特許第6621020号(P6621020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621020
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】白色トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/09 20060101AFI20191209BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20191209BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20191209BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   G03G9/09
   G03G9/087 331
   G03G9/097 346
   G03G9/08 381
   G03G9/08 391
   G03G9/097 368
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-56809(P2016-56809)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-173411(P2017-173411A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】片山 浩平
【審査官】 小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−109097(JP,A)
【文献】 特開2012−189929(JP,A)
【文献】 特開2009−128651(JP,A)
【文献】 特開2009−116102(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/066030(WO,A1)
【文献】 特開2015−108749(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0237868(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0136865(US,A1)
【文献】 米国特許第08658339(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/09
G03G 9/08
G03G 9/087
G03G 9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、ポリマー型電荷調整剤、及び酸化チタン粒子を含有する白色トナーであって、
該結着樹脂が、軟化点が140℃以上170℃以下であるポリエステルA及び軟化点が80℃以上140℃未満であるポリエステルBを含有し、
ポリエステルA及びポリエステルBが、それぞれ独立に、下記一般式(I)で表される化合物を含むアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であり、
該ポリマー型電荷調整剤が、下記一般式(II)で表されるp−アルキルフェノール化合物p1及び下記一般式(III)で表されるビスフェノール化合物p2から選ばれる少なくとも1種のフェノール化合物と、アルデヒド化合物との重合体であり、
該酸化チタン粒子の含有量が、該結着樹脂の全量100質量部に対して25質量部以上200質量部以下である、白色トナー。
【化1】

(一般式(I)中、OR及びROは、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のオキシアルキレン基を示し、x及びyは、それぞれ独立に正の数であり、x及びyの和の平均値が1以上16以下である。)
【化2】

(一般式(II)中、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1以上3以下のアルキル基を示し、Xは炭素数1以上12以下のアルキル基を示す。)
【化3】

(一般式(III)中、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1以上3以下のアルキル基を示し、Xは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。)
【請求項2】
酸化チタン粒子の含有量が、結着樹脂の全量100質量部に対して80質量部以上である、請求項1に記載の白色トナー。
【請求項3】
p−アルキルフェノール化合物p1とビスフェノール化合物p2とのモル比(p1/p2)が、70/30以上99/1以下である、請求項1又は2に記載の白色トナー。
【請求項4】
ポリエステルAとポリエステルBとの軟化点の差が20℃以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の白色トナー。
【請求項5】
ポリエステルA及びポリエステルBが非晶質ポリエステルである、請求項1〜4のいずれかに記載の白色トナー。
【請求項6】
工程1:請求項1に記載の結着樹脂及びポリマー型電荷調整剤、並びに酸化チタン粒子を含有し、該酸化チタン粒子を該結着樹脂の全量100質量部に対して25質量部以上200質量部以下で配合し、溶融混練して混練物を得る工程、及び
工程2:工程1で得られた混練物を粉砕する工程
を有する、白色トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色トナー及び該白色トナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子写真技術の応用の広がりとともに、表現性をより向上させる需要が高まっている。例えば、白紙以外の色紙を用いたカラー印字や、フィルム上に印字することによる表現力の拡大である。白色トナーは、そのような媒体に印字する際に色相を鮮明にするため下地に印字されたり、フィルムに対する反転画像の光反射層としてオーバーコートとしても使用される。白紙以外の色紙やフィルムへの下地の印刷として使用される場合には、白色トナーには高隠蔽特性が求められる。
例えば、特許文献1には、白色トナーの製造方法において、結着樹脂と酸化チタン粒子とシリカ粒子とを含む成分を混合して混合物を得る工程を含むことで、隠蔽性をよくするために白色顔料の量を多くする場合でも、生産性よく白色トナーを製造することができることが開示されている。
また、特許文献2には、少なくとも、結着樹脂と、白色顔料と、離型剤と、を含有し、前記白色顔料が離型剤に被覆された状態で結着樹脂中に分散されることで、隠蔽性が高く、帯電性が良好で、十分な画像強度を持ち、良好な白色画像を形成できる白色トナーが開示されている。
また、特許文献3及び特許文献4では、フェノール類とアルデヒド類からの重縮合反応により得られた重縮合体やフェノール多量体を複数種含有するフェノール多量体混合物により、トナーに適切な帯電性を付与し、耐久性や鮮明な画像を提供する荷電制御剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−109097号公報
【特許文献2】特開2014−16598号公報
【特許文献3】特許第5334227号公報
【特許文献4】特許第3772910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化チタン粒子のような白色顔料を多く含有する白色トナーは、電荷調整剤が分散しにくいことから、トナーの帯電性が不十分となり、非画像部分にもトナーが微量に付着するといった印字不良及び印刷不良(「カブリ」ともいう。)が発生するという問題がある。また、白色トナー特有の問題点として、隠蔽性を上げるために、顔料濃度を高くすると低温定着性が悪化する問題があった。
特許文献1の製造方法では、トナー粒子中に酸化チタン粒子が均一に分散することで、局所的な電荷リークを防止できるとしているが、そもそも酸化チタンのような白色顔料を多く含有する白色トナーは、電荷調整剤が分散しにくく、トナーの帯電性に問題があり、カブリの発生の抑制については改善の余地があった。
また、特許文献2では、白色顔料が離型剤に被覆された状態で結着樹脂中に分散されることで、白色顔料の添加量をトナー特性に影響を与えることなく増量できるとしているが、白色顔料を多く含有すると、トナー中の結着樹脂成分の比率が低下するため、低温定着性が悪化し、更にフィルムへの印字の場合には紙への印字とは異なり、樹脂のアンカー効果による定着性向上効果が得られないため、トナーの剥がれなどの問題がある。
また、特許文献3及び4では、酸化チタン粒子を高含有量で含有するトナーは開示されていないが、前述のとおり、酸化チタン粒子を多く含有すると、トナー中の結着樹脂成分の比率が低下するため、低温定着性に劣り、低温で定着させた場合にトナーの剥がれなどが発生するといった問題がある。
【0005】
本発明は、隠蔽性、カブリ発生の抑制、耐高温オフセット性及び低温定着性に優れる白色トナー及び該白色トナーの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、白色トナーについて、該白色トナー中に特定の構造を有する結着樹脂とポリマー型電荷調整剤とを含有させることで、前記課題を解決し得ることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕又は〔2〕に関する。
