(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記間隔が最小から最大に至るまでの前記かご間隔調整用カウンタウエイトの移動範囲が、前記外かご枠の上下方向長さの範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のダブルデッキエレベータ。
前記かご間隔調整用カウンタウエイトは、前記間隔が最小から最大に至るまでの当該かご間隔調整用カウンタウエイトの移動範囲の最下に位置するとき、当該かご間隔調整用カウンタウエイトの一部が前記外かご枠から下方にはみ出ることを特徴とする請求項1に記載のダブルデッキエレベータ。
前記かご間隔調整用カウンタウエイトにおける前記はみ出る部分の上下方向長さは、前記昇降路が設けられた建物の最下階に前記固定かごと前記可動かごのうち下側にあるかごが着床しているときの、当該昇降路の底面から前記外かご枠までの距離の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項3に記載のダブルデッキエレベータ。
前記シーブの回転に伴って移動する前記可動かごの、前記外かご枠に対する上下方向の位置を検出する位置検出手段を有することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載のダブルデッキエレベータ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るダブルデッキエレベータの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
<実施形態1>
実施形態1に係るダブルデッキエレベータ10(以下「エレベータ10」という。)は、階高に不揃いのある建物に設置されており、
図1に示すように、昇降路12上方に天井壁14を隔てて設けられた機械室16には、主巻上機18が設置されている。主巻上機18は、モータ(不図示)により回転駆動される主シーブ20を有する。機械室16には、また、主巻上機18に隣接して、そらせ車22が設けられている。
【0020】
主シーブ20とそらせ車22には、索状体であるワイヤロープからなる主ロープ24が巻き掛けられて下方へと折り返されている。主ロープ24の一端24A側には、昇降体26が吊り下げられており、主シーブ20に対し、一端24Aとは反対側の他端24B側には、主カウンタウエイト28が吊り下げられている。主巻上機18の主シーブ20が回転駆動されると、昇降体26は、昇降路12内を、主カウンタウエイト28とは反対方向に昇降することとなる。昇降体26は、上下方向(縦方向)に長い長方形状をした外かご枠30を含む。
【0021】
外かご枠30は、上梁302、下梁304及び上梁302と下梁304とを連結する2つの立枠306,308を有する。上梁302、下梁304及び2つの立枠306,308の各々は形鋼材からなり、それぞれの連結部分は、例えばボルト・ナットのような締結具や隅肉溶接等によって強固に固定されている。なお、
図1には、前記した締結具や隅肉溶接のビードは図示されていない。
【0022】
各梁302,304および各立枠306,308に囲まれた外かご枠30の内側には、上下方向に離間された2台のかご32A,32Bからなる内かご32が設けられている。2台のかご32A,32Bのうち、下側のかごを下かご32Aと称し、上側のかごを上かご32Bと称することとする。
【0023】
下かご32Aは、外かご枠30に固定された『固定かご』であり、下梁304の上側に防振ゴム34を介して固定されている。上かご32Bは、下かご32Aに対して上下方向への相対移動が可能に設けられた『可動かご』である。上かご32Bは、本体320Bの床面322B下側に、動滑車324を有する。動滑車324は、第1の動滑車326と第2の動滑車328を含む。上かご32Bは、索状体であるワイヤロープからなる副ロープ36によって吊り下げられている。副ロープ36による吊り下げの態様については後述する。
【0024】
