(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
携帯電話やスマートフォン等が普及して以降、音楽や趣味の音源等を聴取する機会は益々増えており、目的に応じて多くのイヤホンやヘッドホンが開発されている。そして、室内や室外での聴取する機会が増え、電車やバス等の公共機関使用時等でも、イヤホンやヘッドホンが利用される事が多く見受けられる。
【0003】
特に、イヤホンに於いては、高音質化を図る為、周囲の騒音を遮断するため、例えば、公共機関の車両内のアナウンスや場内のアナウンス等が聞き取り難くなり、危険予知の阻害となっている。そして、上記危険予知の阻害を解消するため、高音質化を伴いながら外部音の聴取も可能なイヤホンが求められている。
【0004】
一方では、VR(Virtual Reality)でみられるように、画像は3D(Three Dimensions)化されている現状に於いて、イヤホンは頭内定位にて使用する事が常態化している。そして、上記頭内定位の常態化を改善することで、VR装置に違和感の少ない音響聴取が可能となり、3D画像と音響とのマッチングを実現することが可能になると考えられる。
【0005】
従来のイヤホンとして、
図8に示す構造が知られている。
図8は、従来のイヤホン100の構造を説明する断面図である。
【0006】
図8に示す如く、イヤホン100は、主に、フロントハウジング101と、バックハウジング102と、ケーブルハウジング103と、上記ハウジング101〜103内に配設されるドライバユニット104と、を有している。そして、フロントハウジング101には、音の出口として管状の第1音道105が設けられ、第1音道105の先端にはシリコンゴム等により構成されたイヤーピース106が取り付けられている。尚、第1音道105の中間付近には、音道減衰材107が設けられ、外耳道閉塞効果によって生じたピークの周波数域(6kHz付近)を減衰させている。
【0007】
また、フロントハウジング101には、第2音道108が設けられ、ドライバユニット104の背面側の音の一部を、空間反射音(反射音あるいは残響音)として所定の遅延時間を持たせた状態にて第1音道105を通る音(直接音)に合流させている。尚、第2音道108には、反射音の位相および音圧レベルを調整するため、反射成分減衰材109が設けられている。
【0008】
上記構造により、ドライバユニット104にて生成された音が直接音として第1音道105から外耳道に向けて出力される際に、ドライバユニット104にて生成された音を第1音道105と異なる経路の第2音道108にて伝達し、遅延させた状態にて第1音道105の直接音に合流させることで、擬似的にドライバユニット104からの直接音に対して空間反射音が付加された状態になる。その結果、ドライバユニット104に信号処理回路を必要とせずに、イヤホン100単体にて頭外音像定位(前方定位)を実現することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
また、従来のカナル型イヤホンとして
図9に示す構造が知られている。
図9(A)は、従来のカナル型イヤホン120(以下、「イヤホン120」と呼ぶ。)の構造を説明する断面図である。
図9(B)は、従来のイヤホン120に取り付けられるイヤーピース124の上面図である。
【0010】
図9(A)に示す如く、イヤホン120は、主に、ドライバ121と、ドライバ121を収納する筐体122と、筐体122から突出する筒部123と、筒部123の先端に取り付けられるイヤーピース124と、を有している。そして、イヤホン120の耳への装着時には、イヤーピース124が、外耳道125内へと挿入され、イヤーピース124の外周部分が外耳道125の内壁126へと密着し、イヤホン120の耳から脱落を防止している。
【0011】
図9(B)に示す如く、イヤーピース124には、その中心に貫通して形成されると共に、ドライバ121にて生成された音を鼓膜へと伝える音道孔127が形成されている。そして、イヤーピース124には、音道孔127の周囲に4つの貫通孔128が形成されている。貫通孔128は、イヤホン120の耳への装着時に、イヤーピース124によって塞がれた外耳道125内の気圧を外部へ逃がして鼓膜に与えられる圧迫感を低減すると共に、外部音を外耳道125内へと案内し、イヤホン120の使用者に聴かせることができる(例えば、特許文献2参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、
図8に示すイヤホン100では、フロントハウジング101に第1音道105及び第2音道108を形成し、第2音道108を介してドライバユニット104の背面側の音の一部を、空間反射音(反射音あるいは残響音)として所定の遅延時間を持たせた状態とし、第1音道105を通る音(直接音)に合流させることで、イヤホン100単体にて頭外音像定位を実現している。
【0014】
しかしながら、上記頭外音像定位を実現するために、フロントハウジング101内に第1音道105及び第2音道108を形成すると共に、その他の開放端生成開口部等を形成することで、イヤホン100の構造が複雑となり、製造コストを低減し難いという問題がある。
【0015】
