【文献】
小川善資,比色分析装置の基礎,生物試料分析,2013年,Vol. 36, No. 3,pp. 273-280
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液状検体を流通する第1の流路、当該第1の流路に連通し、液状検体から検査対象成分を分離する第2の流路、および、当該第2の流路において液状検体から分離された検査対象成分が流入する測定部を備えたマイクロチップと、
所定の波長域の光を放射する光源と、
前記光源から放射された光を前記マイクロチップに照射するための光学機構と、
前記マイクロチップにおける測定部を含む領域を撮像視野とする撮像素子と、
前記撮像素子によって撮像された画像に係る画像データを画像処理することにより、当該画像中の前記測定部を特定する機能、および測定部における検査対象成分の吸光度を算出する機能を有する画像処理機構とを備え
前記マイクロチップは、光透過性材料よりなる2枚の基板が貼り合わせられてなり、
一方の前記基板の貼り合わせ面には、前記第1の流路を構成する溝と前記測定部を構成する凹所とが互いに離間して形成され、
他方の前記基板の貼り合わせ面には、前記第2の流路を構成する溝が形成され、
前記第2の流路を構成する溝は、前記2枚の基板が貼り合わせられた状態において、一端部が前記第1の流路を構成する凹所上に位置し、他端部が前記測定部を構成する凹所上に位置するように配置され、
2枚の前記基板の貼り合わせ面に形成された溝および凹所が、前記2枚の基板が貼り合わされることによって密閉されることにより、前記第1の流路、前記第2の流路および前記測定部が形成されていることを特徴とする吸光度測定装置。
前記第1の波長域の光が波長400〜500nmの範囲の光を含み、前記第2の波長域の光が波長520〜620nmの範囲の光を含むことを特徴とする請求項2に記載の吸光度測定装置。
液状検体を流通する第1の流路、当該第1の流路に連通し、当該液状検体から検査対象成分を分離する第2の流路、および、当該第2の流路において液状検体から分離された検査対象成分が流通する測定部を備えたマイクロチップを用いた吸光度測定方法であって、
前記マイクロチップは、光透過性材料よりなる2枚の基板が貼り合わせられてなり、
一方の前記基板の貼り合わせ面には、前記第1の流路を構成する溝と前記測定部を構成する凹所とが互いに離間して形成され、
他方の前記基板の貼り合わせ面には、前記第2の流路を構成する溝が形成され、
前記第2の流路を構成する溝は、前記2枚の基板が貼り合わせられた状態において、一端部が前記第1の流路を構成する凹所上に位置し、他端部が前記測定部を構成する凹所上に位置するように配置され、
2枚の前記基板の貼り合わせ面に形成された溝および凹所が、前記2枚の基板が貼り合わされることによって密閉されることにより、前記第1の流路、前記第2の流路および前記測定部が形成され、
前記マイクロチップに対して、所定の波長域の光を照射し、当該マイクロチップにおける測定部を含む領域を撮像素子によって撮像し、当該撮像素子によって撮像された画像に係る画像データを画像処理することにより、当該画像中の前記測定部を特定し、測定部における検査対象成分の吸光度を算出することを特徴とする吸光度測定方法。
前記測定部における検査対象成分の第1の波長域の光の吸光度と、当該測定部における当該検査対象成分の第2の波長域の光の吸光度とに基づいて、当該検査対象成分を構成する特定の物質の吸光度を算出することを特徴とする請求項4に記載の吸光度測定方法。
前記第1の波長域の光が波長400〜500nmの範囲の光を含み、前記第2の波長域の光が波長520〜620nmの範囲の光を含むことを特徴とする請求項5に記載の吸光度測定方法。
【背景技術】
【0002】
血清(血漿)の色の主体成分であるビリルビンは、主に赤血球内のヘモグロビンの崩壊によって生じるものである。ビリルビンが増加すると人体における皮膚全体が黄色くなり、黄疸となる。一般に、新生児期にみられる黄疸の多く(具体的には、新生児の9割)は、生理的な症状であり、生後3〜5日で自然に消失する。しかしながら、黄疸の症状のある新生児のおよそ2割にみられる生理的黄疸の範囲を超える病的黄疸は、中枢神経障害をもたらす「核黄疸」に進行し、脳性まひ、難聴、知的障害等の重篤な後遺症に帰結する可能性があり、死亡につながる場合がある。これを未然に防ぐために、NICU(新生児集中治療室)や産科においては、血液中の総ビリルビン濃度によってスクリーニングを行い、光線治療を行っている。このため、ビリルビンの定量測定が必要になる。ビリルビンの定量測定には、主に比色法が採用されている。
【0003】
比色法によるビリルビンの定量測定方法としては、血液(液状検体)に対して遠心分離処理などを施すことによって血漿成分(検査対象成分)を抽出し、その血漿成分の所定の波長域における吸光度を測定し、得られた吸光度に基づいてビリルビン濃度を算出する手法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
以下、非特許文献1に記載の比色法によるビリルビンの定量測定方法について具体的に説明する。
【0004】
血漿成分には、ビリルビンの他に、溶血ヘモグロビン(損傷した赤血球内部より漏出(溶出)したヘモグロビン)が含まれる場合がある。このような場合には、
図6に示すように、血漿成分の吸収曲線は、ビリルビンの吸収曲線と溶血ヘモグロビンの吸収曲線とが重畳したものとなる。
図6には、或る血漿成分の吸収曲線が実線で示されていると共に、ビリルビンの吸収曲線が破線で示されており、また溶血ヘモグロビンの吸収曲線が一点鎖線で示されている。そのため、血漿成分に、ビリルビンの吸収ピークの波長455nmの光を照射して吸光度を測定することによっては、溶血ヘモグロビンが波長455nmの光を吸収するものであることから、ビリルビンの波長455nmにおける吸光度B
2 と溶血ヘモグロビンの波長455nmにおける吸光度H
2 とが重畳した吸光度B
1 が測定されることとなる。すなわち、測定値として、ビリルビンの波長455nmにおける吸光度B
2 を得ることができない。
一方、血漿成分の吸収曲線において、ビリルビンの吸収がなく、溶血ヘモグロビンのみの吸収がある波長575nmにおける吸光度H
1 に着目すると、この血漿成分の波長575nmにおける吸光度(溶血ヘモグロビンの波長575nmにおける吸光度)H
1 の値は、溶血ヘモグロビンの波長455nmにおける吸光度H
2 の値とほぼ一致している。
そこで、ビリルビンの波長455nmにおける吸光度B
2 は、血漿成分の波長455nmにおける吸光度B
1 の値から血漿成分の波長455nmにおける吸光度H
2 の値を差し引くことによって得るところ、血漿成分の波長455nmにおける吸光度B
1 の値から溶血ヘモグロビンの波長575nmにおける吸光度H
2 の値を差し引いた値によって近似することが可能となる。
