特許第6620912号(P6620912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000002
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000003
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000004
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000005
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000006
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000007
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000008
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000009
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000010
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000011
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000012
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000013
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000014
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000015
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000016
  • 特許6620912-押し位置検出センサ及び電子機器 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620912
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】押し位置検出センサ及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20191209BHJP
   G01L 1/16 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   G06F3/041 602
   G06F3/041 420
   G01L1/16 A
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-523388(P2019-523388)
(86)(22)【出願日】2018年4月23日
(86)【国際出願番号】JP2018016397
(87)【国際公開番号】WO2018225407
(87)【国際公開日】20181213
【審査請求日】2019年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-110592(P2017-110592)
(32)【優先日】2017年6月5日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-193142(P2017-193142)
(32)【優先日】2017年10月3日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大寺 昭三
【審査官】 星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/196360(WO,A1)
【文献】 特開2014−235135(JP,A)
【文献】 特表2002−504223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G01L 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザからの押圧操作により変形する圧電フィルムと、
前記圧電フィルムの第一主面に形成された第一電極と、
前記圧電フィルムの前記第一主面に形成された第二電極と、
前記圧電フィルムの第二主面に形成された基準電極と、
を備え、
前記第一電極及び前記第二電極は、第一方向に並んで配置され、
前記第一電極及び前記第二電極の前記第一方向における幅の差は、前記第一方向に垂直な第二方向に沿って互いに異なり、
前記第一電極は、前記第二方向へ沿って面積が一様である押し位置検出センサ。
【請求項2】
前記第一電極は、所定の区分毎に前記第一方向に突出する複数の第一突出部を備え、
前記第二電極は、所定の区分毎に前記第一方向に突出する複数の第二突出部を備え、
前記第一突出部はそれぞれ同一の面積を有し、
前記第二突出部は前記第二方向へ沿って各第二突出部の面積が増加又は減少し、
前記第一突出部及び前記第二突出部は交互に前記第二方向へ沿って並ぶ請求項に記載の押し位置検出センサ。
【請求項3】
前記第二電極から出力される第二電圧に対する、前記第一電極から出力される第一電圧の比を算出することにより、前記圧電フィルムの押圧操作により変形する位置を検出する検出部を備えた請求項1又は2に記載の押し位置検出センサ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の押し位置検出センサを備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、パネル上での押し位置を検出する押し位置検出センサ及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、各種のディスプレイ画面を構成するパネルと、該パネル周縁の交差する少なくとも2辺に沿って各々固定された長尺状の圧電素子と、該パネルへの押圧力に起因する前記圧電素子の出力を基に該パネル中の押圧箇所を演算する押圧位置演算手段とを備えたタッチパネルが開示されている。特許文献1に記載のタッチパネルにおいては、ディスプレイ画面を構成するパネル周縁に沿って固定された長尺状の圧電素子を用いて、パネル上の押圧位置を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−86990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のタッチパネルにおいては、圧電素子を貼り付ける箇所がいずれの位置においても均一に変形する必要がある。例えば、圧電素子を貼り付ける箇所が位置によって変形具合が異なると、同じ強さで押しても生じる電圧は変形具合に影響される。また、仮に圧電素子を貼り付ける箇所においていずれの位置も均一に変形する場合であっても、ユーザの押す速度等によって、生じる電圧が影響を受ける場合がある。
