特許第6620498号(P6620498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620498
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】光処理装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/26 20060101AFI20191209BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20191209BHJP
   G02B 6/255 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   G02B6/26
   G02B6/42
   G02B6/255
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-197788(P2015-197788)
(22)【出願日】2015年10月5日
(65)【公開番号】特開2017-72653(P2017-72653A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100108257
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 伊知良
(72)【発明者】
【氏名】古谷 章
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−206374(JP,A)
【文献】 特開2005−126810(JP,A)
【文献】 特開2007−196406(JP,A)
【文献】 特開2002−214418(JP,A)
【文献】 特開2007−187257(JP,A)
【文献】 特開平05−142949(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0135252(US,A1)
【文献】 国際公開第01/048270(WO,A1)
【文献】 特開2004−052050(JP,A)
【文献】 特開平2−67507(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0299605(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B6/24
6/255−6/27
6/30−6/34
6/36−6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光処理装置であって、
光接続部品と、
前記光接続部品に光学的に結合される半導体光デバイスと、
前記光接続部品を前記半導体光デバイスに固定する接着部材と、
を備え、
前記光接続部品は、
光接続のための一端面、前記一端面から第1軸の方向に延在する部分を有する一又は複数の光導波路、及び前記一端面から前記第1軸の方向に延在する貫通孔を含むホルダと、
前記貫通孔の内側面上に設けられ撥油性を有する被覆膜と、
を備え、
前記接着部材は前記一端面に延在し、
前記被覆膜は、前記貫通孔の内側面を覆って前記貫通孔の一端から前記貫通孔の他端まで延在してガイド孔を規定し、
前記被覆膜は、フッ素有機化合物及び金属を含む混合物を備え、
前記半導体光デバイスは、複数の光学結合素子、該光学結合素子に係る光を処理する光素子、及び該光素子に係る電気信号を処理する回路素子をモノリシックに集積する、光処理装置。
【請求項2】
前記ガイド孔は、前記金属中に前記フッ素有機化合物が分散共析された内表面を有する、請求項1に記載された光処理装置。
【請求項3】
前記フッ素有機化合物は、ポリテトラフルオルエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ヘキサフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化黒鉛の少なくともいずれかを含む、請求項1又は請求項2に記載された光処理装置。
【請求項4】
光処理装置であって、
光接続部品と、
前記光接続部品に光学的に結合される半導体光デバイスと、
前記光接続部品を前記半導体光デバイスに固定する接着部材と、
を備え、
前記光接続部品は、
光接続のための一端面、前記一端面から第1軸の方向に延在する部分を有する一又は複数の光導波路、及び前記一端面から前記第1軸の方向に延在する貫通孔を含むホルダと、
前記貫通孔の内側面上に設けられ撥油性を有する被覆膜と、
を備え、
前記接着部材は前記一端面に延在し、
前記被覆膜は、前記貫通孔の内側面を覆って前記貫通孔の一端から前記貫通孔の他端まで延在してガイド孔を規定し、
前記被覆膜は、シリコーン鎖を有するシルセスキオキサン化合物を備え、
前記半導体光デバイスは、複数の光学結合素子、該光学結合素子に係る光を処理する光素子、及び該光素子に係る電気信号を処理する回路素子をモノリシックに集積する、光処理装置。
【請求項5】
前記ホルダは、前記光導波路と、該光導波路を支持するホルダ部品と、前記貫通孔を有し前記ホルダ部品によって支持されたパイプ形状のベースとを含み、前記被覆膜は、前記ベースの内側面上に設けられる、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された光処理装置。
【請求項6】
前記ベースは、ニッケルを備える、請求項5に記載された光処理装置。
【請求項7】
前記接着部材は、エポキシ樹脂を含む、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載された光処理装置。
【請求項8】
前記接着部材は、前記一端面上において、前記ガイド孔まで延在する、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載された光処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光接続部品、光処理装置、光接続部品を作製する方法、及び光接続部品のガイド部品のためのガイド部材生産物を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2は、ガイドピン用の溝及びガイドピンを利用する光コネクタ構造を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−10043号公報
【特許文献2】特開平01−200308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
