(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に例示説明する。
【0027】
図1に示す太陽光発電システム1は、太陽電池パネル2をインバータからなるパワーコンディショナ(電力変換装置:PCS)3により電力系統に連携させた構成を有している。
【0028】
太陽電池パネル2は、8数の太陽電池モジュール4が直列に接続された太陽電池ストリング5を一単位とし、4組の太陽電池ストリング5は接続箱6の内部で電気的に並列に接続されることで集電され、接続箱6を介してパワーコンディショナ3に電気的に接続されている。接続箱6は、それぞれの太陽電池ストリング5に対応した4つの断路器6aと、それぞれの断路器6aに対応した逆流防止用ダイオード6bとを備えている。
【0029】
パワーコンディショナ3は、太陽電池パネル2により発電された直流の発電電流を交流に変換して電力系統に出力するとともに、全ての太陽電池ストリング5の発電電力を最大にするようにMPPT(Maximum Power Point Tracking)方式により電圧を制御する。
【0030】
図2に示すように、それぞれの太陽電池モジュール4は、その内部構成として、それぞれ10個の太陽電池セル(発電素子)4aが5個ずつ2列に並べて配置されるとともに電気的に直列に接続されたセルストリング4bと、セルストリング4bを迂回する電流経路上に設けられたバイパスダイオード(BPD)4cと、を含んで構成される3つのクラスタ4dを有し、それぞれのクラスタ4dが互いに電気的に直列に接続された構成となっている。なお、便宜上、
図2においては、それぞれのセルストリング4bにおいて1つの太陽電池セル4aにのみ符号を付してある。
【0031】
バイパスダイオード4cは、影や故障等によってセルストリング4bに不均一に太陽光が照射されるなどして、クラスタ4d内のセルストリング4bの発電量が相対的に低下した部分の両端電圧が同じクラスタ4d内のセルストリング4bの正常に発電している部分によって発生した発電電圧より高くなってバイパスダイオード4cの順方電圧に等しくなったときに作動し、セルストリング4bを迂回するように発電電流をバイパスさせて、セルストリング4bにホットスポットが発生することを回避するためのものである。したがって、正常な太陽電池モジュール4の全体に均一に太陽光が照射されると、各太陽電池セル4aの発電によって生じる起電力の合計がバイパスダイオード4cの順方向電圧以上となるので、
図2中に太線で示すように、発電電流はバイパスダイオード4cを通らずに各セルストリング4bを順に流れる。
【0032】
図示する場合では、太陽電池パネル2は、4つの太陽電池ストリング5を紙面上で縦方向に複数段並列に配置した構成とされているが、太陽電池パネル2を構成する太陽電池ストリング5の数は任意である。また、太陽電池ストリング5は、それぞれ8枚の太陽電池モジュール4を直列に接続した構成とされているが、太陽電池ストリング5を構成する太陽電池モジュール4の数も任意である。さらに、太陽電池モジュール4は、それぞれ10個の太陽電池セル4aを含む3つのクラスタ4dを有する構成とされているが、太陽電池モジュール4を構成するクラスタ4dの数及びクラスタ4dを構成する太陽電池セル4aの数もそれぞれ任意である。
【0033】
上記の太陽光発電システム1において、長期間の使用等によって太陽電池モジュール4が劣化すると、太陽電池パネル2の出力電圧が低下することになるので、太陽電池モジュール4の劣化を検出する必要がある。本発明の一実施の形態である劣化判別方法によれば、複数の太陽電池モジュール4が直列に接続された太陽電池ストリング5から、判別対象となる太陽電池モジュール4を太陽電池ストリング5から切り離すことなく当該太陽電池ストリング5に接続したままの状態で、劣化した太陽電池モジュール4を判別することができる。
【0034】
本発明の一実施の形態である劣化判別方法は、例えば、
図3に示す構成を有する本発明の一実施の形態である太陽電池モジュールの劣化判別装置10を用いて実施することができる。太陽電池モジュールの劣化判別装置10は、I−V特性測定部11と劣化判定部12とを有している。
【0035】
太陽電池モジュール4の劣化判別に際しては、
図1に示すように、劣化判別の対象となる太陽電池モジュール4を含む太陽電池ストリング5が断路器6aを開くことでパワーコンディショナ3から解列され、当該太陽電池ストリング5に断路器6aを介してI−V特性測定部11が接続されて閉ループが構成される。
【0036】
図3に示すように、I−V特性測定部11は、太陽電池ストリング5の導電線5a、5bの両端に接続される可変負荷抵抗11aと、太陽電池ストリング5の導電線5bに直列に接続されて太陽電池ストリング5に流れる電流値を測定する電流測定部11bと、太陽電池ストリング5の導電線5a、5bの両端に可変負荷抵抗11aと並列に接続されて可変負荷抵抗11aの両端接続部分における電圧値を測定する電圧測定部11cとを備えている。可変負荷抵抗11aの電圧値は太陽電池ストリング5の両端電圧に等しい。可変負荷抵抗11aは、例えばFET(Field Effect Transistor)などの半導体素子が使用される。
【0037】
I−V特性測定部11はさらに制御部11dを備えている。制御部11dは、例えばCPU(中央演算処理装置)等を備えたマイクロコンピュータにより構成することができる。
【0038】
可変負荷抵抗11aは制御部11dに接続され、負荷抵抗の値を変化させるように制御部11dによりその作動が制御される。また、電流測定部11bと電圧測定部11cもそれぞれ制御部11dに接続され、電流測定部11bが測定した電流値と電圧測定部11cが測定した電圧値はそれぞれ制御部11dに入力される。
【0039】