【0005】
そこで、本発明の一実施形態の目的は、変形の具合や押す速度に影響されることなく、押圧操作を受け付けた位置を検知できる押し位置検出センサ及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る押し位置検出センサは、ユーザからの押圧操作により変形する圧電フィルムと、前記圧電フィルムの第一主面に形成された第一電極と、前記圧電フィルムの前記第一主面に形成された第二電極と、前記圧電フィルムの第二主面に形成された基準電極と、を備え、前記第一電極及び前記第二電極は、第一方向に並んで配置され、前記第一電極及び前記第二電極の前記第一方向における幅の差は、前記第一方向に垂直な第二方向に沿って互いに異なることを特徴とする。
【0007】
この構成では、圧電フィルムが押圧操作により変形するときに、第一方向に並んで配置されている第一電極及び第二電極は同時に電圧を出力する。第一電極及び第二電極から出力される電圧は、それぞれの電極の面積に対応する。前記第一電極及び前記第二電極の前記第一方向における幅の差は、前記第一方向に垂直な第二方向に沿って互いに異なる。第二方向における押圧操作を受け付ける位置がいずれの位置であっても、第一電極及び第二電極における押圧操作を受け付ける位置の幅の差が異なる。したがって、第一電極及び第二電極はそれぞれ異なる面積に応じた電圧を出力する。このため、第二電極から出力される電圧に対する、第一電極から出力される電圧の比を算出することにより、変形の具合や押す速度に影響されることなく、押圧操作を受け付けた位置を検知できる
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、変形の具合や押す速度に影響されることなく、押圧操作を受け付けた位置を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(A)は、第一実施形態に係る押し位置検出センサを備えた電子機器の斜視図である。図1(B)は、第一実施形態に係る筐体を説明するための図である。
図2図2は、図1(A)の破線楕円A1で囲んだ部分に対応する圧電素子を説明するための図である。
図3図3(A)は、第一実施形態に係る圧電素子の分解斜視図、図3(B)はその断面図である。
図4図4は、図1(A)の破線楕円A1で囲んだ部分に対応する電極を説明するための図である。
図5図5は第一実施形態に係る圧電フィルムを説明するための図である。
図6図6(A)は、第一実施形態に係る第一電極及び第二電極の押圧操作を受ける位置と発生電圧との関係を説明するための図である。図6(B)は、第一電極及び第二電極における発生電圧の比と押圧操作を受ける位置との関係を説明するための図である。
図7図7(A)〜(D)は、第一実施形態に係る第一電極及び第二電極の変形例を説明するための図である。
図8図8(A)〜(D)は、第一実施形態に係る第一電極及び第二電極の変形例を説明するための図である。
図9図9(A)は、第二実施形態に係る押し位置検出センサの第一電極及び第二電極を説明するための図である。図9(B)は、第二実施形態に係る第一電極及び第二電極における発生電圧の比と押圧操作を受ける位置との関係を説明するための図である。
図10図10は、実施例及び参考例に係る第一電極及び第二電極における発生電圧の比と押圧操作を受ける位置との関係を説明するための図である。
図11図11は、第三実施形態に係る押し位置検出センサを説明するための概念図である。
図12図12(A)は、第四実施形態に係る押し位置検出センサの第一電極及び第二電極を説明するための図である。図12(B)は、第四実施形態に係る押圧操作を受ける位置と圧電フィルムとの位置関係を説明するための図である。図12(C)は、第一電極及び第二電極における発生電圧の比と押圧操作を受ける位置との関係を説明するための図である。
図13図13(A)〜(C)は、第四実施形態に係る変形例を説明するための図である。
図14図14(A)は、第五実施形態に係る押し位置検出センサの第一電極及び第二電極を説明するための図である。図14(B)は、第五実施形態に係る圧電フィルムを説明するための図である。図14(C)は、第一電極及び第二電極における発生電圧と押圧操作を受ける位置との関係を説明するための図である。
図15図15(A)及び図15(B)は、第一実施形態に係る押し位置検出センサを備えた電子機器の別の一例の平面図である。
図16図16(A)は、第六実施形態に係る押し位置検出センサの第一電極及び第二電極を説明するための図である。図16(B)及び図16(C)は、第六実施形態に係る第一電極及び第二電極における発生電圧に基づく値と押圧操作を受ける位置との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1(A)は、第一実施形態に係る押し位置検出センサ100を備えた電子機器1の斜視図である。図1(B)は、第一実施形態に係る筐体2を説明するための図である。図2は、図1(A)の破線楕円A1で囲んだ部分に対応する圧電素子10を説明するための図である。図2は、筐体2を内側から見た図である。なお、図1(A)に示す電子機器1はあくまで一例であり、これに限るものではなく仕様に応じて適宜変更することができる。
【0011】
図1(A)及び図1(B)に示すように、電子機器1は、上面が開口した略直方体形状の筐体2を備える。電子機器1は、筐体2の上面の開口部に配置された平板状の表面パネル4を備える。表面パネル4は、ユーザが指やペンなどを用いてタッチ操作を行う操作面として機能する。筐体2は側面部3及び底面部7を備える。以下では、筐体2の幅方向(横方向)をX方向とし、長さ方向(縦方向)をY方向とし、厚み方向をZ方向として説明する。
【0012】
側面部3には第一押圧部51、第二押圧部52、及び第三押圧部53が形成されている。本実施形態では、第一押圧部51、第二押圧部52、及び第三押圧部53は平面視で矩形状であり、Y−Z平面においてY方向に並んで形成されている。また、本実施形態においては、3つの押圧部を形成しているがこれに限られず、押圧部は一つ以上形成されていればよい。なお、第一押圧部51、第二押圧部52、及び第三押圧部53は、Y−Z平面以外の箇所に形成されていてもよく、底面部7又は表面パネル4に形成されていてもよい。例えば、図1(A)の破線楕円A2で囲んだ部分にされていてもよい。また、表面パネル4のうち例えば表示部の周辺に第一押圧部51等を並べて配置する、すなわち表示部の周辺を囲むように配置することにより、表示部のどの位置を押したかを検知することができる。
【0013】
