【実施例】
【0081】
〔実施例1〕中空部7を有するシート状伸縮性構造体の作製(I)
(実施例1−1)
75重量部のエポキシ樹脂(三菱化学製「jER1003」)と、100重量部のポリロタキサン(アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製「SH3400P」)と、45重量部の架橋剤(イソシアネート、DIC製「DN―950」)と、1.1重量部のイミダゾール系硬化促進剤(四国化成製「2E4MZ」、2エチル4メチルイミダゾール)とを均一に混合する。この混合物を100℃にて10分間加熱することにより厚み50μmの伸縮性樹脂シート2を2枚作製する。その一方を、凸形状を有する金型により成型し、凹型に加工された伸縮性樹脂シート2Bを作製し、もう一方はそのまま平坦な伸縮性樹脂シート2Fとして用いる。そして、シート2B、2Fを貼り合せて170℃で1時間加熱することにより中空部7を有するシート状伸縮性構造体(伸縮性:130%)を作製している(
図3〜
図5参照)。
【0082】
(実施例1−2)
100重量部のシリコーンエラストマー「Silpot184」(東レダウ社製)と、10重量部のシリコーン樹脂触媒「silpot184cat」(東レダウ社製)とを均一に混合する。この混合樹脂を、100℃で5分間加熱することにより、厚み50μmの伸縮性樹脂シート2(2F)を1枚作製する。また、同様の混合樹脂を実施例1−1と同様の凸形状を有する金型に塗布し、100℃にて1時間加熱した後、金型から離脱させることにより凹部を有するシート2Bを作製する。そして、シート2B、2Fを貼り合せて100℃にて1時間加熱することにより中空部7を有するシート状伸縮性構造体(伸縮性:160%)を作製している。
【0083】
(実施例1−3)
100重量部のウレタン樹脂(「HUX561」(アデカ社製))を、実施例1−2と同様に凸形状を有する金型に塗布し、100℃で1時間加熱した後、金型から離脱させることにより凹部を有するシート2Bを作製する。さらに、HUX561をPETフィルム(支持体)に塗布し、上述のシート2Bの凸部が塗布樹脂に対向するように重ね合わせた状態で、100℃で1時間加熱することで、中空部7を有するシート状伸縮性構造体(伸縮性:400%)を作製している。
【0084】
(実施例1−4)
100重量部のエチレンオキサイド付加型ヒドロキシフェニルフルオレン型エポキシ樹脂(「EG―280」(大阪ガスケミカル社製))と、45重量部の架橋剤(イソシアネート、DIC製「DN950」)と、1.1重量部のイミダゾール系硬化促進剤(四国化成製「2E4MZ」)、50重量部の酸無水物硬化剤(「YH306」(三菱化学製))とを均一に混合する。そして、実施例1−1と同様にしてシート状伸縮性構造体(伸縮性:400%)を作製している。
【0085】
〔実施例2〕中空部7を有するシート状伸縮性構造体の作製(II)
(実施例2−1)
実施例1−1と同じシート2を2枚用意し、その一方を30μ角のエンボス形状を有する金型により成型し、凸型のエンボス加工面を有する伸縮性樹脂シート2Cを作製する(
図8、
図9参照)。もう一方はそのまま平坦なシート2Fとして用いる。そして、シート2C、2Fを貼り合せて170℃で1時間加熱することにより中空部7を有するシート状伸縮性構造体(伸縮性:120%)を作製している。
【0086】
(実施例2−2)
実施例1−2と同様の配合成分を均一に混合した後、100℃5分間加熱することにより、厚み50μmのシート2Fを1枚作製する。また、同様の混合樹脂を実施例2−1と同様のエンボス形状金型に塗布し、100℃で1時間加熱した後、金型から離脱させることにより凸型のエンボス加工面を有するシート2Cを作製する。そしてシート2C、2Fを貼り合せて100℃で1時間加熱することにより中空部7を有するシート状伸縮性構造体(伸縮性:160%)を作製している。
【0087】
(実施例2−3)
実施例1−3と同様の配合成分を均一に混合した後、実施例2−2と同様にエンボス形状金型に塗布し、100℃で1時間加熱した後、金型から離脱させることにより凸型のエンボス加工面を有するシート2Cを作製する。さらに、HUX561をPETフィルム(支持体)に塗布し、上述のシート2Cのエンボス面を塗布樹脂に対向するようにして重ね合わせた状態で、100℃で1時間加熱する。このようにして、中空部7を有するシート状伸縮性構造体(伸縮性:400%)を作製している。
【0088】
(実施例2−4)
実施例1−4と同様の配合成分を均一に混合した後、実施例2−1と同様にしてシート状伸縮性構造体(伸縮性:400%)を作製している。
【0089】
〔実施例3〕中空部7を有するシート状伸縮性構造体の作製(III)
(実施例3−1)
実施例1−1と同様の配合成分を均一に混合し、100℃で10分間加熱することにより厚み50μmのシート2(2F)を2枚作製する。その一方に直径10μmのガラスビーズスペーサーを適当な間隔に設置されるように散布する(
図12参照)。ガラスビーズスペーサーを挟むように、もう一方のシート2Fを配置する。この状態で170℃にて1時間加熱することにより中空部7を有するシート状伸縮性構造体(伸縮性:150%)を作製している。
【0090】
(実施例3−2)
実施例1−2と同様の配合成分を均一に混合した後、100℃で5分間加熱することにより、厚み50μmのシート2(2F)を2枚作製する。その一方に直径10μmのガラスビーズスペーサーを適当な間隔に設置されるように散布する。ガラスビーズスペーサーを挟むように、もう一方のシート2Fを配置する。この状態で100℃にて1時間加熱することにより中空部7を有するシート状伸縮性構造体(伸縮性:200%)を作製している。
【0091】
(実施例3−3)
実施例1−3と同様の配合成分をPETフィルム(支持体)に塗布し、直径20μmのガラスビーズスペーサーを適当な間隔に設置されるように散布する。この状態で、100℃で1時間加熱することにより、ガラスビーズスペーサーの一部が埋め込まれて表面に付着した伸縮性樹脂シート2Dを作製する。そしてシート2Dのガラスビーズ面に対し、PETフィルムを基材としてその表面に塗布されたHUX561を重ね合わせる。この状態で100℃にて1時間加熱することで、中空部7を有するシート状伸縮性構造体(伸縮性:500%)を作製している。
【0092】
(実施例3−4)
実施例1−4と同様の配合成分を均一に混合した後、実施例3−1と同様にしてシート状伸縮性構造体(伸縮性:500%)を作製している。
【0093】
(実施例3−5)
100重量部のエポキシ樹脂(三菱化学製「jER1003」)と、100重量部のポリロタキサン(アドバンス・ソフトマテリアルズ社製「SH3400P」)と、45重量部の架橋剤(イソシアネート、DIC製「DN950」)と、1.1重量部のイミダゾール系硬化促進剤(四国化成製「2E4MZ」、2エチル4メチルイミダゾール)と、ガラスフィラー(日本フリット株式会社製「CF0111−B15C」)を均一に混合する。以下、実施例1−1と同様にしてシート状伸縮性構造体(伸縮性:90%)を作製している。
【0094】
〔比較例〕
(比較例1−1)
100重量部のエポキシ樹脂(三菱化学製「jER1003」)と、5重量部のイミダゾール系硬化促進剤(四国化成製「2E4MZ」、2エチル4メチルイミダゾール)とを均一に混合した後、実施例1−1と同様にして中空部を有するシート状の構造体(伸縮性:5%未満)を作製している。
【0095】
(比較例1−2)
比較例1−1で使用した配合成分を均一に混合した後、実施例2−1と同様にして中空部を有するシート状の構造体(伸縮性:5%未満)を作製している。
【0096】
(比較例1−3)
比較例1−1で使用した配合成分を均一に混合した後、実施例3−1と同様にして中空部を有するシート状の構造体(伸縮性:5%未満)を作製している。
【0097】
(比較例2−1)
厚み50μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(帝人フィルム社製)を、実施例1−1の凸形状を有する金型を用いて200℃1時間でモールド成型し、凹部を有するシートを作製する。一方、平坦なPENフィルムに実施例1−1で用いた混合樹脂組成物を厚み10μmの接着層として積層する。そして、上述の凹部を有するシートをこの接着層に貼り合せて熱硬化させることで中空部を有するシート状の構造体(伸縮性:10%未満)を作製している。
【0098】
(比較例2−2)
比較例2−1と同様の厚み50μmのPENフィルムを実施例2−1のエンボス形状金型を用いて200℃1時間でモールド成型し、凸型のエンボス形状を有するシートを作製する。一方、平坦なPENフィルムに実施例1−1で用いた混合樹脂組成物を厚み20μmの接着層として積層する。そして、上述のエンボス加工シートをこの接着層に貼り合せて熱硬化させることで中空部を有するシート状の構造体(伸縮性:10%未満)を作製している。しかしながら、エンボス加工シートのエンボス面の高さは10〜30μmでバラつき、さらにはカールが発生している。
【0099】
(比較例2−3)
比較例2−1と同様の厚み50μmのPENフィルムの表面に実施例1−1で用いた混合樹脂組成物を厚み10μmの接着層として積層する。そして、直径20μmのガラスビーズスペーサーを適当な間隔に設置されるように接着層の上に散布し、ガラスビーズスペーサーを挟むように、もう一枚のPENフィルムを配置する。この状態で170℃にて1時間加熱することにより中空部を有するシート状構造体を作製している。