また、イヤホン100の耳への装着時には、実質、イヤーピース106により外耳道が閉塞され、外耳道閉塞効果によって生じたピークの周波数域(6kHz付近)を減衰させるために、第1音道105の中間付近には、音道減衰材107が設けられている。また、第2音道108には、反射音の位相および音圧レベルを調整するため、反射成分減衰材109が設けられている。従って、イヤホン100の構造が複雑になるだけでなく、部品数も増大し、製造コストを低減し難いという問題がある。
【0016】
また、イヤホン100の耳への装着時には、実質、イヤーピース106により外耳道が閉塞されるため、外部音を外耳道内へと案内し、イヤホン100の使用者に聴かせることが難しく、使用者の周辺環境に対する危険予知を阻害する恐れがあるという問題がある。
【0017】
一方、
図9(A)及び
図9(B)に示すイヤホン120では、イヤホン120の構造はシンプルであると共に、イヤーピース124には4つの貫通孔128が設けられることで、外部音を外耳道125内へと案内し、使用者の周辺環境に対する危険予知を阻害することは防止できる。
【0018】
しかしながら、使用者は、ドライバ121にて生成された音を音道孔127から直接聴取する構造のため、上述した頭内定位の常態化を改善することが出来ないという問題がある。
【0019】
また、イヤーピース124は、傘を開いた形状であり、イヤーピース124を耳へ装着する際には、その先端中心部が、外耳道125の奥側(鼓膜側)へと挿入される。そのため、使用者の挿入具合によって異なるが、通常、イヤーピース124の先端側にて、外耳道125の内壁126に対して密着する傾向にある。そして、イヤーピース124の先端側は、その構造上、自由端ではなく、挿入時に外耳道125の内壁126の凹凸構造に沿って変形し難いため、イヤーピース124と外耳道125の内壁126との間に隙間が出来やすく、音漏れ等により高音質化を図り難いという問題がある。
【0020】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、イヤーピースに音道孔やカップ部孔を設け、イヤホンにて発生する音が前方からの時間差を有して鼓膜に到達することで、前方定位を実現すると共に、外部音も聴取することが可能なイヤーピース及びそれを用いたイヤホンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のイヤーピースでは、イヤホンのステム部の着脱溝に着脱自在に取り付けられるイヤーピースにおいて、その一端側が前記ステム部に装着されると共に、その内部に音道空間を有する中央筒部と、前記中央筒部を囲むように設けられると共に、その一端側が前記中央筒部の一端側と一体に形成され、その他端側が自由端となるカップ部と、その一端側が前記中央筒部の他端側から前記音道空間へと挿入される栓体部と、を備え、前記中央筒部には、前記音道空間と前記カップ部内側の内部空間を連通する音道孔が形成され、前記カップ部には、前記ステム部の近傍にて前記内部空間と前記カップ部外側の外部空間とを連通する少なくとも1つ以上のカップ部孔が形成されることを特徴とする。
【0022】
また、本発明のイヤーピースでは、前記栓体部は、その内部を長手方向に貫通する音道長孔と、前記音道長孔と連通すると共に、その短手方向に形成される音道短孔と、を有し、前記栓体部が前記音道空間へと挿入された状態において、前記音道孔、前記音道長孔及び前記音道短孔が連通していることを特徴とする。
【0023】
また、本発明のイヤーピースでは、前記栓体部は、前記中央筒部の他端側から露出すると共に、前記栓体部の露出した部分の形状は球状体であり、前記音道長孔により前記球状体に形成される開口部の幅は、前記中央筒部内に位置する前記音道長孔の幅よりも狭いことを特徴とする。
【0024】
また、本発明のイヤーピースでは、前記カップ部の外側面に当接して配設されるカップ部孔調整プレートと、を備え、前記カップ部孔調整プレートは、前記着脱溝に係止される係止部と、前記係止部と一体に形成されると共に、少なくとも前記複数のカップ部孔の配置領域までの前記外側面を覆うプレート部と、を有し、前記プレート部には、前記複数のカップ部孔を露出させる切欠き部が形成され、前記切欠き部は、前記複数のカップ部孔を全て露出させる幅を有していることを特徴とする。
【0025】
また、本発明のイヤーピースでは、前記カップ部または前記カップ部孔調整プレートのどちらか一方が、前記ステム部に対して回転することで、前記切欠き部から露出する前記複数のカップ部孔の数を調整可能であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明のイヤーピースでは、前記中央筒部の他端側には、その一部が前記音道空間へと突出する係止突起部が形成され、前記栓体部の前記外側面には、前記係止突起部と係合する係合部が形成され、前記栓体部が前記音道空間へと挿入された状態において、前記係合部は、前記係止突起部よりも前記ステム部側に位置していることを特徴とする。
【0027】