第一押圧部51、第二押圧部52、及び第三押圧部53は、側面部3の一部を色分けする、マークを付ける、又は周囲に溝を形成することなどによって、側面部3の他の部分と区別されている。また、第一押圧部51、第二押圧部52、及び第三押圧部53の形状は矩形状には限らず、円形、多角形、又は三角形状等別の形状であってもよい。さらに、第一押圧部51、第二押圧部52、及び第三押圧部53は、Y方向に並ぶことには限定されず、例えば、Z方向に並ぶ状態やY方向に対して斜めの方向であってもよい。
【0014】
図1(B)に示すように、筐体2内部には、押し位置検出センサ100が形成されている。押し位置検出センサ100は筐体2内部に形成されているため、押圧操作による摩擦を直接に受けないため耐久性に優れる。また、メカニカルスウィッチを設置するように側面部3に貫通孔を設ける必要がない。このため、複雑な構造が必要とされずに筐体2の薄型化が図れ、かつ貫通孔を通して外部から水分やほこりなどの異物が筐体2内部へ侵入することを防止できる。
【0015】
押し位置検出センサ100は、圧電素子10及び検出部18を備える。圧電素子10は、側面部3の内側8に配置されている。なお、押し位置検出センサ100は筐体2外部に形成されていてもよい。
【0016】
図2においては、第一押圧部51、第二押圧部52、及び第三押圧部53は、点線で示されている。図2に示すように、筐体2の側面部3を挟んで、第一押圧部51、第二押圧部52、及び第三押圧部53に対応する位置に、圧電素子10が配置されている。検出部18は、筐体2内部に配置され、不図示の配線で圧電素子10と接続されている。
【0017】
第一押圧部51、第二押圧部52、及び第三押圧部53にユーザが指やペンなどを用いてタッチ操作を行うと、圧電素子10に圧力が伝わる。このため、圧電素子10は、第一押圧部51、第二押圧部52、及び第三押圧部53で受け付けた操作に応じた電圧を出力する。検出部18は、圧電素子10が出力する電圧を検出する。なお、検出部18は、筐体2内部であればいずれの位置であっても構わない。
【0018】
図3(A)は、第一実施形態に係る圧電素子10の分解斜視図、図3(B)はその断面図である。図3(A)及び図3(B)に示すように、圧電素子10は、第一電極11、第二電極12、基準電極13、及び圧電フィルム14を備える。なお、図3(A)では、圧電素子10は、第一電極11、第二電極12、基準電極13、及び圧電フィルム14以外の図示は省略している。
【0019】
第一電極11及び第二電極12は、同一平面上に配置されている。圧電フィルム14は基準電極13に積層され、第一電極11及び第二電極12は、圧電フィルム14に積層されている。すなわち、第一電極11及び第二電極12は圧電フィルム14の第一主面141に、基準電極13は圧電フィルム14の第二主面142に形成されている。基準電極13及び圧電フィルム14は概ね同様の形状に形成されている。
【0020】
圧電素子10を平面視した時、基準電極13又は第一電極11及び第二電極12の対の少なくとも一方は、上面視で圧電フィルム14と完全に重なるか、圧電フィルム14より面方向内側に位置していると良い。これにより、電極の端部における短絡を抑制できる。また、基準電極13及び圧電フィルム14はそれぞれ、第一電極11及び第二電極12の形状に併せて二組形成されていてもよい。これにより、基準電極13及び圧電フィルム14のサイズを小さく形成することができるため、嵩張りを減らすことができる。
【0021】
第一電極11及び第二電極12は、Z方向に並んで配置されている。なお、第一電極11及び第二電極12は、いずれがZ方向上方であってもよい。第一電極11は、矩形状であり、Y方向へ沿ってZ方向の幅が均一に形成されている。第一電極11は、Y方向へ沿って所定の区分毎に区切ると、それぞれの所定の区分毎の面積が一様である。第二電極12は、Y方向へ沿ってZ方向の幅が変化する、すなわち区分毎の面積が変化する直角三角形状である。第二電極12は、二辺がそれぞれY方向又はZ方向へ平行である。第二電極12は、直角三角形状であるため、製造が容易である。なお、変形例で示すように、第二電極12は、Y方向へ沿って面積が変化すればよく、直角三角形状には限定されない。すなわち、第一電極11及び第二電極12のZ方向における幅の差は、Y方向に沿って互いに異なる。Y方向は本発明における第二方向に相当し、Z方向は本発明における第一方向に相当する。
【0022】
図4は、図1(A)の破線楕円A1で囲んだ部分に対応する第一電極11及び第二電極12を説明するための図である。図4は、筐体2を内側から見た図である。図4においては、第一押圧部51、第二押圧部52、及び第三押圧部53は、点線で示されている。また、図4においては、圧電素子10のうち第一電極11及び第二電極12のみを示す。
【0023】
図4に示すように、第一電極11は、Y方向へ沿ってZ方向の幅が均一である。このため、第一押圧部51、第二押圧部52、及び第三押圧部53に対応する箇所の第一電極11の面積は、それぞれ同一である。これに対して、第二電極12は、Y方向へ沿って面積が変化する。このため、第一押圧部51、第二押圧部52、及び第三押圧部53に対応する箇所の第二電極12の面積は、第一押圧部51から第三押圧部53へ向かって順に増加する。なお、第一電極11及び第二電極12は、第一押圧部51、第二押圧部52、及び第三押圧部53の形状に併せて適宜変更することも可能である。
【0024】
図5は第一実施形態に係る圧電フィルム14を説明するための図である。図5は、圧電フィルム14を平面視した図である。
【0025】
図5に示すように、圧電フィルム14はキラル高分子から形成されるフィルムであってもよい。キラル高分子として、第一実施形態では、ポリ乳酸(PLA)、特にL型ポリ乳酸(PLLA)を用いている。キラル高分子からなるPLLAは、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸されて分子が配向すると圧電性を有する。そして、一軸延伸されたPLLAは、圧電フィルム14の平板面が押圧されることにより、電圧を発生する。この際、発生する電圧量は、押圧量により平板面が当該平板面に直交する方向へ変位する変位量に依存する。
【0026】
第一実施形態では、圧電フィルム14(PLLA)の一軸延伸方向は、図5の矢印に示すように、Y方向及びZ方向に対して45度の角度を成す方向としている。この45度には、例えば45度±10度程度を含む角度を含む。これにより、圧電フィルム14が押圧されることにより電圧が発生する。
【0027】
PLLAは、延伸等による分子の配向処理で圧電性を生じ、PVDF等の他のポリマーや圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。すなわち、強誘電体に属さないPLLAの圧電性は、PVDF又はPZT等の強誘電体のようにイオンの分極によって発現するものではなく、分子の特徴的な構造である螺旋構造に由来するものである。このため、PLLAには、他の強誘電性の圧電体で生じる焦電性が生じない。焦電性がないため、ユーザの指の温度や摩擦熱による影響が生じないため、表面パネル4を薄く形成することができる。さらに、PVDF等は経時的に圧電定数の変動が見られ、場合によっては圧電定数が著しく低下する場合があるが、PLLAの圧電定数は経時的に極めて安定している。したがって、周囲環境に影響されることなく、押圧による変位を高感度に検出することができる。
