(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直交座標系xyzのx軸方向に互いに離れた1対の被支持部において支持されているフレーム、前記1対の被支持部の間かつx軸方向に互いに離れた位置にて前記フレームからy軸方向に互いに並列に延びている1対の第1駆動腕、およびx軸方向にて前記1対の第1駆動腕の間となる位置において前記フレームからy軸方向に延びている検出腕を有している圧電体と、
前記1対の第1駆動腕がx軸方向において互いに逆側へ曲がって振動するように前記1対の第1駆動腕に互いに逆の位相の電圧を印加する駆動回路と、
前記検出腕のz軸方向またはx軸方向における曲げ変形により生じる信号を検出する検出回路と、
を有しており、
前記圧電体は、前記フレームから延び、電圧が印加されて振動する腕として、前記フレームからy軸方向の一方側にのみ延びている前記1対の第1駆動腕のみを有し、または前記フレームからy軸方向の前記一方側にのみ延びている前記1対の第1駆動腕および前記1対の第1駆動腕と並列に前記フレームからy軸方向の前記一方側にのみ延びている腕のみを有している
角速度センサ。
直交座標系xyzのx軸方向に互いに離れた1対の被支持部において支持されているフレーム、前記1対の被支持部の間かつx軸方向に互いに離れた位置にて前記フレームからy軸方向に互いに並列に延びている1対の第1駆動腕、およびx軸方向にて前記1対の第1駆動腕の間となる位置において前記フレームからy軸方向に延びている検出腕を有している圧電体と、
前記1対の第1駆動腕がx軸方向において互いに逆側へ曲がって振動するように前記1対の第1駆動腕に互いに逆の位相の電圧を印加する駆動回路と、
前記検出腕のz軸方向またはx軸方向における曲げ変形により生じる信号を検出する検出回路と、
を有しており、
前記1対の被支持部の間となり、かつ前記検出腕に対してx軸方向の両側となる位置にて、前記フレームから互いに並列に、前記1対の第1駆動腕とは反対側に延びている1対の第2駆動腕をさらに有し、
前記駆動回路は、前記1対の第1駆動腕および前記1対の第2駆動腕のうち前記検出腕に対してx軸方向の正側に位置する第1駆動腕と第2駆動腕とがx軸方向において互いに逆側へ曲がって振動し、かつ前記1対の第1駆動腕および前記1対の第2駆動腕のうち前記検出腕に対してx軸方向の負側に位置する第1駆動腕と第2駆動腕とがx軸方向において互いに逆側へ曲がって振動するように、前記1対の第1駆動腕および前記1対の第2駆動腕に電圧を印加する
角速度センサ。
フレーム、直交座標系xyzのx軸方向において互いに離れた位置にて前記フレームからy軸方向に互いに並列に延びている1対の駆動腕、およびx軸方向にて前記1対の駆動腕の間となる位置において前記フレームからy軸方向に延びている検出腕を有している圧電体と、
前記1対の駆動腕をx軸方向に励振する電圧を印加可能な配置で設けられている複数の励振電極と、
前記検出腕のx軸方向またはz軸方向の振動によって生じる信号を検出可能な配置で設けられている複数の検出電極と、
前記1対の駆動腕よりもx軸方向の両側の位置にて前記圧電体に設けられている複数のパッドと、
前記1対の駆動腕がx軸方向において互いに逆側へ曲がって振動するように前記複数の励振電極から前記1対の駆動腕に互いに逆の位相の電圧が印加されるように前記複数の励振電極を接続している複数の配線と、
を有しており、
前記圧電体は、前記フレームから延び、電圧が印加されて振動する腕として、前記フレームからy軸方向の一方側にのみ延びている前記1対の駆動腕のみを有し、または前記フレームからy軸方向の前記一方側にのみ延びている前記1対の駆動腕および前記1対の駆動腕と並列に前記フレームからy軸方向の前記一方側にのみ延びている腕のみを有している
センサ素子。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示に係る実施形態を説明する。なお、以下の図面は、模式的なものである。従って、細部は省略されることがあり、また、寸法比率等は現実のものと必ずしも一致しない。また、複数の図面相互の寸法比率も必ずしも一致しない。
【0009】
また、各図には、説明の便宜のために、直交座標系xyzを付している。なお、直交座標系xyzは、センサ素子(圧電体)の形状に基づいて定義されている。すなわち、x軸、y軸及びz軸は、結晶の電気軸、機械軸及び光軸を示すとは限らない。センサ素子は、いずれの方向が上方または下方として使用されてもよいものであるが、以下では、便宜上、z軸方向の正側を上方として、上面または下面等の用語を用いることがある。また、単に平面視という場合、特に断りがない限り、z軸方向に見ることをいうものとする。
【0010】
同一又は類似する構成については、「駆動腕7A」、「駆動腕7B」のように、互いに異なるアルファベットの付加符号を付すことがあり、また、この場合において、単に「駆動腕7」といい、これらを区別しないことがある。
【0011】
第2実施形態以降において、既に説明された実施形態の構成と共通または類似する構成について、既に説明された実施形態の構成に付した符号を用い、また、図示や説明を省略することがある。なお、既に説明された実施形態の構成と対応(類似)する構成については、既に説明された実施形態の構成と異なる符号を付した場合においても、特に断りがない点は、既に説明された実施形態の構成と同様である。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るセンサ素子1の構成を示す斜視図である。ただし、この図では、センサ素子1の表面に設けられる導電層の図示は基本的に省略されている。
【0013】
センサ素子1は、例えば、x軸回りの角速度を検出する圧電振動式の角速度センサ51(符号は
図2(b))を構成するものである。センサ素子1は、圧電体3を有している。圧電体3に電圧が印加されて圧電体3が振動している状態で、圧電体3が回転されると、コリオリの力による振動が圧電体3に生じる。このコリオリの力による振動によって生じる電圧を検出することによって角速度が検出される。具体的には、以下のとおりである。
【0014】
(圧電体の形状)
圧電体3は、例えば、その全体が一体的に形成されている。圧電体3は、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。また、圧電体3の材料は適宜に選択されてよく、例えば、水晶(SiO
2)、LiTaO
3、LiNbO
3、PZTまたはシリコンである。
【0015】
圧電体3において、電気軸乃至は分極軸(以下、両者を代表して分極軸のみに言及することがある。)は、x軸に一致するように設定されている。なお、分極軸は、所定の範囲(例えば15°以内)でx軸に対して傾斜していてもよい。また、圧電体3が単結晶である場合において、機械軸及び光軸は、適宜な方向とされてよいが、例えば、機械軸はy軸方向、光軸はz軸方向とされている。
【0016】
圧電体3は、例えば、全体として厚さ(z軸方向)が一定にされている。また、圧電体3は、例えば、y軸に平行な不図示の対称軸に対して線対称の形状に形成されている。
【0017】
圧電体3は、例えば、フレーム5と、フレーム5から延びている1対の駆動腕7Aおよび7Bならびに検出腕9と、フレーム5を支持している1対の実装部11とを有している。
【0018】
1対の駆動腕7は、電圧(電界)が印加されることによって励振される部分である。検出腕9は、コリオリの力によって振動し、角速度に応じた電気信号(例えば電圧)を生成する部分である。フレーム5は、駆動腕7及び検出腕9の支持、および駆動腕7から検出腕9への振動の伝達に寄与する部分である。実装部11は、不図示の実装基体(例えばパッケージの一部または回路基板)へセンサ素子1を実装することに寄与する部分である。
【0019】
フレーム5は、例えば、x軸方向に直線状に延びる長尺状とされている。その両端は、1対の実装部11によって支持される被支持部5aとなっている。従って、フレーム5は、両端が支持された梁のように撓み変形が可能となっている。
【0020】
フレーム5の断面形状は、例えば、概ね矩形である。フレーム5の幅(y軸方向)および厚さ(z軸方向)は、いずれが他方よりも大きくてもよい。ただし、フレーム5は、後述するように、平面視において撓み変形することが予定されている。従って、フレーム5の幅は、比較的小さくされてよい。例えば、フレーム5の幅は、フレーム5の厚さの2倍以下、または1倍以下とされてよい。また、例えば、フレーム5の長さおよび幅は、撓み変形の固有振動数が、駆動腕7の、電圧印加によって励振される方向における固有振動数、および/または検出腕9の、コリオリの力によって振動する方向における固有振動数に近づくように調整されてよい。
【0021】