利用可能な光コネクタでは、光ファイバを挟むための2つの部材の各々が、該光ファイバを支持するV溝を有する。これらの部材のV溝に光ファイバを配置した後に、2つの部材間に接着部材が設けられる。2つの部材は接着されて、光コネクタのための一体の構造物を構成する。完成された光コネクタは、光結合のための位置決めにガイドピンを利用する。光コネクタにおける2つの部材の各々は、ガイドピンの側面を支持するための溝を有し、該溝は、一又は複数の平坦な支持面を備える。これらの支持面が、ガイドピンを受け入れるガイド孔を形成すると共に、挿入されたガイドピンを支持する。ガイドピンをガイド孔に挿入する際に、一体物における複数の支持面とガイドピンの側面との間に僅かな隙間が形成される。
【0005】
ガイドピンを用いる組立では、具体的には、光コネクタといった光接続部品を他の光学素子(例えば、シリコンフォトニクス素子)に光学的に位置合わせすると共に、この位置合わせの後に接着材を硬化させて、他の光学素子に光接続部品を取り付ける。ガイドピンは光コネクタと他の光学部品を接続する際の位置合わせ用に用いられる。この取り付け際して、接着材の硬化の後に、光接続部品だけでなくガイドピンが光接続部品に固定されることがあった。発明者の観察によれば、他の光学素子に光接続部品を取り付ける接着材が、光コネクタのガイド孔内に這い上がり、或いは光コネクタのガイド孔の内側面とガイドピンとの間の僅かな隙間に浸み込む。また、発明者の検討によれば、これら接着材の侵入は、毛細管現象に起因する。
【0006】
本発明の一側面は、上記の事情を鑑みて為されたものであって、毛細管現象によりガイド孔内へ取り込まれる接着材の量を低減可能な光接続部品を提供することを目的とする。本発明の別の側面は、この光接続部品を含む光処理装置を提供することを目的とする。本発明の更なる側面は、光接続部品を作製する方法を提供することを目的とする。本発明の更なる別の側面は、光接続部品のガイド部品のためのガイド部材生産物を作製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る光接続部品は、光接続のための一端面、前記一端面から第1軸の方向に延在する部分を有する一又は複数の光導波路、及び前記一端面から前記第1軸の方向に延在する貫通孔を含むホルダと、前記貫通孔の内側面上に設けられ撥油性を有する被覆膜と、を備え、前記被覆膜は、前記貫通孔の内側面上においてガイド孔を規定する。
【0008】
本発明の別の側面に係る光処理装置は、一側面に係る光接続部品と、前記光接続部品に光学的に結合される半導体光デバイスと、前記光接続部品を前記半導体光デバイスに固定する接着部材と、を備え、前記半導体光デバイスは、複数の光学結合素子、該光学結合素子に係る光を処理する光素子、及び該光素子に係る電気信号を処理する回路素子をモノリシックに集積する。
【0009】
本発明の更なる側面に係る光接続部品を作製する方法は、一端、他端、前記一端から前記他端まで延在するガイド孔及び該ガイド孔の内側面上に設けられた被覆膜を備えるガイド部品を準備する工程と、ホルダのための第1部材及び第2部材、並びに光導波路部品を準備する工程と、前記ガイド部品及び前記光導波路部品を前記第1部材と前記第2部材との間に挟んでホルダ部品を形成する工程と、を備え、前記被覆膜は撥油性を有し、ガイド部品を準備する前記工程は、金属の側面を備える芯材に、フッ素有機化合物及び金属を含む混合物を備える複合メッキ層を形成する工程と、前記複合メッキ層上に金属メッキ層を形成してメッキ生産物を作製する工程と、前記メッキ生産物から前記芯材を抜き取る工程と、を含む。
【0010】
本発明の更なる別の側面に係る、光接続部品のガイド部品のためのガイド部材生産物を作製する方法は、フッ素有機化合物及び金属を含む混合物を備える複合層を金属製の側面を備える芯材上にメッキ法で形成する工程と、前記複合層を形成した後に、メッキ生産物を作製する工程と、前記メッキ生産物から前記芯材を抜き取る工程と、を備え、メッキ生産物を作製する前記工程は、前記複合層上に金属層をメッキ法で形成する。
【0011】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の一側面によれば、毛細管現象によりガイド孔内へ取り込まれる接着材の量を低減可能な光接続部品が提供される。本発明の別の側面によれば、光接続部品を含む光処理装置が提供される。本発明の更なる側面によれば、光接続部品を作製する方法が提供される。本発明の更なる別の側面によれば、光接続部品のガイド部品のためのガイド部材生産物を作製する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る光接続部品を概略的に示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る光接続部品の典型的な外観を示す図面である。
図3図3は、本実施形態に係る光接続部品のガイド部品のためのガイド部材生産物を作製する方法の一例を示す図面である。
図4図4は、実施例における作製方法により形成されたガイドパイプの縦断面を模式的に示す図面である。
図5図5は、ニッケルに分散共析されたPTFE粒子を含む混合物における共析量と、純水(極性液体)に対する接触角との関係を示す図面である。
図6図6は、本実施形態に係る光接続部品を作製する方法における主要な工程を模式的に説明する図面である。
図7図7は、本実施形態に係る光接続部品を作製する方法における主要な工程を模式的に説明する図面である。
図8図8は、本実施形態に係る光接続部品を作製する方法における主要な工程を模式的に説明する図面である。
図9図9は、本実施形態に係る光接続部品を作製する方法における主要な工程を模式的に説明する図面である。
図10図10は、本実施形態に係る光接続部品を備える光処理装置を示す図面である。
図11図11は、本実施形態に係る光接続部品の一実施例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
引き続きいくつの具体例を説明する。
【0015】
一形態に係る光接続部品は、(a)光接続のための一端面、前記一端面から第1軸の方向に延在する部分を有する一又は複数の光導波路、及び前記一端面から前記第1軸の方向に延在する貫通孔を含むホルダと、(b)前記貫通孔の内側面上に設けられ撥油性を有する被覆膜と、を備え、前記被覆膜は、前記貫通孔の内側面上においてガイド孔を規定する。
【0016】
この光接続部品によれば、ホルダはガイド孔を有し、このガイド孔が、ホルダの一端面から第1軸の方向に延在している。これ故に、光接続のための一端面に接着材が設けられた際に、接着材が、その流動性に起因してガイド孔の一端に到達する可能性がある。ガイド孔の内側面上の被覆膜は撥油性を有している。この被覆膜は、一端面上の接着材が、毛細管現象によりガイド孔内に深く侵入することを妨げるように働く。
【0017】
一形態に係る光接続部品では、前記被覆膜は、フッ素有機化合物及び金属を含む混合物を備える。
【0018】
