(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0013】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0014】
また、本明細書及び図面において、X軸、Y軸及びZ軸は、三次元直交座標系の三軸を表しており、Z軸方向を鉛直方向とし、Z軸に垂直な方向(XY平面に平行な方向)を水平方向としている。
【0015】
(実施の形態)
実施の形態に係る粒子検出センサ1について、
図1〜
図5を用いて説明する。
図1は、実施の形態に係る粒子検出センサ1の外観斜視図である。
図2は、第1筐体部81を外した状態での同粒子検出センサ1の斜視図である。
図3〜
図5は、同粒子検出センサ1の断面図であり、
図3はYZ平面における断面図、
図4は
図2のIV−IV線に沿ったXY平面における断面図、
図5は
図2のV−V線に沿ったXY平面における断面図である。なお、
図3では、投光素子10から出射した光の光線の軌跡を示している。
【0016】
図3及び
図4に示すように、粒子検出センサ1は、投光素子10と受光素子20とを備える光電式センサであって、検知領域DAにおける粒子による投光素子10からの光の散乱光を受光素子20で受光することにより大気中に含まれる粒子を検出する。粒子検出センサ1の検出対象の粒子は、例えば、2μm以下の微小なホコリ(塵埃)、花粉、煙、PM2.5等の微粒子であり、粒子検出センサ1は、粒子の有無、粒子の個数、粒子の大きさ、粒子の濃度等を検出することができる。
【0017】
図2〜
図4に示すように、粒子検出センサ1は、投光素子10と、受光素子20と、第1反射体30と、加熱装置40と、投光レンズ50と、光減衰部60と、第2反射体70とを備える。
【0018】
図1〜
図4に示すように、粒子検出センサ1は、筐体80を備えており、投光素子10、受光素子20、第1反射体30、加熱装置40、投光レンズ50、光減衰部60及び第2反射体70は、筐体80内に配置されている。なお、
図3に示すように、投光素子10及び受光素子20は、それぞれの光軸が検知領域DAで交差するように筐体80内に配置されている。
【0019】
検知領域DAは、測定対象の気体に含まれる粒子(エアロゾル)を検知するためのエアロゾル検知領域である。また、検知領域DAは、気体に含まれる粒子による散乱光が発生する光散乱部である。つまり、検知領域DAでは、気体に含まれる粒子に投光素子10から出射した光が反射して散乱光が発生する。本実施の形態において、検知領域DAは、平面視において、投光素子10の光軸J1と受光素子20の光軸J2とが交差する交点を含む領域となっており、第1反射体30内の粒子が通過する流路内に設定されている。検知領域DAは、例えばφ2mmである。
図1及び
図3に示すように、測定対象の気体は、筐体80に設けられた流入口80aから流入し、検知領域DAに誘導された後、流出口80bから流出する。
【0020】
投光素子10は、検知領域DAに光を投光する。投光素子10は、所定の波長の光を発する光源であり、例えば、赤外光、青色光、緑色光、赤色光又は紫外光を発する発光素子である。投光素子10としては、LED又はLD(半導体レーザ)等の半導体発光素子を用いることができる。安価で高出力の投光素子10としては、赤色光を発する赤色LDを用いるとよい。また、投光素子10は、2波長以上の混合波を発するように構成されていてもよい。本実施の形態において、投光素子10の光軸J1は、例えば検知領域DAを通るように設定されている。
【0021】
一例として、投光素子10は、
図6に示される光強度分布の光を出射する。
図6は、投光素子10のビームプロファイルの一例を示している。
図6に示すように、投光素子10から出射する光の任意断面の光強度分布は、ガウシアン分布となっている。なお、投光素子10の光強度分布は、少なくとも一部の光強度が変化していれば、
図6に示すものに限るものではない。
【0022】