また、本発明のイヤホンでは、上記記載のイヤーピースが装着されるイヤホンにおいて、電気信号に応じて振動する振動板と、その内部に前記振動板が配設される筐体と、前記筐体の一端側に形成され、前記イヤーピースが装着されるステム部と、を有し、前記筐体の他端側の端部と前記振動板との間の前記筐体の側面には、少なくとも1つ以上の孔が設けられ、前記イヤホンが使用者の耳に装着された状態において、前記筐体の前記孔と前記イヤーピースの前記カップ部孔とは、前記使用者の前記耳の耳珠部側に向いていることを特徴とする。
【0028】
また、本発明のイヤホンでは、上記記載のイヤーピースが装着されるイヤホンにおいて、電気信号に応じて振動する振動板と、その内部に前記振動板が配設される筐体と、前記筐体の一端側に形成され、前記イヤーピースが装着されるステム部と、を有し、前記筐体の他端側の端部と前記振動板との間の前記筐体の側面には、複数の孔が設けられると共に、前記筐体の前記側面から露出する前記孔の数を調整するスライドリングが配設され、前記イヤホンが使用者の耳に装着された状態において、前記筐体の前記孔と前記イヤーピースの前記カップ部孔とは、前記使用者の前記耳の耳珠部側に向いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明のイヤーピースでは、ステム部から伝達される音が、栓体部を経由して中央筒部とカップ部との間の内部空間に伝達され、その伝達された音の一部は、カップ部のカップ部孔を介してイヤーピースの外部空間に放出された後、再び、内部空間へと戻る。この構造により、使用者は、カップ部孔を介して直接音と間接音とを合わせて認識し、音の頭外定位と音の拡がり感を得ることで、前方の方向感や臨場感を得ることができる。
【0030】
また、本発明のイヤーピースでは、中央筒部に装着される栓体部は、その内部を長手方向に貫通する音道長孔と、音道長孔と連通すると共に、その短手方向に貫通する音道短孔と、を有している。この構造により、ステム部から伝達される音の一部は、栓体部の音道長孔による開口部を介して直接鼓膜に伝達され、使用者は、上記前方の方向感や臨場感を得ることができる。
【0031】
また、本発明のイヤーピースでは、栓体部の球状体の音道長孔による開口部の幅は、音道長孔の幅よりも狭く形成されている。この構造により、ステム部から伝達される音の大部分は、上記内部空間を経由して鼓膜へと伝達され、使用者は、上記前方の方向感や臨場感を得ることができる。
【0032】
また、本発明のイヤーピースでは、カップ部の外側面に当接して配設されるカップ部孔調整プレートを有し、カップ部孔調整プレートのプレート部には、複数のカップ部孔を露出させる切欠き部が形成されている。この構造により、使用者は、切欠き部から露出するカップ部孔の数を調整でき、使用者の周辺環境の音を聞くことができるので、上記周辺環境に対する危険予知を行うことができる。
【0033】
また、本発明のイヤーピースでは、使用者は、カップ部またはカップ部孔調整プレートのどちらか一方をステム部に対して回転させることで、容易に切欠き部から露出するカップ部孔の数を調整することができる。
【0034】
また、本発明のイヤーピースでは、中央筒部の他端側に音道空間側へと突出する係止突起部が形成され、栓体部の外側面には、係止突起部と係合する係合部が形成されている。この構造により、栓体部が、中央筒部から抜き出る手前にて、栓体部の係合部に対して中央筒部の係止突起部が嵌り込む。その結果、栓体部が、中央筒部から抜け落ちることを防止し、栓体部が、使用者の外耳道内に取り残されることが防止される。
【0035】
また、本発明のイヤホンでは、イヤホン本体の筐体の他端側の端部と振動板との間の筐体の側面には、少なくとも1つ以上の孔が設けられ、イヤホンが使用者の耳に装着された状態において、筐体の孔とイヤーピースのカップ部孔とは、使用者の耳の耳珠部側に向いている。この構造により、筐体から放出された音の一部は、カップ部孔を介してイヤーピースの内部空間へと戻り、使用者は、上記前方の方向感や臨場感を得ることができる。
【0036】
また、本発明のイヤホンでは、イヤホン本体の筐体の耳珠側の側面には、筐体の内部と貫通する複数の孔が設けられると共に、筐体の側面から露出する孔の数を調整するスライドリングが配設されている。この構造により、使用者は、イヤーピースの耳珠側の側面から露出するカップ部孔の数と筐体の側面から露出する孔の数とを適宜調整することができる。そのことにより、前方定位の強弱並びに外部音の導入に幅を持たせることにより生じる低音域の過不足を調整することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態に係るイヤーピースを図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0039】
図1(A)及び
図1(B)は、本実施形態のイヤーピース10を説明する斜視図である。
図2(A)は、本実施形態のイヤーピース10の栓体部15を説明する斜視図である。
図2(B)は、本実施形態のイヤーピース10の栓体部15を説明する図であり、
図2(A)のB−B線方向の断面図である。
図2(C)は、本実施形態のイヤーピース10の栓体部15を前端側からみた上面図である。
図2(D)は、本実施形態のイヤーピース10の栓体部15を後端側からみた底面図である。
図3(A)及び
図3(B)は、本実施形態のイヤーピース10を説明する図であり、
図1(A)のA−A線方向の断面図である。尚、
図1から
