(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明樹脂層を構成する樹脂が、オレフィン系樹脂、ポリカーボネイト樹脂、メタクリルスチレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂のうちのいずれかである請求項1から6いずれかに記載の透明樹脂フィルム。
模様層を順次形成して順に積層し、最後に無空隙層を積層する請求項1から7記載の透明樹脂フィルムの製造方法であって、一層目の模様層上に、低温状態の前記模様層と同種の透明樹脂を用いて模様の賦形を行い模様層を成形するとともに、高温状態の前記模様層と同種の透明樹脂の平坦層を前記一層目の前記万線状溝の成形面側に積層した模様層を積層する工程を一回もしくは複数回行う一種二層で溶融押出成形する工程と、平滑透明フィルムを積層する工程よりなることを特徴とする透明樹脂フィルムの製造方法。
基材層上に模様層を順次形成して順に積層し、最後に無空隙層を積層する請求項8または9記載の光学シートの製造方法であって、基材層上に、低温状態の前記模様層と同種の透明樹脂を用いて模様の賦形を行い模様層を成形するとともに、高温状態の前記模様層と同種の透明樹脂の平坦層を前記一層目の前記万線状溝の成形面側に積層した模様層を積層する工程を一回もしくは複数回行う一種二層で溶融押出成形する工程と、平滑透明フィルムを積層する工程よりなることを特徴とする光学シートの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
レンズ方式の部材はその表面に凹凸形状を形成するため、その表面の汚れや傷に弱いという欠点を併せ持っている。
【0009】
これは、その表面形状の凸部に擦れの応力が集中することから傷が入りやすく、また、凹部には汚れが溜まりやすい、というように、その形状に起因している。
【0010】
さらに擦れなどへの耐久性を向上させる手段として、表面硬化層を設けるハードコートを施すことも可能であるが、凹凸形状が埋まったり、あるいは、表面硬化層の塗工の不均一性から、最表面の凹凸形状が変わってしまうことで、せっかく形成したレンズの効果を減じてしまう難点がある。
【0011】
一方で、凹凸を形成した表面を、屈折率の違う樹脂で包埋し、凹凸による光屈折効果と表面の平滑面を両立する手法もあるが、その凹凸境界面の屈折率差で生じる光屈折効果は、樹脂の屈折率差は、空気−樹脂間のそれよりも小さくなるため、やはりレンズの効果を減じてしまうことから、その光学的な自由度が制限されてしまい、表現力に限界があった。
【0012】
また、表面に凹凸が露出した形態では、その表面形状のトレースや転写による複製が容易に行えるため、偽造を防止する効果は限定的となってしまう。
【0013】
本発明の課題は、平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた万線状溝の模様が空隙により形成された構造を用いたセキュリティ用などに用いられる部材において、多彩な表現力とその耐久性を両立した、透明樹脂フィルムと光学シートとそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
まず、フィルムを透明樹脂からなる透明体として最も外側の表面を凹凸の無い平滑面とし、光を制御する構造を内部に設ける。これにより、表面硬化層を設けても不具合は生じない。
【0015】
このために、光を制御するため、平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた万線状溝の模様が空隙により設けられた模様層を二層以上設けレンズやプリズム状の構造を、透明樹脂フィルム内部に配設する。
【0016】
この場合、光屈折を利用することから、その効果を高めるために、その屈折面での屈折率差が必要となる。
【0017】
そこで、本発明では、模様層および無空隙層で囲まれた空隙を形成、例えば、エンボスパターンで囲まれた閉じた空気層を形成することで、空隙の形状に規則性を持たせ、その規則性による効果を発現させる。
【0018】
たとえば、レンズ形状をエンボスパターンとして、その周囲を空気層とすることで、表面に設けたたレンズと同等の効果を得ることができる。
【0019】
このように模様断面が曲面とか傾斜面とすることにより、いっそう好ましくレンズと同等の効果を得ることができる。
【0020】
また、こうして得られる透明樹脂シートは、いわゆる発泡層とは異なり、空隙との境界面形状に規則性を持たせることができるので、その規則性、例えば、平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた万線状溝の模様の空隙による効果を発現することができる。
【0021】
この透明樹脂層の内部に空隙からなる模様の溝形状を作るために、例えば、エンボス法を用いて透明樹脂層の表面に反射用の凹凸部を形成した後に、これと同じ樹脂で最外面が平滑面となるようにもう一層「蓋」に相当する無空隙層を設ける。
【0022】
各層間を一体化する接着方法については、接着剤を用いる場合、部材と接着剤の屈折率が一致しないために境界面での反射光が生じてしまい、狙った効果が得られないばかりか、構成部材が増えるためにコストの増加にも繋がり、好ましくない。また、押出法を用いたエンボスプロセスにおいても、高温の樹脂をシートに押出して加工するため、エンボス済みのシート上に樹脂を押出した場合にはエンボスの凹凸も溶融し、消失してしまうといった問題がある。
【0023】
また、本発明では、空隙となる空気層の溝形状の模様を作るための凹凸面を形成したエンボスフィルムと、蓋となる平坦な無空隙層となる平滑透明フィルムを形成する際の樹脂を一種二層の共押出しとしている。そして、空気層の溝形状の模様を作るための凹凸面が形成された第一層を溶融吐出ギリギリの低温で押出し、この第一層に接触する第二層を溝形状深さよりも薄く、かつ、高温で押出し、シートの形成を行なう方法で、内部に空隙を有した透明樹脂フィルムを一括成形で得られることを見出した。
【0024】
具体的には、請求項1に記載の発明では、複数の模様層、複数の無空隙層、接着層を有する透明樹脂フィルムであって、前記模様層は、層内部に空隙からなる平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた万線状溝の模様が形成された透明樹脂層であり、前記無空隙層は、表面が平滑面で構成され、空隙を有しない透明樹脂層であり、前記接着層は、前記模様層の模様が形成されていない側に設けられ、
