(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の距離算出装置によれば、先行車両などの対象物がステレオ視領域に位置している条件下でのみ、自車両と対象物との距離を算出可能な構成であるので、対象物がステレオ領域と非ステレオ視領域に跨がって存在する場合、非ステレオ領域における対象物の距離を精度よく算出することができず、実用性が低いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、車両と対象物との距離を算出する場合において、良好な算出精度を確保できる領域を拡大することができ、実用性を向上させることができる距離算出装置及び車両制御処理を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、車両3に搭載され、車両3と対象物との距離を算出する距離算出装置1において、距離情報を取得する距離情報取得手段(左右のカメラ4a,4b、レーダ8)と、距離情報を用いて、第1所定領域(重複領域7c,7e)内のいずれかのポイントとの距離の実測値である実測距離Xs_o_nを取得する実測距離取得手段(ECU2、実測距離算出部11)と、画像情報を取得する画像情報取得手段(左カメラ4a、カメラ4c)と、画像情報及び所定の推定アルゴリズム(深層学習法)を用いて、第1所定領域(重複領域7c,7e)をすべて含む、第1所定領域よりも広い第2所定領域(領域7a+7c、7d+7d+7e)内のいずれかのポイントとの距離の推定値である推定距離(第1及び第2推定距離Xn_o_n,Xn_o_m)を算出する推定距離算出手段(ECU2、推定位置算出部12)と、対象物の少なくとも一部が第1所定領域内に位置するときに実測距離取得手段によって取得された対象物の実測距離Xs_o_nと、対象物の少なくとも一部が第1所定領域内に位置するときに推定距離算出手段によって算出された対象物の推定距離(第1推定距離Xn_o_n)との差分(誤差信号値E_id_n)
を算出する差分算出手段(ECU2、補正値算出部13)と、対象物の実測距離と対象物の推定距離との差分の絶対値が減少するように、対象物の推定距離を補正するための補正値Kmodを算出する補正値算出手段(ECU2、補正値算出部13、補正位置算出部14)と、対象物が第1所定領域内を含む第2所定領域内に位置するときに推定距離算出手段によって算出された対象物の推定距離Index_x_hを、補正値Kmodで補正することにより、対象物の補正後距離(算出距離X_h)を算出する補正後距離算出手段(ECU2、補正位置算出部14)と、を備えることが好ましい。
【0008】
この距離算出装置によれば、距離情報取得手段によって距離情報が取得され、この距離情報を用いて、第1所定領域内のいずれかのポイントとの距離の実測値である実測距離が取得され、画像情報取得手段によって画像情報が取得されるとともに、この画像情報及び所定の推定アルゴリズムを用いて、第1所定領域をすべて含む、第1所定領域よりも広い第2所定領域内のいずれかのポイントとの距離の推定値である推定距離が算出される。この場合、推定距離は、第1所定領域をすべて含む、第1所定領域よりも広い第2所定領域内のいずれかのポイントとの距離であるので、実測距離よりも広い領域での距離として算出されることになる。
【0009】
さらに、対象物の少なくとも一部が第1所定領域内に位置するときに実測距離取得手段によって取得された対象物の実測距離と、対象物の少なくとも一部が第1所定領域内に位置するときに推定距離算出手段によって算出された対象物の推定距離との差分
が算出される。そして、対象物の実測距離と対象物の推定距離との差分の絶対値が減少するように、対象物の推定距離を補正するための補正値が算出されるので、この補正値は、対象物の少なくとも一部が1所定領域内に位置するときの、対象物の実測距離と対象物の推定距離との誤差を減少させる機能を備えることになる。
【0010】
