特許第6621135号(P6621135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621135
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】セラ式空気輸送装置の逃気弁構造
(51)【国際特許分類】
   B65G 65/40 20060101AFI20191209BHJP
   B65G 53/66 20060101ALI20191209BHJP
   F16K 31/44 20060101ALI20191209BHJP
   F16K 1/00 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   B65G65/40 C
   B65G53/66 Z
   F16K31/44 H
   F16K1/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-246048(P2015-246048)
(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公開番号】特開2017-109845(P2017-109845A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年6月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】大久保 聖
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−059620(JP,U)
【文献】 特開2009−040544(JP,A)
【文献】 特開平10−331994(JP,A)
【文献】 実開昭56−010554(JP,U)
【文献】 特開2014−080988(JP,A)
【文献】 特開2015−117768(JP,A)
【文献】 特開2004−108387(JP,A)
【文献】 特開2007−146684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/30−65/48
B65G 53/00−53/28
B65G 53/32−53/66
F16K 1/00− 1/54
F16K 31/44−31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラ式空気輸送装置のタンク内のエアを外部に抜くために用いられるセラ式空気輸送装置の逃気弁構造において、シリンダのシリンダロッドを、フローティングジョイントを介して、ケーシングに形成した、該ケーシングの内部空間側から順に耐スティックスリップ性を有する内側の軸シールと、該内側の軸シールによっては除去しきれない微粉を除去できる外側の軸シールからなる2種類の軸シールからなる粉体シールを備え、潤滑可能な軸受構造を持つ軸受部を貫通するバルブロッドに接続するとともに、該バルブロッドの先端に球面軸受を介して弁体を配設し、シリンダのシリンダロッド、バルブロッド及び弁体を、弁座芯上に水平に一直線に、かつ、軸受部を貫通するバルブロッド及び弁体を、上部に点検口及び点検口蓋を設けたケーシングの内部空間に配置したことを特徴とするセラ式空気輸送装置の逃気弁構造。
【請求項2】
前記弁体の着座部材の弁座との接触面が円錐台形状をし、該接触面の最小径部の径が弁座の最小径部の直径より大径に、最大径部の径が弁座の最大径部の直径より小径に形成されてなることを特徴とする請求項に記載のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラ式空気輸送装置の逃気弁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セラ式空気輸送装置を専用船に搭載し、このセラ式空気輸送装置によって、専用船(船舶)の船倉に貯められた被搬送物である粉状体(粒状体を含む。以下、同じ。)、陸上のサイロに空気輸送することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、図4に示すように、従来のセラ式空気輸送装置10は、一対のタンク12、14、切換弁16、専用船のディーゼルエンジン36を動力源とするコンプレッサ18等から構成され、セメント、フライアッシュ、炭酸カルシウム等の工業品や穀物等の食料品等の粉状体を輸送する専用船(船舶)に搭載されている。
【0004】
