(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態にかかる車両用のブレーキ装置について説明する。
図1は、本実施形態にかかるブレーキ装置1の基本構成を示した液圧回路図である。ここでは前後配管の液圧回路を構成する車両に本発明にかかるブレーキ装置1を適用した例について説明するが、X配管などの車両についても適用可能である。
【0016】
図1に示されるように、ブレーキ装置1には、ブレーキペダル11、倍力装置12、M/C13、W/C14、15、34、35、制御ユニット50、加圧ユニット60、ブレーキECU70および加圧用ECU80等が備えられている。なお、
図2、
図3は、それぞれ、制御ユニット50と加圧ユニット60の詳細を示した図である。
【0017】
車両に制動力を加える際にドライバによって踏み込まれるブレーキペダル11は、倍力装置12およびM/C13に接続されており、ドライバがブレーキペダル11を踏み込むと、倍力装置12にて踏力が倍力され、M/C13に配設されたマスタピストン13a、13bを押圧する。これにより、マスタピストン13a、13bによって区画されるプライマリ室13cとセカンダリ室13dとに同圧のM/C圧を発生させる。なお、M/C13には、プライマリ室13cおよびセカンダリ室13dそれぞれと連通する通路を有するマスタリザーバ13eが備えられており、M/C13へのブレーキ液の供給およびM/C13から余剰のブレーキ液の排出が行えるようになっている。
【0018】
M/C13に発生させられるM/C圧は、加圧ユニット60および制御ユニット50を通じて各W/C14、15、34、35に伝えられる。制御ユニット50としては、既存のものを用いることができ、M/C13とW/C14、15、34、35との間に既存の制御ユニット50を配置し、さらにM/C13と制御ユニット50との間に加圧ユニット60を追加配置することで、ブレーキ装置1を構成することができる。
【0019】
制御ユニット50は、第1配管系統50aと第2配管系統50bとを有した構成とされている。第1配管系統50aは、左右前輪FL、FRに備えられたフロント側のW/C14、15のブレーキ液圧を制御するもので、第2配管系統50bは、左右後輪RL、RRに備えられたリア側のW/C34、35のブレーキ液圧を制御するものである。
【0020】
以下、第1、第2配管系統50a、50bについて説明するが、第1配管系統50aと第2配管系統50bとは、略同様の構成であるため、ここでは第1配管系統50aについて説明し、第2配管系統50bについては第1配管系統50aを参照する。
【0021】
第1配管系統50aは、上述したM/C圧を左前輪FLに備えられたW/C14および右前輪FRに備えられたW/C15に伝達し、W/C圧を発生させる主管路となる管路Aを備える。
【0022】
管路Aには、管路Aを連通状態と差圧状態に制御することで、管路Aのうちの上流側となるM/C13側と下流側となるW/C14、15側との間の差圧を制御するリニア弁で構成された第1差圧制御弁16が備えられている。第1差圧制御弁16は、ドライバがブレーキペダル11の操作を行う通常ブレーキ時(衝突回避制御やアンチロックブレーキ(以下、ABSという)制御などの車両運動制御が実行されていない時)には連通状態となるように弁位置が調整されており、第1差圧制御弁16に備えられるソレノイドコイルに電流が流されると、この電流値が大きいほど大きな差圧状態となるように弁位置が調整される。
【0023】
第1差圧制御弁16が差圧状態のときには、W/C14、15側のブレーキ液圧がM/C圧よりも所定以上高くなった際にのみ、W/C14、15側からM/C13側へのブレーキ液の流動が許容される。このため、常時W/C14、15側がM/C13側よりも所定圧力以上高くならないように維持される。また、第1差圧制御弁16に対して並列に逆止弁16aが備えられている。
【0024】
管路Aは、第1差圧制御弁16よりも下流になるW/C14、15側において、2つの管路A1、A2に分岐する。管路A1にはW/C14へのブレーキ液圧の増圧を制御する第1増圧制御弁17が備えられ、管路A2にはW/C15へのブレーキ液圧の増圧を制御する第2増圧制御弁18が備えられている。
【0025】
第1、第2増圧制御弁17、18は、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成されている。具体的には、第1、第2増圧制御弁17、18は、第1、第2増圧制御弁17、18に備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には連通状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に遮断状態に制御されるノーマルオープン型となっている。つまり、第1、第2増圧制御弁17、18は、通電時にオンされてブレーキ液の流動を遮断し、非通電時にオフされてブレーキ液の流動を許容する。
【0026】
管路Aにおける第1、第2増圧制御弁17、18および各W/C14、15の間と調圧リザーバ20とを結ぶ減圧管路としての管路Bには、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成される第1減圧制御弁21と第2減圧制御弁22とがそれぞれ配設されている。これら第1、第2減圧制御弁21、22は、第1、第2減圧制御弁21、22に備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には遮断状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に連通状態に制御されるノーマルクローズ型となっている。つまり、第1、第2減圧制御弁21、22は、通電時にオンされてブレーキ液の流動を許容し、非通電時にオフされてブレーキ液の流動を遮断する。