透明樹脂フィルムの各層間の接合部が溶融により接合されていることを特徴とする透明樹脂フィルムを提供する。
【0025】
具体的には、請求項2に記載の発明では、前記一つの模様層の万線状溝の模様が、他の模様層の万線状溝の模様と
異なる配置とされていることを特徴とする請求項1記載の透明樹脂フィルムを提供する。
【0026】
具体的には、請求項3に記載の発明では、模様層の模様断面
に垂直端面
を含まないことを特徴とする請求項1または2記載の透明樹脂フィルムを提供する。
【0027】
具体的には、請求項4に記載の発明では、模様層の模様断面が曲面
を含み構成されることを特徴とする請求項3記載の透明樹脂フィルムを提供する。
【0028】
具体的には、請求項5に記載の発明では、模様層の模様断面が傾斜面
を含み構成されることを特徴とする請求項3記載の透明樹脂フィルムを提供する。
【0029】
請求項6に記載の発明では、
前記模様層がエンボスフィルム、前記無空隙層が平滑透明フィルムである請求項1から5いずれかに記載の透明樹脂フィルムを提供する。
【0030】
請求項7に記載の発明では、
前記透明樹脂層を構成する樹脂が、オレフィン系樹脂、ポリカーボネイト樹脂、メタクリルスチレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂のうちのいずれかである請求項1から6いずれかに記載の透明樹脂フィルムを提供する。
【0031】
請求項8に記載の発明では、
請求項1から7のいずれかに記載の透明樹脂フィルムと基材層が積層していることを特徴とする光学シートを提供する。
【0032】
請求項9に記載の発明では、
基材層が木目シートであることを特徴とする請求項8記載の光学シートを提供する。
【0033】
請求項10に記載の発明では、
模様層を順次形成して順に積層し、最後に無空隙層を積層する請求項1から7記載の透明樹脂フィルムの製造方法であって、一層目の模様層上に、低温状態の前記模様層と同種の透明樹脂を用いて模様の賦形を行い模様層を成形するとともに、高温状態の前記模様層と同種の透明樹脂の平坦層を前記一層目の前記万線状溝の成形面側に積層した模様層を積層する工程を一回もしくは複数回行う一種二層で溶融押出成形する工程と、平滑透明フィルムを積層する工程よりなることを特徴とする透明樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【0034】
請求項11に記載の発明では、
基材層上に模様層を順次形成して順に積層し、最後に無空隙層を積層する請求項8または9記載の光学シートの製造方法であって、基材層上に、低温状態の前記模様層と同種の透明樹脂を用いて模様の賦形を行い模様層を成形するとともに、高温状態の前記模様層と同種の透明樹脂の平坦層を前記一層目の前記万線状溝の成形面側に積層した模様層を積層する工程を一回もしくは複数回行う一種二層で溶融押出成形する工程と、平滑透明フィルムを積層する工程よりなることを特徴とする光学シートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、内部中に空隙を設けたことにより、その空隙の形状などで反射光の方向を制御し、かつ内部に空隙層を二層以上の多層に設けることで、その空隙の形状により生じる反射光と相まって、光沢やモアレなどの表現を実現することができ、フィルム内部における光反射効果により、独特の風合いを持たせることができると同時に、その多彩な表現力などを得ることができる透明樹脂フィルム、光学シートとその製造方法を提供することができる。
【0038】
コピーはもちろん、容易には偽造や贋造できない高いセキュリティを有する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳しく説明する。
【0041】
図1は、本実施の形態の光学シート1の概略構成を示す縦断面図である。本実施の形態の光学シート1は、基材層となる基材シート2の上に、透明樹脂フィルムである透明多層反射フィルムが第1接着層S1を介して接着されて形成されている。
【0042】
なお、以下本実施の形態では、透明多層反射フィルムが、透明二層反射フィルム3の例を示す。
【0043】
この場合、第1接着層S1は必須構造ではないが、現実的には基材シート2と透明二層反射フィルム3との接着力が不十分な場合が多いので、接着力確保のために第1接着層S1を適宜設けてもよい。また、光学シート1の厚さは、概50μm〜300μm、が好適である。
【0044】
透明二層反射フィルム3は、平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた万線状溝の模様が透明樹脂中の空隙により形成された透明反射フィルムのエンボスフィルムを二段に積層した積層フィルム4を有する。
【0045】
もちろん、この場合の説明はエンボスフィルムだが、エンボスで形成する必然性はなく、この実施形態の様に模様層と無空隙層が一体となっている必要はなく、分離していて、無空隙層上に模様層を付加する構成でもよいのは当然である。
【0046】
以下ここでは、積層フィルム4を構成する二段のエンボスフィルムの一方を第1エンボスフィルム4A、他方を第2エンボスフィルム4Bと称する。
【0047】
第1エンボスフィルム4Aは、表面に平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた第1万線状溝6Aの模様(
図3参照)が形成された透明樹脂フィルムによって形成されている。
【0048】
この第1エンボスフィルム4Aの上に、第2エンボスフィルム4Bが第2接着層S2を介して接着されて形成されている。そして、第1万線状溝6Aの模様は、第1エンボスフィルム4Aの表面と第2エンボスフィルム4Bの下面の第2接着層Sとの間の空隙により構成されていている。なお、第2接着層S2は必須構造ではないが、現実的には第1エンボスフィルム4Aと第2エンボスフィルム4Bとの接着力が不十分な場合が多いので、接着力確保のために第2接着層S2を適宜設けてもよい。
【0049】
第2エンボスフィルム4Bは、少なくとも第一層7と第二層8とが一体的に積層された積層体によって形成されている。本実施の形態では、第一層7は、第1エンボスフィルム4Aの表面の第1万線状溝6Aの模様と同じ万線状模様の第2万線状溝6Bが形成された
透明樹脂の第1エンボス層によって形成されている。
【0050】
第二層8は、透明樹脂のエンボス層8aと、表面層8bとを積層した構成を有する。エンボス層8aは、第一層7の上に積層され、第一層7との接合面と反対側の面に同一材料で形成された表面層8bがさらに接合され、表面層8bの表面に平滑面8cが形成されている。