I−V特性測定部11は、劣化判定部12からの指令をトリガーとして、可変負荷抵抗11aの負荷抵抗の値を変化させながら太陽電池ストリング5の電流値と電圧値とを測定することで、太陽電池ストリング5のI−V特性を測定することができる。例えば、I−V特性測定部11は、複数の太陽電池モジュール4を全て遮光しない状態において可変負荷抵抗11aの負荷抵抗の値を変化させながら太陽電池ストリング5の電流値と電圧値とを測定することで、太陽電池ストリング5の基準I−V特性を測定することができる。また、I−V特性測定部11は、複数の太陽電池モジュール4から選択した1つの太陽電池モジュール4を、太陽電池モジュール4の導電経路がこの太陽電池モジュール4を構成する複数のクラスタ4dのそれぞれに設けられたバイパスダイオード4cを経由した経路となるように遮光した状態において、可変負荷抵抗11aの負荷抵抗の値を変化させながら太陽電池ストリング5の電流値と電圧値とを測定することで、太陽電池ストリング5の遮光I−V特性を測定することができる。I−V特性測定部11は、上記のように太陽電池ストリング5のI−V特性を測定した後、その測定データを劣化判定部12に無線で送信する。
【0040】
なお、I−V特性とは、一般に、太陽電池モジュールまたは太陽電池ストリングに接続された可変負荷抵抗の所定の抵抗値に対して太陽電池モジュールまたは太陽電池ストリングに流れる電流とその時の負荷抵抗の両端電圧値とを、抵抗値を変えながら測定して得られる関係式のことであり、I−V曲線(I−Vカーブ)とも呼ばれるものである。以下、「I−V特性」を「IV特性」とする場合がある。
【0041】
劣化判定部12は制御部12aを備えている。制御部12aは、例えばCPU(中央演算処理装置)等を備えたマイクロコンピュータにより構成することができる。
【0042】
劣化判定部12の制御部12aとI−V特性測定部11の制御部11dとの間は、無線インターフェース11e、12bにより無線でデータの送受信が行われるように構成されている。無線インターフェース11e、12bとしては、例えば特定小電力無線局を用いることができる。
【0043】
なお、劣化判定部12の制御部12aとI−V特性測定部11の制御部11dとの間のデータの送受信は、無線インターフェース11e、12bを用いた無線通信に替えて、有線通信により行う構成とすることもできる。この場合、I−V特性測定部11と劣化判定部12とを一体の装置として構成することもできる。
【0044】
劣化判定部12はデータ記憶部12cを有し、I−V特性測定部11の制御部11dから送信されてきたI−V特性等の各種データを用いて、以下に説明する太陽電池モジュールの劣化判別処理を実行するとともに、各種データをデータ記憶部12cに記憶することができる。また、劣化判定部12は、I−V特性(I−Vカーブ)や判別結果等の各種情報を表示するモニタ等の表示部12dと、測定開始等の各種の操作が操作者により入力される操作部12eとを備えている。
【0045】
次に、このような構成を有する太陽電池モジュールの劣化判別装置10を用いて、複数の太陽電池モジュール4が直列に接続された太陽電池ストリング5から劣化した太陽電池モジュール4を判別する手順について説明する。
【0046】
まず、
図1に示すように、劣化判別の対象となる太陽電池モジュール4を含む太陽電池ストリング5に太陽電池モジュールの劣化判別装置10を接続し、I−V特性測定部11により、複数の太陽電池モジュール4を全て遮光しない状態における太陽電池ストリング5の基準I−V特性を測定する。より具体的には、太陽電池ストリング5を構成する全ての太陽電池モジュール4を遮光しない状態で、可変負荷抵抗11aの負荷抵抗を変化させながら太陽電池ストリング5の電流値及び電圧値を測定し、これらの測定結果から遮光しない状態における太陽電池ストリング5の基準I−V特性を測定する。
【0047】
I−V特性測定部11により測定された基準I−V特性は、無線インターフェース11e、12bにより劣化判定部12に送信されて表示部12dに表示される。表示部12dに表示される基準I−V特性の一例を
図4に示す。
【0048】
なお、
図4に示す基準I−V特性において、破線で囲んだ領域Aは太陽電池ストリング5の中にバイパスダイオード4cが作動しているクラスタ4dが存在していることを示し、破線で囲んだ領域Bは太陽電池ストリング5の中に相対的に発電効率が低下した太陽電池モジュール4が存在していることを示す。
【0049】
次に、太陽電池モジュールの劣化判別装置10が接続された太陽電池ストリング5を構成する複数の太陽電池モジュール4の中から劣化の判別対象となる1つの太陽電池モジュール4を選択し、この太陽電池モジュール4を遮光板で遮光する。そして、劣化の判別対象となる1つの太陽電池モジュール4が遮光板で遮光された状態における太陽電池ストリング5の遮光I−V特性をI−V特性測定部11により測定する。
【0050】
ここで、遮光I−V特性の測定においては、選択した1つの太陽電池モジュール4の全面を遮光板により覆うようにすることができるが、
図5に示すように、当該太陽電池モジュール4の導電経路を、この太陽電池モジュール4を構成する複数のクラスタ4dのそれぞれに設けられたバイパスダイオード4cを経由した経路とすることができれば、太陽電池モジュール4の一部の領域のみを遮光板20によって遮光するようにしてもよい。
【0051】
I−V特性測定部11により測定された遮光I−V特性は、無線インターフェース11e、12bを介して劣化判定部12に送信され、
図6に示すように、表示部12dに基準I−V特性とともに表示される。
【0052】
次に、劣化判定部12は、I−V特性測定部11により測定された遮光I−V特性のバイパスダイオード4cの動作点Psから低圧側に延びる線形領域における電圧値V1sと、I−V特性測定部11により測定された基準I−V特性の線形領域における電圧値V1sと同一の測定点(同一の電流値)における電圧値V1rとから判定指標を抽出し、この判定指標に基づいて、劣化判別の対象となる太陽電池モジュール4の劣化の有無を判定する。太陽電池モジュール4は3つのクラスタ4dで構成されているので、太陽電池モジュール4の劣化はクラスタ4dの劣化である。