したがって、対象物が第1所定領域内を含む第2所定領域内に位置するときに推定距離算出手段によって算出された対象物の推定距離を、補正値で補正することにより、対象物の補正後距離が算出されるので、第2所定領域内に位置する対象物の推定距離の算出精度を向上させた値として、補正後距離を算出することができる。その結果、距離情報及び画像情報を用いて、車両と対象物との距離を算出する場合において、良好な算出精度を確保可能な領域を拡大することができ、実用性を向上させることができる(なお、本明細書における「実測距離を取得」などの「取得」は、センサなどによりこの値を直接検出することに限らず、この値をパラメータに基づいて算出/推定することを含む)。
【0011】
本発明において、距離情報取得手段は、第1カメラ(左カメラ4a)と、第1カメラよりも高感度の第2カメラ(右カメラ4b)とを用いて、ステレオマッチング手法により距離情報を取得し、画像情報取得手段は、第1カメラ(左カメラ4a)を用いて、画像情報を取得することを特徴とすることが好ましい。
【0012】
この距離算出装置によれば、第1カメラと、第1カメラよりも高感度の第2カメラとを用いて、ステレオマッチング手法により距離情報が取得され、この距離情報を用いて、実測距離が取得されるので、実測距離を精度よく取得することができる。また、第1カメラを用いて、画像情報が取得され、この画像情報及び推定アルゴリズムを用いて、推定距離が算出されるので、広い視野領域を確保しながら、推定距離を算出することができる。そして、上述したように、補正後距離が、第2所定領域内に位置する対象物の推定距離の算出精度を向上させた値として算出されるので、第1所定領域よりも広い第2所定領域内において、高い算出精度を確保しながら、補正後距離を算出することができる。
【0013】
本発明において、距離情報取得手段は、レーダ8及びLIDARの一方を用いて、距離情報を取得し、画像情報取得手段は、カメラ4cを用いて、画像情報を取得することが好ましい。
【0014】
この距離算出装置によれば、レーダ及びLIDARの一方を用いて、距離情報が取得されるので、雨天や霧などのカメラ画像による距離情報の取得精度が低下するような条件下においても、距離情報を精度よく取得することができ、実測距離の取得精度を向上させることができる。また、カメラを用いて、画像情報が取得されるので、広い視野領域を確保しながら、推定距離を算出することができる。その結果、上述したように、補正後距離が、第2所定領域内に位置する対象物の推定距離の算出精度を向上させた値として算出されるので、第1所定領域よりも広い第2所定領域内において、高い算出精度を確保しながら、補正後距離を算出することができる。
【0017】
本発明に係る車両制御装置は、以上のいずれかの距離算出装置1を備え、第1所定領域及び第2所定領域は、車両3の前側及び後ろ側の一方の領域であり、対象物の補正後距離(算出距離X_h)を用いて、車両3の駆動力、制動力及び操舵量の少なくとも1つを制御する(
図7/STEP1〜3)ことが好ましい。
【0018】
この車両制御装置によれば、上述したような算出精度の高い補正後距離を用いて、車両の駆動力、制動力及び操舵量の少なくとも一つを制御することができるので、その制御精度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る距離算出装置及び車両制御装置について説明する。なお、本実施形態の車両制御装置は距離算出装置も兼用しているので、以下の説明では、車両制御装置について説明するとともに、その中で、距離算出装置の機能及び構成についても説明する。
【0021】
図1に示すように、この車両制御装置1は、自動運転可能な4輪車両(以下「自車両」という)3に適用されたものであり、この自車両3は、車道の左側通行に対応するように構成されている。車両制御装置1は、ECU2を備えており、このECU2には、左右のカメラ4a,4b(
図2参照)、状況検出装置4c、原動機5及びアクチュエータ6が電気的に接続されている。
【0022】