駆動腕7は、フレーム5からy軸方向に延びており、その先端は自由端とされている。従って、駆動腕7は、片持ち梁のように撓み変形が可能となっている。1対の駆動腕7は、x軸方向に互いに離れた位置にて互いに並列(例えば平行)に延びている。1対の駆動腕7は、例えば、1対の被支持部5aの間の中央を通り、y軸に平行な不図示の対称軸に対して線対称に設けられている。
【0022】
後述するように(
図3(a)および
図3(b))、1対の駆動腕7は、x軸方向の励振によってフレーム5を平面視において撓み変形(振動)させることが意図されている。従って、例えば、1対の駆動腕7のフレーム5に対するx軸方向の位置は、1対の駆動腕7の振動によってフレーム5の撓み変形が大きくなるように適宜に設定されてよい。例えば、1対の被支持部5aの間を3等分したときに、1対の駆動腕7は、両側の領域にそれぞれ位置している。
【0023】
駆動腕7の具体的形状等は適宜に設定されてよい。例えば、駆動腕7は、長尺の直方体状とされている。すなわち、断面形状(xz平面)は矩形である。特に図示しないが、駆動腕7は、先端側部分において幅(x軸方向)が広くなるハンマ形状とされていてもよい。1対の駆動腕7は、例えば、概ね互いに線対称の形状および大きさとされている。従って、両者の振動特性は互いに同等である。
【0024】
駆動腕7は、後述するように、x軸方向において励振される。従って、駆動腕7は、その幅(x軸方向)が大きくなると、励振方向(x軸方向)における固有振動数が高くなり、その長さ(別の観点では質量)が大きくなると、励振方向における固有振動数は低くなる。駆動腕7の各種の寸法は、例えば、駆動腕7の励振方向における固有振動数が励振させたい周波数に近くなるように設定される。
【0025】
検出腕9は、フレーム5からy軸方向に延びており、その先端は自由端とされている。従って、検出腕9は、片持ち梁のように撓み変形が可能となっている。また、検出腕9は、1対の駆動腕7の間において、1対の駆動腕7に対して並列(例えば平行)に延びている。検出腕9は、例えば、1対の被支持部5aの間の中央に位置し、および/または1対の駆動腕7の間の中央に位置している。
【0026】
検出腕9の具体的形状等は適宜に設定されてよい。例えば、検出腕9は、長尺の直方体状とされている。すなわち、断面形状(xz平面)は矩形である。特に図示しないが、検出腕9は、先端側部分において幅(x軸方向)が広くなるハンマ形状とされていてもよい。
【0027】
検出腕9は、後述するように、本実施形態においては、コリオリの力によってz軸方向に振動する。従って、検出腕9は、その厚さ(z軸方向)が大きくなると、振動方向(z軸方向)における固有振動数が高くなり、その長さ(別の観点では質量)が大きくなると、励振方向における固有振動数は低くなる。検出腕9の各種の寸法は、例えば、検出腕9の振動方向における固有振動数が、駆動腕7の励振方向における固有振動数に近くなるように設定される。検出腕9の長さは、例えば、駆動腕7の長さと同等である。ただし、両者は異なっていてもよい。
【0028】
1対の実装部11は、例えば、y軸方向を長手方向とする形状に形成されている。より具体的には、例えば、実装部11は、z軸方向を厚み方向とする、平面形状が矩形の板状である。実装部11の幅(x軸方向)は、例えば、フレーム5の幅(y軸方向)、駆動腕7の幅(x軸方向)および検出腕9の幅(x軸方向)よりも広い。従って、実装部11は、他の部位(5、7および9)に比較して平面視において撓み変形(振動)し難くなっている。ただし、実装部11は、一部または全部において、他の部位(5、7または9)に比較して幅が狭くされていてもよい。実装部11の長さは、適宜に設定されてよい。例えば、フレーム5から実装部11の一端までの長さは、駆動腕7または検出腕9の長さよりも短くてもよいし(図示の例)、同等であってもよいし、長くてもよい。
【0029】
フレーム5は、既に述べたように、その両端(被支持部5a)が1対の実装部11に固定されている。被支持部5aの実装部11に対するy軸方向の位置は適宜な位置とされてよい。図示の例では、被支持部5aは、実装部11のy軸方向中央に位置している。
【0030】
1対の実装部11の下面には、少なくとも4つのパッド13が設けられている。パッド13は、不図示の実装基体に設けられたパッドに対向し、その実装基体のパッドに対して半田乃至は導電性接着剤からなるバンプにより接着される。これにより、センサ素子1と実装基体との電気的な接続がなされ、また、センサ素子1(圧電体3)は、駆動腕7及び検出腕9が振動可能な状態で支持される。4つのパッド13は、例えば、1対の実装部11の両端に設けられている。
【0031】
(励振電極、検出電極および配線)
図2(a)は、センサ素子1の一部を拡大して示す斜視図である。また、
図2(b)は、
図2(a)のIIb−IIb線における断面図である。
【0032】
センサ素子1は、駆動腕7に電圧を印加するための励振電極15Aおよび15Bと、検出腕9に生じた信号を取り出すための検出電極17Aおよび17Bと、これらを接続する複数の配線19とを有している。これらは、圧電体3の表面に形成された導体層によって構成されている。導体層の材料は、例えば、Cu,Al等の金属である。
【0033】
なお、励振電極15および検出電極17の付加符号A、Bは、直交座標系xyzに基づいて付されている。従って、後述するように、一の駆動腕7の励振電極15Aと、他の駆動腕7の励振電極15Aとは同電位とは限らない。励振電極15Bについても同様である。検出腕9が複数本設けられる態様(後述する実施形態)において、検出電極17Aおよび17Bについても同様である。
【0034】
励振電極15Aは、各駆動腕7において、上面および下面(z軸方向の両側に面する1対の面)それぞれに設けられている。また、励振電極15Bは、各駆動腕7において、1対の側面(x軸方向の両側に面する1対の面)それぞれに設けられている。
【0035】
なお、後述する実施形態においては、フレーム5からy軸方向の負側に延びる駆動腕7が設けられることがある。そのような駆動腕7においても、励振電極15の付加符号Aは、上面および下面に対応し、励振電極15の付加符号Bは、側面に対応するものとする。
【0036】
各駆動腕7の上下左右の各面において、励振電極15は、例えば、各面の大部分を覆うように形成されている。ただし、励振電極15A及び15Bは、互いに短絡しないように、少なくとも一方(本実施形態では励振電極15A)が各面よりも幅方向において小さく形成されている。また、駆動腕7の根元側および先端側の一部も、励振電極15の非配置位置とされてよい。
【0037】
各駆動腕7において、2つの励振電極15Aは、例えば互いに同電位とされる。例えば、2つの励振電極15Aは、配線19により互いに接続されている。また、各駆動腕7において、2つの励振電極15Bは、例えば互いに同電位とされる。例えば、2つの励振電極15Bは、配線19により互いに接続されている。
【0038】
このような励振電極15の配置および接続関係において、励振電極15Aと励振電極15Bとの間に電圧を印加すると、例えば、駆動腕7においては、上面から1対の側面(x軸方向の両側)に向かう電界および下面から1対の側面に向かう電界が生じる。一方、分極軸は、x軸方向に一致している。従って、電界のx軸方向の成分に着目すると、駆動腕7のうちx軸方向の一方側部分においては電界の向きと分極軸の向きは一致し、他方側部分においては電界の向きと分極軸の向きは逆になる。
【0039】
その結果、駆動腕7のうちx軸方向の一方側部分はy軸方向において収縮し、他方側部分はy軸方向において伸長する。そして、駆動腕7は、バイメタルのようにx軸方向の一方側へ湾曲する。励振電極15Aおよび15Bに印加される電圧が逆にされると、駆動腕7は逆方向に湾曲する。このような原理により、交流電圧が励振電極15Aおよび15Bに印加されると、駆動腕7はx軸方向において振動する。
【0040】
なお、特に図示しないが、駆動腕7の上面および/または下面に、駆動腕7の長手方向に沿って延びる1以上の凹溝(当該凹溝は複数の凹部が駆動腕7の長手方向に配列されて構成されてもよい)が設けられ、励振電極15Aは、この凹溝内に亘って設けられてもよい。この場合、励振電極15Aと励振電極15Bとが凹溝の壁部を挟んでx軸方向において対向することになり、励振の効率が向上する。
【0041】
1対の駆動腕7においては、駆動腕7Aの励振電極15Aと駆動腕7Bの励振電極15Bとが同電位とされ、駆動腕7Aの励振電極15Bと駆動腕7Bの励振電極15Aとが同電位とされる。同電位とされるべき励振電極15同士は、例えば、配線19によって接続されている。
【0042】
従って、このような接続関係において励振電極15Aと励振電極15Bとの間に交流電圧を印加すると、1対の駆動腕7は、互いに逆の位相の電圧が印加されることになり、x軸方向において互いに逆向きに撓み変形するように振動する。
【0043】