【0053】
ここで、太陽電池モジュール4のクラスタ4dの劣化(クラスタ劣化)には、クラスタ高抵抗化、クラスタ断線及びバイパスダイオード4cのショート故障がある。
【0054】
クラスタ高抵抗化とは、クラスタ4dが電気的な導通はあるものの高抵抗となっているためにバイパスダイオード4cが作動している劣化状態のことである。この劣化状態においては、太陽電池ストリング5の全体のI−V特性の開放電圧値Vocは、クラスタ劣化がない正常な太陽電池ストリング5の開放電圧値Vocから変化しないが、開放電圧値Vocからバイパスダイオード4cの動作点Pr、Psまでの間に直線に近い電圧領域(バイパスダイオード4cの作動しない領域)が生じ、バイパスダイオード4cの動作点Pr、Psよりも低圧側においてはI−V特性は立ち上がっている。
【0055】
クラスタ断線とは、クラスタ4dに電気的な導通がなくなったためにバイパスダイオード4cが作動している劣化状態のことである。この劣化状態では、バイパスダイオード4cの順方向電圧をVdとすると、太陽電池ストリング5の全体のI−V特性の開放電圧値Vocは、クラスタ劣化がない正常な太陽電池ストリング5の開放電圧値からVc−Vdだけシフトする。ここで、Vcは、Voc/(1つの太陽電池モジュール4を構成するクラスタ数×太陽電池ストリング5を構成する太陽電池モジュール4の数)で定義されるクラスタ電圧であり、本実施の形態においては、Vc=Voc/(3×8)である。
【0056】
バイパスダイオード4cのショート故障とは、バイパスダイオード4cの整流機能が消失してバイパスダイオード4cが電気的にショートした劣化状態のことである。この劣化状態では、バイパスダイオード4cの順方向電圧Vdは生じないので、I−V特性は、正常な太陽電池ストリング5の開放電圧値VocからVcだけ低圧側へシフトする。
【0057】
太陽電池ストリング5がクラスタ劣化を含まない場合には、そのI−V特性の開放電圧値Vocの近傍における接線の勾配は、dI/dV=−1/Rs(Rsは太陽電池ストリングの等価回路の直列抵抗成分)で与えられることが知られている。Rsは数年単位の長時間で変化するが、I−V特性を測定する時間スケール(数百ミリ秒)に比べて十分に長く、I−V特性の測定中は定数と見做せるので、I−V特性の形状は開放電圧値Vocの近傍で線形性(直線性)を有する。このI−V特性の線形性は、クラスタ断線またはバイパスダイオード4cのショート故障のクラスタ劣化を含む太陽電池ストリング5においても、その開放電圧値Vocの近傍で成り立つ。一方、クラスタ4dが高抵抗化したクラスタ劣化の場合は、バイパスダイオード4cの動作点Psから低圧側に延びる領域において、I−V特性に上記したdI/dV=−1/Rsの関係を満たす線形性(直線性)を有する領域があると見做せる。すなわち、遮光I−V特性は、遮光によるバイパスダイオード4cの作動領域を有するものとなるが、このバイパスダイオード4cの動作点Psから低圧側に延びる線形性を有する領域が線形領域となる。
図6に示すように、基準I−V特性及び遮光I−V特性が、それぞれバイパスダイオード4cの作動領域を有する場合には、基準I−V特性及び遮光I−V特性における線形領域は、バイパスダイオード4cの動作点Pr、Psから低圧側に延びる領域であって、上記したdI/dV=1/Rs(Rs:直列抵抗成分)の関係を満たす線形性(直線性)を有する領域のことである。
【0058】
I−V特性の測定時に十分な発電量(例えば短絡電流値Iscが2A以上)の場合は、多くの市販のバイパスダイオード4cの順方向電圧Vdを勘案すると、短絡電流値Iscの20%の電流値であればI−V特性の上記の線形性(直線性)は保たれている。
【0059】
そこで、本発明の実施例1の態様では、劣化判定部12は、
図6に示すように、短絡電流値Iscの20%に相当する電流値(20%電流値)を測定点とし、遮光I−V特性のバイパスダイオード4cの動作点Psから低圧側に延びる線形領域上の当該測定点(20%電流値)に対応する電圧値V1sと、基準I−V特性の線形領域上の当該測定点(20%電流値)に対応する電圧値V1rとを得て、これらの電圧値V1sと電圧値V1rとの電位差ΔV1を判定指標として抽出し、この電位差ΔV1に基づいて太陽電池モジュール4の劣化の有無を判定するようにしている。
【0060】
なお、本実施例1では、短絡電流値Iscの20%に相当する電流値を測定点として基準I−V特性の電圧値V1rと遮光I−V特性の電圧値V1sとを得るようにしているが、バイパスダイオード4cの動作点Psから低圧側に延びる線形領域上であれば、何れの電流値に対応する点を測定点として設定してもよい。また、遮光I−V特性の直線性はバイパスダイオード4cの動作点Psに近いほど良くなるので、遮光I−V特性のバイパスダイオード4cの動作点Psにより近い位置となる電流値を測定点として設定するのが好ましく、さらに、遮光I−V特性のバイパスダイオード4cの動作点Psを測定点として設定するのがより好ましい。
【0061】
基準I−V特性の線形領域と遮光I−V特性の線形領域においては、当該線形領域における同一の電流値に対する電位差ΔV1(離散値)は、太陽電池モジュール4のクラスタ4dの劣化数に1対1で対応する。したがって、本実施の形態の太陽電池モジュールの劣化判別方法によれば、上記した判定指標すなわち電位差ΔV1に基づいて、太陽電池モジュール4のクラスタ劣化の有無だけでなく、劣化したクラスタ4dの数を判定することができる。
【0062】