〔1〕結着樹脂、ポリマー型電荷調整剤、及び酸化チタン粒子を含有する白色トナーであって、
該結着樹脂が、軟化点が140℃以上170℃以下であるポリエステルA及び軟化点が80℃以上140℃未満であるポリエステルBを含有し、
ポリエステルA及びポリエステルBが、それぞれ独立に、下記一般式(I)で表される化合物を含むアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であり、
該ポリマー型電荷調整剤が、下記一般式(II)で表されるp−アルキルフェノール化合物p1及び下記一般式(III)で表されるビスフェノール化合物p2から選ばれる少なくとも1種のフェノール化合物と、アルデヒド化合物との重合体であり、
該酸化チタン粒子の含有量が、該結着樹脂の全量100質量部に対して25質量部以上200質量部以下である、白色トナー。
【0008】
【化1】
【0009】
(一般式(I)中、OR及びROは、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のオキシアルキレン基を示し、x及びyは、それぞれ独立に正の数であり、x及びyの和の平均値が1以上16以下である。)
【0010】
【化2】
【0011】
(一般式(II)中、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1以上3以下のアルキル基を示し、Xは炭素数1以上12以下のアルキル基を示す。)
【化3】
【0012】
(一般式(III)中、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1以上3以下のアルキル基を示し、Xは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。)
〔2〕工程1:上記〔1〕に記載の結着樹脂及びポリマー型電荷調整剤、並びに酸化チタン粒子を含有し、該酸化チタン粒子を該結着樹脂の全量100質量部に対して25質量部以上200質量部以下で配合し、溶融混練して混練物を得る工程、及び
工程2:工程1で得られた混練物を粉砕する工程
を有する、白色トナーの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、隠蔽性、カブリ発生の抑制、耐高温オフセット性及び低温定着性に優れる白色トナー及び該白色トナーの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[白色トナー]
本発明の白色トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、特定の構造を有する結着樹脂、ポリマー型電荷調整剤、及び酸化チタン粒子を含む点に特徴を有している。
本発明の白色トナーは、隠蔽性、カブリ発生の抑制、耐高温オフセット性及び低温定着性に優れる。その理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明の白色トナーに含まれるポリマー型電荷調整剤は芳香族系モノマーを用いたポリマーであるため、同じく芳香族環構造を有する結着樹脂との親和性が高い。したがって、ポリマー型電荷調整剤はトナー中に酸化チタン粒子が多量に含まれる場合にも、結着樹脂中に分散し易いため、トナーに適切な帯電性を付与することができ、カブリ発生を抑制する。
また、ポリマー型電荷調整剤は結着樹脂よりもポリマー鎖中の芳香族環構造の含有量が多いため、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)のような芳香環構造を有するフィルムに対して用いた場合、結着樹脂よりも高い親和性を示し、トナー層と該フィルムとの密着性が増加することで、該フィルムへのトナーの定着性が向上すると考えられる。
また、本発明の白色トナーは、結着樹脂と離型剤による定着効果に加えて、該ポリマー型電荷調整剤を含むことでフィルムとトナーとの接着性向上効果によって、より低温での定着性も向上するものと考えられる。
更に、本発明の白色トナーは、後述するポリエステルAとポリエステルBとのいずれも含有していることによって、耐高温オフセット性にも優れるものと考えられる。
次に、本発明の白色トナーの各種成分について説明する。
なお、以下の結着樹脂として用いるポリエステルA及びB、並びにポリマー型電荷調整剤を構成する各原料の含有量に関する記載は、特に記載しない限り、得られるポリエステルA及びB中、並びにポリマー型電荷調整剤中における各原料に由来する構成単位の含有量も表しているものとする。すなわち、ポリエステルA及びB、並びにポリマー型電荷調整剤中の各原料に由来する構成単位の含有量は、各原料を配合する際の配合量から算出できる。
【0015】
<結着樹脂>
本発明に用いる結着樹脂は、トナーの耐高温オフセット性及び低温定着性を向上させる観点から、軟化点が140℃以上170℃以下であるポリエステルA及び軟化点が80℃以上140℃未満であるポリエステルBを含有する。
ポリエステルA及びBの合計含有量は、該結着樹脂全量中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
また、該結着樹脂には、本発明の効果が損なわれない範囲において、ポリエステルA及びB以外の他の樹脂が含有されていてもよい。該ポリエステルA及びB以外の他の樹脂としては、ポリエステルA及びB以外のポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
【0016】
(ポリエステルA)
ポリエステルAは、軟化点が140℃以上170℃以下のポリエステルであって、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、好ましくは145℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは155℃以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは165℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは158℃以下である。該軟化点の値は、実施例に記載の方法により求められる。
ポリエステルAの含有量は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、該結着樹脂全量中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、該結着樹脂全量中、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
【0017】
ポリエステルAは、次の一般式(I)で表される化合物を含むアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。
【0018】
【化4】
【0019】
一般式(I)で表される化合物はビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物であり、一般式(I)中、OR及びROは、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のオキシアルキレン基であり、好ましくはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基である。
x及びyは、それぞれ独立に正の数であり、x及びyの和の平均値が1.0以上16.0以下である。カルボン酸成分との反応性の観点から、x及びyの和の平均値は好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上であり、そして、好ましくは12.0以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは4.0以下である。
また、x個のORとy個のROは、それぞれ独立に、同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましく、x個のORとy個のROがいずれも同一であることがより好ましい。一般式(I)で表される化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
一般式(I)で表される化合物の含有量は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、ポリエステルAの原料であるアルコール成分全量中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、より更に好ましくは98モル%以上、より更に好ましくは100モル%である。
【0021】
ポリエステルAの原料モノマーであるアルコール成分には、一般式(I)で表される化合物以外のアルコール成分を含有してもよい。
