(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620610
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】熱処理部材の表面熱流束の推定方法
(51)【国際特許分類】
G01K 17/00 20060101AFI20191209BHJP
【FI】
G01K17/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-46592(P2016-46592)
(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公開番号】特開2017-161382(P2017-161382A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(72)【発明者】
【氏名】小林 一暁
(72)【発明者】
【氏名】坂本 明洋
【審査官】
平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−234217(JP,A)
【文献】
特開2005−134383(JP,A)
【文献】
特開2004−251843(JP,A)
【文献】
特開平7−191965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理部材の熱処理時の温度履歴を実測する工程と、
任意の異なる2種類の熱流束を与えて、前記熱処理部材について熱伝導解析を行い、温度履歴の数値解析値をそれぞれ算出する工程と、
温度履歴の実測値と前記数値解析値との差の奇数乗を目標関数とし、前記目標関数の収束計算を求解法により行う工程と、を有し、
前記目標関数が収束したときの熱流束の値を、前記実測値が測定されたときの表面熱流束とすることを特徴とする、熱処理部材の表面熱流束の推定方法。
【請求項2】
前記求解法は、セカント法または二分法であることを特徴とする、請求項1に記載の熱処理部材の表面熱流束の推定方法。
【請求項3】
前記目標関数を、前記実測値と前記数値解析値との差とすることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の熱処理部材の表面熱流束の推定方法。
【請求項4】
前記熱処理部材は鋼材であり、前記熱処理は鉄鋼製造プロセスにおける冷却であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱処理部材の表面熱流束の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材等の熱処理部材の冷却や加熱等の熱処理時における熱処理部材の表面熱流束の推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製造プロセスにおいて、例えば高温鋼材の冷却を行う冷却設備の改善を目的としたスプレー増設や、冷却ムラの低減を目的としたスプレーの変更、新しい冷却設備の検討等のために、冷却能力を測定し、生産性向上や歩留り向上を図ることは重要である。
【0003】
冷却能力を知るためには、通常、実験が行われる。実験では、高温鋼材に冷却水を噴射して、そのときの鋼材の温度変化を記録し、それを用いて冷却能力の算出を行う。ここで、「冷却能力」とは、被冷却部材の表面から取り除かれる熱量を意味する「表面熱流束」と、そのときの「表面温度」との関係である。(以下、「表面熱流束」を単に「熱流束」と記載することがある。)
【0004】
ところが、水冷されている被冷却部材の表面熱流束や表面温度を直接計測する方法は、現状では存在しない。そのため、実験においては、まず冷却されている高温鋼材の内部や、冷却されている面の反対側の面の温度変化を計測し、次に、その温度変化を再現できるような表面熱流束と表面温度との関係を逆算、もしくは試行錯誤により算出して推定している。
【0005】
しかしながら、この逆算を行うには、従来、多大な計算時間を必要とする。そのため、実験を行ってもその結果を冷却工程の改良に素早く活かすことができない。また、冷却能力の詳細な分布を得るために測定点を多数とったとしても、そのデータ処理を行うことができないため、詳細な冷却能力分布を知ることが困難であるという問題がある。そこで、この逆算を高速に行える方法が望まれている。
【0006】
例えば非特許文献1には、被冷却物の表面温度や熱流束を求めるために、実験結果に一致するように熱流束を変化させる収束計算(繰り返し計算)を行うことが記載されている。そして、収束計算を行うためには、熱流束をどのように変化させれば計算が収束する方向に向かうかを判断する必要があり、その方向を決める手段として、測定点における温度の表面熱流束依存性(∂T/∂q)を用いることが開示されている。
【0007】
