特許第6620975号(P6620975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6620975ナノシート含有分散液、ナノシート複合体及びそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6620975
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】ナノシート含有分散液、ナノシート複合体及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 39/06 20060101AFI20191209BHJP
   C01G 41/00 20060101ALI20191209BHJP
   C01B 33/44 20060101ALI20191209BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20191209BHJP
【FI】
   C01G39/06
   C01G41/00 Z
   C01B33/44
   B82Y30/00
【請求項の数】4
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-179920(P2015-179920)
(22)【出願日】2015年9月11日
(65)【公開番号】特開2017-52681(P2017-52681A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 卓也
(72)【発明者】
【氏名】松下 光正
(72)【発明者】
【氏名】福森 健三
(72)【発明者】
【氏名】村岡 慶美
(72)【発明者】
【氏名】片桐 好秀
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−531608(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101979444(CN,A)
【文献】 特表2007−530776(JP,A)
【文献】 特開2006−069802(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/159635(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00− 47/00
C01G 49/10− 99/00
C01G 1/00− 23/08
C01B 33/20− 39/54
B82Y 5/00− 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルコゲナイド系層状物質及び層状ケイ酸からなる群から選択される少なくとも1種の層状物質とイオン液体とを混合し、前記層状物質の層間を剥離せしめてカルコゲナイド系ナノシート及び層状ケイ酸塩ナノシートからなる群から選択される少なくとも1種のナノシートを得ると共に該ナノシートにイオン液体を吸着させてナノシート複合体を得る剥離吸着工程と、
前記ナノシート複合体を用い、該ナノシート複合体に吸着しているイオン液体を除去してナノシート薄層体を得る工程と、
を含むことを特徴とするナノシート薄層体の製造方法。
【請求項2】
前記層状物質とイオン液体とを混合する際に、前記イオン液体の存在下で前記層状物質に超音波処理、撹拌処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種の層間剥離処理を施すことを特徴とする請求項1に記載のナノシート薄層体の製造方法。
【請求項3】
前記剥離吸着工程において前記ナノシートに吸着されなかった未吸着のイオン液体を回収し、前記層状物質と混合されるイオン液体の全部又は一部として再利用するリサイクル工程を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のナノシート薄層体の製造方法。
【請求項4】
前記ナノシート複合体において、前記ナノシートが、層数が20層以下のナノシートを数基準で60%以上含むものであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のナノシート薄層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノシート含有分散液、ナノシート複合体及びそれらの製造方法に関し、より詳しくは、カルコゲナイド系ナノシート及び層状ケイ酸塩ナノシートからなる群から選択される少なくとも1種のナノシートを含有する分散液、その複合体及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MoSやWSを剥離し薄層化することで得られるMoSナノシートやWSナノシート等のカルコゲナイド系ナノシートは、力学物性、耐熱性及び光学特性に優れ、更に大きな比表面積、比較的大きなバンドギャップ等を有する二次元ナノマテリアルであることから、フレキシブルデバイス、センサー、リチウムイオンバッテリーの電極材、太陽電池のフィルム、エネルギー貯蔵体、摺動材等の様々な用途への応用が期待されている。MoS等のカルコゲナイドの剥離法としては、n−ブチルリチウムを用いたリチウムのインターカレーションとそれに続く水との反応により、剥離を進行させ、カルコゲナイドナノシートを作製する方法が開示されている(例えば、P.Joensenら,「Single−layer MoS」Mater.Res.Bull.,1986,21,457−461(非特許文献1))。しかしながら、非特許文献1に記載の製造方法では、n−ブチルリチウムが強塩基性を有するため製造時の取り扱いにおける安全性に課題があり、かつn−ブチルリチウムを用いた処理によりMoSの配置の形式が変化し(S原子の配置構造が三角プリズム型から正八面体型へと変化)、MoSナノシートの半導体性が損なわれるという課題があった。また、リチウムを取り除くことが困難であるため、残存リチウムによるドーピング効果等の悪影響が生じるという問題もあった。
【0003】
そこで、J.N.Colemanら,「Two−Dimensional Nanosheets Produced by Liquid Exfoliation of Layered Materials」Science,2011,331,568−571(非特許文献2)においては、強塩基を用いずかつ配置の変化を伴わない方法として、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の高極性の有機溶媒中で超音波プローブを用いた強力な超音波処理を行ってMoSやWS等の遷移金属カルコゲナイドを剥離して分散液を得る方法(非特許文献2)が開示されている。また、特開2014−239158号公報においては、WSをイソプロピルアルコールと混合し、超音波処理を行って剥離される方法が報告されている。しかしながら、これらの手法で得られるカルコゲナイド系ナノシートの分散液の濃度は、超音波プローブを用いた強力な超音波処理の後でさえ、MoSの場合、最大で0.3mg/ml、WSの場合、最大で0.15mg/mlと低く、収率も極めて低いものであった(MoSの場合、最大で4%、WSの場合、最大で2%)。また、これらの手法で得られるカルコゲナイド系ナノシートは、強力な長時間の超音波処理により構造に欠陥が生じ、剥離だけでなく、面内方向の構造も破壊され、一辺のサイズが小さくなり、物性の低下に繋がるという課題もあった。
【0004】
また、層状ケイ酸塩ナノシートに関しても同様の課題があり、カルコゲナイド系ナノシートや層状ケイ酸塩ナノシートに関して、よりマイルドな製造条件で、層数が少なくかつ一辺のサイズが比較的大きいナノシートを効率良くかつ高濃度で、更に分散性と分散安定性に優れた状態で得ることが可能な技術が求められるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−239158号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】P.Joensenら,「Single−layer MoS2」Mater.Res.Bull.,1986,21,457−461
【非特許文献2】J.N.Colemanら,「Two−Dimensional Nanosheets Produced by Liquid Exfoliation of Layered Materials」Science,2011,331,568−571
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、カルコゲナイド系ナノシートや層状ケイ酸塩ナノシートに関して、よりマイルドな製造条件で、層数が少なくかつ一辺のサイズが比較的大きいナノシートを効率良くかつ高濃度で、更に分散性と分散安定性に優れた状態で得られるナノシート含有分散液、ナノシート複合体、並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、カルコゲナイド系ナノシートや層状ケイ酸塩ナノシートをイオン液体と共存させることにより、驚くべきことに、よりマイルドな製造条件で、層数が少なくかつ一辺のサイズが比較的大きいナノシートを効率良くかつ高濃度で、更に分散性と分散安定性に優れた状態でナノシート含有分散液やナノシート複合体が得られるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
発明のナノシート薄層体の製造方法は、カルコゲナイド系層状物質及び層状ケイ酸からなる群から選択される少なくとも1種の層状物質とイオン液体とを混合し、前記層状物質の層間を剥離せしめてカルコゲナイド系ナノシート及び層状ケイ酸塩ナノシートからなる群から選択される少なくとも1種のナノシートを得ると共に該ナノシートにイオン液体を吸着させてナノシート複合体を得る剥離吸着工程と、前記ナノシート複合体を用い、該ナノシート複合体に吸着しているイオン液体を除去してナノシート薄層体を得る工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【0016】
本発明のナノシート薄層体の製造方法においては、前記層状物質とイオン液体とを混合する際に、前記イオン液体の存在下で前記層状物質に超音波処理、撹拌処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種の層間剥離処理を施すことが好ましい。
【0017】
また、本発明のナノシート薄層体の製造方法においては、前記剥離吸着工程において前記ナノシートに吸着されなかった未吸着のイオン液体を回収し、前記層状物質と混合されるイオン液体の全部又は一部として再利用するリサイクル工程を更に含むことが好ましい。
【0019】
また、本発明のナノシート薄層体の製造方法においては、前記ナノシート複合体において、前記ナノシートが、層数が20層以下のナノシートを数基準で60%以上含むものであることが好ましい。
【0020】
なお、本発明によって、カルコゲナイド系ナノシートや層状ケイ酸塩ナノシートに関して、よりマイルドな製造条件で、層数が少なくかつ一辺のサイズが比較的大きいナノシートを効率良くかつ高濃度で、更に分散性と分散安定性に優れた状態でナノシート含有分散液やナノシート複合体が得られるようになる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明のナノシート含有分散液においては、イオン液体中で弱い超音波処理等の混合処理を施すだけで、カルコゲナイド系層状物質や層状ケイ酸の分散と剥離が進行する。剥離のメカニズムとしては、超音波処理や撹拌処理等の混合処理により僅かにできた層状物質の層間のスペースに、イオン液体のカチオンとカルコゲン(酸素、硫黄、セレン、テルル等の第16元素)等との間の相互作用、更にカチオンがプロトンを有する場合はカチオンとカルコゲン等との間の水素結合、によりイオン液体が吸着していくことにより層状物質の剥離が進行する。そのため、本発明においては、比較的マイルドな製造条件で、層数が少なくかつ一辺のサイズが比較的大きいナノシートが得られるようになり、更に、イオン液体の吸着により一旦剥離した層状物質同士の再凝集が抑制されるため、分散性と分散安定性に優れたナノシート含有分散液となるものと推察する。また、本発明のナノシート複合体においては、イオン液体がナノシート表面に吸着していることから、イオン液体中での分散性に極めて優れており、更に従来公知の方法で製造されたイオン液体が表面に吸着していないナノシートと比較して、イオン液体以外の有機溶媒中での分散性にも優れるようになっているものと推察する。更に、本発明のナノシート複合体においては、イオン液体が層間に吸着し、剥離が進行することによって剥離が加速するとともに、立体的要因により剥離したナノシート同士の再スタックが抑制される結果、極めて高い収率で分散性と分散安定性に優れたナノシート複合体が得られるようになるものと推定する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、カルコゲナイド系ナノシートや層状ケイ酸塩ナノシートに関して、よりマイルドな製造条件で、層数が少なくかつ一辺のサイズが比較的大きいナノシートを効率良くかつ高濃度で、更に分散性と分散安定性に優れた状態で得られるナノシート含有分散液、ナノシート複合体、並びにそれらの製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0023】
[ナノシート含有分散液]
先ず、本発明のナノシート含有分散液について説明する。本発明のナノシート含有分散液は、イオン液体と、前記イオン液体に分散している、カルコゲナイド系ナノシート及び層状ケイ酸塩ナノシートからなる群から選択される少なくとも1種のナノシートと、を備えることを特徴とするものである。
【0024】
(ナノシート)
本発明に用いられるナノシートは、カルコゲナイド系層状物質及び層状ケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の層状物質を剥離して得られる構造に相当する形態のシートである。なお、このような層状物質は、繰り返し結晶単位がファンデルワールス力により層状に積層することで構成されている。
【0025】
本発明に用いられるカルコゲナイド系ナノシートとしては、特に制限されないが、例えば、遷移金属カルコゲナイドナノシート、13族カルコゲナイドナノシート、14族カルコゲナイドナノシート、15族カルコゲナイドナノシートを好ましいものとして挙げることができ、これらの中でも、得られるナノシート複合体の力学物性の向上の観点から、遷移金属カルコゲナイドナノシート、13族カルコゲナイドナノシート、14族カルコゲナイドナノシートがより好ましい。
【0026】
