特許第6620173号(P6620173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620173
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】皮膚接着性物品
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/26 20060101AFI20191202BHJP
   A61L 15/58 20060101ALI20191202BHJP
【FI】
   A61L15/26 100
   A61L15/58 100
【請求項の数】16
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-567091(P2017-567091)
(86)(22)【出願日】2016年6月23日
(65)【公表番号】特表2018-522644(P2018-522644A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】FR2016000105
(87)【国際公開番号】WO2016207498
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2018年2月26日
(31)【優先権主張番号】1501350
(32)【優先日】2015年6月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507421304
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・フランス・エスアエス
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES France SAS
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カロリーヌ・モアン
(72)【発明者】
【氏名】マリリン・ケマン
【審査官】 伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】 仏国特許出願公開第02899248(FR,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0053749(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/18
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のもの:
・トップ面S1及びボトム面S2を有する可撓性ポリウレタンフィルムである支持体S、
・前記支持体Sの前記トップ面S1の少なくとも一部又は全部に適用された少なくとも1つのタイプライマーC1、
・前記支持体Sとは反対側で前記タイプライマーC1に適用された、架橋性シリコーン組成物Yをヒドロシリル化反応によって架橋させることによって得られるシリコーンゲルEから作られた少なくとも1つの層D1、並びに
・随意としての、前記層D1に適用された、剥離保護材料から成る少なくとも1つの保護層F
を含む皮膚接着性物品であって、
前記タイプライマーC1が、シリコーンエラストマーから成り、
このシリコーンエラストマーが、シリコーンゲルではなく、シリコーン組成物Xを架橋させることによって得られるものであり、
このシリコーン組成物Xが、下記1)、2)、3)、4)、5)及び7):
1)次の単位:
(i)式(A1):
abSiO(4-(a+b))/2 (A1)
(ここで、
YはC2〜C6アルケニル基を表し、
Zはメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基、並びにキシリル、トリル及びフェニル基等のアリール基から選択される一価炭化水素系基を表し、
a及びbは整数を表し、aは1,2又は3であり、bは0、1又は2であり、a+bは1、2又は3である)
の少なくとも2個のシロキシ単位;及び
(ii)随意としての式(A2):
cSiO(4-c)/2 (A2)
(ここで、
Zは上記と同じ意味を持ち、
cは0、1、2又は3の整数を表す)
の別のシロキシ単位:
から成り、且つ、ケイ素原子に結合したビニル基を1分子当たり少なくとも2個含む、少なくとも種のオルガノポリシロキサンA;
2)次の単位:
(i)式(B1):
HZbSiO(3-b)/2 (B1)
(ここで、
Hは水素原子であり、
Zはメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基、並びにキシリル、トリル及びフェニル基等のアリール基から選択される一価炭化水素系基を表し、
bは0、1又は2である)
の少なくとも3個のシロキシ単位;及び
(ii)随意としての式(B2):
cSiO(4-c)/2 (B2)
(ここで、
Zは上記と同じ意味を持ち、
cは0、1、2又は3の整数を表す)
の別のシロキシ単位:
から成り、且つ、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個含む、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンB;
3)少なくとも1種のヒドロシリル化触媒C;
4)少なくとも1種のヒドロシリル化反応禁止剤D;
5)随意としての1種以上の安定化用添加剤K;並びに
7)随意としての、ヒドロキシル基を有ししかしアルケニル基もヒドロシリルSiH基も持たない1種以上のシリコーン樹脂M:
から成り、
但し、オルガノポリシロキサンA及びBの重量による量が、比RHalk=nH/tAlk:
(ここで、
nHはオルガノポリシロキサンBのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数であり、
tAlkはオルガノポリシロキサンAのケイ素原子に直接結合したアルケニルのモル数である)
が1.00≦RHalk≦4.5となるように決定されること
前記オルガノポリシロキサンAの内の少なくとも1種が前記の式(A1)の少なくとも2個のシロキシ単位及び式(A2)の別のシロキシ単位から成り且つ少なくとも1つのシロキシ単位(A2)が式SiO4/2を有するシリコーン樹脂A1であること
前記シリコーン樹脂A1が組成物Xの総重量に対して30〜70重量%の範囲で組成物X中に存在すること、
前記オルガノポリシロキサンAの動的粘度が25℃において10mPa・s〜10000mPa・sの範囲であること、並びに
前記オルガノポリシロキサンBの動的粘度が25℃において1mPa・s〜5000mPa・sの範囲であること
を特徴とする、前記皮膚接着性物品。
【請求項2】
オルガノポリシロキサンA及びBの重量による量が、1.50≦RHalk≦4.0となるように決定されることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚接着性物品。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂A1が次式:
MDViQ:
(ここで、
Mは式R3SiO1/2の一価シロキシル単位であり、
Viは式RXSiO2/2の二価シロキシル単位であり、
Qは式SiO4/2の三価シロキシル単位であり、
基Xがビニル基に相当し、
基Rがメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基、並びにキシリル、トリル及びフェニル基等のアリール基から選択される一価炭化水素系基に相当する)
を有する、請求項に記載の皮膚接着性物品。
【請求項4】
前記支持体Sが空気透過性でありしかし流体不透過性の連続可撓性ポリウレタンフィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚接着性物品。
【請求項5】
前記支持体Sが可撓性ポリウレタンフィルムであり、ボトム面S2の少なくとも一部の上に感圧接着剤を含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の皮膚接着性物品。
【請求項6】
前記支持体Sが穴あき可撓性ポリウレタンフィルム又は連続可撓性ポリウレタンフィルムであり、トップ面S1及びボトム面S2を有し、その穴と穴の間の部分において空気及び流体不透過性であることを特徴とする、請求項1、及びのいずれかに記載の皮膚接着性物品。
【請求項7】
前記支持体Sの穴が円形であり、50μm〜10mmの直径を有することを特徴とする、請求項に記載の皮膚接着性物品。
【請求項8】
吸収材物体Oを含む1個以上の層Nを前記支持体S上に前記支持体Sのボトム面S2の縁部上に配置された形で含み、この層Nが随意に1個以上の中間層Pで隔てられていてよいことを特徴とする、請求項に記載の皮膚接着性物品。
【請求項9】
前記吸収材物体Oが親水性フォーム、布パッド、ヒドロゲル、ヒドロコロイド及びアルギナートより成る群から選択される、請求項に記載の皮膚接着性物品。
【請求項10】
前記支持体Sがトップ面S1及びボトム面S2を有する穴あき可撓性ポリウレタンフィルムであり、
前記タイプライマーC1が前記支持体Sのトップ面S1にあり、前記支持体Sの穴の閉塞を防止するように不連続で適用され、
前記のシリコーンゲルEから作られた層D1が前記支持体Sの穴の閉塞を防止するように不連続で適用された
ことを特徴とする、請求項1に記載の皮膚接着性物品。
【請求項11】
前記タイプライマーC1が前記支持体Sの前記トップ面S1の少なくとも一部の上又は全部の上及び前記支持体Sの前記ボトム面S2の一部の上又は全部の上に適用され、
前記支持体Sのトップ面S1上及びボトム面S2上に存在する前記タイプライマーC1上に、架橋性シリコーン組成物Yをヒドロシリル化反応によって架橋させることによって得られるシリコーンゲルEから作られた少なくとも1つの層D1が適用された
ことを特徴とする、請求項1に記載の皮膚接着性物品。
【請求項12】
前記支持体Sの厚さが5〜200μmの範囲であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の皮膚接着性物品。
【請求項13】
医療用途又は医療補助用途のための包帯類であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の皮膚接着性物品。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の皮膚接着性物品の製造方法であって、