図2に示すように、左右のカメラ4a,4bは、両者の光軸が自車両3の前方に向うほど、互いの間隔が広くなるとともに、両者の視野領域が、互いに重複する重複領域7c(図中に網掛けで示す領域)と、互いに重複しない左右の非重複領域7a,7bとを構成するように配置されている。この場合、左右のカメラ4a,4bの光軸間の角度は、停止線位置などを認識可能な所定角度(例えば数十度)に設定されている。
【0023】
なお、本実施形態では、左カメラが、距離情報取得手段、画像情報取得手段及び第1カメラに相当し、右カメラが距離情報取得手段及び第2カメラに相当する。また、重複領域7cが第1所定領域に相当し、左非重複領域7aと重複領域7cを合わせた領域が第2所定領域に相当する。
【0024】
この左カメラ4aは、三原色の画像を撮影可能なRGBカメラで構成され、右カメラ4bは、左カメラ4aよりも高感度の、白黒画像のみを撮影可能なCCCカメラで構成されている。このCCCカメラは、画素値としてクリア(白色)のみを出力するものである。
【0025】
ECU2は、後述するように、左右のカメラ4a,4bからの画像データに基づいて、自車両3の前方に位置する対象物との距離を算出する。
【0026】
また、状況検出装置4cは、ミリ波レーダ、GPS及び各種のセンサなどで構成されており、自車両3の位置及び自車両3の進行方向の周辺状況を表す周辺状況データをECU2に出力する。
【0027】
原動機5は、例えば、電気モータなどで構成されており、後述する自動停止制御を含む自動運転制御の実行中、ECU2によって原動機5の出力が制御される。
【0028】
また、アクチュエータ6は、制動用アクチュエータ及び操舵用アクチュエータなどで構成されており、後述する自動停止制御を含む自動運転制御の実行中、ECU2によってアクチュエータ6の動作が制御される。
【0029】
一方、ECU2は、CPU、RAM、ROM、E2PROM、I/Oインターフェース及び各種の電気回路(いずれも図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されており、上述した左右のカメラ4a,4bからの画像データ及び状況検出装置4cからの周辺状況データなどに基づいて、後述する自動停止制御を含む自動運転制御などの各種の制御処理を実行する。
【0030】
なお、本実施形態では、ECU2が、実測距離取得手段、推定距離算出手段、補正値算出手段及び補正後距離算出手段に相当する。
【0031】
次に、
図3を参照しながら、本実施形態の車両制御装置1における距離算出装置としての機能的な構成について説明する。この車両制御装置1は、以下に述べる算出アルゴリズムによって、自車両3の前方に位置する対象物との距離を算出するものであり、以下に述べる算出値はすべてE2PROM内に記憶されるものとする。
【0032】
この場合、歩行者及び車両などの交通参加者、センターライン、走路境界、停止線、交差点の進入位置、交差点通過後の進入路の入口、交差点の右左折先の走路の入口、交差点の中心位置、信号、標識、及び横断歩道などの道路構造物が対象物に相当する。
【0033】
なお、以下の説明では、自車両3の前端の中央位置を原点(基準点)とし、自車両3の前後方向をx座標軸、左右方向をy座標軸とそれぞれ規定したときの2次元座標系におけるx座標値を「距離」といい、y座標値を「横位置」という。
【0034】
図3に示すように、車両制御装置1は、実測距離算出部11、推定位置算出部12、補正値算出部13及び補正位置算出部14を備えており、これらの要素11〜14は、具体的にはECU2によって構成されている。
【0035】
この実測距離算出部11(実測距離取得手段)では、左右のカメラ4a,4bからの画像データに基づいて、ステレオマッチング手法により、前述した重複領域7c内に位置する対象物の距離の実測値として、N(Nは複数)個の実測距離Xs_o_n(n=1〜N)が算出される。このステレオマッチング手法は公知であるので、ここではその説明を省略する。
【0036】
