特許第6620775号(P6620775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620775
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】表示装置および表示方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20191209BHJP
   B60W 50/14 20120101ALI20191209BHJP
【FI】
   B60K35/00 A
   B60W50/14
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-46428(P2017-46428)
(22)【出願日】2017年3月10日
(65)【公開番号】特開2018-149874(P2018-149874A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】青位 初美
(72)【発明者】
【氏名】日向 匡史
(72)【発明者】
【氏名】上谷 芽衣
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/170786(WO,A1)
【文献】 特開2017−19487(JP,A)
【文献】 特開2017−13605(JP,A)
【文献】 特開2016−193706(JP,A)
【文献】 特開2016−101805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00−37/06,
G02B 27/00−27/64,
G09F 9/00,
G01C 21/00−21/36,23/00−25/00,
B60W 10/00−10/30,30/00−50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための装置であって、
前記車両の運転者の視線方向を検出する検出部と、
前記車両のフロントガラス上の、前記検出部によって検出された視線方向を遮らない部位に、前記カウントダウンの状態を示すインジケータが表示されるように制御する表示制御部と備え
前記インジケータは、前記視線方向を中心とし、前記視線方向を囲むように配置されたドーナッツ形状をしており、
前記表示制御部は、前記カウントダウンの開始時には、前記ドーナッツ形状のインジケータが表示され、前記カウントダウンの終了時には前記インジケータが表示されなくなるように、前記カウントダウンの進行に従って、前記ドーナッツ形状における円環部位が徐々に非表示となるように制御する、表示装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記車両のフロントガラス上の、前記検出部によって検出された視線方向を遮らない部位であって、かつ、前記フロントガラス上における前記視線方向との交点からの所定距離内に、前記インジケータが表示されるように制御する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記検出部によって前記視線方向が変化したことが検出されると、前記表示制御部は、前記フロントガラス上の前記インジケータの位置が、前記変化に応じて変化するように制御する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための装置であって、
前記車両の運転者の視線方向を検出する検出部と、
前記車両のフロントガラスと、前記運転者との間に設けられた表示パネルと、
前記表示パネル上の、前記検出部によって検出された視線方向を遮らない部位に、前記カウントダウンの状態を示すインジケータが表示されるように制御する表示制御部と備え
前記インジケータは、前記視線方向を中心とし、前記視線方向を囲むように配置されたドーナッツ形状をしており、
前記表示制御部は、前記カウントダウンの開始時には、前記ドーナッツ形状のインジケータが表示され、前記カウントダウンの終了時には前記インジケータが表示されなくなるように、前記カウントダウンの進行に従って、前記ドーナッツ形状における円環部位が徐々に非表示となるように制御する、表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記表示パネル上における前記視線方向との交点からの所定距離内に、前記インジケータが表示されるように制御する、請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記検出部によって前記視線方向が変化したことが検出されると、前記表示制御部は、前記表示パネル上の前記インジケータの位置が、前記変化に応じて変化するように制御する、請求項4に記載の表示装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記運転者を撮像するカメラであり、
前記カメラによって撮像された映像情報から、前記視線方向を判定する判定部をさらに備えた、請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記インジケータを投影表示するプロジェクタを備え、
前記表示制御部は、前記プロジェクタを制御する、請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記インジケータは、前記カウントダウンの状態を示す数値表示を含む、請求項1乃至8のうち何れか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための方法であって、
前記車両の運転者の視線方向を検出し、
前記車両のフロントガラス上の、前記検出された視線方向を遮らない部位に、前記カウントダウンの状態を示すインジケータが表示されるように制御することを含み、
前記インジケータは、前記視線方向を中心とし、前記視線方向を囲むように配置されたドーナッツ形状をしており、
前記制御することは、前記カウントダウンの開始時には、前記ドーナッツ形状のインジケータが表示され、前記カウントダウンの終了時には前記インジケータが表示されなくなるように、前記カウントダウンの進行に従って、前記ドーナッツ形状における円環部位が徐々に非表示となるように制御することを含む、表示方法。
【請求項11】
自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための方法であって、
前記車両の運転者の視線方向を検出し、
前記車両のフロントガラスと、前記運転者との間に設けられた表示パネル上の、前記検出された視線方向を遮らない部位に、前記カウントダウンの状態を示すインジケータが表示されるように制御することを含み、
前記インジケータは、前記視線方向を中心とし、前記視線方向を囲むように配置されたドーナッツ形状をしており、
前記制御することは、前記カウントダウンの開始時には、前記ドーナッツ形状のインジケータが表示され、前記カウントダウンの終了時には前記インジケータが表示されなくなるように、前記カウントダウンの進行に従って、前記ドーナッツ形状における円環部位が徐々に非表示となるように制御することを含む、表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の運転モードとして、運転者の運転操作に基づいて車両を走行させる手動運転モード以外に、運転者の運転操作によらず予め設定された経路に沿って車両を走行させる自動運転モードの開発が進められている。自動運転モードは、例えば、GPS(Global Positioning System)を利用したナビゲーションシステムの情報や、路車間通信により取得される交通情報、周辺の人や車両の位置と動きを監視する周辺モニタリングシステムの情報をもとに、パワーユニットや操舵装置、ブレーキ等を制御することで、車両の自動運転を可能にするものである(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