一般式(I)で表される化合物以外のアルコール成分は、例えば、脂肪族ジオール、芳香族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコール、又はそれらの炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド(平均付加モル数1以上16以下)付加物が挙げられる。その例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の脂肪族ジオール;芳香族ジオール;水素添加ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)等の脂環式ジオール、又はそれらの炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド(平均付加モル数2以上12以下)付加物;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ソルビタン等の3価以上の多価アルコール、又はそれらの炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド(平均付加モル数1以上16以下)付加物等が挙げられる。
【0022】
ポリエステルAの原料モノマーであるアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、ポリエステルAの原料モノマーであるアルコール成分には1価のアルコールが、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0023】
ポリエステルAの原料であるカルボン酸成分は、例えば、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの無水物及び炭素数1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体が挙げられる。本明細書中では、以下に挙げるカルボン酸成分の例について、単にカルボン酸(遊離酸)の名称のみを記載している場合(実施例記載を除く)、そのカルボン酸が取り得る誘導体も含めて記載されているものとする。すなわち、例えば、「トリメリット酸」と記載した場合に、「トリメリット酸、トリメリット酸無水物、及びトリメリット酸の炭素数1以上3以下のアルキルエステル」が記載されているものとする。
【0024】
ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び脂環式ジカルボン酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
ジカルボン酸の炭素数は、トナーの低温定着性を維持しつつ、耐高温オフセット性を向上させる観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。
芳香族ジカルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、トナーの低温定着性を維持しつつ、耐高温オフセット性を向上させる観点から、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,5−ペンタン二酸、1,12−ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等が挙げられ、フマル酸、並びに炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸の例としては、好ましくはドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸等が挙げられる。
【0025】
3価以上の多価カルボン酸の炭素数は、トナーの低温定着性を維持しつつ、耐高温オフセット性を向上させる観点から、好ましくは4以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。
3価以上の多価カルボン酸は、例えば、トリメリット酸(「1,2,4−ベンゼントリカルボン酸」と同じ。)、ピロメリット酸(「1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸」と同じ。)等が挙げられ、これらの中でも、トリメリット酸及びその誘導体が好ましい。
【0026】
ポリエステルAの原料モノマーであるカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、これらの中でも、フマル酸、トリメリット酸及びトリメリット酸無水物が好ましく、得られるトナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、これらの中から2種以上を組み合わせて使用することがより好ましい。なお、ポリエステルAの原料モノマーであるカルボン酸成分には1価のアルコールが、ポリエステルAの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0027】
また、ポリエステルAの原料モノマーであるカルボン酸成分が3価以上の多価カルボン酸を含む場合、該3価以上の多価カルボン酸の含有量は、得られるトナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、ポリエステルAの原料モノマーであるカルボン酸成分全量中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは37モル%以下である。
【0028】
ポリエステルAで用いる前記アルコール成分のヒドロキシ基(OH基)に対する前記カルボン酸成分のカルボキシ基(COOH基)のモル当量比(COOH基/OH基)は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上、更に好ましくは0.90以上であり、そして、好ましくは1.30以下、より好ましくは1.20以下である。
なお、該モル当量比を算出する際、用いるカルボン酸がカルボン酸誘導体の場合は、そのカルボン酸誘導体の原料カルボン酸が有するカルボキシ基のモル当量に換算して算出する。すなわち、例えば、原料としてトリメリット酸無水物を用いている場合は、無水物でないトリメリット酸が有するカルボキシ基のモル数を用いて、該モル当量比を算出する。
【0029】
〔ポリエステルAの製造〕
ポリエステルAは、前記アルコール成分と前記カルボン酸成分とを重縮合して得られる。アルコール成分及びカルボン酸成分の好適な態様及び好適な含有量は前述のとおりである。
前記アルコール成分と前記カルボン酸成分との重縮合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは160℃以上260℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。該重合温度は、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上、より更に好ましくは200℃以上であり、そして、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは250℃以下、より更に好ましくは245℃以下である。
【0030】
エステル化触媒は、酸化ジブチルスズ、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズ(II)等のスズ化合物や、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。
エステル化触媒の使用量は、反応性の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。
エステル化助触媒としては、ピロガロール、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(「没食子酸」と同じ。)、没食子酸エステル等のピロガロール化合物;2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体;等が挙げられ、反応性の観点から、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸が好ましい。
エステル化助触媒の使用量は、反応性の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
重合禁止剤としては、4−tert−ブチルカテコール等を使用することができる。
重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.50質量部以下、より好ましくは0.10質量部以下である。
【0031】
ポリエステルAは、結晶性ポリエステル、非晶質ポリエステルのいずれも使用することができ、両者を混合して用いることもできる。トナーのカブリ発生を抑制する観点から、非晶質ポリエステルを用いることが好ましい。
【0032】
ポリエステルAの吸熱の最高ピーク温度(Tp)は、トナーの耐高温オフセットを向上させる観点から、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは85℃以下、より好ましくは75℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
ここで、吸熱の最高ピーク温度(Tp)とは、実施例に記載の方法で測定される温度を指す。最高ピーク温度は、軟化点との差が20℃以内であれば融点に起因するピークとし、軟化点との差が20℃を超える場合はガラス転移温度に起因するピークとする。
