(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドアパネルの開閉を繰り返すと、グロメットの伸縮回数も多くなる。主として蛇腹部の伸縮によってドアパネルの開閉動作に追従する構成では、曲げ応力が局所に集中しやすい。
【0006】
また、配達車やタクシーなどの商用車では乗用車に比べてドアパネルの開閉回数が多く、屈曲に対する耐久性が高いグロメットが要求されている。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、屈曲に対する耐久性が高いグロメットおよびグロメット付き電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様に係るグロメットは、その内部に電線を挿通可能なグロメットであって、ドアパネルに固定される第1固定部と、車両パネルに固定される第2固定部と、弾性変形可能であり、前記第1固定部と前記第2固定部との間を繋ぐ連結部と、を備え、前記車両パネルに対して前記ドアパネルが閉じた閉状態で、前記連結部の中間部が前記連結部の両端部よりも垂れ下がっている。
【0009】
また、第1の態様に係るグロメットは、前記車両パネルに対して前記ドアパネルが開いた開状態で、前記連結部の中間部が前記連結部の両端部よりも垂れ下がっており、前記開状態における前記中間部の垂れ下がり量は、前記閉状態における前記中間部の垂れ下がり量よりも小さい。
【0010】
第2の態様に係るグロメットは、
第1の態様に係るグロメットであって、前記連結部は、その内部に前記電線を挿通可能な構成として、第1固定部側の端部に位置する第1筒状部と、第2固定部側の端部に位置する第2筒状部と、蛇腹状で且つ前記第1筒状部および前記第2筒状部に連結される蛇腹部と、を有し、前記第1筒状部のうち前記蛇腹部側の部分と前記第2筒状部のうち前記蛇腹部側の部分とが共に下向きである。
【0011】
第3の態様に係るグロメットは、第1
又は第2の態様に係るグロメットであって、前記中間部は、前記車両パネルに対して前記ドアパネルが開いた開状態および前記閉状態の切替に応じて変形する部分であり、前記両端部は、前記開状態および前記閉状態の両方で同一形状の部分であり、前記中間部の長さが前記開状態における前記両端部の間隔よりも大きい。
【0012】
第4の態様に係るグロメット付き電線は、第1から
第3までのいずれか1つの態様に係るグロメットと、前記グロメットの内部に挿通される電線と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
第1〜
第3の態様によると、車両パネルに対してドアが閉じた閉状態で、連結部の中間部が両端部よりも垂れ下がっている。よって、ドアが開かれる際には、車両パネルとドアパネルとが離れることで、連結部の中間部が持ち上げられる。このように、ドアの開閉時には、主として連結部のたるみ形状が変化することでグロメットが屈曲される。本態様では、主として連結部の伸縮によってグロメットが屈曲される態様に比べて、屈曲に対するグロメットの耐久性が向上する。
【0014】
また、車両パネルに対してドアパネルが開いた開状態で、連結部の中間部が両端部よりも垂れ下がっている。また、開状態における中間部の垂れ下がり量は、閉状態における中間部の垂れ下がり量よりも小さい。このように、開状態および閉状態の両方で中間部が垂れ下がる態様では、主としてたるみ形状が変化することでグロメットが屈曲され、屈曲に対するグロメットの耐久性が向上する。
【0015】
第2の態様によると、第1筒状部のうち蛇腹部側の部分と第2筒状部のうち蛇腹部側の部分とが共に下向きである。これにより、第1筒状部および第2筒状部に連結される蛇腹部が重力の作用で垂れ下がった状態が維持されるので、蛇腹部と周辺部材との干渉が生じ難く、省スペースに蛇腹部を配することができる。
【0016】
第3の態様によると、中間部の長さが開状態における両端部の間隔よりも大きい。このように、ドアパネルの開閉に伴って変形する中間部の長さが十分に確保されているので、ドアパネルの開閉時にグロメットに働く応力が分散され、屈曲に対するグロメットの耐久性が向上する。