このような自動運転モードによって、運転者の運転操作の負担軽減や交通渋滞の緩和等の効果が期待されている。
【0004】
例えば、高速道路は、路車間通信も整備され、信号もなく、歩行者もおらず、車線も片側に確実に設けられており、運転操作の大部分が、比較的単調なものになることから、自動運転モードでの運転に適した区間であると考えられる。しかしながら、路車間通信が整備されていなかったり、両側一車線しかなかったり、車線が消えているような一般道では、まだまだ自動運転モードでの運転は困難である。
【0005】
したがって、高速道路において自動運転モードで運転していても、高速道路を出る場合には、一般道に到達するまでに、自動運転モードから手動運転モードへ切り替える必要がある。
【0006】
例えば、走行計画にしたがって、車両が高速道路を自動運転モードで走行している場合、車両側では、現在位置から、高速道路の出口および一般道までの距離を常に把握できるので、現在の速度から、高速道路を出て、一般道に到達するまでの所要時間をも推定することができる。そして、例えば、一般道に到達するまでの時間が60秒になった時点で、「まもなく一般道に入ります。60秒後に、手動運転モードに切り替えます。それまでに、手動運転の準備を完了させて下さい」というような音声アナウンスが出力される。また、カーナビ画面、タブレット画面、メータ画面等の画面から、「あと60秒」、「あと59秒」・・・・のようなカウントダウン表示がなされる。
【0007】
一方、高速道路を自動運転モードで走行している場合であっても、例えば霧や大雨といった天候不良によって、車両の外部センサが正常に動作しなくなることによって、自動運転モードを継続できなくなる場合もありうる。このような場合、車両によって、自動運転モードを継続できないことが判断され、「天候不良により自動運転モードを継続できないので、60秒後に、手動運転モードに切り換えます。それまでに、手動運転の準備を完了させて下さい」のような音声アナウンスが出力される。この場合も同様に、「あと60秒」、「あと59秒」・・・・のようなカウントダウン表示が、一般に、カーナビ画面、タブレット画面、メータ画面等の画面からなされる。
【0008】
なお、自動運転モードから手動運転モードへの切り替え準備のための時間は、自動車メーカ等によって個別に適切に設定されるものであり、前述した60秒は一例であって、限定されるものではない。
【0009】
運転者は、カウントダウンが終了するまでの間に、運転姿勢を取り、前方を向き、ハンドルを握り、アクセルを調整するといった、手動運転に必要な一連の準備を完了させねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2015−141053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような音声アナウンスやカウントダウン表示には、以下のような問題がある。
【0012】
例えば60秒という時間は、前述したように手動運転に必要な一連の準備を完了させるための時間としては、十分な長さであるように思われる。しかしながら、運転者の中には、60秒を十分な長さであるとは感じず、むしろ、非常に短い長さであると感じる者もいるかもしれない。
【0013】
一方、自動運転により、運転の緊張から解放された状態に心地よく浸っており、もうすぐ自動運転が終了する頃だという意識も持たず、手動運転に対する心の準備がまったくできていない運転者にとっては、「・・・60秒後に、手動運転モードに切り替えます。」という突然のアナウンスによって、軽いパニック状態に陥る恐れもありうる。
【0014】
そのような運転者にとっては、例えば60秒という時間は、非常に短く感じ、焦ってしまうことがないとも限らない。さらに、このような状態でカウントダウンの表示が始まると、そちらに気を取られてしまう。特に、このカウントダウンの表示が一般になされるカーナビ画面、タブレット画面、またはメータ画面等といった画面は、運転者の視線前方にはないことから、運転者の脇見を誘発する恐れがある。
【0015】
カウントダウン中は、本来、運転者が、手動運転の準備をすべき期間である。しかしながら、これでは、運転者は、その間に手動運転の準備をするよりも、むしろ、画面上になされる表示自体に気も視線も取られてしまい、気が付いた時には、カウントダウンが終了し、手動運転に対する準備ができていない状態のまま、手動運転モードに切り替わってしまうという恐れも懸念される。
【0016】
この場合、手動運転モードへの安全な引き継ぎができず、手動運転モードに切り替わった途端に、運転が不安定になる恐れがあるという問題がある。
【0017】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、自動運転モードから手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を、運転者の手動運転への準備を阻害しないように表示し、もって、運転者が、切り替えまでの時間を認識しながら、手動運転への準備を確実に実施できるようにするための表示装置および表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
【0019】
すなわち、この発明の第1の態様は、自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための装置であって、前記車両の運転者の視線方向を検出する検出部と、前記車両のフロントガラス上の、前記検出部によって検出された視線方向を遮らない部位に、前記カウントダウンの状態を示すインジケータが表示されるように制御する表示制御部とを備える。
【0020】
この発明の第2の態様は、第1の態様の表示装置において、前記表示制御部は、前記車両のフロントガラス上の、前記検出部によって検出された視線方向を遮らない部位であって、かつ、前記フロントガラス上における前記視線方向との交点からの所定距離内に、前記インジケータが表示されるように制御する。
【0021】
この発明の第3の態様は、第1の態様の表示装置において、前記検出部によって前記視線方向が変化したことが検出されると、前記表示制御部は、前記フロントガラス上の前記インジケータの位置が、前記変化に応じて変化するように制御する。
【0022】
この発明の第4の態様は、自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための装置であって、前記車両の運転者の視線方向を検出する検出部と、前記車両のフロントガラスと、前記運転者との間に設けられた表示パネルと、前記表示パネル上の、前記検出部によって検出された視線方向を遮らない部位に、前記カウントダウンの状態を示すインジケータが表示されるように制御する表示制御部とを備える。
【0023】