【0027】
調圧リザーバ20と主管路である管路Aとの間には還流管路となる管路Cが配設されている。この管路Cには調圧リザーバ20からM/C13側あるいはW/C14、15側に向けてブレーキ液を吸入吐出するモータ51によって駆動される自吸式のポンプ19が設けられている。モータ51は図示しないモータリレーに対する通電が制御されることで駆動される。
【0028】
そして、調圧リザーバ20とM/C13の間には補助管路となる管路Dが設けられている。この管路Dを通じ、ポンプ19にてM/C13からブレーキ液を吸入し、管路Aに吐出することで、車両運動制御時において、W/C14、15側にブレーキ液を供給し、対象となる車輪のW/C圧を加圧することが可能となっている。
【0029】
なお、ここでは第1配管系統50aについて説明したが、第2配管系統50bも同様の構成であり、第1配管系統50aに備えられた各構成と同様の構成を第2配管系統50bも備えている。具体的には、第1差圧制御弁16および逆止弁16aと対応する第2差圧制御弁36および逆止弁36a、第1、第2増圧制御弁17、18と対応する第3、第4増圧制御弁37、38、第1、第2減圧制御弁21、22と対応する第3、第4減圧制御弁41、42、ポンプ19と対応するポンプ39、調圧リザーバ20と対応する調圧リザーバ40、管路A〜Dと対応する管路E〜Hがある。ただし、各系統50a、50bがブレーキ液を供給するW/C14、15、34、35については、フロント系統となる第1配管系統50aの方がリア系統となる第1配管系統50bよりも容量が大きくされている。これにより、フロント側においてより大きな制動力を発生させることができる。
【0030】
加圧ユニット60は、M/C13と制御ユニット50との間に配置されている。例えば、管路A、Eに対して加圧ユニット60を接続することができ、M/C13とW/C14、15、34、35との間に制御ユニット50が備えられた既存の構成に対して加圧ユニット60を追加配置することによってブレーキ装置1を構成できる。
【0031】
加圧ユニット60は、補助圧力源61と、各種電磁弁62a、62b、63a〜63c、64、第1、第2ピストン部65a、65bおよび圧力センサ66a、66bを有した構成とされており、これらが各種配管I〜Lに備えられることで構成されている。そして、加圧ユニット60に備えられる各部が加圧用ECU80によって制御されることで、加圧ユニット60によるW/C圧の増減圧が行えるようになっている。
【0032】
補助圧力源61は、液圧ポンプ61a、アキュムレータ61b、電動モータ61c、リザーバ61dおよびリリーフ弁61eを有している。
【0033】
液圧ポンプ61aは、リザーバ61dとアキュムレータ61bとを結ぶ管路Iに配置されている。液圧ポンプ61aは、電動モータ61cによって駆動されることで、リザーバ61dのブレーキ液を吸入し、アキュムレータ61b側に圧送する。この液圧ポンプ61aが吐出したブレーキ液がアキュムレータ61bに供給され、蓄圧される。このアキュムレータ61bで蓄圧されたブレーキ液圧がアキュムレータ圧に相当する。なお、ここでは液圧ポンプ61aに対してブレーキ液を供給するブレーキ液貯留部としてリザーバ61dを独立して備えた構造としているが、マスタリザーバ13eをリザーバ61dとして使用することもできる。また、加圧ユニット60内にアキュムレータ61bやリザーバ61dを備えた図としてあるが、これらについては別体で構成することができる。
【0034】
電動モータ61cは、アキュムレータ圧が所定の下限値を下回ることに応答して駆動されることでアキュムレータ圧を上昇させ、アキュムレータ圧が所定の上限値を上回ることに応答して停止させられる。アキュムレータ圧については、圧力センサ66aの検出信号が加圧用ECU80に伝えられており、加圧用ECU80にてアキュムレータ圧が所定の下限値から上限値の間に調整されるように電動モータ61cの駆動を制御している。
【0035】
リリーフ弁61eは、管路Iのバイパス通路としてアキュムレータ61bとリザーバ61dとの間を結ぶように設けられた管路Jに備えられている。リリーフ弁61eは、アキュムレータ圧が過剰に高くならないように、所定圧力になるとアキュムレータ61b側からリザーバ61d側にブレーキ液を逃がす。リリーフ弁61eのリリーフ圧は、アキュムレータ圧の上限値よりも高い値に設定されている。上記したように、アキュムレータ圧は基本的には所定の下限値から上限値の範囲となるように制御されるが、仮にアキュムレータ圧がその上限値を超えた場合には、リリーフ弁61eを通じてリザーバ61d側にブレーキ液が逃がされるようになっている。
【0036】
第1、第2制御弁62a、62bおよび第1、第2ピストン部65a、65bは、第1、第2配管系統50a、50bにおけるM/C13と制御ユニット50との間に配置されている。具体的には、第1制御弁62aと第1ピストン部65aは、管路Aに接続され、M/C13と第1差圧制御弁16との間に配置されている。第1制御弁62aは第1ピストン部65aよりもM/C13側に配置されている。また、第2制御弁62bと第2ピストン部65bは、管路Eに接続され、M/C13と第2差圧制御弁36との間に配置されている。第2制御弁62bは第2ピストン部65bよりもM/C13側に配置されている。
【0037】
第1、第2制御弁62a、62bは、それぞれ、管路A、Eの連通遮断を制御するものであり、第1、第2制御弁62a、62bに備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には連通状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に遮断状態に制御されるノーマルオープン型となっている。
【0038】