従って、血漿成分について、波長455nmにおける吸光度および波長575nmにおける吸光度をそれぞれ測定し、波長455nmにおける吸光度の値から波長575nmにおける吸光度の値を差し引くことにより、容易にビリルビンの波長455nmにおける吸光度を得ることができる。そして、このようにして得られたビリルビンの吸光度は、ビリルビンの濃度に比例するため、吸光度から濃度を求めることができる。
【0005】
このような比色法によるビリルビンの定量測定方法を実施するための吸光度測定装置としては、一般的に、
図7に示すような吸光度測定装置が用いられている。
吸光度測定装置は、血漿成分を封入した、内径1mm程度のガラス製の毛細管53を保持するホルダ54と、当該毛細管53に白色光を照射するための光源51と、毛細管53を透過した光源51から放射された光を分光するダイクロイックミラー43と、このダイクロイックミラー43によって分光された光を受光する、フォトダイオード56A,56Bとを備えたものである。ホルダ54は、内部に毛細管53を収容する毛細管収容空間が形成された略円筒状のものであり、周壁には、毛細管収容空間に連通する光導入用スリット54Aが設けられている。また、ダイクロイックミラー43は、波長575nmを含む波長域の光を透過し、波長455nmを含む波長域の光を反射するものである。このダイクロイックミラー43の透過光がフォトダイオード56Aに至るまでの光路上には、波長575nmの光を選択的に透過する金属干渉フィルタ44Aが設けられている。また、ダイクロイックミラー43の反射光がフォトダイオード56Bに至るまでの光路上には、波長455nmの光を選択的に透過する金属干渉フィルタ44Bが設けられている。そして、2つのフォトダイオード56A,56Bは、各々、マイクロコンピュータ55に接続されている。このマイクロコンピュータ55においては、フォトダイオード56A,56Bにおいて測定された透過光強度に基づいて血漿成分の吸光度(具体的には、波長455nmにおける吸光度および波長575nmにおける吸光度)が算出され、更にその血漿成分の吸光度からビリルビンの吸光度が算出され、得られたビリルビンの吸光度に基づいてビリルビンの濃度が算出される。マイクロコンピュータ55には、算出されたビリルビンの吸光度およびビリルビンの濃度を表示するための測定結果表示手段48が接続されている。
この吸光度測定装置によって血液中のビリルビンの吸光度を測定するためには、先ず、血液に対して遠心分離処理などを施すことによって血漿成分(検査対象成分)を抽出し、抽出した血漿成分を毛細管53に封入してホルダ54に装着する。次いで、血漿成分が封入された毛細管53に対して、光源51からの白色光を、光導入用スリット54Aを介して照射する。そして、毛細管53(血漿成分)を透過した光がダイクロイックミラー43によって波長455nmを含む波長域の光と波長575nmを含む波長域の光とに分光され、フォトダイオード56A,56Bによって金属干渉フィルタ44A,44Bを透過した波長455nmの光および波長575nmの光の透過光強度が測定される。更に、その測定値に基づいて、マイクロコンピュータ55によってビリルビンの吸光度が算出され、それらの吸光度に基づいてビリルビンの濃度が算出される。
【0006】
一方、血液から血漿成分を抽出する方法としては、マイクロチップを利用する手法、具体的にはマイクロメートルサイズの血球と同程度の大きさの微細な流路、いわゆるマイクロ流路の流路構造によって血球の動きを制限することにより、血液から微量の血漿成分のみを抽出する手法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は、本発明の吸光度測定装置の構成の一例を示す説明図である。また、
図2は、
図1の吸光度測定装置におけるマイクロチップ20の要部を示す説明図であり、(a)は第1の流路、第2の流路および測定部が形成された部分を拡大して示す説明用部分拡大図であり、(b)は(a)のA−A’線断面図であり、(c)はB−B’線断面図である。
この吸光度測定装置10は、血液を液状検体として、その血液における血漿成分を検査対象成分とし、比色法を利用して測定される血漿成分の吸光度に基づいて、血漿成分を構成するビリルビン(特定物質)の吸光度を算出し、そのビリルビンの濃度、具体的には、血液中のビリルビン濃度を測定するためのものである。すなわち、吸光度測定装置10は、ビリルビン検出用の吸光度測定装置である。
【0018】
吸光度測定装置10は、光透過性材料よりなるマイクロチップ20を、着脱自在に鉛直に保持するチップホルダ(図示省略)と、マイクロチップ20の一面(
図1における左面)に対向するように配置された光源11とを備えている。光源11とマイクロチップ20との間には、当該光源11の近傍位置にマルチバンドパスフィルタ12が配設されており、このマルチバンドパスフィルタ12とマイクロチップ20との間には、コリメータレンズ13が配設されている。マルチバンドパスフィルタ12は、所定の波長域の光(具体的には、波長455nmを含む波長域の光および波長575nmを含む波長域の光)を選択的に透過すると共に、透過光のスペクトル幅を調整(具体的には、狭帯域化)し、スペクトル半値幅を10〜15nmとするものである。また、コリメータレンズ13は、入射された光を平行光として出射するものである。このマルチバンドパスフィルタ12とコリメータレンズ13とは、照射用光学機構を構成しており、光源11から放射された光を、マイクロチップ20における特定の領域(以下、「光照射領域」ともいう。)に照射する。
また、吸光度測定装置10には、撮像素子を具備した撮像手段16が、マイクロチップ20の他面(
図1における右面)に対向するように配設されている。マイクロチップ20と撮像手段16との間には、アクロマートレンズ14が配設されている。アクロマートレンズ14は、光源11から放射された光よりなる光像を拡大(具体的には、例えば倍率5倍で拡大)して撮像手段16の撮像素子に投影するものである。撮像手段16には、制御手段17が電気的に接続されており、この制御手段17により、撮像手段16の撮像素子において撮像された画像に係る画像データを画像処理する画像処理機構が構成されている。制御手段17には、光源11の光源電源19が電気的に接続されている。
図1の例において、制御手段17は、撮像手段16の撮像素子において撮像された画像に係る画像データを画像処理する画像処理機能と共に、光源11の点灯制御を行う光源制御機能および測定結果を表示する測定結果表示機能を有するものである。
【0019】
マイクロチップ20は、矩形平板状のものである。このマイクロチップ20の内部には、血液(液状検体)を流通する第1の流路23と、血液における血漿成分(検査対象成分)が流入する測定部27と、一端部(
図2(a)および(c)における左端部)において第1の流路23に連通し、他端部(