【0100】
〔評価:伸縮性の確認〕
上記実施例及び比較例で作製したそれぞれのシート状構造体について、その構造体の両端を掴み、10%及び30%伸張させて、その後、伸張応力を解放して復元させた際における構造体の状態を確認している。その結果を、以下の基準で評価している。
【0101】
伸張時に構造体の一部もしくは全部が壊れることなく、元の状態に復元する場合、OKと評価する。伸張時に構造体の一部もしくは全部が壊れることないが、元の状態に復元しない場合、NGと評価する。伸張時に構造体の一部もしくは全部が壊れる場合、破壊NGと評価する。結果を(表1)に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
(表1)から明らかなように、実施例ではいずれも30%伸長の場合でもOKと評価されている。これに対し、比較例1−1〜1−3では破壊NGと評価されている。また、部分的に実施例と同じ材料を用いた比較例2−1〜2−3では破壊には至らないものの、NGと評価されている。このように、伸縮性のある複数層の伸縮性樹脂シート2を用いた場合にのみ、伸張時に構造体の一部もしくは全部が壊れることなく、元の状態に復元する。
【0104】
〔実施例4〕電気泳動溶液を用いた伸縮性表示用部材の作製
(実施例4−1)
カーボンナノチューブSWCNT「IsoNanotubes−M」(NanoIntegris社製)を0.1g秤量し、5重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液500gに入れ、超音波で24時間分散させて濃度0.02重量%のカーボンナノチューブ(CNT)分散水溶液を調製する。
【0105】
さらに、実施例1−1で作製した中空部7を有するシート状伸縮性構造体の両側表面にこのCNT分散水溶液を塗布し、120℃で30分乾燥し溶媒を除去することにより構造体両側表面に導電層を形成する。
【0106】
次に黒色の正帯電粒子(カーボンブラック、三菱化学社製)と、白色の負帯電粒子(酸化チタン、テイカ社製)と、分散剤(Solsperse17000、ルーブリゾール社製)と、電荷調整剤(SPAN−85、試薬)とを高沸点溶媒(Isoper−M、丸善石油化学社製)に投入して超音波分散させることにより電気泳動溶液を作製する。この電気泳動溶液を上述の導電層付き構造体の中空部7にシリンジを用いて注入する。
【0107】
最後に、UV接着剤を用いて注入口を封止し、表示素子部材を作製している。
【0108】
(実施例4−2)
中空部7を有するシート状伸縮性構造体として、実施例1−2で作製した構造体を用いる以外は、実施例4−1と同様にして表示素子部材を作製している。
【0109】
(実施例4−3)
中空部7を有するシート状伸縮性構造体として、実施例1−3で作製した構造体を用いる以外は、実施例4−1と同様にして表示素子部材を作製している。
【0110】
(実施例4−4)
中空部7を有するシート状伸縮性構造体として、実施例1−4で作製した構造体を用いる以外は、実施例4−1と同様にして表示素子部材を作製している。
【0111】
(実施例4−5)
中空部7を有するシート状伸縮性構造体として、実施例2−1で作製した構造体を用いる以外は、実施例4−1と同様にして表示素子部材を作製している。
【0112】
(実施例4−6)
中空部7を有するシート状伸縮性構造体として、実施例2−2で作製した構造体を用いる以外は、実施例4−1と同様にして表示素子部材を作製している。
【0113】
(実施例4−7)
中空部7を有するシート状伸縮性構造体として、実施例2−3で作製した構造体を用いる以外は、実施例4−1と同様にして表示素子部材を作製している。
【0114】
(実施例4−8)
中空部7を有するシート状伸縮性構造体として、実施例2−4で作製した構造体を用いる以外は、実施例4−1と同様にして表示素子部材を作製している。
【0115】
(実施例4−9)
中空部7を有するシート状伸縮性構造体として、実施例3−5で作製した構造体を用いる以外は、実施例4−1と同様にして表示素子部材を作製している。
【0116】
さらに、比較試験として、比較例1−1〜3及び比較例2−1〜3で作製したシート状構造体に、実施例4−1と同様の方法で電気泳動溶液を封入した表示素子部材を作製している。しかしながら、前述の(表1)で示した伸縮性能と同様に破壊もしくは非復元であることを確認している。
【0117】
〔評価:表示性の確認〕
実施例4−1〜9で作製した表示素子部材の導電層に電圧印加することにより、マイナス側が白色、プラス側が黒色表示することを確認している。また10%及び30%伸張させた際にも同様の表示を確認し、さらに、伸張状態から復元した後にもこれらの表示素子部材は壊れることなく同様の表示をすることが確認している。
【0118】
さらに導電層の一部をレーザーエッチングによりパターニングすることにより、
図13A、
図13Bに示すような表示をさせることができる。
図13Aでは表面にマイナス電位を、裏面にプラス電位をそれぞれ−15V、+15V印加した際の白色表示を行っている様子を示している。これに対して印加する電圧の極性を反転させ表面にプラス電位、裏面にマイナス電位をそれぞれ+15V、−15V印加すると、
図13Bに示すように、導電面は黒色表示となりレーザーでパターニングされている文字が浮かび上がる。
【0119】
〔実施例5〕コレステリック液晶を用いた伸縮性表示用部材の作製
(実施例5−1)
実施例3−1で作製した中空部7を有したシート状の構造体の両側表面に、実施例4−1と同様の方法で作製したCNT分散水溶液を塗布する。この構造体を、120℃で30分乾燥し溶媒を除去することにより構造体両側表面に導電層を形成する。
【0120】
次に、コレステリック液晶(RDP−A3435CH1、DIC社製)を導電層付き構造体の中空部7にシリンジを用いて注入する。注入口の封止にはUV接着剤を用いて、表示素子部材を作製している。
【0121】
(実施例5−2)
中空部7を有するシート状伸縮性構造体として、実施例3−2で作製した構造体を用いる以外は、実施例5−1と同様にして表示素子部材を作製している。
【0122】
(実施例5−3)
中空部7を有するシート状伸縮性構造体として、実施例3−3で作製した構造体を用いる以外は、実施例5−1と同様にして表示素子部材を作製している。
【0123】
(実施例5−4)
中空部7を有するシート状伸縮性構造体として、実施例3−4で作製した構造体を用いる以外は、実施例5−1と同様にして表示素子部材を作製している。
【0124】
〔評価:表示性の確認〕
実施例5−1〜4で作製した表示部材の導電層に電圧印加することにより、プラス側が白色、マイナス側が黒色表示することを確認した。また10%及び30%伸張させた際にも同様の表示を確認している。また、伸張状態から復元した後にもこれらの表示素子部材は壊れることなく同様の表示をすることを確認している。
【0125】
〔実施例6〕電子部品を有する伸縮性電子回路部材の作製
図6に示す作製手順にしたがって、実施例6における、電子部品を有する伸縮性電子回路部材を作製している。
【0126】
(実施例6−1)
実施例1−1と同様の方法で作製した一枚の平坦な伸縮性樹脂シート2F(厚み:50μm)と、凹部分の高さが200μmとなるように凸形状を有する金型で成型した凹部を有する伸縮性樹脂シート2Eとを作製する。
【0127】
一方、ウレタン樹脂(「HUX561」(アデカ社製))に、直径2.1μmの銀粒子を90重量%充填した伸縮性導電ペーストを調製する。そして、
図6に示すように、シート2Eの表面上に配線9Aおよびランド9Bを形成する。そして、LED10を中空部7に設置した後にランド9BとLED10とを導電性接着剤で接続する。
【0128】
そして、シート2Fとシート2Bとを貼り合せて170℃1時間加熱してLED10を封止した電子回路部材を作製する。最後に、レーザーで穴あけ加工をした後、前述の伸縮性導電ペーストを用いてビア12および配線9Aを印刷し、配線9Aを外部電源と接続する。
【0129】
(実施例6−2)
中空部7を有するシート状伸縮性構造体の材料、作製方法として、実施例1−2の材料、作製方法に変更した以外は、実施例6−1と同様にして電子回路部材を作製している。
【0130】
(実施例6−3)
中空部7を有するシート状伸縮性構造体の材料、作製方法として、実施例1−3の材料、作製方法に変更した以外は、実施例6−1と同様にして電子回路部材を作製している。
【0131】
(実施例6−4)
中空部7を有するシート状伸縮性構造体の材料、作製方法として、実施例1−4の材料、作製方法に変更した以外は、実施例6−1と同様にして電子回路部材を作製している。
【0132】
〔評価:電子回路部材の動作確認〕
実施例6−1〜4で作製した電子回路部材の回路に電流印加することにより、LED10が動作することを確認している。また10%及び30%伸張させた際にも同様の動作を確認し、伸張状態から復元した後にもこれらの電子回路部材は壊れることなく同様に動作することを確認している。
【0133】
以上より、本実施の形態による伸縮性構造体は、様々なエレクトロニクス用部材として有用であることがわかる。
