特許第6620185号(P6620185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620185
(24)【登録日】2019年11月22日
(45)【発行日】2019年12月11日
(54)【発明の名称】故障位置検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/08 20060101AFI20191202BHJP
【FI】
   G01R31/08
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-80663(P2018-80663)
(22)【出願日】2018年4月19日
(65)【公開番号】特開2019-190875(P2019-190875A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2018年4月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 東日本電信電話株式会社は、展示日平成29年10月19日、20日(1)つくばフォーラム2017、(2)NTTアクセスサービスシステム研究所構内及び平成30年1月17日、18日(1)第11回現場力向上フォーラム、(2)NTT中央研修センタ構内にて、東名通信工業株式会社は、平成29年10月30日掲載、ウエブサイトアドレスhttp://www.tomei.co.jp/PRODUCT/system/504−05541.htmlにて、メタル線路故障位置探索技術について公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】冨田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】成田 良博
(72)【発明者】
【氏名】本嶋 悠也
【審査官】 小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−9079(JP,A)
【文献】 特開昭60−85374(JP,A)
【文献】 特開平6−194401(JP,A)
【文献】 特開平10−247866(JP,A)
【文献】 特開平8−248090(JP,A)
【文献】 特開2002−135416(JP,A)
【文献】 特開2002−142018(JP,A)
【文献】 特開平1−214772(JP,A)
【文献】 特開平8−101204(JP,A)
【文献】 特開平8−202431(JP,A)
【文献】 特開2014−126555(JP,A)
【文献】 特開2018−096761(JP,A)
【文献】 米国特許第4751724(US,A)
【文献】 「メタル線路故障位置探索器 FL-X」,東名通信工業株式会社,2017年10月30日,URL,http://web.archive.org/web/20180830123823/http://tomei.co.jp/PRODUCT/system/504-05541.html
【文献】 「メタル回線の障害分析と故障位置を簡単に特定できます!! メタル線路故障位置探索器 FL-X」,東名通信工業株式会社,2019年 5月30日,URL,http://www.tomei.co.jp/PRODUCT/system/pdf/504-05541.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/08−31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタル回線の心線間および心線とアース間の直流電圧、静電容量及び絶縁抵抗を測定する回線試験部と、
測定された前記直流電圧、静電容量及び絶縁抵抗に基づいて前記メタル回線の状態を判定する判定部と、
メタル回線にパルス電圧を印加して故障点で反射するパルス電圧を観測することで故障位置を検知するパルス測定部と、
装置内の2つの抵抗を末端を短絡した2つの前記心線のそれぞれの端に接続し、接続点間に電流が流れなくなるときの前記2つの抵抗の大きさの比を測定することで、故障点までの線路抵抗値を求めて故障位置を検知する抵抗測定部と、
前記メタル回線の状態に適した前記パルス測定部による測定方法および前記抵抗測定部による測定方法の両方、またはいずれか一方を前記メタル回線の状態に対応付けたテーブルと、
前記テーブルにおいて前記メタル回線の状態に対応付けられた測定方法を表示する表示部と、
を有することを特徴とする故障位置検知装置。
【請求項2】
前記テーブルは、前記メタル回線の状態と結線方法を示す結線方法図とを対応付けており、
前記表示部は、前記テーブルにおいて前記メタル回線の状態に対応付けられた結線方法図を表示し、
前記結線方法図は、当該故障位置検知装置の備える測定端子を区別できる態様で前記結線方法を図示することを特徴とする請求項に記載の故障位置検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタル回線の故障位置を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光アクセス網の拡大に伴い、メタル回線の需要は減少しているが、メタル回線は、従来の固定電話サービスおよびDSL(Digital Subscriber Line)サービスの提供に使用されているため、メタル回線を保守し続ける必要がある。