【0051】
もちろん、当初より平滑が維持されていれば平滑面を形成する工程等は不要である。
【0052】
図2に示すように第2万線状溝6Bの模様は、積層体の第一層7と第二層8との間の空隙により構成されていている。
【0053】
ここで、透明二層反射フィルム3の積層体は、第1エンボスフィルム4Aと、第2エンボスフィルム4Bの第一層7と第二層8とがそれぞれ同一材料の透明樹脂で形成されている。光学特性と接着性が十分であれば必ずしも同一材料である必要でないが、一般的には同一材料で形成する。また、界面反射等の特殊効果を狙ってわざわざ別材料を用いるのもありうる。
【0054】
透明樹脂の材料としては、オレフィン系樹脂を用いることが可能で、具体的には、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、塩化ビニールが挙げられる。これらは、易加工性と柔軟性を有しており、仕上がり品も風合いが良い。また、一般的な透明樹脂を用いた構成も可能である。その中でも、加工が比較的容易なプラスチック材料として、例えば、ポリカーボネイト樹脂、MS(メタクリルスチレン)樹脂などを用いれば耐衝撃性に優れた割れにくい特徴を持たせる事が出来、アクリル系樹脂やポリスチレン系樹脂を用いれば耐擦性に優れた特徴を得る事ができる。
【0055】
また、透明二層反射フィルム3の第2エンボスフィルム4Bの積層体は、第一層7の第2万線状溝6Bの溝深さよりも第二層8の第2エンボス層8aの厚さの方が小さく設定され、かつ第一層7の上面と第二層8の下面との接合部が溶融状態で接合されて一体化され、これにより空隙が形成される。
【0056】
なお、第一層7の第2万線状溝6Bの溝深さよりも第二層8のエンボス層8aの厚さの方が大きい構成も採りうる。
【0057】
さらに、第一層7と第二層8との接合時の成形温度は、第一層7よりも第二層8の温度が高い温度で成形されている。なお、
図1の透明二層反射フィルム3の断面図では、便宜上、透明二層反射フィルム3の積層体の各層間を明示するために境界線を表示しているが、実際は各層間の接合部が溶融状態で接合されて一体化されている。そのため、透明二層反射フィルム3は、積層体の各層間の境界線は明示されない一体物である。
【0058】
第1エンボスフィルム4Aの第1万線状溝6Aと、第2エンボスフィルム4Bの第2万線状溝6Bのパターンは、万線状の線幅が概100μm程度、溝の深さが概30μm程度に設定することが好適である。
【0059】
本実施の形態の透明二層反射フィルム3の積層フィルム4の第2エンボスフィルム4Bの製造に際しては、第一層7の樹脂温度を低く、第二層8のエンボス層8aの樹脂温度を高くする事で、コシなどのシートの成形性と、パターン転写性や融着性を得ることが出来る。樹脂種類にも拠るが、フローマークの生じない範囲で温度差を設ければよく、PE(例えば日本ポリエチレン製LC600A)やPMMA(例えば三菱レイヨン製VH000)などでは概ね10℃〜20℃程度の温度差を付ける事が出来る。
【0060】
本実施の形態の透明二層反射フィルム3の製造方法として、生産性に優れたTダイによる多層押出法を用いた場合について説明する。Tダイによる多層押出法とは、異種の樹脂をそれぞれ溶融して吐出させる複数の押出機をフィードブロックに接続し、フィードブロック内で合流多層化してTダイから多層樹脂膜として吐出し、冷却ロールで樹脂を冷却しながらシーティングを行う方式である。
【0061】
この多層押出しを行う際には、フローマークの発生を防ぐ事が重要であるが、一般には、各層の樹脂の、Tダイ吐出後の流速を揃えることで行う。本実施の形態においては、各層で同一樹脂を使用するが、温度を変えて粘度を変えるため、Tダイ内で多層化される樹脂の温度差を、フローマークが発生しない吐出条件温度とし、フローマークの無い良好な樹脂膜を得ればよい。
【0062】
本実施の形態の光学シート1の製造装置11は、3つのシート成形装置を有する。それはすなわち、第1のシート成形装置12a(
図4参照)と、第2のシート成形装置12b(
図6参照)と、第3のシート成形装置12c(
図8参照)である。
【0063】
第1のシート成形装置12aは、光学シート1の製造工程の第1の積層工程として、基材シート2の上に、第1エンボスフィルム4Aを積層した第1積層体28Aを形成する工程を行う成形装置である。第2のシート成形装置12bは、光学シート1の製造工程の第2の積層工程として、第1積層体28Aの上に第2エンボスフィルム4Bの第一層7を積層した第2積層体28Bを形成する工程を行う成形装置である。第3のシート成形装置12cは、光学シート1の製造工程の第3の積層工程として、第2積層体28Bの上に第2エンボスフィルム4Bの第二層8を積層した最終の成形品59を形成する工程を行う成形装置である。
【0064】
第1のシート成形装置12aは、
図4に示すように2つの押出機と、Tダイ15と、引取り機の3つの冷却ロールと、基材シート2の供給ロール19とを有する。
【0065】
この場合の2つの押出機とは、第1押出機13と、第2押出機14であり、引取り機の3つの冷却ロールは、第1冷却ロール16と、第2冷却ロール17と、第3冷却ロール18である。
【0066】
第1押出機13には、第1エンボスフィルム4Aを構成する透明樹脂材料である第1の樹脂材料のペレットが供給される。そして、この第1押出機13内で樹脂材料のペレットが溶融された状態で、第1の溶融樹脂材料が第1の溶融樹脂材料の供給路20を介してTダイ15に供給される。また、第2押出機14は、木目印刷シートである基材シート2と接着を行なう第2の樹脂材料のペレットが第1接着層S1となるべく供給される。そして、この第2押出機14内で樹脂材料のペレットが溶融された状態で、第2の溶融樹脂材料が第2の溶融樹脂材料の供給路21を介してTダイ15に供給される。
【0067】
Tダイ15は、2つの溶融樹脂供給口である第1供給口22と第2供給口23と、1つの吐出口24とを有する。
【0068】
そして、第1供給口22には、第1の溶融樹脂材料の供給路20が連結され、第1押出機13から第1の溶融樹脂材料が供給される。また、第2供給口23には、第2の溶融樹脂材料の供給路21が連結され、第2押出機14から第2の溶融樹脂材料が供給される。
【0069】
Tダイ15の内部には、第1の溶融樹脂材料のシート、すなわち第1のシート25と、第2の溶融樹脂材料のシート、すなわと第2のシート26とを合流して積層させる合流部