外かご枠30の上梁302には、かご間隔調整用巻上機である副巻上機40が設置されている。副巻上機40は、上記した主巻上機18と同様、モータ(不図示)により回転駆動される副シーブ42を有する。副巻上機40には、前記モータの出力軸(不図示)の回転角を計測するロータリエンコーダ44が設けられており、ロータリエンコーダ44からの出力信号に基づき前記モータが回転制御される。
【0025】
続いて、上かご32Bを吊り下げる副ロープ36の掛け渡し態様について説明する。副ロープ36は、副シーブ42に巻き掛けられて下方へと折り返されている。副ロープ36の第1端部36Aは、固定器具(不図示)によって、外かご枠30の上梁302に固定されている。副ロープ36は、第1端部36Aから副シーブ42に至る間における副ロープ36の一部が第1の動滑車326及び第2の動滑車328各々に巻き掛けられて、上かご32Bを吊り下げている。第1端部36Aとは反対側の第2端部36Bには、かご間隔調整用カウンタウエイトである副カウンタウエイト46が吊り下げられている。
【0026】
副シーブ42に対し、副ロープ36の第1端部36A側で上記のように吊り下げられた上かご32Bは、上梁302と下梁304との間に設けられた内かご用ガイドレール(不図示)によって、上下方向に案内される。また、副シーブ42から垂下した副ロープ36の第2端部36B側に吊り下げられた副カウンタウエイト46は、同じく、上梁302と下梁304との間に設けられた副カウンタウエイト用ガイドレール(不図示)によって、上下方向に案内される。
【0027】
副巻上機40において、副シーブ42が時計方向である第1の向き(矢印Fの向き)に回転駆動されると、第1端部36A側の副ロープ36が第2端部36B側へと繰り出されて、その分、第1端部36A側における副ロープ36の長さが短くなる。その結果、上かご32Bが下かご32Aに対し離間する向きに移動(上昇)すると共に、副カウンタウエイト46は下降する。これとは逆に、副シーブ42が反時計方向である第2の向き(矢印Rの向き)に回転駆動されると、第2端部36B側の副ロープ36が第1端部36A側へと繰り出されて、その分、第1端部36A側における副ロープ36の長さが長くなる。その結果、上かご32Bが下かご32Aに対し近接する向きに移動(下降)すると共に、副カウンタウエイト46は上昇する。
【0028】
このように、副シーブ42の回転に伴い、上かご32Bが副カウンタウエイト46とは反対方向に昇降されることにより、下かご32Aと上かご32Bの上下方向における間隔(以下「かご間隔」という。)の調整がなされる。ここで、かご間隔とは、下かご32Aの床面322Aと上かご32Bの床面322Bとの間の上下方向における距離(D)をいう。
【0029】
上記構成を有するエレベータ10では、上かご32Bを吊り下げている副ロープ36が上記のような掛け渡し態様となっているため、上かご32Bと上記第2のエレベータを構成する上かご各々の重量(自重)及び積載荷重がほぼ同等である場合、『滑車の原理』により、副カウンタウエイト46の重量を、当該第2のエレベータを構成するかご間隔調整用カウンタウエイトの重量の約半分に設定することができる。これについて、上記第2のエレベータとエレベータ10を対比して具体的に説明する。なお、簡単のため、両者の対比において、副ロープ36(ワイヤロープ)の自重は無視することとする。
【0030】
エレベータにおいて、ロープに吊り下げられるかごとカウンタウエイトのつり合いをとる場合、一般的に、カウンタウエイトの重量は、かごの重量に当該かごの積載荷重の50%に相当する重量を加えた重量(以下「かごの総重量」という。)とつり合う重量に設定される。
【0031】
ここで、上記第2エレベータにおける上かごの総重量を"Wa"とする。当該第2エレベータでは、上述したように、駆動シーブに掛けられて折り返されたワイヤロープの一端部に上かごが、他端部にカウンタウエイトが吊り下げられた構成であるため、当該カウンタウエイトの重量は、上かごの総重量と同じ重量(Wa)に設定される。なお、この場合、ワイヤロープには、その全長にわたって張力T(=Wa)が作用している。
【0032】