支持体S上に請求項1、2又は3に記載のシリコーン組成物Xを充分な量で塗布し、このシリコーン組成物Xを充分な時間架橋させて、タイプライマーC1を形成させることから成る第1工程、
前記タイプライマーC1上に請求項1に記載のシリコーン組成物Yを充分な量で塗布し、このシリコーン組成物Yを充分な時間架橋させて、層D1を形成させることから成る第2工程
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれかに記載の皮膚接着性物品の製造方法であって、
支持体S上に連続的に充分な量で、
・請求項1、2又は3に記載のシリコーン組成物Xを塗布し、
・次いでシリコーン組成物X上に請求項1に記載のシリコーン組成物Yを塗布し、
次いでシリコーン組成物X及びYを充分な時間架橋させて、タイプライマーC1及び層D1を形成させることから成る工程
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項16】
前記シリコーン組成物Xについて、オルガノポリシロキサンA及びBの重量による量を、比RHalk
(ここで、
RHalkはnH/tAlkであり、
nHはオルガノポリシロキサンBのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数であり、
tAlkはオルガノポリシロキサンAのケイ素原子に直接結合したアルケニルのモル数である)
が1となるように決定することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、医療用途又は医療補助用途用の皮膚に接着することができる物品の分野である。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゲルの利用は、医療分野において非常に重要である。何故ならば、シリコーンゲルの固有の特性として、それらは乾燥した皮膚には素早く接着するが、湿った傷の表面に粘り着く(粘着する)ことはなく、取り除いた時に損傷を与えることがないからである。シリコーンゲルはまた、数多くの支持体と組み合わせることができるのと同時に、有機体に対して不活性であり、従って人間に用いた時に毒性の問題が回避されるという利点も有する。シリコーンゲルは、患者の回復を促進しながら傷口周辺の湿り気を維持し、かくして痛んだ組織の水和を維持するという特性を医療用具に与えるので、特に傷口や傷跡の治療に用いられる。
【0003】
これらの用途については、基材は生体適合性であり且つ可撓性でなければならず、且つ良好な機械的特性を有していなければならない。ポリウレタンフィルムは、これらの技術的要件のすべて、特に
・良好な生体適合性、
・良好な水蒸気透過性[包帯類(ガーゼ等も含む傷手当て用品)が膨潤したり剥離したりするのを回避するための、包帯類と外部環境との間の流体の管理]、
・良好な機械的特性(引張強さ、伸長能力)、
・柔らかい感触、及び
・良好な可撓性
といった要件を満たすので、非常に広く用いられている。
【0004】
これらの物質の使用には、基材をコーティングする工程が伴われる。これらポリウレタン支持体上へのシリコーンゲルのコーティングは医療用具を製造するための方法の鍵となる工程であり、この複合物の特性は良好でなければならない。実際、ゲルは、前記用具を保持するのに充分な皮膚に対する接着性を有していなければならない。また、前記用具を取り除いた時に残留物が残ることがないように充分な基材に対する接着性を有していなければならない。
【0005】
しかしながら、低い表面エネルギーを有するプラスチック支持体に対するシリコーンゲルの接着性を得るのは困難であることが知られている。しかしながら、特に医療用途又は医療補助用途については、皮膚に対する接着性物品の良好な団結を保証し、且つ、物品を取り除いた時に残留物が残らないようにするためには、基材に対して接着性であることが必須である。
【0006】
従って、シリコーンゲルをポリウレタン支持体コーティング要素として又はこれらの支持体に貼り付けられる層として用いる場合には、被処理製品が物理的応力に有効に耐えられるように、ポリウレタン支持体に対するそれらの接着性を高めることが望ましい。
【0007】
例えば、支持体の表面に対してコロナ処理を施して支持体の表面エネルギーを改変することによって、プラスチック基材に対するシリコーンゲルの接着性が改善されることが知られている。この技術は、材料の表面を酸化して表面張力を高めることによって濡れ性を改善することから成る。しかしながら、得られる接着性のレベルは、いくつかの用途については、常に満足できるわけではない。
【0008】
プラスチック支持体、例えばポリウレタン支持体に対するシリコーンゲルの接着性を改善するための別のアプローチは、「タイプライマー」とも称される接着性プライマーを使用することから成る。この技術アプローチは、コロナ処理を施されたポリマー基材と比較して僅かに改善されたレベルの結合力を提供する製品を得ることを可能にする。現存するプライマーの中では、以下のものを挙げることができる:
・溶剤環境中で配合されるプライマー。一例は、Bluestar Silicones France社の国際公開WO2011/092404号に記載されたものであり、このプライマーは、活性材料(ヒドロシリル官能基(SiH)及びSi−アルケニルを含むオルガノポリシロキサンオイルオイル又はヒドロシリル官能基を有するシリコーン樹脂)がシリコーン溶剤(シクロペンタシロキサン)中に溶解させて成るものである。このプライマーは非常に効果的であるが、特性の良好な折衷点(基材への接着性及び粘り着き防止)が達成されるようにするためには、非常に厳密な条件下(活性材料の希釈、コーティングされるプライマーの重量)で用いなければならない。さらに、このタイプのプライマーの別の欠点はその溶剤含有量であり、そのせいでコーティング工程の際に利用するのが難しい;及び
・各種基材(ポリアミドやポリエステル、ポリウレタン基材)に対する接着性を改善することを可能にする接着促進剤(通常はシラン類)を含み、ヒドロシリル化反応によって架橋する前駆体組成物から調製されたシリコーンエラストマープライマー。しかしながら、このシリコーンエラストマーの調製の際に、シランの縮合によって副生成物(アルコール類)が放出され、これがコーティング工程の際にこのタイプのプライマーを利用することをより一層困難にする。
【0009】
別の技術的アプローチ、例えばDow Corning社の国際公開WO2005/051442号に記載されたものに従えば、ポリウレタンのようなプラスチックポリマー基材の表面へのシリコーンゲルの接着性は、誘導体:チタネート、ジルコネート又はヒドロシリル官能基若しくは白金を有するシロキサン(例えば白金−(0)−1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体):と接触させることによって基材又はシリコーンゲルを直接処理することによって、改善される。チタンテトラブタノエートのようなチタネートタイプの接着性プライマーの利用は非常に広く普及しているが、使用する際に問題があることに注目すべきである。
【0010】
上で述べた問題に対する解決策が、Urgo社の国際公開WO2014/131999号に記載されている。この国際公開には、少なくとも1つのポリマー基材と少なくとも1つのシリコーンポリマー層とから組み立てられた物品であって、該物品組み立ての前に前記ポリマー基材又は前記シリコーンポリマー層の少なくとも一方を二酸化チタン、酸化マグネシウム及び/又は酸化亜鉛の粒子と接触させたこと、並びに前記ポリマー基材又は前記シリコーンポリマー層の少なくとも一方を前記物品組み立ての前又は後に水と接触させたことを特徴とする前記物品が記載されている。接着性の結果はコロナ処理やイソプロパノール中5重量%のチタンテトラブタノエートを含浸させたポリエチレンをベースとする不織支持体の含浸と比較して、明らかな改善を示している。
【0011】
水性相中で配合される別のタイプの接着性プライマーを使用することも可能であるが、接着性の改善に関する結果は満足できるものではなく、また、使用する際の添加剤(例えば酢酸)の導入及び/又は熱処理の適用を必要とするという問題もあり、この処理はある種のポリマー基材を使用する場合には不適合である。
【0012】
従って、様々なタイプ、特にチタネートタイプの接着性プライマーの利用は、その使用及び利用に関連して多くの問題や障害をもたらす。さらに、これらの処理によって得られる接着性のレベルは依然として改善されることを必要とする。従って、本出願人は、新規の接着性プライマーであって、チタネートタイプやシランタイプの接着促進剤を使用せず、さらには溶剤さえも使用することなく、シリコーンゲルと可撓性ポリウレタンフィルムとの間の改善された接着性を提供し、健康上の安全性に関して最善の可能な保証を提供するものを開発すべく研究を続けてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開WO2011/092404号
【特許文献2】国際公開WO2005/051442号
【特許文献3】国際公開WO2014/131999号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
かくして、本発明の目的は、皮膚に接着することができる新規の物品であって、特定のプライマー及びシリコーンゲルの形のシリコーンポリマー層でコーティングされたポリウレタン支持体(基材)を含み、前記ポリウレタン支持体への前記シリコーンの接着性が特に高く、前記基材がさらに医療や医療補助、美容の用途にとって好適であり、ある種の溶剤やシラン類、チタネートの使用に関連した毒性の問題を引き起こすことがないものを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、皮膚に接着することができる新規の物品であって、様々なタイプの包帯類や医療用具において皮膚と接触する層として用いることができるものを提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、皮膚に接着することができる新規の物品であって、シリコーンゲルの粘着特性が皮膚への良好な接着を可能にするのに充分であるものを提供することから成る。
【0017】
本発明の別の目的は、前記皮膚接着性物品を調製するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらの目的は、本発明によって達成される。本発明は、次の皮膚接着性物品に関する。この皮膚接着性物品は、
・トップ面S1及びボトム面S2を有する可撓性ポリウレタンフィルムである支持体S、