この発明の第5の態様は、第4の態様の表示装置において、前記表示制御部が、前記表示パネル上における前記視線方向との交点からの所定距離内に、前記インジケータが表示されるように制御する。
【0024】
この発明の第6の態様は、第4の態様の表示装置において、前記検出部によって前記視線方向が変化したことが検出されると、前記表示制御部は、前記表示パネル上の前記インジケータの位置が、前記変化に応じて変化するように制御する。
【0025】
この発明の第7の態様は、第1乃至6のうちの何れかの態様の表示装置において、前記検出部が、前記運転者を撮像するカメラであり、前記カメラによって撮像された映像情報から、前記視線方向を判定する判定部をさらに備える。
【0026】
この発明の第8の態様は、第1乃至7のうちの何れかの態様の表示装置において、前記インジケータを投影表示するプロジェクタを備え、前記表示制御部は、前記プロジェクタを制御する。
【0027】
この発明の第9の態様は、第1乃至8のうちの何れかの態様の表示装置において、前記インジケータが、前記カウントダウンの状態を示す数値表示を含む。
【0028】
この発明の第10の態様は、第1乃至9のうちの何れかの態様の表示装置において、前記インジケータは、前記視線方向を中心とし、前記視線方向を囲むように配置されたドーナッツ形状をしており、前記表示制御部は、前記カウントダウンの開始時には、前記ドーナッツ形状のインジケータが表示され、前記カウントダウンの終了時には前記インジケータが表示されなくなるように、前記カウントダウンの進行に従って、前記ドーナッツ形状における円環部位が徐々に非表示となるように制御する。
【0029】
この発明の第11の態様は、自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための方法であって、前記車両の運転者の視線方向を検出し、前記車両のフロントガラス上の、前記検出された視線方向を遮らない部位に、前記カウントダウンの状態を示すインジケータを表示する。
【0030】
この発明の第12の態様は、自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための方法であって、前記車両の運転者の視線方向を検出し、前記車両のフロントガラスと、前記運転者との間に設けられた表示パネル上の、前記検出された視線方向を遮らない部位に、前記カウントダウンの状態を示すインジケータを表示する。
【発明の効果】
【0031】
この発明の第1、11の態様によれば、フロントガラス上にインジケータの表示を開始することによって、運転者に対して、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えのための準備を開始する必要があることを認識させることができる。また、インジケータは、カウントダウンの状態を示すので、運転者は、手動運転モードへの切り替えが実行されるまでの時間を把握することが可能となる。しかも、インジケータは、運転者の視線方向を遮らないので、運転者による前方確認を阻害せず、安全性を損なうことはない。
【0032】
この発明の第2、5の態様によれば、インジケータを、フロントガラス上における前記視線方向との交点上に表示せず、交点から適切な距離離れた場所に表示することによって、運転者の視線方向を遮らず、かつ、運転者が、インジケータを遠目に見ることによって、カウントダウンの状態を容易に認識することが可能となる。
【0033】
この発明の第3、6の態様によれば、運転者の視線方向が変化しても、インジケータが表示される位置も、それに連動して移動することになるので、運転者は、視線方向を変えても、同様に、カウントダウンの状態を容易に認識することが可能となる。
【0034】
この発明の第4、12の態様によれば、フロントガラスと運転者との間に設けられた表示パネル上にインジケータの表示を開始することによって、運転者に対して、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えのための準備を開始する必要があることを認識させることができる。また、インジケータは、カウントダウンの状態を示すので、運転者は、手動運転モードへの切り替えが実行されるまでに時間を把握することが可能となる。しかも、インジケータは、運転者の視線方向を遮らないので、運転者による前方確認を阻害せず、安全性を損なうことはない。
【0035】
この発明の第7の態様によれば、カメラで運転者を撮像することによって、運転者の視線方向を精度よく判定することが可能となる。
【0036】
この発明の第8の態様によれば、プロジェクタからインジケータを投影することが可能となる。
【0037】
この発明の第9の態様によれば、インジケータとして、数値表示することによって、運転者は、手動運転モードへの切り替えが実行されるまでの時間を正確に把握することが可能となる。
【0038】
この発明の第10の態様によれば、運転者は、インジケータを直視せずとも、円環部位の面積が減少することを感知できるので、カウントダウンの進行を容易に認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本実施形態に係る表示装置を実現する運転モード切替制御システムを備えた自動運転制御システムの全体構成例を示す図である。
図2】本実施形態における車両1の運転席内を例示する模式図である。
図3】本実施形態における運転モード切替制御システムの機能構成例を示すブロック図である。
図4】カウントダウンに従って形状が変化するインジケータの一例を示す模式図である。
図5】数値として表示されるインジケータの表示例を示す図である。
図6】運転者の視線方向の変化に応じて移動するインジケータの表示例を示す模式図である。
図7】本実施形態における運転モード切替制御システムの動作例を示すフローチャート(1/2)である。
図8】本実施形態における運転モード切替制御システムの動作例を示すフローチャート(2/2)である。
図9】フロントガラスと運転者との間に配置された透明な表示パネルの配置例を示す模式図である。
図10】変形例における運転モード切替制御システムの機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。
【0041】
(構成)
本発明の実施形態に係る表示方法が適用された表示装置について説明する。
【0042】
図1は、本実施形態に係る表示装置を実現する運転モード切替制御システム10を備えた自動運転制御システムの全体構成例を示す図である。この自動運転制御システムは乗用車等の車両1に搭載される。
【0043】
車両1は、基本設備として、動力源および変速装置を含むパワーユニット2と、ステアリングホイール4が装備された操舵装置3とを備え、さらに運転モードとしては手動運転モードと自動運転モードとを備えている。動力源としては、エンジンまたはモータ、あるいはその両方が用いられる。
【0044】
手動運転モードは、例えば、運転者(以下「ドライバ」とも称する)の手動による運転操作を主体として車両1を走行させるモードである。手動運転モードには、例えば、運転者の運転操作のみに基づいて車両を走行させる動作モードと、運転者の運転操作を主体としながら運転者の運転操作を支援する運転操作支援制御を行う動作モードが含まれる。
【0045】
