。VisiGenプラットフォームでは、蛍光修飾ポリメラーゼ及び蛍光アクセプター分子を用いて鎖伸長に供され、ヌクレオチド付加時に検出可能な蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を生じさせる、固定化され、刺激されたDNA鋳型を提供する。
【0090】
試薬は任意の好適なタイプの検査に対しマルチウェルチップ(例えば、WAFERGEN BIOSYSTEMSの1つのようなマルチウェルディスペンサ)のウェルに添加され得る。そのような試薬は、細胞(例えば単一細胞)がウェルに添加される前又は後にウェルに添加され得る。特定の実施形態では、タンパク質検出含有成分(例えば抗体に基づく検査)がウェルに添加される。他の実施形態では、SNP検出含有成分がウェルに添加される。他の実施形態では、核酸シークエンシング含有成分がウェルに添加される。特定の実施形態では、個々のmRNA分子を標識するため、及び/又は細胞/ウェル源(例えば、シークエンシング解析の前にプールされるウェルである場合)を標識するため、及び/又は特定のマルチウェルチップ(例えば、2個以上のマルチウェルチップからのウェルがシークエンシングの前にプールされる場合)を標識するために、バーコードが用いられる核酸シークエンシング含有成分が採用される。そのようなバーコード法及び試薬の例は、例えば、米国特許出願公開第2007/0020640号明細書、米国特許出願公開第2012/0010091号明細書、米国特許第8,835,358号明細書、米国特許第8,481,292号明細書、Qiu et al. (Plant. Physiol., 133, 475-481, 2003)、 Parameswaran et al. (Nucleic Acids Res. 2007 Oct; 35(19): e130)、Craig et al. reference (Nat. Methods, 2008, October, 5(10):887-893)、Bontoux et al. (Lab Chip, 2008, 8:443-450)、Esumi et al. (Neuro. Res., 2008, 60:439-451)、Hug et al., J. Theor., Biol., 2003, 221:615-624)、Sutcliffe et al. (PNAS, 97(5):1976-1981; 2000)、Hollas and Schuler (Lecture Notes in Computer Science Volume 2812, 2003, pp 55-62)、及び国際公開第2014/20127号に見出され、核酸のバーコード化及びシークエンシングに関する反応条件及び試薬を含むそれらの全体は参照により本願明細書に組み込まれる。
【0091】
特定の実施形態では、国際公開2014/201272号(「SCRB−seq」法)のバーコード標識及びシークエンシング法が使用される。SCRB−seq法(例えば、少量のために必要に応じて改変)に必要な試薬はマルチウェルチップ(例えばウェル中の単一細胞が溶解)のウェルに添加される。簡潔に述べると、SCRB−seq法は、(上述したように)マルチウェルプレート中の単一細胞から初期mRNAサンプルを増幅する。ここで、各ウェルは単一細胞を有する。初期cDNA合成は、(1)細胞/ウェル同定のためのN6又はN11、(2)特定分子の同定のためのN10、(3)mRNAを結合するためのポリTストレッチ、及び(4)第2の鋳型乗り換えプライマがハイブリダイズする領域を作り出す領域と共に、第1プライマを使用する。第2プライマは、ポリG3’末端と、イソ塩基を有する5’末端とを含む鋳型乗り換えプライマである。cDNA増幅後、タグ付きcDNA単一細胞/ウェルサンプルがプールされる。次いで、2つの異なるプライマを用いて完全長のcDNA合成を行い、完全長のcDNAを精製する。次に、NEXTERAシークエンシング(NEXTERAのために他の末端にP7タグを付加する)のためのP5タグを付加するために、i7プライマ(特定のマルチウェルプレートを同定するための12個のi7タグの1つを付加する)及びP5NEXTPT5を使用して、NEXTERAシークエンシングライブラリが調整される。ライブラリはゲル上で精製され、次いでNEXTERAシークエンシングが行われる。非限定的な例として、12個のi7プレートタグ、384個の細胞/ウェル特異的バーコードを用いて、合計4608個の単一細胞トランスクリプトームを一度に行うことができる。この方法は、単一細胞におけるmRNA転写産物の定量化を可能にし、ユーザが転写産物分子/細胞の絶対数を計数し、正規化から任意の変数を取り除くことを可能にする。
