特許第6620818号(P6620818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6620818信号処理装置、スピーカ装置、および信号処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620818
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】信号処理装置、スピーカ装置、および信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   H03G 3/20 20060101AFI20191209BHJP
   H03G 3/30 20060101ALI20191209BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   H03G3/20 A
   H03G3/30 C
   H04R3/00 310
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-536096(P2017-536096)
(86)(22)【出願日】2015年8月24日
(86)【国際出願番号】JP2015073712
(87)【国際公開番号】WO2017033259
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2018年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 訓史
(72)【発明者】
【氏名】村松 未輝雄
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/041717(WO,A1)
【文献】 特開2009−141670(JP,A)
【文献】 特開2011−155437(JP,A)
【文献】 特開2009−94684(JP,A)
【文献】 特開2009−17725(JP,A)
【文献】 特開平8−242173(JP,A)
【文献】 特開昭56−109012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03G1/00−11/08
H02J7/00−7/36
H04R3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から所定の電荷が供給され、当該電荷を保持する、充放電素子と、
入力信号のレベル制限を行い、前記電源又は前記充放電素子からの電力により駆動する増幅回路に出力信号を出力するレベル制限部と、
前記電源から前記充放電素子に供給される電荷量に対応する電荷と、前記出力信号に所定の係数を乗じて計算され、前記充放電素子で消費される電荷量に対応する消費電荷と、に基づいて前記充放電素子に現在充電されている電荷量を推定した値である電荷推定値を求め、該電荷推定値に基づいて前記レベル制限部の減衰率を設定する設定部と、
を備え
前記設定部は、前記電荷推定値が第1所定値未満となった場合、前記電荷推定値が低い値であるほど、前記レベル制限部の前記減衰率が大きくなるように、前記減衰率を設定することを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記電源から前記充放電素子に供給される電荷量に対応する前記電荷と、前記出力信号に前記所定の係数を乗算して計算される前記消費電荷と、の積算値に基づいて前記電荷推定値を求める、
請求項に記載の信号処理装置。
【請求項3】
請求項に記載の信号処理装置において、
前記設定部は、前記充放電素子の最大容量に基づいて、前記積算値の最大値を決定することを特徴とする信号処理装置。
【請求項4】
請求項または請求項に記載の信号処理装置において、
前記設定部は、前記積算値が前記第1所定値以上である場合に、前記減衰率を最小値に保持して、前記レベル制限を停止させることを特徴とする信号処理装置。
【請求項5】
請求項乃至請求項のいずれかに記載の信号処理装置において、
前記設定部は、前記積算値が前記第1所定値よりも低い第2所定値以下である場合に、前記減衰率を最大値に保持する、
信号処理装置。
【請求項6】
請求項に記載の信号処理装置において、
前記減衰率の前記最大値は、前記出力信号に前記所定の係数を乗算して計算される前記消費電荷と、前記電源から前記充放電素子に供給される電荷量に対応する電荷と、が同じ値である、
信号処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の信号処理装置と、
前記レベル制限部に前記入力信号として音声信号を入力する入力部と、
前記出力信号を入力する前記増幅回路と、
前記増幅回路で増幅された後の音声信号を入力するスピーカと、
を備えたスピーカ装置。
【請求項8】
入力信号のレベル制限を行い、電源又は充放電素子からの電力により駆動する増幅回路に出力信号を出力し、