また、非特許文献1に記載されたような表面熱流束の算出を行う過程においては被冷却物内部の温度分布を用いる必要があるが、特許文献1には、その温度分布を、非定常の数値解析により得られた結果を用いることが開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、多項式の解を求める収束計算(繰り返し計算)にセカント法を用いる例が示され、任意の物理現象を表現するモデル式を級数展開近似(多項式近似)し、その式をニュートン法やセカント法等を用いて解くことで、計算時間が短縮されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3769164号公報
【特許文献2】特開平7−191965号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Beck,J. V., Litkouhi, B., and St. Clair Jr, C. R., “Efficient Sequential Solution of the Nonlinear Inverse HeatConduction Problem,” Numerical HeatTransfer, Part A: Applications, Vol. 5 (1982), pp. 275 - 286.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に記載された解析方法は、計算負荷が大きく、迅速な計算を行って素早く工程の改良に活かすことはできない。また、特許文献2に記載されたセカント法は、一般的な多項式の解き方を示すものであり、これを用いて熱流束の計算を行う方法は存在していない。
【0012】
本発明は、このような観点に鑑みてなされたものであり、熱処理部材の温度の実測値を用いて、計算負荷を軽減し精度良く熱流束を求める方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記問題を解決するため、本発明は、熱処理部材の熱処理時の温度履歴を実測する工程と、任意の異なる2種類の熱流束を与えて、前記熱処理部材について熱伝導解析を行い、温度履歴の数値解析値をそれぞれ算出する工程と、温度履歴の実測値と前記数値解析値との差の奇数乗を目標関数とし、前記目標関数の収束計算を求解法により行う工程と、を有し、前記目標関数が収束したときの熱流束の値を、前記実測値が測定されたときの表面熱流束とすることを特徴とする、熱処理部材の表面熱流束の推定方法を提供する。
【0014】
前記求解法は、セカント法または二分法でもよい。また、前記目標関数を、前記実測値と前記数値解析値との差としてもよい。
【0015】
前記熱処理部材は鋼材であり、前記熱処理は鉄鋼製造プロセスにおける冷却であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、計算負荷を軽減し精度良く熱流束を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態にかかる工程を示すフローチャートである。
【
図3】従来の収束計算のイメージを説明する図である。
【
図4】本発明の実施形態にかかる収束計算のイメージを説明する図である。
【
図5】本発明の異なる実施形態にかかる収束計算のイメージを説明する図である。
【
図6】実施例の条件を示し、(a)は鋼材の概略を示す図、(b)は温度の経時変化を示すグラフ、(c)は熱流束の経時変化を示すグラフである。
【
図7】実施例1の結果を示すグラフであり、(a)は本発明例による計算結果、(b)は従来例による計算結果である。
【
図8】実施例2の結果を示すグラフであり、(a)は本発明例による計算結果、(b)は従来例による計算結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書の以下の記載において、「表面熱流束」を単に「熱流束」と記載する。また、本実施形態では、熱処理部材を鋼材とし、鋼材製造における冷却時の鋼材の熱流束を推定する方法について説明する。
【0019】
先ず、鋼材冷却時の熱流束を推測する場合の従来の計算方法について、
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0020】
(工程B1)
鋼材の冷却実験を行い、鋼材の温度履歴を測定する。
【0021】
(工程B2)
適当な熱流束を与え、数ステップだけ熱伝導解析を行う。この熱伝導解析は、熱流束と温度との関係を探るために予備的に行うものであり、熱流束の値を変更して複数のパターンについて行う。そして、この熱伝導解析で得られた結果から、与えた熱流束に対する鋼材の温度変化の関係を、式(1)により求める。
【数1】
ただし、
T:熱伝導解析における温度の数値解析値
q:表面熱流束
【0022】
(工程B3)
さらに適当な熱流束を与え、数ステップだけ熱伝導解析を行う。
【0023】
(工程B4)
工程B1の実験により得られた鋼材の温度の実測値と、工程B3の熱伝導解析により得られた鋼材の温度の数値解析値とを比較し、その差を算出する。さらに、式(1)で得られた、熱流束に対する鋼材の温度変化の関係を用いて、実測値と数値解析値との差を低減させられるように、与える熱流束を式(2)により修正する。