【0092】
更なる実施形態では、チップ内のウェルにマッピングされた画像及びチップは、検出用の1回又は複数回の試薬の付加、及び/又は、核酸又は脂質又は炭水化物又はタンパク質細胞成分試薬の分解力の組み合わせにより、更なる解析のために動的及び/又は静的に選択される。
【0093】
実施例
(例1)マルチウェルチップにおける単一癌細胞の単離
Wafergenチップ内の単一及び複数細胞を染色し、分注かつ画像化する陽性及び陰性対照抗体(Ab)を含む細胞表面マーカの使用の一例を
図12及び
図12にそれぞれ示す。
図12及び
図13は、組織培養フラスコからのトリプシン放出後の36ウェル視野(FOV)ウェルレベル画像、〜30000個のヒト乳癌SK−BR−3細胞、文献からHER2/neu/ERBB2陽性であることが強く知られる不死化培養細胞から始まる再懸濁、染色、及びイメージ化を示している。
【0094】
SK−BR−3細胞は洗浄され、1×PBS(Mg++なし、Ca++なし、pH7.4;37℃)の1mLに集められた。上記懸濁液の半量は、10μLの適切な共役モノクローナル抗体(マウス抗ヒトERBB2(HER2)−APC;R&Dシステムズ;FAB1129A)と共に培養された。残り半量の懸濁液は、並行して、適切なネガティブコントロール抗体、つまり共役アイソタイプ適合対照抗体(マウスlgG2B−APC;R&Dシステムズ;IC0041A)と共に免疫染色のために培養された。
【0095】
簡潔に説明すると、共役抗体の培養は37℃で1時間行われた。続いて、容量4.5mLの予熱した1×PBS(37℃)が加えられ、細胞は室温で5分間、200×gで遠心分離された。ペレット化した細胞は、200μLの予め温められた1×PBS(37℃)の中に再懸濁され、次いで1×ヘキスト33342超生体染料の中で〜20分間37℃で染色された。各懸濁液の80マイクロリットル試料は、384−ウェルプレートの適切な受容ウェルに分注された。384ウェル受容プレート(例えば
図1−3を参照)から細胞を吸引するために、Wafergen MSND(マルチ試料ナノ分注器;米国特許出願公開第14/738,183号明細書を参照、その全体は参照により本願明細書に組み込まれる)が使用された。Wafergen SmartChipの72×72ウェルの個々のウェルにつき、平均して約1個の抗体及びヘキスト染色細胞を送液するために、各50nLの分注量が計算された。分注の後、チップはWafergenチップカバーフィルムで密封され、37℃、300×gで遠心分離され、Wafergen SmartChipの底部に細胞が集められる。自動顕微鏡ステージ及び4倍対物レンズを使用して、標準的な顕微鏡画像収集が実行された。合計144枚のHoescht33342及び対応する144枚のAPC−Cy5画像(Hoescht及びCy5のそれぞれについて〜200又は500mS露光)が得られ、5184ウェルチップからTIFFファイルとして保存された。144枚の画像のそれぞれは、Wafergen SmartChipアレイの5184ウェル内で36個の個々のウェルを表している。チップ分注及び画像収集プロセスは
図1に示される。
【0096】
チップ上の36個の個々のウェルを表示する視野(FOV)は、ヘキスト33342色素及びHER2/neu抗体を標的とするAPC共役モノクローナル抗体を用いて二重染色されたSK−BR−3細胞の一群を示している。SK−BR−3細胞の全ては、ヘキスト33342超生体染料を用いて染色されると予想される(
図12の左パネル)。隣接する画像は、その中でSK−BR−3(HeR2/neu/ERBB2陽性)細胞が細胞表面抗原に対して特異的な抗体で処理された同一の36ウェル視野を示している(