前記電源から前記充放電素子に供給される電荷量に対応する電荷と、前記出力信号に所定の係数を乗算して計算され、前記充放電素子で消費される電荷量に対応する消費電荷と、に基づいて前記充放電素子に現在充電されている電荷量を推定した値である電荷推定値を求め、該電荷推定値に基づいて前記レベル制限における減衰率を設定
前記電荷推定値が第1所定値未満となった場合、前記電荷推定値が低い値であるほど、前記減衰率が大きくなるように、前記減衰率を設定する、
信号処理方法。
【請求項9】
前記電源から前記充放電素子に供給される電荷量に対応する前記電荷と、前記出力信号に前記所定の係数を乗算して計算される前記消費電荷と、の積算値に基づいて前記電荷推定値を求める、
請求項に記載の信号処理方法。
【請求項10】
請求項に記載の信号処理方法において、
前記充放電素子の最大容量に基づいて、前記積算値の最大値を決定する、
信号処理方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の信号処理方法において、
前記積算値が前記第1所定値以上である場合に、前記減衰率を最小値に保持して、前記レベル制限を停止させることを特徴とする信号処理方法。
【請求項12】
請求項9乃至請求項11のいずれかに記載の信号処理方法において、
前記積算値が前記第1所定値よりも低い第2所定値以下である場合に、前記減衰率を最大値に保持する、
信号処理方法。
【請求項13】
請求項12に記載の信号処理方法において、
前記減衰率の前記最大値は、前記出力信号に前記所定の係数を乗算して計算される前記消費電荷と、前記電源から前記充放電素子に供給される電荷量に対応する電荷と、が同じ値である、
信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号のレベル制限を行う信号処理装置、スピーカ装置、および信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
USB規格は、1つの物理インタフェースにより、データの送受信と電力の供給を行うことができる。しかし、USB規格では、定められた電流(例えば500mA程度)しか供給できない。したがって、例えばパワーアンプのように、瞬間的に大電流が必要となる機器においては、電力供給量が不足することがあった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、コンデンサを接続することで、USBバスパワーによる電力供給においても、瞬間的に大電流を供給することができる電子機器が開示されている。特許文献1の電子機器は、コンデンサの電圧を検出し、検出した電圧値に応じてパワーアンプに入力される信号のレベル制限を行うことで、パワーアンプが停止することを防止している。
【0004】
また、従来から、過電流を防止するために、入力信号のレベル制限を行う装置が知られている。例えば、特許文献2の増幅回路は、電流検出回路で負荷回路の出力電流を検出し、振幅制御回路で負荷回路の出力電流に応じたレベル制限を行う。
【0005】
また、特許文献3の増幅装置は、負荷回路(増幅回路)の出力電流と電源電圧とを検出し、クリップ検出基準レベルを決定する。そして、入力信号のレベルがクリップ検出基準レベルよりも大きい場合、入力信号のレベル制限を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−94684号公報
【特許文献2】特開昭59−40713号公報
【特許文献3】特開2009−159433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の装置は、負荷回路の出力電流、電源電圧、またはコンデンサの電圧を検出する新たなハードウェアが必要になる。
【0008】
そこで、この発明の目的は、新たなハードウェアを設けることなくレベル調整を行うことができる信号処理装置スピーカ装置、および信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
信号処理装置は、入力信号のレベル調整を行うレベル調整部と、充放電素子に供給される電荷と、前記レベル調整部がレベル調整を行った後の入力信号のレベルから計算される消費電荷と、に基づいて前記充放電素子の電荷量を推定した値である電荷推定値を求め、該電荷推定値に基づいて前記レベル調整部の調整率を設定する設定部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
すなわち、設定部は、後段の負荷回路(例えば増幅回路)に入力する入力信号のレベルから消費電荷を計算し、充放電素子(例えばコンデンサ)における現在の電荷量を推定する。そして、設定部は、推定した現在の電荷量に応じて入力信号の減衰率を設定する。設定部は、レベル制限を行った後の入力信号のレベルから計算を行うだけであるため、コンデンサの電圧を直接検出する必要がない。また、設定部は、負荷回路の出力電流を直接検出する必要もなく、電源電圧を直接測定する必要もない。したがって、信号処理装置は、負荷回路の出力電流、電源電圧、およびコンデンサの電源を検出する新たなハードウェアを設ける必要がない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、新たなハードウェアを設けることなくレベル調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】音声会議システムの構成を示すブロック図である。