次に、エレベータ10について、
図2(a)を参照しながら説明する。エレベータ10においても、上記第2のエレベータと比較するため、上かご32Bの総重量を"Wa"とする。
【0033】
なお、副ロープ36に作用する張力(T
1,T
2,T
3)をわかりやすく図示するため、
図2(a)では、便宜上、副シーブ42に隣接して仮想シーブVSが二点鎖線で図示されているが、実質的には、
図1に示す上かご32Bと副カウンタウエイト46の吊り下げ態様と同じ態様のものとして取り扱っても差し支えはない。また、
図2(a)に示す状態では、上かご32Bと副カウンタウエイト46とはつり合っているものとする。
【0034】
ここで、副ロープ36の上下方向に張架された部分を、それぞれ、図示するように、第1の部分361、第2の部分362及び第3の部分363ということとする。第1の部分361は、第1端部36Aから第1の動滑車326まで張架された部分である。第2の部分362は、副シーブ42に巻き掛けられている部分から第2の動滑車328まで張架された部分である。第3の部分363は、仮想シーブVSに巻き掛けられている部分から第2端部36Bまで張架された部分である。なお、仮想シーブVSがない場合(
図1に示す吊り下げ態様の場合)は、第2端部36B側の副ロープ36が第3の部分363に相当する部分となる。
【0035】
上かご32Bを吊り下げている副ロープ36は動滑車324(第1の動滑車326および第2の動滑車328)に巻き掛けられているので、上かご32Bの総重量(Wa)は、第1の部分361及び第2の部分362において、それぞれ半分ずつ分担される。よって、第1の部分361に作用する張力(T
1)と第2の部分362に作用する張力(T
2)はそれぞれ、上かご32Bの総重量(Wa)の半分となる(T
1=T
2=Wa/2)。
【0036】
第1端部36Aから第2端部36Bに至るまでが連続して緊張状態にある副ロープ36に作用する張力は一定(T
1=T
2=T
3)であるため、第1及び第2の部分361,362と同じく、第3の部分363に作用する張力(T
3)も、上かご32Bの総重量(Wa)の半分となっている(T
3=Wa/2)。したがって、副カウンタウエイト46の重量は、Wa/2(=T
3)となる。
【0037】
よって、副カウンタウエイト46の重量(Wb)は、上かご32Bの総重量(Wa)の半分の重量(Wa/2)に設定すればよいこととなる。すなわち、カウンタウエイトの重量がWaである第2エレベータに対し、エレベータ10では、その半分の重量Wa/2で足りることとなって、副カウンタウエイト46の重量を軽減することができる。このように、副カウンタウエイト46の重量が軽減されると、上かご32Bを昇降させるのに必要なトルクが小さくて済むので、副巻上機40の小型化・小容量化が図られる。
【0038】
また、副カウンタウエイト46の重量(Wb)が上記かご間隔調整用カウンタウエイトの重量(Wa)の半分に軽減できるので、副カウンタウエイト46を含む昇降体26(
図1)全体の総重量も同じ重量(Wa/2に相当する重量)分軽くなる。その結果、
図2(b)に示すように、主カウンタウエイト28の重量も、副カウンタウエイト46の重量が軽減された分と同じ重量分だけ軽減されることとなる。これにより、昇降体26を昇降させるのに必要なトルクも小さくて済むので、上記した副巻上機40の小型化・小容量化のみならず、主巻上機18の小型化・小容量化をも図ることが可能となるのである。
【0039】
図1に戻り、副ロープ36が上記のような掛け渡し態様の場合には、かご間隔(D)の調整にあたって、当該調整に必要な第1の距離(d
1)分だけ上かご32Bを上下方向に移動させると、副カウンタウエイト46は、第1の距離(d
1)の2倍に相当する第2の距離(d
2=2d
1)分だけ上かご32Bとは反対の上下方向に移動することとなる(
図1の一点鎖線)。このため、かご間隔(D)が最小から最大に至るまで(すなわち、下かご32Aと上かご32Bが最も近接した状態から最も離間した状態になるまで)の副カウンタウエイト46の最大移動距離(d
2MAX)は、少なくとも、上かご32Bの最大移動距離(d