【0017】
第4の態様によると、屈曲に対する耐久性が高いグロメットを用いて電線を保護するので、ドアパネルの開閉動作を繰り返し行っても電線の保護状態を有効に維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態に係るグロメット1について説明する。
【0020】
図1は、自動車に取付けられる前のグロメット1を示す側面図である。
図2は、自動車に取付けられており、ドアパネル5が閉じた閉状態におけるグロメット1を示す概略平面図である。
図3は、自動車に取付けられており、ドアパネル5が開いた開状態におけるグロメット1を示す概略平面図である。
【0021】
グロメット1は、ゴムまたはエラストマーなどの弾性体で構成された筒状であり、その内部に電線8を挿通可能な部材である。なお、
図1では、グロメット1の内部空間の軸心7が
一点鎖線で描かれている。ここで、軸心7とは、筒状のグロメット1の内部空間における各横断面の中心を繋いだ線に相当する。
【0022】
作業者がグロメット1の内部空間に軸心7に沿って電線8を挿通することで、グロメット付き電線9が得られる。このグロメット付き電線9は、自動車の車両パネル6に設けられた貫通穴およびドアパネル5に設けられた貫通穴を通じて電線8を配索する際に利用される。
【0023】
車両パネル6は自動車本体に対して不動の部分であるのに対し、ドアパネル5は車両パネル6に近づく方向もしくは車両パネル6から離れる方向に移動可能である。具体的には、ドアパネル5は、
図2および
図3に簡略的に示すヒンジ100を中心に、車両パネル6に近づく方向もしくは車両パネル6から離れる方向に弧状に移動可能である。
図2および
図3では、ドアパネル5の移動可能な方向を弧状の両向き矢印で示している。
【0024】
ここでは、ドアパネル5が車両パネル6に最も近づくことで自動車のドアが閉じた状態を閉状態といい、ドアパネル5の一部が車両パネル6から離れることで自動車のドアが開いた状態を開状態という。ドアパネル5が車両パネル6に対して開閉されると、グロメット1はその開閉動作に追従して屈曲自在に変形する。また、ドアパネル5の開閉動作によって、電線8もグロメット1の内壁から押圧されてその配線経路が変更される。
【0025】
グロメット付き電線9において、グロメット1は、その内部に挿通された電線8を衝撃及び水分から保護する役割を果たす。ここでは、グロメット1内に挿通される電線8が複数の電線を束ねたワイヤーハーネスである場合について説明するが、電線8が1つの電線で構成されてもよい。
【0026】
図4は、自動車に取付けられており、ドアパネル5が閉じた閉状態におけるグロメット1を示す斜視図である。
図5は、自動車に取付けられており、ドアパネル5が開いた開状態におけるグロメット1を示す斜視図である。なお、
図4および
図5においては、グロメット1の構成を示す観点から、ドアパネル5および車両パネル6が省略されている。
【0027】
以下、
図1〜
図5を参照しつつ、グロメット1の詳細な構成について説明する。なお、
図2および
図3においては、紙面手前が鉛直上向きを意味し、紙面奥が鉛直下向きを意味する。また、
図4および
図5においては、紙面上方が鉛直上向きを意味し、紙面下方が鉛直下向きを意味する。
【0028】
グロメット1は、軸心7に沿って内部空間が連通した状態で、第1固定部10と、第2固定部20と、連結部30と、を有する。
【0029】
第1固定部10は、その外面に環状の溝11を有し、ドアパネル5に固定される部分である。溝11の外径とドアパネル5の貫通孔5hの内径とは同一のサイズである。また、第1固定部10の外面には、第2固定部20側から第2固定部20とは反対側に向けて徐々に外径が大きくなる傾斜面12が設けられている。
【0030】