このようなカルコゲナイド系ナノシートに用いられるカルコゲン元素としては、特に制限されないが、好ましくは、O、S、Se、Te等を挙げることができる。遷移金属カルコゲナイドナノシートは、例えば、Mo、W、Nb、Ta、Ti、Hf、Rf、La、Sb、Fe、Ni、Cr、Mn、Co、Re等の遷移金属と、例えば、O、S、Se、Te等のカルコゲン元素とからなるナノシートであり、このような遷移金属カルコゲナイドナノシートとしては、特に制限されないが、例えば、MoS、MoSe、MoTe、WS、WSe、WTe、NbS、NbSe、NbTe、TaS、TaSe、TaTe、NiS、NiSe、NiTe、TiS、TiSe、TiTe、FeS、FeSe、FeTe、ReS、ReSe、ReTe、TiO、CaTiO、BiTiO、SrTiO、NaNbO、LaAlO、LaFeAsO1−x(x=0、0.1、0.2、0.3等の0〜1の範囲の数)、LaFeAsO1−x(x=0、0.1、0.2、0.3等の0〜1の範囲の数)等のナノシートを好ましいものとして挙げることができる。13族カルコゲナイドナノシートとしては、特に制限されないが、例えば、GaS、GeSe、GeTe、GaSe、GaTe、InS、InSe、InTe等のナノシートを好ましいものとして挙げることができる。14族カルコゲナイドナノシートとしては、特に制限されないが、例えば、GeS、SnS、SnSe、SnTe、PbO等のナノシートを好ましいものとして挙げることができる。15族カルコゲナイドとしては、特に制限されないが、例えば、Bi、BiSe、BiTe、BiSrCaCu(x=0、8、9等の自然数)、BiSrCaCu10、Sb、SbSe、SbTe、As、AsSe、As等のナノシートを好ましいものとして挙げることができる。
【0027】
本発明に用いられる層状ケイ酸塩ナノシートとしては、特に制限されないが、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタニウム等のスメクタイト系クレイナノシート;マイカナノシート;Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四ケイ素フッ素マイカ、Li型四ケイ素フッ素マイカ等の膨潤性マイカナノシート;カオリンナノシート;膨潤性カオリンナノシート;タルクナノシート等が好ましいものとして挙げられ、これらは天然のものであっても合成されたものであってもよい。このような層状ケイ酸塩ナノシートの中でも、得られるナノシート複合体の力学物性の向上の観点から、マイカナノシート、膨潤性マイカナノシート、カオリンナノシート、膨潤性カオリンナノシート、タルクナノシートがより好ましい。
【0028】
このような本発明にかかるナノシートの厚みとしては、特に制限されないが、20nm以下のナノシートが含まれるものであることが好ましく、10nm以下のナノシートが含まれるものであることがより好ましく、5nm以下のナノシートが含まれるものであることが更に好ましく、2nm以下のナノシートが含まれるものであることが特に好ましく、1nm以下のナノシートが含まれるものであることが最も好ましい。前記ナノシートの厚みが前記下限未満になると溶媒中や樹脂中での分散性が低下する傾向にある。
【0029】
このような本発明にかかるナノシートの層数としては、特に制限されないが、得られるナノシート複合体の力学物性の向上の観点から、100層以下のナノシートを含むものであることが好ましく、50層以下のナノシートを含むものであることがより好ましく、40層以下のナノシートを含むものであることが更に好ましく、30層以下のナノシートを含むものであることが特に好ましく、20層以下のナノシートを含むものであることがとりわけ好ましく、10層以下のナノシートを含むものであることが最も好ましい。
【0030】
また、このような本発明にかかるナノシートにおいて、40層以下のナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。前記ナノシートにおいて、40層以下のナノシートの存在割合が前記下限未満になると、本発明のナノシート含有分散液を用いて得られるナノシート複合体の分散性や剛性が低下する傾向にある。
【0031】
更に、このような本発明にかかるナノシートにおいて、20層以下のナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましい。前記ナノシートにおいて、20層以下のナノシートの存在割合が前記下限未満になると、本発明のナノシート含有分散液を用いて得られるナノシート複合体の分散性や剛性が低下する傾向にある。
【0032】
また、このような本発明にかかるナノシートにおいて、ナノシートの一辺のサイズ(長さ)の下限としては、特に制限されないが、得られるナノシート複合体の力学物性の向上の観点から、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることが更に好ましく、0.5μm以上であることが特に好ましく、0.6μm以上であることが最も好ましい。また、本発明にかかるナノシートの一辺のサイズ(長さ)の上限としては、特に制限されないが、得られるナノシート複合体の溶媒中での分散性の向上の観点から、10000μm以下であることが好ましく、5000μm以下であることがより好ましく、1000μm以下であることが更に好ましく、500μm以下であることが特に好ましく、300μm以下であることが最も好ましい。なお、従来技術では、例えば一辺の長さが0.6μm以上、更には1μm以上といった一辺の長さの大きなナノシートの分散は、一辺の長さが0.6μm未満のナノシートと比較して難しい傾向にあるが、本発明においてイオン液体を用いた場合、一辺の長さの大きなナノシートの分散性が大きく向上する傾向にある。
【0033】
なお、本発明において、ナノシートのサイズ(長さ)や厚みは、走査型電子顕微鏡観察により得た写真において、それぞれ任意の20個の1次粒子についてナノシートのサイズ(長さ)と厚みをそれぞれ測定し、各々の平均値として求めた値である。
【0034】
(イオン液体)
本発明に用いられるイオン液体は、特に制限されないが、200℃未満の温度、好ましくは150℃未満の温度、より好ましくは100℃未満の温度、更に好ましくは室温又は周囲の温度付近において液体である塩(イオン性液体)である。常温溶融塩又は単に溶融塩(塩溶融物)等とも称されるものであり、常温(室温)を含む幅広い温度域で液体状態を呈する塩である。このような液体の塩は、典型的には有機カチオン及び有機又は無機アニオンを含む。なお、室温で液体のイオン性液体であることが好ましい。
【0035】
具体的には、このような本発明のイオン液体としては、例えば下記一般式(1):
(Zp+(Xq− ・・・(1)
で表わされるイオン液体であることが好ましい。式(1)中、Zp+はカチオン、Xq−はアニオンを示し、p、q、k、mは、それぞれ1〜3の整数を示す。
【0036】
これらの中でも、本発明に係るイオン液体としては、上記一般式(1)において、p、q、k及びmが2以下であることが好ましく、p、q、k及びmが1であること、すなわち下記一般式(2):
・・・(2)
で表わされる化合物からなるイオン液体であることが特に好ましい。式(2)中、Zはカチオン、Xはアニオンを示す。
【0037】
<Zカチオン>
このような本発明のイオン液体にかかる前記一般式(2)で示されるZ化合物の中のZカチオンとしては、特に制限されないが、好ましくは、下記一般式(3)〜(18):
【0038】
【化1】
【0039】
【化2】
【0040】
【化3】
【0041】
【化4】
【0042】
【化5】
【0043】
で表される構造(Zカチオン:イミダゾリウム(3)、ピリジニウム(4)、ピリダジニウム(5)、ピリミジニウム(6)、ピラジニウム(7)、ピロリニウム(8)、2H−ピロリニウムカチオン(9)、トリアゾリウム(10)、ピロリジニウム(11)、ピペリジニウム(12)、アンモニウム(13)、ホスホニウム(14)、スルホニウム(15)、イソオキサゾリウム(16)、オキサゾリウム(17)、チアゾリウム(18))のうち、少なくとも一種及びこれらカチオンの類縁体(前記カチオンにエポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボン酸及び酸無水物基等の官能基を導入した変性カチオン等)を挙げることができる。
【0044】
前記一般式(3)〜(18)において、R〜R12は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基、エステル基、カルボキシ基、スルホン酸基、エポキシ基、ハロゲン及びエーテル結合のうち少なくとも1種の基又は結合を含んでもよい炭素数1〜24のアルキル基、炭素数3〜24のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアラルキル基、アルキルシリルアルキル基、アルコキシシリルアルキル基から選ばれるものである。
【0045】
前記ヒドロキシ基、エステル基、カルボキシ基、エポキシ基、ハロゲン及びエーテル結合のうち、少なくとも1種の基又は結合を含んでもよい炭素数1〜24のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種ノニルデシル基、各種エイコシル基、各種ヘンイコシル基、各種ドコシル基、各種トリコシル基、各種テトラコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、クロロエチル基、ブロモエチル基、(メタ)アクリロイロキシメチル基、(メタ)アクリロイロキシエチル基、(メタ)アクリロイロキシプロピル基、(メタ)アクリロイロキシブチル基等のアクリロイロキシアルキル基、グリシジルオキシメチル基、グリシジルオキシエチル基、3−グリシジルオキシプロピル基、4−グリシジルオキシブチル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基等が挙げられる。
【0046】
前記炭素数3〜24のアルケニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えばアリル基、プロペニル基、各種ブテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基等が挙げられる。前記アクリロイロキシアルキル基又は前記アルケニル基を有するイオン液体を用いることにより、層状物質の層間やナノシート表面に挿入又は吸着したアクリロイロキシアルキル基又はアルケニル基含有イオン液体と他のアクリロイロキシアルキル基又はアルケニル基イオン液体及び/又はビニル系モノマーとの各種ラジカル重合(in situ重合)や反応が可能となり、ナノシートが高度に分散したナノシート含有分散液を作製することもできる。
【0047】
前記炭素数6〜24のアリール基としては、環上にアルキル基やハロゲン基等の適当な置換基を有していてもよく、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリクロロフェニル基、ブロモフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、クロロナフチル基等が挙げられ、炭素数7〜24のアラルキル基は、環上にアルキル基等の適当な置換基を有していてもよく、例えばベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、フェニルプロピル基、メチルフェニルプロピル基、ナフチルメチル基、メチルナフチルメチル基等が挙げられる。
【0048】
前記アルキルシリルアルキル基としては、トリアルキルシリルアルキル基が好ましく、ケイ素原子に結合するアルキル基は、炭素数1〜20のものが好ましく、それらは同一でも異なっていてもよく、例えばトリメチルシリルメチル基、トリエチルシリルメチル基、トリプロピルシリルメチル基、トリブチルシリルメチル基等が挙げられる。前記アルコキシシリルアルキル基としては、トリアルコキシシリルアルキル基が好ましく、ケイ素原子に結合するアルコキシ基はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、例えばトリメトキシシリルメチル基、トリエトキシシリルメチル基、トリプロポキシシリルメチル基、トリブトキシシリルメチル基等が挙げられる。
【0049】
このようなイオン性液体を構成するZカチオンにおいて、前記一般式(3)で示されるイミダゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルイミダゾリウム、1−エチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ノニルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−テトラデシルイミダゾリウム、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−トリメチルシリルメチル−3−メチルイミダゾリウム、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−スルホブチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−3−ビニルイミダゾリウム、1−ブチル−3−ビニルイミダゾリウム、1−メチル−3−イソプロピルイミダゾリウム、1−sec−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メトキシエチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メトキシメチル−3−メチルイミダゾリウム、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、1−アリル−3−エチルイミダゾリウム、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム、1,3−ジアリルイミダゾリウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−(メタ)アクリロイロキシメチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−(メタ)アクリロイロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−(メタ)アクリロイロキシプロピル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−(メタ)アクリロイロキシブチル)−3−メチルイミダゾリウム、等が挙げられる。
【0050】