例えば、太陽電池モジュール4を構成する3つのクラスタ4dのうち1つのクラスタ4dが劣化し、隣接する太陽電池モジュール4からの電流が、1つの劣化したクラスタ4dにおいてはセルストリング4bに流れることなくバイパスダイオード4cを経由した経路で流れ、正常な2つのクラスタ4dにおいてはセルストリング4bに流れる場合には、当該太陽電池モジュール4の両端における電位差は、クラスタ高抵抗化またはクラスタ断線の場合には2Vc−Vdとなり、バイパスダイオード4cのショート故障の場合には2Vcとなる。ここで、当該太陽電池モジュール4の3つのクラスタ4dを遮光板20により遮光して、3つのバイパスダイオード4cの全てを経由する経路へ発電電流を迂回させると、クラスタ高抵抗化またはクラスタ断線の場合における太陽電池モジュール4の両端における電位差は−3Vdとなり、バイパスダイオード4cのショート故障の場合における太陽電池モジュール4の両端における電位差は−2Vdとなる。したがって、遮光の前後における太陽電池モジュール4の両端の電位差は、クラスタ高抵抗化またはクラスタ断線の場合は(2Vc−Vd)−(−3Vd)=2Vc+2Vdとなり、バイパスダイオード4cのショート故障の場合は2Vc−(−2Vd)=2Vc+2Vdとなるので、太陽電池モジュール4に1つの劣化したクラスタ4dが存在していることは、太陽電池モジュール4の両端電圧が当該太陽電池モジュール4を遮光することによって2Vc+2Vdとなることを検知することで判別することができる。
【0063】
これに対し、太陽電池モジュール4を構成する3つのクラスタ4dのうち2つのクラスタ4dが劣化し、隣接する太陽電池モジュール4からの電流が、2つの劣化したクラスタ4dにおいてはセルストリング4bに流れることなくバイパスダイオード4cを経由した経路で流れ、正常な1つのクラスタ4dにおいてはセルストリング4bに流れる場合には、当該太陽電池モジュール4の両端における電位差は、クラスタ高抵抗化またはクラスタ断線の場合にはVc−2Vdとなり、バイパスダイオード4cのショート故障の場合にはVcとなる。ここで、当該太陽電池モジュール4の3つのクラスタ4dを遮光板20により遮光して、3つのバイパスダイオード4cの全てを経由する経路へ発電電流を迂回させると、クラスタ高抵抗化またはクラスタ断線の場合における太陽電池モジュール4の両端における電位差は−3Vdとなり、バイパスダイオード4cのショート故障の場合における太陽電池モジュール4の両端における電位差は−2Vdとなる。したがって、遮光する前後の太陽電池モジュール4の両端における電位差は、クラスタ高抵抗化またはクラスタ断線の場合は(Vc−2Vd)−(−3Vd)=Vc+Vdとなり、バイパスダイオード4cのショート故障の場合はVc−(−Vd)=Vc+Vdとなるので、太陽電池モジュール4に2つの劣化したクラスタ4dが存在していることは、太陽電池モジュール4の両端電圧が当該太陽電池モジュール4を遮光することによってVc+Vdとなることを検知することで判別することができる。
【0064】
同様に、太陽電池モジュール4を構成する3つのクラスタ4dの全てが劣化し、隣接する太陽電池モジュール4からの電流が、3つのクラスタ4dの全てにおいてセルストリング4bに流れることなくバイパスダイオード4cを経由した経路で流れる場合には、遮光する前後における太陽電池モジュール4の両端における電位差は、クラスタ高抵抗化またはクラスタ断線の場合は(−3Vd)−(−3Vd)=0となり、バイパスダイオード4cのショート故障の場合は−Vd−(−Vd)=0となるので、太陽電池モジュール4に3つの劣化したクラスタ4dが存在していることは、太陽電池モジュール4の両端電圧が当該太陽電池モジュール4を遮光することによって0となることを検知することで判別することができる。
【0065】
以上のように、1つの太陽電池モジュール4に含まれる劣化クラスタ数と遮光前後の開放電圧値の差(離散値)とが1対1に対応する。したがって、本実施の形態の太陽電池モジュールの劣化判別方法において、判定指標である電位差ΔV1に基づいた太陽電池モジュール4のクラスタ4dの劣化の有無及び劣化したクラスタ4dの数の判定は以下の手順で行うことができる。
【0066】
すなわち、判定指標である電位差ΔV1が上記した2Vc+2Vdに近い値をとることで、太陽電池モジュール4の中の1つのクラスタ4dが劣化していることを判別することができる。また、判定指標である電位差ΔV1が上記したVc+Vdに近い値をとることで、太陽電池モジュール4の中の2つのクラスタ4dが劣化していることを判別することができる。さらに、判定指標である電位差ΔV1が0に近い値をとることで、太陽電池モジュール4の中の3つのクラスタ4dが劣化していることを判別することができる。
【0067】
このように、本実施の形態によれば、遮光I−V特性のバイパスダイオード4cの動作点Psから低圧側に延びる線形領域上の電圧値V1sと、この電圧値V1sと同一の電流値における基準I−V特性の線形領域上の電圧値V1rとから判定指標である電位差ΔV1を抽出し、この電位差ΔV1に基づいて、劣化判定部12により、選択された判別対象の太陽電池モジュール4のクラスタ劣化の有無を判別するとともに劣化クラスタ数を得ることができる。
【0068】
また、太陽電池ストリング5を構成する複数の太陽電池モジュール4について、判別対象となる太陽電池モジュール4を順番に選択して上記と同一の手順を行うことで、太陽電池ストリング5を構成する全ての太陽電池モジュール4についてクラスタ劣化の有無を判別することができるとともに劣化クラスタ数を判別することができる。
【0069】
ここで、Vcは基準I−V特性の開放電圧値Vocを、太陽電池ストリング5を構成する全てのクラスタ4dの数で除した値であるが、太陽電池モジュール4のI−V特性から明らかなように開放電圧値Vocは日射変動の影響を受ける。一方、劣化クラスタ数を判別する電位差ΔV1は離散値であるから、劣化クラスタ数を正しく判別できるように電位差ΔV1の範囲を設定することが可能である。例えば、劣化クラスタ数が1であることを判別できるためには、電位差ΔV1=2Vc+2Vdが、1クラスタ電圧Vcの幅を超えない範囲で変動しても劣化クラスタ数を0または2と誤判別することは回避できる。
【0070】
そこで、本実施の形態では、