よって、作業者が第1固定部10を第2固定部20側に位置するドアパネル5の貫通孔5hに押し込むことで、ドアパネル5の貫通孔5hの縁部が傾斜面12に案内される。この案内の際には、傾斜面12がドアパネル5の貫通孔5hの縁部から縮径方向に押圧されて、第1固定部10が縮径方向に弾性変形する。そして、傾斜面12がドアパネル5の貫通孔5hの縁部を越えると、第1固定部10が復元力により元の形状に戻り、ドアパネル5の貫通孔5hの縁部が第1固定部10の溝11に嵌め込まれる。その結果、グロメット1がドアパネル5に固定される。
【0031】
第2固定部20は、その外面に環状の溝21を有し、車両パネル6に固定される部分である。溝21の外径と車両パネル6の貫通孔6hの内径とは同一のサイズである。また、第2固定部20の外面には、第1固定部10とは反対側から第1固定部10側に向けて徐々に外径が大きくなる傾斜面22が設けられている。
【0032】
よって、作業者が第2固定部20を第1固定部10と反対側に位置する車両パネル6の貫通孔6hに押し込むことで、車両パネル6の貫通孔6hの縁部が傾斜面22に案内される。この案内の際には、傾斜面22が車両パネル6の貫通孔6hの縁部から縮径方向に押圧されて、第2固定部20が縮径方向に弾性変形する。そして、傾斜面22が車両パネル6の貫通孔6hの縁部を越えると、第2固定部20が復元力により元の形状に戻り、車両パネル6の貫通孔6hの縁部が第2固定部20の
溝21に嵌め込まれる。その結果、グロメット1が車両パネル6に固定される。
【0033】
また、グロメット1のうち第1固定部10よりも端側には電線8の外周面を部分的に覆う端部15が設けられる。グロメット1のうち第2固定部20よりも端側には電線8の外周面を部分的に覆う端部25が設けられる。よって、グロメット1の内部に電線8を挿通した状態で、端部15および端部25の外周部をそれぞれテープ等で巻き付けることにより、この2箇所で電線8に対してグロメット1が固定される。
【0034】
連結部30は、弾性変形可能であり、第1固定部10と第2固定部20との間を繋ぐ部分である。また、連結部30は、その内部に電線8を挿通可能な構成として、第1固定部10側の端部に位置する第1筒状部31と、第2固定部20側の端部に位置する第2筒状部32と、蛇腹状で且つ第1筒状部31および第2筒状部32に連結される蛇腹部33と、を有する。
【0035】
第1筒状部31は、その内部に挿通される電線8の配線経路を屈曲させる筒状部である。第1筒状部31の一端31aは第1固定部10に接続され、第1筒状部31の他端31bは蛇腹部33の一端に接続されている。また、第1筒状部31は、蛇腹部33のような凹凸形状を有さず且つ蛇腹部33よりも肉厚に構成される。このため、第1筒状部31は開状態および閉状態の両方で同一形状の部分である。よって、グロメット1の内部に挿通される電線8のうち第1筒状部31の内部を通過する部分は、開状態および閉状態の両方で同じ経路に沿って配線される。
【0036】
第2筒状部32は、その内部に挿通される電線8の配線経路を屈曲させる筒状部である。第2筒状部32の一端32aは第2固定部20に接続され、第2筒状部32の他端32bは蛇腹部33の他端に接続されている。また、第2筒状部32は、蛇腹部33のような凹凸形状を有さず且つ蛇腹部33よりも肉厚に構成される。このため、第2筒状部32は開状態および閉状態の両方で同一形状の部分である。よって、グロメット1の内部に挿通される電線8のうち第2筒状部32の内部を通過する部分は、開状態および閉状態の両方で同じ経路に沿って配線される。
【0037】
蛇腹部33は、グロメット1の軸心7の方向に沿って環状山部33aと環状谷部33bとが交互に連続する波形部分であり、ドアパネル5の開閉動作に追従して屈曲自在に構成される。よって、蛇腹部33は、軸心7の方向への伸縮性と軸心7に交差する方向へ曲がる可撓性とを有しており、開状態および閉状態の切替に応じて変形する部分である。このため、グロメット1の内部に挿通される電線8のうち蛇腹部33の内部を通過する部分は、開状態と閉状態とで異なる経路に沿って配線される。
【0038】