粉状体は、専用船の船倉に貯留され、船倉からタンク12、14に粉状体を供給する際には、船倉の底部に配置されたチェーンコンベヤからバケットエレベータによって粉状体を上昇搬送し、バケットエレベータの頂部からタンク12の供給口20又はタンク14の供給口22を介してタンク12又はタンク14に供給する。供給口20、22には、弁体(第1の弁体)24、26が設けられ、弁体24(又は弁体26)が開放されたタンク12(又はタンク14)に粉状体が交互に供給されて粉状体がタンク12(又はタンク14)に充填される。タンク12(又はタンク14)に充填された粉状体は、高圧エアによって、切換弁16に接続された配管15を介して陸上に空気輸送され、陸上に設置されたサイロに供給されて貯留される。
【0005】
タンク12、14の下部はホッパ状に形成され、その下部開口部12A、14Aにジョイント管28、30が接続される。このジョイント管28、30の排出口28A、30Aが切換弁16に接続されるとともに、切換弁16には排出口28A、30Aを開閉するための弁体(第2の弁体)32、34が設けられている。
【0006】
コンプレッサ18からの圧力エアは、バッファタンク(図示省略)を介して、タンク12、14、ジョイント管28、30及びタンク12、14に内蔵されたブリッジ防止用のエアノズルユニット40、42にそれぞれバルブを介して供給される。
【0007】
エアノズルユニット40、42は、タンク12、14のホッパ状部に配置され、ここに充填された粉状体に高圧エアを噴射し、粉状体を流動化させることにより粉状体の詰まりを防止する機能を有する。エアノズルユニット40、42の具体的な構造は、リング状に配置された上部ユニット40A、42Aと、この上部ユニット40A、42Aに連結され、ホッパ状部の傾斜面に沿って配置された複数の下部ユニット40B、42Bから構成される。これらの上部ユニット40A、42A、及び下部ユニット40B、42Bの多数のノズル41、41・・・から高圧エアをホッパ中央部に向けて噴射することにより、ホッパ部に充填された粉状体が効率よく流動化されて空気輸送時に円滑に排出される。
【0008】
コンプレッサ18の圧力エア供給系44には、タンク12、14側の主配管に高圧エアを供給/停止するバルブ46、48と、その後段のジョイント管28、30に高圧エアを供給/停止するバルブ50、52、54、56、エアノズルユニット40、42に高圧エアを供給/停止するバルブ58、60が設けられ、これらのバルブ46〜60の開閉はコントローラ62によって制御されている。また、弁体24、26を開閉するエアシリンダ(アクチュエータ)64、66と、弁体32、34を開閉するエアシリンダ68、70もコントローラによって制御されている。なお、符号72、74は、タンク12、14内における粉状体の充填量を検出するレベルセンサであり、符号76、78は、タンク12、14への粉状体の充填時にタンク12、14内のエアを外部に抜くための逃気弁である。レベルセンサ72、74からの情報はコントローラ62に出力され、逃気弁76、78の動作もコントローラ62によって制御されている。
【0009】
ここで、弁体24、26は、中空の円錐形状に形成されており、タンク12、14を貫通して配置された略L字形状の揺動アーム80の先端部に連結されている。この揺動アーム80をエアシリンダ64、66によって揺動させることにより円形の供給口20、22に対して弁体24、26が頂部を先頭にして進退移動される。揺動アーム80の基端部は、回転軸に連結されたレバー96を介してエアシリンダ64、66のピストンに連結されている。エアシリンダ64、66のピストンが伸縮動作されると、それに連動してレバー96、及び回転軸が正転/逆転方向に回動するので、回転軸に連結された揺動アーム80が揺動動作し、供給口20、22が弁体24、26によって開閉される。
【0010】
次に、コントローラ62による制御方法の一例について説明する。
図4は、タンク12に充填された粉状体を高圧エアによって空気輸送するとともに、タンク14に粉状体を充填している状態が示されている。この場合、タンク12側のバルブ46、50、52、58は開、逃気弁76は閉であり、タンク14側のバルブ48、54、56、60は閉、逃気弁78は開である。また、エアシリンダ68によって弁体32がタンク12の排出口28Aを開放しており、エアシリンダ70によって弁体34がタンク14の排出口30Aを閉塞している。
【0011】
レベルセンサ74からの信号によりタンク14に粉状体が満杯になったことを確認すると、エアシリンダ66が駆動してタンク14の供給口22を閉塞し、粉状体の供給を停止する。そして、タンク14の排出口30Aを弁体34で閉塞するとともに、逃気弁78を閉方向に駆動してエア抜きを停止する。この後、バルブ48、54、56、60を開放してタンク14内に高圧エアを供給し、タンク14の内圧が所定の圧力(例えば、0.2MPa)まで昇圧した時点で弁体34を閉塞位置から開放位置に移動させ、排出口30Aを開放する。これにより、タンク14内に充填された粉状体がタンク14からジョイント管30、切換弁16、及び配管15を介して陸上のサイロに高圧エアによって空気輸送される。