図3の説明では、前後方向はイヤーピース10の長手方向を示し、左右方向及び上下方向はイヤーピース10の短手方向を示している。
【0040】
図1(A)に示す如く、イヤーピース10は、イヤホン11のステム部12に対して着脱自在に装着され、イヤホン11特有の頭内定位を改善し、前方定位に変えることを目的として構成されている。そして、イヤーピース10は、複数の部材から構成され、主に、中央筒部13(
図3(A)参照)と、中央筒部13と一体に形成されるカップ部14と、中央筒部13に着脱自在に装着される栓体部15と、カップ部14の外周面に当接状態にて配設されるカップ部孔調整プレート16と、を備えている。
【0041】
イヤーピース10の中央筒部13及びカップ部14は、例えば、その硬度がA45度からA50度のゴム材料により一体に成形される。上記ゴム材料としては、例えば、シリコンゴムが用いられ、イヤーピース10を外耳道32(
図5参照)内に挿入する際に、外耳道32の内壁34(
図5参照)の形状に応じて適宜変形し、イヤーピース10の外耳道32の内壁34への密着性が向上され、耳からの必要以上の音漏れが防止される。詳細は後述するが、外耳道32の奥側へと挿入されるイヤーピース10のカップ部14の前端側が、自由端となることで、上記内壁34の凹凸形状に応じて変形し易くなり、上記密着性が向上される。
【0042】
カップ部14の内側に形成される中央筒部13には、栓体部15が着脱自在に装着される。栓体部15は、シリコンゴムと比重の異なる材料、例えば、サージカルステンレス、ステンレス鋼、サージカルチタン、シルバー、アクリル樹脂、天然素材、半貴石等を加工して形成される。そして、中央筒部13に対して、比重の異なる材質から成る栓体部15が装着されることで、音によるイヤーピース10の共振周波数が修正され、イヤーピース10の共振により発生するノイズ量が大幅に低減される。
【0043】
栓体部15の内部には、その長手方向(紙面前後方向)に貫通する音道長孔15B(
図2(B)参照)が形成され、栓体部15の先端側の球状部15D(
図2(A)参照)の中心には、音道長孔15Bにより開口された開口部15Aが形成されている。そして、ステム部12から伝達される音のごく一部は、音道長孔15Bを経由し、開口部15Aから、直接、外耳道32内へと伝達される。
【0044】
図1(B)に示す如く、カップ部14の一端側には、ステム部12の近傍に、例えば、5つのカップ部孔17が、一定間隔にて均等に形成されている。カップ部孔17は、カップ部14の内外部の空間を連通する孔であり、例えば、Φ(直径)0.1mm〜Φ2.0mmの大きさにて形成されている。そして、5つのカップ部孔17は、カップ部14の周囲に対して略1/3程度の領域内に配置されている。尚、カップ部孔17の数は、適宜、設計変更可能である。
【0045】
カップ部孔調整プレート16は、ステム部12の側方に設けられた着脱溝12B(
図3(A)参照)に装着する環状の係止部16Aと、係止部16Aと一体に形成されると共に、カップ部14の外側面と当接するカップ形状のプレート部16Bと、を有する。そして、カップ部孔調整プレート16は、例えば、上述したイヤーピース10のカップ部14と同一材料であるシリコンゴム材料により形成される。尚、カップ部孔調整プレート16を形成するシリコンゴム材料の硬度は、適宜、設計変更が可能である。
【0046】
プレート部16Bは、カップ部14に形成されたカップ部孔17を覆う様に配置され、例えば、係止部16Aから4.0mm〜4.5mm程度の長さを有している。図示したように、プレート部16Bには、上記5つのカップ部孔17が、同時に露出する幅の切欠き部16Cが形成されている。上述したように、切欠き部16Cは、カップ部孔17の配置領域に対して、カップ部14の周囲の略1/3程度の幅を有している。
【0047】
中央筒部13の係止部13D(
図3(A)参照)もステム部12の着脱溝12Bに装着され、カップ部孔調整プレート16のプレート部16Bは、カップ部14の外周面と当接した状態となる。そして、イヤーピース10の使用時には、カップ部14とカップ部孔調整プレート16とは、上記当接状態により互いに密着し、固定された状態となる。
【0048】
一方、イヤーピース10の使用前に、使用者は、例えば、カップ部14を指で抓むことで、カップ部14とカップ部孔調整プレート16との上記当接状態を解消させ、カップ部14をステム部12に対して回転させることができる。この構造により、使用者は、カップ部孔調整プレート16の切欠き部16Cから露出するカップ部孔17の数を調整することができる。詳細は後述するが、カップ部孔17が、切欠き部16Cから露出する数が多くなる程、イヤホン11にて発生する音が、時間差を有して鼓膜に到達する間接音としての量が増大し、前方定位感を実現し易くなる。また、カップ部孔17を介して外部音が鼓膜に到達し易くなり、使用者は、イヤーピース10を使用した状態においても、周辺環境に対する危険予知を行い易くなる。尚、カップ部14を抓み、上記当接状態を解消させた後、カップ部孔調整プレート16をステム部12に対して回転させる場合でも良い。
【0049】