図2】スピーカ装置の構成を示すブロック図である。
図3】信号処理回路の構成を示すブロック図である。
図4】変換テーブルの一例を示す図である。
図5】ゲインテーブルの一例を示す図である。
図6】ゲインテーブルの一例を示す図である。
図7】ゲインテーブルの一例を示す図である。
図8】ゲインテーブルの一例を示す図である。
図9図9(A)は、変換テーブルの一例を示す図であり、図9(B)は、ゲインテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、音声会議システムの構成を示すブロック図である。音声会議システムは、インターネット5を介して接続されるパーソナルコンピュータ(PC)2とPC3との間で、双方向に音声情報(パケット)を送受信して音声会議を行う。
【0014】
PC2には、音響装置1が接続されている。音響装置1とPC2とは、例えばUSBインタフェースを介して接続されている。PC2は、PC3から受信したパケットをデコードして、デジタル音声信号に変換する。PC2は、当該デジタル音声信号を音響装置1に入力する。また、PC2は、USBバスパワーにより、音響装置1に電力を供給する。
【0015】
図2は、音響装置1の主要構成を示すブロック図である。音響装置1は、入力インタフェース(I/F)11、DSP12、増幅回路13、スピーカ14、コンデンサ15、および電流制限回路16を備えている。なお、本実施形態では音響装置1は、マイクが設けられていないスピーカ装置であるが、実際には音響装置1は、不図示のマイクを備え、当該マイクが収音した音声に係るデジタル音声信号をPC2に出力する機能を備えている。
【0016】
入力I/F11は、例えばUSBインタフェースである。入力I/F11は、PC2からデジタル音声信号(Input signal)を入力する。また、入力I/F11は、PC2から供給される電流(Power)を、電流制限回路16を介して増幅回路13に供給する。また、入力I/F11は、増幅回路13のグランド線(GND)に接続され、PC2を介して接地を行う。
【0017】
なお、USBインタフェースは、1つの物理インタフェースにより、信号の入出力および電力の供給を行うが、信号の入出力および電力の供給は、それぞれ別の物理インタフェースを介して行ってもよい。ただし、音響装置1は、USBインタフェースを用いることで、1つの物理インタフェースだけでPC2に接続することができる。したがって、利用者にとっては、より簡易に音声会議を行うことができる。
【0018】
DSP12は、本発明の信号処理装置の一例である。DSP12は、入力されたデジタル音声信号に各種の処理(この例では、レベル制限処理)を行う。DSP12は、レベル制限を行った後のデジタル音声信号を、増幅回路13に出力する。
【0019】
増幅回路13は、コンデンサ15または電流制限回路16から供給される電力により、DSP12から出力されるデジタル音声信号を増幅する。そして、増幅回路13は、増幅後のデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換し、スピーカ14を駆動する。これにより、音響装置1は、遠隔地のPC3から送信された音声を、PC2および音響装置1の利用者に対して聴取させることができる。
【0020】
電流制限回路16は、PC2から供給される電流を所定の電流値に制限する。電流制限回路16は、例えばUSB規格に準ずる場合、PC2から供給される電流を500mAの電流値に制限する。
【0021】
電流制限回路16には、コンデンサ15および増幅回路13が接続されている。コンデンサ15は、本発明の充放電素子の一例であり、電流制限回路16から供給される電荷を保持する。なお、充放電素子は、コンデンサに限るものではなく、例えば二次電池であってもよい。
【0022】
次に、図3は、DSP12の機能ブロック図である。DSP12は、機能的に、レベル制限部120と、設定部150と、を備えている。
【0023】
レベル制限部120は、入力信号のレベル制限を行うコンプレッサである。レベル制限部120は、絶対値化処理部(ABS)121、ピークホールド処理部122、ゲインテーブル123、平滑処理部124、およびゲイン調整器125を備えている。
【0024】
DSP12に入力されたデジタル音声信号は、ゲイン調整器125に入力される。ゲイン調整器125は、設定された減衰率でデジタル音声信号のレベル制限を行う。ゲイン調整器125の減衰率は、ゲインテーブル123により決定される。レベル制限がされた後のデジタル音声信号は、後段の増幅回路13および設定部150に出力される。
【0025】
また、DSP12に入力されたデジタル音声信号は、ABS121にも入力される。ABS121は、入力されたデジタル音声信号の振幅値を絶対値化して、ピークホールド処理部122に出力する。
【0026】