【0012】
一方、この時、タンク12は既に空の状態であるため、タンク12側では粉状体の充填が開始されている。この時のバルブ46、50、52、58の動作、弁体24、32の動作、及び逃気弁76の動作は、タンク14側の各動作と同一である。
【0013】
このように粉状体を空になったタンク12、14に交互に供給し、供給された粉状体をサイロに向けて交互に空気輸送する。これによって、専用船で輸送された粉状体をサイロに連続移送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−40544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、逃気弁76、78は、タンク12、14への粉状体の充填時にタンク12、14内のエアを外部に抜くために、すなわち、粉状体の充填時に、逃気弁76、78を開放することにより、タンク12、14内へ充填された粉状体により空気が押し出され、タンク12、14の内圧の上昇を抑え、粉状体のタンク12、14内への充填の妨げになることを防ぎ、また、粉状体の空気輸送中は逃気弁76、78を閉止し、タンク12、14の密閉を行うものであり、弁体24、26と同様、エアシリンダの直線動力を揺動アームを介することによって回転力へ変換し弁開閉を行う構造を採用するようにしている。
【0016】
このため、従来のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造には、以下の課題があった。
(1)弁体動作、駆動方式について
・直線動力を回転力へ変換し弁開閉を行っているため伝達機構に多くの構成部品が必要となり、装置全体の部品増加につながっている。
・弁体の動作スペースを確保するため、逃気弁のケーシングが肥大化しており、必要以上の重量となる。
・弁体の動作軌跡上、動作中心側と外側では弁体着座部の弁座への接触挙動が異なり、弁体の消耗に偏りが発生する。
(2)弁体形状について
・弁体の着座部材の弁座との接触面を円錐台形状とし、弁座へ弁体を差し込むことでくさび効果による閉止性能を高めようとしているが、接触面の最大径部が弁座の最大径部の直径より大径に形成されているため、着座時の弁体圧縮による弾性変形によりその効果が阻害されている。
【0017】
本発明は、上記従来のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造の有する問題点に鑑み、構造を簡略化することで部品点数の低減と動力損失の低減を可能にするとともに、形状の小型化や最適化等によって、上記従来のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造の有する問題点を解消するようにしたセラ式空気輸送装置の逃気弁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造は、セラ式空気輸送装置のタンク内のエアを外部に抜くために用いられるセラ式空気輸送装置の逃気弁構造において、シリンダのシリンダロッドを、フローティングジョイントを介して、ケーシングに形成した、該ケーシングの内部空間側から順に耐スティックスリップ性を有する内側の軸シールと、該内側の軸シールによっては除去しきれない微粉を除去できる外側の軸シールからなる2種類の軸シールからなる粉体シールを備え、潤滑可能な軸受構造を持つ軸受部を貫通するバルブロッドに接続するとともに、該バルブロッドの先端に球面軸受を介して弁体を配設し、シリンダのシリンダロッド、バルブロッド及び弁体を、弁座芯上に水平に一直線に、かつ、軸受部を貫通するバルブロッド及び弁体を、上部に点検口及び点検口蓋を設けたケーシングの内部空間に配置したことを特徴とする。
【0021】
また、前記弁体の着座部材の弁座との接触面が円錐台形状をし、該接触面の最小径部の径が弁座の最小径部の直径より大径に、最大径部の径が弁座の最大径部の直径より小径に形成されてなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造によれば、セラ式空気輸送装置のタンク内のエアを外部に抜くために用いられるセラ式空気輸送装置の逃気弁構造において、シリンダのシリンダロッドを、フローティングジョイントを介して、ケーシングに形成した軸受部を貫通するバルブロッドに接続するとともに、該バルブロッドの先端に球面軸受を介して弁体を配設することにより、従来のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造では必須であった直線動力を回転力へ変換し弁開閉を行うための伝達機構が不要となるので、部品点数の低減及び動力損失も低減できるほか、弁体の動作スペースを大きく必要とせず、逃気弁ケーシングの大きさを必要最小限に抑えることができる。
