(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を備え、個別包装に際して幅方向に延びる2本の折り線によって長手方向に折り畳まれる吸収性物品であって、
前部、股部及び後部を有し、
前記折り線は、前部及び股部の境界部、並びに股部及び後部の境界部に設けられ、
前記吸収体は、前記折り線近傍の領域に、幅方向に沿って形成された圧搾溝を有し、
前記圧搾溝の幅方向の寸法は、前記吸収体の幅方向の寸法の60%以上90%以下であり、
前記圧搾溝の深さは、幅方向中心線近傍において前記吸収体の厚さの50%以上80%以下であるとともに、前記圧搾溝の深さは、幅方向両端部に向かって徐々に浅くなり、
前記圧搾溝は、前記折り線を中心に前後方向に凸になった形状を有しており、
前記圧搾溝の長手方向の寸法は、幅方向中心線近傍において5mm以上25mm以下、前記圧搾溝の幅方向両端部において3mm以上10mm以下であり、
前記股部において、幅方向中心線の両側に、長手方向に沿って、トップシートから吸収体に亘る少なくとも1対のチャネルエンボスが形成され、前記少なくとも1対のチャネルエンボスは、幅方向中心線に向かって凸となっており、
前記前部及び前記後部に、幅方向に沿って、トップシートから吸収体に亘るチャネルエンボスがそれぞれ形成されており、このチャネルエンボスは、長手方向端部に向かって凸の略半円弧状となっている吸収性物品。
【背景技術】
【0002】
一般に、軽失禁ライナー、軽失禁パッド、及び生理用ナプキン等の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されており、これにより、尿や血液等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収される。これらの吸収性物品については、通常、これを1枚ごとに3つ折り等に折り畳んで個別包装し、この個別包装した吸収性物品の複数枚をプラスチックフィルムにて一括包装しており、消費者が吸収性物品を使用する際には、個別包装から吸収性物品を取り出し、吸収性物品の衣類接触側表面に設けられたズレ止めテープを使用して、吸収性物品を下着に装着している。
【0003】
吸収性物品の吸収体は、吸収性繊維及び高吸水性ポリマーを主体として構成されるものであり、適度な厚さとクッション性が求められている。そして、吸収性物品は、一般に吸収量ごとに様々な種類のものが販売されているが、吸収性物品の吸収量が多くなるほど、吸収体の厚みは厚くなり、包装時に3つ折りにした場合、3つ折りした部分の吸収体に折り癖がついたり、3つ折りした部分の近傍のトップシートに折りじわが発生したりしてしまう。このような折り癖は、吸収性物品の下着への適切な装着を損ない、身体へのフィット性を低下させることもある他、折りじわも幅方向に発生するため、体液の幅方向への横漏れの原因にもなる。加えて、これらの折り癖、折りじわは、装着時に着用者に不快感を感じさせ、かゆみ等の肌トラブルを引き起こす可能性がある他、外観上も好ましいものとは言えない。
【0004】
折り癖や折りじわを低減することを目的とした吸収性物品に関係する発明としては、例えば、特許文献1には、トップシート、バックシート、及び吸収体を有する縦長の吸収性物品であって、吸収体が、幅方向に延びており、かつ吸収体の全幅に亘らない長さを有する折り曲げ補助手段が、吸収体の長手方向に位置をずらして複数本形成された折り曲げ領域を有しており、個別包装される際に、折り曲げ領域が存する部位において折り曲げられることを特徴とする吸収性物品が開示されている。また、特許文献2には、トップシートとバックシートとの間に吸収体が配置されるとともに、個別包装される際には、幅方向の折り線にて長手方向に折り畳まれる吸収性物品において、折り線の近傍に、吸収性物品の幅方向に亘る線状の形状保持部材を形成した吸収性物品が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の吸収性物品においては、折り曲げ補助手段の近傍で吸収性物品を折り曲げることにより、吸収性物品に強い折り癖がつくことを防止することができるとされているが、トップシート等に発生する折りじわの問題に対しては、何らの配慮もなされていない他、折り癖や折りじわが十分に解消していない場合には、体液が横漏れするおそれもあった。また、特許文献2の吸収性物品は、これを展開した際に形状保持部材を湾曲させて吸収性物品の形状を保持することにより、折り癖や折りじわの問題に対処しようとするものであるが、このような手段を採用しても、トップシートや吸収体の折り癖の形成が抑制されるわけではなく、形成された折り癖も完全には解消されない。したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、個別包装に際して長手方向に折り畳まれる吸収性物品において、使用時に折り癖や折りじわがより低減されており、体液の横漏れも効果的に防止可能な吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、トップシートと、バックシートと、吸収体と、を備え、個別包装に際して幅方向に延びる2本の折り線によって長手方向に折り畳まれる吸収性物品において、折り線近傍の領域に、所定の圧搾溝を設けるとともに、股部、並びに前部及び後部に所定のチャネルエンボスを形成することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を備え、個別包装に際して幅方向に延びる2本の折り線によって長手方向に折り畳まれる吸収性物品であって、前部、股部及び後部を有し、前記折り線は、前部及び股部の境界部、並びに股部及び後部の境界部に設けられ、前記吸収体は、前記折り線近傍の領域に、幅方向に沿って形成された圧搾溝を有し、前記圧搾溝の幅方向の寸法は、前記吸収体の幅方向の寸法の60%以上90%以下であり、前記圧搾溝の深さは、幅方向中心線近傍において前記吸収体の厚さの50%以上80%以下であるとともに、前記圧搾溝の深さは、幅方向両端部に向かって徐々に浅くなり、前記圧搾溝は、前記折り線を中心に前後方向に凸になった形状を有しており、前記圧搾溝の長手方向の寸法は、幅方向中心線近傍において5mm以上25mm以下、前記圧搾溝の幅方向両端部において3mm以上10mm以下であり、前記股部において、幅方向中心線の両側に、長手方向に沿って、トップシートから吸収体に亘る少なくとも1対のチャネルエンボスが形成され、前記少なくとも1対のチャネルエンボスは、幅方向中心線に向かって凸となっており、前記前部及び前記後部に、幅方向に沿って、トップシートから吸収体に亘るチャネルエンボスがそれぞれ形成されており、このチャネルエンボスは、長手方向端部に向かって凸の略半円弧状となっている吸収性物品である。