【0134】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の説明に先立ち、従来の技術における問題点を簡単に説明する。熱硬化性樹脂は、その優れた耐熱性、耐薬品性、成形性、絶縁信頼性等により電子材料用途や光学材料など幅広い分野で使用されている。特に、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂が様々な用途に使用されることが多い。しかしながら、エポキシ樹脂は上記の特性に優れている反面、一般的には硬くて柔軟性に乏しいことも知られている。そのため、外部からの応力や熱ストレスにより、変形したり破壊されたりすることがある。
【0135】
より柔軟性に優れた材料としては、シリコーン樹脂やウレタン樹脂のほか、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂あるいは様々なゴム材料が挙げられる。なお、樹脂材料の柔軟性については、弾性率が低く引張伸びが大きいだけでなく、伸張後の復元性が高いことも、様々な用途で使用するにあたっては必要となる。
【0136】
一方、最近の樹脂材料には、柔軟性と共に応力緩和性が求められている。応力を加えられ変形した際に残留応力が大きいということは、元の形に戻ろうとする力が大きいことを意味している。そのため、残留応力が大きいと部材間の剥離や破壊が起こってしまう。そのため、残留応力が小さくなるように、加えられた応力を低減する、つまり、応力緩和性に優れることもまた必要な特性とされている。
【0137】
しかし、前述の特許文献2、3に記載されているようなウレタン樹脂やシリコーン樹脂は、引張伸びが大きく復元性に優れるが、応力緩和性が低いことが知られている。
【0138】
エレクトロニクス分野において、各部材の特性として、材料の耐熱性や他の部材との密着性が重要である。ウレタン樹脂のような熱可塑樹脂は加熱時に可逆的に溶融することが知られている。またシリコーン樹脂は低い表面張力を有することが知られている。しかし、これら従来の樹脂における、加熱時に溶融する性質、低い表面張力の性質は、いずれも他の部材と十分な密着性を確保するのを困難にするおそれがある。
【0139】
よって、これらの樹脂を用いて作製された表示装置は自由曲面への追従や大きな変形を伴う残留応力に対して、可塑変形や、低い表面張力により剥離や破壊を引き起こしやすい。
【0140】
このような問題は、他のゴム材料でも同様であり、復元性が高い材料では通常は応力緩和性が低い。一方、ポリエチレンや他の熱可塑性材料は、柔軟で引張伸びが大きい特性を活かして様々な分野で使用されている。しかしながら、その引張伸びの弾性領域は数%〜十数%程度であり、降伏点を超えるそれ以上の領域では塑性変形を伴って伸びてしまう。そのため、応力緩和性に優れるものの、伸張後に元の形には戻らない(残留歪みが多い)。
【0141】
これまでにも、樹脂材料について、弾性が低く、伸びが大きいという柔らかさ、あるいは復元性については、様々な研究がなされている。しかしながら、それらの特性と比較すると応力緩和性を大きくすることができるという報告例はほとんどない。これは、応力緩和は、クリープ現象による塑性変形によるものであり、塑性変形が起こると復元しなくなるためと考えられる。
【0142】
以下、本発明に係る実施の形態2について具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。本実施の形態では、引張時の応力緩和性が高く、伸張後の復元性に優れ、柔軟で変形させても復元でき、かつ残留応力による部材の剥離や破壊を極小化でき、密着性に優れる材料について説明する。
【0143】
本実施の形態に係るエレクトロニクス用部材に用いられる樹脂組成物の硬化物である伸縮性樹脂シートは、弾性変形可能で残留歪みが少なく、かつ応力緩和性を有する。すなわち、伸縮性樹脂シートに所定の大きさの変形が与えられた場合に変形を与える応力が時間の経過とともに減少し、かつ応力を0とした場合にほぼ変形前の形状に復元する。
【0144】
このように引張時の応力緩和性が高く、かつ、伸張後の復元性に優れるという特性を両立させることによって、柔軟かつ応力緩和性に優れた材料を提供することができる。
【0145】
本実施の形態において、弾性変形可能で残留歪みが少ないとは、より具体的には、塑性変形がなく、好ましくは残留歪み率が3%以下であることを意味する。また、応力緩和性を有するとは、力(例えば、引張力など)を加えられた時に、残留応力が小さくなるように加えられた応力を低減する性質を有するということを意味する。
【0146】
なお、本実施の形態では、便宜上、伸縮性樹脂シート用樹脂組成物の残留歪みおよび応力緩和性を、後述する伸張−復元試験により測定される応力緩和率Rおよび残留歪み率αによって規定する。
【0147】
好ましくは、本実施の形態の樹脂組成物の硬化物である伸縮性樹脂シートにおいて、応力緩和率Rが20%以上、95%以下、かつ残留歪み率αが0%以上、3%以下であり、より好ましくは、応力緩和率Rが30%以上、60%以下、かつ残留歪み率αが0%以上、1.5%以下である。このような構成により、引張時の応力緩和性が高く、かつ、伸張後の復元性に非常に優れるという特性を合わせ持つ本実施の形態の伸縮性樹脂シート用樹脂組成物をより確実に調製することができる。
【0148】
硬化物がこのような範囲の応力緩和率および残留歪み率を示す樹脂組成物であれば、引張時の応力緩和性が高く、かつ、伸張後の復元性に優れるという特性を併せ持ち、柔軟性かつ応力緩和性に優れた硬化物を得ることができると考えられる。
【0149】
なお、本実施の形態において、伸縮性樹脂シート用樹脂組成物の「硬化物」とは、硬化性の樹脂組成物が、硬化するために十分な熱や光などのエネルギーを与えられて、硬化反応を終了した状態の樹脂を指す。本実施の形態の硬化物に対し、さらに熱を与えても可塑性を示すことが無い。このように硬化物は、耐熱性に優れ、不溶不融である。
【0150】
〔伸張−復元試験〕
本実施の形態で用いられる伸張−復元試験では、伸縮性樹脂シート用樹脂組成物の硬化物である伸縮性樹脂シート片を用いて、ISO3384に準拠した引張−圧縮試験機を用いて、下記条件で伸張行程を行った後に復元行程を行う。そして、下記算出方法によって応力緩和率R及び残留歪み率αを計算する。なお、試験に供する伸縮性樹脂シート片の厚みは50μm、形状はダンベル6号(測定部位幅:4mm、平行部分長さ:25mm)である。引張−圧縮試験機としては、例えば、島津製作所製のオートグラフ(型式:AGS−X))が用いられる。
【0151】
(伸張行程条件)
試験片をつかみ具に取り付けたときに発生するたわみを除去するために、たわみ補正を0.05N以下の力で行う。
【0152】
試験速度:25mm/minで、無伸長の状態から25%伸張させる
温度条件:23℃
伸張・保持条件:25%伸張で、保持時間5分
(復元行程条件)
試験速度:0.1mm/min、引張力が0±0.05Nになるまで
温度条件:23℃
応力緩和率Rの算出方法:伸張行程終了時の引張力を測定し、この引張力を初期引張力F
A0とする。その後、上述の伸張・保持条件で歪量を保持し5分後に引張力を測定する。この引張力をF
A(t5)とする。
【0153】
応力緩和率Rは下記式によって計算する。
【0154】
【数1】
【0155】
残留歪み率αの算出方法:上記復元行程において、引張力が0±0.05Nとなった時点において、歪量の測定を行い、この歪量を残留歪み率αとする。
【0156】
上記伸張−復元試験を行った場合、本実施の形態に係る樹脂組成物の硬化物(後述の実施例7−2の樹脂組成物を硬化した樹脂シート)は、引張力に対し、例えば、
図14に示すグラフの曲線(略直線)のような伸張(歪み)復元挙動を示す。なお、
図14では、縦軸に引張力(試験力)(N/mm
2)、横軸に伸張量(歪み)(%)を表している。ここで示す伸張量とは、伸縮性樹脂シートの実質的な歪量をさす。
【0157】
また、
図14では、比較のために、従来の弾性変形樹脂であるシリコーンフィルム(後述の比較例7−4の樹脂組成物を硬化した樹脂シート)及び塑性変形樹脂であるポリエチレンフィルム(後述の比較例7−5の樹脂組成物を硬化した樹脂シート)を使用して伸張−復元試験を行った場合の樹脂の挙動も示している。いずれの場合も、上部の曲線あるいは略直線は伸張行程時の伸張を、下部の曲線あるいは略直線は復元行程での復元(伸張の戻り)を示している。
【0158】
図14に示すように、本実施の形態の伸縮性樹脂シートは、伸張行程では、引張力に応じて25%まで伸張されそこで5分間保持され、保持されながら応力を緩和する。その後、復元行程では引張力が0±0.05Nになるまで復元される。
【0159】
このような伸張−復元試験を経ても、本実施の形態の伸縮性樹脂シートの残留歪みはほぼ1%程度にまで復元される。すなわち、残留歪み率が非常に小さい。
【0160】
一方、ポリエチレンフィルムでは伸張−復元試験後、残留歪みは8.4%程度にまでにしか低下しない。すなわち、残留歪み率が大きい。また、伸張行程後において5分間の保持を行った際、ポリエチレンフィルムの場合は30%程度応力が緩和している。シリコーンフィルムの場合は、伸張された状態ではほとんど応力が緩和しない。
【0161】
これに対し、本実施の形態の樹脂組成物では約30%応力が緩和している。
【0162】
このように