検出電極17Aは、検出腕9において、x軸方向の負側に面する面のうちのz軸方向の正側(例えば当該面の中央よりも正側)の領域、およびx軸方向の正側に面する面のうちのz軸方向の負側(例えば当該面の中央よりも負側)の領域にそれぞれ設けられている。検出電極17Bは、検出腕9において、x軸方向の負側に面する面のうちのz軸方向の負側(例えば当該面の中央よりも負側)の領域、およびx軸方向の正側に面する面のうちのz軸方向の正側(例えば当該面の中央よりも正側)の領域にそれぞれ設けられている。
【0044】
なお、後述する実施形態においては、フレーム5からy軸方向の負側に延びる検出腕9が設けられることがある。そのような検出腕9においても、検出電極17の付加符号Aは、−xの側面の+zの領域および+xの側面の−zの領域に対応し、検出電極17の付加符号Bは、−xの側面の−zの領域および+xの側面の+zの領域に対応するものとする。
【0045】
検出腕9の各側面において、検出電極17Aおよび17Bは、互いに短絡しないように適宜な間隔を空けて、検出腕9に沿って延びている。2つの検出電極17A同士は、例えば、配線19により接続されている。また、2つの検出電極17B同士は、例えば、配線19により接続されている。
【0046】
このような検出電極17の配置および接続関係において、検出腕9がz軸方向に撓み変形すると、例えば、z軸方向に平行な電界が生じる。すなわち、検出腕9の各側面においては、検出電極17Aと検出電極17Bとの間に電圧が生じる。電界の向きは、分極軸の向きと、湾曲の向き(z軸方向の正側又は負側)とで決定され、x軸方向の正側部分と負側部分とで互いに逆である。この電圧(電界)が検出電極17A及び検出電極17Bに出力される。検出腕9がz軸方向に振動すると、電圧は交流電圧として検出される。なお、電界は、上記のようにz軸方向に平行な電界が支配的であってもよいし、x軸方向に平行で、z軸方向の正側部分と負側部分とで互いに逆向きな電界の割合が大きくてもよい。いずれにせよ、検出腕9のz軸方向への撓み変形に応じた電圧が検出電極17Aと検出電極17Bとの間に生じる。
【0047】
なお、特に図示しないが、検出腕9には、上面から下面へ貫通し、検出腕9の長手方向に沿って延びる1以上の貫通溝(スリット)が形成されてもよい。そして、貫通溝によって分割された複数の長尺状部分それぞれにおいて、図示の例の検出腕9のように、検出電極17Aおよび17Bが配置および接続されてもよい。この場合、複数の検出電極17は、検出腕9の外側面だけに設けられている場合に比較して、全体としての面積が大きくなる。その結果、検出腕9において生じる電荷を効率的に電気信号として取り出すことができる。
【0048】
複数の配線19は、上述したように励振電極15および検出電極17を接続している。また、複数の配線19は、電位の観点から2組に分けられた励振電極15と、電位の観点から2組に分けられた検出電極17との合計4組の電極と、4つのパッド13とを接続している。複数の配線19は、圧電体3の種々の部分の上面、下面および/または側面において適宜に配されることによって、その全体が圧電体3の表面に設けられる態様で、互いに短絡することなく、上述した接続を実現可能である。ただし、圧電体3上に位置する配線19の上に絶縁層を設け、その上に他の配線19を設けることによって、立体配線部が形成されても構わない。
【0049】
図2(b)に示すように、角速度センサ51は、励振電極15に電圧を印加する駆動回路103と、検出電極17からの電気信号を検出する検出回路105とを有している。
【0050】
駆動回路103は、例えば、発振回路や増幅器を含んで構成されており、所定の周波数の交流電圧を励振電極15Aと励振電極15Bとの間に印加する。なお、周波数は、角速度センサ51内にて予め定められていてもよいし、外部の機器等から指定されてもよい。
【0051】
検出回路105は、例えば、増幅器や検波回路を含んで構成されており、検出電極17Aと検出電極17Bとの電位差を検出し、その検出結果に応じた電気信号を外部の機器等に出力する。より具体的には、例えば、上記の電位差は、交流電圧として検出され、検出回路105は、検出した交流電圧の振幅に応じた信号を出力する。この振幅に基づいて角速度が特定される。また、検出回路105は、駆動回路103の印加電圧と検出した電気信号との位相差に応じた信号を出力する。この位相差に基づいて回転の向きが特定される。
【0052】
なお、駆動回路103及び検出回路105は、全体として制御回路107を構成している。制御回路107は、例えば、チップIC(Integrated Circuit)によって構成されており、センサ素子1が実装される回路基板又は適宜な形状の実装基体に実装されている。
【0053】
(角速度センサの動作)
図3(a)および
図3(b)は、圧電体3の励振を説明するための模式的な平面図である。両図は、励振電極15に印加されている交流電圧の位相が互いに180°ずれている。
【0054】
上述のように、駆動腕7A及び7Bは、励振電極15に交流電圧が印加されることによってx軸方向において互いに逆向きに変形するように互いに逆の位相で励振される。
【0055】
このとき、
図3(a)に示すように、1対の駆動腕7が互いにx軸方向の外側に撓むと、その曲げモーメントがフレーム5に伝わり、フレーム5はy軸方向の正側へ撓む。その結果、検出腕9がy軸方向の正側へ変位する。
【0056】
逆に、
図3(b)に示すように、1対の駆動腕7が互いにx軸方向の内側に撓むと、その曲げモーメントがフレーム5に伝わり、フレーム5はy軸方向の負側へ変位する。その結果、検出腕9がy軸方向の負側へ変位する。
【0057】
従って、1対の駆動腕7が励振されることによって、検出腕9がy軸方向において振動することになる。
【0058】
図3(c)および
図3(d)は、コリオリの力による検出腕9の振動を説明するための模式的な斜視図である。
図3(c)および
図3(d)は、
図3(a)および
図3(b)の状態に対応している。なお、この図では、駆動腕7およびフレーム5の変形については図示が省略されている。後述する他の実施形態における検出腕9の振動を説明するための模式図においても同様である。
【0059】
図3(a)および
図3(b)を参照して説明したように圧電体3が振動している状態で、センサ素子1がx軸回りに回転されると、検出腕9は、y軸方向に振動(変位)していることから、コリオリの力によって回転軸(x軸)と振動方向(y軸)とに直交する方向(z軸方向)において振動(変形)する。この変形によって生じる信号(電圧)は、上述のように検出電極17によって取り出される。コリオリの力(ひいては検出される信号の電圧)は、角速度が大きいほど大きくなる。これにより、角速度が検出される。
【0060】
以上のとおり、角速度センサ51は、圧電体3、駆動回路103および検出回路105を有している。圧電体3は、フレーム5、1対の駆動腕7および検出腕9を有している。フレーム5は、x軸方向に互いに離れた1対の被支持部5aにおいて支持されている。1対の駆動腕7は、1対の被支持部5aの間かつx軸方向に互いに離れた位置にてフレーム5からy軸方向に互いに並列に延びている。検出腕9は、x軸方向において1対の駆動腕7の間となる位置にてフレーム5からy軸方向に延びている。駆動回路103は、1対の駆動腕7がx軸方向において互いに逆側へ曲がって振動するように1対の駆動腕7に互いに逆の位相の電圧を印加する。検出回路105は、検出腕9のz軸方向またはx軸方向(本実施形態ではz軸方向)における曲げ変形により生じる信号を検出する。
【0061】
別の観点では、センサ素子1は、圧電体3、複数の励振電極15、複数の検出電極17、複数のパッド13および複数の配線19を有している。圧電体3は、フレーム5、1対の駆動腕7および検出腕9を有している。1対の駆動腕7は、x軸方向において互いに離れた位置にてフレーム5からy軸方向に互いに並列に延びている。検出腕9は、x軸方向において1対の駆動腕7の間となる位置にてフレーム5からy軸方向に延びている。複数の励振電極15は、1対の駆動腕7をx軸方向に励振する電圧を印加可能な配置で設けられている。複数の検出電極17は、検出腕9のz軸方向またはx軸方向(本実施形態ではz軸方向)の振動によって生じる信号を検出可能な配置で設けられている。複数のパッド13は、1対の駆動腕7よりもx軸方向の両側の位置にて圧電体3に設けられている。複数の配線19は、1対の駆動腕7がx軸方向において互いに逆側へ曲がって振動するように複数の励振電極15から1対の駆動腕7に互いに逆の位相が印加されるように複数の励振電極15を接続している。
【0062】
従って、1対の駆動腕7の励振によってフレーム5を湾曲(振動)させ、検出腕9を変位(振動)させ、この変位している検出腕9に作用するコリオリの力によって角速度を検出するという新たな振動態様による検出が可能になる。
【0063】