図6に示すように、電位差ΔV1がVd+2Vcから±Vc/2の範囲内にあるときすなわちVd+5Vc/2>ΔV1≧Vd+3Vc/2を満たすときにクラスタ劣化数が1であると判別し、電位差ΔV1がVd+Vcから±Vc/2の範囲内にあるときすなわちVd+3Vc/2>ΔV1≧Vd+Vc/2を満たすときにクラスタ劣化数が2であると判別し、電位差ΔV1がVdからから±Vc/2の範囲内にあるときすなわちVd+Vc/2>ΔV1≧Vd−Vc/2を満たすときに劣化クラスタ数が3であると判別し、電位差ΔV1がΔV1≧Vd+5Vc/2を満たすときには劣化クラスタ数が0であると判別するようにしている。これにより、太陽電池モジュール4のI−V特性が日射変動等の影響を受けても、劣化クラスタ数を正確に判別することができる。
【0071】
本実施の形態では、上記判定指標である電位差ΔV1に基づいて太陽電池モジュール4が劣化していない(劣化クラスタ数が0である)と判定された場合に、遮光I−V特性の線形領域よりも低圧側の所定の電流値に対応する電圧値V2sと、基準I−V特性の所定の電流値に対応する電圧値V2rとの電位差ΔV2に基づいて、太陽電池ストリング5の電流低下の有無を判定するようにしている。太陽電池ストリング5の電流低下の有無を判定することにより、上述したクラスタ劣化とは異なる、光電変換効率(発電効率)が低下したクラスタ4dが含まれる太陽電池モジュール4を特定することができる。
【0072】
図6に示すように、太陽電池ストリング5の中に、クラスタ劣化に至らない状態での光電変換効率が低下したクラスタ4dが含まれる場合、各クラスタ4dの同電流点に対する電圧の水平加法性により、正常なクラスタの場合と比べて加算電圧が小さくなるので、太陽電池ストリング5のI−V特性には、
図6のように高電流−高電圧域に、影がかかった場合と同等の変形(変曲点p)が生じる。変曲点pの位置は、光電変換効率の低下が大きいほどI−V特性の低電流側(高電圧側)になる。
【0073】
本実施の形態では、電位差ΔV1に基づいて太陽電池モジュール4が劣化していない(劣化クラスタ数が0である)と判定された場合、すなわち電位差ΔV1が3Vd+3Vdに近い値であって、基準I−V特性の変曲点の中の最大電流値の変曲点pから短絡電流値Iscまでの電流域において、基準I−V特性と遮光I−V特性との同じ電流値(測定点)における電圧値V2s、V2rの電位差ΔV2が電位差ΔV1よりも小さい場合に、遮光した太陽電池モジュール4の中に光電変換効率が低下したクラスタ4dが存在すると判別する。すなわち、ΔV1>Vd+5Vc/2、かつ、ΔV2<(Vd+3Vc)×α(0<α<1)を満たす場合に、遮光した太陽電池モジュール4の中に光電変換効率が低下したクラスタ4dが存在すると判別する。
【0074】
本実施の形態においては、基準I−V特性の変曲点の中の最大電流値の変曲点pから短絡電流値Iscまでの電流域、より具体的には短絡電流値Iscの80%の電流値を測定点として電圧値V2s、V2rの電位差ΔV2を得るようにしているが、当該測定点は、遮光I−V特性の線形領域よりも低圧側の電流値であればよい。
【0075】
以上を纏めると、
図7に示すように、測定前設定としてバイパスダイオード4cの順方向電圧Vdを入力し、基準I−V特性と遮光I−V特性の測定を行うことで、バイパスダイオード4cの順方向電圧Vdと基準I−V特性における開放電圧値(Voc)とからクラスタ劣化の判定領域境界が導出されるとともに、電圧値V1r、V1sから電位差ΔV1が導出され、電圧値V2r、V2sから電位差ΔV2が導出され、これらが判定領域境界と照合されて劣化判定が行われて、クラスタ劣化の有無及び劣化クラスタ数が判別されるとともに太陽電池ストリング5の電流低下の有無が判定され、何れにも該当しない場合には太陽電池ストリング5が正常であると判断される。以上の判断結果は、表示部12dに表示される。
【0076】
より具体的な手順について
図8、
図9に基づいて説明すると、操作者により操作部12eに対して基準I−V特性の測定開始の操作が行なわれると、基準I−V特性の測定に関する制御情報が劣化判定部12の制御部12aからI−V特性測定部11に送信され、I−V特性測定部11の制御部11dにおいて基準I−V特性の測定が行われる。基準I−V特性の測定結果は劣化判定部12の制御部12aに送信され、データ表示処理がなされて表示部12dに表示される(
図4)。また、制御部12aは、基準I−V特性の測定結果に基づき判別パラメータを抽出するとともに判定領域境界を導出し、その後、遮光I−V特性の測定準備が完了したことを表示部12dに表示する。
【0077】
操作者は、表示部12dの表示から遮光I−V特性の測定準備が完了したことを認識したならば、測定対象となる太陽電池モジュール4を選択し、当該太陽電池モジュール4を遮光操作した後、操作部12eを操作して遮光I−V特性の測定を開始する。遮光I−V特性の測定が開始されると、遮光I−V特性の測定に関する制御情報が劣化判定部12の制御部12aからI−V特性測定部11に送信され、I−V特性測定部11の制御部11dにおいて遮光I−V特性の測定が行われる。遮光I−V特性の測定結果は劣化判定部12の制御部12aに送信され、データ表示処理がなされて基準I−V特性とともに表示部12dに表示される(
図6)。また、制御部12aは、遮光I−V特性の測定結果に基づき判別パラメータを抽出するとともに電位差ΔV1、ΔV2を導出し、これらを判定領域境界と照合して劣化の判定を行い、その判定結果を表示部12dに表示する。
【0078】
以降、太陽電池ストリング5を構成する全ての太陽電池モジュール4について同様の手順を繰り返し行うことで、全ての太陽電池モジュール4について劣化判定を行う。
【0079】
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2によっても、遮光I−Vカーブのバイパスダイオード4cの動作点Psから低圧側に延びる線形領域と当該線形領域に対応した基準I−V特性の線形領域とを利用して、太陽電池モジュールの劣化の有無と、劣化クラスタ数を判別することができる。