ピークホールド処理部122は、ABS121から入力されたデジタル音声信号のレベル値を平滑化して、瞬時振幅から実効振幅に変換する。ピークホールド処理部122は、コンプレッサのディケイあるいはリリースタイムに対応する。ピークホールド処理部122により平滑化されたデジタル音声信号のレベル値は、ゲインテーブル123に入力される。
【0027】
ゲインテーブル123は、入力信号のレベル値に対する出力信号のレベル値を決定するテーブルであり、ゲイン調整器125の減衰率を設定する。詳細は後述する。ゲインテーブル123により決定された減衰率は、平滑処理部124に入力される。
【0028】
平滑処理部124は、1次のIIRローパスフィルタである。平滑処理部124は、コンプレッサにおけるアタック時定数に対応する。アタック時定数は、レベル制限の処理が効き始める早さを表す。レベル制限の処理が即座に開始されると、音声が歪んで音質が低下する。そのため、レベル制限部120は、平滑処理部124において平滑化することが好ましい。
【0029】
次に、設定部150は、レベル制限部120におけるゲインテーブル123を設定する機能部である。設定部150は、コンデンサ15に供給される電荷と、レベル制限部120でレベル制限がされた後のデジタル音声信号のレベルから計算される消費電荷と、の積算値に応じてゲインテーブル123を設定する。設定部150は、加算器151、乗算器152、乗算器153、変換テーブル154、下限設定部(Max)155、および上限設定部(Min)156を備えている。
【0030】
まず、乗算器152には、ゲイン調整器125でレベル制限がされた後のデジタル音声信号が入力される。ただし、図示は省略するが、乗算器152には、1サンプル(または複数サンプル)だけ遅延されたデジタル音声信号(1サンプル前のデジタル音声信号)が入力される。
【0031】
乗算器152は、入力されたデジタル音声信号に、消費電荷変換係数を乗算する。消費電荷変換係数は、デジタル音声信号のレベル(単位電圧)に対して、コンデンサ15で消費される電荷量が予め設定されている。これにより、乗算器152は、コンデンサ15の消費電荷を計算する。
【0032】
加算器151は、乗算器152で計算されたコンデンサ15の消費電荷と、コンデンサ15に供給される電荷Q’[C]と、1サンプル(または複数サンプル)前の計算結果であるコンデンサ15の電荷推定値Q[C]と、を入力する。コンデンサ15の電荷推定値Q[C]の初期値は、0[C]である。コンデンサ15に供給される電荷Q’[C]は、定数で表される。この例では、電荷Q’[C]は、電流500mAが供給された時に1サンプルの時間で供給される電荷量に対応する。消費電荷は、上述のように、増幅回路13に供給されるデジタル音声信号のレベルにより変化する。
【0033】
加算器151は、1サンプル前の計算結果である、現在のコンデンサ15の電荷推定値Q[C]に、コンデンサ15に供給される電荷Q’[C]を加算し、かつ乗算器152で計算されたコンデンサ15の消費電荷を減算することで、現在のコンデンサ15の電荷推定値Q[C]を算出する。算出した電荷推定値Q[C]は、乗算器153および下限設定部155に入力される。
【0034】
下限設定部155は、電荷推定値Q[C]の最小値が0となるように、電荷推定値Q[C]が0未満であった場合に、当該電荷推定値Q[C]を0[Q]に設定する。また、上限設定部156は、電荷推定値Q[C]の最大値がコンデンサ15の最大容量に対応する電荷となるように、電荷推定値Q[C]がコンデンサ15の最大容量に対応する電荷よりも大きい場合に、当該電荷推定値Q[C]をコンデンサの最大容量に対応する電荷値[Q]に設定する。
【0035】
本実施形態におけるDSP12は、音声会議を行うためのスピーカ装置である音響装置1に内蔵される構成であるため、人の声に係る音声信号が入力される。音声会議では、人の声は、息継ぎ等を行うために、頻繁に途切れ、無音となる時間も長い。したがって、音響装置1は、瞬間的には大きなレベルの音声信号が入力されたとしても、コンデンサ15の電荷が最大値になる頻度が高い。このような状況に対応し、設定部150は、上限設定部156により、電荷推定値Q[C]の最大値がコンデンサ15の最大容量に対応する電荷となるように最大値を制限するため、計算した電荷推定値Q[C]と、実際のコンデンサの電荷量とは、大きくずれることがない。
【0036】
次に、乗算器153は、電荷推定値Q[C]に変換係数[V/C]を乗算することで、電荷推定値Q[C]をコンデンサ15の現在の電圧推定値[V]に変換する。当該電圧推定値[V]は、変換テーブル154に入力される。
【0037】
図4は、変換テーブルの一例を示す図である。同図に示すグラフの横軸は電圧[V]であり、縦軸は閾値[dB]である。横軸の電圧[V]は、上述の電圧推定値[V]に対応する。この例では、変換テーブル154は、電圧推定値[V]が5V以上となった場合、増幅回路13が安定的に駆動できる状態であるとして、閾値が最大値(Max)になるように設定されている。また、変換テーブル154は、増幅回路13が安定的に駆動できる最低電圧(この例では3V)と閾値の最小値(Min)とが対応付けられている。電圧値が3Vから5Vの間は、電圧の変化に比例して閾値が変化するように設定されている。