この光接続部品によれば、フッ素有機化合物及び金属を含む混合物は、所望の撥油性を有している。
【0019】
一形態に係る光接続部品では、前記ホルダは、前記光導波路と、該光導波路を支持するホルダ部品と、前記貫通孔を有し前記ホルダ部品によって支持されたパイプ形状のベースとを含み、前記被覆膜は、前記ベースの内側面上に設けられる。
【0020】
この光接続部品によれば、被覆膜は、ベースの貫通孔内に設けられる。
【0021】
一形態に係る光処理装置は、(a)光接続部品と、(b)前記光接続部品に光学的に結合される半導体光デバイスと、(c)前記光接続部品を前記半導体光デバイスに固定する接着部材と、を備え、前記半導体光デバイスは、複数の光学結合素子、該光学結合素子に係る光を処理する光素子、及び該光素子に係る電気信号を処理する回路素子をモノリシックに集積する。
【0022】
この光処理装置によれば、光接続部品と半導体光デバイスとの調芯に際して、光接続部品のガイド孔に接着部材の這い上がりが低減されて、ガイドピンの取り外しの際に光接続部品に加わる外力を小さくできる。光接続部品と半導体光デバイスとの間の光結合の信頼性が向上される。
【0023】
一形態に係る光接続部品を作製する方法は、(a)一端、他端、前記一端から前記他端まで延在する貫通孔及び該貫通孔の内側面上に設けられた被覆膜を備えるガイド部品を準備する工程と、(b)ホルダのための第1部材及び第2部材、並びに光導波路部品を準備する工程と、(c)前記ガイド部品及び前記光導波路部品を前記第1部材と前記第2部材との間に挟んでホルダ部品を形成する工程と、を備え、前記被覆膜は撥油性を有し、ガイド部品を準備する前記工程は、金属の側面を備える芯材に、フッ素有機化合物及び金属を含む混合物を備える複合メッキ層を形成する工程と、前記複合メッキ層上に金属メッキ層を形成することによって、メッキ生産物を作製する工程と、前記メッキ生産物から前記芯材を抜き取る工程と、を含む。
【0024】
この光接続部品を作製する方法によれば、フッ素有機化合物及び金属を含む混合物を備える複合層を芯材の金属製側面上にメッキ法により形成すると共にこの複合層上に金属ベースをメッキ法により形成して、メッキ生産物を作製する。芯材の金属製側面上には、複合層及び金属ベースが形成される。このメッキ生産物から芯材を抜き取って、ガイド部材生産物を作製する。ガイド部材生産物は、メッキ生産物からの芯材の抜き取りによって形成された貫通孔を有しており、この貫通孔の内壁側面は、金属ベース上に複合層として設けられた被覆層によって提供される。上記のガイド部材生産物から、光接続部品のためのガイド部品が作製される。ガイドピンを案内するガイド部材の内側面は、撥油性を有すると共に、ガイド部材の外側面は金属からなる。ガイド部材の外側面が第1部材及び第2部材によって支持されて、ガイド部材は、光接続部品の作製において、ホルダのための第1部材及び第2部材の間に設けられる。複合層及び金属ベースのメッキ量によってガイド部材の外側面に係るサイズを管理でき、ガイド部材の貫通孔の内側面に係るサイズを芯材の外形サイズによって管理できる。この貫通孔は、ガイドピンを受入可能である。貫通孔は、光接続部品のホルダにガイド孔を提供でき、このガイド孔が、ホルダの一端面から第1軸の方向に延在している。ガイド孔の内側面上の被覆膜は撥油性を有している。
【0025】
一形態に係るガイド部材生産物を作製する方法は、(a)フッ素有機化合物及び金属を含む混合物を備える複合層を金属製の側面を備える芯材上にメッキ法で形成する工程と、(b)前記複合層を形成した後に、メッキ生産物を作製する工程と、(c)前記メッキ生産物から前記芯材を抜き取る工程と、を備え、メッキ生産物を作製する前記工程は、前記複合層上に金属層をメッキ法で形成する。
【0026】
このガイド部材生産物を作製する方法によれば、フッ素有機化合物及び金属を含む混合物を備える複合層を芯材の金属製側面上にメッキ法により形成すると共に複合層上に金属ベースをメッキ法により形成して、メッキ生産物を作製する。芯材の金属製側面上には、複合層及び金属ベースが形成される。このメッキ生産物から芯材を抜き取って、ガイド部材生産物を作製する。ガイド部材生産物は、メッキ生産物からの芯材の抜き取りによって形成された貫通孔を有する。貫通孔の内壁側面は、金属ベース上に複合層として設けられた被覆層によって提供される。ガイド部材生産物から、光接続部品のためのガイド部品が作製される。ガイド部材は、ホルダのための第1部材及び第2部材の間に設けられて、ガイド部材の外側面が第1部材及び第2部材によって支持される。また、ガイド部材の貫通孔は、ガイド部材の内側面によって案内されるガイドピンを受け入れる。芯材の外形サイズによって貫通孔のサイズを管理でき、複合層及び金属ベースのメッキ量によってガイド部材生産物の外形サイズを管理できる。
【0027】
一形態に係るガイド部材生産物を作製する方法では、メッキ生産物を作製する前記工程は、前記芯材、前記複合層、前記金属層を一緒に切断して、前記メッキ生産物を作製する。
【0028】
このガイド部材生産物を作製する方法によれば、複合層及び金属層の加工精度が高められる。
【0029】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、光接続部品、光処理装置、光接続部品を作製する方法、及び光接続部品のガイド部品のためのガイド部材生産物を作製する方法に係る本実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0030】
図1は、本実施の形態に係る光接続部品を概略的に示す斜視図である。光接続部品11は、ホルダ10及び被覆膜12を備える。ホルダ10は、光接続のための一端面10a、他端面10b、光導波路16、及び、ガイド孔18のための貫通孔を含む。光接続部品11は、一端面10aが、光接続のために、他の光学素子に接着材によって固定されるように使用される。光導波路16は、一端面10aから第1軸Ax1の方向に延在する部分を有する。ガイド孔18は、一端面10aから第1軸Ax1の方向に延在する。被覆膜12は、貫通孔の内側面上に設けられ、また撥油性を示す。被覆膜12の表面は、貫通孔の内側面上においてガイド孔18を規定する。ガイド孔18の内側面の撥油性は、一端面10aの撥油性より優れる。
【0031】
この光接続部品11によれば、ホルダ10はガイド孔18を有し、このガイド孔18が、ホルダ10の一端面10aから第1軸Ax1の方向に延在している。これ故に、光接続のための一端面10aに接着材が設けられた際に、接着材が、その流動性に起因してガイド孔18の一端に到達する可能性がある。このガイド孔18の内側面は、撥油性の表面を有する被覆膜12によって提供される。この被覆膜12によれば、一端面10a上の接着材が、毛細管現象によりガイド孔18内に深く侵入することを避けることができる。
【0032】