【0003】
メタル回線は長期間運用しているため、接続部などの劣化による絶縁不良(混線、地絡)、断線、短絡等により故障が発生する。メタル回線の心線に故障が発生した場合、空き心線に切り替えて対処することがある。メタル回線の故障を修理せずにいると正常な心線が減少してしまうので、メタル回線の故障位置を特定し、故障箇所を修理する必要がある。
【0004】
メタル回線の故障位置の特定について、特許文献1には、故障位置を推定する技術が開示されている。メタル関連技術は、技術的には古い技術でありながら、今後も修繕等の保守により既存設備を活用していくことが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−247866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メタル回線の故障位置を特定する測定方法はいくつか存在するが、メタル回線の線路構成および心線の状態に応じて適切な測定方法を選択する必要がある。また、測定方法によっては、心線の状態に応じて回線をループさせる必要がある。
【0007】
メタル回線の状態の判定には、回線試験を行って心線とアース間の直流電圧、静電容量、及び絶縁抵抗を測定し、これら直流電圧、静電容量、及び絶縁抵抗の値に基づいて状態を判定する必要がある。
【0008】
回線試験を行う装置および故障位置を測定する装置は存在するが、作業者は、回線試験結果からメタル回線の状態を判定するとともに、適切な測定方法を選択し、測定方法に応じて適切に結線する必要がある。
【0009】
このように、メタル回線の故障位置の特定は難しく、故障位置の特定には高度なスキルを要するという問題があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、高度なスキルを要することなくメタル回線の故障箇所を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る故障位置検知装置は、メタル回線の心線間および心線とアース間の直流電圧、静電容量及び絶縁抵抗を測定する回線試験部と、測定された前記直流電圧、静電容量及び絶縁抵抗に基づいて前記メタル回線の状態を判定する判定部と、メタル回線にパルス電圧を印加して故障点で反射するパルス電圧を観測することで故障位置を検知するパルス測定部と、装置内の2つの抵抗を末端を短絡した2つの前記心線のそれぞれの端に接続し、接続点間に電流が流れなくなるときの前記2つの抵抗の大きさの比を測定することで、故障点までの線路抵抗値を求めて故障位置を検知する抵抗測定部と、前記メタル回線の状態に適した前記パルス測定部による測定方法および前記抵抗測定部による測定方法の両方、またはいずれか一方を前記メタル回線の状態に対応付けたテーブルと、前記テーブルにおいて前記メタル回線の状態に対応付けられた測定方法を表示する表示部と、を有することを特徴とする。
【0013】
上記故障位置検知装置において、前記テーブルは、前記メタル回線の状態と結線方法を示す結線方法図とを対応付けており、前記表示部は、前記テーブルにおいて前記メタル回線の状態に対応付けられた結線方法図を表示し、前記結線方法図は、当該故障位置検知装置の備える測定端子を区別できる態様で前記結線方法を図示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高度なスキルを要することなくメタル回線の故障箇所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態における故障位置検知装置の構成を示す機能ブロック図である。
図2】メタル回線の状態、状態に適した測定方法、及び結線方法を対応付けたテーブルの一例を示す図である。
図3】結線方法図の例を示す図である。
図4】本実施形態の故障位置検知装置を用いた故障位置の検知処理の流れを示すフローチャートである。
図5】回線試験時に表示される回線試験画面の例を示す図である。
図6】メタル回線が正常な状態の回線試験結果の例を示す図である。
図7】メタル回線のL1が断線した状態の回線試験結果の例を示す図である。
図8】メタル回線が自己混線の状態の回線試験結果の例を示す図である。
図9】メタル回線が両線間絶縁不良の状態の回線試験結果の例を示す図である。
図10】メタル回線のL1が地気の状態の回線試験結果の例を示す図である。
図11】メタル回線のL1が絶縁不良の状態の回線試験結果の例を示す図である。
図12】判定部の処理の流れを示すフローチャートである。
図13】絶縁抵抗の値に応じたメタル回線の状態を示す図である。
図14】RFL測定の測定画面の例を示す図である。