図2(a)および(c)における右端部)において測定部27に連通する第2の流路25とが形成されている。この第1の流路23、第2の流路25および測定部27においては、血液および血漿成分の流動性の観点から、当該第1の流路23、第2の流路25および測定部27を区画する内周壁に疎水化処理が施されている。
第1の流路23は、血液を流通させることのできる流路寸法(具体的には、流路幅W1が400μm、流路深さD1が100μm)を有するものであり、マイクロチップ20の一方の側面の上方側(
図1における上方)に設けられた検体導入用開口(図示省略)を介して外部と連通している。
第2の流路25は、血液中の血漿成分のみを流通させることができる流路寸法、すなわち血漿成分以外の成分(具体的には、血球成分)が流入せず、血漿成分のみを流入させることのできる流路寸法(具体的には、流路幅が50μm、流路深さD2が2μm、流路長さが270μm)を有するものである。このような構造により、第2の流路25は、血液から血漿成分を分離する分離流路として機能するものとされている。
測定部27は、第2の流路25において血液から分離された血漿成分が流入し、その血漿成分を貯留することのできるものであり、その寸法の具体的な一例は、幅W2が350μm、深さD3が100μmである。
図2の例において、マイクロチップ20には、複数(具体的には8つ)の第2の流路25が形成されており、これらの複数の第2の流路25は第1の流路25に沿って一定の間隔(例えば、等間隔)で並列配置されている。
【0020】
このマイクロチップ20は、光透過性材料よりなる2枚の基板21A,21Bが接着剤層を介して貼り合わせられてなるものであり、2枚の基板21A,21Bの貼り合わせ面に形成された溝および凹所が、当該2枚の基板21A,21Bが貼り合わされることによって密閉されることにより、第1の流路23、第2の流路25および測定部27が形成されたものである。
具体的に説明すると、一方の基板21Aの貼り合わせ面(
図2(b)および(c)における上面)には、第1の流路用溝23Aと測定部用凹所27Aとが、互いに離間して形成されている。また、他方の基板21Bの貼り合わせ面(
図2(b)および(c)における下面)には、第2の流路用溝25Aが、当該他方の基板21Bが一方の基板21Aと貼り合わせられた状態において、一端部が第1の流路用凹所23A上に位置し、他端部が測定部用凹所27A上に位置するように形成されている。そして、これらの2枚の基板21A,21Bが接着剤層を介して貼り合わせられることにより、一方の基板21Aにおける第1の流路用溝23Aおよび測定部用凹所27Aが他方の基板21Bによって密閉され、また他方の基板21Bにおける第2の流路用溝25Aが一方の基板21Aによって密閉される。以って、内部に第1の流路23、第2の流路25および測定部27が形成されたマイクロチップ20が得られる。
図2の例において、マイクロチップ20を構成する2枚の基板21A,21Bは、例えば縦横寸法が25mm×45mm、厚みが1mmのものである。
【0021】
マイクロチップ20(基板21A,21B)を構成する光透過性材料としては、ポリプロピレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂に相溶しないポリマーブロック(以下、単に「ポリマーブロックX」という。)および共役ジエンによるエラストマー性のポリマーブロック(以下、単に「ポリマーブロックY」という。)よりなるブロックコポリマー(以下、「特定のブロックコポリマー」という。)の水素添加誘導体(以下、「特定の水素添加誘導体」という。)とを含有してなる樹脂組成物(以下、「特定の樹脂組成物」という。)を用いることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンのホモポリマーや、プロピレンと、エチレン、またはブテン−1、ヘキセン−1などのプロピレン以外のα―オレフィンとのランダムコポリマーを用いることができる。
特定のブロックコポリマーにおいて、ポリマーブロックXとしては、ポリプロピレン系樹脂に相溶しないものであれば特に限定されず、例えばビニル芳香族モノマー(例えばスチレン)、エチレンまたはメタクリレート(例えばメチルメタクリレート)等を重合して得られるポリマーブロックを用いることができる。具体的なポリマーブロックXの例としては、ポリスチレン系のものや、ポリオレフィン系のものが挙げられる。
ポリスチレン系のポリマーブロックXの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンから選択された1種または2種以上のビニル芳香族化合物を重合して得られるポリマーブロックが挙げられる。
ポリオレフィン系のポリマーブロックXの具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体ブロック、エチレン−1−ブテン共重合体ブロック、エチレン−1−オクテン共重合体ブロック、エチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエン共重合体ブロック、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ブロックなどが挙げられる。
ポリマーブロックYとしては、2−ブテン−1,4−ジイル基およびビニルエチレン基からなる群から選択される少なくとも1種の基よりなる構造単位によって構成されるポリブタジエンブロック、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群から選択される少なくとも1種の基よりなる構造単位によって構成されるポリイソプレンブロック、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群から選択される少なくとも1種の基よりなる構造単位、並びに2−ブテン−1,4−ジイル基およびビニルエチレン基からなる群から選択される少なくとも1種の基よりなる構造単位によって構成されるイソプレン/ブタジエン共重合体ブロックなどが挙げられる。イソプレン/ブタジエン共重合体ブロックにおけるイソプレンに由来の構造単位とブタジエンに由来の構造単位との配置は、ランダム状、ブロック状、テーパブロック状のいずれの形態であってもよい。
特定の水素添加誘導体は、上記の特定のブロックコポリマーを水素添加することによって得られる。特定の水素添加誘導体における水素添加の状態は、部分水素添加であっても、また完全水素添加であってもよい。
【0022】
マイクロチップ20において、接着剤層を構成する接着剤としては、アクリル酸エステル系共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体/アクリル酸エステル共重合体複合樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニル系樹脂および塩化ビニリデン系樹脂から選択された少なくとも1種の樹脂を含むものを用いることが好ましい。