なお、投光素子10の発光波長が短いほど、粒径の小さな粒子が検出しやすくなる。また、投光素子10の発光制御方式は特に限定されるものではなく、投光素子10から出射する光は、DC駆動による連続光又はパルス光等とすることができる。また、投光素子10の出力の大きさは、時間的に変化していてもよい。
【0023】
受光素子20は、検知領域DAにおける気体中の粒子による投光素子10からの光の散乱光を受光する受光部である。つまり、受光素子20は、投光素子10からの光が検知領域DAに存在する粒子によって反射して散乱された光を受光する。受光素子20は、受光した光を電気信号に変換する素子であり、例えば、フォトダイオード、フォトICダイオード、フォトトランジスタ、又は、高電子倍増管等である。
【0024】
第1反射体30は、検知領域DAにおける粒子による投光素子10の光の散乱光を反射して受光素子20に導く反射部材である。本実施の形態において、第1反射体30は、検知領域DAにおける粒子の散乱光を反射して受光素子20に集光させて導く集光ミラーである。
【0025】
図3に示すように、具体的には、第1反射体30は、内面(反射面)の形状が回転楕円体(回転楕円面)の一部をなす楕円ミラーであり、第1反射体30の内面の断面形状は楕円の一部となっている。この場合、第1反射体30の内面をなす回転楕円体を構成する楕円における2つの焦点は、一方の焦点(第1の焦点)が検知領域DA内に存在し、かつ、他方の焦点(第2の焦点)が受光素子20の近傍(例えば受光素子20の中心)に存在しているとよい。
【0026】
これにより、検知領域DAに存在する粒子によって発生する散乱光を、少ない反射回数(1回又は数回)で受光素子20に入射させることができる。つまり、多重反射による光の減衰を回避できる。この結果、受光素子20における受光効率を高めることができるので、粒子の検出効率を向上させることができる。なお、第1反射体30の内面形状をなす回転楕円体を構成する楕円は、例えば、長径が20mm〜100mm、短径が10mm〜50mmである。
【0027】
第1反射体30の内面は、反射面であり、例えば、散乱光が発生しにくい面であって、かつ、吸収率が小さくて反射率が高い面(鏡面等)であるとよい。これにより、第1反射体30に入射する光の多くを受光素子20に導くことができる。第1反射体30としては、内面そのものが反射面となるようにベース部材そのものを金属等で構成してもよいし、樹脂や金属のベース部材の内面に反射面となる反射膜を形成してもよい。反射膜としては、アルミニウム、金、銀又は銅等の金属反射膜、鏡面反射膜、又は、誘電体多層膜等を用いることができる。より具体的には、反射膜としては、銀メッキ又はアルミ蒸着膜を用いることができる。このような反射膜を形成することによって、第1反射体30の内面の反射率を向上させることができる。
【0028】
第1反射体30には、投光素子10の光を第1反射体30の内部に導入するための光導入孔31と、第1反射体30から出て行く光が通過する光排出孔32とが設けられている。光導入孔31は、第1反射体30の外部から内部に光を入れるための貫通孔であり、光排出孔32は、第1反射体30の内部から外部に光を出すための貫通孔である。光導入孔31及び光排出孔32は、円形開口を有する円筒状の貫通孔であるが、光導入孔31及び光排出孔32の形状は、これに限るものではない。
【0029】
光導入孔31及び光排出孔32は、投光素子10の光軸J1上に設けられている。つまり、光導入孔31及び光排出孔32は、検知領域DAを介して対向する位置に設けられている。したがって、投光素子10から出射して光導入孔31から第1反射体30に導入された光のうち検知領域DAで粒子に当たらなかった光は、第1反射体30を直線状に通過して光排出孔32を通って第1反射体30の外部に出て行く。
【0030】
また、第1反射体30には、流入口80aから筐体80内に流入した粒子を第1反射体30の内部に導入するための粒子導入孔33と、第1反射体30の内部の粒子を第1反射体30の外部に排出するための粒子排出孔34とが設けられている。つまり、粒子導入孔33及び粒子排出孔34は、筐体80内に流入した粒子(気体)の流路となっている。
【0031】