【0009】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、前記圧搾溝の深さが、前記圧搾溝の幅方向両端部において、前記吸収体の厚さの10%以上30%以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、折り線近傍の領域に所定の圧搾溝を設けたので、折り線を谷として折り曲げた際にも、トップシートや吸収体に折りじわや折り癖が残らない。また、この圧搾溝の幅方向の寸法は、吸収体の幅方向の寸法よりも小さく、かつ幅方向中心線に向かって圧搾溝が広く深くなるように形成されているので、排出された体液が圧搾溝から横漏れすることを防止することができる。さらに、股部、並びに前部及び後部に所定のチャネルエンボスを形成しているので、排出された体液がチャネルエンボスに沿って吸収体の表面を迅速に拡散し、圧搾溝の部分から体液が横漏れすることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1から
図4を参照して、本発明の実施形態に係る吸収性物品1について詳細に説明する。なお、本実施形態の説明においては、全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。本明細書における以下の説明において、体液とは、尿、血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出される液体をいう。さらに、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の装着時及び装着後の少なくとも一方を示す。なお、本明細書の説明において、吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、本明細書において、吸収性物品1の身体接触側表面とは、吸収性物品1の着用時に着用者の肌に当接する表面を指し、衣類接触側表面とは、吸収性物品1の着用時に着用者の衣類に当接する表面を指す。本明細書においては、吸収性物品1の身体接触側表面側を上側と称し、衣類接触側表面側を下側と称することがある。
【0013】
<吸収性物品>
図1は、本発明の吸収性物品の展開図を示す図面であり、
図2は、
図1における(a)X
1−X
1線による断面図、及び(b)X
2−X
2線による断面図を示す図面である。本発明の実施形態に係る吸収性物品1としては、
図1に示すような軽失禁パッドが例示されるが、本発明はこれに限定されるものではなく、軽失禁ライナー、生理用ナプキン、その他の吸収性物品であってもよい。
図1及び
図2に示すように、吸収性物品1は、身体接触側表面に配置された液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向し、衣類接触側表面に配置された液不透過性のバックシート30と、トップシート10及びバックシート30の間に配置された吸収体20と、を備え、これにより、吸収体20は、トップシート10とバックシート30との間に挟まれた構造となっている。吸収性物品1は、個別包装に際して幅方向に延びる2本の折り線40によって長手方向に折り畳まれるものであり、包装時には長手方向に3つ折りにされる。吸収性物品1は、着用者の前側に位置する前部1aと、着用者の股間に位置する股部1bと、着用者の後側に位置する後部1cとを有し、折り線40は、前部1aと股部1bとの境界部、及び股部1bと後部1cとの境界部に形成されている。
【0014】
[トップシート]
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させるものであり、吸収体20を挟んで、バックシート30と対向して配置されている。トップシート10は、肌と当接するシートとなることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような基材、例えば、エアスルー不織布を代表とするサーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、又はこれらを積層した複合シートといった材料から形成される。トップシート10は、単層であっても、複数層積層していてもよく、ドライタッチ性を付与するために多数の透孔が形成されていてもよい。
【0015】
不織布としては、ポリエチレン等の合成繊維やレーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、サーマルボンド法の他、スパンレース法やスパンボンド法等の公知の加工法によって得られたものも用いることができる。加工性及び強度の点から、トップシート10の坪量は、18g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。トップシート10には、肌への刺激を低減させるために、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を適用してもよい。トップシート10は、着用者の股部が位置づけられる長手方向中央に括れ部を有する砂時計形状、略矩形形状等の形状を有していてもよく、吸収体20の側縁よりも若干外方に延在して設けられていてもよい。