また、前記一般式(4)で示されるピリジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−プロピルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ヘキシルピリジニウム、1−メトキシエチルピリジニウム、1−イソプロピルピリジニウム、1−エチル−3−メチルピリジニウム、1−プロピル−3−メチルピリジニウム、2−メチル−1−プロピルピリジニウム、1−ブチル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ブチル−3−メチルピリジニウム、1−メトキシメチルピリジニウム、1−sec−ブチルピリジニウム、トリメチルシリルメチルピリジニウム、ビス(トリメチルシリル)メチルピリジニウム、1−プロピル−4−メチルピリジニウム、1‐メチル‐4‐トリメチルシリルメチルピリジニウム等が挙げられる。
【0051】
更に、前記一般式(5)で示されるピリダジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルピリダジニウム、1−エチルピリダジニウム、1−プロピルピリダジニウム、1−イソプロピルピリダジニウム、1−ブチルピリダジニウム、1−ペンチルピリダジニウム、1−ヘキシルピリダジニウム、1−メトキシメチルピリダジニウム等が挙げられる。
【0052】
また、前記一般式(6)で示されるピリミジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルピリミジニウム、1−エチルピリミジニウム、1−プロピルピリミジニウム、1−ブチルピリミジニウム、1−メトキシメチルピリミジニウム、1,2−ジメチルピリミジニウム、1−メチル−3−プロピルピリミジニウム等が挙げられる。
【0053】
更に、前記一般式(7)で示されるピラジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルピラジニウム、1−エチルピラジニウム、1−プロピルピラジニウム、1−ブチルピラジニウム、1−メトキシメチルピラジニウム、1−エチル−2−メチルピラジニウム等が挙げられる。
【0054】
また、前記一般式(8)で示されるピロリニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1,1−ジメチルピロリニウム、1,1−ジエチルピロリニウム、1−エチル−1−メチルピロリニウム、1−メチル−1−プロピルピロリニウム、1−ブチル−1−メチルピロリニウム、1−メトキシエチル−1−メチルピロリニウム、1−メトキシメチル−1−メチルピロリニウム、1−イソプロピル−1−メチルピロリニウム等が挙げられる。
【0055】
更に、前記一般式(9)で示される2H−ピロリニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1,2−ジメチル−2H−ピロリニウム、1−エチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−プロピル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−ブチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−ヘキシル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−オクチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−トリメチルシリルメチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−イソプロピル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−sec−ブチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−メトキシエチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−メトキシメチル−2−メチル−2H−ピロリニウム等が挙げられる。
【0056】
また、前記一般式(10)で示されるトリアゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルトリアゾリウム、1−エチルトリアゾリウム、1−プロピルトリアゾリウム、1−ブチルトリアゾリウム等が挙げられる。
【0057】
更に、前記一般式(11)で示されるピロリジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−エチル−1−メチルピロリジニウム、1−メチル−1−プロピルピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−ブチル−1−エチルピロリジニウム、1−ブチル−1−プロピルピロリジニウム、1−メトキシエチル−1−メチルピロリジニウム、1−メトキシメチル−1−メチルピロリジニウム、1−イソプロピル−1−メチルピロリジニウム等が挙げられる。
【0058】
また、前記一般式(12)で示されるピペリジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチル−1−プロピルピペリジニウム、1−ブチル−1−メチルピペリジニウム、1−メトキシエチル−1−メチルピペリジニウム、1−メトキシメチル−1−メチルピペリジニウム、1−イソプロピル−1−メチルピペリジニウム等が挙げられる。
【0059】
更に、前記一般式(13)で示されるアンモニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、N,N,N−トリブチル−N−メチルアンモニウム、エチル−ジメチル−プロピルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、N,N−ジエチル−N−メチルアンモニウム、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、トリエトキシ(2−メトキシエチル)アンモニウム、メチルトリ−n−オクチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ベンジルアンモニウム、N,N−ジメチル−N−エチル−N−フェネチルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルアンモニウム、N,N,N−トリメチルエタノールアンモニウム等が挙げられる。
【0060】
また、前記一般式(14)で示されるホスホニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)ホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、トリエチルペンチルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、トリメチルプロピルホスホニウム、トリメチルヘキシルホスホニウム、トリエチルメトキシメチルホスホニウム、トリエチル(2−メトキシエチル)ホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリイソブチルメチルホスホニウム、トリブチルエチルホスホニウム、トリブチルテトラデシルホスホニウム、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム等が挙げられる。
【0061】
更に、前記一般式(15)で示されるスルホニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、トリメチルスルホニウム、トリエチルスルホニウム、ジエチルメチルスルホニウム、ジエチル(2−メトキシエチル)スルホニウム、トリプロピルスルホニウム、トリブチルスルホニウム、ジメチルヘキシルスルホニウム等が挙げられる。
【0062】
また、前記一般式(16)で示されるイソオキサゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、2−エチル−5−メチルイソオキサゾリウム、2−プロピル−5−メチルイソオキサゾリウム、2−ヘキシル−5−メチルイソオキサゾリウム、2−メトキシメチル−5−メチルイソオキサゾリウム等が挙げられる。
【0063】
更に、前記一般式(17)で示されるオキサゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−エチル−2−メチルオキサゾリウム、1−ブチル−2−メチルオキサゾリウム、1,3−ジメチルオキサゾリウム等が挙げられる。
【0064】
また、前記一般式(18)で示されるチアゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1,2−ジメチルチアゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルチアゾリウム等が挙げられる。
【0065】
このようなイオン性液体を構成するZカチオンにおいては、上記のZアニオンの中でも、ナノシート表面へのイオン液体の吸着性(吸着量)の向上による分散性及び有機溶媒への再分散性の観点から、前記一般式(3)〜(12)及び(16)〜(18)の環状カチオンであることがより好ましく、前記一般式(3)〜(12)の環状カチオンであることが更に好ましく、前記一般式(3)、(4)及び(8)〜(10)の環状カチオンであることが特に好ましく、前記一般式(3)及び(4)の環状カチオンであることが最も好ましい。
【0066】
なお、本発明において用いることができるZカチオンとしては、前記一般式(1)〜(18)示されるカチオンの他にも、例えば、1−ヘキシル−1,4−ジアザ[2,2,2]ビシクロオクタニウム、1−ブチル−1,4−ジアザ[2,2,2]ビシクロオクタニウム等のジアザビシクロオクタニウム等のカチオンを挙げることができる。
【0067】
<Xアニオン>
このような本発明で用いられるイオン液体にかかる前記一般式(2)で示されるZ化合物の中のXアニオンとしては、特に制限されないが、例えば、[C(2n+1−a))SO、(FSO、(CN)、C(2n+1)OSO、(C(2n+1−a))SO、CHSO、HSO、CSO、CH(C)SO、[C(2n+1−a))SO、(C(2n+1−a))COO、NO、BF4−b(C2n−1、(CN)4−b、(CN)4−bBF、F(HF)、AlCl、FeCl、PF、AsF、SbF、BiF、NbF、TaF、WF、SiF、PF6−c(C2n−1、(CN)、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン及びこれらアニオンの類縁体(変性物等)等を挙げることができる。なお、nは1〜8の整数、aは0〜17の整数、bは0〜4の整数、cは1〜6の整数である。また、このようなXアニオンのうち、ナノシート含有分散液中でのナノシートの分散性(分散安定性)と濃度を向上する観点、得られるナノシート複合体の溶媒中への再分散性を向上し高濃度でかつ高品質のナノシート含有分散液を得るという観点から、[C(2n+1−a))SO、C(2n+1)OSO、(C(2n+1−a))SO、BF4−b(C2n−1、(CN)4−b、(CN)4−bBFがより好ましく、(CFSO(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、(CSO(ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド)、CFSO(トリフルオロメタンスルホナート)、CSO(ノナフルオロブタンスルホナート)、BF(テトラフルオロボレート)、PF(ヘキサフルオロホスファート)が更に好ましく、(CFSO、CFSO、BF、PFが特に好ましく、中でもナノシート含有分散液中でのナノシート濃度と、イオン液体のナノシートへの吸着量を大きく向上させる観点から、PFが最も好ましい。
【0068】
なお、本発明に用いられるイオン液体としては、前記層状物質の剥離性に優れ、高濃度のナノシート含有分散液が得られる観点や、ナノシート複合体の分散性、再分散性に優れる観点から、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、テトラエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−プロピルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−2−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−エチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウムヘキサフロオロホスファート、1−ブチルピリジニウムテトラフロオロボレート、1−メトキシエチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−イソプロピルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ヘキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ヘキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メトキシメチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メトキシエチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−イソプロピル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が特に好ましい。
【0069】
このような本発明にかかるイオン液体は、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明における「イオン液体」とは、いわゆるイオン液体のみならず、イオン液体由来物(イオン液体が変性又は分解して生じたイオン液体由来化合物)を含む概念である。
【0070】
(ナノシート含有分散液)
本発明のナノシート含有分散液は、前記イオン液体と、前記イオン液体に分散している、前述のカルコゲナイド系ナノシート及び層状ケイ酸塩ナノシートからなる群から選択される少なくとも1種のナノシートと、を備えている。
【0071】
このような本発明のナノシート含有分散液においては、含有するナノシートの濃度としては、特に制限されないが、ナノシートの有する熱伝導率等の特性をより好ましく発現する観点から、0.01mg/mL以上であることが好ましく、0.1mg/mL以上であることがより好ましく、0.2mg/mL以上であることが更に好ましく、0.5mg/mL以上であることが特に好ましく、1mg/mL以上であることが最も好ましい。
【0072】