1MAX)の2倍分に相当する範囲を確保する必要がある(
図1の二点鎖線)が、以下のとおり、当該範囲を確保するために、通常では特に、外かご枠30を上下方向に伸長させる必要はない。
【0040】
一般的に、ダブルデッキエレベータにおける上下のかご1台分の高さは、それぞれ3m程度である。また、ダブルデッキエレベータが設置される建物における最大階高差(階高が最大のときと最小のときの差)は、大きくとも、2m程度の範囲内である。すなわち、上かご32Bの最大移動距離(d
1MAX)は、2m程度である。よって、外かご枠30の高さは、少なくとも、8m(3m×2+2m)となる。
【0041】
一方、副カウンタウエイト46の高さは、一般的にかごと同等の高さ(すなわち、3m程度)に設計される。また、上かご32Bの最大移動距離d
1MAX(=2m)に対して、副カウンタウエイト46の最大移動距離d
2MAXは、2倍分の4m(2m×2)である。よって、副カウンタウエイト46の上下方向の可動領域として7m(3m+4m)必要となるが、これは、外かご枠30の高さである8m以内に収まっているからである。
【0042】
このように、一般的なダブルデッキエレベータでは、かご間隔(D)の調整代となる上かご32Bの最大移動距離(d
1MAX)が、かご1台分の高さ(h)よりも短く設定されている。また、副カウンタウエイト46を移動させるスペースを上かご32B側方のみならず下かご32A側方にも確保することができる。よって、かご間隔(D)の調整に伴う副カウンタウエイト46の移動範囲が、外かご枠30の上下方向長さ(一対の立枠306,308の長さ)の範囲内に収まってしまうのである。
【0043】
もっとも、上記一般的なダブルデッキエレベータとは異なる設計が必要となる場合であっても、かご間隔(D)の調整に伴う副カウンタウエイト46の移動範囲が外かご枠30の上下方向長さの範囲内に収まるような設定とすることは可能である。
【0044】
例えば、建物における最大階高差が2mを超える場合である。この場合、上かご32Bの最大移動距離d
1MAXが増大し、少なくとも、この増大した分は、外かご枠30を上下方向に伸長させる必要がある。また、副カウンタウエイト46の最大移動距離d
2MAXは、上かご32Bの最大移動距離d
1MAXが増大した分の2倍分増大することとなるため、上かご32の最大移動距離d
1MAXの増大分を確保するために外かご枠30を伸長させただけでは、副カウンタウエイト46の移動範囲が外かご枠30の上下方向長さの範囲内に収まらなくなる場合がある。
【0045】
この場合、外かご枠30を副カウンタウエイト46の最大移動距離d
2MAXの増大分さらに上下方向に伸長させることで対応できるが、外かご枠30の伸長と共に、あるいは伸長に替えて、副カウンタウエイト46の高さ(上下方向長さ)を短縮することによる対応も可能である。副カウンタウエイト46を短縮しても必要となる重量は同じであるが、短縮される部分の重量は、副カウンタウエイト46を拡幅したり、副カウンタウエイト46を構成する重り(不図示)の材質を変更して比重を大きくしたりして対処すればよい。
【0046】
上記したエレベータ10の運転動作全般は、主として、機械室16に設置された主制御装置48によって制御される。主制御装置48は、例えば、主巻上機18を構成する主シーブ20の回転駆動を制御することで、内かご32が内側に設けられた外かご枠30を含む昇降体26の昇降路12内における昇降運転を実現する。加えて、主制御装置48は、内かご32を着床させる目的階の階高に応じた、かご間隔調整指令を発信する。
【0047】
外かご枠30の上梁302上部には、副巻上機40に隣接して、副制御装置50が設置されている。副制御装置50は、主制御装置48からの前記指令を受けて副巻上機40の動作を制御し、下かご32Aと上かご32Bが同時に着床される二つの目的階の階高に応じた間隔となるように、かご間隔(D)を調整する。
【0048】