比較例としては、例えば、励振されている駆動腕にコリオリの力を作用させて振動させ、このコリオリの力による振動を検出腕に伝達するものが挙げられる。本実施形態では、そのような比較例とは異なり、検出腕に直接的にコリオリの力が作用する。その結果、例えば、検出感度が向上する。
【0064】
また、比較例として、例えば、駆動腕の振動方向(x軸方向)と同一方向において検出腕を曲げ変形(振動)させておき、この振動している検出腕にコリオリの力を作用させる態様が挙げられる。本実施形態は、そのような態様とは検出腕の振動方向が異なり、前述の比較例では角速度を検出できなかった回転軸(x軸)について角速度を検出することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態では、検出腕9は、1対の駆動腕7の間の中央に位置している。
【0066】
フレーム5の撓み変形は、1対の駆動腕7の間の中央において大きくなりやすい。そのような位置に検出腕9が位置していることによって、検出腕9の振幅を大きくして検出感度を大きくすることができる。特に、1対の駆動腕7と1つの被支持部5aとが同一の対称軸に対して線対称である場合においては、検出腕9の振幅を最も大きくすることができる。なお、上記において比較例として言及した、駆動腕の振動方向において検出腕を曲げ変形(振動)させておき、その振動している検出腕にコリオリの力を作用させる技術では、その原理上、例えば、1対の駆動腕の間の中央に対して線対称に1対の検出腕が配置されたり、音叉のように1本の駆動腕と1本の検出腕とが配置されたりしている。
【0067】
また、本実施形態では、圧電体3は、フレーム5から延び、電圧が印加されて振動する腕として、1対の駆動腕7のみを有している(後述するように1対の駆動腕7と並列に延びる他の駆動腕7を設けることも可能である。)。すなわち、フレーム5から駆動腕7とは反対側(図示の例ではy軸方向の負側)に延びる他の駆動腕は設けられていない。
【0068】
従って、例えば、1対の駆動腕7によってフレーム5に確実に撓み変形を生じさせることができる。なお、1対の駆動腕の中央に検出腕を位置させる比較例(特許文献1参照)においては、例えば、フレーム5に相当する基部において本実施形態のような湾曲が生じないように、1対の駆動腕とは反対側へ延びる他の1対の駆動腕が設けられ、1対の駆動腕と同一の位相で他の1対の駆動腕が励振されている。
【0069】
<第2実施形態>
(角速度センサの構成)
図4(a)は、第2実施形態に係るセンサ素子201の一部を拡大して示す、
図2(a)と同様の斜視図である。
図4(b)は、第2実施形態に係る角速度センサ251を示す、
図2(b)と同様の図であり、
図4(a)のIVb−IVb線に対応する断面図を含んでいる。
【0070】
第2実施形態に係る角速度センサ251は、第1実施形態に係る角速度センサ51と同様に、1対の駆動腕7をx軸方向に振動させることによって、フレーム5を湾曲(振動)させ、ひいては、検出腕9をy軸方向に変位(振動)させる。そして、検出腕9に直接的にコリオリの力を作用させる。ただし、角速度センサ51がx軸回りの回転を検出するものであったのに対して、角速度センサ251は、z軸回りの回転を検出するものとされている。具体的には、以下のとおりである。
【0071】
センサ素子201は、圧電体3、複数の励振電極15、複数の検出電極217、複数のパッド13(ここでは不図示)および複数の配線19を有している。これらの符号から理解されるように、複数の検出電極217(これに関わる配線19)を除いては、センサ素子201の基本的な構成は、概ね、第1実施形態のセンサ素子1と同様とされてよい。
図1は、センサ素子201を示す斜視図として捉えられてよい。
【0072】
ただし、本実施形態においては、検出腕9は、第1実施形態とは異なり、コリオリの力によってx軸方向に振動することが意図されている。このような相違に基づいて、各種の寸法は、第1実施形態と異なっていてよい。
【0073】
例えば、検出腕9は、その幅(x軸方向)が大きくなると、振動方向(x軸方向)における固有振動数が高くなり、その長さ(別の観点では質量)が大きくなると、励振方向における固有振動数は低くなる。検出腕9の各種の寸法は、例えば、検出腕9の振動方向における固有振動数が、駆動腕7の励振方向における固有振動数に近くなるように設定される。例えば、検出腕9の長さおよび幅は、例えば、駆動腕7の長さおよび幅と同等である。ただし、両者の寸法は異なっていてもよい。
【0074】
検出電極217Aおよび217Bは、検出腕9のx軸方向の曲げ変形によって生じる信号を取り出すものであるので、例えば、駆動腕7をx軸方向に励振させるための励振電極15Aおよび15Bと同様の構成とされる。従って、第1実施形態における励振電極15についての説明は、励振電極15を検出電極217に読み替えて、検出電極217についての説明としてよい。1対の検出電極217A同士の接続、および1対の検出電極217B同士の接続についても同様である。
【0075】
第1実施形態においては、検出腕9に上面および下面を貫通するスリットが設けられてよいことについて言及した。第2実施形態においては、検出腕9は、駆動腕7と同様に、その上面および/または下面に凹溝が設けられてよい。
【0076】
(角速度センサの動作)
第2実施形態における圧電体3の励振は、第1実施形態におけるものと同様である。
図3(a)および
図3(b)は、第2実施形態における圧電体3の励振状態を示している図として捉えられてよい。従って、1対の駆動腕7はx軸方向において互いに近接および離反するように振動し、検出腕9はy軸方向において変位(振動)する。
【0077】
図5(a)および
図5(b)は、コリオリの力による検出腕9の振動を説明するための模式的な平面図である。
図5(a)および
図5(b)は、
図3(a)および
図3(b)の状態に対応している。
【0078】
図3(a)および
図3(b)を参照して説明したように圧電体3が振動している状態で、センサ素子1がz軸回りに回転されると、検出腕9は、y軸方向に振動(変位)していることから、コリオリの力によって回転軸(z軸)と振動方向(y軸)とに直交する方向(x軸方向)において振動(変形)する。この変形によって生じる信号(電圧)は、検出電極217によって取り出されて検出回路105に入力される。コリオリの力(ひいては検出される信号の電圧)は、角速度が大きいほど大きくなる。これにより、角速度が検出される。
【0079】
以上のとおり、本実施形態においても、フレーム5は、x軸方向に互いに離れた1対の被支持部5aにおいて支持され(別の観点では1対の駆動腕7よりもx軸方向の両側に複数のパッド13が設けられ)、駆動腕7は、1対の被支持部5aの間かつx軸方向に互いに離れた位置にてフレーム5からy軸方向に互いに並列に延び、検出腕9は、x軸方向において1対の駆動腕7の間となる位置にてフレーム5からy軸方向に延び、駆動回路103は、1対の駆動腕7がx軸方向において互いに逆側へ曲がって振動するように1対の駆動腕7に互いに逆の位相の電圧を印加し(そのような電圧印加が可能に複数の励振電極15が配置され)、検出回路105は、検出腕9の適宜な方向(本実施形態ではx軸方向)における曲げ変形により生じる信号を検出する(そのような検出が可能に複数の検出電極217が配置される)。
【0080】
従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、新たな振動態様による検出が可能になる。また、例えば、検出腕に直接にコリオリの力が作用し、検出感度の向上が期待される。また、例えば、駆動腕の振動方向(x軸方向)と同一方向において検出腕を曲げ変形(振動)させておき、この振動している検出腕にコリオリの力を作用させる比較例では角速度を検出できなかった軸(z軸)について角速度を検出することが可能となる。
【0081】
<第3および第4実施形態>
第1および第2実施形態から理解されるように、本開示においては、x軸回りの回転を検出する角速度センサと、z軸回りの回転を検出する角速度センサとを比較すると、基本的には、その構成においては、検出電極17および217(およびこれに係る配線19)の構成が異なるだけであり、その作用においては、コリオリの力が作用する方向が異なるだけである。そこで、以下では、x軸回りの回転を検出する角速度センサと、z軸回りの回転を検出する角速度センサとを共に説明することとし、両者の符号を同一図面に付すことがある。
【0082】
(角速度センサの構成)
図6(a)は、第3実施形態に係るセンサ素子301または第4実施形態に係るセンサ素子401の構成を示す平面図である。
【0083】