【0038】
このようにして、変換テーブル154に入力された電圧推定値[V]は、図4に示した変換テーブルにより、デジタル音声信号のレベル値に対応する閾値[dB]に変換される。
【0039】
変換テーブル154により変換された閾値[dB]は、ゲインテーブル123に入力される。図5(A)および図5(B)は、ゲインテーブルの一例を示す図である。図5(A)および図5(B)に示す横軸は、ゲインテーブル123に対する入力レベルの値[dB]を示し、縦軸は、ゲインテーブル123の出力レベルの値[dB]を示す。
【0040】
まず、図5(A)の例は、変換テーブル154により変換された閾値[dB]が最大値(Max)である場合のゲイン変換テーブルを示すものである。図5(A)に示すように、入力レベルの値がゲインテーブル123に閾値[dB]以上である場合には、出力レベルの値は、当該閾値[dB]に制限される。このようにしてゲインテーブル123で決定された減衰率が、平滑処理部124を介してゲイン調整器125に設定される。
【0041】
そして、図5(B)に示すように、コンデンサ15の電圧推定値[V]が低下した場合、変換テーブル154で示したように閾値[dB]も低下するため、出力レベルの値は、より低い値に制限される。また、図6に示すように、電圧推定値[V]が3Vとなった場合には、出力レベルの値は、閾値の最小値(Min)に制限される。すなわち、ゲイン調整器125の減衰率は、最大に設定される。
【0042】
ここで、図6に示す閾値の最小値(Min)は、増幅回路13が駆動してもコンデンサの電圧が低下しないレベルに設定されている。すなわち、ゲイン調整器125の減衰率は、乗算器152で計算される消費電荷と、コンデンサ15に供給される電荷Q’[C]と、が釣り合う値となっている。これにより、増幅回路13が安定的に駆動することができる状態が維持される。
【0043】
以上のようにして、設定部150は、増幅回路13に入力する音声信号のレベルから消費電荷を計算し、コンデンサ15における現在の電荷量を推定する。そして、設定部150は、推定したコンデンサ15の現在の電荷量に応じてゲイン調整器125の減衰率を設定する。設定部150は、ゲイン調整器125でレベル制限を行った後の入力信号のレベルから計算を行うだけであるため、コンデンサ15の電圧を直接検出する必要がない。また、設定部150は、増幅回路13の出力電流を直接検出する必要もなく、電源電圧を直接測定する必要もない。したがって、音響装置1は、増幅回路13の出力電流、電源電圧、およびコンデンサ15の電源を検出する新たなハードウェアを設ける必要がなく、コンデンサの状態に応じた適切なレベル制限を行うことができる。
【0044】
次に、図7(A)は、ゲインテーブルの変形例を示す図である。図5(A)、図5(B)、および図6においては、出力レベルの値が閾値に制限される例(DSP12がリミッタとして動作する例)を示したが、図7(A)の例では、入力レベルの値が閾値[dB]以上であった場合に、入力レベルのデシベル値の変動に対して出力レベルのデシベル値の変動がゼロより大きな所定割合(例えば1/10程度)になるよう出力レベルの値を制限する。これにより、音響装置1は、大音量域での歪みを低減し、より聴取者の違和感を低減することができる。
【0045】
また、図7(B)の例では、入力信号のレベルに対して、出力信号のレベルを持ち上げることで、低音量のレベルを大きくする態様である。この場合、音響装置1は、低音量域において、音声が聞き取り難い状況を防止することができる。
【0046】
また、図8に示すように、低音量域では入力レベルの値に対して、出力レベルの値を持ち上げる態様とし、かつ入力レベルの値が閾値[dB]以上であった場合に、入力レベルのデシベル値の変動に対して出力レベルのデシベル値の変動がゼロより大きな所定割合(例えば1/10程度)になるよう出力レベルの値を制限する態様としてもよい。
【0047】
図9(A)は、変換テーブルの変形例を示す図である。図9(A)の例では、変換テーブル154は、電圧推定値[V]の値が5V以上である場合に、閾値が0[dB]となるように設定されている。この場合、図9(B)に示すように、入力信号のレベルと出力信号のレベルは正比例する状態となる。すなわち、ゲイン調整器125に設定される減衰率は、最小値となり、レベル制限の処理が停止されることになる。したがって、コンデンサ15の電圧がある程度高い場合に、音質が全く変化しない状態となる。
【符号の説明】
【0048】
1…音響装置
2,3…PC
5…インターネット
11…入力I/F
12…DSP
13…増幅回路
14…スピーカ
15…コンデンサ
16…電流制限回路
120…レベル制限部
121…ABS
122…ピークホールド処理部
123…ゲインテーブル
124…平滑処理部
125…ゲイン調整器
150…設定部
151…加算器
152,153…乗算器
154…変換テーブル
155…下限設定部
156…上限設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9