(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る伸縮部材1は、クレーンや高所作業車などの作業機械に設けられる伸縮ブーム1である。伸縮ブーム1が設けられるクレーンとしては、ラフテレンクレーンや、オルテレンクレーン、トラッククレーンなどの移動式クレーンのほか、固定式クレーンが挙げられる。以下では移動式クレーンを例に説明する。
【0014】
(移動式クレーンCR)
まず、移動式クレーンCRの基本的構造を
図11に基づき説明する。
図11中符号101は走行車体である。走行車体101には走行のための原動機や車輪のほか、クレーン作業中の安定を確保するアウトリガ102が設けられている。走行車体101の上面には旋回台103が搭載されており、旋回モータにより水平面内で360°旋回できるようになっている。
【0015】
旋回台103には伸縮ブーム1が起伏自在に取り付けられている。伸縮ブーム1の基端部はピンで旋回台103に枢支され、伸縮ブーム1と旋回台103との間には起伏シリンダが取り付けられている。この起伏シリンダを伸長させると伸縮ブーム1が起仰し、起伏シリンダを収縮させると伸縮ブーム1が倒伏する。伸縮ブーム1はテレスコピック状に構成されており、伸縮シリンダにより伸縮する。
【0016】
伸縮ブーム1の先端部からは、フック104を備えたワイヤロープ105が吊り下げられている。そのワイヤロープ105は伸縮ブーム1に沿って旋回台103に導かれてウインチ106に巻き取られている。ウインチ106はホイストモータの駆動により正逆回転し、ワイヤロープ105を巻き取り、繰り出しすることでフック104の上げ下げができる。
【0017】
旋回台103の旋回、伸縮ブーム1の起伏、伸縮、フック104の上げ下げを組合せることにより、立体空間内での荷揚げと荷降ろしが可能となっている。
【0018】
(伸縮ブーム1)
つぎに、伸縮ブーム1の構造を説明する。
図1(A)に示すように、本実施形態の伸縮ブーム1は、基端ブーム11と、第2ブーム12と、先端ブーム13とを備えた3段式である。基端ブーム11、第2ブーム12、および先端ブーム13は断面略矩形の筒体であり、この順に断面積が小さくなっている。基端ブーム11、第2ブーム12、および先端ブーム13は、それぞれ特許請求の範囲に記載の「筒体」に相当する。筒体の数は3つに限定されず、2つ以上であればよい。
【0019】
基端ブーム11の内部に第2ブーム12が挿入され、第2ブーム12の内部に先端ブーム13が挿入されて、全体として外殻体10が構成されている。すなわち、外殻体10は基端ブーム11、第2ブーム12、および先端ブーム13がテレスコピック状に組み合わされたものである。
【0020】
図1において、外殻体10の右側が旋回台103に固定される基端側であり、左側がワイヤロープ105が吊り下げられる先端側である。先端ブーム13の先端部にはワイヤロープ105が巻き掛けられるシーブを有するブームヘッドが設けられるが、説明の便宜のため図示省略する。
【0021】
伸縮ブーム1は、その伸縮機構として、油圧シリンダ20とワイヤロープ26とを組み合わせたワイヤ伸縮機構を備えている。油圧シリンダ20は、チューブ21と、ロッド22とからなる。油圧シリンダ20は特許請求の範囲に記載の「棒材」に相当する。また、油圧シリンダ20は伸縮ブーム1を伸縮するのに用いられるため「伸縮シリンダ」とも称される。
【0022】
油圧シリンダ20はロッド22を基端側に向けて外殻体10の内部に挿入されている。ロッド22の先端部は、固定ピン23により基端ブーム11の基端部に固定されている。チューブ21のロッド側端部は、固定ピン24により第2ブーム12の基端部に固定されている。また、チューブ21のキャップ側端部は、どこにも固定されていない。すなわち、油圧シリンダ20のロッド側端部は外殻体10に固定された固定端であり、キャップ側端部は自由端である。
【0023】
チューブ21のキャップ側端部にはシーブ25が設けられている。ワイヤロープ26は、シーブ25に巻き掛けられており、その一端は基端ブーム11に固定され、他端は先端ブーム13に固定されている。以下、ワイヤロープ26の基端ブーム11に固定された端部を「基端ブーム固定端」と称し、先端ブーム13に固定された端部を「先端ブーム固定端」と称する。
【0024】
伸縮ブーム1は以下のように伸長動作する。なお、
図1(A)は伸縮ブーム1が収縮した状態を示し、
図1(B)は伸縮ブーム1が伸長した状態を示す。
【0025】