センサ素子301または401の圧電体303は、第1および第2実施形態の圧電体3を2つ組み合わせたような形状となっている。すなわち、圧電体3は、2つのユニット304Aおよび304Bを有しており、各ユニット304は、フレーム5と、フレーム5からy軸方向に互いに並列に延びる少なくとも1対(本実施形態では2対)の駆動腕7および検出腕9とを有している。2つのユニット304は、駆動腕7および検出腕9が延びる方向とは反対側同士を対向させるように配置され、共通の1対の実装部11に支持されている。2つのユニット304間の距離は、例えば、フレーム5Aおよび5Bが互いに接触しないように適宜に設定されてよい。2つのユニット304同士は、例えば、同一の形状および大きさ(x軸に平行な不図示の対称軸に対して線対称の形状および大きさ)である。
【0084】
また、第1実施形態の圧電体3は、1本のフレーム5に対して1対の駆動腕7を有していたところ、圧電体303のユニット304は、1本のフレーム5に対して2対の駆動腕7を有している。後述するように(
図6(b)および
図6(c))、互いに隣接する2本の駆動腕7同士(7Cおよび7Dの2本、7Eおよび7Fの2本、7Gおよび7Hの2本、ならびに7Iおよび7Jの2本)は、互いにx軸方向の同一側へ共に曲がるように同一の位相で電圧が印加される。従って、互いに隣接する2本の駆動腕7は、第1実施形態の1本の駆動腕7に相当すると捉えられてよい。このように第1実施形態の駆動腕7を2本に分割することによって、例えば、駆動腕7の長さを短くしても駆動腕7全体としての質量を確保することができ、ひいては、小型化と検出感度の向上とを両立できる。
【0085】
互いに隣接する2本の駆動腕7の間の中央の位置(または各駆動腕7の位置)は、例えば、第1実施形態において説明した駆動腕7の位置と同様とされてよい。互いに隣接する2本の駆動腕7の距離は、適宜に設定されてよい。互いに隣接する2本の駆動腕7の形状および寸法は、例えば、互いに同一である。ただし、互いに異なっていてもよい。圧電体303は、例えば、不図示の対称軸(検出腕9)に対して線対称の形状であり、複数の駆動腕7の形状および配置も線対称である。
【0086】
なお、駆動腕7は、1本のフレームに対して2対よりも多く設けられてもよい。また、この1本のフレームに対して2対以上の駆動腕7を設ける構成(1本の駆動腕7を2本以上に分割する構成)は、第1または第2実施形態(圧電体3)だけでなく、他の実施形態に適用されてもよい。
【0087】
x軸回りの回転を検出するセンサ素子301(第3実施形態)は、2つのセンサ素子1(第1実施形態)を組み合わせたものに相当するから、センサ素子301の各ユニット304における励振電極15および検出電極17の構成および接続関係は、センサ素子1のものと同様でよい。同様に、z軸回りの回転を検出するセンサ素子401(第4実施形態)は、2つのセンサ素子201(第2実施形態)を組み合わせたものに相当するから、センサ素子401の各ユニット304における励振電極15および検出電極217の構成および接続関係は、センサ素子201のものと同様でよい。
【0088】
互いに隣接する2本の駆動腕7は、第1実施形態の1本の駆動腕7に相当し、互いに同一位相で電圧が印加されるものであるから、この2本の駆動腕7間においては、励振電極15A同士が同電位とされ(例えば励振電極15A同士が配線19によって接続され)、励振電極15B同士が同電位とされる(例えば励振電極15B同士が配線19によって接続される)。
【0089】
ユニット304間における、励振電極15および検出電極17(または217)の接続関係については、以下の動作の説明の際に説明する。
【0090】
(角速度センサの動作)
図6(b)および
図6(c)は、第3または第4実施形態における圧電体303の励振状態を示す模式的な平面図であり、第1実施形態の
図3(a)および
図3(b)に対応している。
【0091】
各ユニット304における励振は、第1実施形態における圧電体3の励振と基本的に同様である。ただし、各ユニット304においては、互いに隣接する2本の駆動腕7は、互いに同一側に共に曲がるように同一の位相で電圧が印加され、圧電体3の1本の駆動腕7に相当する。
【0092】
2つのユニット304同士においては、例えば、検出腕9に対してx軸方向の同一側(正側または負側)に位置する駆動腕7同士がx軸方向の同一側に曲がるように同一の位相で電圧が印加される。従って、フレーム5Aおよび5Bは、互いに逆方向へ撓む。また、検出腕9Aおよび9Bは、互いに逆方向へ変位する。
【0093】
上記のような電圧印加のために、例えば、検出腕9に対してx軸方向の同一側に位置する駆動腕7(7C、7D、7Gおよび7H、または7E、7F、7Iおよび7J)においては、励振電極15A同士が同一の電位とされ、励振電極15B同士が同一の電位とされる。同電位となるべき励振電極15同士は、例えば、複数の配線19によって互いに接続されている。そして、全ての励振電極15は、4つのパッド13のうち2つを介して駆動回路103に接続されている。
【0094】
図7(a)および
図7(b)は、x軸回りの回転を検出する第3実施形態に係るセンサ素子301における、コリオリの力による検出腕9の振動を説明するための模式的な斜視図である。
図7(a)および
図7(b)は、
図6(b)および
図6(c)の状態に対応している。
【0095】
図6(b)および
図6(c)を参照して説明したように圧電体303が振動している状態で、センサ素子301がx軸回りに回転されると、各ユニット304においては、第1実施形態と同様に、コリオリの力によって検出腕9がz軸方向に振動する。このとき、検出腕9Aおよび9Bは、y軸方向において互いに逆側へ変位する位相で振動しているから、x軸回りの回転方向に対して同一側にコリオリの力を受ける。別の観点では、検出腕9Aおよび9Bは、z軸方向において互いに逆側へ曲がるように振動する。
【0096】
このような検出腕9Aおよび9Bにおいて生じる信号を加算するために、例えば、検出腕9Aの検出電極17Aと検出腕9Bの検出電極17Bとが接続され、検出腕9Aの検出電極17Bと検出腕9Bの検出電極17Aとが接続される。当該接続は、例えば、複数の配線19によってなされる。そして、全ての検出電極17は、4つのパッド13のうち2つを介して検出回路105に接続されている。
【0097】
図7(c)および
図7(d)は、z軸回りの回転を検出する第4実施形態に係るセンサ素子401における、コリオリの力による検出腕9の振動を説明するための模式的な平面図である。
図7(c)および
図7(d)は、
図6(b)および
図6(c)の状態に対応している。
【0098】
図6(b)および
図6(c)を参照して説明したように圧電体303が振動している状態で、センサ素子401がz軸回りに回転されると、各ユニット304においては、第2実施形態と同様に、コリオリの力によって検出腕9がx軸方向に振動する。このとき、検出腕9Aおよび9Bは、y軸方向において互いに逆側に変位する位相で振動しているから、z軸回りの回転方向に対して同一側にコリオリの力を受ける。別の観点では、検出腕9Aおよび9Bは、x軸方向において互いに逆側へ曲がるように振動する。
【0099】
このような検出腕9Aおよび9Bにおいて生じる信号を加算するために、例えば、検出腕9Aの検出電極217Aと検出腕9Bの検出電極217Bとが接続され、検出腕9Aの検出電極217Bと検出腕9Bの検出電極217Aとが接続される。当該接続は、例えば、複数の配線19によってなされる。そして、全ての検出電極17は、4つのパッド13のうち2つを介して検出回路105に接続されている。
【0100】
以上のとおり、第3または第4実施形態の角速度センサまたはセンサ素子は、第1または第2実施形態の角速度センサまたはセンサ素子を含むものであり、第1または第2実施形態の角速度センサまたはセンサ素子と同様の効果が奏される。例えば、新たな振動態様による検出が可能になる。
【0101】
さらに、第3および第4実施形態では、圧電体303は、フレーム5、(少なくとも)1対の駆動腕7および検出腕9の組み合わせを、フレーム5の1対の駆動腕7が延び出る側とは反対側を互いに対向させて2組有している(2つのユニット304を有している。)。
【0102】
従って、例えば、2つの検出腕9において検出された信号を加算することによって検出感度を向上させることができる。また、例えば、第1実施形態では、1対の実装部11の間かつy軸方向の負側の領域がデッドスペースになっているが、このようなスペースの有効利用が図られる。その結果、感度向上と小型化との両立が図られる。
【0103】
(第3および第4実施形態の変形例)
第3および第4実施形態では、2つのユニット304同士において、駆動腕7は同一の位相で励振され、検出腕9はy軸方向において互いに逆側へ変位するように振動した。特に図示しないが、これらの実施形態とは逆に、2つのユニット304同士において、駆動腕7は逆の位相で励振され、検出腕9はy軸方向において互いに同一側へ変位するように振動してもよい。
【0104】