運転操作支援制御は、例えば、車両1のカーブ走行時にカーブの曲率に基づいて運転者の操舵が適切な操舵量となるように操舵トルクをアシストする。また、運転操作支援制御には、運転者のアクセル操作(例えばアクセルペダルの操作)またはブレーキ操作(例えばブレーキペダルの操作)を支援する制御と、手動操舵(操舵の手動運転)および手動速度調整(速度調整の手動運転)も含まれる。手動操舵は、運転者のステアリングホイール4の操作を主体として車両1の操舵を行う。手動速度調整は、運転者のアクセル操作またはブレーキ操作を主体として車両の速度調整を行う。
【0046】
なお、運転操作支援制御には、運転者の運転操作に強制的に介入して、車両1を自動走行させる制御は含まれない。すなわち、手動運転モードには、予め設定された許容範囲において運転者の運転操作を車両の走行に反映させるが、一定条件(例えば車両の車線逸脱等)の下で車両の走行に強制的に介入する制御は含まれない。
【0047】
一方、自動運転モードは、例えば、車両1の走行する道路に沿って自動で車両1を走行させる運転状態を実現するモードである。自動運転モードには、例えば、運転者が運転操作をすることなく、予め設定された目的地に向かって自動的に車両1を走行させる運転状態が含まれる。自動運転モードは、必ずしも車両1の全ての制御を自動で行う必要はなく、予め設定された許容範囲において運転者の運転操作を車両1の走行に反映する運転状態も自動運転モードに含まれる。すなわち、自動運転モードには、予め設定された許容範囲において運転者の運転操作を車両1の走行に反映させるが、一定条件の下で車両の走行に強制的に介入する制御が含まれる。
【0048】
図1において、5は上記自動運転モードによる運転制御を実行するための自動運転制御装置を示している。自動運転制御装置5は、ステアリングセンサ11、アクセルペダルセンサ12、ブレーキペダルセンサ13、GPS受信機14、ジャイロセンサ15、および車速センサ16からそれぞれセンシングデータを取得する。そして、これらのセンシングデータと、図示しないナビゲーションシステムで生成される経路情報や、路車間通信により取得される交通情報、周辺の人や車両の位置と動きを監視する周辺モニタリングシステムにより得られる情報をもとに、車両1の走行を自動制御する。
【0049】
自動制御には、例えば、自動操舵(操舵の自動運転)と自動速度調整(速度の自動運転)がある。自動操舵は、操舵装置3を自動で制御する運転状態である。自動操舵にはLKA(Lane Keeping Assist)が含まれる。LKAは、例えば、運転者がステアリング操作をしない場合であっても、車両1が走行車線から逸脱しないように自動で操舵装置3を制御する。なお、LKAの実行中であっても、車両1が走行車線を逸脱しない範囲(許容範囲)において運転者のステアリング操作を車両の操舵に反映しても良い。なお、自動操舵はLKAに限らない。
【0050】
自動速度調整は、車両1の速度を自動で制御する運転状態である。自動速度調整にはACC(Adaptive Cruise Control)が含まれる。ACCとは、例えば、車両1の前方に先行車が存在しない場合は予め設定された設定速度で車両1を定速走行させる定速制御を行い、車両1の前方に先行車が存在する場合には先行車との車間距離に応じて車両1の車速を調整する追従制御を行うものである。自動運転制御装置5は、ACCを実行中であっても、運転者のブレーキ操作(例えばブレーキペダルの操作)に応じて車両1を減速させる。また自動運転制御装置5は、ACCを実行中であっても、予め設定された最大許容速度(例えば走行中の道路において法的に定められた最高速度)まで、運転者のアクセル操作(例えばアクセルペダルの操作)に応じて車両1を加速させることもできる。なお、自動速度調整は、ACCに限らず、CC(Cruise Control:定速制御)等も含まれる。
【0051】
本実施形態において、自動運転制御システムは、手動運転モードと自動運転モードとの間の切り替え制御を行うための装置として、運転モード切替制御システム10を備えている。運転モード切替制御システム10は、本実施形態に係る表示装置を実現する。本実施形態に係る表示装置は、自動運転モードで走行している車両1の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための装置である。したがって、以下では、運転モード切替制御システム10においてなされる自動運転モードから手動運転モードへの切替時の制御について説明し、手動運転モードから自動運転モードへの切替時の制御についての説明は省略する。
【0052】
運転モード切替制御システム10は、運転モード切替制御装置6と、運転者カメラ7と、プロジェクタ8と、スピーカ9とを備えている。
【0053】
図2は、本実施形態における車両1の運転席内を例示する模式図である。
【0054】
図3は、同実施形態における運転モード切替制御システム10の機能構成例を示すブロック図である。
【0055】
運転者カメラ7は、例えばダッシュボード70上のように、運転者を撮像できる場所に配置され、運転者を撮像し、その映像信号Fを運転モード切替制御装置6へ出力する。
【0056】
スピーカ9は、運転モード切替制御装置6から出力されたメッセージ情報Eに基づいて、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えのための準備の開始を通知する音声情報を出力する。音声情報は、例えば、「あと60秒後に、手動運転モードに切り替えます。それまでに、手動運転への準備を完了させて下さい」のようなものである。また、自動運転モードから手動運転モードへの切り替え終了時に、「手動運転モードへの切り替えが完了しました」のような音声情報を出力しても良い。
【0057】
プロジェクタ8は、例えばダッシュボード70上に配置され、運転モード切替制御装置6から出力された投影パターン情報Iと、運転者視線方向情報Hとに基づいて、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えのための準備の開始に応じてなされるカウントダウンの状態を示すインジケータを、フロントガラス72上に投影する。インジケータは、カウントに対応する数値表示でもよいし、カウントダウンに従ってその一部が徐々に非表示となるような画像情報でも良い。あるいは、例えば、カウントダウンに従って砂が落下するように表示される砂時計表示であっても良い。運転者視線方向情報Hは、インジケータが投影されるフロントガラス72上の位置を決定するために使用される。
【0058】
運転モード切替制御装置6は、運転モードの切り替えを統括的に制御する装置であり、制御ユニット61、入出力インタフェースユニット62、および記憶ユニット63を備える。
【0059】
入出力インタフェースユニット62は、自動運転制御装置5から出力された手動運転切替要求情報Aを受信し、制御ユニット61へ出力する。自動運転制御装置5は、車両1の運転モードが自動運転モードから手動運転モードへ切り替わる場合、切り替えのための準備を開始するタイミング(例えば手動運転モードに切り替わる60秒前)において、手動運転切替要求情報Aを出力する。
【0060】
自動運転制御装置5が、手動運転切替要求情報Aを出力するタイミングの具体例を、予め設定された走行計画にしたがって高速道路を自動運転モードで走行している車両1が、一般道に入るまでの間に、手動運転モードへの切り替えを行う場合を例に説明する。
【0061】