【0033】
なお、ポリエステルAの軟化点及びその好適値は、前述のとおりである。
【0034】
ポリエステルAのガラス転移温度は、トナーの耐高温オフセットを向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、更に好ましくは63℃以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
【0035】
ポリエステルAの酸価は、トナーの耐高温オフセット性及び帯電性を向上させる観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは8mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは35mgKOH/g以下である。
【0036】
ポリエステルAの軟化点、吸熱の最高ピーク温度(Tp)、ガラス転移温度及び酸価は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、これらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
【0037】
(ポリエステルB)
ポリエステルBは、軟化点が80℃以上140℃未満のポリエステルであって、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、好ましくは85℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは96℃以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは137℃以下、より好ましくは135℃以下、更に好ましくは130℃以下である。
ポリエステルBの含有量は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、結着樹脂全量中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂全量中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
【0038】
ポリエステルBは、一般式(I)で表される化合物を含むアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。ポリエステルBで用いるアルコール成分及びその好適な態様は、ポリエステルAについて前述したものと同様である。
ポリエステルBで用いるカルボン酸成分及びその好適な態様は、ポリエステルAについて前述したものと同様のものが挙げられ、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、それらの中でも、テレフタル酸、フマル酸、テトラプロペニルコハク酸及びテトラプロペニルコハク酸無水物、並びにトリメリット酸及びトリメリット酸無水物が好ましく、トナーの耐高温オフセット性を維持しつつ、低温定着性を向上させる観点から、これらの中から2種以上を組み合わせて使用することがより好ましい。なお、ポリエステルBの原料モノマーであるカルボン酸成分には1価のアルコールが、ポリエステルBの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0039】
また、ポリエステルBの原料モノマーであるカルボン酸成分が3価以上の多価カルボン酸を含む場合、該3価以上の多価カルボン酸の含有量は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、ポリエステルBの原料モノマーであるカルボン酸成分全量中、好ましくは20モル%以下、より好ましくは18モル%以下、更に好ましくは15モル%以下であり、そして、好ましくは0モル%以上である。
【0040】
ポリエステルBで用いる前記アルコール成分のヒドロキシ基(OH基)に対する前記カルボン酸成分のカルボキシ基(COOH基)のモル当量比(COOH基/OH基)は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは0.65以上、より好ましくは0.70以上、更に好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.10以下、より好ましくは0.90以下、更に好ましくは0.85以下である。
【0041】
〔ポリエステルBの製造〕
ポリエステルBは、前記アルコール成分と前記カルボン酸成分とを重縮合して得られる。ポリエステルBの製造方法の好適な態様はポリエステルAに関する製造方法について前述した態様と同様であり、用いるアルコール成分及びカルボン酸成分の好適な態様及び好適な含有量はポリエステルBについて前述したとおりである。
【0042】
ポリエステルBは、結晶性ポリエステル、非晶質ポリエステルのいずれも使用することができ、両者を混合して用いることもできる。トナーのカブリ発生を抑制する観点から、非晶質ポリエステルを用いることが好ましい。
【0043】
ポリエステルBの前記吸熱の最高ピーク温度(Tp)は、トナーの耐高温オフセットを向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは58℃以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下である。
【0044】
ポリエステルBの軟化点及びその好適値は、前述のとおりである。
【0045】
ポリエステルBのガラス転移温度は、トナーの耐高温オフセットを向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下、更に好ましくは63℃以下である。
【0046】
ポリエステルBの酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以下、更に好ましくは15mgKOH/g以下である。
【0047】
ポリエステルBの軟化点、吸熱の最高ピーク温度(Tp)、ガラス転移温度及び酸価は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、これらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
【0048】
ポリエステルAとポリエステルBとの軟化点の差は、トナーの耐高温オフセット性を及び低温定着性をバランスよく向上させる観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは23℃以上、更に好ましくは25℃以上であり、そして、好ましくは65℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下、より更に好ましくは30℃以下である。
【0049】
ポリエステルAとポリエステルBとの質量比(ポリエステルA/ポリエステルB)は、トナーの耐高温オフセット性を及び低温定着性をバランスよく向上させる観点から、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、更に好ましくは65/35以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは75/25以下である。
【0050】
なお、本発明において、ポリエステルA及びBは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルは、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりウレタン、フェノール、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルが挙げられる。
【0051】
また、ポリエステルA及びポリエステルBがいずれも非晶質ポリエステルであることが好ましい。
ここで、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度(Tp)との比、すなわち、[軟化点/吸熱の最高ピーク温度(Tp)]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。
非晶質樹脂は、結晶性指数が、1.4を超えるか、0.6未満の樹脂である。また、結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上1.4以下の樹脂である。
樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。
【0052】
<ポリマー型電荷調整剤>
本発明の白色トナーは、カブリの発生を抑制する観点から、電荷調整剤としてポリマー型電荷調整剤を含有する。
本発明におけるポリマー型電荷調整剤は、フェノール化合物とアルデヒド化合物とを重合させて得られる重合体を含有する。
該ポリマー型電荷調整剤は、後述する一般式(II)で表されるp−アルキルフェノール化合物p1及び一般式(III)で表されるビスフェノール化合物p2からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール化合物と、後述するアルデヒド化合物との重合体である。