図12の右パネル)。単一細胞はチップウェル内で明るいドットとして容易に同定される。
図12の2つの画像の比較は、(Cy5フィルタセットから得られた)共役抗体生成シグナルに特異的に重畳する(DAPIフィルタセットを使用して得られた)ヘキストシグナルを示している。
【0097】
同じ5184ウェルチップの異なる領域から36個の個々のウェルを表示する第2の視野は、ヘキスト33342色素及びAPC共役ネガティブコントロール・モノクローナル抗体マウスlgG2B−APCを用いて二重染色されたSK−BR−3細胞の一群を示している(
図13)。ヘキスト染色細胞(
図13の左パネル)と、ネガティブコントロール抗体染色細胞(
図13の右パネル)との比較は、ヘキストシグナルがネガティブコントロール抗体生成シグナルに重畳していることを示していない。
【0098】
図12の画像データは、陽性対照抗体の使用が、マルチウェルチップ(例えば、Wafergenマルチウェルチップ)において、単一又は多重細胞の細胞抗原特異的抗体の染色を提供することを示している。同じチップから得られた
図13では、非特異的抗体は、ヘキスト染色シグナルと重畳する離散的な点状シグナルを生成しない。まとめると、
図12及び
図13の結果を伴うこの実施例は、単一癌細胞又は多重癌細胞において、細胞表面エピトープ特異的免疫染色を分注し、続いて検出するために使用できる模範的なシステム及びプロセスを実証する。
【0099】
(例2)異なる細胞の混合物からの単一細胞の単離
この例では3つのサンプルが調べられた。2つのサンプルは単一種から構成されており、ヒトU87−MG−(赤色蛍光タンパク質陽性)細胞、又はマウスNIH/373細胞であった。第3の試料は、個々の単一種のサンプルの混合物により構成されていた。細胞は、WaferGen SMARTCHIPチップのウェルにおける細胞数のポアソン分布を可能にするMSND(マルチサンプル・ナノディスペンサ)を用いて染色され、分注された。そのアレイは後に画像化され、第1及び第2鎖cDNAに加工されるべき単一細胞含有セル及び他の検体含有セルが選択された。cDNAは、先に記載した方法を用いて、チップから取り出された。cDNAは、NGS増幅及び読み出しに最適なDNA増幅産物「ライブラリ」を獲得するために、チップ外でPCR増幅された。サンプルライブラリからのシークエンス・リードは、第一に細胞及びRTバッファ選択プロセスが特定のウェルを選択することができたこと、第二に混合した細胞サンプルから選択したウェルがシークエンス・リードを1つの種のみへのマッピングを引き起こすことを確認するために、特定のサンプル(例えば種ゲノム)にマッピングされ得る。実際上、後者は単一細胞占有率及びシステムの分割能力を計算するために使用することができる。
【0100】
簡単に言えば、ヒトU87−MG−RPF及びマウスMIF3T3細胞を、1×PBSの中で個別に洗浄し、計数し、ヘキスト33342及びヨウ化プロピジウムで染色した。細胞混合物について、各細胞株の試料は1:1の比率で混合された。K562細胞(12pg)由来のRNA及び1×PBSは、陽性又は陰性・プロセスコントロールとしてそれぞれ用いられた。
【0101】
マルチサンプル・ナノディスペンサ(MSND)を使用して、SmartChipアレイに分注するために、サンプル及びコントロールは、384ウェルソースプレートに充填された。SmartChipの各ウェルは、プライマ上の3’オリゴdT配列が核酸配列のポリアデニル化ストレッチにアニールするために使用される「バーコード」プライマを識別する予め印字されたサンプルを含む。バーコードは、溶解後の各細胞から補足されたmRNA分子の分子アドレスとして機能する。コントロール及びサンプルの分注後、アレイは吸い取られ、封止され、22℃で5分間、300×gで遠心分離された。その後、アレイは画像化された。画像化後、アレイは冷蔵庫(−80℃)の中に置かれ、細胞及びサンプルの選択と、続く試薬の添加を待った。単一細胞及び他の検体含有ウェルは、CellSelect(商標)画像解析ソフトウェアを用いて、ヘキスト33342シグナルに基づき選択された。
【0102】