自動運転制御装置5は、GPS受信機14によって車両1の位置を、車速センサ16によって車両1の速度を、常時把握している。したがって、予め設定された走行計画と、GPS受信機14によって把握された車両1の位置と、車速センサ16によって把握された車両1の速度とを考慮することにより、手動運転モードでの運転が必要な一般道に到達するまでの所要時間(例えば、あと300秒)を計算する。さらに、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えのための準備に要する時間(例えば、60秒)を所要時間から減算することにより、切り替えのための準備を開始するタイミング(例えば、300−60=240秒後)を決定する。そして、このタイミング(例えば、240秒後)になると、手動運転切替要求情報Aを出力する。
【0062】
なお、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えのための準備に要する時間(以下、「準備時間」とも称する)は、60秒に限定されるものではなく、他の時間でも良い。また、例えば、高速道路から一般道に出ることにより手動運転モードに切り替える場合には60秒、天候不良により切り替える場合には30秒、緊急事態により切り替える場合には4秒のように、自動運転制御装置5は、各ケースに応じて異なる準備時間を設定するようにしても良い。
【0063】
手動運転切替要求情報Aは、切り替えの理由を示す理由情報Sと、準備時間情報tとも含んでいる。
【0064】
理由情報Sは、例えば、高速道路から一般道へ入るための切り替えの場合はS1、天候不良による切り替えの場合はS2、緊急事態による切り替えの場合はS3、その他の場合はS3のように設定する。
【0065】
準備時間情報tは、準備時間の長さを例えば秒単位(例えば、60、30、4等)で示す。
【0066】
入出力インタフェースユニット62は、このように理由情報Sおよび準備時間情報tを含む手動運転切替要求情報Aを受信し、制御ユニット61へ出力する。
【0067】
入出力インタフェースユニット62はまた、運転者カメラ7から出力された映像信号Fを受信し、そのデジタルデータ(運転者監視映像データ)Gとして制御ユニット61へ出力する。
【0068】
入出力インタフェースユニット62はまた、制御ユニット61から出力された投影パターン情報Iおよび運転者視線方向情報Hを、プロジェクタ8へ出力する。入出力インタフェースユニット62はさらに、制御ユニット61から出力されたメッセージ情報Eをスピーカ9へ出力する。さらにまた、制御ユニット61から出力された運転モード切替制御信号Lを、自動運転制御装置5へ出力する。
【0069】
記憶ユニット63は、記憶媒体として、例えばSSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)等の随時書き込みおよび読み出しが可能な不揮発性メモリを使用しており、本実施形態を実現するために使用する記憶領域として、メッセージフォーマット情報記憶部631、運転者映像記憶部632、および投影パターン記憶部633を備えている。
【0070】
制御ユニット61は、コンピュータを構成するCPU(Central Processing Unit)およびプログラムメモリを有し、本実施形態を実現するために必要な制御機能として、運転モード切替信号受信部610、メッセージ情報作成部611、運転者映像取得部612、運転者視線方向判定部613、投影パターン制御部614、および運転モード切替信号出力部615を備えている。なお、これらの制御機能はいずれも上記プログラムメモリに格納されたプログラムを上記CPUに実行させることにより実現される。
【0071】
運転モード切替信号受信部610は、入出力インタフェースユニット62から出力された手動運転切替要求情報Aを受信すると、メッセージ情報作成部611の動作を開始するための起動信号Bを生成する。そして、起動信号Bを、手動運転切替要求情報Aに含まれる理由情報Sおよび準備時間情報tとともにメッセージ情報作成部611および運転者視線方向判定部613へ出力する。
【0072】
メッセージ情報作成部611は、運転モード切替信号受信部610から出力された起動信号B、理由情報S、および準備時間情報tを受信する。そして、理由情報Sに対応するメッセージフォーマット情報Cを、メッセージフォーマット情報記憶部631から取得する。
【0073】
メッセージフォーマット情報記憶部631は、理由情報Sに対応するメッセージフォーマット情報Cを予め記憶している。例えば、理由情報S1に対応するメッセージフォーマット情報C1は、「まもなく一般道に入ります。t秒後に、手動運転モードに切り替えます。それまでに、手動運転への準備を完了させて下さい」であり、理由情報S2に対応するメッセージフォーマット情報C2は、「天候不良により自動運転モードを継続できないので、t秒後に、手動運転モードに切り換えます。それまでに、手動運転の準備を完了させて下さい」であり、理由情報S3に対応するメッセージフォーマット情報C3は、「緊急事態発生により、t秒後に、手動運転モードに切り換えます。直ちに手動運転の準備を完了させて下さい」という具合である。
【0074】
メッセージ情報作成部611は、その後、取得したメッセージフォーマット情報Cの「t」に、準備時間情報tの値を適用する。これによって、例えば、理由情報S1、準備時間t(=60)であれば、「まもなく一般道に入ります。60秒後に、手動運転モードに切り替えます。それまでに、手動運転への準備を完了させて下さい」というメッセージ情報Eを作成する。メッセージ情報作成部611は、メッセージ情報Eを、入出力インタフェースユニット62へ出力する。
【0075】
入出力インタフェースユニット62は、メッセージ情報作成部611から出力されたメッセージ情報Eを受信し、スピーカ9へ出力する。これによって、スピーカ9から、「まもなく一般道に入ります。60秒後に、手動運転モードに切り替えます。それまでに、手動運転への準備を完了させて下さい」という音声メッセージが出力されるようになる。
【0076】
メッセージフォーマット情報記憶部631に、新たなメッセージフォーマット情報Cを追加したり、メッセージフォーマット情報記憶部631内の既存のメッセージフォーマット情報Cを更新することによって、様々なメッセージ情報Eの作成が可能となっている。
【0077】
運転者映像取得部612は、運転者監視映像データGを入出力インタフェースユニット62から取り込み、運転者監視映像データGを運転者映像記憶部632に記憶させる。
【0078】
運転者視線方向判定部613は、運転モード切替信号受信部610から出力された起動信号B、理由情報S、および準備時間情報tを受信する。そして、起動信号Bに応じて、運転者映像記憶部632に記憶された運転者監視映像データGの取得を開始し、取得した運転者監視映像データGに基づいて、運転者の視線方向を検出し、検出結果である運転者視線方向情報Hを、理由情報S、および準備時間情報tとともに投影パターン制御部614へ出力する。なお、運転者カメラ7によって運転者が撮影され、その運転者監視映像データGに基づいて、運転者視線方向判定部613によって運転者の視線方向が判定されるまでの処理は、極めて短時間で実施され、ほぼリアルタイムとみなすことができる。
【0079】
また、上記では、運転者映像取得部612からの運転者監視映像データGを、いったん運転者映像記憶部632に記憶させ、運転者視線方向判定部613は、運転者映像記憶部632から運転者監視映像データGを取得するとしている。しかしながら、運転者視線方向判定部613は、運転者監視映像データGを、運転者映像取得部612から直接取得し、直接取得した運転者監視映像データGに基づいて、運転者の視線方向を検出するようにしても良い。この場合は、運転者映像記憶部632は、省略されることが可能である。