・前記支持体Sの前記トップ面S1の少なくとも一部又は全部に適用(塗布/貼付)された少なくとも1つのタイプライマーC1、
・前記支持体Sとは反対側で前記タイプライマーC1に適用された、架橋性シリコーン組成物Yをヒドロシリル化反応によって架橋させることによって得られるシリコーンゲルEから作られた少なくとも1つの層D1、並びに
・随意としての、前記層D1に適用された、剥離保護材料から成る少なくとも1つの保護層F
を含み、
前記タイプライマーC1が、シリコーンエラストマーから成り、
このシリコーンエラストマーが、シリコーンゲルではなく、シリコーン組成物Xを架橋させることによって得られるものであり、
このシリコーン組成物Xが、下記1)、2)、3)、4)、5)及び7):
1)ケイ素原子に結合したビニル基を1分子当たり少なくとも2個含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAであって、
(i)式(A1):
abSiO(4-(a+b))/2 (A1)
(ここで、
YはC2〜C6アルケニル基、好ましくはビニル基を表し、
Zはメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基、並びにキシリル、トリル及びフェニル基等のアリール基から選択される一価炭化水素系基を表し、
a及びbは整数を表し、aは1,2又は3であり、bは0、1又は2であり、a+bは1、2又は3である)
の少なくとも2個のシロキシ単位から成り且つ
(ii)随意に式(A2):
cSiO(4-c)/2 (A2)
(ここで、
Zは上記と同じ意味を持ち、
cは0、1、2又は3の整数を表す)
の別のシロキシ単位を含むもの;
2)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサンBであって、
(i)式(B1):
HZbSiO(3-b)/2 (B1)
(ここで、Hは水素原子であり、
Zはメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基、並びにキシリル、トリル及びフェニル基等のアリール基から選択される一価炭化水素系基を表し、
bは0、1又は2である)
の少なくとも3個のシロキシ単位から成り且つ
(ii)随意に式(B2):
cSiO(4-c)/2 (B2)
(ここで、Zは上記と同じ意味を持ち、
cは0、1、2又は3の整数を表す)
の別のシロキシ単位を含むもの;
3)少なくとも1種のヒドロシリル化触媒C;
4)少なくとも1種のヒドロシリル化反応禁止剤D;
5)随意としての1種以上の安定化用添加剤K;並びに
7)随意としての、ヒドロキシル基を有ししかしアルケニル基もヒドロシリルSiH基も持たない1種以上のシリコーン樹脂M:
から成り、
但し、オルガノポリシロキサンA及びBの重量による量が、
比RHalk=nH/tAlk
(ここで、
nHはオルガノポリシロキサンBのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数であり、
tAlkはオルガノポリシロキサンAのケイ素原子に直接結合したアルケニルのモル数である)
が1.00≦RHalk≦4.5となるように決定されることを特徴とする、前記皮膚接着性物品に関する。
【発明の効果】
【0019】
本出願人は、とりわけこの目的を達成するために、多大なる研究手段及び多くの実験を実施してきた。そしてついに、全く驚くべきことに、そして予期しなかったことに、低表面エネルギーの可撓性ポリウレタンプラスチックフィルム上に本発明に従うタイプライマーを用いることによって、その後にこのプライマー上にシリコーンゲルをコーティングした時に満足できる接着性を得ることが可能になることを見出すという功績を遂げた。
【0020】
本発明に従うシリコーン組成物Xは、このタイプの所望の接着性にとって必須成分として先行技術に示されてきたチタネートや二官能性シリコーン、シランを含まないということも、さらにより一層驚くべきことである。
【0021】
本発明に従うシリコーン組成物X中には国際公開WO2011/092404号に示されたもののようなチタネート又は二官能性シリコーンが存在しないということは、有機溶剤を使用することが不要になり、従って医療用途用の物品の製造において有機溶剤を使用することに関連した数多くの許容できない問題や毒性さえも回避することが可能になるということである。この局面は、医療用途又は医療補助用途用の包帯類を製造する産業から特に注目されることである。
【0022】
シリコーン組成物X中にシランが存在しないということは、シランの縮合によってアルコールが放出されるのを回避することが可能になるということであり、これはコーティングされた支持体を製造する際の利点である。
【0023】
本発明に従うシリコーン組成物Xを架橋させることによって得られるシリコーンエラストマーをタイプライマーとして使用することに関連した別の利点は、本発明に従うプライマー上にコーティングされたシリコーンゲルの粘着性が減衰しないことである。用語「粘着性」又は「即座粘着」は、短時間での接着能力を決定する。粘着性を評価/査定するために、「プローブタック(Probe Tack)」法が開発されている。これらの試験の原理は、剛い金属のパンチ(poin"c"on("c"はcセディーユ))の表面をシリコーンゲルと接触させ、引き離す時の力の変化を記録することから成る。パンチの移動(d"e"placement("e"はアクサンテギュ))の関数としての力を示したカーブの積分が、粘着エネルギー(mJ/cm2の単位)を与える。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明において、「シリコーンゲル」という表現は、架橋したシリコーン物質であって、安定状態にある時には流動性を示さず、80分の1〜300分の1mmの貫入(針入)度(「貫入性」)によって特徴付けられるものを指す。これは、NF規格ISO2137に従う貫入度測定によって、Petrotest貫入計PNR 12型を用いて、62.5gに固定されたロッド及びコーンの合計重量で、測定される。シリコーンゲルのコーン貫入度は25℃においてサンプル中へのコーンの貫入深さを測定することによって決定され、この貫入度は貫入度計のコーンアセンブリを解放してコーンを5秒間作用させておく(en laissant agir)ことによって得られる。
【0025】
好ましくは、支持体Sに適用されるシリコーン組成物Xの量は、架橋前に支持体1m2当たりシリコーン組成物X1〜100gの範囲の含有率(以下、「g/m2支持体」又は単に「g/m2」と略記する)、好ましくは1〜50g/m2の範囲、さらにより一層好ましくは2〜30g/m2の範囲のシリコーン組成物X含有率を有するコーティングが得られるように、決定される。
【0026】
1つの有利な実施形態に従えば、オルガノポリシロキサンA及びBの重量による量は、1.50≦RHalk≦4.0となるように決定される。好ましくは、オルガノポリシロキサンA及びBの重量による量は、1.50≦RHalk≦2.5となるように決定される。
【0027】
オルガノポリシロキサンAは、直鎖状、分岐鎖状、環状又は網状の構造を有することができる。直鎖状ポリオルガノシロキサンの場合、それらは本質的に以下から成る:
・式R2SiO2/2、RZSiO2/2及びZ2SiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位「D」;
・R3SiO1/2、R2ZSiO1/2、RZ2SiO1/2及びR3SiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位「M」。
ここで、記号ZはC2〜C6アルケニル基、好ましくはビニル基を表し、記号Rはメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基並びにキシリル、トリル及びフェニル基等のアリール基から選択される一価炭化水素系基を表す。
【0028】
単位「D」の例としては、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、メチルビニルシロキシ、メチルブテニルシロキシ、メチルヘキセニルシロキシ、メチルデセニルシロキシ及びメチルデカジエニルシロキシ基を挙げることができる。
【0029】
単位「M」の例としては、トリメチルシロキシ、ジメチルフェニルシロキシ、ジメチルビニルシロキシ及びジメチルヘキセニルシロキシ基を挙げることができる。
【0030】
これらのオルガノポリシロキサンは、特に直鎖状である場合、25℃において1mPa・s〜100000mPa・sの範囲、好ましくは10mPa・s〜10000mPa・sの範囲、さらにより一層好ましくは50mPa・s〜5000mPa・sの範囲の動的粘度を有するオイルであることができる。
【0031】
本明細書において言及されるすべての粘度は、「Newtonian」と称される25℃における動的粘度の等級に相当し、即ち、それ自体周知の態様で、Brookfield粘度計を用いて、測定される粘度が剪断速度勾配に依存しないものであるのに充分低い剪断速度勾配で、測定される動的粘度である。
【0032】
環状オルガノポリシロキサンの場合、これは式R2SiO2/2、RZSiO2/2及びZ2SiO2/2(ここで、R及びZは上記と同じ意味を持つ)の単位から選択されるシロキシル単位「D」から成ることができる。かかる単位「D」の例は、上に記載したものである。この環状ポリオルガノシロキサンは、25℃において1mPa・s〜5000mPa・sの範囲の動的粘度を有することができる。
【0033】
オルガノポリシロキサンAの例には、以下のものがある:
・ジメチルビニルシリル末端基を有するポリジメチルシロキサン;
・ジメチルビニルシリル末端基を有するポリ(メチルフェニルシロキサン−コ−ジメチルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端基を有するポリ(ビニルメチルシロキサン−コ−ジメチルシロキサン);
・トリメチルシリル末端基を有するポリ(ジメチルシロキサン−コ−ビニルメチルシロキサン);
・環状ポリメチルビニルシロキサン。
【0034】
オルガノポリシロキサンBは、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個含み、
(i)式(B1):
HZbSiO(3-b)/2 (B1)
(ここで、
Hは水素原子であり、
Zはメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基、並びにキシリル、トリル及びフェニル基等のアリール基から選択される一価炭化水素系基を表し、
bは0、1又は2である)
の少なくとも3個のシロキシ単位から成り且つ
(ii)随意に式(B2):
cSiO(4-c)/2 (B2)
(ここで、Zは上記と同じ意味を持ち、
cは0、1、2又は3の整数を表す)
の別のシロキシ単位を含む。
【0035】
式(B1)の単位の例には、以下のものがある:H(CH32SiO1/2、HCH3SiO2/2及びHSiO3/2
【0036】
オルガノポリシロキサンBは、直鎖状、分岐鎖状、環状又は網状の構造を有することができる。直鎖状ポリオルガノシロキサンの場合、それらは本質的に以下から成る:
・式HZSiO2/2及びZ2SiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位「D」;
・式HZ2SiO1/2及びZ3SiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位「M」。
ここで、記号Zは上記と同じ意味を持ち、記号Hは水素原子を表す。
【0037】
これらの直鎖状ポリオルガノシロキサンは、25℃において1mPa・s〜100000mPa・sの範囲、好ましくは1mPa・s〜5000mPa・sの範囲、より一層好ましくは1mPa・s〜2000mPa・sの範囲の動的粘度を有するオイルであることができる。
【0038】
環状ポリオルガノシロキサンの場合、これらは式Z2SiO2/2の単位及び式HZSiO2/2のシロキシル単位から選択されるシロキシル単位「D」のみから成ることができる。Zは上記と同じ意味を持つ。これらの環状ポリオルガノシロキサンは、25℃において1mPa・s〜5000mPa・sの範囲の動的粘度を有することができる。
【0039】
オルガノポリシロキサンBの例には、以下のものがある:
・ヒドロジメチルシリル末端基を有するポリジメチルシロキサン;
・トリメチルシリル末端基を有するポリ(ジメチルシロキサン−コ−メチルヒドロシロキサン);
・ヒドロジメチルシリル末端基を有するポリ(ジメチルシロキサン−コ−メチルヒドロシロキサン);
・トリメチルシリル末端基を有するポリ(メチルヒドロシロキサン);
・環状ポリ(メチルヒドロシロキサン)。
【0040】
分岐鎖状又は網状のポリオルガノシロキサンの場合、それらはまた、以下のものをも含むことができる:
・式HSiO3/2及びZSiO3/2の単位から選択されるシロキシル単位「T」;
・式SiO4/2のシロキシル単位「Q」。
ここで、記号Hは水素原子を表し、Zは上記と同じ意味を持つ。
【0041】
本発明に従って有用なヒドロシリル化触媒Cとしては、当業者によく知られた白金族に属する金属の化合物を挙げることができる。白金族の金属は、プラチノイドの名称でよく知られ、この語には、白金に加えてルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムが包含される。好ましくは、白金及びロジウム化合物が使用される。特に、米国特許第3159601号明細書、米国特許第3159602号明細書及び米国特許第3220972号明細書並びに欧州特許公開第0057459号、欧州特許公開第0188978号及び欧州特許公開第0190530号に記載された白金及び有機物質の錯体、並びに米国特許第3419593号明細書に記載された白金とビニルオルガノシロキサンとの錯体を使用することができる。一般的に好ましい触媒は、白金である。例として、白金黒、クロロ白金酸、アルコール変性クロロ白金酸、クロロ白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン若しくはアセチレンアルコール他との錯体を挙げることができる。米国特許第3775452号明細書に記載されたようなKarstedt溶液若しくは錯体、クロロ白金酸6水和物又はカルベンリガンドを含む白金触媒が好ましい。
【0042】
本発明に従って有用なヒドロシリル化反応禁止剤Dとしては、α−アセチレン性アルコール、α,α’−アセチレン性ジエステル、エン−イン共役化合物、α−アセチレン性ケトン、アクリロニトリル、マレエート、フマレート及びそれらの混合物から選択されるものを挙げることができる。ヒドロシリル禁止剤としての機能を果たすことができるこれらの化合物は、当業者によく知られている。これらは、単独で又は混合物として用いることができる。
【0043】
α−アセチレン性アルコールタイプの禁止剤Dは、下記の式(D1)の化合物から選択することができる。
(R1)(R2)C(OH)−C≡CH (D1)
(ここで、
1基はアルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、
2基は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、
また、R1及びR2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、5員、6員、7員又は8員の脂肪族環を形成することもでき、この脂肪族環は、随意に1回以上置換されていてもよい。)
【0044】
式(D1)に従えば、
・用語「アルキル」は、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を有する飽和炭化水素系鎖を意味するものとする。アルキル基は、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、t−ブチル、イソブチル、n−ブチル、n−ペンチル、イソアミル及び1,1−ジメチルプロピルより成る群から選択することができる;
・用語「シクロアルキル」は、本発明に従えば、3〜20個の炭素原子、好ましくは5〜8個の炭素原子を有する単環式又は多環式、好ましくは単環式又は二環式の飽和炭化水素系基を意味するものとする。シクロアルキル基が多環式である場合、多環核は、共有結合によって及び/若しくはスピラン原子によって互いに結合することもでき、且つ/又は互いに縮合していてもよい。シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンタン及びノルボルナンより成る群から選択することができる;
・用語「(シクロアルキル)アルキル」は、本発明に従えば、上記のシクロアルキル基が上記のアルキル基に結合したものを意味するものとする;
・用語「アリール」は、本発明に従えば、5〜18個の炭素原子を有する単環式又は多環式芳香族炭化水素基を意味するものとする。アリール基は、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びフェナントリルより成る群から選択することができる;
・用語「アリールアルキル」は、本発明に従えば、上記のアリール基が上記のアルキル基に結合したものを意味するものとする。
【0045】
1つの好ましい実施形態に従えば、式(D1)においてR1及びR2はそれらが結合している炭素原子と一緒になって5員、6員、7員又は8員の非置換脂肪族環を形成する。別の好ましい実施形態に従えば、R1及びR2は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立してC1〜C12、好ましくはC1〜C6一価アルキル基を表す。
【0046】
本発明に従って有用なα−アセチレン性アルコールである禁止剤Dは、次の化合物より成る群から選択することができる:1−エチニル−1−シクロペンタノール;1−エチニル−1−シクロヘキサノール(ECHとも称される);1−エチニル−1−シクロヘプタノール;1−エチニル−1−シクロオクタノール;3−メチル−1−ブチン−3−オール(MBTとも称される);3−メチル−1−ペンチン−3−オール;3−メチル−1−ヘキシン−3−オール;3−メチル−1−ヘプチン−3−オール;3−メチル−1−オクチン−3−オール;3−メチル−1−ノニン−3−オール;3−メチル−1−デシン−3−オール;3−メチル−1−ドデシン−3−オール;3−メチル−1−ペンタデシン−3−オール;3−エチル−1−ペンチン−3−オール;3−エチル−1−ヘキシン−3−オール;3−エチル−1−ヘプチン−3−オール;3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール;3−イソブチル−5−メチル−1−ヘキシン−3−オール;3,4,4−トリメチル−1−ペンチン−3−オール;3−エチル−5−メチル−1−ヘプチン−3−オール;3,6−ジエチル−1−ノニン−3−オール;3,7,11−トリメチル−1−ドデシン−3−オール(TMDDOとも称される);1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール;3−ブチン−2−オール;1−ペンチン−3−オール;1−ヘキシン−3−オール;1−ヘプチン−3−オール;5−メチル−1−ヘキシン−3−オール;4−エチル−1−オクチン−3−オール及び9−エチニル−9−フルオレノール。
【0047】
α,α’−アセチレン性ジエステルタイプの禁止剤Dは、下記の式(D2)の化合物から選択することができる。
【化1】
(ここで、R3及びR4基は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立してアルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はシリル基を表す。)用語「シリル」は、本発明に従えば、式−SiR3の基を意味するものとし、ここで、Rは独立して1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基を表す。シリル基は、例えばトリメチルシリル基であることができる。
【0048】
1つの特定的な実施形態に従えば、式(D2)中のR3及びR4は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、C1〜C12、好ましくはC1〜C6アルキル基、又はトリメチルシリル基を表す。本発明に従って有用なα,α’-アセチレン性ジエステルである禁止剤Dは、次の化合物より成る群から選択することができる:アセチレンジカルボン酸ジメチル(DMAD)、アセチレンジカルボン酸ジエチル、アセチレンジカルボン酸t−ブチル及びアセチレンジカルボン酸ビス(トリメチルシリル)。
【0049】
エン−イン共役化合物タイプの禁止剤Dは、下記の式(D3)の化合物から選択することができる。
【化2】
(ここで、