被覆膜12は、例えばフッ素有機化合物及び金属を含む混合物を備えることができる。フッ素有機化合物及び金属を含む混合物は、所望の撥油性を有している。或いは、被覆膜12は、シリコーン鎖を有するシルセスキオキサン化合物を備えることができる。
【0033】
ホルダ10は、より具体的には、ベース14、光導波路16、及びホルダ部品17を含む。ホルダ部品17は、光導波路16を支持する。ベース14は、ある軸の方向に延在する側壁によって規定される貫通孔を有しており、この貫通孔は、例えばベース14のパイプ形状によって提供される。被覆膜12はベース14の貫通孔内に設けられ、ベース14の側壁の内面によって支持される。このベース14はホルダ部品17によって支持されている。本実施例では、被覆膜12は、ベース14の貫通孔の内側面を覆ってベース14の一端から他端まで延在する。ベース14は例えば金属製である。ベース14の材料は、ニッケルであることができる。金属製のベース14は、フッ素有機化合物及び金属を含む混合物をしっかりと支持できる。
【0034】
光接続部品11では、光ファイバ13は、光導波路16の一例であり、また被覆膜12及びベース14はガイドパイプ15を構成する。ガイドパイプ15の内側面の撥油性は、ガイドパイプ15の外側面の撥油性より優れる。ホルダ部品17は、第1端面17a、第2端面17b、支持部17c、及びガイド部17dを含む。一実施例では、ホルダ部品17は、第1部材19及び第2部材21を含む。光ファイバ13及びガイドパイプ15は、第1部材19と第2部材21との間に位置しており、またホルダ部品17は、第1部材19と第2部材21とを互いに接着する接着部材23を備える。光ファイバ13の一端13aは第1端面17a(10a)に位置している。
【0035】
支持部17cは、第2端面17bに向けて第1端面17aから延在し光ファイバ13を支持する。この支持のために、支持部17cは、少なくとも3つの面を有することが好ましい。本実施例では、第1部材19の第1支持部19aは、光ファイバ13を支持するための第1側面19aa及び第2側面19abを有する。また、第2部材21の第2支持部21aは、光ファイバ13を支持するための第1側面21aa及び第2側面21abを有する。第1支持部19aの第1側面19aa及び第2側面19ab並びに第2支持部21aの第1側面21aa及び第2側面21abは、本実施例では、それらの一部で光ファイバ素線と直接に接し、また他の部分では接着部材23を介して、光ファイバ素線の側面を支持する。
【0036】
ガイド部17dは、第1端面17aから第2端面17bに向けて延在しガイドパイプ15を支持する。この支持のために、ガイド部17dは、少なくとも3つの面を有することが好ましい。ガイド部17dは、一部でガイドパイプ15の外側面15aと直接に接し、また他の部分では接着部材23を介してガイドパイプ15の外側面15aを支持する。本実施例では、第1部材19のガイド部19bは、ガイドパイプ15を支持するための第1側面19ba及び第2側面19bbを有する。具体的には、第1部材19のガイド部19bの第1側面19ba及び第2側面19bbは、これらの一部でガイドパイプと直接に接し、また他の部分では接着部材23を介してガイドパイプ15の外側面15aを支持する。また、本実施例では、第2部材21のガイド部21bは、ガイドパイプ15を支持するための第1側面21ba及び第2側面21bbを有する。
【0037】
この光接続部品11によれば、光ファイバ13が接着部材23によりホルダ部品17に接着される。光ファイバ13は、第1部材19と第2部材21との間に位置して支持部17cによって支持されると共に、接着部材23によりホルダ部品17内にしっかりと固定される。また、ガイドパイプ15は、第1部材19と第2部材21との間に位置して、接着部材23によりホルダ部品17のガイド部17d内にしっかりと固定される。ガイドパイプ15は、位置合わせのためのガイドピンを収容可能なガイド孔15bを有する。ガイド部17dにガイドピンを挿入した際に、ガイドパイプ15の内側面とガイドピンの側面との間に僅かな隙間が形成される。ガイドパイプ15は、ガイド孔15bを規定する側壁を有する。この側壁の内側面は、本実施例では、フッ素有機化合物及び金属を含む混合物を備え、この混合物は、その下地の撥油性に比べて優れた撥油性を示す。一方、ホルダ10の一端面10a(ホルダ部品17の第1端面17a)は、ホルダ部品17の材料に固有の撥油性により大きな撥油性を有しておらず、一端面10aには、撥油性の増強のための処理が施されていない。内側面の撥油性は、光接続のための第1端面17aに塗布される接着材が、毛細管現象によりガイドパイプ15の内側面に這い上がること及び/又はガイドパイプ15と内側面との間の僅かな隙間に広がることを回避するために役立つ。ガイドパイプ15の側壁内面の撥油性は、ガイド孔15bの奥に接着部材23が進入することを防止している。また、ガイドパイプ15の内側面と第1端面17aとの撥油性の差により、第1端面17a上の接着材は第1端面17aにより多く留まる。ガイドパイプ15は、第1端面17aに位置する端部15cを有しており、この端部15cの反対に別端(図2の別端15d)を有する。ガイドパイプ15の撥油性側壁は、端部15cから別端15dまで連続している。好ましくは、ガイドピンの側面も、撥油性、具体的にはフッ素有機化合物及び金属を含む混合物を備えることが良い。
【0038】
第1部材19は、接着部材23を受ける接着面19cを有する。本実施例では、第1支持部19a及びガイド部19bは、接着面19cに設けられている。本実施例では、接着面19cは、第1部材19の一側19d及び他側19eの一方から他方までに延在すると共に、第1部材19の第11端面19f及び第12端面19gに到達している。また、第2部材21は、接着部材23を受ける接着面21cを有する。本実施例では、第2支持部21a及びガイド部21bは、接着面21cに設けられている。接着面21cは、第2部材21の一側21d及び他側21eの一方から他方までに延在すると共に、第2部材21の第21端面21f及び第22端面21gに到達している。
【0039】
光ファイバ13及びガイドパイプ15は、第1軸Ax1の方向に延在すると共に、この延在を可能にするために、第1部材19及び第2部材21は、第1軸Ax1の方向に交差する第2方向Ax2に配列されて、光ファイバ13及びガイドパイプ15を挟む。この挟持のために、第1部材19は、第2方向Ax2に交差する方向に延在する接着面19cに設けられた第1支持部19a及びガイド部19bを有すると共に、第2部材21は、第2方向Ax2に交差する方向に延在する接着面21cに設けられた第2支持部21a及びガイド部21bを有する。接着部材23は、接着面19cと接着面21cとの間に広がって、第1部材19及び第2部材21を互いにしっかりと接着すると共に、光ファイバ13及びガイドパイプ15は、それぞれ、第1支持部19a及びガイド部19bに支持されながら、第1部材19及び第2部材21を備えるホルダ部品17によってしっかりと保持される。この構造により、接着部材23は、ガイドパイプ15の外側面15aを介してガイド部19bを横切って一体に延在するけれども、ガイドパイプ15のガイド孔15bの奥まで到達しない。