このように、第1筒状部31および第2筒状部32は連結部30の両端部に相当し、蛇腹部33は連結部30の中間部に相当する。なお、本実施形態のように第1筒状部31および第2筒状部32が設けられることは必須ではなく、いずれか片方が省略されてもよいし、両方が省略されてもよい。第1筒状部31もしくは第2筒状部32が省略される場合には、蛇腹部33の端部が第1固定部10もしくは第2固定部20に直結される。この場合、蛇腹部33の端部と第1固定部10もしくは第2固定部20との直結部位が連結部30の端部に相当し、蛇腹部33が連結部30の中間部に相当する。
【0039】
図4に示されるように、閉状態においては、蛇腹部33(すなわち、連結部30の中間部)が第1筒状部31および第2筒状部32(すなわち、連結部30の両端部)よりも垂れ下がっている。そして、
図5に示されるように、ドアパネル5が開かれる際には、車両パネル6とドアパネル5とが離れることで、連結部30の中間部である蛇腹部33が持ち上げられる。
【0040】
ここで、
図6を参照しつつ、閉状態および開状態におけるグロメット1の軸心7の経路について説明する。
図6は、閉状態および開状態におけるグロメット1の軸心7の経路を示す概念図である。なお、
図6では、閉状態における軸心7が実線で描かれ、開状態における軸心7が二点鎖線で描かれている。また、閉状態における軸心7上の特定の位置を示す目的で、仮想点として点P11〜P14が描かれている。同様に、開状態における軸心7上の特定の位置を示す目的で、仮想点として点P21〜P24が描かれている。
【0041】
図6において、点P11は、閉状態における軸心7のうち第2筒状部32の一端32aに相当する位置を示す。点P12は、閉状態における軸心7のうち第2筒状部32の他端32bに相当する位置を示す。点P13は、閉状態における軸心7のうち第1筒状部31の他端31bに相当する位置を示す。点P14は、閉状態における軸心7のうち第1筒状部31の一端31aに相当する位置を示す。よって、点P12〜P13に示すように、閉状態におけるグロメット1では、蛇腹部33が第1筒状部31および第2筒状部32よりも垂れ下がったU字状となる。
【0042】
また、
図6において、点P21は、開状態における軸心7のうち第2筒状部32の一端32aに相当する位置を示す。点P22は、開状態における軸心7のうち第2筒状部32の他端32bに相当する位置を示す。点P23は、開状態における軸心7のうち第1筒状部31の他端31bに相当する位置を示す。点P24は、開状態における軸心7のうち第1筒状部31の一端31aに相当する位置を示す。よって、点P22〜P23に示すように、開状態におけるグロメット1では、蛇腹部33が第1筒状部31および第2筒状部32よりも垂れ下がったU字状となる。
【0043】
上記のように、車両パネル6は不動でドアパネル5が移動可能に構成されている。また、第1筒状部31および第2筒状部32は、開状態および閉状態の両方で同一形状の部分である。よって、点P11および点P21の位置は一致し、点P12および点P22の位置も一致する。また、点P13から点P14までの区間における軸心7の経路と点P23から点P24までの区間における軸心7の経路とは同一形状となる。他方、点P22から点P23までの区間における軸心7の経路(すなわち、開状態における蛇腹部33の経路)は、点P12から点P13までの区間における軸心7の経路(すなわち、閉状態における蛇腹部33の経路)に比べて、上方に持ち上げられて且つ左右方向に長い経路となる。
【0044】
本実施形態では、閉状態で蛇腹部33が第1筒状部31および第2筒状部32よりも垂れ下がっている。よって、閉状態から開状態に切り替えられる際には、車両パネル6とドアパネル5とが離れることで、蛇腹部33が持ち上げられる。逆に、開状態から閉状態に切り替えられる際には、車両パネル6とドアパネル5とが近づくことで、蛇腹部33がより下方に垂下げられる。
【0045】
このように、ドアの開閉時にグロメット1に働く応力は、主として蛇腹部33のたるみ形状の変化に作用し、蛇腹部33の伸縮には作用し難い。よって、グロメット1の伸縮回数の増加に起因して蛇腹部33の環状山部33aおよび環状谷部33bに局所的に曲げ応力が集中することが抑制され、屈曲に対するグロメット1の耐久性が向上する。なお、ドアの開閉時にグロメット1に働く応力の作用によって、蛇腹部33が僅かに伸縮しても構わない。