が設けられている。このTダイ15の内部の合流部で積層された第1のシート25と第2のシート26との積層体のシートである第1の積層体シート27は、Tダイ15の吐出口24からシート状に吐出される。ここで、Tダイ15から吐出される樹脂である第1の積層体シート27は、2つの押出機である第1押出機13と、第2押出機14の回転数、温度条件などを調整し、適切な層比、厚みをコントロールできる。なお、Tダイ15の上流部分に設けられるフィードブロック(図示せず)などで第1のシート25と第2のシート26とを合流、多層化を行っても良い。
【0070】
引取り機の3つの冷却ロールである第1冷却ロール16と、第2冷却ロール17と、第3冷却ロール18は、並設されている。第1冷却ロール16と第3冷却ロール18とは、円筒状の加圧ローラである。第2冷却ロール17は、第1冷却ロール16と第3冷却ロール18との間に配置され、外周面に透明樹脂の第1エンボスフィルム4Aの第1万線状溝6Aの凹凸模様と逆凹凸のエンボスパターン17aが刻設されている。エンボスパターン17aは、照り光を感じるように第1万線状溝6Aの凹凸模様の形状を適宜調整し、エンボス版として加工できる範囲で模様柄を構成すれば良い。
【0071】
第2冷却ロール17は、例えば鉄芯上に銅メッキを施して、その銅の層を彫刻、たとえばダイヤモンドバイトによる切削加工、砥石による研削加工、選択的に腐食を施すエッチング加工や、その他多くの既存のパターンニング技術を用いてエンボスパターン17aを製作することができる。さらに、銅メッキ上に、クロムメッキを施すことで、表面硬度の向上による銅層の保護を図ることが可能となる。このほかにも金属や、セラミックをシリンダー表面に溶射、研磨を施して耐久性の高いロールを使用したり、ニッケル表面に形状を刻んだロール等を用いても良い。
【0072】
第1冷却ロール16と、第2冷却ロール17との間には、供給ロール19から繰り出される基材シート2と、Tダイ15の吐出口24からシート状に吐出される第1の積層体シート27とが同時に導入される。このとき、引取り機に到達した第1の積層体シート27の溶融樹脂は、第1冷却ロール16と、第2冷却ロール17との間で基材シート2と一緒に挟み込むが、その際に、第1の積層体シート27の第1のシート25が第2冷却ロール17に密着するようにロール温度、トルク、挟圧を調整する。
【0073】
これにより、第1冷却ロール16と、第2冷却ロール17との間を通過する際に、
図5に示すように第2冷却ロール17のエンボスパターン17aの形状が第1の積層体シート27の第1のシート25に転写される。このとき、同時に、基材シート2の上に、第1の積層体シート27の第1のシート25が第2のシート26を介して積層される状態で接着され、第1積層体28Aが成形される。
【0074】
続いて、第1積層体28Aは、第2冷却ロール17と第3冷却ロール18との間を通過する。このとき、第2冷却ロール17と第3冷却ロール18とで除熱を行い、第2冷却ロール17と第3冷却ロール18の温度差や、張力等を用いて第1積層体28Aの反りを矯正しながらシーティングを行い、更に下流部分で巻き取ることで、透明二層反射フィルム3の積層フィルム4の第1エンボスフィルム4Aと、基材シート2とが一体に接着された木目シートである光学シート1の第1積層体28Aを得ることができる。
【0075】
第2のシート成形装置12bは、
図6に示すように2つの押出機である第3押出機29と第4押出機30と、Tダイ31と、引取り機の3つの冷却ロールである第4冷却ロール32と第5冷却ロール33と第6冷却ロール34と、第1積層体28Aの供給ロール35とを有する。供給ロール35には、第1のシート成形装置12aで形成された第1積層体28Aが巻装されている。
【0076】
第3押出機29には、透明二層反射フィルム3の第2エンボスフィルム4Bの第一層7を構成する透明樹脂材料である第3の樹脂材料のペレットが供給される。そして、この第3押出機29内で樹脂材料のペレットが溶融された状態で、第3の溶融樹脂材料が供給路36を介してTダイ31に供給される。また、第4押出機30は、第2接着層S2を構成する透明樹脂材料である第4の樹脂材料のペレットが供給される。そして、この第4押出機30内で樹脂材料のペレットが溶融された状態で、第4の溶融樹脂材料が供給路37を介してTダイ31に供給される。
【0077】
Tダイ31は、2つの溶融樹脂供給口である第3供給口38と第4供給口39と、1つの吐出口40とを有する。そして、第3供給口38には、第3の溶融樹脂材料の供給路36が連結され、第3押出機29から第3の溶融樹脂材料が供給される。また、第4供給口39には、第4の溶融樹脂材料の供給路37が連結され、第4押出機30から第4の溶融樹脂材料が供給される。
【0078】
Tダイ31の内部には、第3の溶融樹脂材料のシートである第3のシート41と第4の溶融樹脂材料のシートである第4のシート42とを合流して積層させる合流部が設けられている。
【0079】
このTダイ31の内部の合流部で積層された第3のシート41と第4のシート42との積層体のシートである第2の積層体シート43は、Tダイ31の吐出口40からシート状に吐出される。ここで、Tダイ31から吐出される樹脂である第2の積層体シート43は、2つの押出機である第3押出機29と第4押出機30の回転数、温度条件などを調整し、適切な層比、厚みをコントロールできる。なお、Tダイ31の上流部分に設けられるフィードブロック(図示せず)などで第3のシート41と第4のシート42とを合流、多層化を行っても良い。
【0080】
引取り機の3つの冷却ロールである第4冷却ロール32と、第5冷却ロール33と、第6冷却ロール34は、並設されている。第4冷却ロール32と第6冷却ロール34とは、円筒状の加圧ローラである。第5冷却ロール33は、第4冷却ロール32と第6冷却ロール34との間に配置されている。この第5冷却ロール33は、外周面に透明樹脂の第2エンボスフィルム4Bの第2万線状溝6Bの凹凸模様と逆凹凸のエンボスパターン33aが刻設されている。エンボスパターン33aは、照り光を感じるように第2万線状溝6Bの凹凸模様の形状を適宜調整し、エンボス版として加工できる範囲で模様柄を構成すれば良い。
【0081】
第4冷却ロール32と、第5冷却ロール33との間には、供給ロール35から繰り出される第1積層体28Aと、Tダイ31の吐出口40からシート状に吐出される第2の積層体シート43とが同時に導入される。このとき、引取り機に到達した第2の積層体シート43の溶融樹脂は、第4冷却ロール32と、第5冷却ロール33との間で第1積層体28Aと一緒に挟み込む。その際に、設定の限度は、樹脂種類や樹脂の吐出量、層厚みなどにより異なるが、成形品にフローマークが発生せず、かつ、第1積層体28Aの第1のシート25と、第2の積層体シート43の第4のシート42である第2接着層S2との間に第1万線状溝6Aの模様の空隙が維持できる条件とすれば良い。