第1、第2ピストン部65a、65bは、アキュムレータ61bに繋がる管路Kに接続されている。管路Kは、アキュムレータ61bから三つに分岐して第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cに接続され、さらに第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cを経てから二つの管路K1、K2となり、各管路K1、K2と管路A、Eとが第1、第2ピストン部65a、65bを介して接続されている。これら第1、第2ピストン部65a、65bは、それぞれ、管路A、Eにおけるブレーキ液の流動を許容しつつ、加圧ユニット60側の液圧回路と第1、第2配管系統50a、50bを構成する液圧回路とを分離し、かつ、加圧ユニット60側のブレーキ液圧を管路A、E側に伝える。
【0039】
具体的には、第1、第2ピストン部65a、65bは、ピストン65aa、65baによって区画される第1室65ab、65bbおよび第2室65ac、65bcと、第1室65ab、65bb側に配置されたリターンスプリング65ad、65bdを備える。
【0040】
ピストン65aa、65baは、リターンスプリング65ad、65bdによって第2室65ac、65bcを縮小させる側に付勢されている。そして、ピストン65aa、65baは、アキュムレータ圧に基づくブレーキ液圧が伝えられるとリターンスプリング65ad、65bdの付勢力に抗して第1室65ab、65bbを縮小させる側に移動させられる。
【0041】
第1室65ab、65bbは、それぞれ管路A、Eに対して接続されている。これら第1室65ab、65bb内を通じて管路A、Eのブレーキ液の流動が許容されている。一方、第2室65ac、65bcは、それぞれ管路K1、K2にそれぞれ接続されている。これら第2室65ac、65bcには、管路K1、K2を介してアキュムレータ圧に基づくブレーキ液圧が導入可能とされている。
【0042】
また、管路Kには、複数の増圧電磁弁が並列配置されている。本実施形態の場合、管路Kに第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cを並列配置してある。第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cは、それぞれ独立して制御可能となっている。
【0043】
第1増圧電磁弁63aは、第1増圧電磁弁63aに備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には遮断状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に差圧状態に制御されるノーマルクローズ型となっている。第1増圧電磁弁63aは、リニア弁で構成され、ソレノイドコイルに流される電流の電流値が大きいほど大きな差圧状態となるように弁位置が調整される。具体的には、弁体と弁座とによって構成されるオリフィスの寸法、例えばオリフィス径が線形的に調整される。このため、第1増圧電磁弁63aにより、アキュムレータ61b側と第1、第2ピストン部65a、65b側との差圧を線形的に調整できるようになっている。
【0044】
また、第2、第3増圧電磁弁63b、63cは、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成されている。具体的には、第2、第3増圧電磁弁63b、63cは、第2、第3増圧電磁弁63b、63cに備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には遮断状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に連通状態に制御されるノーマルクローズ型となっている。ここでは、第2、第3増圧電磁弁63b、63cをオリフィスの寸法が同じもので構成しているが異なるもので構成しても良い。
【0045】
これら第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cは、通電時にオンされてアキュムレータ圧に基づくブレーキ液圧が第1、第2ピストン部65a、65bに印加されるようにし、非通電時にオフされて第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cへのアキュムレータ圧に基づくブレーキ液圧の印加を制限する。
【0046】
これら第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのうちオンされたものを通じてアキュムレータ61bからのブレーキ液が第1、第2ピストン部65a、65b側に流動させられる。具体的には、制御要求に応じて、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのいずれをオンするかが決められ、制御要求に対応した応答性でアキュムレータ61b側から第1、第2ピストン部65a、65b側へのブレーキ液の流動が行われるようになっている。
【0047】
なお、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cそれぞれのオリフィスの寸法は、アキュムレータ圧が第1、第2ピストン部65a、65b側に伝えられる際に絞り機能を果たす程度の小さな寸法とされている。
【0048】
