(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
一実施形態の遠心分離式オイルセパレータについて、
図1乃至
図6を参照して説明する。以下、遠心分離式オイルセパレータを単にオイルセパレータという。
図1は、第1の実施形態によるオイルセパレータが設けられる、空気調和装置の室外ユニットの全体構成を示す冷媒回路図を示している。なお、空気調和装置は冷凍サイクル装置の一例であり、冷凍サイクル装置としては、空気調和装置の他にチラーや給湯機等がある。
【0009】
この空気調和装置100は、例えば、1台の室外機101と複数台(ここでは4台)の室内機102a〜102dが、渡り配管(液管Pl,ガス管Pg)にて接続されている。室外機101には、3台の圧縮機103a〜103cが備えられる。圧縮機103a〜103cの吐出側には、それぞれ逆止弁が設けられ、冷媒管104を介して、オイルセパレータ1、四方弁106、室外熱交換器107、室外膨張弁108、リキッドタンク109、液管接続部110が順次接続される。液管接続部110には、室外機101と室内機102a〜102dとを接続する渡り配管である液管Plの一端が接続される。液管Plの他端は、複数に分岐され、室内機102a〜102dの液管接続部121a〜121dに接続される。各室内機102においては、液管接続部121、室内膨張弁122、室内熱交換器123、ガス管接続部124が順次接続される。ガス管接続部124a〜124dには、室外機101と室内機102a〜102dを接続する渡り配管であるガス管Pgの一端が接続され、ガス管Pgの他端側は一本に集合して室外機101のガス管接続部111に接続される。
室外機101において、ガス管接続部111には、冷媒管104を介して四方弁106、アキュムレータ112、圧縮機103の吸込み口が接続される。
以上のように、空気調和装置100の冷凍サイクルの主回路が構成される。
【0010】
室外機101には、主回路の他に、オイルセパレータ1で分離された冷凍機油を圧縮機103a〜103cに返すための回路および圧縮機103a〜103c間で冷凍機油をバランスさせる回路(以下、まとめて均油回路という)が設けられている。以下、均油回路について説明する。
【0011】
圧縮機103a〜103cのケース側面における所定の高さ位置にそれぞれ油出し管130a〜130cの一端が接続され、この油出し管130a〜130cの他端は油集合管131に接続される。油出し管130a〜130cには、逆止弁132a〜132cと絞り装置105a〜105cが設けられる。
油集合管131の一端部には、高圧側の冷媒管104から分岐するバイパス管133が接続され、このバイパス管133に絞り装置105dが設けられる。
油集合管131の他端部には、油案内管140が接続される。油案内管140は、後述する分配器141の流入口に接続される。
オイルセパレータ1の底部には第1の返油管151が接続され、オイルセパレータ1の側部には第2の返油管152が接続される。
上記第1の返油管151には、絞り装置105eと電磁開閉弁153が設けられ、油案内管140と分配器141の間に接続される。第2の返油管152には、絞り装置105fが設けられ、油集合管131に接続される。
分配器141は、内部に3つの流路が分岐して設けられ、3つの流出口に連通する。
分配器141の3つの流出口にそれぞれ油戻し管155a〜155cの一端が接続される。油戻し管155a〜155cの他端は、それぞれ圧縮機103a〜103cの吸込み管に接続される。
【0012】
次に、空気調和装置100に使用されるオイルセパレータ1について説明する。
図2に示すように、オイルセパレータ1は、オイルセパレータ本体(以下、容器2という)、冷媒流入管3、冷媒流出管4、第1の油排出管5および第2の油排出管6を備える。また、容器2は水平な設置面Gの上に起立した姿勢で据え付けられる。
【0013】