伸縮ブーム1を伸長するには、油圧シリンダ20を伸長させる。油圧シリンダ20が伸長すると、ロッド22の先端部(固定ピン23)とチューブ21のロッド側端部(固定ピン24)との間の距離が長くなる。ロッド22の先端部とチューブ21のロッド側端部は、それぞれ基端ブーム11と第2ブーム12に固定されている。そのため、油圧シリンダ20の伸長にともない、第2ブーム12が基端ブーム11に対して先端側に移動する。
【0026】
チューブ21は第2ブーム12に固定されているため、チューブ21に固定されたシーブ25と第2ブーム12との位置関係が変化することはない。第2ブーム12が基端ブーム11に対して先端側に移動すると、シーブ25も基端ブーム11に対して先端側に移動する。そうすると、ワイヤロープ26の基端ブーム固定端とシーブ25との間の距離が長くなる。これにともない、ワイヤロープ26は基端ブーム固定端側に繰り出され、先端ブーム固定端がシーブ25に引き付けられる。これにより、先端ブーム13が基端ブーム11に対して先端側に移動する。
【0027】
しかも、シーブ25とワイヤロープ26により倍速機構が構成されている。そのため、先端ブーム13の基端ブーム11に対する移動距離は、第2ブーム12の基端ブーム11に対する移動距離の2倍となる。したがって、先端ブーム13の第2ブーム12に対する伸びは、第2ブーム12の基端ブーム11に対する伸びと同一となる。
【0028】
油圧シリンダ20を伸長すると、油圧シリンダ20にはワイヤロープ26の張力が軸方向の圧縮力として作用する。しかも、この圧縮力は自由端であるキャップ側端部に作用する。そのため、ワイヤロープ26による圧縮力が油圧シリンダ20の曲がりや座屈の原因となる。そこで、油圧シリンダ20の曲がりや座屈を防止するために、油圧シリンダ20のキャップ側端部には上下左右方向への変位を制限するガイド部材30が設けられている。ガイド部材30の構成は後に詳説する。
【0029】
(折り曲げ構造)
図2は、伸縮ブーム1を先端側から見た端面図である。
先端ブーム13は、天板13a、底板13b、および一対の側板13c、13cからなる、断面略矩形の筒体である。なお、以下では、先端ブーム13の軸心から天板13aに向かう方向を「上」、底板13bに向かう方向を「下」、各側板13c、13cに向かう方向を「左」「右」と定義する。
【0030】
側板13cは、軸方向と平行な線に沿って複数回(4回)折り曲げられた折り曲げ構造であり、略中央部分が内側に窪んだ断面形状を有している。より詳細には、側板13cは、その折り線を介して連接された複数の短尺部131〜135からなる。短尺部131〜135は、第1垂直部131、第1傾斜部132、第2垂直部133、第2傾斜部134、および第3垂直部135からなる。第1垂直部131は、その下縁が底板13bの側縁に連接し、上下に沿って垂直に配置されている。第1傾斜部132は、その下縁が第1垂直部131の上縁に連接し、内面が斜め下方を向くように上下方向に対して傾斜して配置されている。第2垂直部133は、その下縁が第1傾斜部132の上縁に連接し、上下に沿って垂直に配置されている。第2傾斜部134は、その下縁が第2垂直部133の上縁に連接し、内面が斜め上方を向くように上下方向に対して傾斜して配置されている。第3垂直部135は、その下縁が第2傾斜部134の上縁に連接し、上下に沿って垂直に配置されている。第3垂直部135の上縁は天板13aの側縁に連接している。
【0031】
基端ブーム11および第2ブーム12の断面形状は、先端ブーム13の断面形状と相似形であり、それらの側板11c、12cも略中央部分が内側に窪んだ断面形状を有している。
【0032】
クレーンや高所作業車などに設けられる伸縮ブーム1には、その先端部が下がるような曲げ荷重が作用する。この曲げ荷重は、側板11c、12c、13cに上下方向に作用するため、側板11c、12c、13cには座屈荷重として作用する。
【0033】
板材の厚さ対する長さの比を小さくすることで、板材の座屈応力が高くなることが知られている。すなわち、板厚を一定とした場合には、板材の長さを短くするほど座屈応力が高くなる。そこで、本実施形態のように側板11c、12c、13cを折り曲げ構造とすることで、側板11c、12c、13cの直線部分(短尺部131〜135)の長さが短くなり、座屈応力が高くなる。
【0034】
以上のように側板11c、12c、13cを折り曲げ構造とすることで、座屈応力が高くなる。そのため、側板11c、12c、13cの板厚を薄くでき、伸縮ブーム1を軽量化できる。伸縮ブーム1を軽量化することで、作業半径を広くでき、定格荷重を大きくできる。
【0035】
(ガイド部材30)