図15】TDR測定の測定画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態における故障位置検知装置の構成を示す機能ブロック図である。故障位置検知装置1は、メタル回線の障害を分析し、障害の内容に応じた測定方法および結線方法を提示して、故障位置を特定する装置である。
【0018】
故障位置検知装置1は、回線試験部11、パルス方式測定部12、抵抗測定方式測定部13、判定部14、表示部15、記憶部16、及び測定端子20を備える。
【0019】
回線試験部11は、試験対象のメタル回線の心線(以下、単に「メタル回線」と称することもある)に対して回線試験を行い、直流電圧、静電容量、及び絶縁抵抗をL1−L2間、L1−E間、及びL2−E間において測定する。
【0020】
パルス方式測定部12は、TDR(Time Domain Reflectometry:時間領域反射測定)法により、メタル回線の故障位置を検知する。TDR法は、メタル回線にパルス電圧を印加し、故障点で反射するパルス電圧を観測し、その往復伝搬時間に基づいて故障点までの距離を測定する方法である。パルス電圧の伝播速度はケーブル種別毎に異なるが、伝播速度と往復伝播時間の積により故障点までの距離を測定できる。TDR法は、メタル回線の状態が断線(D)および自己混線(SC)のときの測定に適する。なお、TDR法は、メタル回線が分岐するマルチ接続の線路構成の場合は適さない。
【0021】
抵抗測定方式測定部13は、RFL(Resistive Fault Location:抵抗故障点探索)法により、メタル回線の故障位置を検知する。RFL法は、ホイットストーンブリッジの原理を応用して、装置内の2つの抵抗を末端を短絡した2つの線路のそれぞれの端に接続し、接続点間に電流が流れなくなるときの前記2つの抵抗の大きさの比を測定することで、故障点までの線路抵抗値を求め、求めた抵抗値を線路長へ変換することで故障点までの距離を測定する。RFL法は、メタル回線の心線の末端を短絡(ストラップ)してループ回線にする必要があり、さらに比較測定用の良線が必要である。RFL法は、メタル回線の状態が地気(E)、自己混線(SC)、及び絶縁不良(INS,Mins)のときの測定に適する。RFL法は、線路構成がマルチ接続の場合にも適する。
【0022】
判定部14は、回線試験部11の回線試験結果に基づいてメタル回線の状態を判定する。
【0023】
表示部15は、記憶部16に記憶したテーブルを参照し、判定部14の判定したメタル回線の状態に応じた測定方法および結線方法を表示する。
【0024】
記憶部16は、メタル回線の状態、状態に適した測定方法、及び結線方法を対応付けたテーブルと、結線方法を示す結線方法図の画像データを記憶する。
【0025】
図2に、記憶部16の記憶するテーブルの例を示す。同図に示すテーブルには、判定部14の判定した回線状態、その回線状態に適した測定方法を示すガイダンス、及びガイダンスの示す測定方法を実行する際の結線方法を図示する結線方法図の番号が記載されている。テーブルに登録されたガイダンスは、表示部15が測定方法を提示する際に表示する文章である。テーブルの左端の数字は、メタル回線の各状態を示す番号である。
【0026】
図3に、記憶部16の記憶する結線方法図の例を示す。図3の各結線方法図には、1番から4番までの番号が割り振られている。この番号が、図2のテーブルに結線方法図の番号として登録される。一つの状態に複数の番号が登録されてもよい。例えば、図2のテーブルの9番目のメタル回線の状態のガイダンスには、TDR測定またはRFL測定の実施を促す文が登録されており、結線方法図には1番と2番が登録されている。TDR測定のときは1番の結線方法図を表示し、RFL測定のときは2番の結線方法図を表示する。
【0027】
表示部15は、テーブルに登録された番号の結線方法図の画像データを取得して表示する。結線方法図には、故障位置検知装置1(図中では測定器本体)、測定端子20、及び配線が図示される。必要であれば、配線を短絡するストラップも図示される。結線方法図に示される測定端子は、故障位置検知装置1の備える測定端子20の色と同じ色で描かれている。したがって、作業者は、どの測定端子20をどの配線に接続すればよいか一目瞭然である。なお、結線方法図で図示する測定端子は、測定端子20を区別できる態様であればよい。例えば、測定端子20を区別するために、測定端子20を文字や記号などで区別できるようにして、結線方法図においても同じ文字や記号を付した測定端子を配置してもよい。
【0028】
測定端子20は、回線試験および各種測定の際にメタル回線の心線あるいはアースに取り付ける測定端子である。各測定端子20は、互いに異なる色を有し、区別が可能である。
【0029】
次に、本実施形態の故障位置検知装置1を用いた故障位置の検知処理について説明する。
【0030】
図4は、本実施形態の故障位置検知装置1を用いた故障位置の検知処理の流れを示すフローチャートである。
【0031】