この場合、2つのユニット304間における、励振電極15および検出電極17の接続は、第3および第4実施形態とは逆になる。例えば、x軸方向の同一側に位置する駆動腕7同士においては、複数の配線19によって、ユニット304Aの励振電極15Aとユニット304Bの励振電極15Bとが接続され、ユニット304Aの励振電極15Bとユニット304Bの励振電極15Aとが接続される。また、2つの検出腕9Aおよび9B間においては、検出電極17A同士が接続され、検出電極17B同士が接続される。全ての励振電極15が4つのパッド13のうち2つを介して駆動回路103に接続され、全ての検出電極17が4つのパッド13のうち他の2つを介して検出回路105に接続される点は、第3および第4実施形態と同様である。
【0105】
第3および第4実施形態のように2つのフレーム5をy軸方向の互いに逆側へ撓ませた場合においては、例えば、各ユニット304全体をy軸方向へ移動させるような力が1対の実装部11を介して1対のユニット304間で互いに打ち消されるから、不要な振動が生じることが抑制される。また、例えば、2つのフレーム5から各実装部11へは、各実装部11を撓ませるようにモーメントが伝わるところ、この2つのフレーム5からのモーメントは、互いに同一側へ各実装部11を撓ませるように作用する。従って、実装部11の幅および2つのフレーム5間の距離等によるが、実装部11の湾曲によって、検出腕9の変位が大きくなることが期待される。
【0106】
一方、上述した変形例のように2つのフレーム5をy軸方向の互いに同一側へ撓ませた場合においては、例えば、2つのフレーム5が概ね一定の距離を保つ。別の観点では、2つのフレーム5は、
図6(c)に示すように互いに近接するおそれが低減され、ひいては、意図しない相互作用が生じるおそれが低減される。
【0107】
第3および第4実施形態、ならびに上記の変形例では、2つのユニット304が同一の周波数で励振された。しかし、2つのユニット304は、基本的には独立して振動可能な構造であるから、互いに異なる周波数で励振されてもよい。
【0108】
また、第3および第4実施形態、ならびに上記の変形例では、2つのユニット304は、互いに同一の回転軸(x軸またはz軸)の回りの角速度の検出に利用された。しかし、2つのユニット304は、基本的には独立して振動可能な構造であるから、互いに異なる回転軸回りの検出に利用されてもよい。例えば、2つのユニット304の一方はx軸回りの角速度の検出に利用され、2つのユニット304の他方はz軸回りの角速度の検出に利用されてもよい。換言すれば、2つのユニット304の一方においては第1実施形態の検出電極17が設けられ、2つのユニット304の他方においては第2実施形態の検出電極217が設けられてよい。
【0109】
2つのユニット304間で、上記のように励振周波数および/または検出対象の回転軸が異なる場合、2つのユニット304は、寸法等が互いに異なっていてもよい。なお、2つのユニット304間で励振周波数および/または検出対象の回転軸が異なる場合、一方のユニット304に対応する4つのパッド13と、他方のユニット304に対応する4つのパッド13との合計8つのパッドが必要である。
【0110】
以上の2つのユニット304の振動に係る変形例は、第3および第4実施形態だけでなく、2つのユニットを有する他の実施形態(後述する第5、第6、第9および第10実施形態)に適用されてもよい。
【0111】
<第5および第6実施形態>
図8(a)〜
図8(c)は、第5実施形態に係るセンサ素子501または第6実施形態に係るセンサ素子601を示す平面図であり、第3または第4実施形態に係る
図6(a)〜
図6(c)に対応する図である。
【0112】
第5または第6実施形態に係る圧電体503は、第3または第4実施形態に係る圧電体303と同様に、フレーム5、(少なくとも)1対の駆動腕7および検出腕9の組み合わせ(ユニット504Aおよび504B)を2組有している。ただし、第5または第6実施形態の2つのユニット504は、第5または第6実施形態の2つのユニット304とは逆に、駆動腕7および検出腕9が延び出る側同士を対向させて配置されている。これに伴い、2つのフレーム5は、例えば、y軸方向を長手方向とする実装部11の端部において実装部11に接続されている。
【0113】
図8(a)〜
図8(c)と、
図6(a)〜
図6(c)との比較から理解されるように、第5または第6実施形態は、第3または第4実施形態において、各ユニット304のy軸方向の向きを逆にしたもの(あるいは2つのユニット304のy軸方向の位置を互いに逆にしたもの)と捉えることができる。従って、各ユニット504において、フレーム5、駆動腕7、検出腕9、励振電極15および検出電極17または217の構成は、第1〜第4実施形態のものと同様でよいし、2つのユニット504間における、励振電極15同士の接続ならびに検出電極17または217同士の接続は第3または第4実施形態のものと同様でよい。その動作も、第1〜第4実施形態から容易に類推可能であることから、説明を省略する。
【0114】
なお、パッド13の位置は、第1〜第4実施形態と同様に、1対の実装部11のy軸方向両端に設けられてもよいし(図示の例)、1対の実装部11と1対のフレーム5との接続位置よりもy軸方向の中央側に設けられてもよい。前者の場合においては、例えば、センサ素子501または601の支持が安定し、また、実装の平行度を向上させることができる。後者の場合においては、例えば、実装部11の湾曲も検出腕9の変位に利用する場合において、実装部11を湾曲させやすくなる。
【0115】
<第7および第8実施形態>
(角速度センサの構成)
図9(a)は、第7実施形態に係るセンサ素子701または第8実施形態に係るセンサ素子801の構成を示す平面図である。
【0116】
センサ素子701または801に係る圧電体703は、第3または第4実施形態に係る圧電体303と同様に、駆動腕7および検出腕9がy軸方向の両側に延びている。ただし、圧電体303では、2本のフレーム5から駆動腕7および検出腕9がy軸方向の両側に延びていたのに対して、圧電体703では、1本のフレーム5から駆動腕7がy軸方向の両側に延びている。
【0117】
圧電体703は、例えば、x軸に平行な不図示の対称軸に対して線対称の形状とされている。従って、例えば、y軸方向の正側に延びる1対の駆動腕7Aおよび7Bならびに検出腕9Aと、y軸方向の負側に延びる1対の駆動腕7Kおよび7Lならびに検出腕9Bとは互いに同一の形状および寸法であり、その振動特性は同等である。
【0118】
後述するように、フレーム5と、y軸方向の正側の駆動腕7および検出腕9のみに着目したとき、その動作は、第1または第2実施形態と基本的に同様である。フレーム5と、y軸方向の負側の駆動腕7および検出腕9のみに着目したときも同様である。従って、x軸回りの回転を検出するセンサ素子701(第7実施形態)において、y軸方向の正側または負側のみに着目したときの励振電極15および検出電極17の構成および接続関係は、センサ素子1(第1実施形態)のものと同様でよい。同様に、z軸回りの回転を検出するセンサ素子801(第8実施形態)において、y軸方向の正側または負側のみに着目したときの励振電極15および検出電極217の構成および接続関係は、センサ素子201(第2実施形態)のものと同様でよい。
【0119】
y軸方向の正側および負側間における、励振電極15および検出電極17(または217)の接続関係については、以下の動作の説明の際に説明する。
【0120】
(角速度センサの動作)
図9(b)および
図9(c)は、第7または第8実施形態における圧電体703の励振状態を示す模式的な平面図であり、第1実施形態の
図3(a)および
図3(b)に対応している。
【0121】
圧電体703の励振は、フレーム5と、y軸方向の一方側(正側または負側)の駆動腕7に着目したときの動作は、第1〜第6実施形態と同様である。一方、y軸方向の両側の駆動腕7および検出腕9に着目すると、第3〜第6実施形態とは逆に、検出腕9に対してx軸方向の同一側に位置する駆動腕7同士は、x軸方向において互いに逆側に曲がるように逆の位相で電圧が印加される。その結果、y軸方向の正側の駆動腕7Aおよび7Bによるフレーム5を湾曲させるモーメントと、y軸方向の負側の駆動腕7Kおよび7Lによるフレーム5を湾曲させるモーメントとが重畳される。そして、2つの検出腕9は、y軸方向において同一側に共に変位するように振動する。
【0122】
上記のような電圧印加のために、例えば、x軸方向の同一側に位置する駆動腕7(7Aおよび7K、または7Bおよび7L)間においては、励振電極15Aと励振電極15Bとが同電位とされている。すなわち、駆動腕7および励振電極15の符号のみで示すと、7A−15A、7B−15B、7K−15Bおよび7L−15Aが同電位であり、7A−15B、7B−15A、7K−15Aおよび7L−15Bが同電位である。同電位となるべき励振電極15同士は、例えば、複数の配線19によって互いに接続されている。そして、全ての励振電極15は、4つのパッド13のうち2つを介して駆動回路103に接続されている。