【0046】
また、本実施形態では、閉状態および開状態における第1筒状部31と第2筒状部32の高さが同一であるので、自動車にグロメット付き電線9を取り付ける上での装置設計が容易である。なお、これらの高さが同一であることは必須ではなく、異なっていてもよい。また、第1筒状部31および第2筒状部32の高さは同程度であれば好ましく、例えば、第1筒状部31が第2筒状部32に比べて数十ミリメートル高い構成であってもよい。
【0047】
また、本実施形態では、蛇腹部33の長さ(すなわち、連結部30の中間部の長さ)が、開状態における第1筒状部31と第2筒状部32との間隔(すなわち、連結部30の両端部の間隔)よりも大きい。ここで、連結部30の中間部の長さとは点P12〜P13もしくは点P22〜P23の軸心7に沿う長さである。また、連結部30の両端部の間隔とは、第1筒状部31および第2筒状部32の軸心7のうち下端部分(すなわち、蛇腹部33を支持する部分)の間隔である。このように、ドアパネル5の開閉に伴って変形する蛇腹部33の長さが十分に確保されているので、ドアパネル5の開閉時にグロメット1に働く応力が分散される。
【0048】
該応力は、主として蛇腹部33のたるみ形状の変化に作用し、蛇腹部33の伸縮には作用し難い。よって、グロメット1では、点P12から点P13までの区間における軸心7に沿う距離と点P22から点P23までの区間における軸心7に沿う距離とが同一となる。このように、主としてたるみ形状が変化することでグロメット1が屈曲され、屈曲に対するグロメット1の耐久性が向上する。なお、上記距離が同一となることは必須ではなく、例えば、点P12から点P13までの区間における軸心7に沿う距離よりも点P22から点P23までの区間における軸心7に沿う距離の方が僅かに大きくてもよい。
【0049】
また、蛇腹部33の長さ(すなわち、点P12〜P13もしくは点P22〜P23の軸心7に沿う長さ)が、開状態における第1筒状部31および第2筒状部32の間隔(すなわち、点P22と点P23との直線的な間隔)と同一であってもよい。この場合、開状態において蛇腹部33が垂れ下がるのではなく、開状態において蛇腹部33が点
P22と点
P23との間を直線状に張られた状態となる。
【0050】
また、本実施形態では、開状態および閉状態の両方で蛇腹部33が垂れ下がっており、開状態における蛇腹部33の垂れ下がり量は、閉状態における蛇腹部33の垂れ下がり量よりも小さい。このように、開状態および閉状態の両方で蛇腹部33が垂れ下がる態様では、主としてたるみ形状が変化することでグロメット1が屈曲され、屈曲に対するグロメット1の耐久性が向上する。
【0051】
また、本実施形態では、ドアパネル5の開閉動作のいずれの時点においても、第1筒状部31のうち蛇腹部33側の部分と第2筒状部32のうち蛇腹部33側の部分とが共に下向きである。これにより、第1筒状部31および第2筒状部32に連結される蛇腹部33が重力の作用で垂れ下がった状態が維持されるので、蛇腹部33と周辺部材との干渉が生じ難く、省スペースに蛇腹部33を配することができる。なお、第1筒状部31のうち蛇腹部33側の部分と第2筒状部32のうち蛇腹部33側の部分とが共に下向きであることは必須ではなく、これらの少なくとも一方が横向きまたは上向きであってもよい。
【0052】
グロメット付き電線9では、上記のように屈曲に対する耐久性が高いグロメット1を用いて電線8を保護するので、ドアパネル5の開閉動作を繰り返し行っても電線8の保護状態を有効に維持できる。このグロメット付き電線9は、乗用車のドア部分にも適用可能であるが、配達車やタクシーなどの商用車(例えば、ドアの開閉が多く屈曲に対する高い耐久性を要求される自動車)に特に好適である。また、一般にリアドアよりもフロントドアの方がドアの開閉頻度が高いので、グロメット付き電線9はフロントドア部分に特に好適である。
【0053】
次に、
図7〜