【0053】
(フェノール化合物)
本発明で用いるフェノール化合物は、1つのフェノール性水酸基を有し、その水酸基のオルト位に置換基のないp−アルキルフェノール化合物p1と、2つのフェノール性水酸基を有し、各水酸基のオルト位に置換基のないビスフェノール化合物p2である。なお、「置換基のない」とは、水酸基が結合している炭素の両隣の炭素は、水酸基が結合している炭素と共に芳香環を形成している他の炭素と結合する以外は、水素原子とのみ結合していることを示す。フェノール化合物とアルデヒド化合物との重合反応により、これらのフェノール化合物のフェノール性水酸基に隣接する炭素にアルデヒド化合物が付加し、フェノール化合物とアルデヒド化合物とが交互に連なった重合体を形成すると考えられる。この重合体は、電荷保持に優れるフェノールが連なった構造を有しているので、帯電性に優れたトナーが得られると考えられる。
【0054】
〔p−アルキルフェノール化合物p1〕
本発明で用いるp−アルキルフェノール化合物p1は、下記一般式(II)で表される化合物である。
【0055】
【化5】
【0056】
一般式(II)中、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1以上3以下のアルキル基を示し、好ましくは水素原子を示す。該ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。該炭素数1以上3以下のアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又はイソプロピル基が挙げられる。
は炭素数1以上12以下のアルキル基を示す。Xが示すアルキル基の炭素数は好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。該アルキル基は、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のブチル基(n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基)、直鎖若しくは分岐鎖のペンチル基、直鎖若しくは分岐鎖のヘキシル基、直鎖若しくは分岐鎖のヘプチル基、又は直鎖若しくは分岐鎖のオクチル基、より好ましくはtert−ブチル基又はtert−オクチル基である。
【0057】
一般式(II)で表されるp−アルキルフェノール化合物としては、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−tert−ドデシルフェノール等が挙げられる。これらの中では、好ましくはp−tert−ブチルフェノール及びp−tert−オクチルフェノールからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはこれらの併用である。
【0058】
p−アルキルフェノール化合物p1の含有量は、トナーの帯電性の観点から、重合反応に用いられるフェノール化合物全量中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、そして、好ましくは99モル%以下、より好ましくは98モル%以下、更に好ましくは95モル%以下である。
【0059】
〔ビスフェノール化合物p2〕
本発明で用いるビスフェノール化合物p2は、下記一般式(III)で表される化合物である。
【0060】
【化6】
【0061】
一般式(III)中、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1以上3以下のアルキル基を示し、好ましくは水素原子を示す。該ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。該炭素数1以上3以下のアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又はイソプロピル基が挙げられる。
は炭素数1以上5以下のアルキレン基を示し、該Xが示すアルキレン基の炭素数は好ましくは2以上4以下、より好ましくは3である。
【0062】
一般式(III)で表されるビスフェノール化合物p2としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0063】
ビスフェノール化合物p2の含有量は、結着樹脂中のポリマー型電荷調整剤の分散性の観点から、重合反応に用いられるフェノール化合物中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは2モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0064】
ポリマー型電荷調整剤を構成する全原料中、前記p−フェノール化合物p1と前記ビスフェノール化合物p2とのモル比(p1/p2)は、好ましくは70/30以上、より好ましくは80/20以上、更に好ましくは90/10以上であり、そして、好ましくは99/1以下、より好ましくは98/2以下、更に好ましくは95/5以下である。
【0065】
(アルデヒド化合物)
本発明で用いるアルデヒド化合物は、パラホルムアルデヒド及びホルムアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。ここで、ホルムアルデヒドは、パラホルムアルデヒドから発生するホルムアルデヒドも含む。
【0066】
ポリマー型電荷調整剤を構成する全原料中、前記フェノール化合物と前記アルデヒド化合物とのモル比は(フェノール化合物/アルデヒド化合物)は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上であり、そして、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.0以下である。
【0067】
(ポリマー型電荷調整剤の製造方法)
ポリマー型電荷調整剤は、前述のとおり、前記フェノール化合物と前記アルデヒド化合物とを重合して得られる。該フェノール化合物と該アルデヒド化合物との重合反応方法としては、例えば、キシレン等の80℃以上の沸点を有する有機溶媒中に該フェノール化合物と該アルデヒド化合物とを添加し、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物等の強塩基化合物の存在下、80℃以上の溶媒の沸点以下の温度で水を留去しながら3時間以上20時間以下反応させる方法が挙げられる。なお、該強塩基化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム、水酸化カリウム等が好ましく使用できる。
重合反応が終了後、例えば、アルコール等の貧溶媒を用いて再結晶する方法、又は前記有機溶媒を減圧乾燥して得られる固体若しくは該再結晶後にろ過して得られる固体を、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールで洗浄後に乾燥する方法によりポリマー型電荷調整剤から前記有機溶媒等の不純物を除去する。
【0068】
トナー中の該ポリマー型電荷調整剤の含有量は、トナーの帯電安定性を向上させカブリの発生を抑制する観点から、前記結着樹脂全量100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは3.0質量部以上、更に好ましくは6.0質量部以上である。
また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、前記結着樹脂全量100質量部に対して、好ましくは15.0質量部以下、より好ましくは10.0質量部以下、更に好ましくは6.0質量部以下であり、そして、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上である。
これらの観点を総合すると、該ポリマー型電荷調整剤の含有量の範囲は、前記結着樹脂全量100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上15質量部以下、より好ましくは1.0質量部以上10.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以上6.0質量部以下である。
【0069】
本発明の白色トナーには、前記ポリマー型電荷調整剤以外に、本発明の効果を損なわない範囲で他の電荷調整剤が適宜含有されていてもよい。該他の電荷調整剤は、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体、ベンジル酸ホウ素錯体等が挙げられる。
前記ポリマー型電荷調整剤の含有量は、電荷制御剤全量中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
【0070】
<酸化チタン粒子>
本発明の白色トナーは、トナーの白色濃度を向上させる観点から、酸化チタン粒子を含有する。該酸化チタン粒子の含有量は、該着色剤中、90質量%以上が好ましく、より好ましくは100質量%である。該酸化チタン粒子は、アナターゼ型、ルチル型、ブルカイト型のいずれの結晶型のものも使用できる。なお、該酸化チタン粒子は着色剤として用いられるが、本発明の白色トナーには白色発色性の効果が損なわれない範囲において、酸化チタン粒子以外の他の着色剤が含有されていてもよい。他の着色剤は、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、中空樹脂粒子等が挙げられる。