【0123】
図10(a)および
図10(b)は、x軸回りの回転を検出する第7実施形態に係るセンサ素子701における、コリオリの力による検出腕9の振動を説明するための模式的な斜視図である。
図10(a)および
図10(b)は、
図9(b)および
図9(c)の状態に対応している。
【0124】
図9(b)および
図9(c)を参照して説明したように、圧電体703においては、第3実施形態に係る圧電体303とは逆に、2つの検出腕9は、y軸方向において互いに同一側へ変位する位相で振動している。従って、2つの検出腕9が振動している状態でセンサ素子701がx軸回りに回転されると、第3実施形態とは逆に、2つの検出腕9は、x軸回りの回転方向に対して逆側にコリオリの力を受ける。別の観点では、検出腕9Aおよび9Bは、z軸方向において互いに同一側へ曲がるように振動する。
【0125】
このような検出腕9Aおよび9Bにおいて生じる信号を加算するために、例えば、検出腕9Aおよび9B間においては、検出電極17A同士が接続され、検出電極17B同士が接続される。当該接続は、例えば、複数の配線19によってなされる。そして、全ての検出電極17は、4つのパッド13のうち2つを介して検出回路105に接続されている。
【0126】
図10(c)および
図10(d)は、z軸回りの回転を検出する第8実施形態に係るセンサ素子801における、コリオリの力による検出腕9の振動を説明するための模式的な斜視図である。
図10(c)および
図10(d)は、
図9(b)および
図9(c)の状態に対応している。
【0127】
図9(b)および
図9(c)を参照して説明したように、圧電体703においては、第4実施形態に係る圧電体303とは逆に、2つの検出腕9は、y軸方向において互いに同一側へ変位する位相で振動している。従って、2つの検出腕9が振動している状態でセンサ素子801がz軸回りに回転されると、第4実施形態とは逆に、2つの検出腕9は、z軸回りの回転方向に対して逆側にコリオリの力を受ける。別の観点では、検出腕9Aおよび9Bは、x軸方向において互いに同一側へ曲がるように振動する。
【0128】
このような検出腕9Aおよび9Bにおいて生じる信号を加算するために、例えば、検出腕9Aおよび9B間においては、検出電極217A同士が接続され、検出電極217B同士が接続される。当該接続は、例えば、複数の配線19によってなされる。そして、全ての検出電極217は、4つのパッド13のうち2つを介して検出回路105に接続されている。
【0129】
以上のとおり、第7または第8実施形態の角速度センサまたはセンサ素子は、第1または第2実施形態の角速度センサまたはセンサ素子を含むものであり、第1または第2実施形態の角速度センサまたはセンサ素子と同様の効果が奏される。例えば、新たな振動態様による検出が可能になる。
【0130】
さらに、第7および第8実施形態では、圧電体703は、駆動腕7Aおよび7Bならびに検出腕9Aが接続されているフレーム5から駆動腕7Aおよび7Bならびに検出腕9Aとは反対側に延びる駆動腕7Kおよび7Lならびに検出腕9Bを有している。駆動回路103(
図2(b)または
図4(b))は、検出腕9に対してx軸方向の正側に位置する駆動腕7Bと駆動腕7Lとがx軸方向において互いに逆側へ曲がって振動し、かつ検出腕9に対してx軸方向の負側に位置する駆動腕7Aと駆動腕7Kとがx軸方向において互いに逆側へ曲がって振動するように、駆動腕7A、7B、7Kおよび7Lに電圧を印加する。
【0131】
従って、y軸方向の両側に延びる2対以上の駆動腕7によって1本のフレーム5を湾曲させることになる。その結果、例えば、検出腕9の変位が大きくなり、検出感度が向上することが期待される。また、例えば、第3および第4実施形態と同様に、第1または第2実施形態においてデッドスペースとなっているフレーム5のy軸方向負側の領域を有効利用できる。
【0132】
なお、図示の例では、圧電体703は、y軸方向の正側の構成とy軸方向の負側の構成とが線対称の形状とされたが、そのような形状となっていなくてもよい。具体的には、1対の駆動腕7Aおよび7Bが1対の被支持部5aの間かつx軸方向に互いに離れた位置にてフレーム5からy軸方向に互いに並列に延び、検出腕9Aが1対の駆動腕7Aの間においてフレーム5から1対の駆動腕7Aおよび7Bに対して並列に延びている場合において、駆動腕7Kおよび7Lは、1対の被支持部5aの間となり、かつ検出腕9Aに対してx軸方向の両側となる位置にて、フレーム5から互いに並列に、1対の駆動腕7Aおよび7Bとは反対側に延びていればよい。また、検出腕9Bは、x軸方向において1対の駆動腕7Aおよび7Bの間となる位置にて、1対の駆動腕7Kおよび7Lの間で1対の駆動腕7Kおよび7Lに並列に延びていればよい。
【0133】
また、駆動腕7A、7B、7Kおよび7Lによって上記のような励振を行う構成を採用しつつ、検出腕9Aおよび9Bの一方を省略してもよい。この場合であっても、y軸方向の両側に延びる2対以上の駆動腕7によってフレーム5の湾曲が実現される効果は奏される。
【0134】
<第9実施形態>
図11(a)は、第9実施形態に係るセンサ素子の圧電体903を示す平面図である。当該センサ素子は、x軸回りまたはz軸回りの角速度検出に供される。
【0135】
圧電体903は、第3または第4実施形態の圧電体303において、フレームの形状およびフレームの接続位置を変形したものである。具体的には、ユニット904Aおよび904Bのフレーム905Aおよび905Bはそれぞれ、直線状に延びているのではなく、台形の上底および1対の脚のように延びている。また、フレーム905Aおよび905Bは、実装部11と接合される被支持部905aが共通化されており、互いに独立に実装部11に接続されていない。
【0136】
このように、フレームの形状は、適宜な形状とされてよい。図示の形状以外にも、例えば、フレームの形状は、その全体が湾曲したり、その全体がx軸に対して傾斜したりするものであってもよい。駆動腕7および/または検出腕9は、フレームのx軸に対して傾斜している部分から延びていてもよい。このような変形は、第3または第4実施形態だけでなく、第1、第2、第5〜第8実施形態等の他の態様に適用されてもよい。
【0137】
なお、図示の例においては、フレーム905のうち台形の上底に相当する部分のみをフレームとして捉え、上底と脚との接続部を被支持部905bと捉えてもよく、この場合には、フレームは直線状であるといえる。
【0138】
<第10実施形態>
図11(b)は、第10実施形態に係るセンサ素子の圧電体1003を示す平面図である。当該センサ素子は、x軸回りまたはz軸回りの角速度検出に供される。
【0139】
圧電体1003は、第9実施形態の圧電体903と同様に、第3または第4実施形態の圧電体303において、フレームの形状およびフレームの接続位置を変形したものである。具体的には、ユニット1004Aおよび1004Bのフレーム1005Aおよび1005Bそれぞれは、y軸方向に延びる1対の共通部1006と、その間に位置する矩形の3辺のように延びる部分とを含んでいる。また、フレーム1005Aおよび1005Bは、実装部11と接合される1対の共通部1006が共通化されている。
【0140】
このように、2つのフレームは、駆動腕7よりも外側において互いに共通化されていてもよい。なお、図示の例においては、フレーム1005から共通部1006を除いた部分をフレームとして捉え、当該部分と共通部1006との接続部を被支持部と捉えてもよいし、矩形の角部を被支持部1005bとして捉え、矩形の1辺のみをフレームと捉えてもよい。
【0141】
<多軸角速度センサ>
(全体構成)
図12は、上述した角速度センサを含む多軸角速度センサ1150の構成を示す平面図である。
【0142】
多軸角速度センサ1150は、例えば、x軸回りの角速度を検出するx軸センサ351と、y軸回りの角速度を検出するy軸センサ1151と、z軸回りの角速度を検出するz軸センサ451とを有している。なお、図示の例では、x軸センサ351として第3実施形態に係る角速度センサを示し、z軸センサ451として第4実施形態に係る角速度センサを示しているが、x軸センサ351およびz軸センサ451は、上述した他の実施形態の角速度センサとされてもよい。
【0143】
x軸センサ351は、センサ素子301と、センサ素子301に電圧を印加する駆動回路103(
図2(b))と、センサ素子301から信号を検出する検出回路105(
図2(c))とを有するものである。これらの構成および動作については既に述べたとおりである。
【0144】
z軸センサ451は、センサ素子401と、センサ素子401に電圧を印加する駆動回路103(
図4(b))と、センサ素子401から信号を検出する検出回路105(
図4(c))とを有するものである。これらの構成および動作については既に述べたとおりである。
【0145】