図2(A)に示す如く、栓体部15は、その前後方向に延在した略円筒形状の円筒部15Cと、円筒部15Cの前端側に一体に形成された球状体の球状部15Dと、を有している。そして、円筒部15Cの外側面15Eには、その後端側に一環状の凹部形状である係合部15Fが形成されている。係合部15Fの外側面15Eには、音道短孔15Gにより開口された4つの開口部15Hが形成されている。
【0050】
図2(B)に示す如く、栓体部15の内部には、その長手方向(紙面前後方向)に貫通する音道長孔15Bと、その短手方向(紙面左右方向、紙面前後方向)に貫通する音道短孔15Gとが形成されている。音道長孔15Bの大部分が、例えば、Φ2.0〜2.5mmの円筒形状の孔として形成され、音道長孔15Bの前端部では、その孔幅が徐々に狭まり、開口部15Aは、例えば、Φ0.3〜1.0mmの開口面積にて形成されている。
【0051】
また、音道短孔15Gは、係合部15Fの形成領域に開口する様に4本形成されている。4本の音道短孔15Gは、円周方向に90度の間隔にて形成され、栓体部15の中心部にて音道長孔15Bと連通している。そして、音道短孔15Gは、例えば、Φ1.0〜1.5mmの円筒形状の孔として形成され、係合部15Fの外側面15Eには、90度間隔にて4つの開口部15Hが形成されている。
【0052】
図2(C)に示す如く、球状部15Dの前端には、その中心に音道長孔15Bにより開口された開口部15Aが形成されている。また、
図2(D)に示す如く、円筒部15Cの後端には、音道長孔15Bにより開口された開口部15Iが形成されている。
【0053】
図3(A)に示す如く、中央筒部13は、イヤーピース10の中心部に配置されると共に、一点鎖線にて示す中心軸線CLを中心にして略円筒形状に形成されている。中央筒部13の内部には、その長手方向(紙面前後方向)に貫通する音道空間13Aが形成され、中央筒部13の両端には開口部13B、13Cが形成されている。そして、中央筒部13の開口部13B側には、音道空間13Aに対してステム部12が挿入され、イヤーピース10は、イヤホン11に装着される。
【0054】
ここで、ステム部12は、中央筒部13と同様に、中心軸線CLを中心にして略円筒形状に形成され、その外側面12Aには、一環状の凹部形状である着脱溝12Bが形成されている。そして、中央筒部13の開口部13B近傍には、音道空間13A側へと突起する一環状の係止部13Dが形成されている。イヤーピース10が、イヤホン11に装着される際には、係止部13Dが、ステム部12の着脱溝12B内へと嵌り込むことで、イヤーピース10が、ステム部12から抜け難い構造が実現される。
【0055】
一方、中央筒部13の開口部13C側には、音道空間13Aに対して栓体部15が挿入され、音道空間13Aが、栓体部15にて塞がれた状態となる。上述したように、栓体部15には、その長手方向に沿って音道長孔15Bが形成されている。この構造により、中央筒部13の開口部13Cは、栓体部15にて塞がれた状態においても、ステム部12から伝達される音は、音道空間13A内側の栓体部15の音道長孔15Bへと伝えられる。そして、ステム部12から伝達される音のごく一部は、栓体部15の開口部15Aを介して、直接、外耳道32(
図5参照)内へと伝達される。
【0056】
中央筒部13の短手方向(紙面左右方向、紙面前後方向)には、4本の音道孔13Eが円周方向に90度の間隔にて形成されている。4本の音道孔13Eは、それぞれ音道空間13Aと連通すると共に、例えば、Φ1.0〜1.5mmの円筒形状の孔として形成されている。そして、中央筒部13の外側面13Fには、4本の音道孔13Eにより90度間隔にて4つの開口部13Gが形成されている。
【0057】
イヤーピース10が、イヤホン11に装着される際には、図示したように、栓体部15の後端部は、ステム部12に当接した状態となる。この栓体部15が中央筒部13に挿入された状態において、中央筒部13の音道孔13Eと栓体部15の音道短孔15Gとが、それぞれ連通した状態となる。この構造により、ステム部12から伝達する音の大部分は、音道長孔15B、音道短孔15G及び音道孔13Eを経由して、中央筒部13とカップ部14との間の内部空間20へと伝達される。
【0058】
カップ部14は、中央筒部13を囲むように傘形状に形成され、中央筒部13の長手方向に沿って延在して形成されている。カップ部14の一端側は、中央筒部13の開口部13B側と一体に形成され、カップ部14の他端側は、自由端として形成されている。そして、カップ部14は、中央筒部13よりも延在して形成され、中央筒部13は、カップ部14の内側に位置している。この構造により、カップ部14と中央筒部13との間には内部空間20が形成されている。
【0059】
上述したように、カップ部14の一端側には、ステム部12の近傍に、例えば、5つのカップ部孔17が、一定間隔にて均等に形成されている。カップ部孔17は、上記内部空間20とカップ部14の外側の外部空間21とを連結する孔である。
【0060】
また、カップ部孔調整プレート16は、カップ部14の外側に位置するように配設され、カップ部孔調整プレート16の係止部16Aは、ステム部12の着脱溝12B内へと嵌り込んでいる。つまり、着脱溝12B内には、中央筒部13の係止部13Dとカップ部孔調整プレート16の係止部16Aとが嵌り込むことで、イヤーピース10が、ステム部12から抜け難い構造が実現される。
【0061】