図14に示されるような本実施の形態の伸縮性樹脂シートが示す挙動をみても、本実施の形態の樹脂組成物の硬化物が、柔軟性に優れ、応力を緩和しながらも伸張後の復元性に非常に優れることがわかる。このような特性は従来の弾性変形樹脂や塑性変形樹脂等には見られない特殊かつ有利なものである。したがって、本実施の形態の伸縮性樹脂シート用樹脂組成物は、たとえば、フレキシブル表示装置などにおいてその特性を発揮し得る。
【0163】
さらに好ましい実施の形態として、未架橋状態の硬化性樹脂成分を含んでいること、並びに、加熱により再溶融または軟化する性質を有し、熱または光による架橋反応によって樹脂が硬化することが望ましい。すなわち、半硬化状態のフィルム状樹脂組成物であることが望ましい。このような構成により、接着性や成形性に優れた樹脂組成物を調製することができる。
【0164】
未架橋状態の硬化性樹脂成分を含むこと、すなわち、反応性の樹脂成分のうち未反応の官能基を有することにより、例えば、積層板や金属、ガラス表面に存在する水酸基等などとの共有結合が形成できる。そのため、それらと樹脂材料との密着力が向上すると考えられる。具体的には、反応性の樹脂成分が有する官能基の一部が架橋しており、その他の大部分が未架橋の状態であることが望ましい。そのような化学構造により、本実施の形態の伸縮性樹脂シート用樹脂組成物を用いて、貼付けや積層の際により扱いやすい半硬化状態の基材やフィルム等を作製することができる。
【0165】
また、加熱により再溶融または軟化する性質を有することにより、本実施の形態の伸縮性樹脂シート用樹脂組成物はモールド成形が可能であり、複雑なさまざまな形状へ成形することができる。より好ましくは、80℃〜150℃の加熱により、溶融粘度が100cps〜100000cpsの粘度となる樹脂組成物であれば、成形性に優れる点で望ましい。さらに、80℃〜130℃の加熱により溶融粘度が500cps〜50000cpsの粘度となる場合には、成形時にボイドを含みにくく充填性により優れる点で好ましい。
【0166】
さらに、伸縮性樹脂シート用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂及び硬化剤を含むことが望ましい。このことにより、伸縮性樹脂シートにおける電気的絶縁性や耐熱性、耐薬品性、靭性に優れるだけでなく、さまざまな樹脂との相溶性が良いことから加工性に優れる。
【0167】
より具体的な例として、例えば、少なくとも(A)ポリロタキサン、(B)熱硬化性樹脂及び(C)硬化剤を含む伸縮性樹脂シート用樹脂組成物が挙げられる。また、必要に応じて上述以外に(D)架橋剤を添加してもよい。以下に、各成分についてより具体的に説明する。
【0168】
(成分A)ポリロタキサン
ポリロタキサンは、環状分子を直鎖状の軸分子が貫通し、環状分子が抜けないように末端を封鎖した化学構造を有する。具体的には、例えば、特許第4482633号に記載されているようなポリロタキサンが挙げられる。
【0169】
本実施の形態において使用できるポリロタキサンとしては、次のような化合物が挙げられる。環状分子に軸分子となる末端官能基を有する分子が串刺し状に包接されている。また、この末端官能基が、環状分子が脱離できなくするのに充分嵩高い封鎖基で化学修飾されている。このような構造を有するものであれば、それぞれを構成する分子の構造、種類、環状分子の包接率、製造方法等は限定されない。
【0170】
例えば、ポリロタキサンが含み得る軸分子の例としては、分子量が1万以上で末端を封鎖基で化学修飾できるものであれば特に制限はない。例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸セルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、デンプン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等共重合体、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアミド、ポリイミド、ポリジエン、ポリシロキサン、ポリ尿素、ポリスルフィド、ポリフォスファゼン、ポリケトン、ポリフェニレン、ポリハロオレフィンとその誘導体等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレングリコールが好適に用いられる。
【0171】
また、ポリロタキサンが含み得る環状分子としては、ポリマー分子を通すことが可能な輪状の分子であって、架橋剤と反応できるように、少なくとも一つの反応基を有する環状分子であれば特に限定はされない。具体的には、例えば、シクロデキストリン類、クラウンエーテル類、クリプタンド類、大環状アミン類、カリックスアレーン類、シクロファン類が挙げられる。これらの中でも、シクロデキストリンや置換されたシクロデキストリン、更に好適には、置換された構造にさらに反応基(官能基)を導入したものが用いられる。
【0172】
ポリロタキサンの環状分子に導入する官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、ビニル基等が好ましく挙げられる。
【0173】
このように環状分子に導入された官能基によって、架橋剤を介して環状分子同士またはポリロタキサンと樹脂とを架橋させることができる。そして、このようにポリロタキサンと繋がった樹脂は、柔軟性を有する。
【0174】
本実施の形態のポリロタキサンにおける末端を封鎖する構造(末端封鎖基)としては、環状分子が抜けない程度の嵩高さを有する構造であれば特に限定はされない。具体的には、例えば、シクロデキストリン基、アダマンタン基、ジニトロフェニル基、トリチル基等、アダマンタン基等が好ましく用いられる。
【0175】
上記の環状分子として用いられるものとしては、その環の中に鎖状ポリマー分子を包接できるものであれば特に制限はない。好適に用いられる環状分子としてシクロデキストリンが挙げられる。また、この環状分子が官能基を持つことが好ましい。さらには前記官能基が水酸基もしくはアクリル基、メタクリル基であることが好ましい。
【0176】
本実施の形態で用いられ得るポリロタキサンは、公知の方法(例えば、国際公開2001/83566号、特開2005−154675号公報、特許4482633号等に記載の方法)によって合成することができる。しかしながら、市販のものを使用してもよく、具体的には、アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製のセルムスーパーポリマーSH3400P、SH2400P等を使用することができる。
【0177】
(成分B)熱硬化性樹脂
例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂が特に制限なく挙げられるが、なかでもエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0178】
エポキシ樹脂としては、具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アラルキルエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、状況に応じて、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0179】
エポキシ樹脂として、より好ましくは、例えば、1つの分子中に2つ以上のエポキシ基と3つ以上のメチル基とを含み、かつ分子量が500以上であるエポキシ樹脂が好適に例示される。このようなエポキシ樹脂としては、市販のものを使用してもよい。例えば、JER1003(三菱化学製、メチル基が7〜8個、2官能、分子量1300)、EXA−4816(DIC製、分子量824、メチル基多数、2官能)、YP50(新日鉄住友金属化学製、分子量60000〜80000、メチル基多数、2官能)等が挙げられる。
【0180】
なお、好ましくは、上述の(成分A)と(成分B)で構成される硬化性樹脂は少なくとも一部が未架橋状態である。すなわち、(成分A)における官能基が未架橋状態であり、(成分B)のエポキシ基の少なくとも一方、あるいは、好ましくは両方が未架橋状態であることが望ましい。より好ましくは、(成分A)と(成分B)を合わせた反応性樹脂(硬化性樹脂)が有する官能基及び/又はエポキシ基の一部が架橋していて、その他の大部分が未架橋であれば、貼付けや積層の際により扱いやすい半硬化状態の基材やフィルム等を得ることができる。
【0181】
このように、含まれる硬化性樹脂が未架橋状態(半硬化状態)である樹脂組成物を調製するためには、例えば、後述のように、加熱乾燥条件を調整する。
【0182】
(成分C)硬化剤
(成分B)の熱硬化性樹脂の硬化剤として機能すれば、特に制限はない。特に、エポキシ樹脂の硬化剤として好ましく使用できる材料としては、フェノール樹脂、アミン系化合物、酸無水物、イミダゾール系化合物、スルフィド樹脂、ジシアンジアミドなどが挙げられる。また、光・紫外線硬化剤、熱カチオン硬化剤なども使用できる。これらは、状況に応じて、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0183】
(成分D)架橋剤