前述のごとく、油圧シリンダ20のキャップ側端部(自由端)には上下左右方向への変位を制限するガイド部材30が設けられている。本実施形態のガイド部材30は、一対の側部ガイド板31、31と、下部ガイドローラ32とからなる。なお、側部ガイド板31および下部ガイドローラ32は、それぞれ特許請求の範囲に記載の「側部ガイド部材」および「下部ガイド部材」に相当する。
【0036】
側部ガイド板31は、斜め上方を向いた傾斜面312を有する楔形であり、その傾斜面312が第1傾斜部132の内面と平行に対向して配置されている。側部ガイド板31と第1傾斜部132との間には若干のクリアランスが設けられている。
【0037】
油圧シリンダ20の自由端が左右方向に変位すると、側部ガイド板31の傾斜面312と第1傾斜部132とが接触し、その変位が制限される。また、油圧シリンダ20の自由端が上方向に変位しても、側部ガイド板31の傾斜面312と第1傾斜部132とが接触し、その変位が制限される。このように、側部ガイド板31が第1傾斜部132に案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の左右方向への変位が制限されるとともに、上方向への変位が制限される。
【0038】
下部ガイドローラ32は底板13bの内面を転動するローラである。油圧シリンダ20の自由端が下方向に変位しようとすると、底板13bから下部ガイドローラ32に反力が作用し、その変位が制限される。このように、下部ガイドローラ32が底板13bに案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の下方向への変位が制限される。
【0039】
以上のように、ガイド部材30によって油圧シリンダ20の自由端の上下左右方向への変位が制限される。そのため、ワイヤロープ26による圧縮力に起因する油圧シリンダ20の曲がりや座屈を防止できる。
【0040】
側部ガイド板31が第1傾斜部132に案内されるのみで、油圧シリンダ20の自由端の左右方向への変位のみならず、上方向への変位も制限できる。そのため、油圧シリンダ20の自由端の上方向への変位を制限する部材を別途設ける必要がない。その分、外殻体10内部の上部空間を確保でき、外殻体10の内部に広い空間を確保できる。この空間に他のシリンダや電気配線、油圧ホースなどを配置することができる。
【0041】
また、油圧シリンダ20の自由端の上方向への変位を制限する部材を別途設ける必要がないため、部品点数を削減でき、製造コストを低減できる。
【0042】
座屈荷重により側板13cが内側に変形しようとしても、側板13cは内側から側部ガイド板31により支えられているため、その変形を抑制できる。これにより、側板13cの座屈強度がさらに高くなる。
【0043】
〔第2実施形態〕
つぎに、本発明の第2実施形態に係る伸縮ブーム2を説明する。
図3に示すように、本実施形態の伸縮ブーム2は、第1実施形態の伸縮ブーム1に比べて、基端ブーム11、第2ブーム12、および先端ブーム13の断面形状が異なる。その余の構成は第1実施形態と同様であるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
先端ブーム13の側板13cは、軸方向と平行な線に沿って複数回(2回)折り曲げられた折り曲げ構造であり、上部が下部に対して内側に配置された断面形状を有している。より詳細には、側板13cは、その折り線を介して連接された複数の短尺部131〜133からなる。短尺部131〜133は、第1垂直部131、第1傾斜部132、および第2垂直部133からなる。第1垂直部131は、その下縁が底板13bの側縁に連接し、上下に沿って垂直に配置されている。第1傾斜部132は、その下縁が第1垂直部131の上縁に連接し、内面が斜め下方を向くように上下方向に対して傾斜して配置されている。第2垂直部133は、その下縁が第1傾斜部132の上縁に連接し、上下に沿って垂直に配置されている。第2垂直部133の上縁は天板13aの側縁に連接している。
【0045】
基端ブーム11および第2ブーム12の断面形状は、先端ブーム13の断面形状と相似形であり、それらの側板11c、12cも上部が下部に対して内側に配置された断面形状を有している。
【0046】
本実施形態のガイド部材30は、第1実施形態のガイド部材30と同様の構成であり、一対の側部ガイド板31、31と、下部ガイドローラ32とからなる。その作用および効果は、第1実施形態のガイド部材30と同様である。
【0047】
〔第3実施形態〕
つぎに、本発明の第3実施形態に係る伸縮ブーム3を説明する。