y軸センサ1151は、センサ素子1101と、センサ素子1101に電圧を印加する駆動回路103(
図2(b))と、センサ素子1101から信号を検出する検出回路105(
図2(c))とを有するものである。
【0146】
y軸センサ1151は、x軸センサ351およびz軸センサ451と同様に、圧電振動式のものである。センサ素子1101は、圧電体1103を有している。圧電体1103は、例えば、基部1105と、基部1105に支持されている1以上の駆動腕7および1以上の検出腕9と、基部1105を支持する1対の実装部11とを有している。
【0147】
センサ素子301、センサ素子1101およびセンサ素子401は、例えば、x軸方向に配列されている。なお、3つのセンサ素子の並び順は図示以外のものであってもよい。これらのセンサ素子の圧電体は、例えば、一体的に形成されて互いに固定されている。すなわち、多軸角速度センサ1150は、センサ素子301の圧電体303、センサ素子1101の圧電体1103およびセンサ素子401の圧電体303を含む圧電体1102を有している。具体的には、例えば、これらの圧電体は、隣り合うもの同士で実装部11を共用するように固定されており、圧電体1102は、合計で4つの実装部11を有している。
【0148】
互いに隣り合う2つのセンサ素子の圧電体に共用される実装部11には、貫通孔11aが形成されている。貫通孔11aは、例えば、z軸方向に貫通し、概ね一定の幅でy軸方向(実装部11に沿う方向)に延びるスリット状である。パッド13は、例えば、貫通孔11aに対してy軸方向の外側に位置している。貫通孔11aが形成されていることによって、例えば、センサ素子同士の振動の相互影響が緩和される。
【0149】
x軸センサ351、y軸センサ1151およびz軸センサ451において、駆動回路103は共用されてよい。別の観点では、これら3つの角速度センサの圧電体を励振するときの周波数は同一とされてよい。このとき、励振用の1対のパッド13は、3つの角速度センサにおいて共用されてよい。従って、多軸角速度センサ1150は、励振用の2つのパッド13と、各角速度センサにおける検出用の2つのパッド13とを含む、合計8つのパッド13を含んでいればよい。図示の例では、8つのパッド13は、上述のように共用化された4つの実装部11それぞれの端部に設けられている。なお、駆動回路103は、3つの角速度センサの一部または全部において共用されなくてもよく、この場合において、8つを超えるパッド13が実装部11の適宜な位置に設けられてよい。また、この場合において、3つの角速度センサの圧電体を励振するときの周波数は、互いに異なっていてもよいし、互いに同一であってもよい。
【0150】
(y軸センサ)
y軸センサ1151は、公知のものを含め、種々の構成とされてよく、以下では、その一例について説明する。
【0151】
圧電体1103は、例えば、y軸に平行な不図示の対称軸に対して線対称に構成されており、基部1105からy軸方向の一方側(図示の例では正側)に延びる4本(2対)の駆動腕7O、7P、7Qおよび7Rと、基部1105から駆動腕7とは反対側へ延びる2本の検出腕9Cおよび9Dを有している。
【0152】
図13(a)および
図13(b)は、圧電体1103の励振状態を説明するための模式的な平面図である。
【0153】
4本の駆動腕7O、7P、7Qおよび7Rは、例えば、第3または第4実施形態の駆動腕7C、7D、7Eおよび7Fと同様に、x軸方向の同一側(正側または負側)に位置する2本同士がx軸方向において互いに同一側へ曲がり、かつx軸方向の正側に位置する2本とx軸方向の負側に位置する2本とがx軸方向において互いに逆側へ曲がるように励振される。なお、この駆動腕7の振動によって、基部1105は湾曲する必要はなく、また、検出腕9Cおよび9Dは振動する必要はない。
【0154】
上記の動作から理解されるように、圧電体1103の励振電極15の配置および接続は、第3または第4実施形態と同様でよい。そして、全ての励振電極15は、2つのパッド13を介して駆動回路103に接続される。
【0155】
図13(c)および
図13(d)は、圧電体1103のコリオリの力による振動を説明するための模式的な斜視図である。
【0156】
上記のように駆動腕7が振動されている状態で、圧電体1103がy軸回りに回転されると、駆動腕7には、振動方向(x軸方向)および回転軸(y軸)に直交する方向(z軸方向)にコリオリの力が作用する。その結果、駆動腕7は、z軸方向において撓み変形するように振動する。x軸方向の負側に位置する駆動腕7Oおよび7Pと、x軸方向の正側に位置する駆動腕7Qおよび7Rとは、x軸方向において互いに逆側に振動していることから、回転軸回り(y軸回り)において同一側へ曲がるように振動する。すなわち、両者は、z軸方向において互いに逆側へ曲がるように振動する。
【0157】
この駆動腕7のz軸方向における振動は、基部1105を介して検出腕9Cおよび9Dに伝わる。そして、検出腕9は、x軸方向において同一側に位置する駆動腕7とはz軸方向の逆側へ曲がるように振動する。また、2つの検出腕9は、z軸方向において互いに逆側へ曲がるように振動する。
【0158】
このような検出腕9に生じる信号を取り出すために、例えば、各検出腕9においては、第1実施形態において示した配置および接続の検出電極17(
図2(a)および
図2(b))が設けられる。また、互いに逆側へ曲がる2つの検出腕9の信号を加算するために、2つの検出腕9間においては、検出電極17Aと検出電極17Bとが配線19によって接続される。そして、全ての検出電極17は、2つのパッド13を介して検出回路105に接続される。
【0159】
y軸センサは、上記の構成の他、例えば、特開2015−99130に開示されている8本の駆動腕と2本の検出腕とを有するもの、1本の駆動腕と1本の検出腕とを有する音叉状のもの、y軸方向の同一側に延びる1対の駆動腕と1対の検出腕とを有するものなど、種々の構成のものとされてよい。実装部を有さず、基部において実装されるものであってもよい。
【0160】
なお、以上の実施形態において、y軸センサに係る駆動腕7O〜7Rを除いて、いずれの駆動腕7も第1駆動腕の一例である。y軸センサに係る検出腕9Cおよび9Dを除いて、いずれの検出腕9も検出腕の一例である。第7および第8実施形態において、駆動腕7Aおよび7Bは、1対の第1駆動腕の一例であり、駆動腕7Kおよび7Lは、1対の第2駆動腕の一例である。励振電極15Aは第1励振電極の一例であり、励振電極15Bは第2励振電極の一例である。検出電極17Aは、第1検出電極の一例であり、検出電極17Bは、第2検出電極の一例である。検出電極217Aは、別の観点の第1検出電極の一例であり、検出電極217Bは、別の観点の第2検出電極の一例である。y軸センサに係る駆動腕7O〜7Rはy軸駆動腕の一例であり、y軸センサに係る検出腕9Cおよび9Dはy軸検出腕の一例である。
【0161】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0162】
圧電体は、実施形態に示したようなy軸方向に延びる実装部を有していなくてもよい。例えば、フレームの両端において複数のパッドが設けられて実装されてもよい。すなわち、フレームのうちパッドが設けられる部分が被支持部とされてもよい。
【0163】
駆動腕および検出腕は、y軸方向に延びていれば、y軸に平行でなくてもよい。圧電体は、y軸方向の一方側に延びる(少なくとも)1対の駆動腕、およびy軸方向の他方側に延びる1本の検出腕のみを有する構成(2つ又のフォークのような形状)であってもよい。すなわち、1対の駆動腕と、検出腕とは、同一方向に(並列に)延びている必要はない。この場合、例えば、駆動腕と検出腕とがx軸方向において互いに当接するおそれがない。1本のフレームから延びる駆動腕の本数と検出腕の本数との組み合わせは適宜である。例えば、1対の駆動腕に対して、y軸方向の正側に延びる検出腕と、y軸方向の負側に延びる検出腕とが設けられてもよい。また、1対の駆動腕の間に、互いに並列に延びる2本以上の検出腕が設けられてもよい。
【0164】
センサ素子または角速度センサは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の一部として構成されてよい。この場合において、MEMSの基板上にセンサ素子を構成する圧電体が実装されてもよいし、MEMSの基板が圧電体によって構成されており、その一部によってセンサ素子の圧電体が構成されてもよい。
【0165】
多軸角速度センサは、x軸センサ、y軸センサおよびz軸センサのうちいずれか2つのみを有するものであってもよい。実施形態では、3つの角速度センサの圧電体は、x軸方向に配列されたが、y軸方向に配列されたり、L字に配列されたりしてもよい。また、3つの角速度センサの圧電体は、2つのみが互いに固定されたり、全てが別個に形成されて同一のパッケージ乃至は基板に実装されたりしてもよい。