(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
着座者の背中部を受けるシートバックか、着座者の臀部を受けるシートクッションか、前記シートバックと前記シートクッションとを互いに組み付けて成るシート組立体か、のいずれかである車両用シートにおいて、
前記シートバック又は前記シートクッションは請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のシートによって形成されている
ことを特徴とする車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来装置における上記の問題点に鑑みて成されたものであって、着座者の身体の一部が当たる面の幅が狭い場合でも、良好な着座感を着座者に与えることができるシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1のシートは、
標準的な大人の身体の一部(例えば腰部)が当たる面を備えたシート(例えばシートバック)において、
標準的な大人の身体の一部(例えば腰部)が当たる面の幅が当該大人の身体の一部(例えば腰部)の幅と同じかそれよりも狭くなっており、
前記シートは、繊維強化プラスチックによって形成されたパネルと、当該パネルを覆う弾性部材であるパッドと、当該パッドを覆う表皮と
、を有しており、
前記表皮の側端部は、当該側端部の剛性を高めるために、エラストマ、軟質樹脂又は成形不織布であって、自然状態で特定の形状を維持する性質である形状維持特性を有する材料によって形成されており、
剛性が高められた、すなわち剛性付与構造を備えた前記表皮の側端部に荷重をかけたときの当該表皮の側端部の変位量は、
剛性が高められない状態の、すなわち剛性付与構造を備えない前記表皮の側端部に同じ大きさの荷重をかけたときの当該表皮の側端部の変位量よりも小さくなっており、
前
記表皮の側端部は、弾性変形が可能で
あると共に、前記パネ
ルの背部まで延在しており、
前記パネルは
、側縁部が厚く、側縁部に挟まれた部分が薄くなっており、
前記パネルの背部まで延在した部分の前記表皮の側端部は前記パネルの側縁部に接している
ことを特徴とする。
【0008】
上記構成において、「標準的な大人」とは、身長が150cm〜190cmの範囲内であり、体重が45kg〜90kgの範囲内にある人である。本発明のシートにおいて「標準的な大人の身体の一部が当たる面の幅」は、具体的には、150mm〜400mmの範囲内の値である。
【0009】
「
剛性が高められた、すなわち剛性付与構造を備えた前記表皮の側端部に荷重をかけたときの当該表皮の側端部の変位量は、
剛性が高められない状態の、すなわち剛性付与構造を備えない前記表皮の側端部に同じ大きさの荷重をかけたときの当該表皮の側端部の変位量よりも小さい」とは、表皮の側端部の剛性が高くなっていることを明瞭に規定するための1つの技術的な態様である。
【0010】
本発明によれば、表皮の側端部に剛性付与構造を設けることにより、表皮の側端部に荷重をかけたときの当該表皮の側端部における変位量を、表皮の側端部に剛性付与構造を設けない場合に比べて、小さくした。この結果、シートにおいて着座者(すなわち、標準的な大人)の身体の一部が当たる面の幅が、当該着座者の身体の一部の幅と同じかそれよりも狭くなっている場合(すなわちシートがスリムである場合)であっても、着座者が当該シートに着座したときの当該シートの側端部の変位量を小さく抑えることができる。この結果、着座者に良好な着座感を与えることが可能になり、それ故、スリムなシートを実現できることになった。
【0011】
本発明に係る第2のシートは、
標準的な大人の身体の一部(例えば腰部)が当たる面を備えたシート(例えばシートバック)において、
標準的な大人の身体の一部(例えば腰部)が当たる面の幅が当該大人の身体の一部(例えば腰部)の幅と同じかそれよりも狭くなっており、
前記シートは、繊維強化プラスチックによって形成されたパネルと、当該パネルを覆う弾性部材であるパッドと、当該パッドを覆う表皮と
、を有しており、
前記表皮の側端部は、当該側端部の剛性を高めるために、エラストマ、軟質樹脂又は成形不織布であって、自然状態で特定の形状を維持する性質である形状維持特性を有する材料によって形成されており、