また、推定位置算出部12(推定距離算出手段)では、左カメラ4aからの画像データに基づいて、深層ニューラルネットワークを用いた深層学習法により、N個の第1推定位置(Xn_o_n,Yn_o_n)及びM(Mは複数)個の第2推定位置(Xn_o_m,Yn_o_m)が算出される。
【0037】
これらのN個の第1推定位置(Xn_o_n,Yn_o_n)は、重複領域7c内に存在する対象物の位置の推定値であり、N個の第1推定距離Xn_o_n(n=1〜N)をx座標値とし、N個の第1推定横位置Yn_o_n(n=1〜N)をy座標値とするものである。
【0038】
また、M個の第2推定位置(Xn_o_m,Yn_o_m)は、左非重複領域7a内に存在する対象物の位置の推定値であり、M個の第2推定距離Xn_o_m(m=1〜M)をx座標値とし、M個の第2推定横位置Yn_o_m(m=1〜M)をy座標値とするものである。
【0039】
この推定位置算出部12では、公知の深層学習法により、画像上の対象物の位置、対象物と他の対象物との間の相対位置、対象物の動作速度(又はオプティカルフロー)、対象物と他の対象物との間の速度差、対象物の明るさ/色調などに基づいて、N個の第1推定位置(Xn_o_n,Yn_o_n)及びM個の第2推定位置(Xn_o_m,Yn_o_m)が算出される。
【0040】
さらに、前述した補正値算出部13(補正値算出手段)では、以下の式(1)〜(3)に示す算出アルゴリズムにより、4つの局所補正値Kmod_ij(i=1〜2,j=1〜2)が算出される。なお、以下の説明において、記号(k)付きの各離散データは、所定の制御周期ΔT(本実施形態では数百msec)に同期してサンプリング又は算出されたデータであることを示しており、記号k(kは正の整数)は制御時刻を表している。なお、以下の説明では、各離散データにおける記号(k)を適宜省略する。
【0044】
上式(1)のE_id_n(n=1〜N)は、N個の誤差信号値であり、第1推定距離Xn_o_nと実測距離Xs_o_nとの偏差として算出される。この場合、実測距離Xs_o_nは、左右のカメラ4a,4bからの画像データに基づいて、ステレオマッチング手法により算出されているので、左カメラ4aからの画像データのみに基づいて算出されている第1推定距離Xn_o_nよりも高い算出精度を備えていると見なすことができる。したがって、誤差信号値E_id_nは、実測距離Xs_o_nに対する第1推定距離Xn_o_nの誤差を表すものと見なせる。
【0045】
また、上式(2)のE_id_ij_nは、局所誤差信号値である。さらに、式(2)のWx_i(Xn_o_n)は、N個の距離重み関数値であり、N個の第1推定距離Xn_o_nに応じて、
図4に示すマップを検索することにより算出される。一方、式(2)のWy_j(Yn_o_n)は、N個の横位置重み関数値であり、N個の第1推定横位置Yn_o_nに応じて、
図5に示すマップを検索することにより算出される。さらに、上式(3)のkidは、kid<0が成立するように設定される所定の更新ゲインである。
【0046】
以上の式(1)〜(3)を参照すると明らかなように、局所誤差信号値E_id_ij_nは、実測距離Xs_o_nに対する第1推定距離Xn_o_nの誤差である誤差信号値E_id_nを、x座標におけるXn_o_1〜Xn_o_Nの範囲と、y座標におけるYn_o_1〜Yn_o_Nの範囲で規定される領域に対して、4つの重み関数値Wx_i,Wy_jによって重み付けしながら分配した値として算出される。
【0047】
さらに、4つの局所補正値Kmod_ijは、誤差信号値E_id_ij_nの総和の絶対値が値0に収束するように、積算項のみのフィードバック制御アルゴリズムによって算出されるので、4つの局所補正値Kmod_ijの算出回数が大きくなるほど(すなわち4つの局所補正値Kmod_ijの更新が進むほど)、上述した領域において、実測距離Xs_o_nに対する第1推定距離Xn_o_nの誤差の絶対値を値0に収束させる機能を備えるように算出されることになる。