図4に示すように、本実施形態の伸縮ブーム3は、第1実施形態の伸縮ブーム1に比べて、基端ブーム11、第2ブーム12、および先端ブーム13の断面形状が異なる。
【0048】
先端ブーム13の側板13cは、軸方向と平行な線に沿って複数回(2回)折り曲げられた折り曲げ構造であり、下部が上部に対して内側に配置された断面形状を有している。より詳細には、側板13cは、その折り線を介して連接された複数の短尺部133〜135からなる。短尺部133〜135は、第2垂直部133、第2傾斜部134、および第3垂直部135からなる。第2垂直部133は、その下縁が底板13bの側縁に連接し、上下に沿って垂直に配置されている。第2傾斜部134は、その下縁が第2垂直部133の上縁に連接し、内面が斜め上方を向くように上下方向に対して傾斜して配置されている。第3垂直部135は、その下縁が第2傾斜部134の上縁に連接し、上下に沿って垂直に配置されている。第3垂直部135の上縁は天板13aの側縁に連接している。
【0049】
基端ブーム11および第2ブーム12の断面形状は、先端ブーム13の断面形状と相似形であり、それらの側板11c、12cも下部が上部に対して内側に配置された断面形状を有している。
【0050】
本実施形態のガイド部材30は、一対の側部ガイド板31、31と、上部ガイドローラ33とからなる。なお、上部ガイドローラ33は特許請求の範囲に記載の「上部ガイド部材」に相当する。
【0051】
側部ガイド板31は、斜め下方を向いた傾斜面314を有する楔形であり、その傾斜面314が第2傾斜部134の内面と平行に対向して配置されている。側部ガイド板31と第2傾斜部134との間には若干のクリアランスが設けられている。
【0052】
油圧シリンダ20の自由端が左右方向に変位すると、側部ガイド板31の傾斜面314と第2傾斜部134とが接触し、その変位が制限される。また、油圧シリンダ20の自由端が下方向に変位しても、側部ガイド板31の傾斜面314と第2傾斜部134とが接触し、その変位が制限される。このように、側部ガイド板31が第2傾斜部134に案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の左右方向への変位が制限されるとともに、下方向への変位が制限される。
【0053】
上部ガイドローラ33は天板13aの内面を転動するローラである。油圧シリンダ20の自由端が上方向に変位しようとすると、天板13aから上部ガイドローラ33に反力が作用し、その変位が制限される。このように、上部ガイドローラ33が天板13aに案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の上方向への変位が制限される。
【0054】
以上のように、ガイド部材30によって油圧シリンダ20の自由端の上下左右方向への変位が制限される。そのため、ワイヤロープ26による圧縮力に起因する油圧シリンダ20の曲がりや座屈を防止できる。
【0055】
側部ガイド板31により油圧シリンダ20の自由端の左右方向への変位のみならず、下方向への変位も制限できる。そのため、油圧シリンダ20の自由端の下方向への変位を制限する部材を別途設ける必要がない。その分、外殻体10内部の下部空間を確保でき、外殻体10の内部に広い空間を確保できる。この空間に他のシリンダや電気配線、油圧ホースなどを配置することができる。
【0056】
〔第4実施形態〕
つぎに、本発明の第4実施形態に係る伸縮ブーム4を説明する。
図5に示すように、本実施形態の伸縮ブーム4は、第1実施形態の伸縮ブーム1において、ガイド部材30の構成が異なる実施形態である。その余の構成は第1実施形態と同様であるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
本実施形態のガイド部材30は、一対の側部ガイド板31、31からなる。側部ガイド板31は側板13cの窪み部分に嵌合する溝を有する。側部ガイド板31の溝は、第1傾斜面312、第2傾斜面314および垂直面313からなる。第1傾斜面312は斜め上方を向いており、第1傾斜部132の内面と平行に対向している。第2傾斜面314は斜め下方を向いており、第2傾斜部134の内面と平行に対向している。垂直面313は第2垂直部133の内面と平行に対向している。側部ガイド板31と側板13cとの間には若干のクリアランスが設けられている。
【0058】