【0040】
光ファイバ13は、例えば石英製シングルモード光ファイバを備えることができる。光ファイバ13はコアとその周囲に設けられたクラッドとを有する。第1部材19及び第2部材21は、例えばホウケイ酸ガラス、石英ガラスといったガラス製である。ガラス材は、正確な寸法の第1部材19及び第2部材21を提供できる。
【0041】
図2は、本実施形態に係る光接続部品の典型的な外観を示す図面である。図2の(a)部に示されるように、光接続部品11は、スタブ構造を有することができる。この構造では、光ファイバ13は、ホルダ部品17の第1端面17aから第2端面17bまでに延在する。或いは、図2の(b)部に示されるように、光接続部品11は、ピグテールファイバを有することができる。光接続部品11は、ホルダ部品17の第2端面17bから延出するピグテール構造を有することができる。この構造では、光ファイバ13は、ホルダ部品17内に延在する第1部分と、ホルダ部品17の第2端面17bから延出する第2部分とを含む。
【0042】
図3は、光接続部品のガイド部品のためのガイド部材生産物を作製する方法の一例を示す図面である。例示される作製方法では、電鋳法を用いてガイドパイプを作製する。ガイドピンの径に対応した金属芯材を準備する。このような金属芯材は、例えばNC加工によって作製される。一例を示せば、準備された金属芯材の径の公差は、例えば−0.5μm〜+0.5μmである。金属芯材は、例えばニッケル、銅、ステンレス、超硬合金、タングステンカーバイドであることができる。
【0043】
電鋳法では、電気メッキ法において第1電解液57aに供給される電荷量を正確に制御しながら、電気メッキにより金属芯材51に金属を析出させる。電荷量の制御により、金属芯材51の側面に析出する金属量を正確に制御することができる。フッ素有機化合物及び金属を含む混合物を析出可能な第1電解液57a、金属ベースを析出可能な第2電解液57b、及び金属芯材51を準備する。第1電解液57aは第1電解槽55aに収容されており、第2電解液57bは第2電解槽55bに収容されている。これらの準備の後に、金属芯材51を治具53に取り付ける。図3の(a)部に示されるように、治具53に取り付けられた金属芯材51は、第1電解槽55a内の第1電解液57aに浸される。所望の電荷量を第1電解槽55aに供給した後に、図3の(b)部に示されるように、治具53及び金属芯材51を第1電解槽55aから取り出す。通電の結果、フッ素有機化合物及び金属を含む混合物を備える複合層59aが金属芯材51上にメッキ法で形成される。この結果物を、被覆生産物SP1として参照する。治具53には、複合層59a及び金属芯材51を含む被覆生産物SP1が取り付けられている。図3の(c)部に示されるように、治具53に取り付けられた被覆生産物SP1は、第2電解槽55b内の第2電解液57bに浸される。所望の電荷量を第2電解槽55bに供給した後に、図3の(d)部に示されるように、治具53及び金属芯材51を第2電解槽55bから取り出す。この生産物は、メッキ生産物SP2として参照される。この作製では、金属ベース59bが被覆生産物SP1の側面上に作製される。メッキ生産物SP2は、複合層59aと、この複合層59a上にメッキ法で形成された金属ベース59b(析出金属壁)とを備える。金属ベース59bは、金属芯材51の側面上の複合層59aを支持できる程度の所望の厚さの析出金属を備える。必要な場合には、メッキ生産物SP2から金属芯材51を抜き取る。本実施例では、図3の(e)部に示されるように、金属芯材51、複合層59a及び金属ベース59bを含むメッキ生産物SP2を所望の長さに切断して、長さの点を除いてメッキ生産物と実質的に同等な断面構造を有する中間生産物61を形成する。中間生産物61は、芯材63と、芯材63の側面に設けられた複合層構造を備える金属パイプ65とを含む。図3の(f)部に示されるように、中間生産物61から芯材63を抜き取ると、金属パイプ、つまり、複合層59a及び金属ベース59bに基づく2層構造のガイドパイプ部品を得ることができる。ガイドパイプ部品の外径の公差は、例えば−0.5μm〜+0.5μmである。ガイドパイプ部品の外径及びその公差は、電解液に供給される電荷量の正確な制御の程度に対応する。
【0044】
(実施例)
金属心材としてはタングステンカーバイドの丸棒(円形状の断面を有する棒材)を準備した。この丸棒をセンタレス研磨により所望の精度、本実施例では加工後の丸棒の直径が、0.7mmを中心に−0.0002mmから+0.0002mmの公差を満たすように加工した。加工された芯材をホルダーに取り付けた後に、その表面に脱脂処理を行った。この後に、ホルダーに取り付けられた丸棒を電解液の中に浸した。電解液は、フッ素化合物が分散共析してなる複合メッキ層の形成用に準備された。
電解液の一例。
スルファミン酸ニッケル:350g/リットル。
塩化ニッケル:45g/リットル。
ホウ酸:40g/リットル。
カチオン性含フッ素界面活性剤:1g/リットル。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子:100g/リットル(平均粒径0.2〜0.3μm)。
メッキ条件の一例。
pH:4.0。
陰極電流密度:3A/cm
メッキ液の温度:摂氏50度。
陽極の材料:ニッケル。
循環撹拌有り。
このメッキ条件を用いて、0.3μm〜1.0μmの範囲の厚さのニッケル複合メッキ層(PTFEが25%分散共析してなるニッケル複合メッキ層)を金属心材上に形成した。
【0045】
ホルダに取り付けられた状態で丸棒上にニッケル複合メッキ層を形成した生産物を金属メッキ用の電解液に浸した。この電解液は、PTFE粒子を含まず金属メッキ用に準備された。
電解液の一例。
スルファミン酸ニッケル:350g/リットル。
塩化ニッケル:45g/リットル。
ホウ酸:40g/リットル。
カチオン性含フッ素界面活性剤:1g/リットル。
メッキ条件の一例。
pH:4.0。
陰極電流密度:3A/cm
メッキ液の温度:摂氏50度。
陽極の材料:ニッケル。
循環撹拌有り。
このメッキ条件を用いて、金属メッキ層の外側面の直径が1mmになるように、ニッケル層をメッキ法で形成した。
【0046】
ニッケルメッキが完了した後に、メッキ完成物をメッキ槽から取り出した。メッキ完成物を所望の長さに切断する。切断の後に、メッキ完成物片から芯材を抜き取って、ガイドパイプ部品を形成する。抜き取りには、例えば芯材及びメッキ金属層の熱膨張係数の違い(ニッケルの熱膨張係数がタングステンカーバイドの熱膨張より大きいこと)を利用することができる。