【0048】
次いで、補正位置算出部14(補正値算出手段、補正後距離算出手段)では、まず、下式(4)により、補正値Kmodが算出される。
【0050】
上式(4)のIndex_x_h(h=1〜N+M)は、N個の第1推定距離Xn_o_nとM個の第2推定距離Xn_o_mの集合に相当するN+M個の推定距離である。また、式(4)の重み関数Wx_i(Index_x_h)は、N個の第1推定距離Xn_o_nを推定距離Index_x_hとして用いる場合には、前述した
図4のマップを用いて算出される一方、M個の第2推定距離Xn_o_mを推定距離Index_x_hとして用いる場合には、前述した
図4の横軸を第1推定距離Xn_o_nから第2推定距離Xn_o_mに置き換えたマップを用いて算出される。
【0051】
さらに、上式(4)のIndex_y_hは、N個の第1推定横位置Yn_o_nとM個の第2推定横位置Yn_o_mの集合に相当するN+M個の推定横位置である。また、式(4)の重み関数Wy_i(Index_y_h)は、N個の第1推定横位置Yn_o_nを推定横位置Index_y_hとして用いる場合には、前述した
図5のマップを用いて算出される一方、M個の第2推定横位置Yn_o_mを推定横位置Index_y_hとして用いる場合には、前述した
図5の横軸を第1推定横位置Yn_o_nから第2推定横位置Yn_o_mに置き換えたマップを用いて算出される。
【0052】
以上の式(4)により補正値Kmodが算出されるので、補正値Kmodは、前述した4つの局所補正値Kmod_ijの機能により、実測距離Xs_o_nに対する第1推定距離Xn_o_nの誤差の絶対値を値0に収束させる機能を備えるように算出される。
【0053】
また、同じ理由により、補正値Kmodは、推定距離Index_xを1座標とし、推定横位置Index_yを1座標とする2次元座標系において、N+M個の推定距離Index_x_hで規定される第1所定区間で連続すると同時に、N+M個の推定横位置Index_y_hで規定される第2所定区間で連続する関数値として算出される。その結果、補正値Kmodをこの2次元座標系に対して直交する座標軸に設定した場合、補正値Kmodは、補正面(点描で示す面)を形成する値として算出される(
図6参照)。
【0054】
そして、最終的に、下式(5)〜(6)により、N+M個の算出距離X_h(h=1〜N+M)及びN+M個の算出横位置Y_hが算出される。すなわち、対象物のN+M個の算出位置(X_h,Y_h)が算出される。なお、本実施形態では、算出距離X_hが補正後距離に相当する。
【0057】
なお、以上の式(1)〜(3)による4つの局所補正値Kmod_ijの算出と、式(4)による補正値Kmodの算出は、左右のカメラ4a,4bにおけるステレオ視が実行できている場合において、適切な対象物が重複領域4c及び左非重複領域7a内に跨がって存在している条件下で実行される。
【0058】
一方、上記条件が成立していないとき、例えば、ステレオ視が実行できないとき(トンネル走行中、日陰及び夜間などの右カメラ4bで対象物を認識できないとき)、又は適切な対象物が重複領域4c及び左非重複領域7a内に跨がって存在していないときには、4つの局所補正値Kmod_ijの算出と、補正位置算出部14における補正値Kmodの算出とが中止され、これらの値はE2PROM内の記憶値に保持される。
【0059】
次に、
図7を参照しながら、本実施形態の車両制御装置1による自動停止制御処理について説明する。この自動停止制御処理は、自車両3が停止すべき条件下にあるときに実行されるものであり、以下の説明では、交差点の進入時に進行方向の信号が赤であるときの例について説明する。
【0060】
同図に示すように、まず、E2PROM内に記憶されている停止線の算出位置(X_h,Y_h)を読み込む(
図7/STEP1)。これらの算出位置(X_h,Y_h)は、図示しない算出処理において、前述した式(1)〜(6)の算出アルゴリズムにより算出される。
【0061】