また、管路K1、K2のうち第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cよりも第1、第2ピストン部65a、65b側には、リザーバ61dに繋がる管路Lが接続されており、管路Lに、連通・調圧状態を制御できる調圧電磁弁64が配置されている。調圧電磁弁64は、調圧電磁弁64に備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には連通状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に遮断状態に制御されるノーマルオープン型となっている。つまり、調圧電磁弁64は、非通電時にはオフされて第1、第2ピストン部65a、65bにブレーキ液圧が掛からないようにしており、通電時にオンされることで第1、第2ピストン部65a、65bに加えられているブレーキ液圧の調圧を行う。
【0049】
なお、調圧電磁弁64による調圧については、例えば調圧電磁弁64のオンオフをデューティ制御することによって実施できる。また、調圧電磁弁64をソレノイドコイルに流す電流の電流値が大きいほど大きな差圧を発生させられる差圧制御弁で構成する場合、ソレノイドに流す電流の電流値を制御することによっても、調圧電磁弁64による調圧を行うことができる。以下の説明では、一例としてデューティ制御による調圧を行う場合について説明するが、電流値の大きさを制御することによる調圧を行っても良い。
【0050】
このようにして、制御ユニット50および加圧ユニット60が構成されている。これらのうち制御ユニット50は、ブレーキECU70によって制御され、加圧ユニット60は、加圧用ECU80によって制御される。ブレーキECU70と加圧用ECU80とは信号の授受が可能となっており、ここではブレーキECU70から加圧用ECU80に対して制御信号を伝えることで加圧用ECU80による加圧ユニット60の制御が行われるようになっている。
【0051】
ブレーキECU70は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種演算などの処理を実行し、衝突回避制御からの制御要求に応じたブレーキ制御やABS制御などを実行する。また、加圧用ECU80は、制御部を構成するものであり、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種演算などの処理を実行し、例えばブレーキECU70からの制御信号に基づいて各種制御を実行する。
【0052】
具体的には、ブレーキECU70は、図示しないセンサ類の検出信号に基づいて各種物理量を演算したり、他のECUからの制御要求を受け取り、それら演算結果や制御要求に基づいて各種処理を行っている。例えば、衝突回避制御からの制御要求に応じたブレーキ制御やABS制御を実行するか否かの判定や各種演算を行っている。そして、ブレーキECU70は、衝突回避制御からの制御要求に応じたブレーキ制御を行う場合には、その旨の制御信号を加圧用ECU80に伝えている。また、ブレーキECU70は、衝突回避制御中にABS制御を実行する際には、ABS制御を実行しつつ、衝突回避制御とABS制御との協調が行えるように、加圧用ECU80に対して制御信号を伝えている。
【0053】
図4は、ブレーキECU70を含めた車両に備えられる各種センサやECUの構造例を示したブロック図である。この図に示されるように、車両周辺状況を検知する障害物センサや前方カメラなどの衝突対象認識センサ90やヨーレートおよび加速度センサなど物理量センサ100の検出信号が車載ネットワークであるCAN(Controller Area Network)通信などの車内LAN110を通じて衝突回避ECU120に入力されている。この衝突回避ECU120で、衝突回避制御が行われ、衝突回避制御に基づく制御要求を出している。この制御要求が車内LAN110を通じてエンジンECU130やブレーキECU70に伝えられる。そして、エンジンECU130やブレーキECU70で、衝突回避制御に基づく制御要求に応じたエンジン制御やブレーキ制御が実行される。
【0054】
衝突回避制御については、衝突回避ECU120は、例えば衝突対象認識センサの検出信号に基づいて、先行車両などの障害物との距離と相対速度差を演算すると共に、これに基づいて衝突予測時間を演算し、衝突予測時間に基づいて、衝突回避制御を実行するか否かを判定している。また、衝突回避制御を実行するとの判定結果が出されると、自動的に緊急ブレーキを掛けたり、エンジン出力を低下させるなどの衝突回避制御を実行する。具体的には、衝突回避制御を実行する際には、例えば制御量として、衝突回避制御の際に発生させたい制動トルクもしくは減速度などの演算を行っている。この制動トルクもしくは減速度が衝突回避制御に基づく制御要求としてブレーキECU70に伝えられ、その制動トルクもしくは減速度を発生させるために必要な目標W/C圧が演算される。そして、ブレーキECU70は、衝突回避制御を実行することや目標W/C圧を示した制御信号を加圧用ECU80に伝え、加圧ユニット60による自動加圧が行われるようにしている。
【0055】
また、ABS制御については、ブレーキECU70で実行している。ブレーキECU70は、各輪のスリップ率に基づいてABS制御を実行するか否かを判定したり、各輪のスリップ率に基づいて、制御量の演算を行っている。ABS制御については、衝突回避制御の実行の有無にかかわらず実施されるが、衝突回避制御中にABS制御が行われる場合には、これらが協調して行われるようにする必要がある。このため、ブレーキECU70は、衝突回避制御中にABS制御を行う場合には、ABS制御の制御量についても加圧用ECU80に伝えている。
【0056】
以上のようにして、本実施形態にかかるブレーキ装置が構成されている。次に、本実施形態のブレーキ装置の作動について説明する。続いて、本実施形態のブレーキ装置の作動について説明する。
図5〜
図7は、作動状態に応じたアキュムレータ圧(Acc圧)、前輪FL、FR側のW/C圧、および、後輪RL、RR側のW/C圧のタイムチャートである。
【0057】
まず、衝突回避制御などの車両運動制御やABS制御が実行されず、ドライバによるブレーキペダル11の踏み込みも行われていないときには、