本実施の形態のポリロタキサンを含む伸縮性樹脂シート用樹脂組成物には、さらに架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、ポリロタキサンの環状分子の少なくとも一部(ポリロタキサンの環状分子が有する少なくとも一つの反応基)と成分Cの硬化剤とが架橋する構造を作ることができるものであれば特に限定なく用いることができる。
【0184】
具体的には、例えば、イソシアネート、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、フェニレンジイソシアネート、ジイソシアン酸トリレイン、ジビニルスルホン、1,1−カルボニルジイミダゾール、アルコキシシラン等が挙げられる。イソシアネートとしては、例えばDN950(DIC製)が挙げられる。
【0185】
本実施の形態において、架橋剤が有する官能基の数は限定されないが、ポリロタキサンの環状分子同士または環状分子と後述するような樹脂を架橋させるためには、架橋剤の一分子中に2個以上の官能基を有することが望ましい。また、架橋剤が複数の官能基を有する場合、それらの官能基は同一であっても異なっていてもよい。
【0186】
さらに、架橋剤がポリロタキサンと相溶することがより好ましく、(成分A)として水酸基を有する環状分子を含むポリロタキサンを用いた場合は、架橋剤として、イソシアネート類やその誘導体等が好適に用いられる。このイソシアネート樹脂としては、特に制限はない。またイソシアネート基をブロック化したブロック化イソシアネート樹脂も用いることができる。
【0187】
一方、(成分A)として、アクリル基もしくはメタクリル基を有する環状分子を含むポリロタキサンを用いた場合は、反応性樹脂としてアクリル樹脂を添加することができる。このアクリル樹脂についても特に制限はない。
【0188】
本実施の形態による樹脂組成物中の各成分の割合は、本発明の効果を発揮し得る限り特に制限はないが、(成分A)〜(成分C)の合計を100重量部として、(成分A)は10〜80重量部、より好ましくは30〜50重量部;(成分B)は10〜89.9重量部、より好ましくは30〜50重量部;(成分C)は0.1〜30重量部、より好ましくは0.1〜20重量部である。なお、(成分D)の架橋剤としてイソシアネート樹脂を含む場合、イソシアネート樹脂は(成分A)のポリロタキサンに対して、0〜50重量部を添加することができ、さらには、10〜40重量部添加することが好ましい。
【0189】
さらに、本実施の形態に係る伸縮性樹脂シート用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の添加剤、例えば、硬化触媒(硬化促進剤)、難燃剤、難燃助剤、レベリング剤、着色剤等を必要に応じて含有してもよい。
【0190】
本実施の形態の(成分A)のポリロタキサンを含む伸縮性樹脂シート用樹脂組成物の調製方法については、特に限定はない。例えば、まずポリロタキサン、硬化剤、架橋剤、熱硬化性樹脂及び溶媒を均一になるように混合させて本実施の形態の伸縮性樹脂シート用樹脂組成物を調製することができる。使用する溶媒に特に限定はなく、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン等を使用することができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて、粘度を調整するための有機溶剤や、各種添加剤を配合してもよい。
【0191】
上述のようにして得られた(成分A)のポリロタキサンを含む伸縮性樹脂シート用樹脂組成物を加熱乾燥することによって、溶媒を蒸発させながら、硬化させ、伸縮性樹脂シートを作製することができる。
【0192】
(成分A)のポリロタキサンを含む伸縮性樹脂シート用樹脂組成物を加熱乾燥するための方法、装置、それらの条件については、従来と同様の各種方法、あるいはその改良された方法を適用することができる。具体的な加熱温度と時間は、使用する架橋剤や溶媒等によって適宜設定することができるが、例えば、50〜200℃で60〜120分間程度加熱乾燥することによって、伸縮性樹脂シート用樹脂組成物を硬化させることができる。
【0193】
なお、本実施の形態による伸縮性樹脂シート用樹脂組成物の他の具体的例として、例えば、以下の(成分E)と(成分F)とを含む樹脂組成物が挙げられる。(成分E)はエポキシ樹脂である。このエポキシ樹脂は、炭素数が2〜3のアルキレンオキサイド変性された変性基を有し且つその変性基がエポキシ1mol分子中に4mol以上含まれる。また、2mol以上のエポキシ基を有する。さらに、エポキシ当量が450eq/mol以上である。(成分F)は硬化剤である。以下、(成分E)と(成分F)の具体例を説明する。
【0194】
(成分E)のエポキシ樹脂として、具体的には、プロピレンオキサイド付加型ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ADEKA製 EP4003S)、エチレンオキサイド付加型ヒドロキシフェニルフルオレン型エポキシ樹脂(大阪ガスケミカル製 EG−280)等が挙げられる。
【0195】
なお、本実施の形態の(成分E)のエポキシ樹脂を含む伸縮性樹脂シート用樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、(成分E)以外のエポキシ樹脂がさらに含まれていてもよい。(成分E)以外のエポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、ビスフェノールS型エポキシ、アラルキルエポキシ、脂肪族エポキシ、脂環式エポキシ等が挙げられる。その場合、全エポキシ樹脂成分中の(成分E)の配合割合は、60〜99重量%程度、好ましくは、80〜95重量%程度である。
【0196】
(成分F)の硬化剤としては、エポキシ樹脂用の硬化剤として一般的に公知のものが使用できる。具体的には、フェノール樹脂、酸無水物、スルホニウム塩から選ばれるものが硬化性の点から好ましい。必要に応じて硬化促進剤、たとえばイミダゾール系化合物とこれらの硬化剤の2種類以上とを組み合わせてもよい。
【0197】
フェノール樹脂硬化剤としては、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができる。その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂などが挙げられる。フェノール類は、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0198】
酸無水物硬化剤の例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フタル酸、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0199】
スルホニウム塩の例としては、アルキルスルホニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ジベンジルスルホニウム塩、置換ベンジルスルホニウム塩等を挙げることができる。これらの具体例としては、アルキルスルホニウム塩として、例えば4−アセトフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル−4−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル−3−クロロ−4−アセトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートが挙げられる。ベンジルスルホニウム塩として、例えばベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−2−メチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。ジベンジルスルホニウム塩として、例えばジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−アセトキシフェニルジベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−メトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジベンジル−3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。置換ベンジルスルホニウム塩として、例えばp−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−ニトロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、p−ニトロベンジル−3−メチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3,5−ジクロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、o−クロロベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートが挙げられる。
【0200】