カップ部孔調整プレート16のプレート部16Bには、上記5つのカップ部孔17が、同時に露出する幅の切欠き部16Cが形成されている。そして、カップ部孔17が、プレート部16Bの切欠き部16Cから露出する数を0個〜5個まで調整することが可能となる。
【0062】
また、栓体部15の球状部15Dが、中央筒部13の前端側から露出して配設されるが、球状部15Dは、カップ部14から突出することなく、その内側に位置するように配設されることが望ましい。この構造により、イヤーピース10の装着時に、球状部15Dが、使用者の外耳道32の内壁34と接触し難くなり、内壁34が球状部15Dと接することでの不快感を使用者へ与え難くなる。
【0063】
図3(B)に示す如く、栓体部15が、中央筒部13に挿入された状態にてイヤーピース10が使用されるが、中央筒部13の開口部13C近傍には、音道空間13A側へと突起する一環状の係止突起部13Hが形成されている。そして、係止突起部13Hの形状は、栓体部15の係合部15Fに嵌り込む形状となっている。尚、
図3(A)に示すように、栓体部15が中央筒部13にしっかりと挿入された状態では、中央筒部13は、係止突起部13Hの厚みにより、若干、外側へと反った状態となる。
【0064】
この構造により、例えば、使用者の外耳道32(
図5参照)からイヤーピース10を抜き取る際に、栓体部15が中央筒部13から抜き出る方向に引っ張られた場合でも、栓体部15が、中央筒部13から抜き出る手前にて、栓体部15の係合部15Fに対して中央筒部13の係止突起部13Hが嵌り込む。その結果、栓体部15が、中央筒部13から抜け落ちる前に、イヤーピース10を外耳道32から抜き取ることができ、栓体部15が、使用者の外耳道32内に取り残されることが防止される。
【0065】
ここで、
図4は、本実施形態のイヤーピース60を説明する断面図であり、
図1から
図3を用いて説明したイヤーピース10の変形例を示している。尚、
図4に示す断面図は、
図3(A)に示す断面図に対応している。そして、
図4に示すイヤーピース60は、主に、栓体部61に対して係合部62が形成されている構造において、上述したイヤーピース10の構造と相違している。そのため、
図4のイヤーピース60の説明の際には、主に、
図1から
図3を用いて説明したイヤーピース10と相違する構成部材について説明し、その他の構成部材の説明は参照するものとする。
【0066】
図4に示す如く、イヤーピース60の栓体部61には、栓体部61の前後方向において、2つの環状の係合部15F、62が形成されている。そして、係合部62は、栓体部61の球状部15Dの根本であり、円筒部15Cの外周面15Eに一環状に形成された凹部である。
【0067】
図示したように、イヤーピース60の使用時には、栓体部61が、カップ部14の中央筒部13に挿入される。このとき、中央筒部13の係止突起部13Hが、栓体部61の係合部62に対して嵌り込むことで、栓体部61が、カップ部14の中央筒部13から抜け難い構造が実現される。
【0068】
更には、イヤーピース60を外耳道32(
図5参照)から抜き取る際に、仮に、中央筒部13の係止突起部13Hが、係止部62から外れた場合でも、
図3(B)を用いて上述した様に、中央筒部13の係止突起部13Hが、栓体部15の係合部15Fに対して嵌り込む。つまり、栓体部61には、その前後方向において、2つの環状の係合部15F、62が形成されることで、イヤーピース60の使用時やイヤーピース60を外耳道32から抜き取る際に、栓体部15が、使用者の外耳道32内に取り残され難い構造が実現される。
【0069】
図5は、本実施形態のイヤーピース10を使用者の外耳道32に装着した状態を説明する斜視図であり、
図5は、カップ部孔17がカップ部孔調整プレート16から露出した場合の音の伝達状態を示している。尚、
図5では、前後方向は使用者の頭部の前後方向を示し、左右方向は使用者の頭部の左右方向を示している。また、以下の説明では、使用者の左耳31にて説明するが、右耳においても同様であり、ここではその説明を省略する。
【0070】
図5では、イヤーピース10が、使用者の左耳31の外耳道32に装着された状態を示しているが、点線の矢印は、音の伝達状態を模式的に図示している。先ず、カップ部14のカップ部孔17が、左耳31の外耳道32外部の耳珠部33と対向するように、イヤーピース10は、外耳道32内へと挿入される。つまり、カップ部14のカップ部孔17の形成領域が、使用者の頭部の前方側を向くように、イヤーピース10が、使用者の左耳31に装着される。
【0071】
音道長孔15Bは、栓体部15をその長手方向に貫通するが、前端側の開口部15Aの開口面積は小さいため、ステム部12から伝達する音の大部分は、音道長孔15B、音道短孔15G及び音道孔13Eを経由して、中央筒部13とカップ部14との間の内部空間20へと伝達される。尚、ステム部12から伝達される音のごく一部は、栓体部15の開口部15Aを介して、直接、外耳道32内へと伝達される。
【0072】
内部空間20へと伝達された音の大部分は、内部空間20周囲の中央筒部13やカップ部14等にて反射し、拡散しながら、外耳道32内へと伝達される。一方、内部空間20へと伝達された音の一部は、カップ部孔17を介して外部空間21へと伝達される。そして、放出された音の大部分は、耳珠部33やその周辺、例えば、左耳31の内側に形成された凹凸形状にも反射し、再び、カップ部孔17を介して内部空間20へと伝達される。