5、R6及びR7基は互いに独立して、a 水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、
また、R5、R6及びR7基の内の少なくとも2個の基が、それらが結合している炭素原子と一緒になって、5員、6員、7員又は8員の脂肪族環を形成することもでき、この脂肪族環は、随意に1回以上置換されていてもよい。)
【0050】
1つの特定的な実施形態に従えば、R5、R6及びR7基は互いに独立して、水素原子、C1〜C12、好ましくはC1〜C6アルキル基又はアリール基を表す。本発明に従って有用なエン−イン共役化合物である禁止剤Dは、次の化合物より成る群から選択することができる:3−メチル−3−ペンテン−1−イン;3−メチル−3−ヘキセン−1−イン;2,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン;3−エチル−3−ブテン−1−イン;及び3−フェニル−3−ブテン−1−イン。別の特定的な実施形態に従えば、R5、R6及びR7基から選択される2個の基が、それらが結合している炭素原子と一緒になって、5員、6員、7員又は8員の非置換脂肪族環を形成し、残った第3の基が水素原子又はC1〜C12、好ましくはC1〜C6アルキル基を表す。本発明に従って有用なエン−イン共役化合物である禁止剤Dは、1−エチニル−1−シクロヘキセンであることができる。
【0051】
α−アセチレン性ケトンタイプの禁止剤Dは、下記の式(D4)の化合物から選択することができる。
【化3】
(ここで、R8はアルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、これらアルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール又はアリールアルキル基は随意に塩素、臭素又はヨウ素原子で1回以上置換されていてもよい。)
【0052】
1つの好ましい実施形態に従えば、R8はC1〜C12、好ましくはC1〜C6一価アルキル基(これは随意に塩素又は臭素原子で1回以上置換されていてもよい)、又はシクロアルキル基、又はアリール基を表す。本発明に従って有用なα−アセチレン性ケトンである禁止剤Dは、次の化合物より成る群から選択することができる:1−オクチン−3−オン、8−クロロ−1−オクチン−3−オン;8−ブロモ−1−オクチン−3−オン;4,4−ジメチル−1−オクチン−3−オン;7−クロロ−1−ヘプチン−3−オン;1−ヘキシン−3−オン;1−ペンチン−3−オン;4−メチル−1−ペンチン−3−オン;4,4−ジメチル−1−ペンチン−3−オン;1−シクロヘキシル−1−プロピン−3−オン;ベンゾアセチレン及びo−クロロベンゾイルアセチレン。
【0053】
アクリロニトリルタイプの禁止剤Dは、下記の式(D5)の化合物から選択することができる。
【化4】
(ここで、R9及びR10は互いに独立して、水素原子、塩素、臭素若しくはヨウ素原子、アルキル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、これらアルキル、シクロアルキル, (シクロアルキル)アルキル、アリール又はアリールアルキル基は随意に塩素、臭素又はヨウ素原子で1回以上置換されていてもよい。)本発明に従って有用なアクリロニトリルである禁止剤Dは、次の化合物より成る群から選択することができる:アクリロニトリル、メタクリロニトリル;2−クロロアクリロニトリル;クロトノニトリル及びシンナモニトリル。
【0054】
マレエート又はフマレートタイプの禁止剤Dは、下記式(D6)及び(D7)の化合物から選択することができる。
【化5】
(ここで、R11及びR12は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、アルキル若しくはアルケニル基、シクロアルキル基、(シクロアルキル)アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を表し、これらアルキル、アルケニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール及びアリールアルキル基はアルコキシ基で置換されていてもよい。)用語「アルケニル」は、本発明に従えば、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を有し、少なくとも1個の二重結合不飽和を含む不飽和炭化水素系鎖を意味するものとする。アルケニル基は、ビニル又はアリルより成る群から選択することができる。
【0055】
式(D6)又は(D7)に従えば、用語「アルコキシ」は、上で定義したアルキル基に酸素原子が結合したものを意味するものとする。アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びブトキシより成る群から選択することができる。
【0056】
1つの特定的な実施形態に従えば、R11はR12は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、C1〜C12、好ましくはC1〜C6アルキル又はアルケニル基を表し、これらは随意にC1〜C6アルコキシ基で置換されていてもよい。
【0057】
本発明に従って有用なマレエート又はフマレートである禁止剤Dは、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル及びマレイン酸ビス(メトキシイソプロピル)より成る群から選択することができる。
【0058】
α−アセチレン性アルコール、α,α’-アセチレン性ジエステル、エン−イン共役化合物、α−アセチレン性ケトン、アクリロニトリル、マレエート及びフマレートから選択される禁止剤Dは、商品として入手できる。特に、BASF社から商品として入手可能なECH(1−エチニル−1−シクロヘキサノール)、DMS社から商品として入手可能なマレイン酸ジメチル、及びCity Chemical LLCから入手可能なアセチレンジカルボン酸ジメチルを挙げることができる。
【0059】
これらの禁止剤は、シリコーン組成物全体の重量に対して1〜50000ppmの範囲、特に10〜10000ppmの範囲、好ましくは20〜2000ppmの範囲、さらにより一層好ましくは20ppm〜500ppmの範囲の重量による量で、加えられる。
【0060】
安定化用添加剤Kとしては、例えばホスホン酸のシリル化誘導体を挙げることができる。
【0061】
好ましくは、非官能化オルガノポリシロキサンIは、直鎖状又は実質的に直鎖状であり、50000mPa・s以下、好ましくは20〜40000mPa・sの範囲の動的粘度を有する。
【0062】
別の特に有利な実施形態に従えば、シリコーン組成物Xは、本発明に従うオルガノポリシロキサンAを少なくとも2種含有し、少なくとも1種が
(i)式(A1):
abSiO(4-(a+b))/2 (A1)
(ここで、
YはC2〜C6アルケニル基、好ましくはビニル基を表し、
Zはメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基、並びにキシリル、トリル及びフェニル基等のアリール基から選択される一価炭化水素系基を表し、
a及びbは整数を表し、aは1,2又は3であり、bは0、1又は2であり、a+bは1、2又は3でり、好ましくはaは1である)
の少なくとも2個のシロキシ単位;及び
(ii)式(A2):
cSiO(4-c)/2 (A2)
(ここで、
Zは上記と同じ意味を持ち、
cは0、1、2又は3の整数を表す)
の別のシロキシ単位:
から成るシリコーン樹脂A1であって、但し、少なくとも1つのシロキシ単位(A2)が式SiO4/2を有するものであることを特徴とする。
【0063】
シリコーン樹脂A1はよく知られていて商品として入手できる分岐鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーである。これは希釈された形で用いられ、好ましくはビニル官能基を有することができるシリコーンオイル中に希釈される。この場合、シリコーンオイルの選択は、25℃において1000mPa・s〜100000mPa・sの範囲の動的粘度を持つように、行われる。分岐鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーの例としては、「MQ」樹脂、「MDQ」樹脂、「TD」樹脂及び「MDT」樹脂(アルケニル官能基はシロキシル単位M、D及び/又はTが有する)を挙げることができる。シリコーン分野の当業者は通常、下記のシロキシル単位を表すこの命名法を用いる:
・R3SiO1/2(単位M)、
・RSiO32(単位T)、
・R2SiO22(単位D)、及び
・SiO42(単位Q)
(ここで、RはC2〜C6アルケニル基、好ましくはビニル、又はメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基、並びにキシリル、トリル及びフェニル基等のアリール基から選択される一価炭化水素系基を表す。)
【0064】
本発明に従って特に有用なシリコーン樹脂A1は、「Si−アルケニル」官能基を含むシリコーン樹脂、即ちビニル、アリル及び/又はヘキセニル官能基を含む樹脂である。有利には、それらは構造中にアルケニル基を0.1〜20重量%含む。この樹脂において、アルケニル基はシロキシル単位M、D又はT上に配置させることができる。これらの樹脂は、例えば米国特許第2676182号明細書に記載された方法に従って、調製することができる。これらの樹脂の内のいくつかは、商品として、特に一般的には「溶液」状で、例えばキシレン中の「溶液」状で、入手できる。
【0065】
例えば、シリコーン樹脂A1は、
・下記の式(I)少なくとも2個の異なるシロキシル単位:
aZ'bSiO(4-(a+b))/2 (I)
(ここで、
記号Wは同一であっても異なっていてもよく、それぞれC2−C6アルケニル基;好ましくはビニル、アリル及び/又はヘキセニル基、さらにより一層好ましくはビニル基を表し、
記号Z'は同一であっても異なっていてもよく、それぞれメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基、並びにキシリル、トリル及びフェニル基等のアリール基から選択される一価炭化水素系基を表し、
記号aは1又は2、好ましくは1であり、記号bは0,1又は2であり、それらの合計a+bは1、2又は3である);
・並びに随意としての下記の式の単位
Z'cSiO(4-c)/2 (II)
(ここで、Z'は上記と同じ意味を持ち、記号cは0、1、2又は3である):
を含むことができ、