例えば、調整されるべきかご間隔(D)が、D1、D2、D3、D4の4通りであるとする。この場合、副制御装置50では、各かご間隔D1,D2,D3,D4に対応した、ロータリエンコーダ44の回転角E1,E2,E3,E4が予め設定されている。かご間隔調整指令を受けた副制御装置50は、当該指令に含まれるかご間隔情報(D1〜D4のいずれか)に対応する回転角(E1〜E4のいずれか)と一致するまで副巻上機40のモータ(不図示)を回転させて副シーブ42を回転駆動させ、一致した状態で副シーブ42を停止させる。これにより、上かご32Bが第1の距離(d
1)分だけ上下方向に移動され、二つの目的階の階高に、かご間隔(D)が調整されることとなる。
【0049】
以上説明したとおり、実施形態1に係るエレベータ10によれば、上かご32Bを吊り下げる副ロープ36が上記のような掛け渡し態様となっているため、かご間隔(D)の調整に用いられる副カウンタウエイト46の重量(Wb)を、上記第2のエレベータを構成するかご間隔調整用カウンタウエイトの重量(Wa)の半分に設定することができる。これにより、副カウンタウエイト46を含む昇降体26全体の総重量が軽くなる分、主カウンタウエイト28の重量も軽減される。すなわち、両方のカウンタウエイトの重量を従来よりも軽減することが可能となる。
【0050】
また、外かご枠30に対して下かご32Aが固定されているので、昇降路12内の移動及び下かご32Aの目的階への着床を、何れも外かご枠30基準とすることができ、上かご32Bを、専ら、上記したかご間隔(D)の調整により目的階に着床させることが可能であるため、内かご32の着床制御が簡易である。すなわち、かご間隔(D)の調整に副カウンタウエイト46を用いることで得られる上記第2のエレベータと同様の利点を従来通りに生かすことができる。
【0051】
さらに、かご間隔(D)の調整に伴う副カウンタウエイト46の移動範囲が、外かご枠30の上下方向長さ(一対の立枠306,308の長さ)の範囲内に収められるので、かご間隔(D)が最大のとき当該移動範囲の最下に位置することとなる副カウンタウエイト46が、外かご枠30下方の枠外まではみ出ることはない。よって、エレベータ10の設置に際し、例えば、昇降路12の床を通常よりも深く掘り下げるといった副カウンタウエイト46の移動範囲を確保するための工事負担を強いられることもない。
【0052】
<実施形態2>
実施形態1では、副巻上機40のロータリエンコーダ44の出力信号(回転角情報)を参照して、かご間隔(D)を調整した。これに対し、実施形態2では、副シーブ42の回転に伴って上下に移動する上かご32Bの、外かご枠30に対する上下方向の位置を検出する位置検出手段の検出結果を参照して、最終的に、かご間隔(D)を調整することとしている。
【0053】
図3に示すように、実施形態2に係るダブルデッキエレベータ60(以下「エレベータ60」という。)は、位置検出手段を追加した以外は、実施形態1に係るエレベータ10(
図1)と基本的に同じ構成である。したがって、
図3において
図1と共通する構成要素には同じ符号を付して、その説明は省略するか必要に応じて言及するに止め、以下、位置検出手段を中心に説明する。
【0054】
実施形態1で説明したように、副巻上機40の副シーブ42が第1の向き(矢印Fの向き)に回転駆動されると、上かご32Bが下かご32Aに対し上昇すると共に、副カウンタウエイト46は下降し、これとは逆に、第2の向き(矢印Rの向き)に回転駆動されると、上かご32Bが下かご32Aに対し下降すると共に、副カウンタウエイト46は上昇する。これにより、かご間隔(D)が調整される。
【0055】
この場合において、下かご32Aは外かご枠30に固定されていることから、かご間隔(D:D1,D2,D3,D4)と、上かご32Bの外かご枠30に対する上下方向の位置とは、一対一で対応する。そこで、実施形態2では、上かご32Bの当該上下方向における位置を検出する位置検出手段62を設け、位置検出手段62の検出結果から、かご間隔(D)を特定して、かご間隔(D)を調整するようにしている。
【0056】