次いで、自車両3が停止線の算出位置(X_h,Y_h)、特に算出距離X_hで適切に停止するように、原動機5を制御する。それにより、原動機5の出力が制御される(
図7/STEP2)
【0062】
さらに、自車両3が停止線の算出位置(X_h,Y_h)、特に算出距離X_hで適切に停止するように、アクチュエータ6を制御する。それにより、制動力及び操舵量が制御される(
図7/STEP3)。その後、本処理を終了する。
【0063】
以上のように、本実施形態の車両制御装置1によれば、左右のカメラ4a,4bからの画像データに基づいて、ステレオマッチング手法により、重複領域7c内に位置する対象物の実測距離Xs_o_nが算出され、左カメラ4aからの画像データに基づいて、深層ニューラルネットワークを用いた深層学習法により、重複領域7c内に位置する対象物の第1推定位置(Xn_o_n,Yn_o_n)と、左非重複領域7a内に位置する対象物の第2推定位置(Xn_o_m,Yn_o_m)とが算出される。
【0064】
さらに、前述した式(1)〜(3)により、4つの局所補正値Kmod_ijが、誤差信号値E_id_nを、x座標におけるXn_o_1〜Xn_o_Nの範囲と、y座標におけるYn_o_1〜Yn_o_Nの範囲で規定される領域に対して、4つの重み関数値Wx_i,Wy_jによって重み付けしながら分配した値として算出され、これら4つの局所補正値Kmod_ijを用いて、前述した式(4)により、補正値Kmodが算出される。
【0065】
この場合、4つの局所補正値Kmod_ijは、上述した領域において、実測距離Xs_o_nに対する第1推定距離Xn_o_nの誤差の絶対値を値0に収束させる機能を備えた値として算出されるので、補正値Kmodも同じ機能を備えた値として算出されることになる。したがって、そのような補正値Kmodで、N+M個の推定距離Index_x_hを補正することにより、N+M個の算出距離X_hが算出されるので、これらの算出距離X_hを、重複領域7c内に位置する対象物の第1推定距離Xn_o_nと、左非重複領域7a内に位置する対象物の第2推定距離Xn_o_mの算出精度を向上させた値として算出することができる。このように、重複領域7cに加えて、左非重複領域7a内に位置する対象物の算出距離の算出精度を向上させることができるので、特許文献1の手法と比べて、良好な算出精度を確保可能な領域を拡大することができ、実用性を向上させることができる。
【0066】
また、補正値Kmodは、推定距離Index_xを1座標とし、推定横位置Index_yを1座標とする2次元座標系において、N+M個の推定距離Index_x_hで規定される第1所定区間で連続すると同時に、N+M個の推定横位置Index_y_hで規定される第2所定区間で連続する関数値として算出されるので、補正値Kmodをこの2次元座標系に対して直交する座標軸に設定した場合、
図6に示すように、補正値Kmodは、補正面(点描で示す面)を形成する値として算出されることになる。その結果、自車両3の前側の領域に対象物が位置する場合において、自車両3の前後方向及び左右方向の傾きの影響を補償しながら、算出距離X_hを算出することができる。それにより、算出距離X_hの算出精度をさらに向上させることができる。
【0067】
また、以上のように算出精度の高い算出距離X_hを用いて、自動停止制御処理が実行されるので、自車両3を停止線の位置に精度よく停止させることができ、制御精度を向上させることができる。
【0068】
なお、実施形態は、左右のカメラ4a,4bを用いて、対象物のN+M個の算出位置(X_h,Y_h)を算出した例であるが、これに代えて、
図8に示すように、カメラ4dと、これよりも高精度に距離を検出可能なレーダ8とを組み合わせて用いてもよい。この場合、カメラ4dが画像情報取得手段に相当し、レーダ8が距離情報取得手段に相当する。
【0069】