【0080】
本発明の実施例1では、遮光I−V特性の線形領域上の所定の電流値に対応する電圧値V1sと、基準I−V特性の線形領域上の所定の電流値に対応する電圧値V1rとの電位差ΔV1を判定指標としてクラスタ劣化の有無を判定するようにしている。
【0081】
これに対し、実施例2においては、
図10に示すように、基準I−V特性がバイパスダイオード4cの動作領域を有する場合、すなわち太陽電池ストリング5を構成する少なくとも1つのクラスタ4dが劣化して該クラスタ4dのバイパスダイオード4cが動作している場合に、遮光I−V特性のバイパスダイオード4cの動作点Psから外挿した外挿線Lsが電圧軸と交差する点における電圧値V3sと、基準I−V特性のバイパスダイオード4cの動作点Prから外挿した外挿線Lrが電圧軸と交差する点における電圧値V3rとの電位差ΔV3を判定指標とし、電位差ΔV3に基づいて太陽電池モジュール4の劣化の有無を判定するようにしている。
【0082】
実施例2における電位差ΔV3は、実施例1における電位差ΔV2と等価な劣化クラスタ数の判別指標となるので、電位差ΔV3に基づいて、電位差ΔV2と同様のクラスタ劣化数判別方法を用いて、劣化クラスタ数を判別することができる。すなわち、
図10に示すように、電位差ΔV3がVd+2Vcから±Vc/2の範囲内にあるときすなわちVd+5Vc/2>ΔV3≧Vd+3Vc/2を満たすときにクラスタ劣化数が1であると判別し、電位差ΔV3がVd+Vcから±Vc/2の範囲内にあるときすなわちVd+3Vc/2>ΔV3≧Vd+Vc/2を満たすときにクラスタ劣化数が2であると判別し、電位差ΔV3がVdから±Vc/2の範囲内にあるときすなわちVd+Vc/2>ΔV3≧Vd−Vc/2を満たすときに劣化クラスタ数が3であると判別し、電位差ΔV3がΔV3≧Vd+5Vc/2を満たすときには劣化クラスタ数が0であると判別することができる。
【0083】
ここで、外挿線Lsは動作点Psから遮光I−V特性の線形領域に沿う方向に向けて外挿された判別点決定直線であり、より具体的には動作点Psを通る遮光I−V特性の接線である。また、外挿線Lrは動作点Prから基準I−V特性の線形領域に沿う方向に向けて外挿された判別点決定直線であり、より具体的には動作点Prを通る基準I−V特性の接線である。外挿線Lsは、遮光I−V特性の線形領域に属する少なくとも2つの測定点の電圧値と電流値を用いて最小二乗法により求めてもよい。同様に、外挿線Lrは、基準I−V特性の線形領域に属する少なくとも2つの測定点の電圧値と電流値を用いて最小二乗法により求めてもよい。
【0084】
なお、基準I−V特性にバイパスダイオード4cの動作領域が現れない場合には、基準I−V特性の開放電圧値Vocを与える点においてその低圧側で基準I−V特性に接する直線を基準I−V特性の外挿線Lrないし判別点決定直線とすることができる。
【0085】
以上を纏めると、
図11に示すように、測定前設定としてバイパスダイオード4cの順方向電圧Vdを入力し、基準I−V特性と遮光I−V特性の測定を行うことで、バイパスダイオード4cの順方向電圧Vdと基準I−V特性における開放電圧値Vocとからクラスタ劣化の判定領域境界が導出されるとともに、電圧値V3r、V3sから電位差ΔV3が導出され、これが判定領域境界と照合されて劣化判定が行われて、クラスタ劣化の有無及び劣化クラスタ数が判別される。
【0086】
より具体的な手順について
図12、
図13に基づいて説明すると、操作者により操作部12eに対して基準I−V特性の測定開始の操作が行なわれると、基準I−V特性の測定に関する制御情報が劣化判定部12の制御部12aからI−V特性測定部11に送信され、I−V特性測定部11の制御部11dにおいて基準I−V特性の測定が行われる。基準I−V特性の測定結果は劣化判定部12の制御部12aに送信され、データ表示処理がなされて表示部12dに表示される。また、制御部12aは、基準I−V特性の測定結果に基づき電圧値V3rを抽出するとともに判定領域境界を導出し、その後、遮光I−V特性の測定準備が完了したことを表示部12dに表示する。
【0087】
操作者は、表示部12dの表示から遮光I−V特性の測定準備が完了したことを認識したならば、測定対象となる太陽電池モジュール4を選択し、当該太陽電池モジュール4を遮光操作した後、操作部12eを操作して遮光I−V特性の測定を開始する。遮光I−V特性の測定が開始されると、遮光I−V特性の測定に関する制御情報が劣化判定部12の制御部12aからI−V特性測定部11に送信され、I−V特性測定部11の制御部11dにおいて遮光I−V特性の測定が行われる。遮光I−V特性の測定結果は劣化判定部12の制御部12aに送信され、データ表示処理がなされて基準I−V特性とともに表示部12dに表示される(
図10)。また、制御部12aは、遮光I−V特性の測定結果に基づき電圧値V3sを抽出するとともに電圧値V3rと電圧値V3sとから電位差ΔV3を導出し、これを判定領域境界と照合して劣化の判定を行い、その判定結果を表示部12dに表示する。
【0088】
以降、太陽電池ストリング5を構成する全ての太陽電池モジュール4について同様の手順を繰り返し行うことで、全ての太陽電池モジュール4について劣化判定を行う。
【0089】
以上の通り、本実施の形態の太陽電池モジュールの劣化判別方法ないし劣化判別装置10によれば、遮光I−V特性のバイパスダイオード4cの動作点Psから低圧側に延びる線形領域における電圧値と、該電圧値と同一の測定点における基準I−V特性の線形領域における電圧値とから判定指標として電位差ΔV1または電位差ΔV3を抽出し、これらの電位差ΔV1または電位差ΔV3に基づいて太陽電池モジュール4の劣化の有無を判定するようにしたので、以下の効果を得ることができる。
【0090】