【0028】
なお、圧電フィルム14は、PLLAに代えて、ポーリング処理を行ったPVDF又はPZT等のようなイオンが分極した強誘電体から形成されるフィルムからなるものであってもよい。
【0029】
圧電フィルム14の両主面に形成されている第一電極11、第二電極12、及び基準電極13は、アルミニウムや銅等の金属系の電極を用いるのが好適である。このような第一電極11、第二電極12、及び基準電極13を設けることで、圧電フィルム14が発生する電荷を電圧として取得でき、押圧量に応じた電圧値の押圧量検出信号を外部へ出力することができる。
【0030】
ここで、電子機器1が押圧操作を受けたときに発生する電圧及び位置の検出方法について説明する。図6(A)は、第一実施形態に係る第一電極11及び第二電極12の押圧操作を受ける位置と発生電圧との関係を説明するための図である。図6(B)は、第一電極11及び第二電極12における発生電圧の比と押圧操作を受ける位置との関係を説明するための図である。
【0031】
図6(A)及び図6(B)は、不図示のポリカーボネイトの平板に基準電極13、圧電フィルム14、並びに第一電極11及び第二電極12を積層したものを想定して電圧の測定をシミュレーションしたものである。第一電極11、第二電極12、基準電極13、及び圧電フィルム14はすべてY方向の両端において固定されている。ポリカーボネイトの平板は、100×100×1mmの形状を想定する。第一電極11及び第二電極12は、Y方向の幅が90mm、Z方向の最大幅が5mm、X厚みが0.5mmとなるように形成したものを想定する。なお、Y方向の中心の位置を0mmとして示す。押圧位置は、−45mm〜45mmである。
【0032】
この構成では、圧電フィルム14が押圧操作により変形したときに、Y方向に並んで配置されている第一電極11及び第二電極12は同時に電圧を出力する。第一電極11及び第二電極12から出力される電圧は、押圧操作を受け付けた位置の電極の面積、すなわちZ方向の幅にそれぞれ対応する。図4に示すように、第一電極11は、Y方向へ沿っていずれの位置においても幅が同一である。第一電極11は、Y方向へ沿って所定の区分毎に区切ると、それぞれの所定の区分毎の面積が一様である。このため、図6(A)に示すように、Y方向における押圧操作を受け付ける位置に応じて、該一様の面積に応じた電圧を出力する。例えば、押圧操作を受け付ける位置がY方向に0mmである場合、第一電極11から出力される電圧はマイナス方向に最大値となる。押圧操作を受け付ける位置がY方向に−45mm又は45mmである場合、圧電フィルム14は殆ど変形せず、第一電極11から出力される電圧はマイナス方向に最小値となる。ここで、第一電極11が出力する電圧をV1として表す。V1は、本発明における第一電圧に相当する。第一電極11は、Y方向の中心を境に二次曲線の電圧(V1)を出力する。
【0033】
これに対して、第二電極12はY方向へ沿って面積が変化する。このため、第二電極12はY方向における押圧操作を受け付ける位置及び面積に応じた電圧を出力する。圧電フィルム14が押圧操作により変形するとき、第一電極11及び第二電極12は同様に変形するが、変形を受ける場所の面積が異なる。これにより、第一電極11及び第二電極12それぞれの電極からの出力は、第一電極11及び第二電極12それぞれの変形を受けた面積比に応じた出力の比となる。ここで、第二電極12が出力する電圧をV2として表す。V2は、本発明における第二電圧に相当する。検出部18は、圧電素子10が出力する電圧(V1及びV2)を検出する。
【0034】
不図示の算出部は、第二電極12から出力される電圧(V2)に対する第一電極11から出力される電圧(V1)の比(μ)を算出する。比(μ)は、μ=V2/V1の式で算出される。図6(B)に示すように、比(μ)は、押圧位置がY方向のプラス方向へ移動するにつれて線形に減少する。このため、予め押圧位置と比(μ)とを対応付けた関係を記憶しておくことにより、算出部から得らえる比(μ)の値によってどの位置が押圧操作を受けたかを判別できる。
【0035】
第二電極12は、Y方向のプラス方向へ沿って線形にZ方向の幅が減少又は増加することが好ましい。第二電極12がY方向へ沿って単調にZ方向の幅が減少又は増加することにより、比(μ)は単調に減少又は増加する。これにより、押圧位置と比(μ)との関係が1対1となるため、比(μ)を得ることにより押圧位置を明確に検出することができる。したがって、第一押圧部51、第二押圧部52、又は第三押圧部53のうちのいずれかが押圧操作を受けた場合、それぞれに対応する位置の比(μ)が得られる。これにより、第一押圧部51、第二押圧部52、又は第三押圧部53のうちのいずれが押圧操作を受けたかを判別することができる。
【0036】
また、比(μ)によって押圧位置を検知するため、変形の具合や押す速度に影響されることを抑制できる。例えば、第一押圧部51、第二押圧部52、又は第三押圧部53において、第二押圧部52の位置が異なった素材で形成されたボタンである場合が挙げられる。第二押圧部52が堅く歪み難い素材で形成され、押圧操作を受けた場合第二押圧部52に対応する部分の圧電フィルム14の歪は小さい。このとき、V1及びV2は共に小さくなる。逆に第二押圧部52が柔らかく歪み易い素材で形成されたボタンである場合、V1及びV2は共に大きくなる。押圧位置を検知するためにはV1及びV2の比を算出するため、変形の具合が相殺され、押圧位置の変形の具合によっては影響を受けない。また、同様にユーザの押す速度や強さによっても、それぞれのV1及びV2の間で変形具合が相殺される。このため、ユーザの押す速度や強さによる影響を抑制することができる。
【0037】
図7(A)〜(D)及び図8(A)〜(D)は、第一実施形態に係る第一電極11及び第二電極12の変形例を説明するための図である。以下の変形例1〜8においても、第一実施形態の第一電極11及び第二電極12と同様にY方向のプラス方向に沿って押圧位置が移動すると、得られるV1及びV2の比(μ)が変化する。これにより、押圧位置を検出することができる。
【0038】
また、電極から少し離れた箇所を押した場合であっても、電極の存在する箇所を押した場合と同様に押圧位置を検出することができる。例えば、図7(A)の場合、Z軸方向のどの箇所に押圧を加えたとしても、Y軸方向の押圧位置を検知することができる。すなわち、電極形成部付近だけでなく、電極から少し離れた箇所を押した場合であっても、Y軸方向の押圧位置が分かる。これについては、後述の実施例において詳細に説明する。