【0071】
また、トナー中の該酸化チタン粒子の含有量は、トナーの白色濃度を向上させる観点及び隠蔽性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、25質量部以上であり、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは80質量部以上であり、そして、低温定着性を向上させる観点及びカブリの発生を抑制する観点から、結着樹脂100質量部に対して、200質量部以下であり、好ましくは175質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは120質量部以下である。
これらの観点を総合すると、トナー中の該酸化チタン粒子の含有量の範囲は、25質量部以上200質量部以下であり、好ましくは30質量部以上175質量部以下、より好ましくは50質量部以上150質量部以下であり、更に好ましくは80質量部以上120質量部以下である。
【0072】
該酸化チタン粒子の個数平均一次粒子径は、トナーの白色濃度及び隠蔽性を向上させる観点から、好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上、更に好ましくは230nm以上であり、そして、耐高温オフセット性を向上させる観点から、好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは270nm以下である。これらの観点を総合すると、酸化チタン粒子の個数平均一次粒子径の範囲は、好ましくは150nm以上350nm以下、より好ましくは200nm以上300nm以下、更に好ましくは230nm以上270nm以下である。該酸化チタン粒子の個数平均一次粒子径は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0073】
該酸化チタン粒子の市販品としては、「CR−50−2」、「CR−58」(いずれも銘柄名、石原産業株式会社製)等が挙げられる。
【0074】
<離型剤>
本発明のトナーは、更に離型剤を含有することが好ましい。
該離型剤は、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、高級アルコール等が挙げられる。これらの中では、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点、及びトナーの粉砕性を向上させる観点から、炭化水素系ワックス及びエステル系ワックスが好ましく、同様の観点から、エステル系ワックスではカルナウバワックスが好ましく、炭化水素系ワックスではポリプロピレンワックスが好ましい。
【0075】
該離型剤の融点は、トナーの耐高温オフセット性及び低温定着性を両立させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。
【0076】
トナー中の該離型剤の含有量は、トナーの耐高温オフセット性及び低温定着性を両立させる観点、及びカブリの発生を抑制する観点から、結着樹脂全量100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上であり、そして、好ましくは20.0質量部以下、より好ましくは10.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。
【0077】
<その他の成分>
外添剤を添加する前のトナー(本明細書中、「トナー母粒子」ともいう。)は、前述した各成分の他に、更に、磁性粉、流動化剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を含有していてもよい。これらの中では、例えば、流動化剤としても用いられる前記疎水性シリカを、前記結着樹脂中、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、そして、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下含有していてもよい。
【0078】
<外添剤>
本発明のトナーには、カブリの発生を抑制するために、トナー母粒子に、更に外添剤を含有することが好ましい。該外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を含有していてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーのカブリの発生を抑制する観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
【0079】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMD)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
該外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは90nm以下である。該外添剤の平均粒子径の値は、実施例に記載の方法により求められる。
【0080】
外添剤を用いて、トナー母粒子の表面処理を行う場合、該外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性の観点から、トナー母粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5.0質量部以下、より更に好ましくは3.0質量部以下である。
【0081】
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
また、トナーを前記外添剤で処理している場合には、前記外添剤で処理する前のトナー母粒子の体積中位粒径(D50)をトナーの体積中位粒径(D50)とする。該体積中位粒径(D50)の値は、実施例に記載の方法により求められる。
【0082】
[白色トナーの製造方法]
本発明の白色トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、トナーの帯電性を安定させカブリの発生を抑制する観点、トナーの定着性及び隠蔽性を向上させる観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、次の工程1及び2を有する製造方法であることがより好ましい。
工程1:結着樹脂及びポリマー型電荷調整剤、並びに酸化チタン粒子を含有し、該酸化チタン粒子を該結着樹脂の全量100質量部に対して25質量部以上200質量部以下で配合し、溶融混練して混練物を得る工程、及び
工程2:工程1で得られた混練物を粉砕する工程
【0083】
<工程1>
工程1は、結着樹脂及びポリマー型電荷調整剤、並びに酸化チタン粒子を含有し、該酸化チタン粒子を該結着樹脂の全量100質量部に対して25質量部以上200質量部以下で配合し、溶融混練して混練物を得る工程である。該結着樹脂及びポリマー型電荷調整剤、並びに酸化チタン粒子は、前記白色トナーに関する結着樹脂及びポリマー型電荷調整剤、並びに酸化チタン粒子について例示したものと同様のものが挙げられ、それらの好適な態様及び添加量も同様である。
工程1で、溶融混練は、密閉式ニーダー、一軸若しくは二軸の混練機、連続式オープンロール型混練機等の混練機を用いて行うことができるが、着色剤や電荷調整剤の結着樹脂中での分散性を向上させる観点から、二軸混練機で行うのが好ましい。二軸混練機とは、二本の混練軸をバレルが覆い隠す閉鎖型の混練機である。市販品としては、生産性を向上させる観点から高速での二軸の噛み合わせが良好な、株式会社池貝製の二軸押出機PCMシリーズが好ましい。
【0084】
二軸混練機での溶融混練は、バレル設定温度(押出機内部壁面の温度)、軸の回転の周速、及びトナー原料混合物の供給速度を調整することで行う。バレル設定温度は、着色剤や電荷調整剤の結着樹脂中での分散性を向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下である。
また、軸の回転の周速は、同様の観点から好ましくは0.10m/s以上1.0m/s以下である。
【0085】
二軸混練機へのトナー原料混合物の供給速度は、使用する混練機の許容能力と、上記のバレル設定温度及び軸の回転の周速に応じて適宜調整する。例えば、株式会社池貝製の二軸押出機「PCM−30」を使用する場合、二軸押出機へのトナー原料混合物の供給速度は、好ましくは5kg/h以上、そして、好ましくは25kg/h以下である。
【0086】
なお、前記混練機に供給するトナー原料混合物は、予めヘンシェルミキサー等を用いて混合しておくのがよい。また、例えば、結着樹脂が含有する前記ポリエステルA及びBは、予め混合して得られる結着樹脂組成物として工程1に供給してもよく、工程1でそれぞれの樹脂を直接、ポリマー型電荷調整剤及び酸化チタンと混合して溶融混練してもよく、複数のポリマー型電荷調整剤、複数の酸化チタン粒子を用いる場合も同様である。
工程1で得られた混練物を粉砕可能な硬度に達するまで適宜冷却し、工程2において、粉砕する。
【0087】
<工程2>