粒子導入孔33及び粒子排出孔34は、検知領域DAを介して対向する位置に設けられている。具体的には、粒子導入孔33及び粒子排出孔34は、鉛直方向(Z軸方向)に沿って設けられている。粒子導入孔33及び粒子排出孔34は、円形開口を有する円筒状の貫通孔であるが、粒子導入孔33及び粒子排出孔34の形状は、これに限るものではない。
【0032】
加熱装置40は、気体(大気)を加熱するヒータであり、例えばヒータ抵抗である。加熱装置40でよって気体を加熱することで、筐体80内に鉛直方向に上昇気流(Z軸正方向への気体の流れ)を発生させることができる。これにより、粒子を含む気体を流入口80aから筐体80内に容易に引き込んで検知領域DAに誘導することができる。
【0033】
図3及び
図4に示すように、投光レンズ50は、投光素子10の前方に配置されており、投光素子10から出射する光(投光ビーム)を検知領域DAに向けて進行させるように構成されている。投光素子10から出射する光は、投光レンズ50を介して検知領域DAに到達する。投光レンズ50は、例えば、投光素子10から3mm〜5mmの位置に配置されており、投光レンズ50の集光点は投光素子10から16mm程度の位置である。
【0034】
投光レンズ50は、例えば投光素子10ら出射する光を検知領域DAに集束(集光)させる集束レンズである。つまり、投光レンズ(集束レンズ)50の集光点は、検知領域DA内に存在しており、本実施の形態では、第1反射体30を構成する楕円の焦点に一致している。投光レンズ50は、例えばアクリル(PMMA)又はポリカーボネート(PC)等の透明樹脂材料からなる樹脂レンズ又はガラス材料からなるガラスレンズであり、厚みが3mm程度で、直径が10mm程度である。
【0035】
図3に示すように、光減衰部60は、光を減衰させるための光減衰構造(光トラップ構造)を有する。光減衰部60は、例えば、光減衰部60に進入した不要光(迷光)を多重反射させることで減衰させる不要光減衰部である。本実施の形態において、光減衰部60は、光排出孔32を介して第1反射体30から出て行く光を減衰させる。これにより、第1反射体30から光減衰部60に入った光を光減衰部60で減衰させて第1反射体30に戻らないようにすることができる。なお、光減衰部60の形状は、筐体80(第1支持部材81a)の樹脂成形による内部構造によって構成されている。
【0036】
本実施の形態において、光減衰部60は、検知領域DAを介して投光素子10と対向する位置に設けられている。具体的に、光減衰部60は、第1反射体30に隣接する閉空間の光学室であり、第1反射体30に設けられた光排出孔32によって第1反射体30と空間的に繋がっている。
【0037】
光減衰部60には、第2反射体70が設けられている。第2反射体70は、光排出孔32から排出した光を反射して光減衰部60の奥に導く反射部材である。本実施の形態において、第2反射体70は、光排出孔32を介して第1反射体30から排出された光を反射して光減衰部60の奥に集光させる集光ミラーであり例えば、光排出孔32から排出された光を線状に集光させるシリンドリカルミラーである。第2反射体70を設けることによって、投光素子10から出射した光のうち光減衰部60に入射した迷光(不要光)を光減衰部60の奥に再集光させることができるので、光減衰部60に入射した光が第1反射体30に戻ることを抑制することができる。
【0038】
筐体80は、投光素子10、受光素子20、第1反射体30、加熱装置40及び投光レンズ50等を収容するケースである。具体的には、筐体80は、投光素子10、受光素子20、第1反射体30、加熱装置40及び投光レンズ50等を保持するように構成されている。筐体80は、例えば扁平直方体の箱状のケースである。
【0039】
図1及び
図3に示すように、筐体80には、流入口80aと流出口80bとが設けられている。粒子を含む気体は、流入口80aから筐体80の内部に流入し、検知領域DAを通って流出口80bから筐体80の外部に流出する。流入口80aは、筐体80内に大気を導入するための大気導入孔である。流出口80bは、筐体80から気体を排出するための大気排出孔である。なお、流入口80aの開口面積を流出口80bの開口面積よりも大きくすることによって、効率良く筐体80内に大気を導入して排気することができる。