図5に示すタイムチャートのように、アキュムレータ圧が所定範囲に保たれ、前輪FL、FRおよび後輪RL、RRのW/C圧は発生していない状態となっている。
【0058】
この状態でドライバによるブレーキペダル11の踏み込みが行われた場合、衝突回避制御が実行されておらず、またABS制御が実行されなければ、通常ブレーキ時の作動となる。すなわち、通常ブレーキ時には、制御ユニット50や加圧ユニット60は作動させられず、各種弁も図示位置とされている。このため、ブレーキペダル11の踏込みに基づいてM/C13M/C圧が発生させられると、そのM/C圧が管路A、Eを通じて各W/C14、15、34、35に伝えられる。これに基づいて、ドライバによるブレーキペダル11の踏み込みに応じた所望の制動力が発生させられる。
【0059】
この場合に、車輪のスリップ率が増加し、ABS制御が開始されると、従来と同様のABS制御に基づく作動が行われる。例えば、ABS制御の制御対象輪について、スリップ率に応じて減圧モード、保持モード、増圧モードが設定される。そして、減圧モード時には、制御対象輪と対応する増圧制御弁17、18、37、38が遮断状態にされると共に減圧制御弁21、22、41、42が適宜連通状態にされてW/C圧が減少させられる。保持モードの際には、制御対象輪と対応する増圧制御弁17、18、37、38および減圧制御弁21、22、41、42が遮断状態にされてW/C圧が保持される。また、増圧モードの際には、制御対象輪と対応する減圧制御弁21、22、41、42が遮断状態にされると共に増圧制御弁17、18、37、38が適宜連通状態にされてW/C圧が増加させられる。このようにして、各車輪のスリップが制御され、車輪がロックに至ることが抑制される。
【0060】
一方、ドライバによるブレーキペダル11の踏み込みの有無にかかわらず、衝突回避制御の条件を満たすと、自動的に緊急ブレーキを掛けるための制御を行う。具体的には、第1、第2制御弁62a、62bを遮断状態にするとともに、制御要求に応じて、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのいずれかを選択して、選択したものを適宜連通状態にする。このとき、衝突回避制御の制御要求が示す制御量の大きさや変化勾配に合わせて、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのうちの一部もしくは全部を選択する。例えば、制御量の大きさもしくは変化勾配が大きく、高応答が必要である場合には、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cの複数もしくは全部を選択して連通状態とする。この場合、第1増圧電磁弁63aについてはオリフィスの寸法が最大寸法となるようにソレノイドに供給する電流量を調整すると好ましいが、それよりも小さなオリフィス寸法となるようにしても良い。逆に、制御量の大きさや変化勾配が小さく、高応答よりも高い制御性が要求される場合には、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cの一部、例えば第1増圧電磁弁63aのみを選択する。
【0061】
これにより、高圧なアキュムレータ圧に基づいて第1、第2ピストン部65a、65bのピストン65aa、65baがリターンスプリング65ad、65bdに抗して第1室65ab、65bbを縮小する側に移動させられる。そして、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのいずれか、もしくは全部を選択してオンすることでアキュムレータ圧が調圧され、目標W/C圧相当が第1、第2ピストン部65a、65bに伝えられ、さらに管路A、Eに伝えられる。
【0062】
したがって、
図6に示すように、前後輪FL〜RRのW/C14、15、34、35に目標W/C圧に相当するW/C圧を発生させることが可能となる。そして、高圧なアキュムレータ圧に基づいてW/C圧を発生させていることから、高応答が要求された場合には、例えば第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cをすべてオンすることで、図中時点t1〜t2に示すように高い昇圧応答性でW/C圧を増加させることが可能となる。これにより、自動的に緊急ブレーキを掛けることが可能となり、障害物との衝突を回避すること、もしくは、衝突のダメージを軽減することが可能となる。
【0063】
このとき、物理量センサ100に含まれる加速度センサの検出信号に基づいて衝突回避制御による自動加圧により得られた減速度をモニタできることから、例えば制御要求が示す減速度と実際の減速度との差に基づいて、制御要求通りの自動加圧が行われているかを推定できる。この推定結果に基づいて、加圧ユニット60をフィードバック制御すると好ましい。
【0064】
具体的には、制御要求に満たない減速度しか得られていなければ、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのうちオンするものの数を増やすこと、もしくは、第1増圧電磁弁63aのオリフィスの寸法を増加させることで、第1、第2ピストン部65a、65bに加えられるブレーキ液圧を増加させる。
【0065】
一方、制御要求が示す減速度が得られている場合には、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cをオフし、第1、第2ピストン部65a、65bに加えられているブレーキ液圧を保持する。さらに、制御要求が示す減速度を超えている場合には、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cをオフすると共に調圧電磁弁64を適宜連通状態に制御し、第1、第2ピストン部65a、65bに加えられているブレーキ液圧を減圧する。このようにすれば、制御要求に応じた自動加圧を行うことが可能となる。