【0082】
これにより、第2の積層体シート43と第1積層体28Aとが積層される。このとき、第1の積層体シート27の第1のシート25の上面と、第2の積層体シート43の第4のシート42である第2接着層S2の下面との接合部が溶融状態で接合されて一体化される。これにより、第1積層体28Aの上に、第2の積層体シート43の第3のシート41が第2接着層S2を介して積層された第2積層体28Bが形成される。そして、第1積層体28Aの第1のシート25と、第2の積層体シート43の第4のシート42である第2接着層S2との間の空隙により第1万線状溝6Aの模様が構成されていている。
【0083】
さらに、第2の積層体シート43の第3のシート41が第5冷却ロール33に密着するようにロール温度、トルク、挟圧を調整する。これにより、第4冷却ロール32と、第5冷却ロール33との間を通過する際に、
図7に示すように第5冷却ロール33のエンボスパターン33aの形状が第2の積層体シート43の第3のシート41に転写される。
【0084】
続いて、第5冷却ロール33と第6冷却ロール34とで除熱を行う。このとき、冷却ロールの温度差や、張力等を用いてシートの反りを矯正しながらシーティングを行い、更に下流部分で巻き取ることで、光学シート1の第2積層体28Bを得ることができる。
【0085】
第3のシート成形装置12cは、
図8に示すように2つの押出機である第5押出機44と第6押出機45と、Tダイ46と、引取り機の3つの冷却ロールである第7冷却ロール47と第8冷却ロール48と第9冷却ロール49と、第2積層体28Bの供給ロール50とを有する。供給ロール50には、第2のシート成形装置12bで形成された第2積層体28Bが巻装されている。
【0086】
第5押出機44には、透明二層反射フィルム3の第2エンボスフィルム4Bの第二層8の表面層8bを構成する透明樹脂材料である第5の樹脂材料のペレットが供給される。そして、この第5押出機44内で樹脂材料のペレットが溶融された状態で、第5の溶融樹脂材料が供給路51を介してTダイ46に供給される。また、第6押出機45は、透明二層反射フィルム3の第二層8の第2エンボス層8aを構成する透明樹脂材料である第6の樹脂材料のペレットが供給される。そして、この第6押出機45内で樹脂材料のペレットが溶融された状態で、第6の溶融樹脂材料が供給路52を介してTダイ46に供給される。
【0087】
Tダイ46は、2つの溶融樹脂供給口である第5供給口53と第6供給口54と、1つの吐出口55とを有する。そして、第5供給口53には、第5の溶融樹脂材料の供給路51が連結され、第5押出機44から第5の溶融樹脂材料が供給される。また、第6供給口54には、第6の溶融樹脂材料の供給路52が連結され、第6押出機45から第6の溶融樹脂材料が供給される。
【0088】
Tダイ46の内部には、第5の溶融樹脂材料のシートである第5のシート56と第6の溶融樹脂材料のシートである第6のシート57とを合流して積層させる合流部が設けられている。このTダイ46の内部の合流部で積層された第5のシート56と第6のシート57との積層体のシートである第3の積層体シート58は、Tダイ46の吐出口55からシート状に吐出される。
【0089】
ここで、Tダイ46から吐出される樹脂である第3の積層体シート58は、2つの押出機である第5押出機44と第5押出機45の回転数、温度条件などを調整し、適切な層比、厚みをコントロールできる。例えば、第2エンボス層8aの樹脂温度を高く、表面層8bの樹脂温度を低く設定する。なお、Tダイ46の上流部分に設けられるフィードブロック(図示せず)などで第5のシート56と第6のシート57とを合流、多層化を行っても良い。
【0090】
引取り機の3つの冷却ロールである第7冷却ロール47と第8冷却ロール48と第9冷却ロール49は、並設されている。第7冷却ロール47と第9冷却ロール49とは、円筒状の加圧ローラである。第8冷却ロール48は、第7冷却ロール47と第9冷却ロール49との間に配置されている。この第8冷却ロール48は、外周面が鏡面状に成形され、ミラーロールが形成されている。
【0091】
第7冷却ロール47と、第8冷却ロール48との間には、供給ロール50から繰り出される第2積層体28Bと、Tダイ46の吐出口55からシート状に吐出される第3の積層体シート58とが同時に導入される。
【0092】
このとき、引取り機に到達した第3の積層体シート58の溶融樹脂は、第7冷却ロール47と、第8冷却ロール48との間で第2積層体28Bと一緒に挟み込む。その際に、設定の限度は、樹脂種類や樹脂の吐出量、層厚みなどにより異なるが、成形品にフローマークが発生せず、かつ、第2積層体28Bの第1エンボス層の第一層7と、第3の積層体シート58の第6のシート57である第2エンボス層8aとの間に第2万線状溝6Bの模様の空隙が維持できる条件とすれば良い。これにより、第3の積層体シート58と第2積層体28Bとが積層される。
【0093】
このとき、第2積層体28Bの第一層7の上面と、第3の積層体シート58の第6のシート57である第2エンボス層8aの下面との接合部が溶融状態で接合されて一体化される。これにより、第2積層体28Bの第一層7の上面と、第3の積層体シート58の第6のシート57である第2エンボス層8aの下面との間の空隙により第2万線状溝6Bの模様が構成されている。
【0094】
さらに、第3の積層体シート58の第5のシート56が第8冷却ロール48に密着するようにロール温度、トルク、挟圧を調整する。このとき、第5のシート56が第8冷却ロール48のミラーロールに密着する事で、第3の積層体シート58の第5のシート56の表面に平滑面8cを転写させることが出来る。
【0095】
続いて、第8冷却ロール48と第9冷却ロール49とで除熱を行う。このとき、冷却ロールの温度差や、張力等を用いてシートの反りを矯正しながらシーティングを行い、更に下流部分で巻き取ることで、木目シートである光学シート1の成形品59を得ることができる。
【0096】
なお、木目シートである光学シート1の成形品59の各層への樹脂吐出量の比率は、フローマークや、形状転写に影響の無い樹脂温度が維持でき、フローマークが生じないように設定する。例えば、主層、すなわち第一層7の第1エンボス層に粘度の高い樹脂を選定し、表層、すなわち第二層8の表面層8b、あるいは裏層、すなわち第二層8のエンボス層8a側を主層よりも樹脂粘度の低い樹脂として、フローマークが消える温度条件にて吐出することで光学シート1の成形品59を作ることが好ましい。
【0097】