但し、単位(I)及び(II)の内の少なくとも1個は単位T又はQである。
【0066】
用語「単位T」は式RSiO3/2のシロキシル単位を意味するものとし、「単位Qは」式SiO4/2のシロキシル単位を意味するものとし、R基は上で定義した通りである。
【0067】
本発明の1つの好ましい実施形態において、シリコーン樹脂A1は、次のシリコーン樹脂より成る群から選択される:
・ビニル基が単位D中に含まれたMDViQ、
・ビニル基が単位D中に含まれたMDViTQ、
・ビニル基が単位Mの一部に含まれたMMViQ、
・ビニル基が単位Mの一部に含まれたMMViTQ、
・ビニル基が単位M及びD中に含まれたMMViDDViQ、及び
・それらの混合物
(ここで、
Mは式R3SiO1/2のシロキシル単位であり、
Viは式(R2)(ビニル)SiO1/2のシロキシル単位であり、
Dは式R2SiO2/2のシロキシル単位であり、
Viは式(R)(ビニル)SiO2/2のシロキシル単位であり、
Qは式SiO4/2のシロキシル単位であり、
Tは式RSiO3/2のシロキシル単位であり、そして
R基は同一であっても異なっていてもよく、メチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基、並びにキシリル、トリル及びフェニル基等のアリール基から選択される一価炭化水素系基である)。
【0068】
本発明の別の特定的な実施形態に従えば、シリコーン樹脂A1は、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンオイル(例えば上記のオルガノポリシロキサンAの定義に該当するもの)中、又は少なくとも1種の炭化水素系溶剤[例えばトルエン、キシレン若しくはExxon Mobil社より販売されているExxsol(登録商標)と称される誘導体]中の混合物の形で本発明に従う組成物中に加えられる。
【0069】
好ましくは、それぞれがケイ素原子に結合した少なくとも2個のC2〜C6アルケニル基を含むシリコーン樹脂A1は、式MDViQ:
(ここで、
Mは式R3SiO1/2の一価シロキシル単位であり、
Viは式RXSiO2/2の二価シロキシル単位であり、
Qは式SiO4/2の三価シロキシル単位であり、
基Xは2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、好ましくはビニル基に相当し、
基Rはメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基、並びにキシリル、トリル及びフェニル基等のアリール基から選択される一価炭化水素系基に相当する)
を有する。
【0070】
本発明の別の実施形態に従えば、組成物Xの総重量に対して90重量%まで、好ましくは組成物Xの総重量に対して10〜90重量%の範囲、さらにより一層好ましくは組成物Xの総重量に対して30〜70重量%の範囲のシリコーン樹脂A1を組成物X中に存在させる。最適な使用のためには、組成物Xの総重量に対して40〜60重量%の範囲のシリコーン樹脂A1を組成物X中に存在させる。
【0071】
シリコーン樹脂Mの例としては、
・下記の式(III)少なくとも2個の異なるシロキシル単位:
W'aZ'bSiO(4-(a+b))/2 (III)
(ここで、
記号W'はヒドロキシル基(−OH)を表し、
記号Z'は同一であっても異なっていてもよく、それぞれメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基等の1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基等のシクロアルキル基、並びにキシリル、トリル及びフェニル基等のアリール基から選択される一価炭化水素系基を表し、
記号aは1又は2、好ましくは1であり、記号bは0、1又は2であり、それらの合計a+bは1、2又は3である);
・並びに随意としての下記の式の単位:
Z'cSiO(4-c)/2 (IV)
(ここで、Z'は上記と同じ意味を持ち、記号cは0、1、2又は3である):
を含むことができ、
但し、単位(III)及び(IV)の内の少なくとも1個は単位T又はQである。
【0072】
ヒドロキシル基を有ししかしアルケニルもヒドロシリルSiH基も持たないシリコーン樹脂Mは、ヒドロキシル官能基(−OH)を含み、Z'がC1〜C8アルキル基であるシリコーン樹脂である。R'基の例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル等の基がある。これらの有機ケイ素樹脂は、クロロシランの共加水分解及び共縮合によって調製される。これらの樹脂は、よく知られていて商品として入手できる分岐鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーである。これらは、それらの構造中に、式(Z')3SiO1/2(単位M)、(Z')2SiO2/2(単位D)、Z'SiO3/2(単位T)及びSiO4/2(単位Q)のものから選択される少なくとも2つの異なるシロキシル単位を有し、これらの単位の内の少なくとも1つはT又はQ単位である。記号Z'は上記と同じ定義を有する。これらの樹脂は、完全に縮合してはいないものであり、0.2〜10重量%のヒドロキシル基の重量含有率及び5〜500meq/樹脂100gのヒドロキシル基の重量含有率を有する。
【0073】
本発明の別の特定的な実施形態に従えば、シリコーン樹脂Mは、組成物Xの総重量に対して1〜45重量%の範囲、好ましくは組成物Xの総重量に対して2〜45重量%の範囲、さらにより一層好ましくは組成物Xの総重量に対して2〜35重量%の範囲の含有率で、組成物X中に存在させる。
【0074】
可撓性ポリウレタンフィルムは、吹込み溶融ポリウレタンから製造することができる。
【0075】
好ましくは、透明又は半透明の可撓性ポリウレタンフィルムを用いる。接着性物品を包帯類として用いる場合、透明又は半透明フィルムの使用には、包帯類が中心に来なければならない傷や損傷、カテーテル侵入部位を観察することを可能にするという利点がある。
【0076】
好ましくは、前記支持体Sは、5〜600μm、好ましくは5〜250μm、より一層好ましくは10〜100μmの厚さを有する可撓性ポリウレタンフィルムである。
【0077】
可撓性ポリウレタンフィルムの例としては、Smith and Nephew 社よりOpsite(登録商標)の商品名で、又は3M社よりTegaderm(登録商標)の商品名で、又はLaboratoires URGOよりOptiskin(登録商標)の商品名で販売されている包帯類に用いられているものを挙げることができる。これらの包帯類は、接着性にされた透明ポリウレタン薄膜(約20〜50μmのもの)から成る。それらの透明性は、処置されるべき領域を視覚的にチェックすることを可能にする。
【0078】
可撓性ポリウレタンフィルムの別の例として、Bayer MaterialScience社よりPlatilon(登録商標)の商品名で販売されているもの、及びCoveris Advanced Coatings社よりInspire(登録商標)の商品名で販売されているものも挙げることができる。
【0079】
1つの好ましい実施形態に従えば、支持体Sは、空気透過性でありしかし流体不透過性の連続可撓性フィルムである。
【0080】
前記フィルムは、予定される用途に応じて可変的な水蒸気透過率(MVTR)を有することができる。液体接触における水蒸気透過率を測定するための技術は、NF規格EN13726−2に記載されている。好ましくは、可撓性ポリウレタンフィルムは、水蒸気透過率(MVTR)が300g/m2/24時間以上、好ましくは600g/m2/24時間以上、より一層好ましくは1000g/m2/24時間以上である包帯類が得られるように、選択される。
【0081】
別の特定的な実施形態に従えば、本発明は、連続可撓性ポリウレタンフィルムである支持体Sがボトム面S2の少なくとも一部の上に感圧接着剤を含むことを特徴とする皮膚接着性物品に関する。本発明の1つの有利な別態様に従えば、連続可撓性ポリウレタンフィルムは、滲出循環を促進することができるように、穴が開けられたものである。
【0082】
かくして、本発明に従う接着性物品は、特定的な実施形態に従えば、着脱可能な接着性積層品であり、様々なタイプの包帯類において皮膚と接触する層として用いることができるという利点を有する。
【0083】
感圧接着剤は、当技術分野において周知の数多くの感圧接着剤の内の任意のものであってよい。これらの接着剤は、一般的に無水で溶剤を含有しない形にあり、周囲温度において恒久的に粘着性であり、指や手による圧力以上の圧力を加える必要なく、単純に接触させただけで様々な異なる表面にしっかり接着する。これらは、水や溶剤、熱による活性化を必要とせずに、強い接着保持力を有する。感圧接着剤の例には、ゴム状物質と硬質樹脂との混合物であるゴム/樹脂接着剤及びアクリル系(又はアクリレート系)接着剤が含まれる。現時点で本発明において用いるのに好ましい類の感圧接着剤は、アクリル系接着剤のものである。
【0084】
1つの特定的な実施形態に従えば、支持体Sは穴あき可撓性ポリウレタンフィルム又は連続可撓性ポリウレタンフィルムであって、トップ面S1及びボトム面S2を有し、その穴と穴の間の部分において空気及び流体不透過性であるものである。
【0085】
この特定的な実施形態においては、支持体Sの穴が円形であり、50μm〜10mmの直径を有するのが有利である。
【0086】
別の特定的な実施形態に従えば、本発明に従う皮膚接着性物品は、吸収材物体Oを含む1個以上の層Nを含み、この層Nは、随意に1個以上の中間層Pで隔てられていてもよく、支持体S上に、支持体Sのボトム面S2の縁部上に配置されることを特徴とする。好ましくは、吸収材物体Oは、親水性フォーム、布パッド、ヒドロゲル、ヒドロコロイド及びアルギナートより成る群から選択される。好ましくは、吸収材物体Oはポリウレタンフォームである。
【0087】