また、接着剤層には、必要に応じて、微粒子充填剤、ポリビニルアルコールなどの添加剤が含有されていてもよい。
【0023】
光源11としては、所定の波長域の光、具体的には検査対象成分(特定物質)に応じた適宜の光を放射するものが用いられる。
また、光源11は、測定信頼性の観点から、異なる波長域の光、具体的には第1の波長域の光と第2の波長域の光とを同時にまたは異時に放射することのできるものであることが好ましい。具体的には、検査対象成分が血漿成分であって特定物質がビリルビンであることから、第1の波長域の光が波長400〜500nmの範囲の光を含み、第2の波長域の光が波長520〜620nmの範囲の光を含むことが好ましい。
【0024】
光源11が波長400〜500nmの範囲の光を含む第1の波長域の光と波長520〜620nmの範囲の光を含む第2の波長域の光とを同時または異時に放射することのできるものであることにより、血漿成分がビリルビン以外の物質(具体的には、溶血ヘモグロビン(損傷した赤血球内部より漏出(溶出)したヘモグロビン))を含有するものであっても、血液中のビリルビン濃度を高い信頼性で測定することができる。具体的には、高い信頼性をもってビリルビンの吸光度(ビリルビンの波長454nmにおける吸光度)を測定することができることから、測定されたビリルビンの吸光度に基づいて算出される血液中のビリルビン濃度の値が高い信頼性を有するものとなる。
【0025】
光源11の具体例としては、LED素子などが挙げられる。
図1の例において、光源11としては、ピーク発光波長450nmのLEDチップ(以下、「第1のLEDチップ」ともいう。)とピーク発光波長570nmのLEDチップ(以下、「第2のLEDチップ」ともいう。)とを備えたLED素子(2波長LED素子)が用いられている。そして、この光源11は、第1のLEDチップからの第1の波長域の光と、第2のLEDチップからの第2の波長域の光とを異時に放射することができ、波長455nmの光の放射強度(マイクロチップ入射前の光強度)が0.2mW/cm
2 であって、波長575nmの光の放射強度(マイクロチップ入射前の光強度)が0.08mW/cm
2 であるものである。
【0026】
撮像手段16の撮像素子としては、マイクロチップ20における測定部27を含む領域を撮像視野とするものが用いられる。具体的に、撮像手段16の撮像素子の撮像視野は、マイクロチップ20の撮像素子と対向する他面における、測定部27が位置する領域およびその周辺領域である。
この撮像素子の撮像視野に係る周辺領域には、第1の流路23が位置する領域の少なくとも一部が含まれていることが好ましい。
撮像素子の撮像視野にマイクロチップ20における第1の流路23が含まれていることにより、制御手段17による画像処理によって、マイクロチップ20(第1の流路23)における血液の導入の有無を検知することができる。
図2の例においては、測定部27と共に第1の流路23の一部および複数の第2の流路25を含む、
図2(a)における一点鎖線によって囲まれた領域が撮像素子の撮像視野とされている。また、この撮像素子の撮像視野を構成する領域には、その全域に、光源11から放射され、光照射領域から入射された光がマイクロチップ20内を進行して照射される。すなわち、マイクロチップ20の一面においては、当該マイクロチップ20の他面における撮像素子の撮像視野とされる領域と対向する領域が光照射領域とされている。
【0027】
撮像手段16の撮像素子の具体例としては、CMOS撮像素子などが挙げられる。
図1の例において、撮像手段16としては、CMOS撮像素子を具備したCMOSカメラが用いられている。このCMOSカメラのCMOS撮像素子の撮像視野、すなわちCMOSカメラにおいて得られる画像サイズは、640×480ピクセル(マイクロチップ20における縦横寸法1090×820μmの領域に相当)である。
【0028】
制御手段17は、画像処理機能、具体的には、撮像手段16の撮像素子によって撮像された画像に係る画像データを画像処理することによって、画像中の測定部27を特定する測定部特定機能、および測定部27における血漿成分の吸光度を算出する吸光度算出機能を有するものである。すなわち、制御手段17においては、先ず、測定部特定機能によって画像中の測定部27の位置(画素位置)を検出して特定し、その測定部27の位置情報を記録する。そして、吸光度算出機能により、記録された測定部27の位置情報に基づいて、画像中における測定部27の位置(画素位置)の輝度を測定して血漿成分の吸光度を算出する。
この制御手段17において、測定部27の特定は、撮像手段16の撮像素子によって撮像された画像における測定部27の陰影に基づいて行われる。具体的に説明すると、制御手段17によれば、撮像手段16の撮像素子によって撮像された画像において、測定部27を、その陰影に基づいて認識することができる。また、撮像素子の撮像視野に流路(具体的には、第1の流路23および第2の流路25)が含まれる場合には、測定部27と共に、撮像視野に含まれている流路を、陰影に基づいて認識することができる。そのため、画像中において、測定部27の陰影、あるいは測定部27の陰影および撮像視野に含まれている流路の陰影に基づいて、測定部27を検出して特定し、当該画像中の測定部27の位置(画素位置)を把握することができる。
また、吸光度の算出は、画像中の測定部27の位置(画素位置)において測定される輝度に基づいて行われる。具体的には、制御手段17においては、測定部27が空である場合に得られた画像中の測定部27の位置(画素位置)における一部分(以下、「吸光度測定部分」ともいう。)にて測定される輝度(輝度値)の平均値と、測定部27が血漿成分で満たされている場合に得られた当該吸光度測定部分にて測定される輝度(輝度値)の平均値とが算出される。そして、これらの平均値から、入射光(測定部における入射光)と透過光(測定部の透過光)との強度比、すなわち吸光度が算出される。
図1の例において、制御手段17は、撮像手段16によって得られた画像サイズ640×480ピクセルの画像から特定された測定部27の位置(画像位置)における、71×71ピクセル(マイクロチップにおける縦横寸法100μm×100μmの範囲に相当)の部分を、吸光度測定部分とするものである。
【0029】
また、制御手段17は、撮像手段16の撮像素子によって撮像された画像に係る画像データを画像処理することにより、チップホルダにおけるマイクロチップ20の装着の有無、マイクロチップ20(第1の流路23)における血液の導入の有無およびマイクロチップ20の測定部27における気泡の混入の有無の少なくとも1つを検知することができるものであることが好ましい。
また、制御手段17は、測定(算出)された吸光度(血漿成分の吸光度)に基づいて血液中のビリルビン濃度を算出することのできるものであることが好ましい。