【数2】
ここで、
【数3】
ただし、
Y:実験により得られた温度の実測値
T:熱伝導解析における温度の数値解析値
q:表面熱流束
r:熱伝導解析を行うステップ数(数値計算の時間ステップ)
【0024】
(工程B5)
工程B4での修正量Δqが、予め設定した基準に対して十分に小さければ、収束したと判断して工程B6に進み、大きければ工程B3に戻る。
【0025】
(工程B6)
工程B4での修正量Δqが予め設定した基準に対して十分に小さくなったときに与えた熱流束が、実験時の当該瞬間の熱流束を再現していると見なす。必要時間の計算が行われていないときは工程B3に戻り、続けて次の時間の熱流束を求める。必要時間の計算が行われたら終了する。
【0026】
以上のような従来の方法では、収束計算は、式(3)に示す目標関数Fを最小にする温度Tを与えられるような熱流束qを、繰り返し計算により算出する。
【数4】
【0027】
この繰り返し計算のイメージを
図3に示す。
図3に示すように、目標であるFの最小値に向かって、座標(q(1),F(1))から座標(q(2),F(2))、次に座標(q(3),F(3))・・・と、計算を繰り返し、目標関数Fを最小にするまで、すなわち閾値δよりも小さくなる(F<δ)まで繰り返し計算を行う。この閾値δは、Fが収束したと見なす任意の値であり、予め設定しておく。ただし、目標関数Fの最小値は不明であり、収束条件として設定した閾値δよりも小さい値が存在するかどうかも不明である。
【0028】
次に、鋼材冷却時の熱流束を推測する場合の本発明の実施形態にかかる計算方法について、
図1のフローチャートを参照して説明する。
【0029】
(工程A1)
鋼材の冷却実験を行い、鋼材の温度履歴を測定する。
【0030】
(工程A2)
適当な熱流束を与えて、数ステップ(数値計算の時間ステップ)だけ熱伝導解析を行う。この解析を、熱流束の値を異なる2種類(q(1)、q(2))設定して2回行う。そして、この2回の解析結果について、実験により得られた鋼材の温度の実測値と、熱伝導解析により得られた鋼材の温度の数値解析値とを比較し、これらの温度差Sを式(4)により算出する。
【数5】
ただし、
Y:実験により得られた温度の実測値
T:熱伝導解析における温度の数値解析値
r:熱伝導解析を行うステップ数(数値計算の時間ステップ)
【0031】
(工程A3)
工程A2で求めた結果を用いて、実測値と数値解析値との温度差がゼロとなる熱流束q(3)を、セカント法により線形補間して算出する。
【0032】
(工程A4)
工程A3で求めた熱流束q(3)を用いて、温度差S(3)を計算する。
【0033】
(工程A5)
工程A4で求めた温度差S(3)が、予め設定した基準に対して十分小さければ工程A6に進む。温度差が予め設定した基準よりも大きければ、ここまでの工程で求めた3組のデータのうち、実測値と数値解析値との温度差がゼロに近い2組をピックアップして(工程A7)、工程A3に戻る。
【0034】
(工程A6)
工程A4で求めた、実測値と数値解析値との温度差が十分小さいときに与えた熱流束が、実験時の当該瞬間の熱流束を再現していると見なす。そして、必要時間の計算が行われていないときは工程A2に戻り、続けて次の時間の熱流束を求める。必要時間の計算が行われたら終了する。
【0035】
本発明においては、逆算は、式(5)に示す目標関数SをゼロにするTを与えられるような熱流束qを、繰り返し計算により算出することに相当する。
【数6】
【0036】
つまり、本発明においては、数値解析値として与えた熱流束を適用して計算される鋼材の温度履歴と、実測により得られた鋼材の温度履歴とを比較し、その差が小さくなるように熱流束を決定する。
【0037】
本実施形態の繰り返し計算のイメージを、
図4に示す。例えば、強い冷却が行われたことを想定して大きな熱流束q(1)を推定値として与え、その熱流束から鋼材の温度履歴を計算し、次に弱い冷却が行われたことを想定して小さな熱流束q(2)を推定値として与え、その熱流束から鋼材の温度履歴を計算する。実測により得られた鋼材の温度履歴は、これらの計算値の中間になると考えられる。したがって、その差をなくすように内挿補間することで、実測により得られた鋼材の温度履歴により近い熱流束を算出できると考えられる。もしくは、実測による温度履歴が推定値の中間にならない場合にも、その差を0に近づけるように外挿補間することで、同様に、実測値を基にして正しい熱流束を次の推定値として得ることができる。本実施形態では、
図4に示すように、座標(q(1),S(1))と座標(q(2),S(2))から線形補間を用いることで、目標であるS=0を満たす熱流束q(3)を一気に求めることが可能である。なお、より正確には、予め設定した、Sが収束したと見なす値δに対して、|S|<δを満たす熱流束qを求めることとなる。
【0038】