まず、作業者は、故障位置検知装置1の測定端子20を試験対象のメタル回線に接続して回線試験を実施する(ステップS1)。図5に、回線試験時に表示部15に表示される回線試験画面の例を示す。作業者がメインメニュー(図示せず)から回線試験の項目を選択すると図5の回線試験画面が表示される。回線試験画面の上部には、回線試験をする際の結線方法を図示する結線方法図が表示される。この結線方法図の画像データも記憶部16に記憶されている。なお、図5の回線試験画面は、回線試験を実施した後の画面例であり、画面の下部に回線試験結果と判定結果が表示されている。回線試験を実施する前は、回線試験画面には回線試験結果と判定結果は表示されていない。
【0032】
作業者が、表示部15に表示された結線方法図に従って測定端子20をメタル回線に接続し、回線試験画面の右上の試験開始ボタンを押下すると、回線試験部11は、メタル回線の回線試験を実施し、L1−L2間、L1−E間、及びL2−E間のそれぞれの直流電圧、静電容量、及び絶縁抵抗を測定する。回線試験後、表示部15は、図5の回線試験画面の左下に示すように、回線試験結果を表示する。表示部15は、異常の見られる値を強調表示してもよい。
【0033】
回線試験結果が得られると、判定部14は、回線試験結果に基づいて、メタル回線の心線の状態を判定する(ステップS2)。
【0034】
図6から図11に、メタル回線の心線の状態と回線試験結果との関係のいくつかの例を示す。
【0035】
図6は正常な状態の例である。同図の回線試験結果に示すように、L1−L2間、L1−E間、及びL2−E間の直流電圧、静電容量、及び絶縁抵抗の値が全て所定の範囲内であれば正常な状態である。
【0036】
図7はL1が断線した状態の例である。L1が断線した状態では、L1−E間の静電容量が小さくなっている。
【0037】
図8は自己混線の状態の例である。自己混線の状態では、L1−L2間の静電容量が0、L1−L2間の絶縁抵抗が小さくなっている。
【0038】
図9は両線間絶縁不良の状態の例である。両線間絶縁不良の状態では、L1−L2間の絶縁抵抗が小さくなっている。ただし、自己混線の状態の絶縁抵抗よりも大きい。
【0039】
図10はL1が地気の状態の例である。L1が地気の状態では、L1−E間の静電容量が0、L1−E間の絶縁抵抗が小さくなっている。
【0040】
図11はL1が絶縁不良の状態の例である。L1が絶縁不良の状態では、L1−E間の絶縁抵抗が小さくなっている。ただし、地気の状態の絶縁抵抗よりも大きい。
【0041】
このように、回線試験結果からメタル回線の状態を判定できるが、メタル回線の状態の判定には、高度なスキルを有する。そこで、本実施形態では、判定部14が回線試験結果に基づいてメタル回線の状態を判定する。以下、ステップS2の判定処理の詳細について説明する。
【0042】
まず、判定部14は、図12のフローチャートに従って、L1−L2間、L1−E間、及びL2−E間の直流電圧の値(それぞれV_L1L2,V_L1E,V_L2Eとする)に基づいてメタル回線の状態を判定する。
【0043】
V_L1L2が電圧閾値a以上の場合(ステップS21のtrue)、メタル回線の状態は、図2のテーブルの1番目の状態であると判定する。枠内の数字は、図2のテーブルのメタル回線の状態を示す番号である。
【0044】
V_L1L2が電圧閾値a未満の場合(ステップS21のfalse)、ステップS22へ進む。
【0045】
V_L1Eが電圧閾値a以上であって(ステップS22のtrue)、V_L2Eが電圧閾値a以上の場合(ステップS23のtrue)、メタル回線の状態は、図2のテーブルの4番目の状態であると判定する。
【0046】
V_L1Eが電圧閾値a以上であって(ステップS22のtrue)、V_L2Eが電圧閾値a未満の場合(ステップS23のfalse)、メタル回線の状態は、図2のテーブルの2番目の状態であると判定する。
【0047】
V_L1Eが電圧閾値a未満であって(ステップS22のfalse)、V_L2Eが電圧閾値a以上の場合(ステップS24のtrue)、メタル回線の状態は、図2のテーブルの3番目の状態であると判定する。
【0048】
V_L1L2,V_L1E,V_L2Eの全てが電圧閾値a未満の場合(ステップS21,S22,S24のfalse)、次の判定へ進む。
【0049】
次の判定では、判定部14は、L1−L2間、L1−E間、及びL2−E間の静電容量の値に基づいて、アンバランスな値の容量あるいは異常な値の容量を検出した場合に、断線、他混、あるいは保守器等接続の疑いがあると判定する。なお、図2のテーブルには、静電容量の値に基づいて判定されるメタル回線の状態を登録していないが、静電容量の値に基づくメタル回線の状態を追加の情報として表示してもよい。
【0050】
静電容量の値に基づく判定後、判定部14は、図13の表に従って、L1−L2間、L1−E間、及びL2−E間の絶縁抵抗の値に基づいてメタル回線の状態を判定する。表中の数字は、図2のテーブルのメタル回線の状態を示す番号である。例えば、図5の回線試験画面の左下に示す回線試験結果が得られた場合、L1−L2間およびL1−E間の絶縁抵抗がいずれも50MΩ以上で、L2−E間の絶縁抵抗が10kΩ以上50MΩ未満であるので、メタル回線の状態は、図2のテーブルの30番目のL2絶縁不良であると判定する。
【0051】
以上の処理により、判定部14はメタル回線の状態を判定する。
【0052】