【0039】
図7(A)に示すように、変形例1は、第一電極21及び第二電極22を備える。第一電極21は第一実施形態に係る第一電極11と同様のものである。第二電極22は、Z方向の幅がY方向のプラス方向に沿って増加する台形の形状である。変形例1においては、第二電極22は台形の形状でるため、Y方向のマイナス側の端部においてZ方向に幅がある。このため、Y方向のマイナス側の端部を押した場合でも、第二電極22からの出力が一定以上の大きさとなるため、端部においてより正確に押圧位置を検知することができる。
【0040】
図7(B)に示すように、変形例2は、第一電極23及び第二電極24を備える。第一電極23は第一実施形態に係る第一電極11と同様のものである。第二電極24は、Y方向のプラス方向に沿ってZ方向の幅が所定の区間毎に所定の割合で増加する形状である。
【0041】
図7(C)に示すように、変形例3は、第一電極25及び第二電極26を備える。第一電極25は第一実施形態に係る第一電極11と同様のものである。第二電極26は二等辺三角形に形成されており、Y方向のプラス方向に沿ってZ方向の幅が増加する形状である。
【0042】
図7(D)に示すように、変形例4は、第一電極27及び第二電極28を備える。変形例4の圧電素子は、円錐形の筐体71に貼り付けられている。第一電極27は、Z方向に対して幅が同一に形成されている。また、第二電極28は、概ね三角形状であり、周方向であるY方向のプラス方向に沿ってZ方向の幅が変化する形状である。
【0043】
図8(A)に示すように、変形例5は、第一電極31及び第二電極32を備える。第一電極31は、Z方向の幅がY方向のプラス方向に沿って増加する台形の形状である。第二電極32は、Z方向の幅がY方向のマイナス方向に沿って増加する台形の形状である。変形例5においては、図8(A)に示すように、他の辺に対する角度が垂直ではない辺同士が向かい合うように配置されることにより、第一電極31及び第二電極32は全体として概ね矩形状に形成されている。このためZ方向において無駄な領域が生じることがないため、押し位置検出センサ100の小型化が可能となる。
【0044】
図8(B)に示すように、変形例6は、第一電極33及び二枚の第二電極34を備える。第一電極33は、Z方向の幅がY方向のプラス方向に沿って増加する三角形状である。第二電極34は、Z方向の幅がY方向のマイナス方向に沿って増加する三角形状である。第一電極33から出力される電圧と、それぞれの第二電極34から出力される電圧との比が二つ得られるため、位置を検出する精度をさらに高めることができる。なお、第一電極33又は第二電極34はそれぞれ複数であっても単数であってもよい。
【0045】
図8(C)に示すように、変形例7は、第一電極35及び第二電極36を備える。第一電極35は、Z方向の幅がY方向のプラス方向に沿って増加する台形の形状である。第二電極36は、第一電極35を囲むような形状に形成されている。第二電極36は、Z方向の幅がY方向のマイナス方向に沿って増加する。したがって、第一電極35及び第二電極36のZ方向の幅がY方向に沿ってそれぞれ変化するため、Y方向における押圧位置を検知することができる。
【0046】
図8(D)に示すように、変形例8は、第一電極37及び第二電極38を備える。第一電極37及び第二電極38は、全体として矩形状であるが、第一電極37と第二電極38との近接する辺は曲線状に形成されている。したがって、第一電極37から出力される電圧は、Y方向のマイナス側では変化が比較的少なく、Y方向のプラス側に向かうほど変化を大きくすることができる。これにより、比(μ)の変化を大きくすることで短い移動でも高感度で検知できるよう形成することができる。
【0047】
図9(A)は、第二実施形態に係る押し位置検出センサ80の第一電極81及び第二電極82を説明するための図である。図9(B)は、第二実施形態に係る第一電極81及び第二電極82における発生電圧の比と押圧操作を受ける位置との関係を説明するための図である。なお、押し位置検出センサ80において、第一電極81及び第二電極82のみを示す。
【0048】
図9(A)に示すように、第二実施形態に係る押し位置検出センサ80は、第一電極81及び第二電極82を備える。第一電極81は、所定の区分毎にZ方向に突出する複数の第一突出部83を備える。第二電極82は、所定の区分毎にZ方向に突出する複数の第二突出部84を備える。複数の第一突出部83はそれぞれ同一の面積を有する。第二突出部84は、Y方向へ沿って各第二突出部84の面積が減少する。第一突出部83及び第二突出部84は交互にY方向へ沿って並ぶ。
【0049】
押し位置検出センサ80を、図9(A)に示すようにY方向へ均等な長さの区分R1、R2、及びR3に分ける。第一電極81の面積は、区分R1、R2、及びR3においてそれぞれ均一である。これに対して、Y方向へ沿って各第二突出部84の面積が減少するため、第二電極82の面積は、区分R1、R2、R3の順に減少する。
【0050】
押し位置検出センサ80において、図9(A)に示す矢印801のようにユーザが押し位置検出センサ80をY方向になぞると、ユーザの押圧操作の位置に応じて第一電極81及び第二電極82はそれぞれ電圧を出力する。第一電極81は区分R1、R2、及びR3においてそれぞれ面積が均一であるため、区分R1、R2、及びR3のいずれが押圧操作を受けた場合であても同様の電圧(V1)を出力する。これに対して、第二電極82の面積は区分R1、R2、R3の順に減少するため、第二電極82は、区分R1、R2、R3の順に出力する電圧(V2)は減少する。したがって、ユーザの押圧操作の位置が区分R1、R2、R3の順に移動するにつれ、図9(B)に示すように得られるV1及びV2の比μは段階的に減少する。ユーザが矢印801と逆の向きに押し位置検出センサ80をY方向になぞると、得られるV1及びV2の比μは段階的に増加する。したがって、押し位置検出センサ80においては、押した位置だけでなく、ユーザが押し位置検出センサ80をなぞる方向(こすり操作を受け付けた方向)を判別することができる。
【0051】
図10は、実施例1〜4及び参考例1、2に係る第一電極11及び第二電極12における発生電圧の比と押圧操作を受ける位置との関係を説明するための図である。以下、実施例1〜4及び参考例1、2について説明する。
【0052】
電圧の測定には、100×100×1mmのポリカーボネイトの平板に、基準電極13、圧電フィルム14、並びに第一電極11及び第二電極12を積層したものを使用した。第一電極11及び第二電極12は、Y方向の幅が90mm、Z方向の最大幅が5mm、X厚みが0.5mmとなるように形成したものを用いた。圧電フィルム14としては、PVDFをY方向の幅が90mm、Z方向の幅が10mm、X厚みが0.5mmとなるように形成した矩形状のフィルムを用いた。基準電極13としては、Y方向の幅が90mm、Z方向の幅が10mmとなるように形成した矩形状のものを用いた。