なお、本実施形態で用いた繰り返し計算手法は、セカント法として一般に知られるものである。本実施形態では、収束の目標関数Sを、実測値Yと数値解析値Tとの温度差とすることで、収束計算にセカント法を適用した。このように、セカント法を、表面熱流束を逆算により求める問題に適用することで、従来と同等の逆算を、計算負荷を低減することにより大幅に計算時間を短縮して行うことができる。
【0039】
また、上記式(5)では、目標関数Sを、実測値と数値解析値との温度差の1乗としたが、1乗以外の奇数乗でもよく、例えば3乗や5乗にすることで、温度差が大きいときには目標関数Sがより0から遠ざかるようになり、目標関数Sに対する温度差の重みづけが可能となる。
【0040】
なお、上記実施形態では、繰り返し計算手法としてセカント法についてのみ説明したが、繰り返し計算手法としては、二分法も知られている。
図5は、異なる繰り返し計算手法の実施形態として二分法を用いた場合の計算のイメージを示す。
【0041】
先ず、S<0となるような熱流束qと、S>0となるような熱流束qを、実際に熱伝導解析を行って適宜求める。このときのqとSを、それぞれ(q(1),S(1))、(q(2),S(2))とする。
【0042】
次に、q(3)=(q(1)+q(2))/2となるときのS(3)を求める。さらに、S(3)>0の場合には、q(4)=(q(1)+q(3))/2としてS(4)を求め、
図5に示すようにS(3)<0の場合には、q(4)=(q(2)+q(3))/2としてS(4)を求める。これを繰り返すことで、S=0(より正確には|S|<δ)を満たすqを見つける。
【0043】
以上のように、本発明は、計算システムに対して、実験による実測値のインプット情報と、アウトプット情報としての数値解析値のみから、セカント法または二分法等の求解法を用いて繰り返し計算を行うことにより、少ない繰り返し計算回数で熱流束の逆算が可能となり、計算負荷を軽減しつつ、既存の手法と同等の精度で、熱流束の高速な推定計算を行うことができる。
【0044】
実験時の温度測定は、熱電対やサーモグラフィー等、任意の温度検出手段により行えばよい。また、上記実施形態は、鋼板の冷却を対象として説明したが、鋼材の表面熱流束を求めるという点では加熱も同様であり、加熱による熱流束を求めるためにも使用できる。さらに、加熱と冷却を繰り返す場合も同様に実施可能である。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例1】
【0046】
本発明の効果を検証するため、以下の数値解析を行った。
【0047】
先ず、
図6(a)に示すような厚さ28mmの高温鋼材1の冷却を想定し、初期温度850℃の鋼板の表面に、熱伝達係数5000W/(m
2・K)を与え、鋼板の冷却過程を数値解析により求めた。鋼材1の裏面は断熱状態とする。なお、この数値解析は、市販の計算ソフトなど、任意の手段で実施することができる。
【0048】
鋼材1の温度変化は、表面から1.5mmの位置を測温点2として記録した。解析結果としての温度の経時変化を
図6(b)に、表面熱流束の経時変化を
図6(c)に示す。
図6(b)の温度変化が、上記式(2)および式(4)におけるYに相当する。
【0049】
そして、
図6(b)の温度変化を実現できるような熱流束の逆算を、上述の本発明の実施形態にかかる計算方法(本発明例)および従来の計算方法(従来例)によって行った。
図7(a)は本発明例による計算結果であり、
図7(b)は従来例による計算結果である。本発明例により得られた結果は、
図6(c)に示す実際の熱流束に十分近く、従来例と同等の精度であることが示された。また、この計算に要した時間は、従来例を100とすると、本発明例は25であり、大幅な時間短縮を図ることができた。
【実施例2】
【0050】
上記実施例1の温度変化は数値解析値であるが、実際の測定値では、測定誤差等のノイズが生じる。そのため、通常、実測値はノイズフィルタを通してから解析が行われる。そこで、実施例1の温度変化に±2℃の範囲のランダムノイズを加え、さらにこれに対して前後1秒で移動平均した温度変化を与えて、実施例1と同様に、本発明例および従来例によって表面熱流束の逆算を行った。
図8(a)は本発明例による計算結果であり、
図8(b)は従来例による計算結果である。この場合も、実施例1と同様、本発明例により、
図6(c)に示す実際の熱流束に十分近く、従来例と同等の精度の結果が得られることが示された。また、この計算に要した時間は、実施例1の従来例を100とすると、本実施例の従来例は800、本発明例は実施例1と同じ25であり、極めて短い時間で計算することができた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、鉄鋼製造プロセスにおける連続鋳造機の二次冷却、熱延や厚板などの加速冷却設備、各種鋼材の熱処理設備等における被測定物の熱流束の推定に適用でき、被測定物の生産性向上、歩留り向上に関する改善検討や、新規設備の設計手法の開発に役立てることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 鋼材
2 測温点