工程2は、工程1で得られた混練物を粉砕する工程である。
工程1で得られた混練物の粉砕は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、混練物を、1mm以上5mm以下に粗粉砕した後、更に所望の粒径に微粉砕してもよい。
粉砕に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。
また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式カウンタージェットミル、衝突板式ジェットミル、回転型機械式ミル等が挙げられる。
【0088】
粉砕物は、更に分級し、所望の粒径に調整することが好ましい。
分級に好適に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕と分級を繰り返してもよい。
【0089】
(外添剤による表面処理)
工程2で得られたトナー母粒子は、白色トナーとしてそのまま用いることもできるが、前記本発明の白色トナーに関して説明したように、工程2で得られるトナー母粒子を更に外添剤を用いて処理してもよい。
該処理方法は特に限定されないが、トナー母粒子と外添剤とを、回転羽根等の攪拌具を備えた混合機を用いることが好ましく、好ましくはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速混合機、より好ましくはヘンシェルミキサーを用いて混合する方法が挙げられる。
該トナー母粒子及び該外添剤は、前記本発明の白色トナーに関するトナー母粒子及び外添剤について例示したものと同様のものが挙げられ、トナー母粒子及び外添剤の好適な態様及び添加量も同様である。
【0090】
本発明の白色トナー及び本発明の製造方法により得られる白色トナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができ、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いる電子写真用トナーとして好適に用いることができる。
本発明の白色トナー及び本発明の製造方法により得られる白色トナーは、白色を必要とする印刷、例えば、有色紙やフィルム等への印刷、カラー画像の発色性のためにバックグランドに白色を印刷する方法等に使用することができる。該フィルムとしては、ポリエステル〔例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)〕、ナイロン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオレフィン〔例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)〕等の各種樹脂フィルムが挙げられ、好ましくはPETフィルムが挙げられる。
本発明の白色トナー及び本発明の製造方法により得られる白色トナーは、オフィス用印刷、並びに、カタログ、チラシ、パッケージ、ラベル等の商業及び産業用印刷のいずれにも使用することができる。また、商業及び産業用ラベル又はパッケージ印刷に適する樹脂製記録媒体へ好適に用いることができる。該樹脂製記録媒体に用いる樹脂としては、上記フィルムについて例示した各種樹脂が挙げられ、好ましくはPETフィルムが挙げられる。なお、前記樹脂記録媒体や樹脂フィルムへ印字する場合は紙への印字とは異なり、樹脂のアンカー効果による定着性向上効果が得られないため、トナー層の剥がれなど一層発生しやすいが、本発明の白色トナー及び本発明の製造方法により得られる白色トナーは、前述のとおり、樹脂フィルムに対する低温定着性も良好であり、これら記録媒体にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0091】
樹脂(ポリエステルA及びB)、ポリマー型電荷調整剤、離型剤、酸化チタン粒子、及びトナー等の各性状値は、次の方法により、測定、評価した。
【0092】
[樹脂の軟化点]
フローテスター「CFT−500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0093】
[樹脂のガラス転移温度]
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量した。該試料を200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、その後、試料を昇温速度10℃/minで昇温して200℃まで測定した。観測された吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度をガラス転移温度測定時における吸熱の最高ピーク温度(Tp−g)とした。該最高ピーク温度以下のベースラインの延長線と該ピークの立ち上がり部分から該ピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0094】
[樹脂の吸熱の最高ピーク温度(Tp)]
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間保持する。その後、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温して測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度(Tp)とした。
【0095】
[樹脂の酸価]
測定溶媒を、エタノールとエーテルとの混合溶媒から、アセトンとトルエンとの混合溶媒〔アセトン:トルエン=1:1(容量比)〕に変更したこと以外は、JIS K0070−1992に記載の中和滴定法に従って測定した。
【0096】
[離型剤の融点]
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量した。該試料を昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで−10℃まで冷却した後、該試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定した。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とした
【0097】
[顔料として用いる酸化チタン粒子の個数平均一次粒子径]
顔料ととして用いる酸化チタン粒子の個数平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影倍率5,000〜50,000倍の適切な倍率で、粒径(長径と短径の平均値)を100個の粒子について測定し、それらの平均値を酸化チタン粒子の個数平均一次粒子径とした。
【0098】
[流動化剤及び外添剤の平均粒子径]
流動化剤及び外添剤の平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、流動化剤及び外添剤の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定した、500個の粒子の粒径の数平均値を流動化剤及び外添剤の平均粒子径とした。長径と短径がある場合は、長径を指す。
【0099】
[トナーの体積中位粒径(D50)]
トナーの体積中位粒径(D50)は、次のとおり測定した。
・測定装置:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「コールターマルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」〔花王株式会社製、HLB(グリフィン法)=13.6〕を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定した。得られた粒度分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
【0100】
[トナーの耐高温オフセット性]
トナーを「MICROLINE(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)に120g実装し、3cm×8cmのべた画像を「J紙」(富士ゼロックス株式会社製)の長軸方向上端から3cmの余白をあけて、トナー付着量0.45mg/cmに調整して印刷し、未定着のまま取り出した。
未定着の画像を「Microline(登録商標)5400」の定着器を改良した外部定着器にて、定着温度を5℃ずつ上げて100mm/sの定着速度で定着した。その際、紙の下部、定着ローラーの周期のところに高温オフセットが発生していないか、目視にて確認した。高温オフセットによる汚染が確認された最低温度を高温オフセット発生温度とし、耐高温オフセット性の指標とした。高温オフセット発生温度が高いほど耐高温オフセット性に優れる。結果を表2に示す。
【0101】
[トナーのカブリ]
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE(登録商標) 710」(株式会社沖データ製)に、トナーを実装し、印字率5%になるパターンで1万枚印字した後、黒紙に全面白ベタ画像を印字し、その印字途中でプリンターの電源を切った。