容器2は、円筒状の容器本体21と、容器本体21の下端開口部を閉塞する底板22と、容器本体21の上端開口部を閉塞する上蓋23と、で構成される。
底板22および上蓋23は、夫々球面状に湾曲された形状を有するとともに、例えば溶接等の手段により容器本体21に固定される。
【0014】
容器2の内部には、高さ方向の中間部に漏斗状の仕切板24が設けられる。容器2の内部は、仕切板24により上下2室に仕切られるとともに、仕切板24の中央部に設けられた油滴下孔24aにより連通する。この仕切板24よりも上方に分離室7が形成され、仕切板24よりも下方に貯油室8が形成される。
本実施形態では、仕切板24は、中央に位置する油滴下孔24aに向かって窪んだ、漏斗形状となっている。しかしながら、油滴下孔24aが仕切板24の下部に位置すれば良いため、仕切板24は、略半球体形状や、略円錐形状としても良い。
【0015】
容器2の分離室7側には、冷媒流入管3と、冷媒流出管4とが、備えられる。冷媒流入管3は、容器本体21を貫通して分離室7に挿入される。
【0016】
図3に示すように、冷媒流入管3は、L字状に折れ曲がった形状を有し、第1の直管部31、第1の湾曲部32、第2の直管部33、第2の湾曲部34および第3の直管部35と、を一体に備えている。なお、
図3(a)は、冷媒流入管3の正面図であり、
図3(b)は、冷媒流入管3の上面図である。
【0017】
第1の直管部31は、容器2の中心Oを通る鉛直線O1と平行になるように起立される。第1の直管部31の上端部は、口径が拡張された継手部31aが形成される。この継手部31aに圧縮機101a〜101cの吐出側から延出する冷媒管104の一端が接続される。
【0018】
図2に示すように、第2の直管部33は、第1の湾曲部32により第1の直管部31から水平方向に略直角に折り曲げられ、容器本体21と直交する。
【0019】
第2の直管部33の軸方向に沿う中間部に、円柱状の管台50がロウ付け等の手段により接合される。管台50は、容器本体21に設けられた開口部21aに挿入されるとともに、当該管台50の外周面が容器本体21に溶接等の手段により固定される。したがって、冷媒流入管3は、管台50を介して容器本体に固定される。
【0020】
図3に示すように、第3の直管部35は、第2の湾曲部34により第2の直管部33から約50度の角度(θ1)で横方向に折り曲げられる。ここで第2の湾曲部34の曲げ開始部を34a、曲げ終了部を34bとする。この曲げ方向は、冷媒流入方向から見て左方向である。また、第3の直管部35は、先端がその軸方向に対し約40度の角度(θ2)で斜めにカットされ、楕円形状の冷媒出口35aが開口される。この冷媒出口35aは、第2の直管部33の冷媒流路断面と略平行に設けられる。言い換えると、冷媒出口35aは、第2の直管部33の軸方向の延長線O2と直交する方向と略平行となる。ここで、第2湾曲部34の曲げ角度θ1を40〜60度、第3直管部35の斜切角度θ2を30〜50度の範囲とし、θ1とθ2とを合わせて90度となるように設定することにより、冷媒出口35aが、第2の直管部33の軸方向延長線O2と直交する方向と略平行に設けられる。このように冷媒出口35aの向きを設定することにより、気相冷媒を容器本体21内にスムーズに流出させることができる。なお、第2の湾曲部34の曲げ加工や第3の直管部35の斜切加工が容易となるように、θ1は40〜60度、θ2は50〜30度が望ましい。
【0021】
また、
図4に示すように、第3の直管部35は、その先端部35bが分離室5内で容器本体21の内周面に近接するように設けられる。
【0022】
次に管台50について説明する。
図5に示すように、管台50は、容器本体21の開口部21aと略同じ直径の円柱形状の部材である。さらに、菅台50の軸方向の長さ寸法が、第2の直管部33よりも短く、菅台50の外径は、冷媒流入管3の外径よりも大きく構成される。なお、