制御手段17が、チップホルダにおけるマイクロチップ20の装着の有無、およびマイクロチップ20における血液の導入の有無を検知することができるものであることによれば、マイクロチップ20がチップホルダに装着されてから一定時間経過しても血液が挿入されない場合において、当該制御手段17からエラー信号を発信させることができる。
また、制御手段17が、マイクロチップ20の測定部27における気泡の混入の有無を検知することができるものであることによれば、高い測定信頼性を得ることができる。具体的に説明すると、測定部27において、血漿成分が、気泡が混入した状態で導入された場合において、制御手段17からエラー信号を発信させることができる。
図1の例において、制御手段17は、チップホルダにおけるマイクロチップ20の装着の有無、マイクロチップ20(第1の流路23)における血液の導入の有無、および測定部27における気泡の混入の有無を検知することができ、また測定された吸光度(血漿成分の吸光度)に基づいて血液中のビリルビン濃度を算出することのできるものである。
【0030】
制御手段17において、ビリルビン濃度の算出は、測定された吸光度(血漿成分の吸光度)に基づいて行われる。具体的には、血漿成分の波長575nmにおける吸光度と溶血ヘモグロビンの波長455nmにおける吸光度とがほぼ一致していることに基づいて、血漿成分の波長455nmにおける吸光度から、血漿成分の波長575nmにおける吸光度を差し引くことにより、ビリルビンの吸光度(ビリルビンの波長454nmにおける吸光度)を得る。そして、ビリルビンの吸光度とビリルビンの濃度とが比例関係にあることを利用して、予め取得した検量線に、得られたビリルビンの吸光度を対照することにより、ビリルビンの濃度を算出する。
また、マイクロチップ20(第1の流路23)における血液の導入の有無の検知は、画像中の第1の流路23の位置(画素位置)において測定される輝度に基づいて行われる。具体的に説明すると、血球成分(血球)が波長455nmの光および波長575nmの光を吸収するものであることから、第1の流路23に血液が流通した状態となると、画像中の第1の流路23の位置(画素位置)の輝度が大きく低下する。そのため、マイクロチップ20がチップホルダに装着されてから一定時間間隔で画像データを取得し、第1の流路23の位置(画素位置)の輝度を継続的に測定することにより、測定された輝度が低下したときに血液が導入されたと判断することができる。
また、マイクロチップ20の測定部27における気泡の混入の有の検知は、画像中の測定部27の位置(画素位置)における輝度の低下程度に基づいて行われる。具体的に説明すると、測定部27に気泡が混入した場合には、気泡の輪郭部分において光が屈折されるため、撮像素子によって撮像される画像においては、気泡の輪郭部分の輝度が低くなり、よって低輝度の影のようにして気泡の形状が現れる。すなわち、輝度が局所的に低下する。一方、測定部27に血漿成分が気泡の混入なく流入した場合には、輝度が全体的に低下する。そのため、局所的な輝度の低下が生じたときに気泡が混入されたと判断することができる。
【0031】
制御手段の具体例としては、マイクロコンピュータおよびパーソナルコンピュータなどが挙げられる。
【0032】
このような構成の吸光度測定装置10は、本発明の吸光度測定方法が実施されるものである。
本発明の吸光度測定方法は、マイクロチップ20に対して、所定の波長域の光を照射し、当該マイクロチップ20における測定部27を含む領域を撮像素子によって撮像し、当該撮像素子によって撮像された画像に係る画像データを画像処理することにより、当該画像中の測定部27を特定し、測定部27における検査対象成分の吸光度を算出することを特徴とするものである。
この本発明の吸光度測定方法においては、液状検体が血液であって検査対象成分が血漿成分であり、測定される血漿成分の吸光度に基づいて特定物質であるビリルビンの吸光度を算出する場合には、測定定信頼性の観点から、ビリルビンの吸光度が、血漿成分の第1の波長域および第2の波長域における吸光度に基づいて算出されることが好ましい。ここに、検査対象成分が血漿成分であって特定物質がビリルビンであることから、第1の波長域の光は波長400〜500nmの範囲の光を含むものとされ、第2の波長域の光は波長520〜620nmの範囲の光を含むものとされる。
【0033】
具体的には、吸光度測定装置10は、
図3に示すフローチャートに従って動作することにより、本発明の吸光度測定方法によって血漿成分(検査対象成分)の吸光度を測定する。そして、血漿成分の吸光度に基づいて血漿成分を構成するビリルビン(特定物質)の吸光度を算出し、その算出された吸光度に基づいて血液中のビリルビン濃度を算出する。
この吸光度測定装置10においては、撮像手段16の撮像素子を構成するCMOS撮像素子によってはカラー画像が撮像される。そして、カラー画像には3原色分の輝度値(青色の輝度値、緑色の輝度値および赤色の輝度値)が含まれており、そのうちの青色の輝度値を波長455nmにおける吸光度測定に用い、緑色の輝度値を波長575nmにおける吸光度測定に用いる。しかしながら、CMOS撮像素子の青色の感度範囲には、第2のLEDチップ(ピーク発光波長570nmのLEDチップ)の発光波長域が重なり、CMOS撮像素子の緑色の感度範囲には、第1のLEDチップ(ピーク発光波長450nmのLEDチップ)の発光波長域が重なる。そのため、波長455nmにおける吸光度測定時には第2のLEDチップを消灯し、波長575nmにおける吸光度測定時には第1のLEDチップを消灯しておく必要がある。
以下、吸光度測定装置10の動作について、
図3を用いて詳細に説明する。
【0034】
吸光度測定装置10は、操作スイッチ(図示省略)を介して操作者によって測定開始の指示が示されることにより、制御手段17によって光源11における一方のLEDチップ(具体的には、第1のLEDチップ)が点灯されて、光源11から第1の波長域の光が放射される(ステップ(1))。そして、光源11から放射された第1の波長域の光よりなる光像が、撮像手段16の撮像素子に投影される。また、制御手段17においては、撮像手段16の撮像素子において撮像された画像に係る画像データの画像処理が、一定時間間隔で行われる。
そして、操作者によってマイクロチップ20がチップホルダに装着されると、制御手段17における画像処理により、マイクロチップ20がチップホルダに装着されたことが検知され(ステップ(2))、更に、画像中の測定部27が特定され(ステップ(3))、その測定部27における輝度が測定される(ステップ(4))。ステップ(3)においては、特定された画像中の測定部27の位置情報が、制御手段17に記録される。また、ステップ(4)において得られる輝度の測定値(輝度値)は、血漿成分流入前の測定部27における青色の輝度値(以下、「初期輝度値B1」ともいう。)である。その後、制御手段17により、光源11における一方のLEDチップ(第1のLEDチップ)が消灯される(ステップ(5))。