すなわち、クラスタ劣化にはクラスタ高抵抗化、クラスタ断線、バイパスダイオード4cのショート故障の3つのクラスタ劣化モードがあり、3クラスタで構成される太陽電池モジュール4では27通りのクラスタ劣化パターンが存在することになるが、いずれの劣化パターンであっても、可能な限り早期に当該太陽電池モジュール4を交換する必要があることから、太陽電池モジュール4の交換の要否を単一の指標で特定できることが有効である。このような要望に対し、本実施の形態の太陽電池モジュールの劣化判別方法ないし劣化判別装置10では、遮光I−V特性と基準I−V特性とのバイパスダイオード4cの動作点Ps、Prから低圧側に延びる両I−V特性の線形領域を利用して電位差ΔV1または電位差ΔV3を単一の判別指標として抽出し、この判定指標に基づいて太陽電池モジュール4の劣化の有無を判定することにより、当該判定指標の離散性を活用してクラスタ劣化を含む太陽電池モジュール4の特定と、その劣化クラスタ数とを同時に判別することができる。
【0091】
太陽電池モジュールの劣化判別装置10は、判別対象となる太陽電池モジュール4に含まれるバイパスダイオード4cのオープン故障を判別することもできる。
【0092】
上記の通り、バイパスダイオード4cは、影や故障等によって、セルストリング4bに不均一に太陽光が照射されるなどして、クラスタ4dの内部のセルストリング4bの発電量が相対的に低下した部分の両端電圧が同じクラスタ4dの内部のセルストリング4bの正常に発電している部分によって発生した発電電圧より高くなってバイパスダイオード4cの順方向電圧Vdに等しくなったときに作動し、セルストリング4bを迂回するように発電電流をバイパスさせて、セルストリング4bにホットスポットが発生することを回避するためのものである。したがって、正常な太陽電池モジュール4の全体に均一に太陽光が照射されると、各太陽電池セル4aの発電によって生じる起電力の合計がバイパスダイオード4cの順方向電圧Vd以上となるので、発電電流はバイパスダイオード4cを通らずに各セルストリング4bを順に流れることになる。
【0093】
図14(a)に示すように、あるクラスタ4dのバイパスダイオード4cがオープン故障している場合、太陽電池モジュール4を遮光しない非遮光状態では、太陽電池モジュール4のセルストリング4bに劣化がなく、または太陽電池モジュール4に影がかからず表面汚れもない場合、
図14(a)中において太線で示すように、発電電流はバイパスダイオード4cを通らずに各セルストリング4bを順に流れるのでバイパスダイオード4cのオープン故障の有無を発見することはできない。このときのI−V特性は、
図15において実線で示す基準IVとなる。
【0094】
一方、
図14(b)に示すように、遮光板20によって太陽電池モジュール4の導電経路が該太陽電池モジュール4を構成する複数のクラスタ4dのそれぞれに設けられたバイパスダイオード4cを経由した経路となるように太陽電池モジュール4の一部のみを遮光すると、バイパスダイオード4cが正常に作動したクラスタ4dでは電流はバイパスダイオード4cを経由する経路に迂回するが、バイパスダイオード4cがオープン故障しているクラスタ4dのセルストリング4bには強制的に発電電流が流される。バイパスダイオード4cがオープン故障しているクラスタ4dのセルストリング4bに強制的に発電電流が流されると、その経路上の遮光部分の太陽電池セル4aが抵抗体となって、
図15において遮光IVとして破線で示すように、I−V特性は基準IVに対して発電量が著しく減少した形状となる。
【0095】
続いて、遮光板20を取り外し、太陽電池モジュール4を再度その全体が遮光されない
図14(a)の状態としてI―V特性を測定する。このときのI−V特性は、
図15において非遮光IVとして一点鎖線で示すように、基準IVとほぼ等しい形状となる。
【0096】
したがって、基準IV、遮光IV及び非遮光IVの3つのI−V特性において、所定の電圧値Vbpに対する電流値をそれぞれI
1、I
2、I
3とすると、I
2/I
1≦β(判別定数)、かつ、I
1≒I
3ないしI
1=I
3が成立すれば、当該太陽電池モジュール4にはバイパスダイオード4cのオープン故障が存在すると判別することができる。
【0097】
バイパスダイオード4cのオープン故障を判別するための判別定数βは、遮光操作によって発電電流を、バイパスダイオード4cを経由した経路へと迂回させるために必要な遮光領域によって決まる定数である。
図14(b)に示すように、遮光板20は、その矩形形状の横方向の長さL1が、太陽電池モジュール4のクラスタ4dが配列される方向の幅寸法すなわち各クラスタ4dの短辺の幅寸法CL×クラスタ数に略等しい長さに設定されるとともに、その矩形形状の縦方向の長さL2が、遮光板20による遮光操作によって、各クラスタ4dに設けられたバイパスダイオード4cを経由する経路へと発電電流を迂回させることが可能な遮光面積とする長さに設定されている。したがって、この場合、判別定数βはL2の関数としてL2を適宜設定すすることによって決定することができる。
【0098】
図16は、14個の太陽電池モジュールで構成される太陽電池ストリングに対して、バイパスダイオードのオープン故障が含まれない場合のI−V特性と、バイパスダイオードのオープン故障が1カ所(1クラスタ)あって、1つの太陽電池モジュール4を全面遮光した場合のI−V特性とを示すシミュレーションの例である。このシミュレーションでは、開放電圧:36.8V、短絡電流:8.75A、最大出力動作電圧:29.7V、最大出力動作電流:8.17Aの市販のモジュールの数値を用いた。
【0099】
シミュレーションの結果から、バイパスダイオードのオープン故障では、1つの太陽電池モジュールを全面遮光した場合は、バイパスダイオードのオープン故障がない場合に対して、ほぼ全電圧領域においてストリング電流が低下し、短絡電流値Iscは50%ほどに低下することが解る。したがって、電流値I
1、I
2、I