【0047】
本実施例によるパイプでは、パイプ内表面が撥水撥油性を有する被覆膜を備えると共に、パイプ内径は芯材の直径によって規定される。この製造方法は、パイプ内表面の撥水撥油性と内径の要求精度(−0.0005mm〜+0.0005mm)とを共に達成可能である。また、パイプ外形の精度についても、メッキのための通電電荷量及び通電時間を制御することにより、撥水撥油性の被覆膜を備えるガイド部材に所望の外形精度(−0.0005mm〜+0.0005mm)を提供できる。パイプ内表面は、パイプ外表面の撥水撥油性より優れた撥水撥油性を有する。
【0048】
電解液に加えるフッ素有機化合物は、例えば、ポリテトラフルオルエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FPE)、ヘキサフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FPA)、フッ化黒鉛の少なくともいずれかであることができる。これらのフッ素有機化合物は、化合物の構造においてフッ素原子が炭素原子の周囲を密に配置されているので、該フッ素有機化合物の表面は反応性に乏しく、これ故に、水といった極性液体、及びヘキサデカンといった無極性液体のいずれの液体に対してはじく性質(撥水性・撥油性)を有する。
【0049】
図4は、この実施例における作製方法により形成されたガイドパイプの断面を模式的に示す図面である。ニッケル金属領域内にPTFE粒子が分散されて配置されている。ガイドパイプの表面には、PTFE粒子の表面及びニッケル金属の表面がガイドパイプの内表面に現れる。この内表面はPTFEからの撥水撥油性を示す。内表面におけるPTFEの面密度(PTFEの表出面積/単位表面積)は10%から35%である。
【0050】
図5は、分散共析されたPTFE粒子を含むニッケル表面における共析量と、純水(極性液体)に対する接触角との関係を示す。ここで、共析量は、メッキにより付着した析出物中のPTFE粒子の体積割合量として定義される。PTFE単体では、純水の接触角は約110度である。
共析量、 接触角。
0% :80度(ニッケル固有の接触角)。
5% :95度。
10%:102度。
15%:105度。
20%:107度。
25%:108度。
30%:109度。
20%以上の共析量における接触角は、PTFE単体の接触角とほぼ同等とである。この観点において、ニッケル内側面において共析量20%程度におけるPTFE粒子の表出により、PTFE単体と実質的に同等な撥水性が得られる。PTFEは、水のような極性液体だけでなく無極性液体に対して同傾向で撥油性を示す。無極性分子のヘキサデカンでは、PTFE上での接触角は室温で45度である。ニッケル内側面において共析量20%程度におけるPTFE粒子の表出により、ヘキサデカンの接触角も約45度の値になる。フッ素有機化合物をメッキの分散共析物として用いる非腹膜は、その表面に接触する光学接着材の極性・無極性によらず、この接着材をはじく性質を内側面に提供できる。図5に示されていないホウケイ酸ガラスは、純水(極性液体)に対して接触角25度を示す。
【0051】
光学接着材として使用可能なエポキシ樹脂では、エポキシ樹脂のエポキシ基は親水性基(極性)である一方、エポキシ樹脂の骨格は疎水性(非極性)を有する。エポキシ樹脂の接触角は、その樹脂組成に依存して、PTFE上において45度〜110度の範囲にある。ガイドパイプの内側面において、表面張力による接着剤の這い上がりは、接触角のコサインに比例する。例えば、接触角が90度以上であるとき、ガイド部材が接着材により固定されるような不具合に結果的になる這い上がり(接着剤の這い上がり)は実質的にない。この観点に基づき、被覆膜中にフッ素有機化合物の共析量を決定することができ、共析量は望ましくは20%以上である。この範囲では、接着剤がガイドパイプ内面を這い上がる現象は大きく低減される。
【0052】
ガイドパイプの使用の形態から、ガイドパイプの内形サイズ(図4のDIN)及び外形サイズ(図4のDOUT)を所望の公差内に作り込むことが求められる。具体的には、ガイドパイプの内径については、シングルモード光ファイバの光接続に対する位置精度の要求により、−0.0005mmから+0.0005mmの範囲における精度が求められる。実施形態において説明した製造方法は、このような要求を満たす一候補である。
【0053】
光結合の要求精度について、具体的に説明する。シングルモードファイバ(SMF)のモードフィールド径が例えば7〜8μmである。光ファイバ13としてシングルモードファイバを用いる光デバイスでは、光接続部品11に光学的に結合される光部品の光導波路又は光素子と当該光接続部品11との接続ロスがこの光接続において低減されるように、光接続部品11においてホルダ部品17の支持部17cに位置決めされる光ファイバ13の位置が−1.0μm〜+1.0μm程度の精度であることが好ましい。これに加えて、ガイド部17dに位置決めされるガイドパイプ15の位置が−1.0μm〜+1.0μm程度の精度であることが好ましい。ガイドピンのための支持溝に替えてガイドパイプ15の支持溝を設けると共に、該ガイドパイプ用支持溝にガイドピンに替えてガイドパイプ15を設けるので、部品の数が、ガイドパイプ15の利用のために増加する。発明者の見積もりによれば、この部品数の増加を考慮しても、ガイドピン支持溝及びガイドピンを用いるデバイスに比べて同程度に、ガイドパイプ15のためのガイド部17d及びガイドパイプ15を用いる光接続部品11を小さくでき、また光接続部品11は、その光接続における接続ロスを所望の範囲に小さくできる。また、第1部材19及び第2部材21が、ガラス材のような脆性を示す材料で成るとき、ガイドピンをガイドパイプ15に挿入した際に加えられる力が、第1部材19及び/又は第2部材21の一部分に、またこれら部材に直接に、加わることがない。これ故に、第1部材19及び/又は第2部材21の割れの発生を低減できる。具体的には、ガイドパイプ15を支持するガイド部17dは、例えばV溝として形成される。このV溝の底のくさび状のくぼみにヒビが入りやすい。
【0054】
図6図9を参照しながら、光接続部品を作製する方法を説明する。図6の(a)部に示されるように、金属パイプ65、光ファイバ部品67、並びにホルダのための第1部品69及び第2部品71を準備する。この実施例では、既に説明したように、金属パイプ65は、例えば電鋳法により作製される。また、光導波路部品として、光ファイバ部品67が準備される。光ファイバ部品67は光ファイバ素線であることができる。第1部品69及び第2部品71は、図6の(b)部の平面図に示されるように、本実施例では、同一の形状を有している。記述の簡素のために、第1部品69及び第2部品71の引き続く説明において、第1部品69の説明を行うと共に、第1部品69の参照符合の後ろの丸括弧内に第2部品71の対応部分の参照符合を記載する。第1部品69(第2部品71)は、接着材を受ける第1接着面69c(71c)を有する。本実施例では、第1支持溝69a(71a)及び第1ガイド溝69b(71b)は、第1接着面69c(71c)に設けられている。第1接着面69c(71c)は、第1部品69(71)の一側69d(71d)及び他側69e(71e)の一方から他方まで延在すると共に、第1部品69(71)の第11端面69f(第21端面71f)及び第12端面69g(第22端面71g)に到達している。