次いで、制御手段17によって光源11における他方のLEDチップ(具体的には、第2のLEDチップ)が点灯されて、光源11から第2の波長域の光が放射され(ステップ(6))、制御手段17における画像処理により、記録されている測定部27の位置情報に基づいて、測定部27における輝度が測定される(ステップ(7))。このステップ(7)において得られる輝度の測定値(輝度値)は、血漿成分流入前の測定部27における緑色の輝度値(以下、「初期輝度値G1」ともいう。)である。
【0035】
そして、操作者により、検体導入用開口を介してマイクロチップ20(第1の流路23)に血液が導入されると(ステップ(8))、制御手段17における画像処理により、血液が導入されたことが検知される(ステップ(9))。ここに、マイクロチップ20がチップホルダに装着されてから一定時間経過後に、血液が導入されたことが検知されない場合には、制御手段17によってエラー信号が発信される。その後、制御手段17により、光源11における他方のLEDチップ(第2のLEDチップ)が消灯され(ステップ(10))、一定時間、待機状態とされる(ステップ(11))。このステップ(11)において、一定時間は、血漿成分が抽出、すなわち測定部27に血漿成分が流入するまでに要する時間に基づいて定められる。
【0036】
そして、一定時間経過後に、制御手段17によって光源11における一方のLEDチップ(第1のLEDチップ)が点灯されて、光源11から第1の波長域の光が放射され(ステップ(12))、制御手段17における画像処理により、記録されている測定部27の位置情報に基づいて、測定部27における輝度が測定される(ステップ(13))。このステップ(13)において得られる輝度の測定値(輝度値)は、血漿成分流入後の測定部における青色の輝度値(以下、「流入後輝度値B2」ともいう。)である。ここに、ステップ(13)においては、測定部27において、血漿成分の導入の際に気泡が混入したことが検知された場合には、制御手段17によってエラー信号が発信される。その後、制御手段17により、光源11における一方のLEDチップ(第1のLEDチップ)が消灯される(ステップ(14))。
【0037】
更に、制御手段17によって光源11における他方のLEDチップ(第2のLEDチップ)が点灯されて、光源11から第2の波長域の光が放射され(ステップ(15))、制御手段17における画像処理により、記録されている測定部27の位置情報に基づいて、測定部27における輝度が測定される(ステップ(16))。このステップ(16)において得られる輝度の測定値(輝度値)は、検査対象成分流入後の測定部27における緑色の輝度値(以下、「流入後輝度値G2」ともいう。)である。その後、制御手段17により、光源11における他方のLEDチップ(第2のLEDチップ)が消灯される(ステップ(17))。
【0038】
そして、制御手段17において、先ず、初期輝度値B1と流入後輝度値B2とに基づいて、下記の数式(1)により、血漿成分の波長455nmにおける吸光度Abが算出され(ステップ(18))、また初期輝度値G1と流入後輝度値G2とに基づいて、下記の数式(2)により、血漿成分の波長575nmにおける吸光度Agが算出される(ステップ(19))。次いで、ステップ(18)において得られた血漿成分の波長455nmにおける吸光度Abと、ステップ(19)において得られた血漿成分の波長575nmにおける吸光度Agとに基づいて、下記の数式(3)により、ビリルビンの吸光度(ビリルビンの波長455nmにおける吸光度)が算出される(ステップ(20))。このようにして得られたビリルビンの吸光度に基づいて、予め取得しておいたビリルビンの吸光度とビリルビン濃度との検量線に、得られたビリルビンの吸光度を対照することにより、ビリルビンの濃度を算出され(ステップ(21))、得られたビリルビンの吸光度およびビリルビン濃度が制御手段17において表示されて測定が終了される。
【0039】
数式(1):
Ab=−Log(B2/B1)
【0040】
数式(2):
Ag=−Log(G2/G1)
【0041】
数式(3)
ビリルビンの吸光度=Ab−Ag
【0042】
而して、吸光度測定装置10においては、本発明の吸光度測定方法、具体的にはマイクロチップ20における測定部27およびその周辺領域を撮像した画像に係る画像データから当該画像中の測定部の位置(画素位置)を検出して特定し、その測定部の位置における輝度値に基づいて血漿成分の吸光度を算出する手法により、血漿成分の吸光度を測定することができる。そのため、マイクロチップ20には、測定部27およびその周辺領域に光源11からの光を照射すればよく、よって光源11および照射用光学機構に対するマイクロメートルオーダーの位置合わせが必要とされないことから、マイクロチップ20を用いていても容易に血漿成分の吸光度を測定することができる。そして、得られた血漿成分の吸光度に基づいて、ビリルビンの吸光度、更には血液中のビリルビン濃度を測定することができる。
【0043】
また、吸光度測定装置10においては、光源11が第1の波長域の光(波長450nmを含む波長域の光)と第2の波長域の光(波長570nmを含む波長域の光)とを異時に放射できるものであることから、血漿成分が溶血ヘモグロビンを含有するものであっても、血液中のビリルビン濃度を高い信頼性で測定することができる。また、撮像素子の選択の自由度が大きくなる。具体的に説明すると、撮像素子の青色の感度範囲に第2のLEDチップの発光波長領域が重なり、撮像素子の緑色の感度範囲に第1のLEDチップ(ピーク発光波長450nmのLEDチップ)の発光波長域が重なっているような場合においても、波長455nmにおける吸光度測定時には第2のLEDチップを消灯し、波長575nmにおける吸光度測定時には第1のLEDチップを消灯することにより、高い信頼性で測定を実施することができる。すなわち、撮像素子の感度範囲が、光源11から放射される光の波長域との関係において、大きく制限されることを抑制できる。
【0044】
図4は、本発明の吸光度測定装置の構成の他の例を示す説明図である。
この吸光度測定装置30は、
図1に係る吸光度測定装置10と同様に、血液を液状検体として、その血液における血漿成分を検査対象成分とし、比色法を利用して測定される血漿成分の吸光度に基づいて、血漿成分を構成するビリルビン(特定物質)の吸光度を算出し、そのビリルビンの濃度、具体的には、血液中のビリルビン濃度を測定するためのものである。すなわち、吸光度測定装置30は、ビリルビン検出用の吸光度測定装置である。
また、吸光度測定装置30は、光源が別個に設けられた2つのLED素子31A,31Bによって構成されており、これらの2つのLED素子31A,31Bから放射された光を合成するためのダイクロイックミラー33が設けられていること、および、各LED素子31A,31Bから放射された光がダイクロイックミラー33に至るまでの光路上に、バンドパスフィルタ32A,32Bおよびコリメートレンズ13,13が設けられていること以外は、