図5(a)は、容器本体21に取り付ける側からみた管台50を示しており、
図5(b)は、管台50の断面概略を示している。
【0023】
管台50は、容器2の外側となる外側端面50aから軸方向の中間部まで流入管挿入孔51が設けられる。また、管台50は、流入管挿入孔51に連続し、容器2の内側となる内側端面50bに向けて内径が拡大するテーパ部52が設けられる。
このテーパ部52を設けることにより、管台50内部におけるデッドスペースを小さくすることができる。なお、テーパ部52の形状は、第2の湾曲部34に沿うようなラッパ状に設けることも可能である。
【0024】
管台50は、その内側端部面50b側が、容器本体21の開口部21aに挿入される。このとき、管台50は、内側端部面50bが容器本体21の内壁面と面一となるように挿入される。
【0025】
管台50は、その大部分が容器本体21から外側に突出して取り付けられる。
図4に示すように、容器本体21の内部とテーパ部52とが連通するとともに、テーパ部52の大半は、容器本体21の内周面よりも外側に位置している。
【0026】
次に冷媒流出管4について説明する。
図2に示すように、冷媒流出管4は、容器2の中心を通る鉛直線O1に沿うように、仕切板24の上面から分離室7の上部に向けて真っ直ぐに立ち上げられる。冷媒流出管4の下端部には、冷媒吸込口41が仕切板24に向けて開口される。
【0027】
冷媒流出管4は、容器2の上蓋23を貫通して容器2の外に突出され、上端部に口径が拡張された継手部42が形成されている。継手部42は、容器2の上方に向けて開口される。この継手部42に四方弁106と接続される冷媒管104の一端が接続される。
【0028】
図2に示すように、容器2の貯油室8側に第1の油排出管5と第2の油排出管6が設けられる。
第1の油排出管5は、その一端が容器2の底板22の下面に接続される。第1の油排出管5の他端は、
図1に示す第1の返油管151が接続される。
第2の油排出管6は、その一端が容器2の貯油室8の上部でかつ容器本体21の側部に接続される。第2の油排出管6の他端は、
図1に示す第2の返油管152に接続される。
【0029】
次に、このオイルセパレータ1の動作を説明する。
圧縮機101a〜101cから吐出された冷凍機油を含んだ気相冷媒は、冷媒管104及び冷媒流入管3を介してオイルセパレータ1の内部に流入する。冷媒流入管3からオイルセパレータ1内に流入した気相冷媒は、容器本体21の内壁面に沿って旋回しながら、冷媒流出管4の冷媒吸込口41に向けて下降するように流れる。つまり気相冷媒は、分離室7内で螺旋を描くように流れる。一方で、気相冷媒に含まれる冷凍機油は、気相冷媒よりも密度が高いため、この旋回流によって発生する遠心力によって径方向側に飛散し、容器本体21の内壁に付着して気相冷媒から分離される。
【0030】
気相冷媒から分離されて容器本体21の内壁に付着した冷凍機油は、自重により内壁を伝い、下降する。下降した冷凍機油はやがて仕切板24により集められ、仕切板24の油滴下孔24aを通過して、容器2の下部の貯油室8内に溜まる。そして、貯油室8内に溜った冷凍機油は、オイルセパレータ1の側部に設けられた第2の油排出管6からオイルセパレータ1の外部に導出され、第1の返油管152、油案内管140、分配器141および油戻し管155a〜155cを経て、圧縮機101a〜101cの吸込口に戻される。圧縮機101a〜101cにおいて冷凍機油の不足が検知されると、第1の返油管151の電磁開閉弁153が開かれることにより、オイルセパレータ1の底部に接続された第1の油排出管5から貯油室8に溜った冷凍機油が排出され、圧縮機101a〜101cに強制的に戻される。
【0031】
一方、オイルセパレータ1の分離室7で冷凍機油が分離された気相冷媒は、冷媒流出管4からオイルセパレータ1の外部に導出されて、四方弁106へと供給される。冷媒流出管4は、その軸方向が容器2の中心を通る鉛直線O1と同一線上にあり、オイルセパレータ1の内壁面に沿って形成される旋回流の中央にある。そのため、冷媒流出管4は、遠心力により飛散した冷凍機油を吸込みにくく、気相冷媒のみを吸込みやすい。