油圧シリンダ20の自由端が左右方向に変位すると、側部ガイド板31の垂直面313と第2垂直部133とが接触し、その変位が制限される。また、油圧シリンダ20の自由端が上方向に変位すると、側部ガイド板31の第1傾斜面312と第1傾斜部132とが接触し、その変位が制限される。さらに、油圧シリンダ20の自由端が下方向に変位すると、側部ガイド板31の第2傾斜面314と第2傾斜部134とが接触し、その変位が制限される。このように、側部ガイド板31が第1傾斜部132および第2傾斜部134に案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の上下左右方向への変位が制限される。
【0059】
以上のように、ガイド部材30によって油圧シリンダ20の自由端の上下左右方向への変位が制限される。そのため、ワイヤロープ26による圧縮力に起因する油圧シリンダ20の曲がりや座屈を防止できる。
【0060】
側部ガイド板31により油圧シリンダ20の自由端の左右方向への変位のみならず、上下方向への変位も制限できる。そのため、油圧シリンダ20の自由端の上方向および下方向への変位を制限する部材を別途設ける必要がない。その分、外殻体10内部の上部空間および下部空間を確保でき、外殻体10の内部に広い空間を確保できる。この空間に他のシリンダや電気配線、油圧ホースなどを配置することができる。
【0061】
〔第5実施形態〕
つぎに、本発明の第5実施形態に係る伸縮ブーム5を説明する。
図6に示すように、本実施形態の伸縮ブーム5は、第1実施形態の伸縮ブーム1に比べて、基端ブーム11、第2ブーム12、および先端ブーム13の断面形状が異なる。
【0062】
先端ブーム13の側板13cは、軸方向と平行な線に沿って複数回(4回)折り曲げられた折り曲げ構造であり、略中央部分が外側に突出した断面形状を有している。より詳細には、側板13cは、その折り線を介して連接された複数の短尺部131〜135からなる。短尺部131〜135は、第1垂直部131、第2傾斜部134、第2垂直部133、第1傾斜部132、および第3垂直部135からなる。第1垂直部131は、その下縁が底板13bの側縁に連接し、上下に沿って垂直に配置されている。第2傾斜部134は、その下縁が第1垂直部131の上縁に連接し、内面が斜め上方を向くように上下方向に対して傾斜して配置されている。第2垂直部133は、その下縁が第2傾斜部134の上縁に連接し、上下に沿って垂直に配置されている。第1傾斜部132は、その下縁が第2垂直部133の上縁に連接し、内面が斜め下方を向くように上下方向に対して傾斜して配置されている。第3垂直部135は、その下縁が第1傾斜部132の上縁に連接し、上下に沿って垂直に配置されている。第3垂直部135の上縁は天板13aの側縁に連接している。
【0063】
基端ブーム11および第2ブーム12の断面形状は、先端ブーム13の断面形状と相似形であり、それらの側板11c、12cも略中央部分が外側に突出した断面形状を有している。
【0064】
本実施形態のガイド部材30は、一対の側部ガイド板31、31からなる。側部ガイド板31は側板13cの突出部分に嵌合する突条を有する。側部ガイド板31の突条は、第1傾斜面312、第2傾斜面314および垂直面313からなる。第1傾斜面312は斜め上方を向いており、第1傾斜部132の内面と平行に対向している。第2傾斜面314は斜め下方を向いており、第2傾斜部134の内面と平行に対向している。垂直面313は第2垂直部133の内面と平行に対向している。側部ガイド板31と側板13cとの間には若干のクリアランスが設けられている。
【0065】
側部ガイド板31が第1傾斜部132および第2傾斜部134に案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の上下左右方向への変位が制限される。油圧シリンダ20の自由端の上方向および下方向への変位を制限する部材を別途設ける必要がない。その分、外殻体10内部の上部空間および下部空間を確保でき、外殻体10の内部に広い空間を確保できる。
【0066】
〔第6実施形態〕
つぎに、本発明の第6実施形態に係る伸縮ブーム6を説明する。
図7に示すように、本実施形態の伸縮ブーム6は、第1実施形態の伸縮ブーム1に比べて、基端ブーム11、第2ブーム12、および先端ブーム13の断面形状が異なる。
【0067】
先端ブーム13の側板13cは、略中央部分において軸方向と平行な線に沿って折り曲げられた折り曲げ構造であり、外側に突出したくの字形の断面形状を有している。より詳細には、側板13cは、その折り線を介して連接された複数の短尺部132、134からなる。短尺部132、134は、第2傾斜部134および第1傾斜部132からなる。第2傾斜部134は、その下縁が底板13bの側縁に連接し、内面が斜め上方を向くように上下方向に対して傾斜して配置されている。第1傾斜部132は、その下縁が第2傾斜部134の上縁に連接し、内面が斜め下方を向くように上下方向に対して傾斜して配置されている。第1傾斜部132の上縁は天板13aの側縁に連接している。