【0066】
なお、本実施形態のブレーキ装置では、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのうちオンするものの数に応じてブレーキ液圧の応答性、つまり上昇勾配を変えることができる。このため、衝突回避制御からの制御要求が示す制御量に基づいて、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのうちオンするものを選択している。しかしながら、必ずしも、衝突回避制御の中で第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのうちオンするものの数を選択する必要はない。例えば、衝突回避制御からの制御要求があったときには第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cをすべてオンし、衝突回避制御よりも緊急性の低いブレーキ制御からの制御要求があったときに、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cの一部のみをオンするような形態としても良い。この場合に、より高い制御性が求められるのであれば、第1増圧電磁弁63aのみをオンし、アキュムレータ61bから第1、第2ピストン部65a、65bに供給されるブレーキ液流量を調整して、自動加圧の加圧量を調整することで、高い制御性を得ることができる。この場合においても、第1、第2ピストン部65a、65bが押圧され始めるタイミングは高応答に対応して第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cの複数をオンする場合と変わらないため、両者共に時差なく自動加圧を開始することができる。
【0067】
さらに、衝突回避制御からの制御要求として制御量に基づいて第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのうちオンするものの数を決めたが、衝突回避制御の緊急度合いに応じてオンする数を決めても良い。例えば、衝突回避制御では、車両が対象物に衝突すると予測される衝突予測時間を求めていることから、その衝突予測時間が短いほど、もしくは、その変化勾配が早いほど第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのうちオンするものの数を多くするようにしても良い。
【0068】
また、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのうちオンするものの数を多くすれば、アキュムレータ圧がそのまま第1、第2ピストン部65a、65bに印加されるようにすることもできる。しかしながら、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのうちオンするものの数を適宜調整すれば、車両が適切な位置に停止できるように制御できる。このため、急ブレーキを掛ける場合よりも後方車両への影響を抑制することが可能となる。
【0069】
そして、時点t2において目標W/C圧が発生させられると、この後は第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cが遮断状態とされることでW/C圧が保持される。そして、例えば時点t3において、ブレーキECU70から加圧用ECU80に対して目標W/C圧が低下したことが伝えられると、調圧電磁弁64が適宜連通状態に制御されることで、各車輪FL〜RRのW/C圧が低下させられ、目標W/C圧に調整される。また、アキュムレータ圧に基づく自動加圧を解除するときには、再び各電磁弁を
図3の図示位置に戻し、ブレーキ液をリザーバ61dに戻すことで、第1、第2ピストン部65a、65bのピストン位置も図示位置に戻る。これにより、アキュムレータ圧に基づくW/Cの自動加圧が解除される。
【0070】
また、衝突回避制御の際にABS制御が実行された場合には、ABS制御に対応して加圧ユニット60が制御される。このときの加圧ユニット60の制御方法について説明する。
【0071】
まず、
図7に示す時点t1〜t2においては、衝突回避制御が実行され、
図6における時点t1〜t2と同様の方法によって各車輪FL〜RRに対してW/C圧が発生させられる。そして、時点t2において、前後輪FL〜RRについてABS制御が開始されると、前後輪FL〜RRのW/C圧がABS制御に基づいて増減させられる。そして、第1、第2配管系統50a、50b共にアキュムレータ61bと繋がるように第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cの少なくとも1つをオンする。ABS制御が行われていないときであれば、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cを遮断状態にして、目標W/C圧が保持されるようにすれば良い。しかしながら、ABS制御が実行されると、ABS制御における増圧モードの際にブレーキ液が消費されて、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cよりも第1、第2ピストン部65a、65b側で保持されていた高圧がすぐに解消されてしまい、その後、W/C圧を増加させられなくなる。このため、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cの少なくとも1つについてはオンしておき、ABS制御の増圧モードの際に迅速にW/C圧を増加させられるようにしている。
【0072】