図1に係る吸光度測定装置10と基本的に同様の構成を有するものである。
この吸光度測定装置30を構成するコリメートレンズ13,13、マイクロチップ20、チップホルダ(図示省略)、アクロマートレンズ14、撮像手段16および制御手段17は、
図1に係る吸光度測定装置10を構成するコリメートレンズ13、マイクロチップ20、チップホルダ、アクロマートレンズ14、撮像手段16および制御手段17と同様のものである。
【0045】
吸光度測定装置30は、マイクロチップ20を着脱自在に鉛直に保持するチップホルダ(図示省略)と、マイクロチップ20の一面(
図4における左面)に対向するように配置された第1のLED素子31Aと、第1のLED素子31Aとマイクロチップ20との間において、一面が第1のLED素子31Aと対向するように配置されたダイクロイックミラー33と、ダイクロイックミラー33の他面に対向するように配置された第2のLED素子31Bとを備えている。第1のLED素子31Aとしては、ピーク発光波長450nmのLEDチップを備えたLED素子(単波長LED素子)が用いられている。第2のLED素子31Bとしては、ピーク発光波長570nmのLEDチップを備えたLED素子(単波長LED素子)が用いられている。ダイクロイックミラー33は、第1のLED素子31Aから放射された光を透過し、第2のLED素子31Bから放射された光を反射するものであり、第1のLED素子31Aの光軸に対して例えば45°傾斜した姿勢とされている。
第1のLED素子31Aとダイクロイックミラー33との間には、当該第1のLED素子31Aの近傍位置に第1のバンドパスフィルタ32Aが配設されており、この第1のバンドパスフィルタ32Aとダイクロイックミラー33との間には、コリメータレンズ13が配設されている。第1のバンドパスフィルタ32Aは、波長455nmの光を選択的に透過すると共に、透過光のスペクトル幅を調整(具体的には、狭帯域化)し、スペクトル半値幅を10〜15nmとするものである。また、第2のLED素子31Bとダイクロイックミラー33との間には、当該第2のLED素子31Bの近傍位置に第2のバンドパスフィルタ32Bが配設されており、この第2バンドパスフィルタ32Bとダイクロイックミラー33との間には、コリメータレンズ13が配設されている。第2のバンドパスフィルタ32Bは、波長575nmの光を選択的に透過すると共に、透過光のスペクトル幅を調整(具体的には、狭帯域化)し、スペクトル半値幅を10〜15nmとするものである。このように、マイクロチップ20と光源(第1のLED素子31Aおよび第2のLED素子31B)との間に配設された、バンドパスフィルタ32A,32Bとコリメータレンズ13,13とダイクロイックミラー33とは、照射用光学機構を構成しており、光源から放射された光を、マイクロチップ20における光照射領域に照射する。
また、吸光度測定装置30には、撮像素子を具備した撮像手段16が、マイクロチップ20を介してダイクロイックミラー33と対向するように配置して設けられている。マイクロチップ20と撮像手段16との間には、アクロマートレンズ14が配設されている。撮像手段16には、制御手段17が電気的に接続されており、この制御手段17により、撮像手段16の撮像素子において撮像された画像に係る画像データを画像処理する画像処理機構が構成されている。制御手段17には、第1のLED素子31Aおよび第2のLED素子31Bに共通の光源電源39が電気的に接続されている。
図4の例において、制御手段17は、撮像手段16の撮像素子において撮像された画像に係る画像データを画像処理する画像処理機能と共に、光源を構成する2つのLED素子31A,31Bの点灯制御を行う光源制御機能および測定結果を表示する測定結果表示機能を有するものである。
【0046】
この吸光度測定装置30は、
図1に係る吸光度測定装置10と同様に、本発明の吸光度測定方法が実施されるものであり、
図3に示すフローチャートに従って動作することにより、血液中のビリルビン濃度を測定する。
この吸光度測定装置30の測定動作中において、ステップ(1)およびステップ(12)においては、第1のLED素子31Aが点灯され、ステップ(5)およびステップ(14)においては、第1のLED素子31Aが消灯される。また、ステップ(6)およびステップ(15)においては、第2のLED素子31Bが点灯され、ステップ(10)およびステップ(17)においては、第2のLED素子31Bが消灯される。
【0047】
而して、吸光度測定装置30においては、本発明の吸光度測定方法、具体的にはマイクロチップ20における測定部27およびその周辺領域を撮像した画像に係る画像データから当該画像中の測定部の位置(画素位置)を検出して特定し、その測定部の位置における輝度値に基づいて血漿成分の吸光度を算出する手法により、血漿成分の吸光度を測定することができる。そのため、マイクロチップ20には、測定部27およびその周辺領域に光源からの光を照射すればよく、よって光源および照射用光学機構に対するマイクロメートルオーダーの位置合わせが必要とされないことから、マイクロチップ20を用いていても容易に血漿成分の吸光度を測定することができる。そして、得られた血漿成分の吸光度に基づいて、ビリルビンの吸光度、更には血液中のビリルビン濃度を測定することができる。
【0048】
また吸光度測定装置30においては、光源が第1の波長域の光(波長450nmを含む波長域の光)と第2の波長域の光(波長570nmを含む波長域の光)とを異時に放射できるものであることから、血漿成分が溶血ヘモグロビンを含有するものであっても、血液中のビリルビン濃度を高い信頼性で測定することができる。また、撮像素子の選択の自由度が大きくなる。
【0049】
図5は、本発明の吸光度測定装置の構成の更に他の例を示す説明図である。
この吸光度測定装置40は、
図1に係る吸光度測定装置10および
図4に係る吸光度測定装置30と同様に、血液を液状検体として、その血液における血漿成分を検査対象成分とし、比色法を利用して測定される血漿成分の吸光度に基づいて、血漿成分を構成するビリルビンの吸光度を算出し、そのビリルビンの濃度、具体的には、血液中におけるビリルビン濃度を測定するためのものである。すなわち、吸光度測定装置40は、ビリルビン検出用の吸光度測定装置である。
また、吸光度測定装置40は、マイクロチップ20を透過した光源41から放射された光を分光するためのダイクロイックミラー43と、当該ダイクロイックミラー43によって分光された各光よりなる光像を撮像する2つの撮像手段46A,46Bと、測定結果表示手段48とが設けられていること、およびダイクロイックミラー43によって分光された各光が撮像手段46A,46Bに至るまでの光路上に、金属干渉フィルタ44A,44Bおよびレンズ49A,49Bが設けられていること以外は、
図1に係る吸光度測定装置10と基本的に同様の構成を有するものである。