位置検出手段62は、外かご枠30の立枠306に上下方向に列設された複数個の(本例では4個の)フォトセンサ64A,64B,64C,64Dと、上かご32Bに設けられた遮光片66と、を含む。なお、フォトセンサ64A,64B,64C,64Dは、何れも同じ構成なので、これらを区別する必要のない場合は、アルファベットの添え字(A〜D)を省略して説明する。
【0057】
フォトセンサ64は、
図4に示すように、発光素子642と受光素子644とが対向して設けられてなる透過型のフォトセンサである。
【0058】
遮光片66は、上かご32Bに固定されており、上かご32Bと共に昇降する。本例では、上かご32B側面における最下部に遮光片66が固定されており、かご間隔(D)を規定する基準の一つとなる上かご32Bの床面322Bの位置を検出することとしているが、遮光片66の上かご32Bに対する上下方向における固定位置は任意である。
【0059】
フォトセンサ64A,64B,64C,64Dの各々は、上かご32Bの昇降に伴って同様に昇降する遮光片66の昇降経路を、それぞれの発光素子642と受光素子644が挟むように設けられている。
【0060】
また、フォトセンサ64A,64B,64C,64D各々の上下方向における設置位置は、かご間隔D1,D2,D3,D4の各々に対応させている。すなわち、かご間隔がD1であるときに遮光片66を検出する位置にはフォトセンサ64Aが、かご間隔がD2であるときに遮光片66を検出する位置にはフォトセンサ64Bが、かご間隔がD3であるときに遮光片66を検出する位置にはフォトセンサ64Cが、かご間隔がD4であるときに遮光片66を検出する位置にはフォトセンサ64Dが、それぞれ設置されている(本例では、D1>D2>D3>D4となっている。)
【0061】
上記構成を有するエレベータ60では、副巻上機40を駆動制御して上かご32Bを昇降させ、遮光片66がフォトセンサ64A,64B,64C,64Dの何れかで検出される位置に上かご32Bを位置決めすることにより、かご間隔(D)をD1、D2、D3、D4の何れかに調整することができる。
【0062】
この場合において、副制御装置50では、かご間隔D1,D2,D3,D4とフォトセンサ64A,64B,64C,64Dとをそれぞれ対応付ける情報(以下「センサ情報」という。)が予め設定されている。主制御装置48からかご間隔調整指令を受けた副制御装置50は、センサ情報に基づき、受け取ったかご間隔情報(D1〜D4のいずれか)に対応するフォトセンサ(64A〜64Dのいずれか)を特定する。そして、特定されたフォトセンサによって遮光片66が検出されるまで副巻上機40のモータ(不図示)を回転させて副シーブ42を回転駆動させ、遮光片66が検出された状態で副シーブ42を停止させる。これにより、前記調整に必要な第1の距離(d
1)分だけ上かご32Bが上下方向に移動され、二つの目的階の階高に、かご間隔(D)が調整されることとなる。
【0063】
上記したように、エレベータ60によれば、位置検出手段62の検出結果に基づいて、外かご枠30に対する上かご32Bの位置決めがなされ、当該位置決めをもって、かご間隔(D)の最終的な調整がなされる。このため、かご間隔(D)を調整するために、副巻上機40のロータリエンコーダ44は必ずしも必要ではなく、当該調整のための副制御装置50による制御も簡単である。
【0064】
<実施形態3>
実施形態1,2では、下かご32Aを『固定かご』とし、上かご32Bを『可動かご』とした。これに対し、実施形態3では、『固定かご』と『可動かご』との上下関係が実施形態1,2とは逆の構成となっている。
【0065】
図5に示すように、実施形態3に係るダブルデッキエレベータ70(以下「エレベータ70」という。)は、『固定かご』と『可動かご』との上下関係が逆である以外は、実施形態2に係るエレベータ60(
図3、
図4)と基本的に同じ構成である。よって、
図5において、エレベータ60と実質的に同じ構成要素については、同じ符号を付して、その説明については、必要に応じて言及するに止め、以下、相違する部分を中心に説明する。
【0066】