【0053】
実施例1として、第一電極11及び第二電極12のZ方向の中心をY方向に沿って、1000Pa程度の力で押圧しながら、押圧位置をY方向に沿って移動させ出力電圧を測定した。なお、Y方向の中心の位置を0mmとして示した。押圧位置は、−45mm〜45mmである。
【0054】
実施例2としては、押圧位置を第一電極11及び第二電極12のZ方向の中心からZ方向に10mmとして測定した。同様に、実施例3としてはZ方向の中心からZ方向に20mm、実施例4としてはZ方向の中心からZ方向に30mmとして測定した。また、参考例1として押圧位置が第一電極11及び第二電極12のZ方向の中心からZ方向に−10mm、参考例2としてはZ方向の中心からZ方向に−20mmとして測定した。
【0055】
図10に示すように、実施例1においては、比(μ)は、押圧位置がY方向のプラス方向へ移動するにつれて減少した。実施例2〜4において、すなわち押圧位置がZ方向の中心からZ方向に10mm〜30mmである場合、比(μ)は、実施例1より多少大きい値となるが、押圧位置がY方向のプラス方向へ移動するにつれて実施例1と同様に減少した。参考例1、2において、すなわち押圧位置がZ方向の中心からZ方向に−20mm〜−10mmである場合、比(μ)は、実施例より多少小さい値となり、押圧位置がY方向へ移動するにつれてY方向の0mm付近では実施例と同様に減少することが確認された。
【0056】
図11は、第三実施形態に係る押し位置検出センサ101を説明するための概念図である。第三実施形態に係る押し位置検出センサ101及び押し位置検出センサ102は、X-Y平面上の検知領域110における押圧位置を検出するセンサである。なお、図11において、検知領域110の一部は省略して示されている
図11に示すように、押し位置検出センサ101は、第一電極111、第二電極112、及び圧電フィルム114を備える。第一電極111は第一実施形態に係る第一電極11と同様のものである。第二電極112は、第一実施形態に係る第二電極12と同様のものである。第二電極112は、Y方向の幅がX方向のプラス方向に沿って増加する三角形状である。
【0057】
押し位置検出センサ102は、第一電極115、第二電極116、及び圧電フィルム117を備える。第一電極115は第一電極111と同様のものである。第二電極116は、Y方向の幅がX方向のマイナス方向に沿って増加する三角形状である。圧電フィルム117は圧電フィルム114と同様のものである。
【0058】
押し位置検出センサ101及び押し位置検出センサ102において、検知領域110に近い側に、矩形形状の第一電極111及び第一電極115が配置されている。このため、第一電極111及び第一電極115からの出力は、検知領域110のX方向に亘るいずれの位置が押圧操作を受け付けた場合であっても比較的均一な安定したものとなる。また、検知領域110に遠い側である筐体2の端部側に、三角形状の第二電極112及び第二電極116が配置されている。このため、第二電極112及び第二電極116は変形し易い。したがって、第二電極112及び第二電極116からの出力は、検知領域110のX方向に亘って変形の影響を受けやすくなる。第二電極112及び第二電極116からの出力は、X方向に亘って大きく変化する。これにより、押し位置検出センサ101及び押し位置検出センサ102において、X方向に亘って変化を精度よく検知することができる。
【0059】
押し位置検出センサ101及び押し位置検出センサ102において、第二電極112及び第二電極116の幅の広くなる向きは逆である。これにより、押し位置検出センサ101及び押し位置検出センサ102において、それぞれ逆の変化が得られる。例えば、押圧位置がX方向のプラス側に向かうほど、第二電極112からの出力は大きくなる。逆に、押圧位置がX方向のプラス側に向かうほど、第二電極116からの出力は小さくなる。したがって、X方向においてプラス側及びマイナス側の両側から検出位置を検知することができるため、より検出位置の検出の精度を高めることができる。
【0060】
検知領域110で押圧操作を受け付けると、押圧操作の受け付けた位置によって圧電フィルム114及び圧電フィルム117が変形する。例えば、検知領域110を格子状に分割した場合における、格子点の座標(x,y=i,j)が押圧操作の受け付けた場合について説明する。なお、ここでは説明の便宜上、第一電極111からは電圧C1、第二電極112からは電圧D1がそれぞれ出力されることとして説明する。また、第一電極115からは電圧C2、第二電極116からは電圧D2がそれぞれ出力されることとして説明する。
【0061】
予め、各格子点の座標が押圧操作を受け付けた場合における、押し位置検出センサ101及び押し位置検出センサ102の出力の比を求めておく。例えば、p=C1/D1、q=C2/D2、r=D1/D2の3つの比である。また、各格子点の座標における3つの比p、q、及びrの基準マップを作成しておく。すなわち、検知領域110の座標(x,y=i,j)毎における、p、qij、rijを求めておく。さらにs=C1/C2を加えた4つの比を用いることで、押し位置をより精度よく検知することができる。なお押し位置の精度がそれほど要求されない場合は、p、qの2つの比だけでも実現可能な場合がある。
【0062】
検知領域110が押圧操作の受け付けると、押し位置検出センサ101及び押し位置検出センサ102は、それぞれの電極から電圧を出力する。このとき、検知領域110内の座標は、以下の式1によって求められる。
【0063】
式1:fij(p,q,r)=f(p−pij,q−qij,r−rij
式1において、(p−pij+(q−qij+(r−rijが最小値になる点を計算する。これにより、検知領域110において押圧操作を受け付けた座標(x,y=i,j)が得られる。これにより、予め所定の座標毎にスイッチを割り当てることにより、どこの座標のスイッチが押圧操作を受け付けたかを識別することが可能となる。
【0064】
なおp、q、r、sを、x、yを変数とする適当な回帰モデルで表すことにより、実際に得られた値から、変数x、yを求めることもできる。
【0065】
図12(A)は、第四実施形態に係る押し位置検出センサ120の第一電極41及び第二電極42を説明するための図である。図12(B)は、第四実施形態に係る押圧操作を受ける位置と圧電フィルム121〜124との位置関係を説明するための図である。図12(C)は、第一電極41及び第二電極42における発生電圧の比と押圧操作を受ける位置との関係を説明するための図である。なお、図12(B)においては、筐体2の一部のみを示している。
【0066】
図12(A)に示すように、第四実施形態に係る押し位置検出センサ120は、圧電フィルム121〜124、4つの第一電極41、及び第二電極42〜45を備える。圧電フィルム121〜124は、第一電極41のうちの一つと、第二電極42〜45のうちの一つと、それぞれ対をなして配置されている。第二電極42〜45はそれぞれ、第一電極41に対してY方向に並ぶように配置されている。