また、本発明のナノシート含有分散液においては、前記イオン液体の少なくとも一部が、前記ナノシートに吸着していることが好ましい。このようにすることにより、前記ナノシートを構成する層状物質の剥離を効率的に進行させ、層数の少ないナノシートを含有する分散液をより高濃度で得ることができる傾向にある。
【0073】
(ナノシート含有分散液の製造方法)
本発明のナノシート含有分散液は、イオン液体の存在下で前記ナノシートを構成する層状物質に混合処理を施すことにより、層状物質の剥離が進行し、ナノシートがイオン液体中に高度に分散した分散性に優れる分散液を得ることができる。ここで、前記混合処理としては、超音波処理、振動処理、攪拌処理、粉砕処理、外場の印加(例えば、電場印加、磁場印加等)、混練から選ばれる少なくとも一種の混合処理であることが好ましい。これらの混合処理の中でも、超音波処理、撹拌処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種の処理であることが、層状物質の剥離を効率的に進行させ、層数の少ないナノシートを含有する分散液をより高濃度で得る観点、及び得られるナノシート複合体の再分散性が向上する観点からより好ましく、これら混合処理の中でも超音波処理であることが特に好ましい。また、前記イオン液体は、後述するイオン液体以外の溶媒を含んでもよい。
【0074】
[ナノシート複合体]
次に、本発明のナノシート複合体について説明する。本発明のナノシート複合体は、カルコゲナイド系ナノシート及び層状ケイ酸塩ナノシートからなる群から選択される少なくとも1種のナノシートと、前記ナノシートに吸着しているイオン液体と、を備えることを特徴とするものである。なお、ナノシート複合体におけるナノシート及びイオン液体としては、前記本発明のナノシート含有分散液に関して説明したナノシート及びイオン液体をそれぞれ用いることができる。
【0075】
本発明のナノシート複合体において、前記ナノシートと前記イオン液体との吸着は、非共有結合による吸着であっても、共有結合による吸着であっても、またこれらの組み合わせであってもよいが、ナノシートの表面構造を破壊せず、欠陥を形成せず、ナノシートが本来有する剛性、耐熱性等の優れた特性を効果的に発現する傾向にあるという点で少なくとも非共有結合による吸着を含むことが好ましい。
【0076】
本発明において「非共有結合による吸着」とは、前記ナノシートと前記イオン液体との間に生じる共有結合以外の相互作用による吸着を意味する。このような非共有結合による吸着としては、例えば、前記ナノシートのカルコゲン(酸素、硫黄、セレン、テルル等)等と前記イオン液体のカチオンとの間に生じる相互作用、前記ナノシートの金属元素と前記イオン液体のアニオンとの間に生じる相互作用、前記ナノシートと前記イオン液体のカチオンのプロトンとの間に生じる水素結合、前記ナノシートと前記イオン液体の間に生じる電荷移動相互作用及びファンデルワールス力のうちの1種以上の相互作用を利用するもの等が挙げられる。なお、非共有結合による吸着であっても洗浄等によりイオン液体が脱離しない理由は必ずしも定かではないが、本発明のナノシート複合体においては前記相互作用が強く働いているためと推察される。
【0077】
また、本発明において「共有結合による吸着」とは、前記ナノシートと前記イオン液体とが共有結合を介して吸着するものであれば特に制限されないが、例えば、ナノシートの平面や端部に存在する微量の残存炭素原子、主に端部の原子に結合して存在する水酸基、アミノ基等の官能基、主に端部の窒素原子の孤立電子対等を起点とした化学反応によりナノシートにイオン液体を導入したもの等が、前記共有結合により吸着したナノシート複合体として挙げられる。また、前記ナノシートの構造中にカルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、有機シリル基等の置換基、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の高分子、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェン又はポリフェニレンビニレンといった導電性高分子等が化学結合により導入されたもの、ナノシートを金属ナノ粒子やカーボン系ナノフィラー等の他のナノ構造体で被覆したものも用いることができる。
【0078】
このようなナノシートとイオン液体との吸着は、イオン液体に対する良溶媒中にナノシート複合体を再分散させたり、前記良溶媒によりナノシート複合体を洗浄ろ過した場合においてもナノシート複合体中に残存していることが好ましい。
【0079】
このような本発明のナノシート複合体においては、前記イオン液体の吸着量は、特に制限されないが、ナノシート複合体の分散性及び流動性(成形加工性)の向上の観点から、ナノシート100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.5質量部以上が特に好ましく、1.0質量部以上が最も好ましい。前記イオン液体の吸着量が前記下限未満になると、ナノシートの分散性及び流動性(成形加工性)が低下しやすくなる傾向にある。また、前記イオン液体の吸着量は、ナノシート100質量部に対して100000質量部以下が好ましく、10000質量部以下がより好ましく、1000質量部以下が更に好ましく、100質量部以下が特に好ましく、90質量部以下が最も好ましい。前記イオン液体の吸着量が前記上限を超えると、ナノシート複合体を含む樹脂複合材料の剛性や吸着安定性が低下しやすくなる傾向にある。
【0080】
なお、ナノシートへのイオン液体の吸着量については、熱重量分析によりイオン液体に由来する重量減少を求めることにより算出することができる。また、イオン液体のナノシート表面への吸着については、イオン液体の吸着量にもよるが、通常、IR、XRD、ラマン測定、X線光電子分光分析(XPS)により確認することができる。例えば、イオン液体として、イミダゾリウムカチオンを含むイオン液体を用いた場合、ナノシート複合体のIRスペクトルにおいて、約1021cm−1と約1416cm−1のイミダゾール環に基づくピークが確認できる。また、XRDスペクトルやラマンスペクトルにおいても、用いたイオン液体に由来するピークが確認できる。
【0081】
また、本発明のナノシート複合体に含まれるナノシートの厚み、層数、40層以下のナノシートの存在割合、20層以下のナノシートの存在割合、一辺のサイズ(長さ)に関しては、前記本発明のナノシート含有分散液に用いられるナノシートに関して説明した条件と同様の条件がそれぞれ好ましい。
【0082】
[ナノシート複合体含有分散液]
次に、本発明のナノシート複合体含有分散液について説明する。本発明のナノシート複合体含有分散液は、前記本発明のナノシート複合体とイオン液体以外の溶媒とを含有することを特徴とする。なお、本発明のナノシート複合体含有分散液に用いられるナノシート、イオン液体及びナノシート複合体としては、前記本発明のナノシート含有分散液及びナノシート複合体に関して説明したナノシート、イオン液体及びナノシート複合体をそれぞれ用いることができる。
【0083】
このような本発明のナノシート複合体含有分散液においては、含有するナノシート複合体の濃度としては、特に制限されないが、ナノシートの有する耐熱性や熱伝導率等の特性をより好ましく発現する観点、及び、ナノシート複合体含有分散液を用いてナノシートの含有率の高い特性に優れた樹脂複合材料を製造する観点から、0.01mg/mL以上であることが好ましく、0.05mg/mL以上であることがより好ましく、0.1mg/mL以上であることが更に好ましく、0.2mg/mL以上であることが特に好ましい。
【0084】
また、本発明のナノシート複合体含有分散液に含まれるナノシートの厚み、層数、40層以下のナノシートの存在割合、20層以下のナノシートの存在割合、一辺のサイズ(長さ)に関しては、前記本発明のナノシート含有分散液に用いられるナノシートに関して説明した条件と同様の条件がそれぞれ好ましい。
【0085】
また、本発明のナノシート複合体含有分散液及び前記本発明のナノシート含有分散液においては、各種フィラーを更に添加して用いることができる。このようなフィラーとしては、特に制限されないが、例えば、アルミナ、窒化アルミ、立方晶窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化炭素、黒リン、ダイヤモンド、酸化亜鉛、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、セルロース、セルロースナノファイバーや、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノプレートレット、グラフェン、数層グラフェン、ナノグラファイト(グラフェンナノリボン等)、ナノグラフェン、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノコイル、フラーレン、ナノダイヤモンド等のカーボン系ナノフィラーが好ましいものとして挙げられる。これらの中でも、例えば、グラファイト、数層グラフェン、六方晶窒化ケイ素、六方晶炭化ケイ素、六方晶窒化炭素、黒リン等の層状物質と前記本発明にかかるナノシートとをイオン液体中で混合した場合、これらの層状物質の剥離又は分散も進行した分散液を得ることもできる。また、これら混合物の分散液から溶媒を除去し、前記層状物質の剥離により得られたナノシートと前記本発明にかかるナノシート又はナノシート複合体を配向、配列させることで、前記層状物質の剥離により得られたナノシートと前記本発明にかかるナノシート又はナノシート複合体からなる積層体を作製することもできる。
【0086】
(イオン液体以外の溶媒)
本発明のナノシート複合体含有分散液において用いられるイオン液体以外の前記溶媒としては、特に制限されないが、例えば、有機溶媒及び水が挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。前記有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドン、N−ドデシル−2−ピロリドン、N−ヘキシル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロフェノール、フェノール、テトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、N−ジメチルピロリドン、ペンタン、ヘキサン、ネオペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらの有機溶媒も1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0087】
このような本発明のナノシート複合体含有分散液における溶媒においては、有機溶媒として、前記本発明のナノシート複合体に用いたイオン液体と親和性の高いものを用いることが好ましい。例えば、前記イオン液体として、アニオンが、[C(2n+1−a))SO、(FSO、(CN)、C(2n+1)OSO、(C(2n+1−a))SO、CHSO、HSO、CSO、CH(C)SO、[C(2n+1−a))SO、(C(2n+1−a))COO、NO、PFからなる群から選択される少なくとも一種の場合(なお、nは1〜8の整数、aは0〜17の整数)、有機溶媒としては、分散性の向上の観点から、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ヘキサフルオロイソプロパノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、N−ジメチルピロリドン等が特に好ましい。また、前記イオン液体として、例えば、アニオンが、BF4−b(C2n−1、(CN)4−b、(CN)4−bBFからなる群から選択される少なくとも一種の場合(なお、nは1〜8の整数、bは0〜4の整数)、有機溶媒としては、分散性の向上の観点から、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール等が特に好ましい。また、本発明においては、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のビニル系モノマーやε−カプロラクタム等の重縮合用のモノマー等のモノマーやエポキシ樹脂等の硬化樹脂の主剤や架橋剤等の原料も溶媒として好適に用いることもでき、これら溶媒中でナノシート複合体を分散させ、重合を行うことによりナノシート複合体が高度に分散した樹脂組成物を得ることができる。
【0088】
(ナノシート複合体含有分散液の製造方法)
本発明のナノシート複合体含有分散液においては、前記本発明のナノシート複合体を前記イオン液体中で調製してそのまま分散液として使用することもできるが、本発明のナノシート複合体はイオン液体以外の溶媒への再分散性にも優れているため、ナノシート複合体をイオン液体以外の溶媒に添加し混合することにより、ナノシート複合体含有分散液を製造することができる。また、カルコゲナイド系層状物質及び層状ケイ酸からなる群から選択される少なくとも1種の層状物質、前記ナノシート、前記イオン液体及び前記イオン液体以外の溶媒を一括又は分割して混合してナノシート複合体含有分散液を製造することもできる。更に、一括で混合して製造する場合、イオン液体がイオン液体以外の溶媒中で前記層状物質に吸着、剥離し、前記ナノシート複合体を形成せしめて、ナノシート複合体含有分散液を得ることができる。
【0089】
前記混合方法としては、特に制限されないが、超音波処理、振動処理、攪拌処理、粉砕処理、外場の印加(例えば、電場印加、磁場印加等)、混練から選ばれる少なくとも一種の混合処理であることが好ましい。これらの方法の中でも、超音波処理、撹拌処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種の混合処理であることが、前記層状物質の剥離を効率的に進行させ、層数の少ないナノシートを含有する分散液をより高濃度で得る上でより好ましい。なお、より分散安定性に優れ、かつより高濃度の分散液を得る観点から、これら混合処理の中でも超音波処理であることが更に好ましい。また、ナノシートへのダメージを抑制しつつより高度に分散させる観点から、前記混合処理の中でも超音波洗浄機を用いた超音波処理が特に好ましい。
【0090】
このような本発明のナノシート複合体含有分散液の製造においては、前記ナノシートと前記溶媒との混合比率については、特に制限されないが、ナノシートの添加量の下限は、溶媒100質量部に対して0.0001質量部以上であることが好ましく、0.001質量部以上であることがより好ましく、0.005質量部以上であることが更に好ましく、0.1質量部以上であることが特に好ましい。また、ナノシートの添加量の上限についても、特に制限されないが、溶媒100質量部に対して1質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることがより好ましく、0.09質量部以下であることが更に好ましく、0.08質量部以下であることが特に好ましい。前記ナノシートの添加量が前記下限未満では、ナノシート複合体の生産性が低下する傾向にある。他方、前記上限を超えると、ナノシートの分散性が低下して凝集が起こりやすく、イオン液体の吸着量が減少しやすく、吸着安定性が低下しやすい傾向にあるが、前記好適な上限を超えた場合でも、例えば分散液中の凝集や沈殿がない部分(例えば、上澄み液等)を回収すること等によって良質な分散液を得ることができる。