上記構成の本実施の形態の光学シート1にあっては次の効果を奏する。
【0098】
すなわち、本実施の形態では、基材シート2の上に、透明二層反射フィルム3が第1接着層S1を介して接着されて形成されている。透明二層反射フィルム3は、第1万線状溝6Aを有する第1エンボスフィルム4Aと、第2万線状溝6Bを有する第2エンボスフィルム4Bとを重ね合わせた積層構造を有する。そして、第1エンボスフィルム4Aの表面と第2エンボスフィルム4Bの下面の第2接着層S2との間の空隙により第1万線状溝6Aの模様が構成され、第2エンボスフィルム4Bの第2万線状溝6Bの模様は、積層体の第一層7と第二層8との間の空隙により構成されていている。
【0099】
さらに、透明二層反射フィルム3の表面には平滑面8cが形成されている。これにより、
図10中に矢印で示すように透明二層反射フィルム3の平滑面8cに斜め方向から入射した光は、透明二層反射フィルム3の内部で第2万線状溝6Bの模様の空隙部と、第1万線状溝6Aの模様の空隙部との界面や、各空隙部間の壁部などで複雑に反射する反射光や、表面の平滑面8cで反射する反射光などが発生する。
【0100】
この場合、最表面の平滑面8cで反射する反射光L1によって光学シート1にグロス感を持たせることができる。さらに、透明二層反射フィルム3の内部で第2万線状溝6Bの模様の空隙部と、第1万線状溝6Aの模様の空隙部との界面や、各空隙部間の壁部などで複雑に反射する反射光によって充分な反射光効果が得られる。また、
図10中に点線矢印で示す反射光によってモアレが生じる。
【0101】
このモアレは、第1万線状溝6Aおよび第2万線状溝6Bやその絵柄模様の持つ繰返し構造の周期(逆数を取って空間周波数とすることもある)が、多層化する層同士の間で(n+0.1)倍(nは整数)となる場合に、強いモアレを生じる。また、n×√2倍とするとモアレは弱くなる。このモアレの強弱を用いることで、印刷等では表現できない絵柄を構成することが可能となり、反射光などの表現が可能となる。したがって、本実施の形態の光学シート1では、透明二層反射フィルム3の内部に空隙部を設け、その空隙部の形状などで反射光の方向を制御し、基材シート2の上に、内部に空隙部を多層に設けた透明二層反射フィルム3を積層することで、その空隙部の形状により生じる反射光により、「反射光」や「モアレ」などの表現を実現することができ、透明二層反射フィルム3の内部における光反射効果により、反射光に独特の風合いを持たせることができ、多彩な表現力を得ることができる。
【0102】
また、第2エンボスフィルム4Bの第一層7の第1エンボス層と、第二層8の第2エンボス層8aと、表面層8bとは全て同一の透明樹脂で構成され、各層間の接合部が溶融状態で接合されている。同様に、第1エンボスフィルム4A、第2接着層S2も同一の透明樹脂で構成され、各層間の接合部が溶融状態で接合されている。
【0103】
そのため、各層間の接合面では屈折率差を生じないので、各層間の境界面での光線の屈折は生じない。そして、第1エンボスフィルム4Aの表面と第2エンボスフィルム4Bの下面の第2接着層S2との間に第1万線状溝6Aの模様の空隙部が封じ込められ、かつ第一層7の第1エンボス層と、第二層8のエンボス層8aとの間に第2万線状溝6Bの模様の空隙部が封じ込められた構造を有している。
【0104】
そのため、本実施の形態の木目シートである光学シート1の第1万線状溝6Aと、第2万線状溝6Bの模様の溝構造の光反射による照り光の効果は、第1万線状溝6Aと、第2万線状溝6Bの模様の空隙部と透明樹脂層の屈折率差により生起されるので、この部分で強い反射光を発生させ、反射光の向上を図ることができる。
【0105】
また、本実施の形態では、第2エンボスフィルム4Bの第一層7は、平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた第2万線状溝6Bの模様(
図3参照)が形成された透明樹脂の第1エンボス層によって形成されている。第二層8は、透明樹脂の第2エンボス層8aと、表面層8bとを積層した構成を有する。第二層8のエンボス層8aは、第一層7の上に積層され、第一層7との接合面と反対側の面に同一材料で形成された表面層8bがさらに接合され、表面層8bの表面に平滑面8cが形成されている。
図2に示すように第2万線状溝6Bの模様は、積層体の第一層7と第二層8との間の空隙により構成されていている。
【0106】
これにより、表面層8bの最外面は平滑面8cとすることで、グロス感を得ることができる。また、表面層8bの最外面が平坦な平滑面8cとなっていることで、表面処理を容易に施すことが可能となる。これにより、表面層8bの平滑面8cにハードコートや、帯電防止などの最表面処理も行いやすい。マット加工などの表面の装飾との組合せも可能である。
【0107】
また、第一層7の第1エンボス層と、第二層8のエンボス層8aとの間に第2万線状溝6Bの模様の空隙の空気部を内包させているので、第2万線状溝6Bの模様が表面層8bの最外面に露出することはない。これにより、表面層8bを平滑面8cとすることが出来るので、グロス感を損なうことがなく、反射グロス感との共存ができる。
【0108】
また、第1万線状溝6Aや第2万線状溝6Bの模様の空隙の溝構造のパターンニングについては、従来のエンボス版での製造プロセスを使用できるので、容易に実現可能であり、低原価を得るには望ましい。さらに、第1万線状溝6Aや第2万線状溝6Bの模様の空隙の溝構造を閉空間とする木目シートである光学シート1の製造装置11も、1種二層の押出機が使用できれば良く、使用する樹脂もこれまでと同等である。
【0109】
更に、樹脂を環状オレフィン樹脂とする事で、賦形成形を容易にしつつ、優れた風合いの光学シート1を得ることができる。
【0110】
したがって、本実施の形態によれば、光学シート1の最表面にグロス感を持たせつつ、充分な反射光の効果が得られる透明二層反射フィルム3により、光学シート1などを得る透明反射フィルムとこれらの製造方法を提供することができる。
【0111】
また、本実施の形態の透明二層反射フィルム3では、第1エンボスフィルム4Aの第1万線状溝6Aの溝形状と、第2エンボスフィルム4Bの第2万線状溝6Bの溝形状とを適宜組み合せることで、「モアレ柄」での表現が可能となる。
【0112】
さらに、透明な繊維状のパターンを多層化して成形することで、自然な木材に近い複雑な照りを再現できる。
【0113】
以上の様な説明により形成されたエンボス形状は、模様層の模様断面として垂直端面であっても構わないが、これでは
図10の様な独特の風合いが出にくいため、好ましくは垂直ではない傾斜端面、好ましくはエンボス断面が曲線となる曲面であるのが好ましい。