図10を参照しつつ、本実施形態に係るグロメット1の比較例として、第1比較例から第4比較例について説明する。以下の各比較例では、本実施形態の各部と同様の構成については同一の符号を用いて重複説明を省略する。また、第1比較例から第4比較例に係るグロメットにおいて、軸心7A〜7Dは蛇腹部の内部における軸心に相当する。
【0054】
図7は、第1比較例に係る直線状のグロメットの軸心7Aの経路を示す概念図である。なお、
図7では、閉状態における軸心7Aが実線で描かれ、開状態における軸心7Aが二点鎖線で描かれている。また、閉状態における軸心7A上の特定の位置を示す目的で、仮想点として点P31,P32が描かれている。同様に、開状態における軸心7A上の特定の位置を示す目的で、仮想点として点P41,P42が描かれている。
【0055】
図7において、点P31は、閉状態における軸心7Aのうち第2固定部20側の端部に相当する位置を示す。点P32は、閉状態における軸心7Aのうち第1固定部10側の端部に相当する位置を示す。点P41は、開状態における軸心7Aのうち第2固定部20側の端部に相当する位置を示す。点P42は、開状態における軸心7Aのうち第1固定部10側の端部に相当する位置を示す。上記のように車両パネル6は不動の部分であるので、該車両パネル6に固定される第2固定部20側の点P31,P41は同一位置となる。
【0056】
点P31,P32に示すように、第1比較例では、閉状態において蛇腹部が直線状に張られた状態となる。また、点P41,P42に示すように、第1比較例では、開状態において蛇腹部が閉状態よりも長い直線状に張られた状態となる。この第1比較例では、ドアパネル5の開閉動作に伴ってグロメットに働く応力が、主として蛇腹部を伸縮する方向に作用する。この第1比較例では、ドアパネルの開閉動作に追従して蛇腹部が伸縮するため、曲げ応力が蛇腹部の山部および谷部に局所に集中しやすい。
【0057】
図8は、第2比較例に係るS字状のグロメットの軸心7Bの経路を示す概念図である。なお、
図8では、閉状態における軸心7Bが実線で描かれ、閉状態と開状態との中間状態における軸心7Bが一点鎖線で描かれ、開状態における軸心7Bが二点鎖線で描かれている。また、閉状態における軸心7B上の特定の位置を示す目的で、仮想点として点P51,P52が描かれている。中間状態における軸心7B上の特定の位置を示す目的で、仮想点として点P61,P62が描かれている。開状態における軸心7B上の特定の位置を示す目的で、仮想点として点P71,P72が描かれている。
【0058】
図8において、点P51は、閉状態における軸心7Bのうち第2固定部20側の端部に相当する位置を示す。点P52は、閉状態における軸心7Bのうち第1固定部10側の端部に相当する位置を示す。点P61は、中間状態における軸心7Bのうち第2固定部20側の端部に相当する位置を示す。点P62は、中間状態における軸心7Bのうち第1固定部10側の端部に相当する位置を示す。点P71は、開状態における軸心7Bのうち第2固定部20側の端部に相当する位置を示す。点P72は、開状態における軸心7Bのうち第1固定部10側の端部に相当する位置を示す。上記のように車両パネル6は不動の部分であるので、該車両パネル6に固定される第2固定部20側の点P51,P61,P71は同一位置となる。
【0059】
点P51,P52に示すように、第2比較例では、閉状態において蛇腹部がS字状に屈曲された状態となる。また、点P61,P62に示すように、第2比較例では、中間状態において蛇腹部が直線状に張られた状態となる。また、点P71,P72に示すように、第2比較例では、開状態において蛇腹部が中間状態よりも長い直線状に張られた状態となる。この第2比較例では、ドアパネル5の開閉動作に伴ってグロメットに働く応力が、閉状態と中間状態との間では主として蛇腹部のたるみ形状の変化に作用し、中間状態と開状態との間では主として蛇腹部を伸縮する方向に作用する。この第2比較例では、中間状態と開状態との間で蛇腹部が伸縮するため、曲げ応力が蛇腹部の山部および谷部に局所に集中しやすい。
【0060】