【0091】
[ナノシート複合体の製造方法]
次に、本発明のナノシート複合体の製造方法について説明する。本発明のナノシート複合体の製造方法は、カルコゲナイド系ナノシート及び層状ケイ酸塩ナノシートからなる群から選択される少なくとも1種のナノシートと、前記ナノシートに吸着しているイオン液体と、を備えるナノシート複合体の製造方法であって、カルコゲナイド系層状物質及び層状ケイ酸からなる群から選択される少なくとも1種の層状物質とイオン液体とを混合し、前記層状物質の層間を剥離せしめてカルコゲナイド系ナノシート及び層状ケイ酸塩ナノシートからなる群から選択される少なくとも1種のナノシートを得ると共に該ナノシートにイオン液体を吸着させる剥離吸着工程を含むことを特徴とする方法である。なお、本発明のナノシート複合体の製造方法において用いるナノシート及びイオン液体としては、前記本発明のナノシート含有分散液及びナノシート複合体に関して説明したナノシート及びイオン液体をそれぞれ用いることができる。
【0092】
このような本発明のナノシート複合体の製造方法としては、前記剥離吸着工程を含むこと以外は、前記層状物質の層間を剥離せしめてナノシートを得ると共に該ナノシートに前記イオン液体を吸着させることが可能な方法であれば特に制限はないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
(i)前記層状物質と前記イオン液体とを溶媒を使用せずに混合し、層間剥離処理を施す方法。
(ii)前記層状物質と前記イオン液体とを溶媒中で混合し、層間剥離処理を施す方法。
【0093】
これらの製造方法は単独で実施しても2つ以上を組み合わせて実施してもよい。
【0094】
(層状物質)
このような本発明のナノシート複合体の製造方法においては、原料として、カルコゲナイド系層状物質及び層状ケイ酸からなる群から選択される少なくとも1種の層状物質が用いられる。
【0095】
本発明に用いられるカルコゲナイド系層状物質としては、特に制限されないが、例えば、遷移金属カルコゲナイド、13族カルコゲナイド、14族カルコゲナイド、15族カルコゲナイドを好ましいものとして挙げることができ、これらの中でも、得られるナノシート複合体の力学物性の向上の観点から、遷移金属カルコゲナイド、13族カルコゲナイド、14族カルコゲナイドがより好ましい。
【0096】
このようなカルコゲナイド系層状物質に用いられるカルコゲン元素としては、特に制限されないが、好ましくは、O、S、Se、Te等を挙げることができる。遷移金属カルコゲナイドは、例えば、Mo、W、Nb、Ta、Ti、Hf、Rf、La、Sb、Fe、Ni、Cr、Mn、Co、Re等の遷移金属と、例えば、O、S、Se、Te等のカルコゲン元素とからなる層状物質であり、このような遷移金属カルコゲナイドとしては、特に制限されないが、例えば、MoS、MoSe、MoTe、WS、WSe、WTe、NbS、NbSe、NbTe、TaS、TaSe、TaTe、NiS、NiSe、NiTe、TiS、TiSe、TiTe、FeS、FeSe、FeTe、ReS、ReSe、ReTe、TiO、CaTiO、BiTiO、SrTiO、NaNbO、LaAlO、LaFeAsO1−x(x=0、0.1、0.2、0.3等の0〜1の範囲の数)、LaFeAsO1−x(x=0、0.1、0.2、0.3等の0〜1の範囲の数)等を好ましいものとして挙げることができる。13族カルコゲナイドとしては、特に制限されないが、例えば、GaS、GeSe、GeTe、GaSe、GaTe、InS、InSe、InTe等を好ましいものとして挙げることができる。14族カルコゲナイドとしては、特に制限されないが、例えば、GeS、SnS、SnSe、SnTe、PbO等を好ましいものとして挙げることができる。15族カルコゲナイドとしては、特に制限されないが、例えば、Bi、BiSe、BiTe、BiSrCaCu(x=0、8、9等の自然数)、BiSrCaCu10、Sb、SbSe、SbTe、As、AsSe、As等を好ましいものとして挙げることができる。
【0097】
本発明に用いられる層状ケイ酸塩としては、特に制限されないが、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタニウム等のスメクタイト系クレイ;マイカ;Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四ケイ素フッ素マイカ、Li型四ケイ素フッ素マイカ等の膨潤性マイカ;カオリン、膨潤性カオリン、タルク等が好ましいものとして挙げられ、これらは天然のものであっても合成されたものであってもよい。このような層状ケイ酸塩の中でも、得られるナノシート複合体の力学物性の向上の観点から、マイカ、カオリン、タルクがより好ましい。
【0098】
本発明に用いられる層状ケイ酸塩として好ましいタルクは、層状構造を有する含水ケイ酸マグネシウムであって、一般化学式は3MgO・4SiO・Hで表される(通常、不純物として、少量のAl、Fe、F、Na、K、Ni、Mn、Ti、Cr等も含まれる)。タルクは、SiOの層間に挟まれたMgOを含む層からなる繰り返し結晶単位がファンデルワールス力により積層することで構成されており、本発明では、前記3層構造を有する繰り返し結晶単位をタルクナノシート1層とみなす。
【0099】
また、本発明に用いられる層状ケイ酸塩として好ましいマイカは、アルカリ金属を含有するアルミノ珪酸塩であり、樹脂等の充填剤等として一般に用いられている公知のものを用いることができる。例えば、白マイカ(マスコバイト)、金マイカ(フロゴバイト)、黒マイカ(バイオタイト)、紅マイカ、ソーダマイカ、絹マイカ(セリサイト)、バナジンマイカ、鉄マイカ、チンワルドマイカ等が例示される。
【0100】
更に、本発明に用いられる層状ケイ酸塩は、その表面を無処理のまま使用することも、公知のシランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類等の表面処理剤で表面処理したものを使用することもできる。
【0101】
また、本発明に用いられるカルコゲナイド系層状物質や層状ケイ酸塩は、以下に詳述するイオン液体を用いて剥離を行う前に、予め有機物や金属等で表面、エッジ部及び層間のうちの少なくとも一部が変性されたり、前記変性によって膨潤し、未変性のものと比べて層間距離が大きくなっていてもよいが、得られるナノシート複合体の構造における欠陥の形成を抑制し、力学物性等の物性をより高める観点から、未変性のものを用いることがより好ましい。また、カルコゲナイド系層状物質や層状ケイ酸塩をイオン液体を用いて剥離する前に、乳鉢やブレンドミル等を用いて磨り潰しながら混合する等の機械的な剥離処理を予め施しておくこともできる。
【0102】
このような層状物質の形状としては、特に制限されないが、パウダー、フレーク、ビーズ等、様々なタイプの層状物質を用いることができる。
【0103】
また、原料として用いる層状物質の平均二次粒子径は、特に制限されないが、本発明のナノシート複合体の製造方法においては、イオン液体を用いることによって、通常、剥離と孤立分散が困難な平均二次粒子径の大きな層状物質も分散させることができる。原料として用いる層状物質の平均二次粒子径の下限は、特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましく、2μm以上であることが特に好ましく、10μm以上であることが最も好ましい。また、原料として用いられる層状物質の二次粒子を構築する層状物質一次粒子の一辺の平均サイズの下限としては、特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましく、2μm以上であることが特に好ましく、3μm以上であることが最も好ましい。
【0104】
(剥離吸着工程)
本発明のナノシート複合体の製造方法においては、前記層状物質とイオン液体とを混合し、前記層状物質の層間を剥離せしめてナノシートを得ると共に該ナノシートにイオン液体を吸着させる工程(剥離吸着工程)を含むことが必要である。
【0105】
このような本発明のナノシート複合体の製造方法にかかる剥離吸着工程においては、超音波処理、振動処理、攪拌処理、粉砕処理、外場の印加(例えば、電場印加、磁場印加等)、混練から選ばれる少なくとも一種の層間剥離処理を施すことが好ましい。これらの層間剥離処理の中でも、前記イオン液体の存在下で前記層状物質に超音波処理、撹拌処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種の層間剥離処理を施すことがより好ましい。この層間剥離処理により、層状物質の剥離を効率的に進行させ、層数の少ないナノシートを含有するナノシート複合体が得られる傾向にある。
【0106】
このような層間剥離処理としては、分散性と再分散性に優れるナノシート複合体及び高濃度で分散性に優れるナノシート含有分散液を得る観点から、超音波処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種が更に好ましく、超音波処理であることが特に好ましい。このような超音波処理としては、特に制限されないが、例えば、超音波洗浄機を用いる方法や超音波ホモジナイザー(プローブ型ソニケーター)を用いる方法等が挙げられるが、ナノシートの表面へのダメージを抑制し、ナノシートの面内方向での破壊によるナノシートの一辺のサイズの低下を抑制することで、ナノシートの本来の特性を発揮する観点から、超音波洗浄機を用いる方法が特に好ましい。本発明においては、層状物質をイオン液体中に分散させた後に分散溶液に超音波処理を行う場合、例えば、卓上型超音波洗浄機を用いて、超音波発振周波数を45kHzとした場合、超音波処理時間としては、特に制限されないが、1分以上であることが好ましく、より好ましくは1時間以上であり、更に好ましくは5時間以上であり、特に好ましくは25時間以上であり、最も好ましくは48時間以上である。従来技術では、超音波処理時間が短い場合、例えば、1分以上1時間未満の場合、本発明にかかるナノシートを得ることが困難であったが、本発明においてはイオン液体を用いることにより、前記層状物質の剥離を効率的に進行させることができ、本発明のナノシート複合体及び本発明のナノシート複合体含有分散液を得ることができる。また、従来技術では、超音波処理時間が24時間程度を超えると得られるナノシートのサイズが小さくなってしまう課題があったが、本発明においては、イオン液体を用いることによって、従来より大きな粒子径を有する層状物質粒子を原料として用いることが可能となり、かつ剥離が効率的に進行することから、ナノシート構造の破壊を抑制しつつ、剥離を更に進行させることができ、収率を更に向上させることができる。
【0107】
また、本発明の層間剥離処理、中でも特に超音波処理又は撹拌処理を行う場合には、層間剥離処理後に遠心分離操作又は静置を行うことが好ましく、より好ましくは遠心分離操作である。遠心分離操作又は静置は、層間剥離処理後の分散液中に存在する剥離の不十分な大きな粒子や物理的な絡み合い等により剥離が困難な層状物質粒子を除去するためであり、遠心分離操作又は静置により大きな粒子を除去した後の上澄み液は、更にろ過及び/又は乾燥により溶媒使用時には溶媒、又は/及び未吸着のイオン液体の少なくとも一部除去し、ナノシート複合体を得ることができる。なお、遠心分離操作における回転速度としては、特に制限されないが、300〜100000rpmの範囲にあることが好ましく、500〜10000rpmの範囲にあることがより好ましい。前記回転速度が前記上限を超えると、上澄み液中のナノシートの濃度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では10層以下のナノシートの割合が低下し、かつ、ナノシート複合体の分散性が低下する傾向にある。また、相対遠心加速度は、特に制限されないが、10〜1000000Gの範囲にあることが好ましく、100〜100000Gの範囲にあることがより好ましい。前記相対遠心加速度が前記上限を超えると、上澄み液中のナノシートの濃度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では10層以下のナノシートの割合が低下し、かつ、ナノシート複合体の分散性が低下する傾向にある。また、遠心分離操作の時間は、特に制限されないが、1分間〜24時間の範囲にあることが好ましく、5分間〜2時間の範囲にあることがより好ましい。前記遠心分離操作の時間が前記上限を超えると、上澄み液中のナノシートの濃度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では10層以下のナノシートの割合が低下し、かつ、得られるナノシート複合体の再分散性が低下する傾向にある。更に、静置させる場合、静置時間の下限としては、特に制限されないが、5分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましく、1時間以上が更に好ましく、10時間以上が特に好ましく、20時間以上が最も好ましい。静置時間の上限としては、特に制限されないが、30日以下であることが好ましく、15日以下であることがより好ましく、10日以下が更に好ましい。前記静置時間が前記上限を超えると、上澄み液中のナノシートの濃度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では10層以下のナノシートの割合が低下し、かつ、ナノシート複合体の分散性が低下する傾向にある。
【0108】
また、本発明の層間剥離処理において撹拌処理を行う場合には、撹拌処理の回転数としては、特に制限されないが、100rpm以上が好ましく、より好ましくは200rpm以上であり、更に好ましくは300rpm以上であり、特に好ましくは400rpm以上であり、最も好ましくは500rpm以上である。前記撹拌処理の回転数が前記下限未満では、10層以下のナノシートの割合が低下し、かつ、ナノシート複合体の分散性が低下する傾向にある。
【0109】