【0080】
投影パターン制御部614は、運転者視線方向判定部613から出力された運転者視線方向情報H、理由情報S、および準備時間情報tを受信する。そして、これに応じて、準備時間情報tで定義された準備時間(例えば、60秒)からのカウントダウンを開始する。なお、カウントダウンは、通常、1秒毎になされるが、これに限るものではない。
【0081】
投影パターン制御部614はさらに、理由情報Sに応じて、投影パターン記憶部633から投影パターン情報Iを取得し、投影パターン情報Iを、運転者視線方向情報Hとともに入出力インタフェースユニット62へ出力する。入出力インタフェースユニット62は、投影パターン情報Iおよび運転者視線方向情報Hをプロジェクタ8へ出力する。
【0082】
投影パターン情報Iは、プロジェクタ8から投影される、カウントダウンの状態を示すインジケータを定義した情報であって、インジケータは、カウントに対応する数値でもよいし、カウントダウンに従ってその一部が徐々に非表示となるような画像でも良い。
【0083】
プロジェクタ8は、運転者視線方向情報Hで指定された方向に投影方向を向け、投影パターン情報Iによって定義されたインジケータを投影する。
【0084】
インジケータYは、例えば、図2に例示するように、運転者視線方向とフロントガラス72との交点Xを中心とする半径r1の円と、半径r2の円との間に形成されるドーナッツ形状であっても良い。この場合、投影パターン情報Iは、図4に例示するように、円環部位の面積が、カウントダウンに従って徐々に減少するような、ドーナッツ形状のインジケータYを定義する。すなわち、ドーナッツ形状の円環部位が徐々に非表示となり、カウントダウンが終了すると、ドーナッツ形状が消滅するような定義となる。
【0085】
なお、半径r1は、運転者の前方確認を阻害しない程度に短い距離とする。
【0086】
このような投影パターンによれば、インジケータYは、運転者視線方向を遮らないので、運転者による前方確認を阻害せず、しかも、運転者は、インジケータYを直視せずとも、円環部位の面積が減少することを感知できるので、カウントダウンの進行を容易に認識する。
【0087】
なお、ドーナッツ形状のインジケータYは、カウントダウンに従って、図4のように時計回りに非表示になるものに限られるものではなく、例えば、その逆に、カウントダウンに従って、反時計回りに非表示になるような投影パターン情報Iを定義することもできる。
【0088】
また、インジケータYの形状は、ドーナッツ形状に限定されるものではなく、例えば、縦長または横長のバー形状であっても良く、カウントダウンに従って、バーの長さが短くなるような投影パターン情報Iを定義することもできる。あるいは、例えば、カウントダウンに従って砂が落下するように表示される砂時計表示とすることもできる。
【0089】
また、図5は、画像情報ではなく、数値表示としたインジケータZの表示例を示す図である。インジケータZとして数値表示を用いる場合であっても、運転者視線方向とフロントガラス72との交点Xから、運転者の前方確認を阻害しない程度に短い距離r1離れた場所に、カウントダウンを示す数値を表示するものとする。この場合、投影パターンは、カウントダウンに従って数が減少する数値であるインジケータを定義する。
【0090】
このような投影パターンによっても、インジケータZは、運転者視線方向を遮らないので、運転者による前方確認を阻害せず、しかも、運転者は、インジケータZを直視せずとも、遠目で数値を読み取ることができるので、カウントダウンの進行を容易に認識する。
【0091】
なお、運転者の視線方向が変化すると、それが運転者カメラ7によって撮影され、結果的に、プロジェクタ8に入力される運転者視線方向Hも変化するので、インジケータY、Zの表示される位置も、図6(a)および図6(b)に示すように、それに連動して移動する。よって、運転者は、視線方向を変えても、同様にカウントダウンの進行を認識する。
【0092】
投影パターン記憶部633は、投影パターン情報Iを記憶している。
【0093】
投影パターン記憶部633に、新たな投影パターン情報Iを追加したり、投影パターン記憶部632内の既存の投影パターン情報Iを更新することによって、様々な投影パターンを定義することが可能となっている。
【0094】
投影パターン制御部614は、投影パターン記憶部633から、任意の投影パターン情報Iを取得することが可能であるが、デフォルトで設定されている、または、運転者によって予め選択されている投影パターン情報Iを取得することが好ましい。なぜなら、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えが行われる度に、カウントダウンの進行に従って毎回異なる投影パターン情報Iに従って投影されれば、運転者が戸惑う恐れもあるからである。したがって、デフォルトで何れかの投影パターン情報Iを設定しておき、運転者からの変更要求がない限り、投影パターン制御部614は、デフォルトで設定された投影パターン情報Iを取得し続けるのが良い。
【0095】
なお、カウントダウンの進行を、より明確に運転者に対して認識させるために、インジケータX、Yの色を、カウントダウンに従って変化させるようにしても良い。
【0096】
さらには、インジケータの色は、同一色に限定されるものではない。例えば、カウントダウンの進行状況を、より明確に具体的に運転者に対して認識させるために、インジケータのうち、最初に非表示とされる1/3の領域を青色で投影し、次いで非表示とされる1/3の領域を黄色で投影し、最後に非表示とされる1/3の領域を赤色で投影するようにしても良い。
【0097】
このように、運転モード切替制御システム10は、自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための表示装置として機能する。
【0098】
カウントダウンが終了すると、投影パターン制御部614は、運転モード切替信号出力部615へ動作信号Kを出力する。
【0099】
これに応じて、運転モード切替信号出力部615は、運転モードの自動運転モードから手動運転モードへの切り替えを要求するための運転モード切替制御信号Lを、入出力インタフェースユニット62へ出力する。入出力インタフェースユニット62は、前述したように、運転モード切替制御信号Lを、自動運転制御装置5へ出力する。
【0100】
自動運転制御装置5は、運転モード切替制御信号Lを受信すると、運転モードを自動運転モードから手動運転モードへと切り替える。
【0101】
(動作)
次に、本実施形態に係る表示装置の動作について説明する。前述したように、本実施形態に係る表示装置は、運転モード切替制御システム10によって実現される。したがって、以下では、運転モード切替制御システム10の動作について説明する。本実施形態に係る表示装置の動作説明は、運転モード切替制御システム10の動作説明に含まれる。
【0102】
図7および図8は、本実施形態における運転モード切替制御システム10の動作例を示すフローチャートである。
【0103】
本実施形態における運転モード切替制御システム10では、例えばダッシュボード70上のように、運転者を撮像できる場所に配置されている運転者カメラ7によって、常時運転者が撮像され、その映像信号Fが、運転モード切替制御装置6へ出力される。そして、この映像信号Fのデジタルデータである運転者監視映像データGが、入出力インタフェース62によって、運転者映像取得部612へ出力され、さらに運転者映像取得部612から運転者映像記憶部632へ出力され、運転者映像記憶部632に記憶されている。