【0040】
図1に示すように、筐体80は、第1筐体部81と第2筐体部82とによって構成されている。また、
図2及び
図3に示すように、第1筐体部81は、さらに、第1支持部材81aと第2支持部材81bとによって構成されている。
【0041】
第1支持部材81aは、少なくとも受光素子20を支持している。本実施の形態において、第1支持部材81aは、受光素子20、第1反射体30、加熱装置40及び投光レンズ50を支持している。つまり、投光レンズ50は、第2支持部材81bとは異なる部材、具体的には、第1支持部材81aに支持されている。また、第2支持部材81bは、投光素子10を支持している。
【0042】
第1支持部材81aと第2支持部材81bとは線膨張係数が異なっている。本実施の形態において、第1支持部材81aの線膨張係数は、第2支持部材81bの線膨張係数よりも大きい。具体的には、第1支持部材81aは樹脂材料によって構成され、第2支持部材81bは金属材料によって構成されている。例えば、第1支持部材81aは黒色のABS樹脂によって構成され、第2支持部材81bはアルミニウムによって構成されている。また、第2筐体部82は、第1支持部材81aと同じ樹脂材料によって構成されている。具体的には、第2筐体部82は、黒色のABS樹脂によって構成されている。なお、第1筐体部81(第1支持部材81a及び第2支持部材81b)と第2筐体部82の材料は、これらの材料に限るものではない。
【0043】
図4及び
図5に示すように、第1支持部材81aは、受光素子20が配置される第1配置部81a1と、第2支持部材81bが配置される第2配置部81a2とを有する。例えば、第1配置部81a1は受光素子20が載置される載置面であり、第2配置部81a2は第2支持部材81bが載置される載置面である。第1配置部81a1と第2配置部81a2とは、投光素子10の光軸J1からの距離が異なる位置に設けられている。本実施の形態では、投光素子10から光が出ていない状態(非発光時)において、第1配置部81a1と投光素子10の光軸J1との距離が第2配置部81a2と投光素子10の光軸J1との距離よりも
小さくなるように設定されている。
【0044】
また、第1支持部材81aと第2支持部材81bとは複数箇所で接続されている。第1支持部材81aと第2支持部材81bとは、互いに対向する面が面接触した状態で2本のねじ91及び92によって固定されている。
【0045】
以上のように構成される粒子検出センサ1では、例えば以下のようにして、粒子検出センサ1(筐体80)内に流入した気体(大気)に含まれる粒子を検出することができる。
【0046】
この場合、流入口80aから筐体80内に流入した気体は、検知領域DAに導かれる。このとき、気体に粒子(エアロゾル)が含まれていると、投光素子10から出射した光は、検知領域DAに存在する粒子で反射する。これにより、粒子から散乱光が発生する。発生した粒子の散乱光の一部は、第1反射体30で反射されて受光素子20に導かれる。受光素子20に入射した光は電気信号に変換されて出力される。この電気信号によって、粒子検出センサ1内に流入した気体中に粒子が存在することが分かる。
【0047】
また、受光素子20で受光した信号の大きさ、つまり、粒子による散乱光の光強度の大きさによって、粒子の大きさ(粒径)を判別することができる。したがって、大気中に含まれる粒子が、ホコリであるか、花粉であるか、煙であるか、PM2.5(微小粒子状物質)であるかを判別することができる。
【0048】
さらに、受光素子20で検出される信号の出力の1つ1つ、つまり、粒子による散乱光の光強度のピーク1つ1つは、粒子の1つ1つに対応するので、粒子検出センサ1内に流入された気体中の粒子の個数(量)や濃度を算出することもできる。
【0049】
一方、粒子検出センサ1内に流入された大気に粒子が含まれていない場合、検知領域DAには粒子が存在しないので、投光素子10から出射した光は検知領域DAを通過してそのまま直進するので、粒子による散乱光が発生しない。したがって、この場合、基本的には受光素子20の反応がないので、粒子検出センサ1内に流入された気体中に粒子が存在しないと判断される。