また、ABS制御によって前後輪FL〜RRのW/C圧が増減させられたときには、圧力変動に伴って第1、第2ピストン部65a、65bのピストン65aa、65baが移動させられることで、圧力変動分のブレーキ液がアキュムレータ61bに戻される。このように、アキュムレータ61bとのブレーキ液の受け渡しが可能となることで、制御ユニット50で同時にABS制御が実行される場合でも、第1、第2ピストン部65a、65bでの調圧によってABS制御による圧力変動を吸収することが可能となる。
【0073】
このようにして、本実施形態にかかるブレーキ装置が作動させられる。なお、本ブレーキ装置によって、横滑り防止制御などの他の車両運動制御についても実施可能であるが、ここでは説明を省略する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態のブレーキ装置では、アキュムレータ61bと第1、第2ピストン部65a、65bとを接続する管路Kに複数個の第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cを並列配置している。そして、高応答で自動加圧を行う制御要求があったときには、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cの複数をオンすることで多くのブレーキ液がアキュムレータ61bから第1、第2ピストン部65a、65b側に供給させられるようにして高応答な自動加圧を行う。したがって、制御要求に対して高応答でアキュムレータ圧に基づく自動加圧を行うことができるブレーキ装置1とすることが可能となる。
【0075】
また、高応答よりも高い制御性が要求される場合には、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cの一部を選択してオンし、高応答の場合よりも緩やかにブレーキ液がアキュムレータ61bから第1、第2ピストン部65a、65b側に供給させられるようにしている。これにより、高い制御性で自動加圧を行うことも可能となる。特に、第1増圧電磁弁63aについては、アキュムレータ61b側と第1、第2ピストン65a、65b側との差圧を線形的に調整できるリニア弁としていることから、第1増圧電磁弁63aを選択することで、さらに高い制御性で自動加圧を行うことができる。
【0076】
さらに、制御ユニット50側でABS制御などのように圧力変動が生じる場合においても、第1、第2ピストン部65a、65bの移動によって圧力変動分のブレーキ液をアキュムレータ61bに戻せる。つまり、制御ユニット50におけるブレーキ液圧をアキュムレータ61bに吸収させられる。このため、制御ユニット50の制御と衝突回避制御とを協調して行うことが可能となる。
【0077】
また、第1配管系統と第2配管系統それぞれと加圧ユニット60とは第1、第2ピストン部65a、65bを介して接続され、第1、第2ピストン部65a、65bを介して圧力伝達が行われる。このとき、仮に加圧ユニット60に欠陥が発生したとしても、ピストン65aa、65baによって第1配管系統および第2配管系統と加圧ユニット60とを区画しつつ、ピストン65aa、65baが第1室65ab、65bbを密閉しないようにできる。したがって、加圧ユニット60に欠陥が発生したとしても、M/C13から制御ユニット50を介してW/C14、15、34、35に対してブレーキ液圧を伝える経路の使用を担保することが可能となる。よって、よりフェールセーフ性の高いブレーキ装置にできる。
【0078】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態に対して第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cの構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0079】
図8に示すように、本実施形態では、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cをすべて連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁で構成しつつ、弁体と弁座とによって構成されるオリフィスの寸法、例えばオリフィス径を異なるもので構成している。
【0080】
このように、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのオリフィスの寸法を異ならせる場合、オンするものに応じて、アキュムレータ61b側から第1、第2ピストン部65a、65b側へのブレーキ液の流動量を異ならせられる。このため、要求される応答性に応じて第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのいずれかをオンさせるかを選択することで、より制御要求に応じた応答性で自動加圧を行うことが可能となる。
【0081】
この場合、物理量センサ100に含まれる加速度センサの検出信号から取得できる実際の減速度と衝突回避制御の制御要求が示す減速度と差に基づいて、制御要求通りの自動加圧が行われているかを推定し、その結果に応じて第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのうちオンするものを他のものに切り替えるようにしても良い。もしくは、その結果に応じて、制御要求が示す減速度に満たない場合には、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのうちオンするものの数を増やしたり、オンするものをよりオリフィスの寸法の大きなものに替えるようにしても良い。
【0082】