エレベータ70において、外かご枠30は、中間梁310をさらに有する。中間梁310は、立枠306,308の上下方向中間部のやや上側に横架されている。中間梁310は、上梁302及び下梁304と同じく形鋼材からなり、立枠306,308各々との連結部分は、例えばボルト・ナットのような締結具や隅肉溶接等によって強固に固定されている。なお、
図5には、前記した締結具や隅肉溶接のビードは図示されていない。
【0067】
外かご枠30内側の、中間梁310よりも上側には、上かご72Bが固定されている。上かご72Bは、防振ゴム34を介して、中間梁310の上面に載置された状態で固定されている。また、外かご枠30内側の、中間梁310よりも下側には、下かご72Aが副ロープ36によって吊り下げられている。下かご72Aは、本体720Aの上側に、動滑車724を有する。動滑車724は、第1の動滑車726と第2の動滑車728を含む。
【0068】
下かご72Aを吊り下げる副ロープ36は、以下のような態様で掛け渡されている。すなわち、副ロープ36は、副シーブ42に巻き掛けられて下方へと折り返されている。副ロープ36の第1端部36Aは、固定器具(不図示)によって、中間梁310に固定されている。副ロープ36は、第1端部36Aから副シーブ42に至る間における副ロープ36の一部が第1の動滑車726及び第2の動滑車728各々に巻き掛けられて、下かご72Aを吊り下げている。第1端部36Aとは反対側の第2端部36Bには、副カウンタウエイト46が吊り下げられている。
【0069】
副巻上機40において、副シーブ42が第1の向き(矢印Fの向き)に回転駆動されると、下かご72Aが上かご72Bに対し近接する向きに移動(上昇)すると共に、副カウンタウエイト46は下降する。これとは逆に、副シーブ42が第2の向き(矢印Rの向き)に回転駆動されると、下かご72Aが上かご72Bに対し離間する向きに移動(下降)すると共に、副カウンタウエイト46は上昇する。このように、副シーブ42の回転に伴い、下かご72Aが副カウンタウエイト46とは反対方向に昇降されることにより、かご間隔(D)が調整されることとなる。
【0070】
エレベータ70では、フォトセンサ64A,64B,64C,64Dの各々と遮光片66とを含む位置検出手段62により、下かご72Aの上下方向における位置を検出するように構成されている。
【0071】
上記構成を有するエレベータ70において、『可動かご』である下かご72Aを、動滑車724を介して吊り下げる副ロープ36に作用する張力は、実施形態1と実質的に同じであり、副カウンタウエイト46の重量が、下かご72Aの総重量の半分となる理由も同じなので、その説明については省略する。また、副制御装置50が、主制御装置48からかご間隔調整指令を受けて、位置検出手段62の検出結果を参照して、かご間隔(D)の最終的な調整がなされるかご間隔調整処理は、実施形態2と基本的に同じなので、その説明については省略する。
【0072】
以上、本発明に係るダブルデッキエレベータについて、実施形態に基づき説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下のような形態で実施されても構わない。
【0073】
(1)上記実施形態では、副ロープ36の、可動かごを吊り下げる第1端部36A側における掛け渡し態様が、可動かごに設けられた動滑車324(724)に巻き掛けられて折り返された第1の部分361と第2の部分362とで当該可動かごの重量を分担する態様(以下、当該態様を「2:1ローピング」ということとする。)であったが、副カウンタウエイト46の移動範囲が許容される限り、他の態様であっても構わない。
【0074】
例えば、上記実施形態3において、第1端部36Aから副シーブ42に至る間における副ロープ36の一部であって、第1の動滑車726と第2の動滑車728の間に水平に張架されている部分を、
図6に示すように、各動滑車726,728よりも上方に設けられた定滑車80に巻き掛けた態様としても構わない。
【0075】