合計1268個の「単一細胞」含有ウェルが同定された。これらの1268個のウェルのうち、各単一種細胞の90個のウェル、混合細胞サンプルから382個のセルを処理のために4個の陽性及び陰性対照セルと一緒に選択した。ウェル選択が完了したら、これらのウェルはRT試薬を受けるようにマッピングされた。簡単に言えば、アレイは冷凍庫から取り出され、室温で10分間解凍され、4℃で3分間、3220×gで遠心分離された。アレイはサーマルサイクラの中に置かれ、各ウェルのバーコード・オリゴdTプライマは、核酸温度変性(72℃で3分)及び複合遠心分離/温度ステップ(4℃で3分間、3220×g)中のアニーリングの後、核酸(主にmRNA)中のポリアデニル化ストレッチへのアニーリングが可能となった。アレイはRT分注のためにMSNDに移された。NMLV RT及び第2の鎖合成「鋳型乗り換えオリゴ」を含むRT混合物50nLは、解析ソフトウェアによって作成された分注マップを使用して、選択されたウェルに添加された。アレイは、各ウェルのアレイ内容物を局在化させるために、4℃で3分間、3220×gで遠心分離され、42℃で90分間培養された。プールされた(バーコード化された)サンプルcDNA産物は、チップを反転させて抽出装置(米国特許出願公開第2014/0130885号明細書、第14/075,631号明細書に記載、その全体は参照により本願明細書に組み込まれる)へ入れた後、(上記のように)第2の遠心分離を介して集められた。抽出後の単一プライマPCRはチップ外で実行された。増幅産物は、転移酵素に基づく方法を用いて断片化された。増幅産物は、mRNAの3’末端を表す配列のために濃縮され(Soumillion et.al., HYPERLINK "http:// followed by dx.doi.org/10.1101/003236 " http:// followed by dx.doi.org/10.1101/003236 HYPERLINK "http://dx.doi.org/10.1101/003236%202014" 2014、及び国際公開第2014/201273号、それらの全体は参照により本願明細書に組み込まれる)、急速動作モードでHiSeq2500を用いて配列決定された。
【0103】
配列決定後、単一種サンプル並びにヒト及びマウス細胞の混合物からのリードは、ヒト及びマウスのゲノムに別個に並べられた。両方のゲノムに整列したリードは、相同ゲノム領域に対する整列として同定され、解析から除外された。各バーコードのための単一ゲノムに一意的に整列したリードが同定された。主に1つのゲノムに整列するバーコードは、そのゲノムからのものであると同定された。混合細胞サンプルから処理された382ウェルのうち、138及び234単一細胞含有ウェルからのリードは、明白にヒト及びマウスゲノムにそれぞれ整列した。5つのウェルバーコードは、25000未満の整列を何れかのゲノム(低整列リード)に記録し、更なる解析から除外した。両方の種へのシークエンシング・リード・マッピングを生じさせる混合細胞サンプルからの382ウェルのうちの5ウェルは、システムの多重細胞占有率及び分注能力を計算するために使用された。簡単に言えば、1.3%のバーコードは両方のゲノムとほぼ同数のアライメントを示している。結論として、システムの単一細胞占有率及び分注能力は98.7%であり、すなわち、
図17に示すように、ウェルの単一細胞含有ウェルは〜99%であった。
【0104】
本出願において言及された全ての刊行物および特許は、参照により本願明細書に組み込まれる。 本開示の記載された方法および組成物の様々な変更および変形は、本開示の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。 本開示は、特定の好ましい実施形態に関連して記載されているが、請求される開示は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。 実際、関連分野の当業者には自明である開示を実施するための記載された態様の様々な改変は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図されている。