【0067】
4つの第一電極41からは配線46が引き出されている。第二電極42〜45からは配線47が引き出されている。ここで、配線46と配線47とは、実際はスルーホール等により別の層に形成されているため、接触しない構成となっている。
【0068】
4つの第一電極41、及び第二電極42〜45が同一の層に形成されているため、押し位置検出センサ120をより薄く形成することができる。また、第一電極41、及び第二電極42〜45が同一の層に存在するため押圧操作による変形を同様にうける。これにより、押し位置検出センサ120の感度をより高めることができる。なお、第一電極41及び配線46と、第二電極42〜45及び配線47と、をそれぞれ別の層に予め形成し、これを積層させることによって押し位置検出センサ120を構成してもよい。
【0069】
図12(B)に示すように、筐体2には、圧電フィルム121〜124に対応する箇所にそれぞれボタン領域B1〜B4が配置されている。例えば、ボタン領域B1には、圧電フィルム121、第一電極41、及び第二電極42が備えられている。
【0070】
4つの第一電極41は、それぞれY−Z平面における面積が同一の大きさである。このため、圧電フィルム121〜124が押圧操作により同様に変形すると、それぞれの圧電フィルム121〜124から同様の大きさの電圧が出力される。これに対して、第二電極42〜45は、Y−Z平面における面積がそれぞれ異なる大きさである。このため、圧電フィルム121〜124が押圧操作により同様に変形すると、それぞれの圧電フィルム121〜124から、それぞれの圧電フィルム121〜124の面積に相当する大きさの電圧が出力される。
【0071】
このように、ボタン領域B1〜B4のそれぞれの押圧位置に応じて、第二電極42〜45における発生電圧が異なる。したがって図12(C)に示すように、ボタン領域B1〜B4によって、第一電極41及び第二電極42〜45における発生電圧の比が異なる。よって、検出される第一電極41及び第二電極42〜45における発生電圧の比によって、ボタン領域B1〜B4のいずれの位置が押圧操作を受け付けたかを認識することが可能となる。
【0072】
図13(A)〜(C)は、第四実施形態に係る変形例9〜11を説明するための図である。なお、変形例9の説明において、第四実施形態と同様の構成については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。また、変形例10〜11の説明において、変形例9と同様の構成については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0073】
図13(A)に示すように、変形例9においては、第二電極42〜45はそれぞれ、第一電極41に対してZ方向に並ぶように配置されている。ボタン領域B1〜B4において、第一電極41及び第二電極42〜45はY方向に対して、それぞれ均等に配置されている。このためY方向に対するぶれが少なくなる。したがって、押し位置検出センサ130の精度をより高めることができる。
【0074】
図13(B)に示すように、変形例10は、変形例9と比べると、配線46及び配線47の第一電極41及び第二電極42〜45からの引き出し方向が異なる。ここで、配線46は、配線47及び第二電極42〜45と接触しない構成とする必要がある。これにより、配線46及び配線47が形成される長さが短くなるため、押し位置検出センサ131の製造が容易となり、また押し位置検出センサ131自体を小型化及び軽量化することが可能となる。
【0075】
図13(C)に示すように、変形例11は、変形例9と比べると、複数の圧電フィルム121〜124の代わりに一枚の圧電フィルム125を備える。これにより、圧電フィルム125が一枚のみで構成されるため、押し位置検出センサ132の製造が容易となる。また、押し位置検出センサ132自体を小型化及び軽量化することが可能となる。
【0076】
図14(A)は、第五実施形態に係る押し位置検出センサ140の第一電極41及び第二電極42〜45を説明するための図である。図14(B)は、第五実施形態に係る圧電フィルム121〜124を説明するための図である。図14(C)は、第一電極41及び第二電極42〜45における発生電圧と押圧操作を受ける位置との関係を説明するための図である。なお、図14(B)においては、第一電極41及び第二電極42〜45を省略している。また、第五実施形態に係る押し位置検出センサの説明において、変形例9と同様の構成については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。図14(C)においては、説明の便宜上、第一電極、第二電極、及び圧電フィルムがさらにY方向に倍に増えた状態のものについて表している。
【0077】
図14(A)に示すように、第五実施形態に係る押し位置検出センサ140においては、Y方向のプラス方向に向かって、Y−Z平面における第二電極42〜45の面積が減少する構成である。なお、Y方向のプラス方向に向かって、Y−Z平面における第二電極42〜45の面積が増加する構成であってもよい。
【0078】
図14(B)に示すように、押し位置検出センサ140においては、圧電フィルム121〜124は、交互に一軸延伸方向が異なる。すなわち、圧電フィルム121及び圧電フィルム123の一軸延伸方向(図14(B)で示す矢印901)と、圧電フィルム122及び圧電フィルム124の一軸延伸方向(図14(B)で示す矢印902)とは概ね90度異なる。これにより、圧電フィルム121及び圧電フィルム123から出力される電圧と、圧電フィルム122及び圧電フィルム124から出力される電圧とは逆の極性となる。
【0079】
圧電フィルム121〜124は、Y軸方向に沿って交互に一軸延伸方向が異なる。このため、圧電フィルム121〜124が押圧操作により同様に変形すると、押圧位置がY方向のプラス方向に向かうにつれて、図14(C)に示すように、第一電極41から出力される電圧の大きさ(E1)は、概ね同様の変位を繰り返す。これに対して、第二電極42〜45から出力される電圧の大きさ(E2)は、押圧位置がY方向のプラス方向に向かうにつれて、徐々に変位が小さくなる。
【0080】
したがって、これらの電圧の比(E1/E2、又はE2/E1)の変化から、Y方向におけるいずれの方向へ押圧位置が移動しているかを検知することが可能となる。すなわち、押し位置検出センサ140においては、押圧操作において指等をスライドさせた場合に、そのスライド方向を検出することができる。なお、ここでは交流の信号が得られるため、センサの特性が温度変化によってドリフト変化した場合でも、その変化分を抽出し補正することで安定した信号強度を取得することができる。
【0081】