【0050】
次に、本実施の形態における粒子検出センサ1の光学的な動作について、
図7〜
図9を用いて説明する。
図7は、半導体発光素子についての温度と光出力変化との関係を示す図である。
図8は、実施の形態に係る粒子検出センサ1の動作原理を説明するための図であり、
図1〜
図5に示す粒子検出センサ1を簡略化して模式的に示している。
図9は、粒子検出センサ1の動作原理を説明するための図であり、低温時と高温時における投光素子10の光出強度分布を示している。
【0051】
図7に示すように、LD(半導体レーザ)又はLED等の半導体発光素子は、発光によって半導体発光素子自身から熱が発生し、これにより半導体発光素子の温度が上昇して光出力が低下するという温度特性を有する。
【0052】
このため、投光素子として半導体発光素子を用いた粒子検出センサでは、粒子検出センサの使用に伴って投光素子の光出力が低下する。このため、投光素子の温度による光出力の変化を補正しなければ、投光素子の発光に伴って経時的に検出精度が低下し、検出精度がばらつく。
【0053】
そこで、本実施の形態における粒子検出センサ1では、第1支持部材81a及び第2支持部材81bの線膨張係数の大小関係と、投光素子10の光軸J1及び受光素子20の光軸J2の位置とを予め調整して設定しておくことで、投光素子10の温度による光出力の変化を補正している。
【0054】
具体的には、本実施の形態における粒子検出センサ1では、第1支持部材81aと第2支持部材81bとの線膨張係数を異ならせるとともに、低温時(投光素子10から光が出ていない状態等)において、投光素子10の光軸J1から第1配置部81a1までの距離と投光素子10の光軸J1から第2配置部81a2までの距離とが異なるように第1支持部材81aを構成している。
【0055】
本実施の形態では、第1支持部材81aの線膨張係数を第2支持部材81bの線膨張係数よりも大きくし、
図8(a)に示すように、投光素子10の非発光時である低温時において、第1配置部81a1と投光素子10の光軸J1との距離が第2配置部81a2と投光素子10の光軸J1との距離よりも
小さくなるように第1支持部材81aを構成している。この場合、低温時において、投光素子10の光軸J1と受光素子20の光軸J2とは光学的に一致させていない。
【0056】
これにより、
図8(b)に示すように、高温時(粒子検出センサ1を動作させる等して投光素子10が発光している状態等)においては、上記線膨張係数の関係によって第1支持部材81aが第2支持部材81bよりも熱膨張量が大きくなるので、第1配置部81a1上の受光素子20の光軸J2と第2配置部81a2上の投光素子10の光軸J1とが近づくことになる。これにより、投光素子10の光軸J1と受光素子20の光軸J2とが光学的に一致する。つまり、投光素子10の光軸J1と受光素子20の光軸J2とが投光レンズ50を介して連続することになる。
【0057】
このとき、低温時には投光素子10の光軸J1と受光素子20の光軸J2とが光学的に一致していないので、
図9に示すように、低温時における受光素子20の光入力は、低温時の投光素子10の光出力を示す光強度分布における点P1の光強度での粒子の散乱光によるものとなる。つまり、低温時において、受光素子20は、投光素子10から出射する光に対して、ピーク強度ではなくピーク強度よりも低い光強度の光によって生じる粒子の散乱光を受光する。
【0058】
一方、高温時には、
図9に示すように、投光素子10の温度特性によって投光素子10の光出力は低下することになるが、上記のように、受光素子20の光軸J2と投光素子10の光軸J1とが近づくことになるので、受光素子20は、投光素子10から出射する光のピーク強度に近い強度(点P2)の光出力によって生じる散乱光を受光する。言い換えると、高温時において受光素子20の光軸J2と投光素子10の光軸J1とが近づいて光学的に一致するように設定されている。
【0059】
この結果、
図9に示すように、低温時及び高温時のいずれにおいても、受光素子20は、投光素子10から出射する光に対して、ほぼ同じ光強度の光によって生じる粒子の散乱光を受光することになる。