【0104】
一方、車両1が自動運転モードで走行している状態から、手動運転モードへの切り替えが必要な場合、切り替えのための準備を開始するタイミングにおいて、自動運転制御装置5から、運転モード切替制御システム10へ手動運転切替要求情報Aが出力される。手動運転切替要求情報Aには、切り替えの理由を示す理由情報Sと、準備時間情報tが含まれている。手動運転切替要求情報Aは、入出力インタフェースユニット62によって受信され、運転モード切替信号受信部610へ出力される(S1)。
【0105】
運転モード切替信号受信部610では、入出力インタフェースユニット62から出力された手動運転切替要求情報Aが受信されると、メッセージ情報作成部611の動作を開始するための起動信号Bが生成される。起動信号Bは、手動運転切替要求情報Aに含まれる理由情報Sおよび準備時間情報tとともに、運転モード切替信号受信部610から、メッセージ情報作成部611および運転者視線方向判定部613へ出力される(S2)。
【0106】
メッセージ情報作成部611では、運転モード切替信号受信部610から出力された起動信号B、理由情報S、および準備時間情報tが受信される。メッセージ情報作成部611ではさらに、理由情報Sに対応するメッセージフォーマット情報Cが、メッセージフォーマット情報記憶部631から取得される(S3)。例えば、理由情報S1に対応するメッセージフォーマット情報C1は、「まもなく一般道に入ります。t秒後に、手動運転モードに切り替えます。それまでに、手動運転への準備を完了させて下さい」である。
【0107】
なお、メッセージフォーマット情報記憶部631に、新たなメッセージフォーマット情報Cを追加したり、メッセージフォーマット情報記憶部631内の既存のメッセージフォーマット情報Cを更新することによって、メッセージ情報作成部611は、様々なメッセージ情報Eを作成することが可能となる。
【0108】
メッセージ情報作成部611では、メッセージフォーマット情報Cの「t」に、準備時間情報tの値が適用される。これによって、例えば、理由情報S1、準備時間情報t(=60)であれば、「まもなく一般道に入ります。60秒後に、手動運転モードに切り替えます。それまでに、手動運転への準備を完了させて下さい」というメッセージ情報Eが作成される(S4)。
【0109】
このようなメッセージ情報Eは、メッセージ情報作成部611から、入出力インタフェースユニット62へ出力され、さらに、入出力インタフェースユニット62から、スピーカ9へ出力される。これによって、スピーカ9から、「まもなく一般道に入ります。60秒後に、手動運転モードに切り替えます。それまでに、手動運転への準備を完了させて下さい」という音声メッセージが出力される(S5)。
【0110】
一方、運転者視線方向判定部613では、運転モード切替信号受信部610から出力された起動信号B、理由情報S、および準備時間情報tが受信される。この起動信号Bに応じて、運転者映像記憶部632から、運転者監視映像データGが取得され、取得した運転者監視映像データGに基づいて、運転者の視線方向が検出される。そして、その検出結果である運転者視線方向情報Hが、理由情報S、および準備時間情報tとともに投影パターン制御部614へ出力される(S6)。なお、運転者カメラ7によって運転者が撮影され、その運転者監視映像データGに基づいて、運転者視線方向判定部613によって運転者の視線方向が判定されるまでの処理は、極めて短時間で実施され、ほぼリアルタイムとみなされる。
【0111】
なお、運転者視線方向判定部613は、運転者監視映像データGを、運転者映像取得部612から直接取得し、直接取得した運転者監視映像データGに基づいて、運転者の視線方向を検出するようにしても良い。
【0112】
運転者視線方向判定部613から出力された検出結果である運転者視線方向情報H、理由情報S、および準備時間情報tは、投影パターン制御部614によって受信される。
【0113】
投影パターン制御部614では、理由情報Sに応じて、投影パターン記憶部633から投影パターン情報Iが取得され、投影パターン情報Iが、運転者視線方向情報Hとともに入出力インタフェースユニット62へ出力される。さらに、投影パターン情報Iおよび運転者視線方向情報Hが、入出力インタフェースユニット62によってプロジェクタ8へ出力される。これに応じてプロジェクタ8の投影方向が、運転者視線方向情報Hで指定された方向に向けられる。その後、プロジェクタ8から、投影パターン情報Iに従ってインジケータの投影が開始される(S7)。
【0114】
ステップS3〜S5の動作と、ステップS6〜S7の動作とは並行して行われ、ステップS5において、スピーカ9から音声メッセージが出力されるのと、ステップS7において、インジケータの投影が開始されるのとは、ほぼ同時である。
【0115】
その後、投影パターン制御部614では、準備時間情報tで定義された準備時間(例えば、60秒)からのカウントダウンが開始される(S8)。
【0116】
インジケータYは、例えば、図2に例示するように、運転者視線方向とフロントガラス72との交点Xを中心とする半径r1の円と、半径r2の円との間に形成されるドーナッツ形状であっても良い。なお、半径r1は、運転者の前方確認を阻害しない程度に十分短い距離である。
【0117】
この場合、図4に例示するように、カウントダウンが進行する(S9)と、カウントダウンに従って、ドーナッツ形状のインジケータYの円環部位が徐々に非表示となり、カウントダウンが終了する(S10:Yes)と、インジケータYは消滅する(S11)。
【0118】
このような投影パターンによれば、インジケータYは、運転者視線方向を遮らないので、運転者による前方確認を阻害せず、しかも、運転者は、インジケータYを直視せずとも、円環部位の面積が減少することを感知できるので、カウントダウンの進行を容易に認識することができる。
【0119】
また、図5のように、画像情報ではなく、数値であるインジケータZを表示する場合であっても、運転者視線方向とフロントガラス72との交点Xから、運転者の前方確認を阻害しない程度に十分短い距離r1離れた場所に、カウントダウンを示す数値が表示され、カウントダウンに従って、数値も減少し、カウントダウンが終了すると、「0」を表示し、その後は、数値表示が消える。
【0120】
このような投影パターンによっても、インジケータZは、運転者視線方向を遮らないので、運転者による前方確認を阻害せず、しかも、運転者は、インジケータZを直視せずとも、遠目で数値を読み取ることができるので、カウントダウンの進行を容易に認識することができる。
【0121】
なお、運転者の視線方向が変化すると、それが運転者カメラ7によって撮影され、結果的に、プロジェクタ8に入力される運転者視線方向Hも変化するが、インジケータYの表示される位置も、図6(a)および図6(b)に示すように、それに連動して移動するので、運転者は、視線方向を変えても、同様にカウントダウンの進行を認識することができる。
【0122】
このように、運転モード切替制御システム10は、自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための表示装置として機能し、インジケータYの投影が開始されることによって、カウントダウンの開始が、インジケータYが徐々に非表示となることによって、カウントダウンの進行が、インジケータYが非表示となることよって、カウントダウンの終了が、運転者によって把握される。