【0024】
また、前記シリンダのシリンダロッド、バルブロッド及び弁体を、弁座芯上に一直線に配置することにより、弁体の着座時の接触挙動を全周に亘って均一かつ同時に行われるようにすることができ、弁体の消耗の偏りを抑制することができる。
【0025】
また、前記軸受部を貫通するルブロッド及び弁体を、ケーシングの内部空間に配置するようにすることにより、逃気弁閉止時の一次側圧力上昇によって閉止押付力も上昇するため、着座時の押付力を高め、シリンダの出力を必要最小限とすることができる。
【0026】
また、弁体の着座部材の弁座との接触面が円錐台形状をし、該接触面の最小径部の径が弁座の最小径部の直径より大径に、最大径部の径が弁座の最大径部の直径より小径に形成されてなるようにすることにより、差し込み効果を十分発揮し、弁体の着座部材の弁座との接触状態を安定させることができる。
【0027】
また、前記軸受部に粉体シールを備え、潤滑可能な軸受構造を持つようにすることにより、粉体によって潤滑状態が悪くなる条件でも、摺動抵抗抑制のため作動特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造の一実施例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は軸受部の説明図、(e)は弁体の説明図である。
図2】弁体の着座挙動及び着座部材と弁座との関係を示す説明図で、(a)は従来例、(b)は実施例である。
図3】弁体の動作を示す模式図で、(a)は従来例、(b)は実施例である。
図4】従来のセラ式空気輸送装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0030】
図1に、本発明のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造の一実施例を示す。
このセラ式空気輸送装置の逃気弁構造は、図4に示す従来のセラ式空気輸送装置10の逃気弁76、78に対応し、タンク12、14への粉状体の充填時にタンク12、14内のエアを外部に抜くために、すなわち、粉状体の充填時に、逃気弁76、78を開放することにより、タンク12、14内へ充填された粉状体により空気が押し出され、タンク12、14の内圧の上昇を抑え、粉状体のタンク12、14内への充填の妨げになることを防ぎ、また、粉状体の空気輸送中は逃気弁76、78を閉止し、タンク12、14の密閉を行うものである。
【0031】
そして、このセラ式空気輸送装置の逃気弁構造は、シリンダ2のシリンダロッド21を、フローティングジョイント3を介して、ケーシング1に形成した軸受部11を貫通するバルブロッド4に接続するとともに、このバルブロッド4の先端に球面軸受5を介して弁体6を設置し、これらを可能な限り弁座芯上に一直線になるように配設するようにしている。
【0032】
[フローティングジョイント3]
ところで、シリンダロッド21とバルブロッド4に芯ずれや偏角があると、動力の損失が大きくなるばかりでなく、軸受部11の構成部品の短寿命化にもつながる。一般的には、芯ずれや偏角が生じないように、高精度な調整を行うことが必要となるが、シリンダ2や軸受部11等のメンテナンスの都度調整を行うことは困難である。
そこで、芯ずれや偏角が生じても、無理な力がシリンダロッド21及びバルブロッド4並びに軸受部11にかからないように、シリンダ2のシリンダロッド21とバルブロッド4との間にフローティングジョイント3を設けるようにしている。
ここで、フローティングジョイント3には、SMC社製「JA型フローティングジョイント」を用いるようにしている。
【0033】
[球面軸受5]
また、弁体6と弁座7の芯ずれや偏角があると、弁体の着座部が均一にならないばかりかバルブロッド4に偏心荷重がかかることとなる。
そこで、バルブロッド4の先端に球面軸受5を介して弁体6を設置し、弁体6を揺動自由な状態にすることで、弁座7に合わせて弁体6が揺動し着座が均一になりバルブロッド4への偏心荷重も無いようにした。
【0034】
[軸受部11]
一般に、粉体雰囲気中で作動する直動軸は、軸受摺動部への粉体混入による動作不良の発生が無いようにしなくてはならない。また、その軸封構造は極力摺動抵抗の少ないものが望ましい。
そこで、軸受部11は潤滑可能な構造としつつ、以下の部品で構成するようにした。
【0035】
軸受11aは、異物混入の可能性があるためすべり軸受を使用し、耐摩耗性に優れ異物の埋没性の良い軸受を用いるようにする。