また、本発明の層間剥離処理において粉砕処理を行う場合には、粉砕処理方法としては、特に制限されないが、乳鉢、せん断式ミル、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、ハンマーミル、ボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、乾式ジェットミル、湿式ジェットミルによる粉砕方法、等を用いることができる。乳鉢を用いた粉砕処理によりイオン液体存在下、ナノシート複合体を製造する場合には、粉砕時間は特に制限はないが、5分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましく、1時間以上であることが更に好ましく、2時間以上であることが特に好ましく、3時間以上であることが最も好ましい。イオン液体の存在下で前記層状物質を粉砕することで、前記層状物質及びナノシートに加わるせん断力を適切に制御することができ、面方向への破壊を抑制したまま、剥離を効率的に進行させることができる。なお、イオン液体非存在下では、粉砕時のせん断が大きくなりすぎるため、剥離だけでなく、面方向での破壊が生じ、一辺のサイズが小さくなる課題があり、本発明にかかるナノシート及びナノシート複合体を得ることができない。
【0110】
本発明にかかる層間剥離処理において、溶融混練を行う場合には、前記層状物質及び前記イオン液体、更に必要に応じて樹脂及び/又は添加剤をそれぞれペレット状、粉末状又は細片状にしたものを、攪拌機、ドライブレンダー又は手混合等により均一に混合した後、押出機、ゴムロール機、又はバンバリーミキサー等を用いて溶融混練することができる。
【0111】
本発明のナノシート複合体の製造方法においては、前記層状物質と前記イオン液体とを混合する方法については、特に制限されないが、一括で混合しても分割して混合してもよい。また、その順序については、前記層状物質に前記イオン液体を添加してもよいし、前記イオン液体に前記層状物質を添加してもよいし、前記層状物質と前記イオン液体とを同時に添加してもよいし、少なくとも一部ずつを交互に添加してもよい。
【0112】
また、本発明のナノシート複合体の製造方法においては、前記層状物質と前記イオン液体とを混合する際に、他の溶媒、樹脂、フィラー、添加剤を添加してもよい。溶媒及びフィラーとしては、前記ナノシート複合体含有分散液に関して説明したものを用いることができる。このような樹脂や添加剤の混合も、一括で行っても分割して行ってもよい。また、その混合順序についても特に制限されない。
【0113】
本発明のナノシート複合体の製造方法においては、前記層状物質と前記イオン液体との混合比率については、特に制限されないが、前記イオン液体の添加量は、前記層状物質100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.5質量部以上が特に好ましく、1.0質量部以上が最も好ましい。前記イオン液体の添加量が前記下限未満では、ナノシート複合体の溶媒中や樹脂中での分散性が低下しやすい傾向にある。また、前記イオン液体の添加量は、前記層状物質100質量部に対して100000000質量部以下が好ましく、10000000質量部以下がより好ましく、生産性の向上の観点から、1000000質量部以下が更に好ましく、500000質量部以下が特に好ましく、100000質量部以下が最も好ましい。
【0114】
また、このような本発明のナノシート複合体の製造方法においては、前記イオン液体と前記層状物質及び/又はナノシートとの混合時の温度については、特に制限されないが、0℃未満でもよいが、用いるイオン液体の融点以上であることが好ましく、室温(23℃)以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましく、35℃以上が特に好ましく、40℃以上が最も好ましい。混合時の温度を用いるイオン液体の融点以上とすることでイオン液体の吸着量及び吸着安定性が向上する傾向にある。また、前記イオン液体の流動性を向上し吸着性を高めるという観点から混合時の温度は高い方が好ましく、前記イオン液体が耐熱性に優れるため、幅広い温度の選択が可能であるが、イオン液体の分解を抑制する観点から、その上限は500℃以下であることが好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下が特に好ましい。
【0115】
なお、本発明のナノシート複合体の製造方法においては、前記ナノシートに前記イオン液体を吸着させた後、ろ過、遠心分離とろ過との組み合わせ、再沈殿、溶媒の除去(乾燥等)、溶媒を含んだままの溶融混練、ナノシート複合体のサンプリング等によりナノシート複合体を得ることができる。
【0116】
また、本発明のナノシート複合体の製造方法においては、前記層状物質の層間の剥離により得られたナノシートの表面にイオン液体が吸着する。なお、この場合、必ずしもイオン液体の全てが吸着するわけではない。そこで、必要に応じて、混合後の分散液をろ過して未吸着のイオン液体を回収して再利用することで、ナノシート含有分散液、ナノシート複合体及びナノシート複合体含有分散液を製造することができる。更に、遠心分離操作等により沈殿した未剥離の層状物質粒子及び/又は未分散のナノシート複合体を回収し、再利用することで、ナノシート含有分散液、ナノシート複合体及びナノシート複合体含有分散液を製造することもできる。前記未分散のナノシート複合体としては、前記製造方法により得られるナノシート複合体のうち、用いたイオン液体又は溶媒中でのナノシート複合体の分散量(溶解量)の上限値を超えたため沈殿したものが含まれる。この場合、新たに新品のイオン液体又は回収したイオン液体やその他の溶媒と混合させることによりナノシート複合体の分散が可能となり、ナノシート含有分散液、ナノシート複合体及びナノシート複合体含有分散液を製造することができる。また、前記イオン液体に対する貧溶媒で再沈殿させることにより、ナノシート複合体を回収することもできる。
【0117】
このような本発明のナノシート複合体の製造方法においては、前記剥離吸着工程において前記ナノシートに吸着されなかった未吸着のイオン液体を回収し、前記層状物質と混合されるイオン液体の全部又は一部として再利用するリサイクル工程を更に含むことが好ましい。このようなリサイクル工程を更に含むことにより、未吸着のイオン液体を再利用することができ、イオン液体の使用量の削減によるコストの低減に有効となる。
【0118】
更に、本発明のナノシート複合体の製造方法においては、得られたナノシート複合体を、例えば200℃以上の温度での加熱処理、酸やアルカリを用いた処理、強力な洗浄処理、強力及び/又は長時間の超音波処理、電子線照射等の処理を行うことよって、ナノシートの表面に吸着しているイオン液体の少なくとも一部を分解したり、取り除くことにより、イオン液体が実質的に表面から除かれたナノシートを製造することができる。また、本発明のナノシート複合体及びナノシート複合体含有分散液は、高温での加熱処理、酸やアルカリを用いた処理、強力な洗浄処理、強力及び/又は長時間の超音波処理、電子線照射等の処理によってイオン液体の少なくとも一部がイオン液体由来の残渣に変化しているものや、ナノシート複合体のナノシートの平面や端部に少量存在するNH基やOH基等の反応により、例えばアルキル基等の有機残基を導入したものも含む。
【0119】
[ナノシート薄層体]
次に、本発明のナノシート薄層体について説明する。本発明のナノシート薄層体は、前記本発明のナノシート複合体の製造方法により得られたナノシート複合体に吸着しているイオン液体を除去して得られたものであることを特徴とする。本発明においては、ナノシート複合体に吸着しているイオン液体を除去して得たことにより、ナノシートが薄層化されたイオン液体を含まないナノシート(ナノシート薄層体)を得ることができる。このようなナノシート薄層体は、製造に用いた前記本発明のナノシート複合体のナノシートの特徴である少ない層数と大きな一辺の長さを維持できるため、熱伝導性に優れる。また、イオン液体を除去しているため、例えば200℃以上の温度で例えば10年以上といった長時間使用する際に有用となる長期耐熱性に優れる。なお、本発明のナノシート薄層体においては、前記本発明のナノシート複合体やその製造方法等で説明したナノシートを用いることができる。
【0120】
[ナノシート薄層体の製造方法]
次に、本発明のナノシート薄層体の製造方法について説明する。本発明のナノシート薄層体の製造方法は、前記本発明のナノシート複合体の製造方法により得られたナノシート複合体を用い、該ナノシート複合体に吸着しているイオン液体を除去してナノシート薄層体を得ることを特徴とする。このような本発明のナノシート薄層体の製造方法においては、ナノシート複合体に吸着しているイオン液体を除去することにより、ナノシートが薄層化されたイオン液体を含まないナノシート(ナノシート薄層体)とすることができる。なお、本発明のナノシート薄層体の製造方法においては、前記本発明のナノシート複合体やその製造方法等で説明したナノシートを用いることができる。
【0121】
このような本発明のナノシート薄層体の製造方法におけるイオン液体の除去方法としては、特に制限されないが、例えば200℃以上の温度での加熱処理、酸やアルカリを用いた処理、強力な洗浄処理、強力及び/又は長時間の超音波処理、電子線照射等の処理であることが好ましい。これらのイオン液体の除去方法の中でも、ナノシート複合体のナノシートの層数と大きな一辺のサイズを維持し、長期耐熱性に優れるナノシートを製造する観点から、200℃以上の温度での加熱処理であることがより好ましく、250℃以上の温度での加熱処理であることが更に好ましく、300℃以上の温度での加熱処理であることが特に好ましく、350℃以上の温度での加熱処理であることが最も好ましい。加熱処理時間としては、特に制限されないが、イオン液体を除去する際のナノシートの再スタッキングを抑制する観点から、1分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましく、30分以上であることが更に好ましい。
【0122】
[複合材料]
次に、本発明にかかるナノシート又はナノシート複合体を用いた複合材料について説明する。すなわち、本発明においては、前記本発明にかかるナノシート又はナノシート複合体を樹脂、金属及びセラミックスからなる群から選択される少なくとも1種と混合して複合材料とすることができる。
【0123】
以下、本発明にかかるナノシート又はナノシート複合体を用いた樹脂複合材料について説明する。本発明の樹脂複合材料は、前記ナノシート及び前記イオン液体が樹脂中に分散しているものであり、前記イオン液体の少なくとも一部が前記ナノシートに吸着して前記ナノシート複合体となっていることが好ましい。
【0124】
このような本発明にかかる樹脂複合材料においては、従来の多層からなる前記層状物質を含む樹脂複合材料と比べて、少量添加であっても高い剛性及び耐熱性を有する。更に、本発明にかかる樹脂複合材料は、ナノシートへのイオン液体の吸着により、樹脂中での分散性に優れ、かつ樹脂とナノシートとの間の親和性が高くなるため、従来公知の方法で製造されたイオン液体が表面に吸着していないナノシートと比較しても、剛性と耐熱性に優れる。また、本発明にかかる樹脂複合材料においては、溶媒を用いて樹脂とナノシートを混合して樹脂複合材料を製造する場合に、イオン液体が表面に吸着しているため、溶媒と樹脂とからなる混合溶液中でナノシート複合体が均一に分散することが可能となり、得られる樹脂複合材料中においてもナノシート複合体が均一に分散する結果、剛性と耐熱性が増加し、表面外観が向上する。更に、本発明にかかる樹脂複合材料においては、イオン液体を用いることで層数の少ないナノシート複合体が製造されることから、ナノシート複合体の比表面積が大きく増加し、かつイオン液体がナノシートの表面に吸着することで樹脂との親和性が増加し、樹脂中でのナノシートの含有量が少量であっても樹脂複合材料中で樹脂と大きな相互作用を発現することができ、得られる樹脂複合材料の耐熱性が従来と比較して向上する。また、ナノシートの表面にイオン液体が吸着することにより、溶媒のみならず樹脂との親和性も高まるため、樹脂複合材料の製造を溶媒の非存在下で実施してもナノシート複合体の樹脂中での分散性を大きく高めることができ、ナノシートの含有量が少量であっても得られる樹脂複合材料の物性(剛性、耐熱性)と表面外観を高めることができる。
【0125】
このような樹脂複合材料におけるナノシートの含有率としては、特に制限されないが、樹脂複合材料100質量%に対して0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.2質量%以上が特に好ましく、0.3質量%以上が最も好ましい。また、樹脂複合材料におけるナノシートの含有率としては、樹脂複合材料100質量%に対して98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が特に好ましく、85質量%以下が最も好ましい。前記ナノシートの含有率が前記下限未満では、樹脂複合材料の熱伝導性及び耐熱性が低下しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると樹脂複合材料の流動性が低下しやすい傾向にある。
【0126】
このような樹脂複合材料における前記樹脂としては、特に制限されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミド、熱硬化性シリコーン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、及びウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリスチレン、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、MAS(メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン)樹脂、MABS(メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、及びSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)樹脂等の芳香族ビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、これらの共重合体、及びアクリルゴム等のアクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−アクリル酸メチル樹脂、及びアクリロニトリル−ブタジエン樹脂等のシアン化ビニル系樹脂、イミド基含有ビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、及びエチレンプロピレンゴム等のポリオレフィン系樹脂、酸又は酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂、エポキシ変性ポリオレフィン樹脂、酸又は酸無水物変性アクリル系エラストマー、エポキシ変性アクリルエラストマー、シリコーン(シリコーンゴム、シリコーンオイル、熱可塑性シリコーン樹脂等)、フッ素ゴム、天然ゴム、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4−シクロヘキサンジメチルテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン及びポリフッ化ビニルに代表されるフッ素系樹脂、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルアミド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0127】