【0055】
第1支持溝69a(第2支持溝71a)は、第11端面69f(71f)に向けて第12端面69g(71g)から延在すると共に光ファイバ部品67を支持する。この支持のために、第1支持溝69a及び第2支持溝71aは、総計で、少なくとも3つの面を有することが好ましく、本実施例では4つの面を有する。第1支持溝69a(71a)は、光ファイバを支持するための第1側面69aa(71aa)及び第2側面69ab(71ab)を有する。また、第1支持溝69a又は第2支持溝71aに光ファイバ部品67を配置したときに、第1側面69aa(71aa)及び第2側面69ab(71ab)は、光ファイバ素線の側面65aに接して、光ファイバ素線を支持する。
【0056】
第1ガイド溝69b(第2ガイド溝71b)は、第11端面69f(71f)に向けて第12端面69g(71g)から延在すると共に、金属パイプ65を支持する。第1ガイド溝69b(71b)に金属パイプ65を配置すると、第1ガイド溝69b(71b)は、金属パイプ65を支持する。この支持のために、第1ガイド溝69b及び第2ガイド溝71bは、総計で、少なくとも3つの面を有することが好ましく、本実施例では4つの面を有する。具体的には、第1ガイド溝69b(71b)は、金属パイプ65を支持するための第1側面69ba(71ba)及び第2側面69bb(71bb)を有する。第1側面69ba(71ba)及び第2側面69bb(71bb)は、本実施例では、金属パイプ65の側面に接して、金属パイプ65の側面を支持する。
【0057】
金属パイプ65、光ファイバ部品67、第1部品69及び第2部品71を準備した後に、図6の(a)部の正面図に示されるように、第1部品69及び第2部品71のいずれか一方、例えば第2部品71を基準にして、金属パイプ65及び光ファイバ部品67を位置決めすると共に、これらの部材の位置決めの後に第1部品69を位置決めする。位置決めされた金属パイプ65及び光ファイバ部品67の端は、共に、第1部品69及び第2部品71の縁から約0.02mm〜0.3mm程度の値で突き出されている。
【0058】
図7の(a)部の正面図に示されるように、金属パイプ65及び光ファイバ部品67を第1部品69と第2部品71との間に挟むと共に、第1部品69の第1接着面69c及び第2部品71の第2接着面71cの間に接着剤73を設ける。第1部品69及び第2部品71の間隔の最小値は、1μm〜2μm程度であることが好ましく、固定前及び固定後において、第1部品69及び第2部品71は互いに接触していない。接着剤73は、例えば第2部品71の第2接着面71cにおける一方の第2ガイド溝71bの外側から、両方の第2ガイド溝71bの間に設けられた第2支持溝71aを経由して、他方の第2ガイド溝71bの外側にまでわたって塗布されている。また、接着剤73は、第1支持溝69a及び第2支持溝71a内の光ファイバ部品67の側面、並びに第2支持溝71a及び第2ガイド溝71b内の金属パイプ65の側面に接触して、接着剤73の固化により、光ファイバ部品67及び金属パイプ65が、それぞれ、第1支持溝69a(71a)及び第1ガイド溝69b(71b)に固定されることができる。上記の位置決めが完了した後に、接着剤73を硬化させる。この硬化によって、組立体75が形成される。組立体75は、金属パイプ65及び光ファイバ部品67が第1部品69及び第2部品71に挟まれた一体の物体である。例示的な説明を提供すれば、液体状の接着剤73を第1部品69及び第2部品71の間の間隙に供給することによって、接着剤73は、毛細管現象により第1部品69と第2部品71との間に広がる。接着剤73は、例えば熱硬化性又は紫外線硬化性のエポキシ系接着剤等であることができる。固定作業の観点から、短時間のUV硬化により仮固定を行うと共に、仮固定の後に熱硬化により本硬化を行うことが望ましい。
【0059】
図7の(b)部は、図7の(a)部に示されたVIIb−VIIb線にそって取られた断面を示す。例えば第2部品71に金属パイプ65及び光ファイバ部品67を位置決めする際に、金属パイプ65及び光ファイバ部品67の各々は、第2部品71の第21端面71fから外側に延出する第1余長部及び第2部品71の第22端面71gから外側に延出する第2余長部を有する。
【0060】
図8の(a)部に示されるように、研磨部材77を用いて組立体75の一方の端面を研磨して、組立体75に研磨面を形成する。この研磨により、光接続部品のための第2端面17bを形成できる。図8の(b)部は、図8の(a)部に示されたVIIIb−VIIIb線にそって取られた断面を示す。本実施例では、第2端面17bに、金属パイプ65の一端及び光ファイバ部品67の一端が位置しており、金属パイプ65及び光ファイバ部品67の一端が第2端面17bの位置にそろっている。金属パイプ65の一端は研磨された状態の面を有し、及び光ファイバ部品67の一端は研磨された状態の面を有する。
【0061】
スタブ構造を形成する製造方法では、引き続き、図9の(a)部に示されるように、研磨部材77を用いて組立体75の他方の端面を研磨して、組立体75に別の研磨面を形成する。この研磨により、光接続部品11のための第1端面17aを形成できる。図9の(b)部は、図9の(a)部に示されたIXb−IXb線にそって取られた断面を示す。本実施例では、第1端面17a及び第2端面17bの各々に、ガイドパイプ15の一端及び光ファイバ13の一端が位置しており、金属パイプ65の両端及び光ファイバ部品67の両端は研磨されて消失すると共に、ガイドパイプ15の一端及び他端並びに光ファイバ13の一端及び他端が形成される。
【0062】
スタブ構造では、ガイドパイプ15の一端及び光ファイバ13の一端が第1端面17aの位置にそろっており、ガイドパイプ15の他端及び光ファイバ13の他端が第2端面17bの位置にそろっている。ガイドパイプ15の研磨された状態の面及び光ファイバ13の研磨された状態の面の間には、ホルダ生産物の第1端面17a(研磨された状態の面)が延在している。本実施例では、ガイドパイプ15及び光ファイバ13は、第1基準面R1に沿って配列されている。第1端面17aは、第1基準面R1に直交する面から傾斜した第2基準面R2に沿って延在しており、第2端面17bは、第1基準面R1に直交する第3基準面R3に沿って延在している。第1端面17aの傾斜角は、例えば8度程度である。