ここで、軸受11aには、オイレス工業社製「ガイドブッシュSGB」を用いるようにしている。
なお、軸受11aには、無給油軸受のほか、給油軸受を用いることもできる。
【0036】
軸シール11b、11cには、以下の性状を有する2種類の軸シールを組み合わせて用いた。
ケーシング1に対して内側の軸シール11bは、粉体によって潤滑状態が悪くなる条件でも使用が可能で、摺動抵抗抑制のため作動特性(耐スティックスリップ性)に優れたものを用いる。
ここで、軸シール11bには阪上製作所社製「SMDスクレーパ」を用いるようにしている。
なお、軸シール11bにはスクレーパのほか、オイルシールやダストシールを用いることができる。
ケーシング1に対して外側の軸シール11cは、内側の軸シール(スクレーパ、オイルシール、ダストシール等)で除去しきれない微粉を除去できるものを用いる。
ここで、軸シール11cには、阪上製作所社製「BIHIソフトワイパ」を用いるようにしている。
なお、軸シール11cにはソフトワイパのほか、フエルトや不織布を用いることができる。
【0037】
さらに、給油口を設け軸受内部を潤滑しケーシング1に対して反対側には、オイルシール11dを設けるようにする。
ここで、オイルシール11dには、NOK社製「TB4型オイルシール」を用いるようにしている。
【0038】
[弁体6の着座部材61の材質]
弁体6の着座部材61には、NBR、ウレタンゴム等、使用条件に適した、エラストマー材料を好適に用いることができる。
【0039】
[弁体6の着座部材61の着座挙動]
図2(a)に示すように、従来例の弁体6の着座部材61は、その挙動から動作中心側は先に着座し、外側は後に着座するようになっており、摩耗粉を含む空気流がある状態で開閉を行うため、消耗に偏りが発生していた。
それに対し、本実施例では直線動作で開閉を行うため、図2(b)のとおり、着座部材61の全周に亘り常に均一な空気流を得ることができるため、消耗の偏りをなくすことができる。
【0040】
[弁体6の着座部材61の形状]
弁体6の着座部材61は、弁座7との接触面が円錐台形状とし、弁座7へ弁体の着座部材61を差し込むことで、くさび効果により閉止性能を高めるようにしている。
しかしながら、従来例は弁座7のテーパ部の長さが短いため、その差し込み効果が十分発揮されていなかった。
そこで、本実施例においては、弁体6の着座部材61の弁座7との接触面が円錐台形状をし、この接触面の最小径部の径が弁座7の最小径部の直径より大径に、最大径部の径が弁座7の最大径部の直径より小径に形成されてなるようにしている。
これにより、差し込み効果を十分発揮し、弁体6の着座部材61の弁座7との接触状態を安定させることができる。
【0041】
このセラ式空気輸送装置の逃気弁構造は、図3の模式図に示すとおり、弁体を直線動作で開閉する方式を採用しているため(図3(b))、従来のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造(図3(a))と比較して有する構造を簡略化することで部品点数を低減することができる。これにより、従来のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造では必須であった直線動力から回転力への伝達機構が不要となるので、動力の損失を抑制できるほか、弁体の動作スペースを大きく必要とせず、逃気弁ケーシングの大きさを必要最小限に抑えることができる。
【0042】
[弁座7の材質]
弁座7には、軟鋼や耐摩耗鋼等の金属材料のほか、硬質クロムメッキや超硬溶射等の表面硬化処理を行った金属材料を好適に用いることができる。
【0043】
[上蓋8]
ケーシング1の上部開口に、点検口81を開口した上蓋8と、この上蓋8の点検口81を覆う点検口蓋82とを設けるようにしている。
これにより、メンテナンス性を向上することができる。
【0044】
以上、本発明のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造は、構造を簡略化することで部品点数の低減と動力損失の低減を可能にするとともに、形状の小型化や最適化等によって、従来のセラ式空気輸送装置の逃気弁構造の有する問題点を解消することができるものであることから、セラ式空気輸送装置の逃気弁構造として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ケーシング
11 軸受部
2 シリンダ
21 シリンダロッド
3 フローティングジョイント
4 バルブロッド
5 球面軸受
6 弁体
61 着座部材
7 弁座
8 上蓋
81 点検口
82 点検口蓋
図1
図2
図3
図4