また、制御要求が示す減速度が得られている場合には、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cをオフし、第1、第2ピストン部65a、65bに加えられているブレーキ液圧を保持するようにする。さらに、制御要求が示す減速度を超えている場合には、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cをオフすると共に調圧電磁弁64を適宜連通状態に制御し、第1、第2ピストン部65a、65bに加えられているブレーキ液圧を減圧するようにする。このようにすれば、制御要求に応じた自動加圧をより的確に行うことが可能となる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態では、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのオリフィスの寸法を異ならせ、制御要求に応じて第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのいずれをオンするか選択するようにしている。このようにすれば、多段階にアキュムレータ61bから第1、第2ピストン部65a、65bに流動させられるブレーキ液流量を変化させられ、自動加圧量を多段階に細かく調整することが可能となる。
【0084】
また、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cを単純にオンオフすることによって連通状態と遮断状態とを切替えて、自動加圧量を多段階に調整できる。このため、第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cをソレノイドに流す電流の電流値に応じて発生させる差圧を変化させる差圧制御弁(リニア弁)で構成する場合と比較して、低コストで高応答性を実現することができる。その結果、加圧ユニット60を用いた自動加圧を適用できるアプリケーションが増え、本システムによって実現できる制御が増えるため、それら各制御の実現するための設備を別々に設ける場合と比較して低コスト化を図ることができる。
【0085】
さらに、アキュムレータ圧に基づく自動加圧を行う際に、必要以上に高いブレーキ液圧で自動加圧が行われることを抑制できる。このため、自動加圧後などにおいてアキュムレータ圧を元に戻すための再加圧に必要なエネルギーを抑えることが可能となる。
【0086】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0087】
例えば、上記実施形態では、増圧電磁弁を第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cの3つ備えた形態としたが、少なくとも複数備えられていれば良い。そして、そのうちの一部を差圧制御弁(リニア弁)で構成し、残りを2位置電磁弁で構成すれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、残りの2位置電磁弁について、オリフィス寸法を異ならせることもできる。
【0088】
また、
図9に示すように、第1実施形態において用いていた第1、第2ピストン部65a、65bをタンデムピストンにて構成されるピストン部65で構成しても良い。ピストン部65は、第1ピストン651と第2ピストン652および第1、第2リターンスプリング653、654を有した構成とされる。そして、第1ピストン651によって区画される第1室655が管路Aに接続され、第1ピストン651と第2ピストン652によって区画される第2室656が管路Eに接続された構造とされる。そして、アキュムレータ61bとピストン部65との間の接続が管路Kのみで行われ、管路Kに1つの増圧電磁弁63が備えられる。さらに、管路Kのうちピストン部65と増圧電磁弁63との間とリザーバ61dとの間が管路Lによって接続され、管路Lに1つの調圧電磁弁64が備えられる。
【0089】
このように、タンデムピストンによって構成されるピストン部65とする場合にも、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
ただし、タンデムピストンを用いる場合、片方の系統が失陥した場合に、ピストン部65における一方のピストンが限界移動量に達するまで他方の系統にブレーキ液圧を加えられないことから、失陥時のフェールセーフ性については第1実施形態の構成の方が有利である。
【0091】
また、タンデムピストンとされるピストン部65を用いる場合のピストン形状についても他の形態とすることができ、
図10に示すように、第1、第2ピストン651、652の間に管路Kが接続され、第1、第2ピストン651、652が互いに逆方向に移動することでブレーキ液圧を管路A、Eに伝える形態であっても良い。
【0092】
また、物理量センサ100に含まれる加速度センサによって減速度を取得し、制御要求が示す減速度と実際の減速度との差に基づいて制御要求通りの自動加圧が行われていることを推定する例を示した。しかしながら、これは一例を示したに過ぎず、他の手法によって制御要求通りの自動加圧が行われていることを推定しても良い。例えば、W/C圧センサで検出されるW/C圧が所望値になっているか、車輪速度センサで検出される車輪速度が所望の変化を示しているかなど、他の手法に基づいて上記推定を行っても良い。
【0093】
さらに、制御ユニット50と加圧ユニット60とを組み合わせて自動加圧を行うこともできる。例えば、制御ユニット50においてポンプ19、39を用いた自動加圧を行いつつ、ポンプ能力では要求されるW/C圧を発生させられないときに、加圧ユニット60によって自動加圧を助勢するようにしても良い。逆に、予め第1〜第3増圧電磁弁63a〜63cのいずれか1つもしくは複数をオンさせてアキュムレータ圧に基づく自動加圧を行いつつ、要求されるW/C圧に足りない分を制御ユニット50に備えられたポンプ19、39を駆動して自動加圧を助勢するようにしても良い。