【0073】
つまり、ステム部12から伝達された音のごく一部のみが、直接、開口部15Aを介して鼓膜に伝達される一方、その他の大部分が、イヤーピース10の内部空間20に伝達される。そして、内部空間20に伝達された音は、その内部空間20内、中央筒部13から露出する球状部15D表面及び外耳道32の内壁34等にて拡散されながら、外耳道32を経由して鼓膜に伝達される。このとき、内部空間20に伝達された音の一部は、一度、イヤーピース10の外部空間21へと放出された後、再び、内部空間20へと戻る。この音の伝達状態により、使用者は、開口部15Aを介した直接音と共に、上記拡散された音を自身の前方からの時間差を伴う間接音として認識し、音の頭外定位と音の拡がり感を得ることで、前方の方向感や臨場感を得ることができる。
【0074】
更には、カップ部孔17が、カップ部孔調整プレート16の切欠き部16Cから露出することで、使用者の周辺環境の音が、カップ部孔17を介して内部空間20内へと伝達され、その後、外耳道32を経由して鼓膜へと伝達される。この構造により、使用者は、例えば、ステム部12から伝達される音楽等を一定音量で聞きながら、駅構内の案内音等、使用者の周辺環境の音を聞くことができるので、上記周辺環境に対する危険予知を行うことができる。
【0075】
次に、本発明の他の実施形態に係るイヤホンを図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明では、
図1から
図5を用いて上述したイヤーピースを用いるため、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0076】
図6(A)は、本実施形態の上述したイヤーピース10を用いたイヤホン11を説明する断面図である。
図6(B)は、本実施形態の上述したイヤーピース10を用いたイヤホン11を説明する斜視図である。尚、イヤホン11の説明の際には、適宜、上述した
図1から
図5及びその説明箇所を参照するものとする。また、
図6(A)及び
図6(B)では、前後方向は使用者の頭部の前後方向を示し、左右方向は使用者の頭部の左右方向を示している。また、以下の説明では、使用者の左耳31にて説明するが、右耳においても同様であり、ここではその説明を省略する。
【0077】
図6(A)に示す如く、イヤホン11は、使用者の外耳道32に装着して使用される挿入型イヤホンであり、主に、その本体となる筐体41と、筐体41の先端側に配置され、イヤーピース10が装着されるステム部12と、筐体41内部に配設されるドライバユニット42と、を備えている。そして、イヤホン11は、携帯型音楽プレーヤー等の音楽端末に接続して使用され、音楽端末からイヤホン11に入力された音楽は、ドライバユニット42内の振動板(図示せず)が振動して音波を放射することで、ステム部12から伝達される。
【0078】
本実施形態では、筐体41には少なくとも1つ以上の孔44、45が形成されている。孔44、45は、筐体41の内部空間46と筐体41外側の外部空間21とを連通させる孔であり、ドライバユニット42とステム部12の反対側の筐体41の底面47との間の内部空間46を囲む筐体41に対して形成されている。特に、孔44は、必ず形成される孔であり、ドライバユニット42と筐体41の底面47との間の側面43に対して形成されている。尚、孔45は、筐体41の底面47に対して形成され、ドライバユニット42の振動板が振動した際の内部空間46の圧力を開放する。そして、ドライバユニット42の振動板の振幅幅を広げることで、上記音楽の低音領域を増強することができる。
【0079】
図示したように、筐体41の側面43には、2つの一環状の溝48、49が形成され、その溝48、49内には、輪状のゴム部材、例えば、Oリング50が配設される。筐体41の側面43にOリング50が配設されることで、使用者は、Oリング50を滑り止めとして用いることができ、イヤーピース10の装着の際に、筐体41を持ち易くなる。また、溝48は、孔44の形成領域を含むように形成され、溝48内にOリング50を配設することで、孔44は、Oリング48にて塞がれる。そして、孔44が塞がれることで、上記音楽の低音領域の増強の効果は弱まるが、カップ部孔17が、切欠き部16Bから露出する数が0個や1個の場合には、カップ部孔17から抜け出る音量も低減する。つまり、切欠き部16Bから露出するカップ部孔17の数に対応させて、Oリング48にて孔44を開放するか、塞ぐかを調整することで、イヤーピース10から聞こえる音の調整、例えば、高音領域と低音領域のバランス調整を行うことができる。
【0080】
図6(B)に示すように、カップ部孔17が、使用者の左耳31の外耳道32外部の耳珠部33と対向するように、イヤーピース10は、使用者の左耳31に装着される。そして、筐体41に形成された孔44も使用者の左耳31の外耳道32外部の耳珠部33側に位置するように設定される。つまり、イヤーピース10の装着時には、カップ部孔17及び孔44は、同一方向である使用者の頭部の前方側を向くように設定される。
【0081】