【0016】
なお、本発明においては、吸収体20の上面への体液の拡散を促進するため、トップシート10と吸収体20との間に、液拡散性シート11を設けてもよい。斯かる液拡散性シート11としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布を挙げることができる。液拡散性シート11の厚さは0.1mm以上であることが好ましく、その坪量は15g/m
2以上であることが好ましい。液拡散性シート11の形状は、特に制限はないが、尿等の液体がくまなく吸収体20に拡散するよう、吸収体20の表面を完全に覆うことができる形状であることが好ましい。
【0017】
[バックシート]
バックシート30は、吸収性物品1の外部に体液が漏れないよう、液不透過性を有し、遮水性を有するシート材が用いられるが、ムレ防止のために透湿性を有していてもよい。このような特性を有するバックシート30の材料としては、例えば、ポリエチレンシートやポリエチレンラミネート不織布等の厚みの薄いプラスチックシートを挙げることができる。バックシート30の坪量は、15g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。バックシート30は、着用者の股部が位置づけられる長手方向中央に括れ部を有する砂時計形状、略矩形形状等の形状を有していてもよく、吸収体20の側縁より若干外方に延在して設けられていてもよい。バックシート30の衣類接触側表面には、着用時に下着等に吸収性物品1を固着するための粘着剤層60が設けられていてもよい。吸収性物品1が粘着剤層60を有する場合、粘着剤層60を保護するための剥離シート65を有していてもよく、この剥離シート65は、吸収性物品1の包装シートと部分的に接合されていてもよい。トップシート10及びバックシート30は、長手方向端部等、端部の少なくとも一部において、吸収体20を挟まずに、ホットメルト接着剤やヒートシール等により固着されるフラップを形成していてもよい。
【0018】
[吸収体]
吸収体20は、基材としての吸収性繊維と、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、SAPとも称する)と、を含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキン、おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体20の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、100g/m
2以上800g/m
2以下の坪量とすることが好ましい。
【0019】
吸収体20の高吸水性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。吸収体20のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、50g/m
2以上500g/m
2以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上60質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0020】
吸収体20において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態であることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体20の形状の安定化の目的から、吸収体20をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよく、キャリアシートで吸収体20を包む際の包み方は特に限定されるものではない。
【0021】
吸収体20は、上層吸収体と下層吸収体とを積層してなるものであってもよい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より大きくてもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法と同じであってもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より小さくてもよい。
【0022】
[圧搾溝]
図1に示すように、本発明の吸収性物品1においては、前部1aと股部1bとの境界部、及び股部1bと後部1cとの境界部の折り線40が形成される領域の近傍に圧搾溝21が、吸収性物品1の幅方向に沿って形成されている。このように圧搾溝21が形成されていることにより、折り線40における吸収体20の嵩が低減されるため、折り線40を谷として折り曲げた際に、吸収性物品1を展開した後においても、折り癖や折りじわが残りらないようになっている。
【0023】
(圧搾溝の形状)
図3は、圧搾溝21の平面形状を示す図面である。
図1及び
図3に示すように、圧搾溝21は、折り線40を中心に前後方向(Y方向)に凸となっていることが好ましい。ここで、圧搾溝21の長手方向における境界線は、前後方向に凸となった曲線であってもよく、三角形の2辺のような前後方向に凸となった屈曲線であってもよい。したがって、圧搾溝21は、
図3(a)に示すように、幅方向中央線近傍に膨らみを有する凸レンズ状の形状を有していてもよく、
図3(b)に示すように、幅方向中心線近傍に2角を有する6角形の形状を有していてもよい。
【0024】
(圧搾溝の幅方向及び長手方向の寸法)