具体的には、多官能フェノール系硬化剤として、GPH−103(日本化薬(株)製、ビフェニルアラルキル型フェノール)、酸無水物系硬化剤として、YH−306(三菱化学製)、イミダゾール系硬化促進剤として、2E4MZ(四国化成製、2エチル4メチルイミダゾール)が挙げられる。
【0201】
(成分E)のエポキシ樹脂を含む伸縮性樹脂シート用樹脂組成物中の各成分の割合は、本発明の効果を発揮し得る限り特に制限はないが、伸縮性樹脂シート用樹脂組成物全量を100重量部として、(成分E)は50〜99重量部、より好ましくは60〜80重量部、(成分F)は1〜50重量部、より好ましくは1〜40重量部程度である。
【0202】
さらに、(成分E)を含む伸縮性樹脂シート用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の添加剤、例えば、硬化触媒(硬化促進剤)、難燃剤、難燃助剤、レベリング剤、着色剤等を必要に応じて含有してもよい。
【0203】
本実施の形態の(成分E)を含む伸縮性樹脂シート用樹脂組成物の調製方法については、特に限定はない。例えば、エポキシ樹脂、硬化剤及び溶媒を均一になるように混合する。使用する溶媒に特に限定はなく、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、DMF、NPM、酢酸エチル等を使用することができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらにここで、必要に応じて、粘度を調整するための有機溶剤や、各種添加剤を配合してもよい。
【0204】
上述のようにして得られた(成分E)を含む伸縮性樹脂シート用樹脂組成物を加熱乾燥することによって、溶媒を蒸発させながら、硬化させ伸縮性樹脂シートを作製することができる。
【0205】
(成分E)を含む伸縮性樹脂シート用樹脂組成物を加熱乾燥するための方法、装置、それらの条件については、従来と同様の各種方法、あるいはその改良された方法を適用することができる。具体的な加熱温度と時間は、使用する架橋剤や溶媒等によって適宜設定することができるが、例えば、130〜200℃で60〜180分間程度加熱乾燥することによって、伸縮性樹脂シート用樹脂組成物を硬化することができる。
【0206】
上記様々な手法による伸縮性樹脂シート用樹脂組成物の乾燥条件において、溶媒の揮発速度が樹脂の硬化反応よりも十分に速く、乾燥が十分になったところで加熱乾燥を一旦終了することにより、半硬化状態のフィルム状樹脂組成物を調製することができる。半硬化状態とは、未反応の樹脂を含み、加熱により樹脂が軟化または再溶融する状態である。この半硬化状態のフィルム状樹脂組成物(いわゆるプリプレグの状態)は、金型などの型を用いて加熱成型が可能である。またその際、半硬化(未架橋状態)の樹脂が被接着体の表面の水酸基等と共有結合を形成すると考えられるため、高い密着強度を得ることができる。
【0207】
本実施の形態において、半硬化状態のフィルム状樹脂組成物を調製するための乾燥方法や装置、それらの条件については、従来と同様の各種方法、あるいはその改良された方法を適用することができる。具体的な乾燥温度と時間は、使用する架橋剤や溶媒等によって適宜設定することができるが、例えば、伸縮性樹脂シート用樹脂組成物を80℃〜130℃で2分〜15分間程度加熱乾燥することによって、伸縮性樹脂シート用樹脂組成物の半硬化状態のフィルム状樹脂組成物を調製することができる。
【0208】
半硬化状態のフィルム状樹脂組成物は、支持体として使用したり、あるいは、層間または表面に貼り付けることによって層間の応力緩衝や表面の保護のために設置したりすることができる。さらに、それらの状態で加熱または光によるエネルギーを与えることで硬化させることにより、十分な耐熱性、密着性を発現しつつ応力緩和に優れ残留歪みの少ない緩衝層や保護層を形成した伸縮性構造体を作製することができる。または、本実施の形態のフィルム状樹脂組成物上へ被支持物を接着させ、加熱成形または紫外線などの光により硬化することもできる。
【0209】
また、本実施の形態の伸縮性樹脂シート用樹脂組成物は、さらに充填材を含むことが好ましい。このことにより、樹脂強度や熱膨張係数を制御できるだけでなく、吸水性や電気伝導性の制御も可能となる。
【0210】
充填材としては用途等により様々なものを選ぶことができる。例えば、充填材として有機繊維、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維から選ばれる少なくとも1つの繊維を含有することが望ましい。このような充填材を含むことにより、樹脂の強度を補強することができる。そのため、しなやかで強靭な伸縮性樹脂シートになるだけでなく、線膨張の制御や伸縮性樹脂シートとしての取り扱いについてもし易くなる。さらに、導電性やコストの面でも優れる。これらの繊維は必要に応じて表面にカップリング処理やグラフト重合といった表面修飾を施しても良く、その方法には、従来の方法や改善された方法を適用することができる。繊維の織り方については特に限定はされないが、不織布、織布等が挙げられる。
【0211】
有機繊維の具体例としては、ポリエチレン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、アラミド、ポリエステル、ビニロン、ポリプロピレン、ナイロン、レーヨン、ポリ乳酸、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、フッ素樹脂などの素材を基にした繊維が挙げられる。
【0212】
ガラス繊維の具体例としては、ヤーンを基として織物にした、ガラスクロスや、チョップドストランドやそれを加工したチョップドストランドシートなどが挙げられる。
【0213】
金属繊維の具体例としては、スチールや銀の織物や、ランダムメッシュなどが繊維として挙げられる。
【0214】
充填材のさらなる具体例としては、球状、破砕状、フレーク状、非連続繊維状から選ばれる充填材を配合することができる。配合される充填材の成分としては、特に限定はされないが、例えば、Si、Cu、Ag、Au、Al、Mg、Pt、及びTiから選ばれる元素を含む少なくとも1つの物質が挙げられる。このような充填材を含むことにより、コストや線膨張、導電性、難燃性、屈折率などの光学特性等の特性をより向上させることができる。また、充填材の大きさや粒径は特に限定はされないが、1nm〜100nmの範囲の粒子径であれば、光学特性や導電性、線膨張など比較的少ない添加量で効果的に改質することができる。100nm〜50μmの粒子径であれば、取り扱い性に優れ製造上のコスト的に優位である。
【0215】
Si、Cu、Ag、Au、Al、Mg、Pt、Tiのいずれかを含む具体例としては、シリカ、銅粒子、銅メッキ粒子、銀粒子、銀フレーク、銀ワイヤー、銀メッキ粒子、金粒子、金ワイヤー、金メッキ粒子、アルミ粒子、酸化アルミ粒子、水酸化アルミ粒子、マグネシウム粒子、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、白金粒子、白金メッキ粒子、チタン粒子、酸化チタン粒子、酸化チタンコーティング粒子などの各種粒子、フレーク、ワイヤーといった形状の充填材が上げられる。これらは単一または複数の種類を混合して使用してもよい。これら粒子の使用方法は従来または改善された方法でもよい。具体的には、樹脂を溶剤に溶解させたワニスに充填材を配合し、ビーズミル、ジェットミル、遊星式攪拌機、ホモディスパー、超音波などの分散機を用いて分散して使用することができる。
【0216】
充填材のさらなる具体例としては、カーボンナノチューブ及び/又は金属ワイヤーなどが挙げられる。このような充填材を含むことにより、伸縮性樹脂シートに導電性を効率的に付与できる点で好ましい。すなわち、このような充填材は、球状またはフレーク状などの導電材料に比べて比較的少ない添加量で同等の導電性を伸縮性樹脂シートに付与できる。そのため、コストに優れるだけでなく樹脂の特性を維持しやすい点でより好ましい。また、伸縮性樹脂シートを伸縮させたり折り曲げたりと、さまざまに変形させた場合においても導電性を維持できるので好ましい。
【0217】
これらの導電材料を樹脂に分散するには従来の方法または改善された方法を適用することができる。具体的には水やメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、ジメチルホルムアミドなどの溶媒に、セルロースやアミン系または硫酸系、イオン液体等の分散剤と充填材とを共に予め分散させて分散液を調製する。この分散液に樹脂を加えた後、溶媒を取り除くことによって樹脂へ充填材を分散させることができる。
【0218】
カーボンナノチューブの種類としては、特に限定はされないが、具体例としては、単層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブなどが挙げられる。これらカーボンナノチューブの合成には公知の方法または改善された方法を適用することができる。目的によるが、例えば導電性をより重視するためには、例えばラマン分光におけるG/D比が10以上の結晶性の高いカーボンナノチューブが好適に用いられる。
【0219】
金属ワイヤーの具体例としては、銀ナノワイヤー、銀ナノロッド、金ナノロッドなどのアスペクト比の大きい非連続の金属繊維が挙げられる。
【0220】