【0068】
基端ブーム11および第2ブーム12の断面形状は、先端ブーム13の断面形状と相似形であり、それらの側板11c、12cも外側に突出したくの字形の断面形状を有している。
【0069】
本実施形態のガイド部材30は、一対の側部ガイド板31、31からなる。側部ガイド板31は側板13cの突出部分に嵌合する矢じり形である。側部ガイド板31は、第1傾斜面312および第2傾斜面314を有する。第1傾斜面312は斜め上方を向いており、第1傾斜部132の内面と平行に対向している。第2傾斜面314は斜め下方を向いており、第2傾斜部134の内面と平行に対向している。側部ガイド板31と側板13cとの間には若干のクリアランスが設けられている。
【0070】
側部ガイド板31が第1傾斜部132および第2傾斜部134に案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の上下左右方向への変位が制限される。油圧シリンダ20の自由端の上方向および下方向への変位を制限する部材を別途設ける必要がない。その分、外殻体10内部の上部空間および下部空間を確保でき、外殻体10の内部に広い空間を確保できる。
【0071】
〔第7実施形態〕
つぎに、本発明の第7実施形態に係る伸縮ブーム7を説明する。
図8(A)に示すように、本実施形態の伸縮ブーム7は、第1実施形態の伸縮ブーム1に比べて、基端ブーム11、第2ブーム12、および先端ブーム13の断面形状が異なる。
【0072】
先端ブーム13の側板13cは、略中央部分において軸方向と平行な線に沿って折り曲げられた折り曲げ構造であり、内側に窪んだくの字形の断面形状を有している。より詳細には、側板13cは、その折り線を介して連接された複数の短尺部132、134からなる。短尺部132、134は、第1傾斜部132および第2傾斜部134からなる。第1傾斜部132は、その下縁が底板13bの側縁に連接し、内面が斜め下方を向くように上下方向に対して傾斜して配置されている。第2傾斜部134は、その下縁が第1傾斜部132の上縁に連接し、内面が斜め上方を向くように上下方向に対して傾斜して配置されている。第2傾斜部134の上縁は天板13aの側縁に連接している。
【0073】
基端ブーム11および第2ブーム12の断面形状は、先端ブーム13の断面形状と相似形であり、それらの側板11c、12cも内側に窪んだくの字形の断面形状を有している。
【0074】
図8(A)に示す例では、ガイド部材30は、一対の側部ガイド板31、31と、下部ガイドローラ32とからなる。側部ガイド板31が第1傾斜部132に案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の左右方向への変位が制限されるとともに、上方向への変位が制限される。下部ガイドローラ32が底板13bに案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の下方向への変位が制限される。油圧シリンダ20の自由端の上方向への変位を制限する部材を別途設ける必要がない。その分、外殻体10内部の上部空間を確保できる。
【0075】
図8(B)に示す例では、ガイド部材30は、一対の側部ガイド板31、31と、上部ガイドローラ33とからなる。側部ガイド板31が第2傾斜部134に案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の左右方向への変位が制限されるとともに、下方向への変位が制限される。上部ガイドローラ33が天板13aに案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の上方向への変位が制限される。油圧シリンダ20の自由端の下方向への変位を制限する部材を別途設ける必要がない。その分、外殻体10内部の下部空間を確保できる。
【0076】
図8(C)に示す例では、ガイド部材30は、一対の側部ガイド板31、31からなる。側部ガイド板31が第1傾斜部132および第2傾斜部134に案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の上下左右方向への変位が制限される。油圧シリンダ20の自由端の上方向および下方向への変位を制限する部材を別途設ける必要がない。その分、外殻体10内部の上部空間および下部空間を確保できる。
【0077】
〔第8実施形態〕
つぎに、本発明の第8実施形態に係る伸縮ブーム8を説明する。