層D1は、架橋性シリコーン組成物Yをヒドロシリル化反応によって架橋させることによって得られるシリコーンゲルEから作られる。シリコーンゲルは、医療分野において、外的用途(偽乳房や医療用のマットレス若しくはクッション)又は内的用途(現場配置される胸部インプラント、包帯類)用に、通常用いられる。それらは容易に取り扱うことができ、且つ、良好な機械的特性を有し、それらの密度は人体組織のものに近い。本発明において、「シリコーンゲル」という表現は、特に50分の1〜500分の1mm、好ましくは80分の1〜300分の1mmの貫入度(NF規格ISO2137により、Petrotest貫入計PNR 12型を用いて、ロッド及びコーン重量62.5gで、測定)によって特徴付けられる架橋したシリコーン物質を示す。シリコーンゲルのコーン貫入度は25℃においてサンプル中へのコーンの貫入深さを測定することによって決定され、この深さは貫入度計のコーンアセンブリを解放してコーンを5秒間作用させておく(en laissant agir)ことによって得られる。シリコーンゲルは、皮膚上に残留物を残さないような団結性を有する。これは、接触させた後にヒドロシリル化反応に従って架橋するシリコーン前駆体から調製することができる。かかる系は、例えば欧州特許公開第0251810号や欧州特許公開第0300620号、米国特許第4921704号明細書等の先行技術文献から知られている。記載された組成物は2成分型であり、いわゆる部分A及び部分Bを混合した後に架橋が行われる。これらの文献に記載された前駆体の混合物は、本質的に、以下を含む:
・少なくとも2個の(通常は各末端に配置される)ビニル基で置換されたポリジメチルシロキサン及び白金触媒を含む部分A、並びに
・少なくとも2個のヒドロシラン基、通常は少なくとも3個のヒドロシラン基を有するポリジメチルシロキサンを含む部分B。
【0088】
2つの部分を一緒にすることにより、白金触媒の存在下で、2つの官能性ポリジメチルシロキサンの架橋反応(重付加反応、特にヒドロシリル化反応によるもの)が起こる。この反応は有利なことに周囲温度において起こり、熱によって促進することもできる。2つの部分の内の少なくとも一方に、顔料や禁止剤、増量用フィラー等の添加剤を加えることもできる。接着性シリコーンゲルの前駆体の例は、以下の製品から選択することができる:Bluestar Silicones社からのSilbione(登録商標)HC2 2011 A and B、Silbione(登録商標)HC2 2031 A and B、Silbione(登録商標)HC2 2022 A and B、Silbione(登録商標)RT Gel 4642 A and B、Silbione(登録商標)RT Gel 4712 A and B、Silbione(登録商標)RT Gel 4317 A and B 及びSilbione(登録商標)RT Gel4717 A and B、Wacker-Chemie GmbH社からのSilpuran(登録商標)シリーズ、Nusil Technology社からのNusil(登録商標)MED-6340、Nusil(登録商標)MED-6345、Dow Corning社からのDow Corning(登録商標)MG 7-9800(登録商標)、Dow Corning(登録商標)MG 7-9850、Dow Corning(登録商標)MG 7-9900(登録商標)、Soft Skin Adhesives Parts A and B。
【0089】
好ましくは、シリコーンゲルの量は、コーティングが20〜500g/m2支持体の範囲、好ましくは40〜250g/m2の範囲、さらにより一層好ましくは80〜350g/m2の範囲のシリコーンゲル含有率を有するように、決定される。
【0090】
好ましくは、シリコーンゲルEは、以下のものを含むシリコーン組成物Kを架橋させることによって調製される:
・ケイ素原子に結合したアルケニル基を平均して1分子当たり2個有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンG(前記アルケニル基はそれぞれ2〜6個の炭素原子を有し、また、どのケイ素原子にも1個より多くのアルケニル基は結合していないものとする)、
・ケイ素原子に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個有する少なくとも1種の水素化ケイ素化合物H、
・随意としての少なくとも1種の非官能化オルガノポリシロキサンI、並びに
・白金系ヒドロシリル化触媒J。
【0091】
一般的に、オルガノポリシロキサンGは、ケイ素に結合したアルケニル基を平均して1分子当たり2個含有し、各アルケニル基は異なるケイ素原子に結合している。オルガノポリシロキサンGは、実質的に直鎖状のポリマーであるが、少量の分岐鎖が存在していてもよい。好ましくは、アルケニル基群がケイ素原子群に結合し、それらはシロキサン鎖の末端ケイ素原子に結合しているのが好ましい。アルケニル基は最大6個の炭素原子を有し、それらは例えばビニル、アリル又はヘキセニル基であることができるが、ビニル基であるのが好ましい。オルガノポリシロキサンGの残りの有機置換基は、アルキル及びアリールから選択され、これらは好ましくは8個以下の炭素原子を有するアルキル基及びフェニル基である。これらの残りの置換基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びフェニル基がある。最もよく用いられるのは、α,ω−(ジメチルビニルシロキシ)置換されたポリジメチルシロキサン又はα,ω−(ジメチルビニルシロキシ)置換されたポリ(ジメチルシロキシ)(メチルビニルシロキシ)タイプのポリオルガノシロキサンである。
【0092】
オルガノポリシロキサンGは、商品となっており、例えばBluestar Silicones社からのBluesil(登録商標)621Vシリーズの製品があり、それらの構造や合成に関しては技術文献に広く開示されている。
【0093】
好ましくは、ポリオルガノシロキサンGは直鎖状又は実質的に直鎖状であり、200000mPa・s以下、好ましくは170000mPa・s以下、さらにより一層好ましくは20〜165000mPa・sの範囲の動的粘度を有する。
【0094】
別の態様に従えば、ケイ素原子に直接結合した反応性アルケニル基の重量%は、0.025%〜3%の範囲である。
【0095】
水素化ケイ素化合物Hは一般的に、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個含むポリオルガノシロキサン又はシランである。これらの水素原子は末端シロキサン単位上に及びポリマー鎖中のシロキサン単位上にも配置させることもでき、また、シロキサン鎖中のみに配置させることもできる。
【0096】
実施に当たっては、用いられるポリオルガノヒドロシロキサンHは、例えばα,ω−(ジメチルヒドロシロキシ)置換されたポリ(ジメチルシロキシ)(メチルヒドロシロキシ)タイプのポリオルガノシロキサン又はα,ω−(ジメチルヒドロシロキシ)置換されたポリジメチルシロキサンである。これらは商品となっており、それらの構造や合成に関しては技術文献に広く開示されている。
【0097】
触媒Jは上記の触媒Cと同じ定義を有する。触媒Jについては、「有効量の少なくとも1種のヒドロシリル化反応触媒」という表現は、ヒドロシリル化反応を開始させるのに充分な量を意味するものとする。触媒として有効な使用量に関しては、言うまでもなく、当業者であればヒドロシリル化反応を促進するための最適触媒量を完璧に決定することができる。この量は特に触媒及びオルガノポリシロキサンの性状に依存する。特定的には、これは、組成物の総重量に対して0.001〜0.5重量%の範囲と示すことができる。
【0098】
好ましくは、成分G及びHの量は、ケイ素結合水素原子対ケイ素結合アルケニル基(X)のモル比rが0.5:1〜2:1の範囲となるように、選択される。
【0099】
ゲルの調製に関しては、これは、周囲温度において又は例えば50〜200℃の範囲の温度に加熱した後に組成物が架橋してゲルになる。この範疇において、必要な架橋時間は、例えば数分である。これらの製品は、商品として広く出回っていて報告されており、当業者によく知られている。
【0100】
剥離保護材料から成る保護層Fは、使用前に剥がすことができる1つ以上の部材から成ることができる。この保護層は、包帯類の表面全体を覆うのが好ましく、包帯類の分野において当業者が保護用に通常用いる任意の材料から成っていてよい。これは例えばフィルムの形にあることができ、例えばポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンフィルム又はポリエステルフィルムであることができる。このフィルムは、有利には、シラン等のケイ素化合物、フッ素化合物、又はケイ素フッ素化合物で少なくとも1つの表面を処理されたものであることができる。材料の選択は一般的にシリコーンゲルの性状に適応させる。剥離保護材料から成る保護層Fは、好ましくは、10〜100μmの範囲、例えば約50μmの厚さを有する。
【0101】
本発明の別の実施形態に従えば、本発明に従う皮膚接着性物品は、
・支持体Sがトップ面S1及びボトム面S2を有する穴あき可撓性ポリウレタンフィルムであること、
・タイプライマーC1が支持体Sのトップ面S1にあり、支持体Sの穴の閉塞を防止するように不連続で適用されたこと、並びに
・シリコーンゲルEから作られた層D1が支持体Sの穴の閉塞を防止するように不連続で適用されたこと
を特徴とする。
【0102】
穴の閉塞を防止するための技術は、欧州特許公開第633758号及び同第633757号を参照することができる当業者には周知であり、これらは、空気(冷たい空気又は20℃以下の温度の空気)を使用することを推奨している。この空気は、穴あき支持体のボトム面に吹き付けられ、支持体の穴に流し入れられて、穴を塞ぐ(架橋段階の前の)シリコーン組成物が流し取られる。次いで吹き付ける空気の温度を上昇させて穴の周縁部にあるシリコーン組成物の効果を開始させる。支持体材料は、空気不透過性であるか、又は、吹き込まれた空気の実質的に全部が穴を通るのに足りる程度の不透過性を有するものである。また、内部で空気が拡散できるような支持体材料を用いることもできる。
【0103】
1つの特定的な実施形態に従えば、本発明に従う皮膚接着性物品は、
・タイプライマーC1が支持体Sのトップ面S1の少なくとも一部の上又は全部の上及びボトム面S2の一部の上又は全部の上に適用されたこと、並びに
・支持体Sのトップ面S1上及びボトム面S2上に存在するタイプライマーC1上に、架橋性シリコーン組成物Yをヒドロシリル化反応によって架橋させることによって得られるシリコーンゲルEから作られた少なくとも1つの層D1が適用されたこと
を特徴とする。
【0104】
好ましくは、支持体Sの厚さは、5〜200μmの範囲、好ましくは10〜75μmの範囲である。
【0105】
1つの特定的な実施形態に従えば、本発明に従う皮膚接着性物品は、医療用途又は医療補助用途用の包帯類であることを特徴とする。
【0106】
本発明の別の主題は、本発明に従う上記の皮膚接着性物品の製造方法であって、