【0063】
第1端面17aのための研磨を完了すると、光接続部品のための実質的な作製工程は完了する。スタブ構造を形成する方法を説明したけれども、ピグテール構造を形成する方法では、ピグテールを残すために、片方の端面を研磨により形成する。
【0064】
図10は、本実施形態の一利用態様の光処理装置を示す。光処理装置1では、シリコンフォトニクス素子85といった半導体光デバイスに接続される光接続部品11pig及び光接続部品11stabを示す。光接続部品11stabは例えば図2の(a)部に示されたスタブ構造のデバイスを備える。また、光接続部品11pigは、例えば図2の(b)部に示されたピグテール構造のデバイスを備えることができる。光結合の対象となるシリコンフォトニクス素子85は、光学結合素子、光素子、及び回路素子をモノリシックに集積する。シリコンフォトニクス素子85は、光送信のための変調素子85a及びこれに付随する信号処理回路85b、並びに光受信のための受光素子85c及びこれに付随する信号処理回路85dを備えると共に、外部デバイスに光学的な結合を成すための光学結合素子(例えばグレーティングカプラ)を更に備える。シリコンフォトニクス素子85上において、変調素子85a及び受光素子85cとグレーティングカプラとは光導波路を介して互いに接続される。変調素子85aは、信号処理回路85bに金属配線層を介して接続され、また受光素子85cは、信号処理回路85dに金属配線層を介して接続される。変調素子85a及び受光素子85cは、光学結合素子に係る光を処理する光素子として働く。信号処理回路85b及び信号処理回路85dは、該光素子に係る電気信号を処理する回路素子として働く。
【0065】
光接続部品11stabは、シリコンフォトニクス素子85のグレーティングカプラに光学的に結合を成すようにシリコンフォトニクス素子85に取り付けられる。このために、光接続部品11pigを用いたアクティブ調芯を行う。光接続部品11pigは、光接続部品11stabに光学的に結合される。この結合の位置合わせのために、ガイドピン81a、81bが、光接続部品11pigのガイドパイプ15内及び光接続部品11stabのガイドパイプ15内に設けられる。本実施例では、ガイドピン81a、81bが、光接続部品11stabのガイドパイプ15の途中に位置する。アクティブ調芯では、光接続部品11pig及び光接続部品11stabを介して光をシリコンフォトニクス素子85に入力すると共にシリコンフォトニクス素子85から光を取り出して、光強度に基づき光学調芯を行う。光学調芯に先だって、まず光接続部品11pig及びシリコンフォトニクス素子85の接触面の付近に接着剤を供給する。例えばUV硬化性及び熱硬化性の両方を有する光学接着剤を使用することができる。そのうえで光学調芯を行う。光強度が所望の程度の強さになったとき、接着剤にUV照射を行う固化により、光接続部品11pig及びシリコンフォトニクス素子85の仮固定を行う。仮固定のための固化の後に、調心用の光接続部品11pigを取り外す。取り外しの後に接着剤に熱処理を施して、仮固定における接着剤に本硬化のための処理を行う。この接着剤を本硬化のために熱処理することによって、光接続部品11pig及びシリコンフォトニクス素子85が、本固定のために固化された接着部材87によって互いにしっかりと固定される。本実施形態に係る光接続部品11stabの撥油性のガイドパイプ15によれば、接着剤の供給に際して、小さい内径のガイドパイプ15を毛管現象により接着剤が這い上がり難く、またガイドパイプ15とガイドピン81a、81bとの間を毛管現象により接着剤が這い上がり難い。これ故に、仮固定において、ガイドピン81a、81bがガイドパイプ15に固定されることを避けることができる。また、光接続部品11pigの撥油性のガイドパイプ15も同様の作用によって、ガイドパイプ15とガイドピン81a、81bとの間に毛管現象により接着剤が這い上がり難い。
【0066】
図11は、本実施形態に係る光接続部品の一実施例を示す図面である。図11の(a)部は、ホルダ部品17のための第1部材19及び第2部材21のためのガラス部品(例えば、ホウケイ酸ガラス)を示す。図11の(b)部は、光ファイバ13のためのシングルモード光ファイバ素線SMFを示し、このシングルモード光ファイバ素線SMFの直径は、0.125mmである。図11の(c)部は、ガイドパイプ15を示す。また、MTコネクタに接続可能な構造の実施例を示す。
ホルダの横幅W:7mm。
ホルダの奥行き:3mm。
ホルダの第1部材の高さH1:1.2mm。
ホルダの第2部材の高さH2:1.2mm。
ガイドパイプのためのガイド部の中心間隔L1:4.6mm(公差−0.001mm〜+0.001mm)。
光ファイバのための支持部の中心間隔L2:0.25mm(公差−0.001mm〜+0.001mm)。
ガイドパイプのためのガイド部の孔サイズL3:0.9mm(公差−0.001mm〜+0.001mm)。
ガイドパイプの外径:0.8995mm(公差−0.0005mm〜+0.0005mm)。
ガイドパイプに挿入されるガイドピンの外径:0.699mm。
光ファイバのためのV溝の頂角:70度。
光ファイバのためのV溝のピッチ:0.25mm。
光ファイバ用のV溝の配列の両側に、ガイドパイプ用のV溝が設けられる。
ガイドパイプ用のV溝の頂角:70度。
ガイドパイプ用の2つのV溝の頂部の間の長さ:4.6mm。
ガイドパイプの分散共析の被覆膜の厚さT12:1μm。
ガイドパイプのニッケルベースの厚さT14:99μm。
【0067】
光接続部品11は、上記のように小さい部品であるので、光接続部品11のガイド部及びガイドパイプの長さが短い。また、ガイドパイプ15の内径も小さく、内径及び外形に上述のような高い精密性が求められるので、ガイドパイプ15とガイドピンとの間の隙間も小さい。これ故に、毛管現象によるガイドパイプ内、およびガイドパイプとガイドピン間の隙間への接着材の這い上がりを低減することは重要である。
【0068】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、毛細管現象によりガイド孔内へ取り込まれる接着材の量を低減可能な光接続部品が提供され、光接続部品を含む光処理装置が提供され、光接続部品を作製する方法が提供され、光接続部品のガイド部品のためのガイド部材生産物を作製する方法が提供される。
【符号の説明】
【0070】
10…ホルダ、11…光接続部品、12…被覆膜、13…光ファイバ、14…ベース、15…ガイドパイプ、16…光導波路、17…ホルダ部品、17a…第1端面、17b…第2端面、17c…支持部、17d…ガイド部、18…ガイド孔、19…第1部材、21…第2部材、23…接着部材、87…接着部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11