これらカーボンナノチューブ及び金属ワイヤーの大きさは特に限定はされないが、直径が1nm以上、100nm以下、長さが1μm以上、10mm以下の場合には、樹脂への分散により導電性や補強の面で好適である。
【0221】
上述した充填材は、いずれも、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0222】
充填材を含む場合、その含有量は、伸縮性樹脂シートの用途等によって適宜設定できる。通常、充填材の含有量は0.05重量%以上、80重量%以下であることが好ましい。このような含有量の範囲であれば、樹脂の特性を維持しつつ適度な機能を付与できる。0.05重量%未満では低熱膨張、熱伝導性、導電性いった充填材としての特性を活かせない場合がある。また含有量が80重量%を超えると、伸縮性、しなやかさ、伸びといった、含有する樹脂の特性が活かせない場合がある。さらに、充填量が0.05重量%以上、50重量%以下である場合には、さらに、応力緩和性、残留歪みが少ない点でより好ましい。
【0223】
また、本実施の形態の伸縮性樹脂シート用樹脂組成物は、さらに表面調整剤を含むことが好ましい。
【0224】
表面調整剤は、表面張力を低下させるために加えられる。それによって硬化後の伸縮性樹脂シートの表面の平坦性が向上する。平坦性が向上することで、伸縮性樹脂シートを用いた構造体を組み立てる際の接着性、密着性を改善することができる。また、実施の形態1における中空部7のギャップスペースの精度を向上する上でも平坦性は重要である。
【0225】
表面調整剤の添加量に、特に制限はないが、0.001重量%〜20重量%程度が好ましく、0.1重量%〜5重量%の範囲がより好ましい。添加量が少なすぎると、平坦性が低下する傾向がある。添加量が多すぎると、伸縮性樹脂シートの濁り、耐熱性、密着性の低下などが起こる虞がある。
【0226】
表面調整剤の種類は、表面調整を目的として添加されていれば、特に限定されない。例えば、アクリル系、ビニル系、シリコーン系、フッ素系の化合物が挙げられる。
【0227】
アクリル系の表面調整剤としては、具体的には、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、(メタ)アクリル共重合物を主成分とする製品が挙げられる。
【0228】
ビニル系の表面調整剤としては、具体的には、ポリアルキルビニルエーテル、ポリブタジエンを主成分とする製品が挙げられる。
【0229】
シリコーン系の表面調整剤としては、具体的には、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリフェニルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、を主成分とする製品が挙げられる。
【0230】
フッソ系の表面調整剤としては、具体的には、フッ化シリコーン、フッ素系ポリマーを主成分とする製品が挙げられる。
【0231】
これらは、単独で使用してもよく、複数の種類を併用してもよい。
【0232】
本実施の形態の伸縮性樹脂シートは、様々な用途において各種電子部品の材料として用いることができる。特に、柔軟かつ応力緩和性および復元性に優れ、伸縮性・屈曲性を兼ね備えている。そのため、例えば、折り曲げ可能な電子ペーパー、有機ELディスプレイ、太陽電池、RFID、圧力センサ等に用いる材料として非常に好適である。すなわち、本実施の形態の樹脂組成物は、実施の形態1で説明した伸縮性樹脂シート用樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0233】
また、本実施の形態の伸縮性樹脂シートを用いた支持体上に配線を形成することもできる。配線を形成する方法は、特に限定はされないが、例えば、インクジェット印刷やスクリーン印刷、孔版印刷、凹版印刷、凸版印刷又は平版印刷等、公知の方法を用いることができる。
【0234】
また、上述したような本実施の形態の伸縮性樹脂シートを、支持体上にフィルムとして形成することが好ましい。そのような伸縮性樹脂シートを用いることにより、自由曲面への追従や大きな変形に対応可能なフレキシブル表示装置等を実現することができる。フィルムの形成方法については特に限定はなく、例えば、スピンコート、バーコーター、コンマコータなど汎用に使用する塗工機等を用いることができる。
【0235】
使用される支持体としては特に限定はなく、例えば、ガラス、金属、プリント配線板等の硬質の支持体を用いてもよいし、樹脂フィルム、フレキシブル基板、又はエラストマー等の可撓性、伸縮性を持つ支持体を用いることもできる。
【0236】
本実施の形態の伸縮性樹脂シートにおいて、厚みが1μm以上、1000μm以下であり、30℃における弾性率が1kPa以上、1GPa以下である場合には、貼付する際の転写性に優れ、樹脂層を形成しやすい。したがって、前述の用途において応力緩和性を効果的に発揮することができる。
【0237】
さらに、30℃における弾性率が10kPa以上、500MPa以下の場合には、接着性により優れる。そのため、貼付による転写性や加圧または加熱により樹脂層をより形成しやすくなる。したがって、伸縮性構造体を作製する上で層間または層上に伸縮性樹脂シートを転写するのに好適に用いることができる。伸縮性樹脂シートが前述の半硬化状態の場合には、貼り合わせた後、光照射、加熱、または加熱成型によって被接着体に対して強固に接着することができ、耐熱性や耐薬品性に優れ応力緩和性に優れた伸縮性構造体を作製することができる。
【0238】
支持体上に形成した伸縮性樹脂シートは、そのまま支持体と共に用いることもできるが、支持体から剥離して単独で用いてもかまわない。具体的には、支持体と一緒に用いる例としては、伸縮性樹脂シート上に配線形成したフレキシブル基板、シールド板等が挙げられる。支持体から剥離して用いる例としては、放熱フィルムとして用いる場合や、配線をオフセット印刷で形成したフィルム等が挙げられる。
【0239】
さらに本実施の形態の伸縮性樹脂シートは、その上に回路パターンを形成されている配線フィルムであることが好ましい。このことにより、断線、剥離、破壊を引き起こす外的な力に対する応力緩和するため、長期信頼性により優れる。
【0240】
さらに本実施の形態の樹脂組成物またはフィルム状樹脂組成物、伸縮性樹脂シートに、被対象物を接着、貼付、加圧、加熱することによって、エレクトロニクス用構造体を作製することができる。このエレクトロニクス用構造体では、伸縮性樹脂シートの層間または伸縮性樹脂シートの表面の一部または全体に被対象物が設けられている。このエレクトロニクス用構造体は、単体でもよく、複数のエレクトロニクス用構造体を積層してもよい。すなわち、このエレクトロニクス用伸縮性構造体は、伸縮性樹脂シート用樹脂組成物の硬化物と、この硬化物の表面の一部または全体に積層して形成された被対象物とを有する。複数のエレクトロニクス用構造体が積層されている場合、積層されたエレクトロニクス用伸縮性構造体に含まれる被対象物の少なくとも一つは、積層されたエレクトロニクス用伸縮性構造体の複数の樹脂組成物の硬化物の間に配置されている。このような構造体は、応力による反りや剥離の発生を抑制するとともに電子機器としての歩留まり改善、コスト削減に貢献でき得る点で好ましい。このようなフィルムや構造体を用いれば、例えば、自由曲面への追従や大きな変形に対応可能なフレキシブル表示装置等を実現することができる。
【0241】
以上のように、本実施の形態による伸縮性樹脂シート用樹脂組成物は、弾性変形可能で残留歪みが少なく、かつ応力緩和性を有する伸縮性樹脂シートを形成することができる。
【0242】
そして、このような伸縮性樹脂シートを用いることで、これらの変形等で発生した応力を緩和することにより、従来の表示装置等で生じていた部材間剥離や破壊を抑制できる。さらに、本実施の形態による伸縮性樹脂シートは変形等からの解放時には元の形状に戻ることができる。
【0243】
また、このような優れた伸縮性樹脂シート用樹脂組成物を用いることで、自由曲面への追従や大きな変形に対応可能なフレキシブル表示装置等を実現することができる。また、高い応力緩和性と復元性を両立するという特徴を有することから、フレキシブル表示装置以外にも、光学分野、電子分野、接着分野、医療分野など様々な技術分野にも適用できる。
【0244】
また、伸縮性樹脂シート用樹脂組成物がエポキシ樹脂及び硬化剤を含んでいることが好ましい。それにより、より高い応力緩和性とより高い復元性を両立させることができ、さらに耐熱性や強靭性を付加させることができる。
【0245】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0246】
本実施例で用いた各種材料は次の通りである。
【0247】
(成分A)のポリロタキサンとして、アドバンス・ソフトマテリアルズ社製「SH3400P」を用いる。「SH3400P」は、ポリエチレングリコールを軸分子、α−シクロデキストリンを環状分子とし、反応基として水酸基を有する。
【0248】
(成分B)の熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂である、三菱化学製「JER1003」、DIC製「EXA−4816」、新日鉄住友金属化学製「YP50」、を用いる。「JER1003」は分子中に7〜8個のメチル基を有し、2官能で、分子量は1300である。「EXA−4816」は分子中にメチル基を多数有し、2官能で、分子量は824である。「YP50」は分子中にメチル基を多数有し、2官能で、分子量は60000〜80000である。