図4に戻り、判定部14がメタル回線の状態を判定すると、表示部15は、記憶部16に記憶したテーブルを参照して、メタル回線の状態の判定結果を表示するとともに、メタル回線の状態に応じた測定方法を提示する(ステップS3)。例えば、判定部14がメタル回線の状態は図2のテーブルの30番目であると判定した場合、表示部15は、図5の回線試験画面の右下の判定結果に示すように、図2のテーブルの30番目に登録された回線状態「L2ins(L2絶縁不良)」を表示するとともに、適した測定方法を示すガイダンス「RFL測定を実施してください」を表示する。表示部15は、回線試験画面内に、TDR測定を開始するTDRボタンとRFL測定を開始するRFLボタンを表示してもよい。作業者がこれらのボタンのいずれかを選択すると、画面は選択したボタンに対応する測定を実施するための測定画面に遷移する。なお、ガイダンスの提示する測定方法に対応するボタンのみを表示してもよい。例えば、RFL測定の実施を促す文が表示された場合は、RFLボタンのみを表示するか、TDRボタンを選択できないようにする。
【0053】
回線試験画面内に適切な測定方法とその測定方法を実施するためのボタンが表示されるので、作業者は、容易に適切な測定方法を実施することができる。
【0054】
作業者が測定方法を選択すると、表示部15は、選択された測定方法の測定画面において、メタル回線の状態に適した結線方法を表示し、結線後、測定開始ボタンが押下されると、パルス方式測定部12または抵抗測定方式測定部13は、故障位置の測定を開始する(ステップS4)。このとき表示部15は、メタル回線の状態に対応する結線方法図の番号を記憶部16のテーブルから取得し、結線方法図の番号の画像データを記憶部16から読み出して測定画面に表示する。
【0055】
図14は、RFL法の測定画面の例を示す図である。図14の測定画面では、画面上部の右側に結線方法図を表示し、画面下部にRFL法に必要な区間毎の心線径およびその距離を設定する領域を表示している。結線方法図の左側には、判定部14の判定した故障状態(図ではL1−E)と測定モード(図では良線一本法)を表示している。表示された結線方法図は、この故障状態と測定モードに適した結線方法を示す図である。作業者が測定モードを別のもの(例えば良線二本法)に変更した場合は、その測定モードに適した結線方法図を表示する。
【0056】
作業者が、図14の測定画面に表示された結線方法図に従って測定端子20およびストラップを心線およびアースに結線した後に、画面右上の測定開始ボタンを押下すると、抵抗測定方式測定部13は故障位置の測定を開始する。故障位置が特定されると、表示部15は特定した故障位置を表示する。
【0057】
図15は、TDR測定の測定画面の例を示す図である。図15の測定画面では、画面上部の右側に結線方法図を表示し、画面上部の左側に、測定モード(図ではシングル測定)等のTDR測定に必要な設定を行うための領域を表示している。表示された結線方法図は、この測定モードに適した結線方法を示す図である。作業者が測定モードを別のもの(例えば比較測定)に変更した場合は、その測定モードに適した結線方法図を表示する。画面下部は、測定結果を表示する領域である。
【0058】
作業者が、図15の測定画面に表示された結線方法図に従って測定端子20を心線に結線した後に、画面右上の測定開始ボタンを押下すると、パルス方式測定部12は故障位置の測定を開始する。故障位置が特定されると、表示部15は特定した故障位置を表示する。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態によれば、回線試験部11が、メタル回線の回線試験を実施し、判定部14が回線試験結果に基づいてメタル回線の状態を判定し、表示部15がメタル回線の状態に応じた適切な測定方法を表示することにより、作業者は、メタル回線の状態に応じた適切な測定方法を選択できる。
【0060】
本実施の形態によれば、故障位置検知装置1が、TDR測定を行うパルス方式測定部12と、RFL測定を行う抵抗測定方式測定部13と、メタル回線の状態とメタル回線の状態に適したTDR測定またはRFL測定を提示するガイダンスとを対応付けたテーブルと、を備え、表示部15が判定部14の判定したメタル回線の状態に対応付けられたガイダンスを表示することにより、作業者は、故障位置検知装置1で測定可能な、メタル回線の状態に応じた適切な測定方法を選択できる。
【0061】
本実施の形態によれば、メタル回線の状態と測定端子20を区別できる態様で結線が図示された結線方法図とを対応付けておき、表示部は、メタル回線の状態に対応付けられた結線方法図を表示することにより、作業者は、提示された測定方法で故障位置を検知する際、メタル回線の状態に適した結線を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
1…故障位置検知装置
11…回線試験部
12…パルス方式測定部
13…抵抗測定方式測定部
14…判定部
15…表示部
16…記憶部
20…測定端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15