【0123】
同様に、数値を表示するインジケータZの場合であっても、インジケータZの投影が開始されることによって、カウントダウンの開始が、運転者によって把握される。また、インジケータZの数値が変化することによって、カウントダウンの進行が、運転者によって把握される。さらに、インジケータZの数値がゼロを示し、非表示となることよって、カウントダウンの終了が、運転者によって把握される。
【0124】
このようにカウントダウンが終了すると、投影パターン制御部614から、運転モード切替信号出力部615へ動作信号Kが出力される。これに応じて、運転モード切替信号出力部615からは、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えを要求するための運転モード切替制御信号Lが、入出力インタフェースユニット62へ出力され、さらに入出力インタフェースユニット62から、自動運転制御装置5へ出力される。これによって、自動運転制御装置5によって、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えが実施される(S12)。
【0125】
(効果)
上述したように、本実施形態に係る表示装置を実現する運転モード切替制御システム10は、自動運転モードで走行している車両1の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示することができる。
【0126】
すなわち、インジケータY、Zの投影を開始することによって、運転者に対して、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えのための準備を開始する必要があることを認識させることができる。また、カウントダウンの進行に従って、インジケータYの一部を非表示にする、あるいは、インジケータZの数値を変化させることによって、運転者に対して、カウントダウンの進行を認識させることができる。さらに、インジケータYを非表示にする、あるいは、インジケータZの数値としてゼロを表示し、直後に非表示にすることによって、運転者に対して、カウントダウンの終了を認識させることができる。
【0127】
また、インジケータY、Zは、運転者視線方向を遮らないので、運転者による前方確認を阻害せず、しかも、運転者は、インジケータY、Zを直視せずとも、インジケータY、Zの変化を遠目で見ることができるので、カウントダウンの進行を容易に認識することが可能である。
【0128】
さらには、運転者の視線方向が変化すると、それが運転者カメラ7によって撮影され、結果的に、プロジェクタ8に入力される運転者視線方向Hも変化するので、インジケータY、Zの表示される位置も、図6(a)および図6(b)に示すように、それに連動して移動する。よって、運転者は、視線方向を変えても、同様にカウントダウンの進行を認識することができる。
【0129】
以上のことから、運転者は、カウントダウンが終了する前に、手動運転に対する準備を、余裕をもって完了させることが可能となり、手動運転への安全な引き継ぎを実現することが可能となる。
【0130】
(変形例)
上記実施形態では、プロジェクタ8から、フロントガラス72上にインジケータY、Zを投影表示する構成について説明したが、本発明は、このような構成に限定される訳ではなく、図9に示すように、フロントガラス72と、運転者との間に、透明な表示パネル74を備え、フロントガラス72の代わりに、この透明な表示パネル74上にインジケータY、Zを投影表示するようにしても良い。
【0131】
また、上記実施形態では、プロジェクタ8を用いてインジケータY、Zを投影する構成について説明したが、本発明は、このような構成に限定される訳ではなく、フロントガラス72として、ディスプレイ機能付フロントガラスを採用し、図10に示すように、入出力インタフェースユニット62から出力される投影パターン制御部614からの運転者視線方向情報Hおよび投影パターン情報Iに従って、ディスプレイ80として機能するフロントガラス72上にインジケータY、Zを表示させるようにすることによって、プロジェクタ8を使用せずに実現することも可能である。
【0132】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0133】
[付記1]
自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための装置であって、
検出部と、制御プロセッサとを備え、
前記制御プロセッサは、
前記検出部に対して、前記車両の運転者の視線方向を検出させ、
前記車両のフロントガラス上の、前記検出部によって検出された視線方向を遮らない部位に、前記カウントダウンの状態を示すインジケータが表示されるように制御する、表示装置。
【0134】
[付記2]
自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための装置であって、
検出部と、前記車両のフロントガラスと前記運転者との間に設けられた表示パネルと、制御プロセッサとを備え、
前記制御プロセッサは、
前記検出部に対して、前記車両の運転者の視線方向を検出させ、
前記表示パネル上の、前記検出部によって検出された視線方向を遮らない部位に、前記カウントダウンの状態を示すインジケータが表示されるように制御する、表示装置。
【0135】
[付記3]
自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための方法であって、
検出部を用いて、前記車両の運転者の視線方向を検出し、
プロセッサを用いて、前記車両のフロントガラス上の、前記検出された視線方向を遮らない部位に、前記カウントダウンの状態を示すインジケータが表示されるように制御する、表示方法。
【0136】
[付記4]
自動運転モードで走行している車両の運転モードを手動運転モードに切り替えるまでのカウントダウンの状態を表示するための方法であって、
検出部を用いて、前記車両の運転者の視線方向を検出し、
プロセッサを用いて、前記車両のフロントガラスと、前記運転者との間に設けられた表示パネル上の、前記検出された視線方向を遮らない部位に、前記カウントダウンの状態を示すインジケータが表示されるように制御する、表示方法。
【符号の説明】
【0137】
1…車両、2…パワーユニット、3…操舵装置、4…ステアリングホイール、5…自動運転制御装置、6…運転モード切替制御装置、7…スピーカ、8…プロジェクタ、10…運転モード切替制御システム、11…ステアリングセンサ、12…アクセルペダルセンサ、13…ブレーキペダルセンサ、14…GPS受信機、15…ジャイロセンサ、16…車速センサ、61…制御ユニット、62…入出力インタフェースユニット、63…記憶ユニット、70…ダッシュボード、72…フロントガラス、74…表示パネル、80…ディスプレイ、100…運転モード切替制御システム、610…運転モード切替信号受信部、611…メッセージ情報作成部、612…運転者映像取得部、613…運転者視線方向判定部、614…投影パターン制御部、615…運転モード切替信号出力部、631…メッセージフォーマット情報記憶部、632…運転者映像記憶部、633…投影パターン記憶部。
図1
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図10