3を短絡電流値Iscで採る場合(Vbp=0V)には、1つの太陽電池モジュールを全面遮光(L2はクラスタの長辺に略等しい)とすることで、判別定数βを0.5<β<1に設定すればよい。また、Vbp=300Vとした場合には、判別定数βを0.3<β<0.5に設定すればよい。
【0100】
太陽電池モジュールの劣化判別装置10によるバイパスダイオードのオープン故障判別方法のより具体的な手順について
図17、
図18に基づいて説明すると、操作者により操作部12eに対して基準I−V特性の測定開始の操作が行なわれると、基準I−V特性の測定に関する制御情報が劣化判定部12の制御部12aからI−V特性測定部11に送信され、I−V特性測定部11の制御部11dにおいて基準I−V特性(
図15における基準IV)の測定が行われる。基準I−V特性の測定結果は劣化判定部12の制御部12aに送信され、データ表示処理がなされて表示部12dに表示される。また、制御部12aは、基準I−V特性の測定結果に基づきVbpにおける電流値I
1を抽出し、その後、遮光I−V特性の測定準備が完了したことを表示部12dに表示する。
【0101】
操作者は、表示部12dの表示から遮光I−V特性の測定準備が完了したことを認識したならば、測定対象となる太陽電池モジュール4を選択し、当該太陽電池モジュール4を遮光操作した後、操作部12eを操作して遮光I−V特性の測定を開始する。遮光I−V特性の測定が開始されると、遮光I−V特性の測定に関する制御情報が劣化判定部12の制御部12aからI−V特性測定部11に送信され、I−V特性測定部11の制御部11dにおいて遮光I−V特性(
図15における遮光IV)の測定が行われる。遮光I−V特性の測定結果は劣化判定部12の制御部12aに送信され、データ表示処理がなされて基準I−V特性とともに表示部12dに表示される。また、制御部12aは、遮光I−V特性の測定結果に基づきVbpにおける電流値I
2を抽出し、I
2/I
1≦βを満たすか判定し、満たす(YES)の場合には、その判定結果とともに非遮光状態で再度測定を行う指示を表示部12dに表示する。
【0102】
操作者は、表示部12dの表示から非遮光状態で再度測定を行う旨を認識したならば、当該太陽電池モジュール4を遮光しない状態とした後、操作部12eを操作して非遮光I−V特性の測定を開始する。非遮光I−V特性の測定が開始されると、非遮光I−V特性の測定に関する制御情報が劣化判定部12の制御部12aからI−V特性測定部11に送信され、I−V特性測定部11の制御部11dにおいて非遮光I−V特性(
図15における非遮光IV)の測定が行われる。非遮光I−V特性の測定結果は劣化判定部12の制御部12aに送信され、データ表示処理がなされて基準I−V特性、遮光I−V特性とともに表示部12dに表示される。また、制御部12aは、非遮光I−V特性の測定結果に基づきVbpにおける電流値I
3を抽出し、I
3がI
1と同程度であるか否かを判定し、同程度(YES)である場合にはバイパスダイオードがオープン故障していると判定し、その判定結果を表示部12dに表示する。
【0103】
上記の太陽電池モジュールにおけるバイパスダイオードのオープン故障判別方法は、以下の構成を有するものであるといえる。
「複数の太陽電池モジュールが直列に接続された太陽電池ストリングから、バイパスダイオードがオープン故障している太陽電池モジュールを判別する太陽電池モジュールにおけるバイパスダイオードのオープン故障判別方法であって、
複数の前記太陽電池モジュールを全て遮光しない状態における前記太陽電池ストリングの所定の電圧値における第1電流値を測定し、
次に、複数の前記太陽電池モジュールから選択した1つの前記太陽電池モジュールの導電経路が前記バイパスダイオードを経由した経路となるように該太陽電池モジュールの全部または一部のみを遮光し、当該遮光状態における前記太陽電池ストリングの前記所定の電圧値における第2電流値を測定し、
次に、複数の前記太陽電池モジュールを再度全て遮光しない状態として前記太陽電池ストリングの前記所定の電圧値における第3電流値を測定し、
前記第2電流値が前記第1電流値に対して所定の比率以下であり、且つ、前記第3電流値が前記第1電流値と略同一である場合に、前記バイパスダイオードがオープン故障していると判定することを特徴とする、太陽電池モジュールにおけるバイパスダイオードのオープン故障判別方法。」
【0104】
また、上記の太陽電池モジュールにおけるバイパスダイオードのオープン故障判別方法を実施する太陽電池モジュールの劣化判別装置10は太陽電池モジュールにおけるバイパスダイオードのオープン故障判別装置ともいえるものであり、以下の構成を有するものである。
「複数の太陽電池モジュールが直列に接続された太陽電池ストリングから、バイパスダイオードがオープン故障している太陽電池モジュールを判別する太陽電池モジュールにおけるバイパスダイオードのオープン故障判別装置であって、
複数の前記太陽電池モジュールを全て遮光しない状態における前記太陽電池ストリングの所定の電圧値における第1電流値を測定し、次に、複数の前記太陽電池モジュールから選択した1つの前記太陽電池モジュールの導電経路が前記バイパスダイオードを経由した経路となるように該太陽電池モジュールの全部または一部のみを遮光し、当該遮光状態における前記太陽電池ストリングの前記所定の電圧値における第2電流値を測定し、次に、複数の前記太陽電池モジュールを再度全て遮光しない状態として前記太陽電池ストリングの前記所定の電圧値における第3電流値を測定する電流測定部と、
前記第2電流値が前記第1電流値に対して所定の比率以下であり、且つ、前記第3電流値が前記第1電流値と略同一である場合に、前記バイパスダイオードがオープン故障していると判定するオープン故障判定部とを有することを特徴とする、太陽電池モジュールにおけるバイパスダイオードのオープン故障判別装置。」
【0105】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。