【0032】
また、冷媒流出管4の下端部、つまり冷媒吸込口41は、冷媒流入管3の冷媒出口35aよりも、下方に位置しているため、気相冷媒の旋回流は、下向きに流れ、螺旋状の流れを形成しやすくなっている。
【0033】
また、
図6に示すように、仕切板24の油滴下孔24aの孔径dは、気相冷媒を流出する冷媒流出管4端部の冷媒吸込口41の内径(口径)Dよりも小さく構成される。
このように構成されることにより、気相冷媒の旋回流によって貯油室8内の冷凍機油の油面が乱されたり、冷凍機油が貯油室8から分離室7へ逆流することを防止することができる。従って、分離室7にて分離された冷凍機油を仕切板24下部の貯油室8にスムーズに流すことができる。
【0034】
上述した本実施形態によれば、気相冷媒が旋回流を形成しやすいため、油の分離率を向上した遠心分離式オイルセパレータを提供することができる。
【0035】
具体的には、
図6(a)に示すように、本実施形態では、管台50のテーパ部52に、冷媒流入管3の第2の湾曲部34の曲げ開始部34aが配置されるため、冷媒流入管3の先端部35bが容器2の中心Oから離れ、容器本体21の開口部21aに近い位置に配置される。この構成によれば、気相冷媒が容器本体21の内壁面に対して流入する角度θ3aが小さくなる。これにより、気相冷媒が容器本体21の円壁面に沿うように滑らかに流れ、旋回流が形成されやすくなるため、冷凍機油の分離に必要な遠心力を発生することができる。ここでθ3aは、第3の直管部35の軸方向と、この軸方向の延長線が容器本体21の内壁面と接する点における接線方向とがなす角度である。
一方、
図6(b)に示すように、管台50を設けず、容器本体21の内部に冷媒流入管3の第2の湾曲部の曲げ開始部34aを配置した場合は、冷媒流入管3の先端部35bが容器本体21の中心Oに近づき、容器本体21の開口部21aから遠い位置に配置される。この構成によれば、気相冷媒が容器本体21の内壁面に対して流入する角度θ3bが
図6(a)のθ3aよりも大きくなり、気相冷媒は内壁面に衝突するように流入するため、気相冷媒が容器本体21の円壁面に沿うように滑らかに流れることが難しくなってしまう。
【0036】
次に、管台50および冷媒流入管3の組み立て手順について説明する。
最初に、予め第1の直管部31、第1の湾曲部32および第2の直管部33が形成されたL字状の冷媒流入管3を準備し、その第2の直管部33を管台50の流入管挿入孔51に通す。引き続き、冷媒流入管3の第2の直管部33の先端部を曲げ加工により、第2の湾曲部34および第3の直管部35を形成する。ここで、第2の湾曲部34の曲げ角度θ1は上述のとおり約50度である。
その後、第3の直管部35をその軸方向に対して角度θ2傾けた約40度で斜めにカットし、楕円形状の冷媒出口35aを形成する。
その後、管台50の内側端面50bを容器本体21の開口部21aに挿入し、管台50を容器本体21に溶接する。これにより管台50が容器本体21に固定される。
その後、冷媒流入管3を治具にて位置決めする。この位置決めにより、
図4に示すように、第2の湾曲部34の曲げ開始部34aが管台50のテーパ部52内に位置し、第3の直管部35の先端部35bが容器本体21の内壁面と略隙間なく近接する。
その後、冷媒流入管3の第2の直管部33と管台50の外側端面50aとをロウ付け等の手段により接合する。これにより冷媒流入管3が管台50に固定される。
【0037】
以上説明した、実施形態によれば、旋回流を形成しやすくして、冷凍機油の分離率を向上した、遠心分離式オイルセパレータ及びこれを用いた冷凍サイクル装置を提供することができる。
【0038】
本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。