・支持体Sの上に本発明に従う上記のシリコーン組成物Xを充分な量で塗布し、このシリコーン組成物Xを好ましくは60〜200℃の範囲の温度において充分な時間架橋させて、タイプライマーC1を形成させることから成る第1工程、
・前記タイプライマーC1上に本発明に従う上記のシリコーン組成物Yを充分な量で塗布し、このシリコーン組成物Yを好ましくは60〜200℃の範囲の温度において充分な時間架橋させて、層D1を形成させることから成る第2工程
を含むことを特徴とする、前記製造方法に関する。
【0107】
1つの有利な態様に従えば、本発明は、本発明に従う上記の皮膚接着性物品の製造方法であって、
支持体S上に連続的に充分な量で、
・本発明に従う上記のシリコーン組成物Xを塗布し、
・次いでシリコーン組成物X上に本発明に従う上記のシリコーン組成物Yを塗布し、
次いでシリコーン組成物X及びYを好ましくは60〜200℃の範囲の温度において充分な時間架橋させて、タイプライマーC1及び層D1を形成させることから成る工程
を含むことを特徴とする、前記製造方法に関する。
【0108】
好ましくは、支持体Sに適用されるシリコーン組成物Xの量は、架橋前のシリコーン組成物X含有率が1〜100g/m2支持体の範囲、好ましくは1〜50g/m2の範囲、さらにより一層好ましくは2〜30g/m2の範囲であるコーティングが得られるように、決定される。
【0109】
好ましくは、組成物Yの量は、シリコーンゲルE含有率が20〜500g/m2支持体の範囲、好ましくは40〜250g/m2の範囲、さらにより一層好ましくは80〜350g/m2の範囲であるコーティングが得られるように、決定される。
【0110】
組成物X及びYを提供するための技術としては、例えばナイフを用いて実施されるコーティング技術、特にナイフオーバーロール、フローティングナイフ及びナイフオーバーブランケット、又はパディング、即ち2本ロール間圧搾、又はリックロール、ロータリーマシーン、リバースロール、トランスファー、スプレーによって実施されるコーティング技術を挙げることができる。
【0111】
他のコーティング技術としては、カーテンコーティング技術を挙げることができる。カーテンコーティングは、物品又は支持体にコーティング液を適用するための方法である。カーテンコーティングは、コーティング液をホッパーの注ぎ口から重力下で落下させて自由落下するコーティング液のカーテンを形成させ、このカーテンを通り抜けるように物品を移動させて両者を遭遇させてコーティングを形成させることを特徴とする。この技術は多層感光性銀支持体製造の分野において広く用いられている(例えば米国特許第3508947号明細書、米国特許第3508947号明細書及び欧州特許公開第537086号を参照されたい)。
【0112】
コーティングの品質は自由落下するカーテンの品質に依存することが知られている。カーテンは、これが形成される場所から移動する支持体と遭遇するラインまで安定な層流を有するのが好ましい。さもなければ、表面張力によってカーテンが内側に向けて収縮して層流が妨げられる。この問題を防ぐために、エッジガイドを用いて自由落下するカーテンのエッジを捕えて表面張力によって内側に向けて収縮するのを防止するのが、周知のやり方である。かかるシステムの例は、米国特許第4933215号明細書、米国特許第4479987号明細書、米国特許第4974533号明細書、米国特許第3632374号明細書、米国特許第4479987号明細書、欧州特許公開第537086号及び米国特許第4830887号明細書に記載されている。
【0113】
カーテンコーティングの利点は、本発明に従う組成物X及びYを同時にコーティングすることができるということである。
【0114】
1つの有利な実施形態に従えば、本発明に従う方法は、シリコーン組成物Xについて、オルガノポリシロキサンA及びBの重量による量を、
比RHalk=nH/tAlk
(ここで、
nHはオルガノポリシロキサンBのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数であり、
tAlkはオルガノポリシロキサンAのケイ素原子に直接結合したアルケニルのモル数である)
が1となるように決定することを特徴とする。
【0115】
この特定的な実施形態は、支持体S上に連続的に充分な量で
・本発明に従う上記のシリコーン組成物Xを塗布し、
・次いでシリコーン組成物X上に本発明に従う上記のシリコーン組成物Yを塗布し、
次いで架橋工程を実施する場合に、特に有利である。
【0116】
この別法は、シリコーンゲルの前駆体であるシリコーン組成物Yをコーティングして架橋させることによって得られるシリコーンゲルEが充分高い粘着性を維持することを可能にする。
【0117】
以下、非限定的な例によって、本発明に従う組成物の様々な配合可能性、並びにこの組成物を架橋させることによって得られるシリコーンゲルの特徴及び特性を示す。
【0118】
本発明の別の主題は、本発明に従う上記の皮膚接着性物品を含む医療用途又は医療補助用途用の包帯類又は当て布類に関する。
【実施例】
【0119】
記載される組成物は、2成分型のものである。プライマーの架橋は、25℃において、部分A及び部分Bと称される2つの部分を50/50の比で混合した後に、実施される。下記の実施例におけるSilbione(登録商標)HC2 2022ゲルの架橋は、25℃において、2つの部分を50/50の比で混合した後に、実施される。下記
【0120】
1)本発明に従うプライマーの組成物に用いられる出発物質
【0121】
POS(A1)=ポリ(ジメチルシロキシ)(メチルビニルシロキシ)樹脂であり、三価シロキシル単位(単位Q)を含有する。
POS(A2)=α,ω−(ジメチルビニルシロキシ)置換されたポリジメチルシロキサンオイル。粘度600mPa・s。
POS(B)=α,ω−(ジメチルヒドロシロキシ)置換されたポリ(ジメチルシロキシ)(メチルヒドロシロキシ)オイル。粘度25mPa・s。 H基0.7重量%含有。
(C)=反応触媒として用いられる白金有機金属錯体。
(D)=α−アセチレン性アルコールタイプのヒドロシリル化反応禁止剤。
(K)=混合物の安定剤。
【0122】
2)表1に、試験した部分A+部分B混合物中のこれらの各成分の濃度を記載する。
【表1】
【0123】
2)試験したコーティングを得るための方法
【0124】
可撓性ポリウレタンフィルムである支持体上へのSilbione(登録商標)HC2 2022ゲルの接着性を改善するためのプライマーとしての上記組成物を試験するために、2つの異なる試験に従った。
【0125】
プライマーをコーティングし、次いでプライマーを前もって架橋させることなくするゲルをコーティングする方法
・可撓性ポリウレタンフィルムである支持体に5〜15g/m2の範囲の重量でプライマーを適用。プライマーは、コーティングナイフによってフィルムに適用する。次いで、
・コーティングナイフによって200g/m2の重量でSilbione(登録商標)HC2 2022ゲルを適用。そして、
・この複合体を、通風式オーブン中で120℃において30分間架橋させる。
【0126】
プライマーをコーティングし、次いでプライマーを前もって架橋させて、ゲルをコーティングする方法
・可撓性ポリウレタンフィルムである支持体に5〜15g/m2の範囲の重量でプライマーを適用。プライマーは、コーティングナイフによってフィルムに適用する。次いで、
・プライマーを、通風式オーブン中で150℃において5分間架橋させる。
・コーティングナイフによって200g/m2の重量でSilbione(登録商標)HC2 2022ゲルを適用。そして、
・この複合体を、通風式オーブン中で120℃において30分間架橋させる。
【0127】
3)コーティングに対して実施した試験
【0128】
プライマーの有効性を評価するために試験した2つの鍵となる特性は、可撓性ポリウレタン支持体に対するプライマー又はゲルの接着性及び皮膚に対するゲルの接着能力(粘着性)である。実際、プライマーを使用したことによって可撓性ポリウレタンフィルムに対するシリコーンゲルの接着性が改善された時には、皮膚に対するゲルの接着能力(粘着性)が維持されていること、及び皮膚に対する医療用具の接着性がプライマーを使用したことによって変化しないことを確認することが重要である。
【0129】
皮膚に対するシリコーンゲルの接着能力の評価
【0130】
コーティングしたゲルの接着能力を評価するために用いた器具は、プローブタック装置(PT-1000)である。試験は、ASTM規格D2979に従い、次の試験パラメーターで、実施する:
・接着剤との接触表面積:0.2cm2
・接着剤との接触時間:1秒
・接触圧力:20gf
・接着剤からのパンチの分離速度:10mm/秒。
基材からの脱着エネルギーをmJ/cm2で表す。
【0131】
可撓性ポリウレタンフィルムである支持体に対するシリコーンゲルの接着性の評価
【0132】
可撓性ポリウレタンフィルムである支持体に対するシリコーンゲルの接着性の評価は、指で擦った際のゲルの耐性を品質的に評価することから成る。基材からのゲルの剥離が観察されるまでの擦り回数が多ければ、そのゲルはポリウレタンフィルムに対してより粘着性であるとみなされる。
【0133】
4)表2及び表3に、採用したコーティング方法の関数としての得られた適用特性を示す
【0134】
a)プライマーをコーティングし、次いでプライマーを前もって架橋させることなくするゲルをコーティングする方法に従って:
【表2】
【0135】
この第1の方法に従ってプライマー上にコーティングしたゲルは、プライマーのRHalk比が1以上4.5以下である場合に、
a)可撓性ポリウレタンフィルムである支持体への良好な接着性、及び
b)皮膚に対する満足できる接着性
を有する。
【0136】
プライマーのRHalk比が1である組成物(混合物A2+B2)は、非常に良好な特性バランス(可撓性ポリウレタン支持体に対するシリコーンゲルの接着性の改善、接着能力の維持及び皮膚に対するゲルの粘着性)を提供している。
【0137】
b)プライマーをコーティングし、次いでプライマーを前もって架橋させて、ゲルをコーティングする方法に従って:
【表3】
【0138】
この第2の方法に従ってプライマー上にコーティングしたゲルは、プライマーのRHalk比が1以上4.5以下である場合に、
a)可撓性ポリウレタンフィルムである支持体への良好な接着性、及び
b)皮膚に対する満足できる接着性
を有する。
【0139】
プライマーのRHalk比が1.8である組成物(混合物A3+B3)は、非常に良好な特性バランス(可撓性ポリウレタン支持体に対するシリコーンゲルの接着性の改善、接着能力の維持及び皮膚に対するゲルの粘着性)を提供している。