【0249】
(成分C)の硬化剤として、カチオン硬化剤である三新化学製「SI−150」を用いる。「SI−150」は六フッ化アンチモンスルホニウム塩である。またイミダゾール系硬化促進剤として、四国化成製「2E4MZ」を用いる。「2E4MZ」は、2エチル4メチルイミダゾールである。
【0250】
(成分D)の架橋剤としてイソシアネートであるDIC製「DN950」を用いる。
【0251】
(成分E)の熱硬化性樹脂として、ADEKA製「EP4003S」と大阪ガスケミカル製「EG−280」とを用いる。「EP4003S」はプロピレンオキサイド付加型ビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、「EG−280」はエチレンオキサイド付加型ヒドロキシフェニルフルオレン型エポキシ樹脂である。
【0252】
(成分F)の硬化剤として、以下の材料を用いる。
・多官能フェノール系硬化剤(日本化薬(株)製「GPH−103」、ビフェニルアラルキル型フェノール)
・エポキシ樹脂硬化剤(三菱化学製「YH−306」、酸無水物系硬化剤)
・イミダゾール系硬化促進剤(四国化成製「2E4MZ」、2エチル4メチルイミダゾール)
その他の樹脂として、以下の材料を用いる。
・シリコーン樹脂(株式会社エスケー製「SK−クリアシート」)
・ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン株式会社製「UF421」)
・ウレタン樹脂(株式会社ADEKA社製「HUX−561」)
【0253】
〔樹脂組成物1〜8〕
樹脂組成物1〜5、8については、表2及び表3に示す配合組成(重量部)で、固形分濃度が40重量%となるように、溶剤(メチルエチルケトン)に添加して、各成分を均一に混合し(300rpm、30分間)、樹脂組成物を調製した。樹脂組成物6、7については、表3に示す配合組成(重量部)で、固形分濃度100%で各成分を均一に混合し(300rpm、30分間)、樹脂組成物を調製した。
【0254】
得られた樹脂組成物1〜5、8を、75μmのPETフィルム(支持体)上にバーコーターで塗布し、100℃にて10分乾燥し、溶媒を除去した後、170℃で、60分間加熱硬化させて各樹脂組成物の評価サンプルを作製した。一方、得られた樹脂組成物6、7を、75μmのPETフィルム(支持体)上にバーコーターで塗布し、密閉状態としたうえで、170℃120分間加熱硬化させて各樹脂組成物の評価サンプルを作製した。
【0255】
〔樹脂組成物9、10〕
樹脂組成物9、10については既にフィルムの形態となっておりそのまま評価サンプルとして用いた。
【0256】
〔樹脂組成物11〕
既製のウレタン樹脂を用い、75μmのPETフィルム(支持体)上にバーコーターで塗布し、120℃30分間加熱乾燥させ、評価サンプルを作製した。
【0257】
得られた樹脂組成物1〜11を用いたフィルムを用いて、厚み50μmのダンベル6号形状(測定部位幅4mm、平行部長さ25mm)の伸縮性樹脂シートを作製し、以下の評価に供した。樹脂組成物1〜3、6、7はそれぞれ、表2、表3に示すように実施例7−1〜7−5に相当し、樹脂組成物4、5、8〜11は比較例7−1〜7−6に相当する。
【0258】
〔伸張−復元試験〕
本実施の形態で用いられる伸張−復元試験では、上記実施例および比較例のサンプルを用いて、下記条件で伸張行程を行った後に復元行程を行い、下記算出方法によって応力緩和率R及び残留歪み率αを計算している。
【0259】
(伸張行程条件)
試験片をつかみ具に取り付けたときに発生するたわみを除去するために、たわみを0.05N以下の力で補正する。
【0260】
試験速度:25mm/min、0〜25%伸張まで
温度条件:23℃
伸張・保持条件:25%伸張で、保持時間5分
(復元行程条件)
試験速度:0.1mm/min、引張力が0±0.05Nになるまで
温度条件:23℃
応力緩和率算出方法:伸張行程終了時の引張力を測定し、この値を初期引張力F
A0とする。その後、上述の伸張・保持条件で歪量を保持し5分後に引張力を測定する。この値をF
A(t5)とする。応力緩和率Rは下記式によって計算する。
【0261】
【数1】
【0262】
残留歪み率算出方法:上記復元行程において、引張力が0±0.05Nとなった時点において、歪量を測定し、この値を残留歪み率αとする。
【0263】
以上のような方法で得られた応力緩和率R及び残留歪み率αを表2、表3に示す。
【0264】
さらに、上記伸張−復元試験において、15〜20%の範囲で伸張させた場合の、復元時と伸張時のそれぞれ歪み量に対する引張力の変化の傾き(復元時の傾き/伸張時の傾き)を求め、その結果も表2、表3に示す。
【0265】
〔応力緩和性試験〕
上記実施例および比較例のサンプルを用いて、ISO3384に準拠した引張−圧縮試験機で、下記条件で伸張行程を行い、伸張終了時の引張力を測定して、これを初期引張力F
B0とする。その後、30分後に引張力F
B(t30)を測定する。
【0266】
(伸張行程条件)
試験片をつかみ具に取り付けたときに発生するたわみを除去するために、たわみを0.05N以下の力で補正する。
【0267】
試験速度:25mm/min、50%伸張まで
温度条件:23℃
伸張・保持条件:50%伸張で、保持時間30分
そして、F
B(t30)/F
B0の計算値を求める。結果を表2、表3に示す。
【0268】
なお、樹脂組成物8で作製した評価サンプルは、途中で破断したため、伸張−復元試験、応力緩和性試験共に実施できなかった。
【0269】
【表2】
【0270】
【表3】
【0271】
〔構造体の作製〕
〔ダイアタッチフィルム(DAF)付きミラーウェハの樹脂シートへの実装〕
上記で調製した樹脂組成物1〜9で作製した各樹脂シートの上に、DAF付き直径8インチのミラーウェハ(8mm×8mm×100μm、DAF層:日立化成製FH900、25μm)を貼付する。この状態で、160℃に設定したホットプレートに置き、1MPaで、60分加圧し、ウェハ付きの樹脂シートの試験体を作製する。作製したそれぞれの試験体の樹脂シートの両端を掴み、室温で30%伸張させて、その後伸張応力を解放して復元させた際におけるウェハ及びその接着状態を確認している。結果を表4に示す。なお、評価基準は以下のとおりである。
【0272】
伸張時に構造体の一部もしくは全部が壊れることなく、元の状態に復元した場合、OKと判定する。一方、伸張時に構造体の一部もしくは全部が壊れることないが、元の状態に復元しなかった場合、NGと判定する。さらに、伸張時に構造体の一部もしくは全部が壊れた場合、破壊NGと判定する。
【0273】
なお、比較例7−5及び比較例7−6については、加熱時または実装時に樹脂溶融の度合いが大きく、樹脂流れが発生している。またフィルムの変形が著しいため試験できていない。
【0274】
【表4】
【0275】
〔DAFなしミラーウェハの充填材を含む樹脂シートへの実装〕
樹脂組成物1及び6の配合に、充填材としてシリカ(アドマテクス社製、SO−25R、粒子径:0.5μm)を樹脂固形分に対して30重量部加え、ホモディスパーで30分、3000rpm撹拌することでシリカ入りの樹脂組成物を調製している。これらの樹脂組成物を、離型処理されたPETフィルムにバーコーターで塗布し、120℃で5分、溶媒を除去して、半硬化状態のフィルムを作製している。この半硬化状態のフィルムを、160℃に設定されたホットプレートに置き、60分熱処理することにより実施例7−6および7−7の伸縮性樹脂シートを作製している。
【0276】
また、樹脂組成物11にも同様にシリカを30重量部加え、以下、実施例7−6および7−7と同様にして比較例7−7の樹脂シートを作製している。
【0277】
そして、実施例7−1と同様に、伸張−復元試験及び応力緩和性試験を行い、得られた応力緩和率R、残留歪み率α、復元時の傾き/伸張時の傾き及びF
B(t30)/F
B0の値を求めた結果を表5に示す。
【0278】
【表5】
【0279】
また、上述のシリカ入りの樹脂組成物を上記と同様にバーコーターで塗布し、120℃で30分乾燥させシリカ入りの樹脂シートを作製している。これらの樹脂シートに、DAFなしのウェハを置き、160℃、1MPaで60分加圧し、ウェハ付きの樹脂シートの試験体を作製する。以下、実施例7−1と同様に、作製したそれぞれの試験体の樹脂シートの両端を掴み、室温で30%伸張させて、その後伸張応力を解放して復元させた際におけるウェハ及びその接着状態を確認している。その結果を表6に示す。なお、比較例7−7については、樹脂溶融の度合いが大きく、樹脂流れが発生して、ウェハが埋没してしまっている。
【0280】
【表6】
【0281】
以上の結果より、本実施の形態による伸縮性樹脂シートは伸張させても壊れることなく元の状態に復元することができることが示されている。
【0282】
また、本実施の形態による伸縮性樹脂シート用樹脂組成物は、無機充填材を含有していても、その硬化物において優れた伸張後の復元性と応力緩和性を示す。
【0283】
以上より、本実施の形態による伸縮性構造体は、様々なエレクトロニクス用部材として有用であることがわかる。