上記2:1ローピングに対し、当該態様では、可動かごの重量を、第1及び第2の部分361,362に加え、第4及び第5の部分364,365の合計4つの部分で分担する「4:1ローピング」となるため、副カウンタウエイト46の重量をさらに半分の重量まで軽減することが可能となる。すなわち、下かご72Aの総重量の1/4とすることができる。なお、当該4:1ローピングを上記実施形態1,2に適用する場合には、動滑車324の位置を上かご32Bの本体320B上側に変更すればよい。
【0076】
当然ながら、副ロープ36の第1端部36A側におけるローピングは、これに限らず、例えば、「2:1ローピング」、「4:1ローピング」に替えて、「6:1ローピング」としても構わない。
【0077】
(2)上記実施形態では、かご間隔調整用カウンタウエイトである副カウンタウエイト46の移動範囲が、外かご枠30の上下方向長さの範囲内に収まるように設定したが、前記移動範囲が、外かご枠30から一部はみ出るような設定としても構わない。これについて、
図7を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、既述した各実施形態における構成要素と実質的に同じ構成要素には、適宜同じ符号を付している。
【0078】
昇降路12は、その最下部にピット124を有している。
図7は、昇降路12が設けられた建物の最下階に下かご32A(72A)が着床している状態を示している。ピット124には、下かご32A(72A)直下に、外かご枠30の下梁304を介して、緩衝器90が設置されており、主カウンタウエイト28(
図7では不図示)直下にもまた、同様の緩衝器(不図示)が設置されているが、緩衝器90等の存しないピット124部分はフリースペースとなる。そこで、ピット124のフリースペースを有効利用することで、副カウンタウエイト46の移動範囲(可動領域)を、外かご枠30の上下方向長さを超える範囲に設定するのである。
【0079】
すなわち、副カウンタウエイト46が、自身の移動範囲の最下に位置するとき、副カウンタウエイトの一部が前記フリースペースに進入して、外かご枠30から下方にはみ出る構成とするのである。以下、下方にはみ出る部分462を「はみ出し部462」ということとする。このはみ出し部462の上下方向長さ(L1)は、建物の最下階に下かご32A(72A)が着床しているとき(すなわち、
図7に示す状態のとき)の、ピット床122から外かご枠30(下梁304)までの上下方向における距離(L2)の範囲内に設定される。なお、
図7では、副カウンタウエイト46において、そのはみ出し部462にハッチングを施している。
【0080】
本例の態様によれば、副カウンタウエイト46を、外かご枠30からはみ出す構成としたので、上述したように、建物における最大階高差が通常の大きさ(本例では、2m)を超える場合や、「4:1ローピング」や「6:1ローピング」とした場合で、副カウンタウエイト46の移動範囲が長くなったとしても、必ずしも外かご枠30の上下方向長さを伸長させる必要はなくなる。
【0081】
(3)上記実施形態では、調整されるかご間隔は4通り(D1,D2,D3,D4)であったが、これに限らないことは勿論である。ダブルデッキエレベータが設置される建物の設計に合わせて、2通り、3通り、あるいは5通り以上に設定することもできる。
【0082】
(4)上記実施形態2,3では、フォトセンサ64A,64B,64C,64Dの各々と遮光片66とを含む位置検出手段62を用いたが、例えば、アブソリュートタイプの磁気式リニアスケールといった他の位置検出手段を用いても構わない。要するに、可動かごの外かご枠に対する上下方向における位置を検出できればよいのである。
【0083】
(5)上記実施形態では、可動かごの外かご枠に対する上下方向における位置を検出する位置検出手段の検出結果を参照して、かご間隔を調整することとしていたが、かご間隔調整用カウンタウエイト(副カウンタウエイト46)の外かご枠に対する上下方向における位置を検出するように構成しても構わない。かご間隔調整用カウンタウエイトの外かご枠に対する上下方向における位置と、調整されるべきかご間隔も、一対一で対応することとなるからである。
【0084】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。