図9(A)に示すように、本実施形態の伸縮ブーム8は、第1実施形態の伸縮ブーム1に比べて、基端ブーム11、第2ブーム12、および先端ブーム13の断面形状が異なる。
【0078】
先端ブーム13の側板13cは、第1実施形態の側板13cにおいて、第1傾斜部132および第2傾斜部134に代えて、それぞれ第1水平部136および第2水平部137とした構成である。第1水平部136は、第1垂直部131と第2垂直部133との間に設けられ、内面が下方を向くように左右に沿って水平に配置されている。第2水平部137は、第2垂直部133と第3垂直部135との間に設けられ、内面が上方を向くように左右に沿って水平に配置されている。基端ブーム11および第2ブーム12の断面形状は、先端ブーム13の断面形状と相似形である。
【0079】
図9(A)に示す例では、ガイド部材30は、一対の側部ガイド板31、31と、下部ガイドローラ32とからなる。側部ガイド板31が第1水平部136および第1垂直部131に案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の左右方向への変位が制限されるとともに、上方向への変位が制限される。下部ガイドローラ32が底板13bに案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の下方向への変位が制限される。油圧シリンダ20の自由端の上方向への変位を制限する部材を別途設ける必要がない。その分、外殻体10内部の上部空間を確保できる。
【0080】
図9(B)に示す例では、ガイド部材30は、一対の側部ガイド板31、31からなる。側部ガイド板31は側板13cの窪み部分に嵌合する溝を有する。側部ガイド板31が第2垂直部133に案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の左右方向への変位が制限される。側部ガイド板31が第1水平部136および第2水平部137に案内されることにより、油圧シリンダ20の自由端の上下方向への変位が制限される。油圧シリンダ20の自由端の上方向および下方向への変位を制限する部材を別途設ける必要がない。その分、外殻体10の内部に広い空間を確保できる。
【0081】
〔第9実施形態〕
つぎに、本発明の第9実施形態に係る伸縮ブーム9を説明する。
図10に示すように、本実施形態の伸縮ブーム9は、基端ブーム11と、第2ブーム12と、第3ブーム13と、先端ブーム14とを備えた4段式である。第1実施形態の伸縮ブーム1と同様に、外殻体10の内部には、油圧シリンダ20とワイヤロープ26とが挿入されており、油圧シリンダ20の伸長にともない、基端ブーム11に対して第2ブーム12および第3ブーム13が伸長する。なお、説明の便宜のため、油圧シリンダ20およびワイヤロープ26は図示省略する。
【0082】
本実施形態では、先端ブーム14を伸長させるために、ダミーロッド40が設けられている。ダミーロッド40は外殻体10の内部に挿入されている。ダミーロッド40の一端は第2ブーム12の基端部に固定されている。ダミーロッド40の他端はどこにも固定されていない。すなわち、ダミーロッド40の一端は外殻体10に固定された固定端であり、他端は自由端である。
【0083】
ダミーロッド40の自由端にはシーブ45が設けられている。ワイヤロープ46は、シーブ45に巻き掛けられており、その一端は第2ブーム12に固定され、他端は先端ブーム14に固定されている。
【0084】
油圧シリンダ20の伸長にともない、第3ブーム13が第2ブーム12に対して移動する。これにともない、ダミーロッド40が第2ブーム12に対して移動する。そうすると、ワイヤロープ46の先端ブーム固定端がシーブ45に引き付けられる。これにより、先端ブーム14が基端ブーム11に対して先端側に移動する。
【0085】
このダミーロッド40の自由端にガイド部材30を設けてもよい。すなわち、特許請求の範囲に記載の「棒材」には、油圧シリンダのみならず、ダミーロッドも含まれる。なお、ダミーロッドとして、チューブとロッドとからなるシリンダを用いてもよい。
【0086】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、側部ガイド部材をガイド板としたが、これに代えてガイドローラとしてもよい。また、上記実施形態では、下部ガイド部材および上部ガイド部材をガイドローラとしたが、これに代えてガイド板としてもよい。
【0087】
本発明に係る伸縮部材は、伸縮ブームのみならず、移動式クレーンや高所作業車などに設けられるアウトリガに適用してもよい。