このような樹脂の中でも、ナノシートの白色性を活かすことのできる樹脂という観点から透明樹脂(例えば、ポリスチレン、SBS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、これらの共重合体、及びアクリルゴム等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート(特殊ポリカーボネートも含む)、環状ポリオレフィン、透明ABS樹脂、AS樹脂、MAS樹脂、透明MABS樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリメチルペンテン、フルオレン系ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、脂環式エポキシ樹脂、透明ポリイミド、透明ポリアミド、透明フッ素樹脂、ポリ乳酸、導電性高分子、透明エラストマー)がより好ましく用いることができる。また、熱伝導性及び機械強度の観点から結晶性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4−シクロヘキサンジメチルテレフタレート、液晶ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン及びポリフッ化ビニル等のフッ素系樹脂、ポリ乳酸、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルアミド等)がより好ましく用いることができる。なお、前記結晶性樹脂は、280℃以上の加工温度を必要とする結晶性樹脂が更に好ましく、290℃以上の加工温度を必要とする結晶性樹脂(例えば、液晶ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂及び290℃以上の加工温度を必要とするポリアミド等)が特に好ましく、耐熱性と成形加工性の観点からポリアリーレンスルフィド及び液晶ポリエステルが最も好ましい。本発明にかかる前記イオン液体は、耐熱性に優れているため、本発明のナノシート複合体は、例えば、290℃以上の高い加工温度を必要とする結晶性樹脂中に良好に分散させることが可能である。
【0128】
なお、このような樹脂複合材料においては、必要に応じて各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、特に制限されないが、例えば、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、粘度調整剤、着色剤、シランカップリング剤等の表面処理剤、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ、炭酸カルシウム、層状ケイ酸塩等の従来公知の強化用フィラーや熱伝導性フィラー等の充填剤、エラストマー類等が挙げられる。
【0129】
このような熱伝導性フィラーとしては、特に制限されないが、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化炭素、ダイヤモンド、酸化亜鉛、グラファイト、炭素繊維や、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノプレートレット、グラフェン、数層グラフェン、ナノグラファイト(グラフェンナノリボン等)、ナノグラフェン、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノコイル、フラーレン、ナノダイヤモンド等のカーボン系ナノフィラーやセルロースナノファイバー等が挙げられる。これらの熱伝導性フィラーは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。このような熱伝導性フィラーの熱伝導率としては、特に制限されないが、0.5W/(m・K)以上が好ましく、1W/(m・K)以上がより好ましく、5W/(m・K)以上が更に好ましく、10W/(m・K)以上が特に好ましく、20W/(m・K)以上が最も好ましい。このような樹脂複合材料における熱伝導性フィラーの含有率としては、特に制限されないが、樹脂複合材料100質量%に対して0.1〜95質量%が好ましく、0.1〜90質量%がより好ましく、0.1〜80質量%が更に好ましく、0.1〜70質量%が特に好ましく、0.1〜50質量%が最も好ましい。前記熱伝導性フィラーの含有率が前記下限未満になると、得られる樹脂複合材料の熱伝導性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、樹脂複合材料の流動性が低下しやすい傾向にある。
【0130】
このような樹脂複合材料の調製の際に用いるナノシート又はナノシート複合体は、乾燥処理が施されていてもよいし、溶媒(有機溶媒及び/又は水)を含んでいてもよい。乾燥処理の温度としては、特に制限されないが、乾燥時の凝集を防ぐ観点から凍結乾燥させることが好ましい。また、ナノシート又はナノシート複合体が凝集している場合には、それをそのまま用いても樹脂中で速やかに分散するが、粉砕や凍結粉砕を施して予め解砕することが好ましい。
【0131】
このような樹脂複合材料の製造方法としては、特に制限されないが、樹脂中に各種フィラーを分散させる際に採用される従来公知の混合方法が挙げられる。例えば、(i)溶媒中で前記樹脂と前記ナノシート及び前記イオン液体(及び/又は前記ナノシート複合体)と、更に必要に応じて各種添加剤と、を混合する方法、(ii)溶媒非存在下で前記樹脂と前記ナノシート及び前記イオン液体(及び/又は前記ナノシート複合体)と、更に必要に応じて各種添加剤と、を混合する方法、等が挙げられる。前記混合方法としては、例えば、溶媒中での超音波処理、振動処理、攪拌処理、粉砕処理、外場の印加(例えば、電場印加、磁場印加等)、混練等による混合方法が好ましく挙げられる。
【0132】
(i)の方法の場合、混合後に溶媒を例えば溶液キャスト法、真空乾燥、再沈殿等の従来公知の方法により除去することによってナノシート及びイオン液体(及び/又はナノシート複合体)が分散した樹脂複合材料を得ることができる。ここで用いられる溶媒としては、使用したイオン液体と親和性があるものが好ましく、また、前記溶媒は、用いる樹脂を溶解するものがより好ましく、使用する樹脂の種類によって適宜選択することができる。例えば、樹脂として、イオン液体との親和性が高いことから好ましく用いることのできるアクリル系樹脂を選択した場合に適した溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等を好ましく挙げることができる。また、樹脂として結晶性樹脂であるポリアミドを選択した場合に適した溶媒としては、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール等を好適に用いることができる。また、(ii)の方法の場合、押出機、ゴムロール機、又はバンバリーミキサー、自公転ミキサー等のミキサー等を用いて混練することが好ましく、前記混練が用いた樹脂の融点以上の温度でナノシート及びイオン液体(及び/又はナノシート複合体)と樹脂とを溶融混練するものであることが好ましい。
【0133】
なお、このような混合工程においては、前記の諸成分を一括で混合しても分割して混合してもよい。また、その順序についても特に制限はなく、特定の成分を予備混合した後、残りの成分を混合してもよい。ナノシート及び/又はナノシート複合体の樹脂中への分散性を向上させるという観点からは、樹脂の一部及び/又は各種添加剤を予めナノシート及び/又はナノシート複合体と予備混合させることが好ましい。予備混合の方法としては、例えば、溶媒中で混合させる方法、溶融させた樹脂と混合させる方法、攪拌機、ドライブレンダー又は手混合等により混合する方法、ナノシート及び/又はナノシート複合体の製造時に樹脂の少なくとも一部及び/又は各種添加剤を混合する方法等が挙げられる。このような予備混合方法の中でも、溶媒中で混合させる方法が好ましく、樹脂の少なくとも一部及び/又は各種添加剤を溶媒中に溶解及び/又は分散(溶解を伴わないもの)させ、これに前記ナノシート及び前記イオン液体(及び/又は前記ナノシート複合体)を添加して混合させる方法、又は、前記ナノシート及び前記イオン液体(及び/又は前記ナノシート複合体)を含む分散液に樹脂の少なくとも一部及び/又は各種添加剤を添加して混合させる方法がより好ましい。なお、予備混合する際の樹脂の形状は特に制限されず、例えば、粉状、ペレット状、粒状、タブレット状、繊維状等が挙げられる。
【0134】
また、このような混合工程においては、ナノシート複合体と樹脂を混合すること以外に、アルケニル基を有するイオン液体を用いることにより、前記層状物質の層間やナノシート表面に挿入又は吸着したアルケニル基含有イオン液体と他のアルケニル基イオン液体及び/又はビニル系モノマーとの各種ラジカル重合や、前記層状物質の層間やナノシート表面に挿入又は吸着したエポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボン酸及び酸無水物基等の官能基をカチオン又はアニオンに導入した変性イオン液体と他の変性イオン液体及び/又はモノマーとの重合により、ナノシートが高度に分散した樹脂複合材料を製造することもできる。また、側鎖等の樹脂骨格中にイオン液体と同様又は類似の構造を導入した樹脂を用いて、ナノシート複合体と混合することにより、ナノシート複合体を樹脂中に高度に分散させることもできる。また、樹脂存在下で層状物質と前記イオン液体とを混合し、層状物質のナノシートへの剥離とナノシートへの前記イオン液体の吸着を進行させることによっても製造することができる。
【0135】
また、このような樹脂複合材料から成形体を製造する方法としては、特に制限されないが、前記樹脂複合材料に、射出成形、プレス成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、ガスアシスト成形、インサート成形、2色成形、外場を利用した成形(例えば、磁場成形、電場を利用した成形等)等の従来公知の成形加工を施すことにより樹脂複合材料(成形体)を得ることができる。成形温度としては、特に制限されないが、本発明のナノシート複合体が耐熱性に優れる(イオン液体の熱分解温度が高い)ため、例えば、290℃以上、300℃以上又は310℃以上の高温での成形も可能となる。
【0136】
また、本発明にかかる樹脂複合材料においては、前記ナノシート又はナノシート複合体の少なくとも一部として前記ナノシート薄層体を用いてもよい。そのような前記ナノシート薄層体を用いた樹脂複合材料の製造方法としては、前記混合工程前、前記混合工程中、前記混合工程後のうちの少なくともいずれかに、前記ナノシート複合体から前記イオン液体を除去してナノシート薄層体を得る前述の除去工程を更に含んでいることが好ましい。
【0137】
また、このような除去工程としては、前記混合工程に先立って予めナノシート複合体から加熱等によってイオン液体を除去してナノシート薄層体を製造してから樹脂と混合する方法や、ナノシート複合体と樹脂とを混合する前記混合工程中に、或いは、前記混合工程においてナノシート複合体と樹脂とを混合した後に、加熱等によってイオン液体を除去する方法が好ましく採用される。また、このように前記混合工程中にイオン液体を除去する方法としては、例えば、用いたイオン液体の熱分解温度以上の温度でナノシート複合体と樹脂とを溶融混練する方法が好ましい方法として挙げられる。
【実施例】
【0138】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、ナノシート含有分散液及びナノシート複合体の各物性は以下の方法により測定した。
【0139】
<測定方法1:分散液中のナノシートの濃度の測定及びナノシートの収率の測定>
実施例及び比較例それぞれにおいて、得られたナノシート含有分散液を用いてナノシート複合体を作製する過程で、先ず、洗浄ろ過に用いた桐山漏斗(フィルター:テフロン(登録商標)製フィルター、孔径0.1μm)の質量を予め測定した。次に、前記ナノシート含有分散液を前記フィルターを用いてアセトン(ナノシート含有分散液に対して3倍量を複数回に分けて用いた)で洗浄しながら吸引ろ過し、ナノシート表面に未吸着のイオン液体を完全に除去した。次いで、洗浄ろ過後の濾滓の付いた前記フィルターについて、80℃で12時間真空乾燥を行った後の質量を測定した。この質量から前記フィルターの質量を減じ、ナノシート複合体の質量を算出した。次に、熱重量分析装置(理学電機(株)製「Thermo plus TG8120」)を用いて窒素雰囲気下、室温から100℃まで昇温し、100℃で30分間保持した後、昇温速度10℃/分で100℃から800℃まで加熱して行った熱重量分析(TGA)により、ナノシート複合体中から吸着したイオン液体を除いたナノシートの割合を算出し、ナノシート含有分散液(イオン液体分散液)中でのナノシートの濃度(mg/ml)及びナノシートの収率(%)を求めた。なお、ナノシートの収率(%)は、次のように算出する。
収率(%)=100×(ナノシート複合体中から吸着したイオン液体を除いたナノシートの質量(mg))/(原料として用いた層状物質の質量(mg))。
【0140】
また、比較例においては、得られた比較用のナノシートの質量と原料として用いた層状物質の質量とを用いて前記と同様にしてナノシート含有分散液中でのナノシートの濃度及びナノシートの収率を求めた。
【0141】
<測定方法2:ナノシート複合体のイオン液体吸着量の測定>
先ず、原料として用いた層状物質及びイオン液体をそれぞれ80℃での真空乾燥により残留溶媒等の揮発分を除去した後、それぞれについて熱重量分析装置(理学電機(株)製「Thermo plus TG8120」)を用いて窒素雰囲気下、室温から100℃まで昇温し、100℃で30分間保持した後、昇温速度10℃/分で100℃から800℃まで加熱して熱重量分析(TGA)を実施し、層状物質及びイオン液体の熱分解開始温度及び熱分解終了温度を測定した。
【0142】
次に、実施例及び比較例それぞれにおいて、得られたナノシート複合体を80℃での真空乾燥により残留溶媒等の揮発分を除去した後、前記熱重量分析装置を用いて窒素雰囲気下、室温から100℃まで昇温し、100℃で30分間保持した後、昇温速度10℃/分で100℃から800℃まで加熱して熱重量分析(TGA)を実施した。層状物質は800℃まで重量減少を示さず、イオン液体は700℃までに分解するために、ナノシート複合体においてイオン液体に由来する質量減少を確認することができる。ナノシート複合体の質量減少のうちのイオン液体に由来するものをナノシート複合体へのイオン液体の吸着量とし、ナノシート100質量部に対する量(質量部)で表した。