図9は、第3比較例に係るS字状のグロメットの軸心7Cの経路を示す概念図である。なお、
図9では、閉状態における軸心7Cが実線で描かれ、開状態における軸心7Cが二点鎖線で描かれている。また、閉状態における軸心7C上の特定の位置を示す目的で、仮想点として点P81,P82が描かれている。開状態における軸心7C上の特定の位置を示す目的で、仮想点として点P91,P92が描かれている。
【0061】
図9において、点P81は、閉状態における軸心7Cのうち第2固定部20側の端部に相当する位置を示す。点P82は、閉状態における軸心7Cのうち第1固定部10側の端部に相当する位置を示す。点P91は、開状態における軸心7Cのうち第2固定部20側の端部に相当する位置を示す。点P92は、開状態における軸心7Cのうち第1固定部10側の端部に相当する位置を示す。上記のように車両パネル6は不動の部分であるので、該車両パネル6に固定される第2固定部20側の点P81,P91は同一位置となる。
【0062】
点P81,P82に示すように、第3比較例では、閉状態において蛇腹部がS字状に屈曲された状態となる。また、点P91,P92に示すように、第3比較例では、開状態において蛇腹部が直線状に張られた状態となる。
【0063】
なお、この第3比較例では、閉状態における蛇腹部の長さが開状態における点P91,P92の間隔と同一となるように、グロメットが構成されている。このため、ドアパネル5の開閉動作に伴ってグロメットに働く応力が主として蛇腹部のたるみ形状の変化に作用し、グロメットの耐久性が向上する。ただし、第3比較例に係るグロメットは、S字状の蛇腹部の長さを十分に確保する目的で、蛇腹部の両端の高低差が大きく構成される。よって、本実施形態のグロメット1に比べて、自動車にグロメット付き電線を取り付ける上での装置設計が困難となる。
【0064】
図10は、第4比較例に係るS字状のグロメットの軸心7Dの経路を示す概念図である。なお、
図10では、閉状態における軸心7Dが実線で描かれ、開状態における軸心7Dが二点鎖線で描かれている。また、閉状態における軸心7D上の特定の位置を示す目的で、仮想点として点P101,P102が描かれている。開状態における軸心7D上の特定の位置を示す目的で、仮想点として点P111,P112が描かれている。
【0065】
図10において、点P101は、閉状態における軸心7Dのうち第2固定部20側の端部に相当する位置を示す。点P102は、閉状態における軸心7Dのうち第1固定部10側の端部に相当する位置を示す。点P111は、開状態における軸心7Dのうち第2固定部20側の端部に相当する位置を示す。点P112は、開状態における軸心7Dのうち第1固定部10側の端部に相当する位置を示す。上記のように車両パネル6は不動の部分であるので、該車両パネル6に固定される第2固定部20側の点P101,P111は同一位置となる。
【0066】
点P101,P102に示すように、第4比較例では、閉状態において蛇腹部がS字状に屈曲された状態となる。また、点P111,P112に示すように、第4比較例では、開状態において蛇腹部が直線状に張られた状態となる。
【0067】
なお、この第4比較例では、閉状態における蛇腹部の長さが開状態における点P111,P112の間隔と同一となるように、グロメットが構成されている。このため、ドアパネル5の開閉動作に伴ってグロメットに働く応力が主として蛇腹部のたるみ形状の変化に作用し、グロメットの耐久性が向上する。ただし、第4比較例に係るグロメットは、S字状の蛇腹部の長さを十分に確保する目的で、閉状態における蛇腹部の屈曲部分101,102が左右両側に大きく張り出して構成される。よって、第4比較例にかかるグロメットでは、ドアの開閉動作の際に蛇腹部が変形する挙動を規制し難い。このため、蛇腹部33が重力の作用で垂れ下がった状態が維持される本実施形態のグロメット1では、第4比較例のグロメットに比べて、蛇腹部33と周辺部材との干渉が生じ難く、省スペースに蛇腹部33を配することができる。
【0068】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。