【0114】
エンボス形状は凸円形状とし、それがその頂上部が溶融により接着する変形形状になっているが、もちろん他の形状の模様層の模様断面とすべく、異形の断面形状を用いるものでもよく、それにより風合いが変化し、セキュリティ性が向上する場合がある。
【0115】
図11は、本発明の第2の実施の形態の透明二層反射フィルム61を示す。なお、
図11中で、第1の実施の形態(
図1乃至
図10参照)と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。本実施の形態の透明二層反射フィルム61は、第1エンボスフィルム4Aの第1万線状溝6Aの溝形状の向きと、第2エンボスフィルム4Bの第2万線状溝6Bの溝形状の向きとをほぼ直交する状態に配置したものである。なお、第1エンボスフィルム4Aの第1万線状溝6Aの溝形状の向きと、第2エンボスフィルム4Bの第2万線状溝6Bの溝形状の向きの交差角度は、必ずしも正確に90°である必要はなく、任意の交差角度に設定してもよい。
【0116】
本実施の形態の透明二層反射フィルム61によれば、透明二層反射フィルム61の平滑面8cに斜め方向から入射した光は、透明二層反射フィルム61の内部で第2万線状溝6Bの模様の空隙部と、第1万線状溝6Aの模様の空隙部との界面や、各空隙部間の壁部などで複雑に反射する反射光や、表面の平滑面8cで反射する反射光などが発生する。
【0117】
このとき、第2万線状溝6Bの模様の空隙部と、第1万線状溝6Aの模様の空隙部との界面や、各空隙部間の壁部などで複雑に反射する反射光は、第1エンボスフィルム4Aの第1万線状溝6Aの溝形状の向きと、第2エンボスフィルム4Bの第2万線状溝6Bの溝
形状の向きが同じ方向に向けて揃えた場合に比べてさらに複雑化する。
【0118】
そのため、本実施の形態の透明二層反射フィルム61を木目印刷シートである基材シート2と組み合わせて木目シートである光学シート1を形成した場合に第1万線状溝6Aと、第2万線状溝6Bの模様の溝構造の光反射による「モアレ」などの表現の効果をさらに高めることができる。
【0119】
図12は、本発明の第3の実施の形態の透明多層反射フィルム71を示す。なお、
図12中で、第1の実施の形態(
図1乃至
図10参照)と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略する。本実施の形態の透明多層反射フィルム71は、万線状溝の模様が透明樹脂中の空隙により形成された透明反射フィルムのエンボスフィルムを三段に積層した積層フィルム72を設けたものである。ここでは、積層フィルム4を構成する三段のエンボスフィルムの一段目を第1エンボスフィルム73A、二段目を第2エンボスフィルム73B、三段目を第3エンボスフィルム73Cと称する。
【0120】
第1エンボスフィルム73Aは、積層フィルム4の最下段に配置されており、この第1エンボスフィルム73Aの表面に平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた第1万線状溝74Aの模様が形成された透明樹脂フィルムによって形成されている。この第1エンボスフィルム73Aの上に、第2エンボスフィルム73Bが接着層を介して接着されて形成されている。そして、第1万線状溝74Aの模様は、第1エンボスフィルム73Aの表面と第2エンボスフィルム73Bの下面との間の空隙により構成されていている。
【0121】
第2エンボスフィルム73Bは、積層フィルム4の中段に配置されており、この第2エンボスフィルム73Bの表面に平面視形状が平行線群、曲線群、又はそれらを組合せた第2万線状溝74Bの模様が形成された透明樹脂フィルムによって形成されている。この第2エンボスフィルム73Bの上に、第3エンボスフィルム73Cが接着層を介して接着されて形成されている。そして、第2万線状溝74Bの模様は、第2エンボスフィルム73Bの表面と第3エンボスフィルム73Cの下面との間の空隙により構成されていている。
【0122】
第3エンボスフィルム73Cは、積層フィルム4の最上段に配置されている。この第3エンボスフィルム73Cは、少なくとも第一層7と第二層8とが一体的に積層された積層体によって形成されている。本実施の形態では、第一層7は、第1エンボスフィルム73Aの表面の第1万線状溝74Aの模様と同じ万線状模様の第3万線状溝74Cが形成された透明樹脂の第1エンボス層によって形成されている。
【0123】
第二層8は、透明樹脂の第2エンボス層8aと、表面層8bとを積層した構成を有する。第2エンボス層8aは、第一層7の上に積層され、第一層7との接合面と反対側の面に同一材料で形成された表面層8bがさらに接合され、表面層8bの表面に平滑面8cが形成されている。
図12に示すように第3万線状溝74Cの模様は、積層体の第一層7と第二層8との間の空隙により構成されていている。
【0124】
また、本実施の形態では、第1エンボスフィルム73Aの第1万線状溝74Aの溝形状の向きと、第3エンボスフィルム73Cの第3万線状溝74Cの溝形状の向きが同じ方向に向けて揃えて配置されている。なお、第1エンボスフィルム73Aの第1万線状溝74Aの溝形状の向きと、第2エンボスフィルム73Bの第2万線状溝74Bの溝形状の向きは、必ずしも正確に同じ方向に向けて揃えて配置する必要はなく、任意の交差角度に設定してもよい。
【0125】
第2エンボスフィルム73Bの第2万線状溝74Bの溝形状の向きは、第1エンボスフ
ィルム4Aの第1万線状溝6Aの溝形状の向きとほぼ直交する状態に配置されている。なお、第1エンボスフィルム73Aの第1万線状溝74Aの溝形状の向きと、第2エンボスフィルム73Bの第2万線状溝74Bの溝形状の向きの交差角度は、必ずしも正確に90°である必要はなく、任意の交差角度に設定してもよい。
【0126】
本実施の形態の透明多層反射フィルム71によれば、透明多層反射フィルム71の平滑面8cに斜め方向から入射した光は、透明多層反射フィルム71の内部で第3万線状溝74Cの模様の空隙部と、第2万線状溝74Bの模様の空隙部と、第1万線状溝74Aの模様の空隙部との界面や、各空隙部間の壁部などで複雑に反射する反射光や、表面の平滑面8cで反射する反射光などが発生する。
【0127】
このとき、第3万線状溝74Cの模様の空隙部と、第2万線状溝74Bの模様の空隙部と、第1万線状溝74Aの模様の空隙部との界面や、各空隙部間の壁部などで複雑に反射する反射光は、エンボスフィルムを二段に積層した第1の実施の形態や、第2の実施の形態の場合に比べてさらに複雑化する。
【0128】