このカメラ4dは、RGBカメラ又はRCBカメラタイプのものであり、その視野領域が、レーダ8の視野領域と重複する重複領域7e(図中に網掛けで示す領域)と、レーダ8の視野領域と重複しない左右の非重複領域7d,7dとを構成するように配置されている。この場合、重複領域7eが第1所定領域に相当し、重複領域7eと左右の非重複領域7d,7dとを合わせた領域が第2所定領域に相当する。
【0070】
以上のように構成した場合、前述した実測距離算出部11において、レーダ8による対象物の距離の測定データが実測距離Xs_o_nとして算出され、それにより、実施形態の車両制御装置1と同様の作用効果を得ることができる。なお、前述した実測距離算出部11において、レーダ8及びカメラ4dを用いたセンサコンフュージョン手法により、実測距離Xs_o_nを算出するように構成してもよい。また、
図8の構成において、レーダ8に代えて、LIDARを用いてもよい。
【0071】
また、実施形態は、推定位置算出部12において、左カメラ4aからの画像データに基づいて、深層ニューラルネットワークを用いた深層学習法により、N個の第1推定位置(Xn_o_n,Yn_o_n)及びM個の第2推定位置(Xn_o_m,Yn_o_m)を算出したが、これに代えて、左右のカメラ4a,4bからの画像データを用いて、深層ニューラルネットワークを用いた深層学習法により、N個の第1推定位置(Xn_o_n,Yn_o_n)及びM個の第2推定位置(Xn_o_m,Yn_o_m)を算出するように構成してもよい。
【0072】
さらに、推定位置算出部12において、左カメラ4aからの画像データに基づいて、N個の第1推定位置(Xn_o_n,Yn_o_n)及びM個の第2推定位置(Xn_o_m,Yn_o_m)を算出する推定アルゴリズムは、実施形態の深層ニューラルネットワークを用いた深層学習法に限らず、特徴量抽出法や、パターンマッチング法、オプティカルフロー法、画像の高さと対象物の高さの相関性を用いる手法(例えば特開2007−188417号公報)などを用いてもよい。
【0073】
一方、実施形態は、第1カメラとして、RGBカメラタイプのものを用いた例であるが、本発明の第1カメラはこれに限らず、画像データを出力可能なものであればよい。例えば、第1カメラとして、RCBカメラを用いてもよく、その場合には、クリアの画素情報から赤及び青の画素情報を減算する処理により、黄色の画素情報を抽出すればよい。
【0074】
また、実施形態は、第2カメラとして、CCCカメラを用いた例であるが、本発明の第2カメラはこれに限らず、第1カメラよりも高感度のものであればよい。例えば、第2カメラとして、3CMOSカメラを用いてもよい。
【0075】
さらに、実施形態は、本発明の車両制御装置及び距離算出装置を、車道の左側通行に対応する車両に適用した例であるが、本発明の車両制御装置及び距離算出装置を、車道の右側通行に対応する車両に適用してもよい。その場合、信号機が右側に配置されている環境を走行する車両においては、実施形態の左右のカメラを入れ換えて、左カメラを白黒画像のみを撮影可能なCCCカメラで、右カメラを三原色の画像を撮影可能なRGBカメラでそれぞれ構成すればよい。
【0076】
一方、実施形態は、車両の前側の領域を第1所定領域及び第2所定領域とした例であるが、車両の後ろ側の領域を第1所定領域及び第2所定領域としてもよく、その場合には、左右のカメラを後ろ向きに配置すればよい。
【0077】
また、実施形態は、第1所定区間をN+M個の推定距離Index_x_hで規定される区間とした例であるが、第1所定区間はこれに限らず、重複領域7c及び左重複領域7a内における対象物の距離であればよい。
【0078】
さらに、実施形態は、第2所定区間をN+M個の推定横位置Index_y_hで規定される区間とした例であるが、第2所定区間はこれに限らず、重複領域7c及び左重複領域7a内における対象物の横位置であればよい。
【0079】
一方、実施形態は、本発明の車両制御装置1及び距離算出装置1を4輪車両に適用した例であるが、本発明の車両制御装置及び距離算出装置は、これに限らず、2輪車両、3輪車両及び5輪以上の車両にも適用可能である。