【0060】
このように、本実施の形態における粒子検出センサ1では、低温時においてあえて投光素子10のピーク強度の光を用いずに粒子を検出している。これにより、低温時ではピーク強度の光による粒子の散乱光を用いていないので検出精度を多少犠牲することになるが、低温時と高温時とでほぼ同じ光強度の光による粒子の散乱光を用いているので、低温時の検出精度と高温時の検出精度との差をなくすことができる。つまり、低温時と高温時との検出精度の変化を小さくすることができる。
【0061】
以上、本実施の形態における粒子検出センサ1によれば、第1支持部材81a及び第2支持部材81bの線膨張係数の大小関係と、投光素子10の光軸J1及び受光素子20の光軸J2の位置とを予め調整して設定しておくことで、温度センサを使用することなく投光素子10の温度による光出力の変化を補正している。したがって、低コストで投光素子10の温度による光出力の変化に伴う検出精度のばらつきを抑制することができる。つまり、検出精度に対する投光素子10の温度依存性をなくし、検出精度を一定に維持することができる粒子検出センサを実現することができる。
【0062】
なお、本実施の形態における粒子検出センサ1では、投光レンズ50を用いたが、
図10の(a)及び(b)に示すように、投光レンズ50は用いなくて、投光素子10の温度による光出力の変化を補正することができる。
【0063】
この場合、
図8(a)と同様に、第1支持部材81aの線膨張係数を第2支持部材81bの線膨張係数よりも大きくし、
図10(a)に示すように、低温時において、第1配置部81a1と投光素子10の光軸J1との距離が第2配置部81a2と投光素子10の光軸J1との距離よりも
小さくなるように第1支持部材81aを構成しているが、投光レンズ50を用いていないので、
図10(b)に示すように、高温時においては、投光レンズ50を用いることなく投光素子10の光軸J1と受光素子20の光軸J2とが光学的に一致するように、第1支持部材81a及び第2支持部材81bが構成されている。
【0064】
これにより、上記同様に、低温時及び高温時のいずれにおいても、受光素子20は、投光素子10から出射する光に対して、ほぼ同じ光強度の光によって生じる粒子の散乱光を受光する。したがって、温度センサを使用することなく投光素子10の温度による光出力の変化を補正できるので、低コストで投光素子10の温度による光出力の変化に伴う検出精度のばらつきを抑制することができる。
【0065】
また、本実施の形態における粒子検出センサ1のように、第1支持部材81aと第2支持部材81bとは複数箇所で接続されているとよい。例えば、本実施の形態における粒子検出センサ1のように、第1支持部材81aと第2支持部材81bとをねじ91及び92よって接続することができる。この場合の粒子検出センサは、
図11の(a)及び(b)に示すように模式的に表すことができる。
【0066】
このように、第1支持部材81aと第2支持部材81bとを複数箇所で接続することによって、
図11(b)に示すように、高温時において第2支持部材81bをたわませることができる。この結果、投光素子10の光軸J1の角度を変化させることができるので、第2支持部材81bの熱膨張量又は位置の変化が微小であったとしても投光素子10の光軸J1と受光素子20の光軸J2とのずれを大きくすることができる。したがって、第2支持部材81bの構造が小さくても、投光素子10の温度による光出力の変化を効果的に補正することができる。
【0067】
なお、第1支持部材81aと第2支持部材81bとは直接接続されていてもよいし間接的に接続されていてもよい。また、
図11の(a)及び(b)に示される粒子検出センサでは、投光レンズ50を用いていないが、投光レンズ50を用いて調整されていてもよい。
【0068】
また、本実施の形態における粒子検出センサ1において、投光レンズ50は、第2支持部材81bとは異なる部材に支持されている。具体的には、投光レンズ50は、第1支持部材81aに支持されている。
【0069】