【0143】
<測定方法3:ナノシート複合体におけるナノシートの剥離度の測定>
カルコゲナイド系ナノシートの場合、ナノシートのXRDスペクトルの(002)ピーク強度の原料(層状物質)の(002)ピーク強度に対する比(<ナノシートの(002)ピークの強度>(Ins)/<原料の(002)ピークの強度>(Ism))を求めた。Ins/Ismの値が小さいほど、剥離度に優れることを示す(ns:nanosheet、sm:starting material)。なお、原料(MoS、WS)とナノシート(MoSナノシート、WSナノシート)のそれぞれのXRDの(002)ピーク(MoSの場合、2θ=約14.3°、WSの場合、2θ=約14.3°)の強度(ピークの高さの比較)で比較を行った。
【0144】
また、層状ケイ酸塩ナノシートの場合、ナノシートの(002)ピーク強度の原料(層状物質)の(002)ピーク強度に対する比(<ナノシートの(002)ピークの強度>(Ins)/<原料の(002)ピークの強度>(Ism))を求めた。なお、タルクの場合、タルクとタルクナノシートの(002)ピークは2θ=約9.4°に確認される。
【0145】
<測定方法4:ナノシート複合体におけるナノシート層数の測定>
実施例及び比較例それぞれにおいて得られたナノシート複合体(比較例ではナノシート)各々のサンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)観察により得た写真において、エッジ部を観察できる任意の20個のシートについてナノシートの厚みを測定し、それらの平均値を求めた。次に、それぞれのナノシート複合体(比較例ではナノシート)の厚みを、それらを構成するナノシート1層の厚みで除して層数を求め、40層以下、20層以下の層数を有するナノシートの割合を求めた。ここで、MoSの1層分の厚みは0.62nm、WSの1層分の厚みは0.62nm、タルクの1層分の厚みは0.935nmとして算出した。
【0146】
<測定方法5:原料の層状物質及びナノシート複合体におけるナノシートの一辺のサイズの測定>
実施例及び比較例それぞれにおいて得られたナノシート複合体(比較例ではナノシート)各々のサンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)観察により得た写真において、それぞれ任意の20個の1次粒子についてナノシートの一辺のサイズ(長さ)を測定し、平均値を求めた。ここで、一次粒子の一辺のサイズとしては長辺の長さを指す。
【0147】
<測定方法6:ナノシート複合体の再分散性の測定>
実施例及び比較例それぞれにおいて得られたナノシート複合体(比較例ではナノシート)のそれぞれ5mgをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)5mLに添加し、これに超音波処理を30分間施してナノシート複合体を再分散させた。得られた各分散液を5時間静置することで分散性の低いナノシート複合体を沈殿させて取り除き、上澄み液を得た。得られた上澄み液について過剰のアセトンで洗浄しながら吸引ろ過を行ってNMPを完全に取り除き、更に80℃で12時間真空乾燥を行ってナノシート複合体を得た。得られたナノシート複合体の質量(mg)を測定し、上澄み液の容量(mL)で除して、ナノシート複合体の濃度(mg/mL)を求めることによりナノシート複合体の再分散性を評価した。
【0148】
[層状物質]
実施例及び比較例においては、以下に示す層状物質を使用した。
層状物質(a−1):
二硫化モリブデン(MoS)、シグマ‐アルドリッチ社製(1次粒子の平均粒子径:1.3μm)。
層状物質(a−2):
二硫化タングステン(WS)、シグマ‐アルドリッチ社製(1次粒子の平均粒子径:1.8μm)。
層状物質(a−3):
タルク、日本タルク社製「SG−2000」(1次粒子の平均粒子径:0.8μm)。
【0149】
[イオン液体]
実施例においては、以下に示すイオン液体を使用した。
イオン液体(b−1):
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート。
【0150】
(実施例1)
MoSナノシート含有分散液及びMoSナノシート複合体の作製:
150mgの層状物質(a−1:MoS)と30mLのイオン液体(b−1:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート)とを混合し、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を8時間行って高濃度分散液を得た。この分散液に遠心分離(3000rpm、相対遠心加速度1220G、20分間)を行って得られた上澄み液を回収し、MoSナノシート含有分散液を得た。
【0151】
次いで、上記で得られたMoSナノシート含有分散液を、桐山漏斗(フィルター:テフロン(登録商標)製フィルター、孔径0.1μm)を用いてアセトンで洗浄しながら吸引ろ過し、ナノシート表面に未吸着のイオン液体を完全に除去した。なお、アセトンは、ナノシート含有分散液に対して3倍量を複数回に分けて用いた。その後、濾滓を80℃で12時間真空乾燥して溶媒を完全に留去し、ナノシートにイオン液体が吸着したMoSナノシート複合体を得た。
【0152】
得られたMoSナノシート含有分散液について、ナノシートの濃度及びナノシートの収率を、前記方法に従って求めた。また、得られたMoSナノシート複合体について、イオン液体の吸着量、ナノシートの層数、剥離度、ナノシートの一辺の長さ及び再分散性を、前記方法に従って評価した。それらの結果を表1に示す。
【0153】
(実施例2)
WSナノシート含有分散液及びWSナノシート複合体の作製:
実施例1における層状物質(a−1:MoS)に代えて層状物質(a−2:WS)を用いるようにした以外は実施例1と同様にして、WSナノシート含有分散液及びにWSナノシート複合体を得た。得られたWSナノシート含有分散液について、ナノシートの濃度及びナノシートの収率を、前記方法に従って求めた。また、得られたWSナノシート複合体について、イオン液体の吸着量、ナノシートの層数、剥離度、ナノシートの一辺の長さ及び再分散性を、前記方法に従って評価した。それらの結果を表1に示す。
【0154】
(実施例3)
タルクナノシート含有分散液及びタルクナノシート複合体の作製:
実施例1における層状物質(a−1:MoS)に代えて層状物質(a−3:タルク)を用いるようにした以外は実施例1と同様にして、タルクナノシート含有分散液及びにタルクナノシート複合体を得た。得られたタルクナノシート含有分散液について、ナノシートの濃度及びナノシートの収率を、前記方法に従って求めた。また、得られたタルクナノシート複合体について、イオン液体の吸着量、ナノシートの層数、剥離度、ナノシートの一辺の長さ及び再分散性を、前記方法に従って評価した。それらの結果を表1に示す。
【0155】
(実施例4)
MoSナノシート含有分散液及びMoSナノシート複合体の作製:
乳鉢に層状物質(a−1:MoS)150mgとイオン液体(b−1:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート)2mLを入れ、60分間磨り潰しながら混合し、MoSナノシートがイオン液体中に分散したペースト状の分散液を得た。得られた分散液を24時間静置して得られた上澄み液を回収し、MoSナノシート含有分散液を得た。なお、24時間静置後に得られた上澄み液中のナノシート複合体の濃度は0.40mg/mlであった。
【0156】
次いで、上記で得られたMoSナノシート含有分散液を、桐山漏斗(フィルター:テフロン(登録商標)製フィルター、孔径0.1μm)を用いてアセトンで洗浄しながら吸引ろ過し、ナノシート表面に未吸着のイオン液体を完全に除去した。なお、アセトンは、90mLのアセトンを複数回に分けて用いた。その後、濾滓を80℃で12時間真空乾燥して溶媒を完全に留去し、ナノシートにイオン液体が吸着したMoSナノシート複合体を得た。
【0157】
得られたMoSナノシート複合体について、イオン液体の吸着量、ナノシートの層数、剥離度、ナノシートの一辺の長さ及び再分散性を、前記方法に従って評価した。それらの結果を表1に示す。
【0158】
(比較例1)
比較用のMoSナノシート含有分散液及びMoSナノシートの作製:
実施例1におけるイオン液体(b−1:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート)に代えて溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いるようにした以外は実施例1と同様にして比較用のMoSナノシート含有分散液及びMoSナノシートを得た。熱重量分析による評価の結果、比較用のMoSナノシートへのNMPの吸着は確認されなかった。また、得られたMoSナノシート含有分散液について、ナノシートの濃度及びナノシートの収率を、前記方法に従って求めた。更に、得られたMoSナノシートについて、ナノシートの層数、剥離度、ナノシートの一辺の長さ及び再分散性を、前記方法に従って評価した。それらの結果を表1に示す。
【0159】
(比較例2)
比較用のWSナノシート含有分散液及びWSナノシートの作製:
実施例2におけるイオン液体(b−1:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート)に代えて溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いるようにした以外は実施例2と同様にして比較用のWSナノシート含有分散液及びWSナノシートを得た。熱重量分析による評価の結果、比較用のWSナノシートへのNMPの吸着は確認されなかった。また、得られたWSナノシート含有分散液について、ナノシートの濃度及びナノシートの収率を、前記方法に従って求めた。更に、得られたWSナノシートについて、ナノシートの層数、剥離度、ナノシートの一辺の長さ及び再分散性を、前記方法に従って評価した。それらの結果を表1に示す。
【0160】
(比較例3)
比較用のタルクナノシート含有分散液及びタルクナノシートの作製:
実施例3におけるイオン液体(b−1:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート)に代えて溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いるようにした以外は実施例3と同様にして比較用のタルクナノシート含有分散液及びタルクナノシートを得た。熱重量分析による評価の結果、比較用のタルクナノシートへのNMPの吸着は確認されなかった。また、得られたタルクナノシート含有分散液について、ナノシートの濃度及びナノシートの収率を、前記方法に従って求めた。更に、得られたタルクナノシートについて、ナノシートの層数、剥離度、ナノシートの一辺の長さ及び再分散性を、前記方法に従って評価した。それらの結果を表1に示す。
【0161】
【表1】
【0162】
<評価結果>
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜4で得られた本発明のイオン液体が吸着したナノシート複合体は、比較例1〜3で得られた比較用のイオン液体が吸着していないナノシートと比べて、剥離性に優れており、層数が少なく、更に一辺のサイズが大きいものであった。また、実施例1〜4で得られた本発明のイオン液体が吸着したナノシート複合体は、比較例1〜3で得られた比較用のイオン液体が吸着していないナノシートと比べて、有機溶媒中における再分散性にも優れたものであった。
【0163】
また、超音波洗浄機を用いた超音波処理により製造した実施例1のナノシート複合体は、乳鉢を用いてイオン液体中で60分間磨り潰すことで作製した実施例4のナノシート複合体と比べて、より多くのイオン液体が表面に吸着しており、剥離性により優れており、ナノシートの一辺のサイズも大きく、再分散性により優れたものであった。
【0164】
更に、実施例1及び2で得られた本発明のイオン液体が吸着したナノシート複合体においては、より多くのイオン液体が表面に吸着しており、剥離性が大きく向上すると共に、一辺のサイズが非常に大きなナノシートを得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0165】
以上説明したように、本発明によれば、カルコゲナイド系ナノシートや層状ケイ酸塩ナノシートに関して、よりマイルドな製造条件で、層数が少なくかつ一辺のサイズが比較的大きいナノシートを効率良くかつ高濃度で、更に分散性と分散安定性に優れた状態で得られるナノシート含有分散液、ナノシート複合体、並びにそれらの製造方法を提供することが可能となる。また、本発明のナノシート複合体は、耐熱性に優れているため、製造時に高温が要求される高耐熱樹脂等へ添加するといった高温での使用や均一分散が可能となる。
【0166】
したがって、本発明のナノシート含有分散液、ナノシート複合体及び本発明のナノシート複合体を用いた樹脂複合材料は、ナノシートが本来備える特性を活かすことができる用途、例えば、高い力学物性(剛性、強度)が求められる用途、耐熱性が求められる用途、電磁波遮蔽が求められる用途、寸法性(熱線膨張係数の低下)が求められる用途、熱伝導性が求められる用途、電気伝導性が求められる用途、光触媒作用が求められる用途、半導体特性が求められる用途、潤滑作用や摺動性が求められる用途、強磁性が求められる用途、トポロジカル絶縁体特性が求められる用途、発光特性が要求される用途、高温での耐酸化性や耐化学反応性が求められる用途等幅広い用途に展開可能であり、例えば、自動車・航空機等の移動媒体用各種部品や内外装材、電気・電子機器用各種部品、高熱伝導性シート、高熱伝導性グリース、放熱板、電磁波吸収体、被膜、コーティング、グラフェンやカーボンナノチューブ等の機能性素材用の基板、リチウム二次電池等の二次電池の電解液や電極材、太陽電池のフィルムや電解液等の太陽電池用素材、電気二重層コンデンサ(キャパシタ)、燃料電池用の電解質、各種熱流体、フレキシブルデバイス、光学デバイス、マイクロエレクトロニクス部品(半導体関連の各種部品等)、エネルギー貯蔵デバイス、医療診断キット、光触媒や電極触媒等の触媒やこれら触媒の担体、遠紫外線発光デバイス、回転センサーや光センサー等のセンサー、アクチュエータ、真空条件や高耐熱条件等の過酷な条件下での潤滑剤(高真空グリース等)や摺動材、スピンエレクトロニクスデバイス、半導体デバイス、電界効果トランジスタ、熱電材料、トポロジカル絶縁体、超伝導体等に好適に用いることができる。
【0167】
また、本発明のナノシート含有分散液及びナノシート複合体の製造においては高価又は複雑な製造プロセスは不要とすることができ、ナノシート含有分散液やナノシート複合体及びナノシート複合体を用いて得られる樹脂複合材料等の生産コストを削減することも可能となる。