そのため、本実施の形態の透明多層反射フィルム71を木目印刷シートである基材シート2と組み合わせて木目シートからなる光学シート1を形成した場合に第1万線状溝74Aと、第2万線状溝74B、第3万線状溝74Cの模様の溝構造の光反射や「モアレ」などの表現の効果をさらに高めることができる。
【実施例】
【0129】
(実施例1)
第2冷却ロール17の版形状、すなわちエンボスパターン17aを構成する万線の単位を、線幅140μm、隣接するパターンとのピッチを260μm、溝の深さを30μmとして、半径2.6mm〜12mm、円弧長1.0mm〜4.5mmの範囲の円弧を繋げた形状として、製版を行なった。製版には上記形状を得ることが出来る、曲面状の断面を持つダイヤモンドバイトを用いて、第2冷却ロール17上に設けた銅メッキに対して切削加工を行い、切削後Crメッキを施してエンボス版とした。第5冷却ロール33の版形状、すなわちエンボスパターン33aも第2冷却ロール17と同様に成形した。
【0130】
基材シート2としては厚さ70μmのポリプロピレン樹脂シートを用い、この上に透明なポリプロピレン樹脂を平均厚さ80μmにてエンボス加工を行い、第1エンボスフィルム4Aを形成する。さらに、この上に透明なポリプロピレン樹脂を平均厚さ80μmにてエンボス加工を行い、第2エンボスフィルム4Bを形成し、同様に透明なポリプロピレン樹脂を平均80μmの厚さで表面層8bを形成する。
【0131】
最後にその表面に、乾燥後の厚みが1g/m
2となる程度にウレタンアクリレート樹脂をコートして表面保護層を形成し、光学シート1を得る。
【0132】
出来上がった光学シートは、平らな表面を有しており、観察方向を変えることで複雑な光り方をするものとなった。
【0133】
(実施例2)
実施例1と同様の版を用いて、ポリエチレン(日本ポリエチレン LC600A)により同様の試作を行なった。樹脂温度は240℃で実施したところ、やや断面形状の崩れが生じるものの、第1万線状溝6A、第2万線状溝6Bの模様の空隙層は確保されていた。
【0134】
第2エンボス層8aと表面層8bとの樹脂温度の温度差を20℃としたところ、良好な結果が得られた。
【0135】
エンボスパターン17a、33aの空隙層では強い反射光を生じることから、樹脂層の厚みについては殆んど制約がない。このことは、光学シート1への他の要求項目に応じて適宜決定してよいことを示しており、使いやすい特性である。
【0136】
また、エンボス版としては、切削版のみならず、エッチングなどを用いた、グラビア用の製版技術も用いることが出来るので、応用範囲が広い。
【0137】
このように得られたシートを、所望の形状に断裁し、木目シートである光学シート1を得ることが出来る。断裁には、薄手の場合にはスリッターが使用できるが、厚手の場合は丸鋸や、ランニングソー、レーザー断裁など、適宜選定し使用すればよい。
【0138】
(実施例3)
また、より高い効果を得るために、中心層にMI値(メルトインデックス;流動性指数)が低い材料、すなわち硬い材料を用いることで、シートおよびフィルムの機械的強度を得ることができる。さらに、片面あるいは両面の表面部分に高MI値の樹脂を用いることで、良好なパターン転写性や融着性を得ることが出来る。
【0139】
MI値の異なる樹脂を使用する場合には、Tダイ内で多層化される樹脂の温度を、各層毎に調整し、フローマークが発生しない吐出条件を決定する。フローマークは、流動性の高い樹脂同士が、それぞれに流速を持って他方と異なる流動性を持つために生じることから、中心層を硬く保ち、その表層に粘度の低い層を薄く沿わせるように吐出条件(温度や吐出量)することで、フローマークの無い良好な樹脂膜を得ることが出来る。
【0140】
[PMMAでの例]
異なる樹脂の選定を行う際には、表層あるいは裏層への形状転写性が最重要である。形状を転写する場合には、MI値が5.5〜20の範囲であれば、そのライン速度と樹脂に加える圧力のバランスが取れることから、プリズム形状の様なエッジを有するパターンの形状転写が可能となる。そのライン速度は、型を押当てる時間に関係するからである。例えば三菱レイヨン製アクリル樹脂であれば、VH5,TF8,TF9などがMI値が5.5〜20の範囲内に該当する。
【0141】
樹脂シートの機械的強度をほぼ決定する、中心層のMI値は、比較的低MI値の樹脂を選定する。具体的にはMI値が0.8〜6の樹脂(例えば三菱レイヨン製アクリル樹脂であれば、VH4,VH5,MDなどが該当する。)であれば、良好な機械的強度を得ることが出来る。例えば、三菱レイヨン製アクリル樹脂であれば、VH4,VH5,MDなどがMI値が0.8〜6の樹脂に該当する。
【0142】
上記の範囲で様々な樹脂組合せを検討したところ、表層あるいは裏層のMI値が10未満の場合は、形状の転写性が不良となり、また、20を超える場合には、中心部分のMI値以下となる材料を選択できない。中心部分のMI値が2未満では、フローマークが生じ、外観不良となってしまう。このフローマークは中心部分のMI値が6を越えた場合にも生じる。
【0143】
よって、実際に製作を行う際には、表層あるいは裏層のMI値が10〜20の範囲、かつ中心部分のMI値が2〜6の範囲であれば、充分な効果が得られる上に、生産性も良好である事が確認できた。
【0144】
モアレについては、万線やその絵柄模様の持つ繰返し構造の周期(逆数を取って空間周波数とすることもある)が、多層化する層同士の間で(n+0.1)倍(nは整数)とな
る場合に、強いモアレを生じる。また、n×√2倍とするとモアレは弱くなる。このモアレの強弱を用いることで、印刷等では表現できない絵柄を構成することが可能となり、照り感などの表現が可能となる。
【0145】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、
図1の光学シート1から基材シート2と第1接着層S1を外した透明二層反射フィルム3の本体3aを成形品として成形してもよい。また、上記実施の形態では、光学シートの一例を示したが、これに限定されるものではなく、図形や幾何学模様などの任意の絵柄、すなわちデザイン模様が印刷された印刷シートを基材シート2として構成してもよい。
【0146】
また、基材シート2に替えて照明装置を設ける構成にしてもよい。この場合は、照明装置からの照明光が透明二層反射フィルム3を透過して出射することで、フィルム内部における光反射効果により、反射光に独特の風合いを持たせることができ、さらに多彩な表現力などを得ることができる。さらに、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。