これにより、投光素子10と投光レンズ50の焦点との位置を変化させることができる。この結果、投光素子10の光軸J1の角度を変化させることができるので、上記同様に、第2支持部材81bの熱膨張量又は位置の変化が微小であったとしても投光素子10の光軸J1と受光素子20の光軸J2とのずれを大きくすることができる。したがって、第2支持部材81bの構造が小さくても、投光素子10の温度による光出力の変化を効果的に補正することができる。
【0070】
(変形例)
以上、本発明に係る粒子検出センサについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0071】
例えば、上記実施の形態では、第1支持部材81aの線膨張係数を第2支持部材81bの線膨張係数よりも大きくし、低温時において第1配置部81a1と投光素子10の光軸J1との距離が第2配置部81a2と投光素子10の光軸J1との距離よりも
小さくなるように第1支持部材81aを構成したが、これに限るものではない。
【0072】
具体的には、第1支持部材81aの線膨張係数を第2支持部材81bの線膨張係数よりも小さくし、
図12(a)に示すように、低温時において第1配置部81a1と投光素子10の光軸J1との距離が第2配置部81a2と投光素子10の光軸J1との距離よりも小さくなるように第1支持部材81aを構成してもよい。
【0073】
これにより、
図12(b)に示すように、高温時においては、上記線膨張係数の関係によって第2支持部材81bが第1支持部材81aよりも熱膨張量が大きくなるので、第2配置部81a2上の投光素子10の光軸J1と第1配置部81a1上の受光素子20の光軸J2とが近づくことになる。これにより、投光素子10の光軸J1と受光素子20の光軸J2とが光学的に一致する。
【0074】
この結果、
図9で説明した動作原理と同じ動作原理によって、低温時及び高温時のいずれにおいても、受光素子20は、投光素子10から出射する光に対して、ほぼ同じ光強度の光によって生じる粒子の散乱光を受光することになる。これにより、
図12の(a)及び(b)に示す形態についても、温度センサを使用することなく投光素子10の温度による光出力の変化を補正することができる。したがって、低コストで投光素子10の温度による光出力の変化に伴う検出精度のばらつきを抑制することができる。
【0075】
また、上記実施の形態では、投光素子10の光軸J1を基準にして、低温時における投光素子10の光軸J1から第1配置部81a1までの距離と投光素子10の光軸J1から第2配置部81a2までの距離が異なるように第1支持部材81aを構成したが、これに限るものではない。
【0076】
具体的には、受光素子20の光軸J2を基準にして、低温時における受光素子20の光軸J2から第1配置部81a1までの距離と受光素子20の光軸J2から第2配置部81a2までの距離が異なるように第1支持部材81aを構成してもよい。この場合も上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
また、上記実施の形態における粒子検出センサは、ダストセンサに搭載することができる。例えば、当該ダストセンサは、内蔵する粒子検出センサによってホコリの粒子を検知した場合、ホコリを検知したことを音や光によって報知したり表示部に表示したりする。
【0078】
また、上記実施の形態における粒子検出センサは、煙感知器に搭載することができる。例えば、煙感知器は、内蔵する粒子検出センサによって煙の粒子を検知した場合、煙を検知したことを音や光によって報知したり表示部に表示したりする。
【0079】
また、上記実施の形態における粒子検出センサ又は上記ダストセンサは、空気清浄機、換気扇又はエアコン等に搭載することができる。この場合、例えば、当該空気清浄機、換気扇又はエアコンは、内蔵する粒子検出センサによってホコリの粒子を検知した場合、単にホコリを検知したことを表示部に表示してもよいし、ファンを起動したりファンの回転速度を変更したり等のファンの制御を行ったりしてもよい。
【0080】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。