カップ部孔17及び孔44を上記同一方向に設定することで、孔44から音楽の一部は放出されるが、点線の矢印にて示すように、放出された音楽の一部は、カップ部孔17を介してイヤーピース10の内部空間20へと戻る。そして、使用者は、上記戻った音楽を上述したように時間差を伴う間接音として認識し、音の頭外定位と音の拡がり感を得ることで、前方の方向感や臨場感を得ることができる。
【0082】
ここで、
図7は、本実施形態のイヤホン70を説明する斜視図であり、
図6を用いて説明したイヤホン11の変形例を示している。そして、
図7に示すイヤホン70では、主に、筐体41の側面43には一環状の溝48が形成され、その溝48内には、複数の孔44が形成されると共に、溝48内に配設されるスライドリング71にて開放される孔44の数を調整できる構造において、上述したイヤホン11の構造と相違している。そのため、
図7のイヤホン70の説明の際には、主に、
図6を用いて説明したイヤホン11と相違する構成部材について説明し、その他の構成部材の説明は参照するものとする。
【0083】
図7に示す如く、筐体41の側面43には、一環状の溝48が形成され、その溝48内には、例えば、5つの孔44が一定間隔にて形成されている。孔44は、筐体41の内部空間46(
図6参照)と筐体41外側の外部空間21とを連通させる孔である。そして、孔44は、ドライバユニット42(
図6参照)と筐体41の底面47との間の内部空間46を囲む筐体41に対して形成されている。尚、上述したように、5つの孔44は、カップ部孔17と同様に、イヤーピース10の装着時には、使用者の耳珠部33(
図6(B)参照)側に位置する。
【0084】
図示したように、筐体41の溝48内には、スライドリング71が配設されている。スライドリング71は、例えば、C型形状であり、その開口部分から孔44を露出させることができる。そして、スライドリング71の開口幅は、上記5つの孔44を同時に露出させる幅を有している。スライドリング71が、溝48内にて回転しながらスライド移動することで、露出する孔44の数を0個から5個まで変更することができる。
【0085】
孔44が、スライドリング71から露出することで、ドライバユニット42の振動板が振動した際の内部空間46の圧力を開放する。そして、ドライバユニット42の振動板の振幅幅を広げることで、音楽の低音領域を増強することができる。尚、イヤホン70では、露出する孔44の数が調整可能となることで、
図6に示すイヤホン11の孔45を不要とする場合でも良い。
【0086】
図1(B)を用いて上述したように、イヤーピース10では、カップ部孔17が、切欠き部16Bから露出することで、外部空間21へと伝達される音の量も増えることで、特に、音楽の低音領域の低減が多くなる傾向がある。その対策として、スライドリング71から露出する孔44の数を多くすることで、ステム部12を介してイヤーピース10へ伝達する低音領域を増やすことで、カップ部孔17を多く開放する際のデメリットを補完することができる。尚、上述したように、カップ部孔17を多く開放することで、音の頭外定位と音の拡がり感を得ることで、前方の方向感や臨場感を得るメリットがある。
【0087】
つまり、使用者は、イヤーピース10のカップ部孔17の露出する数と筐体41の孔44の露出する数とを、好み等に応じて適宜、調整することで、例えば、高音領域と低音領域のバランス調整が可能となると共に、音の頭外定位と音の拡がり感を得ることで、前方の方向感や臨場感を得ることも可能となる。更には、カップ部孔17と孔44の数の調整により、左右の耳の相互間においても音が交わることで、臨場感を高めることができる。尚、
図4を用いて説明したイヤーピース60でも同様な効果を得ることができる。
【0088】
尚、本実施形態では、栓体部15の球状部15Dが、中央筒部13から外部に露出する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、栓体部15が、円筒部15Cのみからなり、栓体部15の全体が、中央筒部13の音道空間13A内に挿入される場合でも良い。この場合でも、栓体部15の開口部15Aは、円筒部15Cの先端に設けられ、ステム部12から伝達された音のごく一部は、開口部15Aを介して、直接、外耳道32奥の鼓膜に伝達される。また、栓体部15が中央筒部13内へ収納されることで、イヤーピース10の装着時に、栓体部15が、使用者の外耳道32と接触し難くなり、内壁34が栓体部15と接することでの不快感を使用者へ与え難くなる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
本発明のイヤーピース10では、主に、中央筒部13の音道空間13Aに栓体部15が装着され、栓体部15には、その長手方向に貫通する音道長孔15Bと、その短手方向に貫通する音道短孔15Gが形成されている。この構造により、ステム部12から伝達される音のごく一部は、開口部15Aを介して鼓膜に直接伝達されるが、ステム部12から伝達される音の大部分が、内部空間20を経由して鼓膜に直接伝達される。そして、使用者は、上記迂回した音を自身の前方からの時間差を伴う間接音として認識し、音の頭外定位と音の拡がり感を得ることで、前方の方向感や臨場感を得ることができる。