図15(A)及び図15(B)は、第一実施形態に係る押し位置検出センサを備えた電子機器1の別の一例の平面図である。なお、電子機器1の別の一例においては、第一実施形態に係る押し位置検出センサを備えた電子機器1と同様の構成については説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。また、圧電素子10は説明のために透過してその位置を表している。
【0082】
図15(A)に示すように、電子機器150は、リモートコントローラの操作パネルである。電子機器150としては、リモートコントローラ以外に、洗濯機、炊飯器等の操作パネルが挙げられる。
【0083】
電子機器150は、複数の操作ボタン152、操作面153及び、2つの圧電素子10を備える。操作ボタン152は、それぞれ操作面153の一区画であり、操作面153と同一平面上に設けられている。このため、操作面は平坦でありほこりなどのごみが溜まることなく衛生的に保つことができる。
【0084】
圧電素子10は、操作面153の操作される側の裏面に貼り付けられている。圧電素子10は、複数の操作ボタン152を挟むようにY軸方向に隔てて、複数の操作ボタン152の形成されている領域の外側に配置されている。第三実施形態に係る押し位置検出センサと同様に、操作ボタン152のいずれかが押圧操作を受け付けると、2つの圧電素子10からの出力によって、操作ボタン152のいずれが押圧操作を受け付けたかを検知することができる。
【0085】
図15(B)に示すように、電子機器151は、電子機器150と比べると、2つの圧電素子10の配置がそれぞれ異なる。電子機器151において、圧電素子10は、複数の操作ボタン152を挟むようにY軸方向に隔てて、複数の操作ボタン152の間に配置されている。
【0086】
電子機器150のように、操作ボタン152の形成されている領域の端に圧電素子10を配置する場合とくらべて、電子機器151の配置の場合、圧電素子10間の距離を近づけることができる。例えば、電子機器150の操作面153の表面積が大きい場合、中心付近の操作ボタン152を操作すると、圧電素子10が操作箇所から大きく離れるために、圧電素子10で十分に変形を検知できないおそれがある。これに対して、電子機器151の配置の場合、圧電素子10が操作ボタン152の間に配置されているため、変形する箇所の近くに圧電素子10を配置することができるため、さらに検知精度を向上させることができる。なお、電子機器151において、圧電素子10は2つに限られず、3以上であってもよい。これにより、さらに検知精度を向上させることができる。
【0087】
なお、電子機器150において、圧電素子10の数を増やして、電子機器151のように操作ボタン152を複数の操作ボタン152の間に配置してもよい。これにより、さらに検知精度を向上させることができる。
【0088】
図16(A)は、第六実施形態に係る押し位置検出センサ160の第一電極161及び第二電極162を説明するための図である。図16(B)及び図16(C)は、第六実施形態に係る第一電極161及び第二電極162における発生電圧に基づいて算出した値と押圧操作を受け付ける位置との関係を説明するための図である。なお、押し位置検出センサ160において、第一電極161及び第二電極162のみを示す。
【0089】
図16(A)に示すように、第六実施形態に係る押し位置検出センサ160は、第一電極161及び第二電極162を備える。第一電極161及び第二電極162は、それぞれY方向へ沿ってZ方向の幅が変化する。第一電極161はY方向の増加する向きへ向かってZ方向の幅が増加し、第二電極162はY方向の増加する向きへ向かってZ方向の幅が減少する。第一電極161及び第二電極162は、互いにZ方向の幅の和を一定に保つように、Y方向へ沿って互いに増減する。このため、押し位置検出センサ160は、Y方向へ沿っていずれの位置が押圧操作を受け付けても、第一電極161及び第二電極162から発生する電圧の和は一定である。
【0090】
押し位置検出センサ160がユーザから押圧操作を受け付けると、第一電極161及び第二電極162は、それぞれ押圧操作を受け付けた位置に応じた電圧(V1及びV2)を出力する。押し位置検出センサ160は、第一電極161及び第二電極162が出力する値から、値1(V1/(V1+V2))、及び値2(V2/(V1+V2))を算出する。
【0091】
図16(B)に示すように、押し位置検出センサ160において、押圧操作を受け付けた位置がY方向の増加する向きへ向かうほど、値1は増加する。これに対して、図16(C)に示すように、押し位置検出センサ160において、押圧操作を受け付けた位置がY方向の増加する向きへ向かうほど、値2は減少する。このため、値1及び値2からいずれの位置が押圧操作を受け付けたかを判別することができる。なお、値1及び値2のうちいずれか一方から位置を判別してもよい。
【0092】
ここで、押し位置検出センサ160において、押圧操作を受け付けた位置と得られる値1及び値2との関係を予め求めておく場合について説明する。例えば、押し位置検出センサ160が、図16(A)に示すP1においてユーザから押圧操作を受け付けた場合、図16(B)に示すように、値1としてC1が得られる。また、同時に図16(C)に示すように、値2としてC2が得られる。
【0093】
得られたC1及びC2から、それぞれに対応する、押圧操作を受け付けた位置が得られる。得られた押圧位置が同一の場合、高い精度で押圧位置が得られたこととなる。これに対して、得られた押圧位置が異なる場合、平均することにより位置精度を高めることができる。これにより、押し位置検出センサ160の検出する誤差を抑制することができる。また、押圧位置が想定された値と大きくかけ離れている場合は、押し位置検出センサ160に不具合が生じたことを予想できる。
【0094】
なお、実施形態において筐体2として直方体形状のものや、筐体71として円錐形状のものを挙げたが、筐体2又は筐体71の形状はこれに限らない。筐体2の形状として、例えば、円柱、多角柱、球体、多角錐等の他の形状が挙げられる。
【0095】
最後に、本実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
1,150,151…電子機器
2,71…筐体
10…圧電素子
11,21,23,25,27,31,33,35,37,41,81,111,115,161…第一電極
12,22,24,26,28,32,34,36,38,42,43,44,45,82,112,116,162…第二電極
13…基準電極
14,114,117,121,122,123,124,125,…圧電フィルム
18…検出部
83…第一突出部
84…第二突出部
80,100,101,102,120,130,131,132,140,160…押し位置検出センサ
R1,R2,R3…区分
Y…第二方向
Z…第一方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16