感光体表面のトナーを、メンディングテープ(「Scotch(登録商標)メンディングテープ810」(商品名)、スリーエムジャパン株式会社製)に付着させ、反射濃度計「RD−915」(グレタグマクベス社製)を用いて光学反射密度を測定し、トナーを付着させる前のメンディングテープの光学反射密度との差を求め、カブリを評価した。これらの値の差が小さいほど、カブリ発生の抑制効果に優れる。結果を表2に示す。
【0102】
[トナーの隠蔽性(白色度)]
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE(登録商標) 710」(株式会社沖データ製)にトナーを実装し、黒色紙面上に3cm×8cmのべた画像を印字した。その画像を反射濃度計「RD−915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定し、CIE1976(L)表色系を調べた。得られたCIE1976(L)表色系のL値により、隠蔽性(白色度)を評価した。この値が低いほど、隠蔽性に優れる。結果を表2に示す。
【0103】
[トナーのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムへの低温定着性]
A4用紙サイズにカットしたPETフィルム「ルミラー(登録商標)」(東レ株式会社製)を「P紙」(富士ゼロックス株式会社製)に重ねてテープで固定した。
「MICROLINE(登録商標)5400」「(株式会社沖データ製)にトナーを実装し、PETフィルム面にトナー付着量が0.45±0.03mg/cmに調整して、4.1×13.0cmのベタ画像を印刷した。定着器を通過する前にベタ画像を取り出して未定着画像を得た。
得られた未定着画像が印刷されたPETフィルムをP紙からはずし、「MICROLINE(登録商標) 3010」(株式会社沖データ製)の定着器を改造した外部定着機にて、定着ロールの温度を100℃に設定し、20mm/sの定着速度で定着させた。その後、定着ロール温度を105℃に設定し、同様の操作を行った。定着ロール温度を180℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度で未定着画像の定着処理を行い、定着画像を得た。
各温度で定着させた画像にメンディングテープ(「Scotch(登録商標)メンディングテープ810」(商品名)、スリーエムジャパン株式会社製)を付着させた後、500gの円柱状の重石(径φ5cm)を載せることにより、十分にテープを定着画像に付着させた。その後、ゆっくりとメンディングテープを定着画像より剥がし、下地に黒色紙を用いて、テープ剥離後の画像の光学反射密度を反射濃度計「RD−915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定した。予めテープを貼る前の画像についても光学反射密度を測定しておき、その値との比([テープ剥離後の反射密度/テープ貼付前の反射密度]×100)が最初に90%を超える時の定着ロールの温度を最低定着温度とし、低温定着性の指標とした。最低定着温度が低いほど低温定着性に優れることを示す。結果を表2に示す。
【0104】
[ポリエステルAの製造]
製造例1
(ポリエステルA−1の製造)
表1に示すトリメリット酸無水物を除く原料モノマー及び重合禁止剤を、窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、210℃で反応率が90%以上に達するまで反応させた後、−8.3kPa(G)にて1時間反応させた。その後、更にトリメリット酸無水物を添加して、210℃、常圧の条件にて、得られるポリエステルの軟化点が156℃に達するまで反応させ、非晶質ポリエステルA−1を得た。物性を表1に示す。
なお、該反応率とは、反応率=生成反応水量/理論生成水量×100で算出される値をいう。
【0105】
[ポリエステルBの製造]
製造例2
(ポリエステルB−1の製造)
表1に示す原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%以上に達するまで反応させた後、−8.3kPa(G)にて得られるポリエステルの軟化点が101℃に達するまで反応させ、非晶質ポリエステルB−1を得た。物性を表1に示す。
【0106】
製造例3
(ポリエステルB−2の製造)
表1に示すトリメリット酸無水物を除く原料モノマー、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%以上に達するまで反応させた後、−8.3kPa(G)にて1時間反応させた。その後、更にトリメリット酸無水物を添加して、230℃、常圧の条件にて、得られるポリエステルの軟化点が130℃に達するまで反応を行い、非晶質ポリエステルB−2を得た。物性を表1に示す。
【0107】
製造例4
(ポリエステルB−3の製造)
表1に示すフマル酸を除く原料モノマー、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%以上に達するまで反応させた後、−8.3kPa(G)にて1時間反応させた。次に、180℃まで冷却した後、更にフマル酸及び重合禁止剤を添加し、210℃まで昇温した後、−8.3kPa(G)にて得られるポリエステルの軟化点が95℃に達するまで反応を行い、非晶質ポリエステルB−3を得た。物性を表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
[ポリマー型電荷調整剤の製造]
製造例5
(ポリマー型電荷調整剤αの製造)
p−アルキルフェノール化合物p1としてp−tert−ブチルフェノールを0.225モル及びp−tert−オクチルフェノールを0.225モル、ビスフェノール化合物p2として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを0.032モル、アルデヒド化合物としてパラホルムアルデヒドを18.5g(ホルムアルデヒドとして0.6モル)、並びに5N水酸化カリウム水溶液を3g用いて、300mLのキシレン中、120℃で水を留去しながら還流反応を8時間行った。得られた反応溶液を、メタノールを用いて再結晶を行った後、ろ過し、ろ過物を更にメタノールで洗浄して得られた固体を乾燥して、ポリマー型電荷調整剤αを得た。
なお、フェノール化合物全量におけるp−アルキルフェノールp1とビスフェノール化合物p2の含有量は、それぞれ93モル%及び7モル%(モル比でp1/p2=93/7)であり、フェノール化合物とアルデヒド化合物とのモル比は、フェノール化合物/アルデヒド化合物=1/1.2であった。
【0110】
[白色トナーの製造]
実施例1〜8及び比較例1〜5
(トナー1〜8及びトナー9〜13の製造)
表2に示す配合量の結着樹脂(ポリエステルA及びB、又はポリエステルAのみ)、酸化チタン粒子、及び電荷調整剤、並びにカルナウバワックス「1号」(株式会社加藤洋行製、融点85℃)を3.0質量部及び流動化剤として疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:DMDS、平均粒子径:16nm)を2.0質量部(いずれも、結着樹脂100質量部基準)、ヘンシェルミキサーにて混合して原料混合物を得た。
【0111】
得られた原料混合物を、二軸混練機「PCM−30」(株式会社池貝製、軸の直径29mm、軸の断面積7.06cm)を使用して、混合物供給速度8kg/h、バレル設定温度100℃、回転数200r/min(周速0.30m/s)の条件で溶融混練し、溶融混練物を得た。
得られた溶融混練物を、IDS−2/DS2型粉砕分級機(日本ニューマチック工業株式会社製)を使用して、溶融混練物の供給速度2.5kg/h、アッパーダンパ30°、CCリング30mm、OEリング20mm、ルーバー1.5mm、衝突板距離30mmの条件にて粉砕及び分級を行い、体積中位粒径(D50)が7.0μmの白色トナー母粒子を得た。
【0112】
得られた白色トナー母粒子100質量部と、外添剤として疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:DMDS、平均粒子径:16nm)を1.0質量部、及び疎水性シリカ「RY−50」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:シリコーンオイル、平均粒子径:40nm)を1.0質量部(白色トナー母粒子100質量部基準)とを、ヘンシェルミキサー(日本コークス株式会社製)を使用して3000r/min(周速度32m/s)で3分間混合して、白色トナーを得た。
得られたトナー1〜8及び9〜13の評価結果を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
表2から、実施例1〜8のトナーは、隠蔽性、耐高温オフセット性及び低温定着性に優れ、かつカブリ発生が抑制されていることがわかる。
それに対して、ポリマー型電荷調整剤を用いていない比較例1及び2のトナーはカブリ発生の抑制効果が劣っていることがわかる。また、結着樹脂としてポリエステルAのみを使用した比較例3のトナーは、低温定着性が劣り、そして、結着樹脂としてポリエステルBのみを使用した比較例4のトナーは耐高温オフセット性に劣っていることがわかる。また、酸化チタン粒子の含有量が結着樹脂全量100質量部に対して250質量部である比較例5のトナーはカブリ発生の抑制効果及び低温定着性が劣っていることがわかる。