幅方向における圧搾溝21の寸法Cは、吸収体20の幅方向の寸法の60%以上90%以下となるように設けられており、70%以上85%以下であることが好ましい。幅方向における圧搾溝21の寸法Cを上記の範囲内のものとすることにより、圧搾溝21からの体液の横漏れを効果的に防止することができる。また、幅方向中心線近傍の圧搾溝21の長手方向における寸法Aは、5mm以上25mm以下、好ましくは10mm以上15mm以下であり、圧搾溝21の幅方向両端部の長手方向における寸法Bは、3mm以上10mm以下、好ましくは4mm以上8mm以下である。圧搾溝21が幅方向中心線近傍において広くなるように設計されていることにより、圧搾溝21の深さを幅方向中心線近傍で深くした構成と相俟って、吸収体20上の体液が圧搾溝21の両端部から横漏れすることを効果的に防止することができる。
【0025】
(圧搾溝の深さ)
幅方向中心線近傍の圧搾溝21の深さDは、吸収体20の厚さの50%以上80%以下であり、65%以上75%以下であることが好ましい。
図2(b)に示すように、吸収体20の深さは、幅方向中心線近傍から、幅方向両端部に向かい徐々に浅くなっており、圧搾溝21の幅方向両端部における深さEは、吸収体20の厚さの10%以上30%以下であることが好ましい。圧搾溝21の深さは、吸収体20の厚さについての上記条件を充足する範囲で、2.0mm以上9.0mm以下とすることが好ましく、4.0mm以上7.0mm以下とすることがより好ましい。
【0026】
(圧搾溝の断面形状等)
図4は、
図1におけるY
1−Y
1線による断面図を示す図面である。
図4に示すように、圧搾溝21の断面形状は、身体接触側表面側を上面とし、衣類接触側表面側を下面としたときに、長手方向断面において、下面の寸法は上面の寸法よりも狭くてもよく、下面の寸法が上面の寸法と同じであってもよい。したがって、
図4に示すように、圧搾溝21の長手方向断面の形状は、本発明の効果を損なわない範囲で、四角形状としても、逆台形状としてもよい。なお、下面の寸法を上面の寸法よりも狭くした場合、特に、吸収性物品1の折り癖や折りじわを効果的に低減しつつも、圧搾溝21に滞留することが予想される体液を、吸収体20に効果的に吸収させることができる。
【0027】
[チャネルエンボス]
本発明の吸収性物品1においては、前部1a、股部1b、及び後部1cにそれぞれ、トップシート10から吸収体20に亘るチャネルエンボスが形成されている。ここで、股部1bに形成されているチャネルエンボスを第1のチャネルエンボス22と称し、前部1a及び後部1cに形成されているチャネルエンボスを第2のチャネルエンボス24と称することとし、以下に各チャネルエンボスの構成を説明する。
【0028】
(第1のチャネルエンボス)
吸収性物品1の股部1bには、幅方向中心線の両側に、長手方向に沿って、トップシート10から吸収体20に亘る、少なくとも1対の第1のチャネルエンボス22が形成されており、この第1のチャネルエンボス22は、幅方向中心線に向かって凸となっている。第1のチャネルエンボス22がこのような構成を採用することにより、股部1bの体液排出部に排出された体液は、第1のチャネルエンボス22に沿って、吸収体20のX方向及びY方向の両方向に二次元的に拡散することとなり、吸収体20の表面に効果的に拡散されることとなる。このため、排出された体液が、吸収体20上の一部の領域に滞留せず、特に圧搾溝21からの体液の横漏れを効果的に防止できる。第1のチャネルエンボス22は、2対以上設けられていてもよい。
【0029】
(第2のチャネルエンボス)
本発明の吸収性物品1においては、前部1a及び後部1cに、幅方向に沿って、トップシート10から吸収体20に亘る第2のチャネルエンボス24が形成されており、この第2のチャネルエンボス24は、長手方向端部に向かって凸の略半円弧状となっている。吸収性物品1の前部1a及び後部1cに、第2のチャネルエンボス24を設けることにより、前部1a及び後部1cの吸収体20の表面に、体液をより広く拡散させることができるため、吸収体20の表面の一部の領域に体液が滞留せず、特に圧搾溝21からの体液の横漏れを効果的に防止することができる。
【0030】
(チャネルエンボスの深さ)
チャネルエンボスの深さは、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜設定することができるが、例えば、1.0mm以上5.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以上3.5mm以下であることがより好ましい。チャネルエンボスの深さが上記の範囲内であることにより、体液の効率的な拡散が促されるとともに、体液の吸収も阻害されない。
【0031】
[立体ギャザー]
図2に示すように、吸収性物品1の身体接触側表面には、立体ギャザー50が設けられていてもよい。この立体ギャザー50は、トップシート10とともに体液の閉じ込め空間を形成し、体液の横漏れを防止できるようになっている。立体ギャザー50は、立体ギャザーシート51と、立体ギャザーシート51の自由端部に沿って配された伸縮性弾性部材52と、を備えていることが好ましい。伸縮性弾性部材52としては、天然ゴム、合成ゴム、及びポリウレタン等からなる、糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができる。
【0032】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、必要に応じて、液拡散性シート11及び立体ギャザー50をあらかじめトップシート10に配置した上で、圧搾溝21を形成した吸収体20をトップシート10とバックシート30との間に挟持し、トップシート10から吸収体20に亘るチャネルエンボスを形成させつつ、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定することで製造することができる。そして、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折り等にして折り畳めばよい。
【0033】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。