この吸光度測定装置40においては、光源41が白色LED素子により構成されていること、チップホルダが、チップ検出スイッチが設けられたものであること、および制御手段47が、チップホルダにおけるマイクロチップ20の装着の有無を検知する機能と測定結果表示機能とを有しておらず、また初期輝度値B1および初期輝度値G1が予め記録されたものであること以外は、構成部材が
図1に係る吸光度測定装置10の構成部材と同様のものとされている。すなわち、吸光度測定装置40を構成する、コリメートレンズ13およびマイクロチップ20は、
図1に係る吸光度測定装置10を構成する、コリメートレンズ13およびイクロチップ20と同様のものである。
【0050】
吸光度測定装置40は、マイクロチップ20を着脱自在に鉛直に保持するチップホルダ(図示省略)と、マイクロチップ20に対向するように配置された光源41とを備えている。光源41は、第1の波長域の光および第2の波長域の光、具体的には波長400〜500nmの範囲を含む光および波長520〜620nmの範囲を含む光を同時に放射することのできるものである。そして、光源41とマイクロチップ20との間には、コリメータレンズ13が配設されている。このコリメータレンズ13は、照射用光学機構を構成しており、光源11から放射された光を、マイクロチップ20における光照射領域に照射する。
また、吸光度測定装置40には、ダイクロイックミラー43が、光源41と対向するように、光源41の光軸に対して例えば45°傾斜した姿勢で配設されている。ダイクロイックミラー43は、波長575nmを含む波長域の光を透過し、波長455nmを含む波長域の光を反射するものである。そして、撮像素子を具備した第1の撮像手段46Aが、波長575nmの光を透過する金属干渉フィルタ44Aを介して、ダイクロイックミラー43の他面(
図5における右面)と対向するように配設されており、また撮像素子を具備した第2の撮像手段46Bが、波長455nmの光を透過する金属干渉フィルタ44Bを介して、ダイクロイックミラー43の一面(
図5における左面)と対向するように配設されている。また、第1の撮像手段46Aと金属フィルタ44Aとの間には、光源41から放射された光よりなる光像を拡大(具体的には、例えば倍率5倍で拡大)して撮像手段の撮像素子46Aに投影するレンズ49Aが配設されている。一方、第2の撮像手段46Bと金属フィルタ44Bとの間には、光源41から放射された光よりなる光像を拡大(具体的には、例えば倍率5倍で拡大)して撮像手段の撮像素子46Bに投影するレンズ49Bが配設されている。第1の撮像手段46Aおよび第2の撮像素子46Bとしては、各々、フォトダイオードアレイが用いられている。第1の撮像手段46Aおよび第2の撮像手段46Bには、共通の制御手段47が電気的に接続されており、この制御手段47により、第1の撮像手段46Aの撮像素子および第2の撮像手段46Bの撮像素子において撮像された画像に係る画像データを画像処理する画像処理機構が構成されている。制御手段47には、測定結果を表示するための測定結果表示手段48、および光源41の光源電源19が電気的に接続されている。制御手段47としては、マイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータなどが用いられており、また測定結果表示手段48としては、液晶ディスプレイが用いられている。
図5の例において、制御手段47は、第1の撮像手段46Aの撮像素子および第2の撮像手段46Bの撮像素子において撮像された画像に係る画像データを画像処理する画像処理機能と共に、光源点灯制御機能を有するものである。
【0051】
この構成の吸光度測定装置40は、
図1に係る吸光度測定装置10および
図4における吸光度測定装置30と同様に、本発明のビリルビン検出用吸光度測定方法が実施されるものである。
そして、吸光度測定装置40は、
図3に示したフローチャートにおいて、初期輝度値B1と初期輝度値G1とを測定しないこと、すなわちステップ(4)〜ステップ(7)を実施しないこと、および流入後輝度値B2と流入後輝度値G2とを同期して測定すること、すなわちステップ(12)〜ステップ(14)とステップ(15)〜ステップ(17)を同期して実施すること以外は、当該フローチャートに従って動作することにより、血液中のビリルビン濃度を測定する。
この吸光度測定装置40の測定動作中において、ステップ(2)においては、チップホルダに設けられたチップ検出スイッチによってマイクロチップ20がチップホルダに装着されたことが検知される。また、ステップ(18)においては、波長455nmにおける吸光度の算出に制御手段47に記録されている初期輝度値B1が用いられ、またステップ(19)においては、波長575nmにおける吸光度の算出に制御手段47に記録されている初期輝度値G1が用いられる。
【0052】
而して、吸光度測定装置40においては、本発明の吸光度測定方法、具体的にはマイクロチップ20における測定部27およびその周辺領域を撮像した画像に係る画像データから当該画像中の測定部の位置(画素位置)を検出して特定し、その測定部の位置における輝度値に基づいて血漿成分の吸光度を算出する手法により、血漿成分の吸光度を測定することができる。そのため、マイクロチップ20には、測定部27およびその周辺領域に光源41からの光を照射すればよく、よって光源41および照射用光学機構に対するマイクロメートルオーダーの位置合わせが必要とされないことから、マイクロチップ20を用いていても容易に血漿成分の吸光度を測定することができる。そして、得られた血漿成分の吸光度に基づいて、ビリルビンの吸光度、更には血液中のビリルビン濃度を測定することができる。
【0053】
また、吸光度測定装置40においては、光源41が第1の波長域の光(波長450nmを含む波長域の光)と第2の波長域の光(波長570nmを含む波長域の光)とを同時に放射するものであることから、血漿成分が溶血ヘモグロビンを含有するものであっても、血液中のビリルビン濃度を高い信頼性で測定することができる。
【0054】
本発明の吸光度測定装置および吸光度測定方法においては、上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、吸光度測定装置は、測定信頼性の観点から、光源が、第1の波長域の光と第2の波長域の光とを同時にまたは異時に放射できるものであることが好ましいが、光源が単波長域の光のみを放射するものであってもよい。
また、吸光度測定装置を構成する照射用光学機構は、
図1、
図4および
図5に示した構成に限定されるものではなく、光源から放射された光をマイクロチップに照射することのできるものであれば、種々の構成のものを用いることができる。具体的には、例えば
図1に係る吸光度測定装置10において、照射用光学機構は、コリメータレンズ13が、光源11とフィルタ12との間に配置されてなる構成を有するものであってもよい。