前記パッドを覆った状態の前記表皮の中央部に荷重をかけたときの当該中央部の変位量と、前記表皮の側端部に同じ大きさの荷重をかけたときの当該側端部の変位量とがほぼ同じであり、
前
記表皮の側端部は、弾性変形が可能で
あると共に、前記パネ
ルの背部まで延在しており、
前記パネルは
、側縁部が厚く、側縁部に挟まれた部分が薄くなっており、
前記パネルの背部まで延在した部分の前記表皮の側端部は前記パネルの側縁部に接している
ことを特徴とする。
【0012】
上記構成において、「標準的な大人」とは、身長が150cm〜190cmの範囲内であり、体重が45kg〜90kgの範囲内にある人である。本発明のシートにおいて「標準的な大人の身体の一部が当たる面の幅」は、具体的には、150mm〜400mmの範囲内の値である。
【0013】
「前記パッドを覆った状態の前記表皮の中央部に荷重をかけたときの当該中央部の変位量と、前記表皮の側端部に同じ大きさの荷重をかけたときの当該側端部の変位量とがほぼ同じである」とは、表皮の側端部の剛性が高くなっていることを明瞭に規定するための1つの技術的な態様である。
【0014】
本発明によれば、表皮の側端部に剛性付与構造を設けることにより、表皮の側端部に荷重をかけたときの当該表皮の側端部における変位量が、当該表皮の中央部の変位量と同等になるように構成した。この結果、シートにおいて着座者(すなわち、標準的な大人)の身体の一部が当たる面の幅が、当該着座者の身体の一部の幅と同じかそれよりも狭くなっている場合(すなわちシートがスリムである場合)であっても、着座者が当該シートに着座したときの当該シートの側端部の変位量を小さく抑えることができる。この結果、着座者に良好な着座感を与えることが可能になり、それ故、スリムなシートを実現できることになった。
【0015】
上記の第1及び第2のシートの1つの発明態様において、前記標準的な大人の身体の一部が当たる面は、着座した大人の腰部が当たる面であるか、着座した大人の背中部が当たる面であるか、着座した大人の太ももの裏側部分が当たる面であるか、又は着座した大人の臀部が当たる面であるか、である。
【0016】
このように本発明は、着座者のあらゆる部位に対して良好な着座感を提供することができる。
【0017】
上記の第1及び第2のシー
トにおいて、前記表皮は、前記シートの側端部に対応して設けられた表皮と、前記シートの側端部以外の部分に対応して設けられた表皮とを有しており、前記シートの側端部に対応して設けられた前記表皮は、エラストマ、軟質樹脂又は成形不織布であって、自然状態で特定の形状を維持する性質である形状維持特性を有する材料によって形成されており、前記剛性付与構造は前記シートの側端部に対応して設けられた前記表皮を有した構造である。
【0018】
この構成は、例えば本明細書に添付の
図4及び
図5に例示された構成である。この構成によれば、表皮の材質を適切なものに選定することにより、スリムなシートに対して安定した良好な着座感を実現できる。
【0019】
次に、本発明に係る車両用シートは、着座者の背中部を受けるシートバックか、着座者の臀部を受けるシートクッションか、前記シートバックと前記シートクッションとを互いに組み付けて成るシート組立体か、のいずれかである車両用シートにおいて、前記シートバック又は前記シートクッションは上記の各シートによって形成されていることを特徴とする。
【0020】
この車両用シートによれば、車両の床に設置されるシートクッション、シートバック又はシート組立体をスリムに形成した場合でも、着座者に安定した良好な着座感を与えることができる。これにより、スリムなシートを実用に供することができる。
【発明の効果】
【0021】
上記本発明の第1のシートによれば、表皮の側端部に剛性付与構造を設けることにより、表皮の側端部に荷重をかけたときの当該表皮の側端部における変位量が、当該表皮の中央部の変位量と同等になるように構成した。この結果、シートにおいて着座者(すなわち、標準的な大人)の身体の一部(例えば着座者の腰部)が当たる面の幅が、当該着座者の身体の一部(例えば着座者の腰部)の幅と同じかそれよりも狭くなっている場合(すなわちシートがスリムである場合)であっても、着座者が当該シートに着座したときの当該シートの側端部の変位量を小さく抑えることができる。この結果、着座者に良好な着座感を与えることが可能になり、それ故、スリムなシートを実現できることになった。
【0022】
上記本発明の第2のシートによれば、表皮の側端部に剛性付与構造を設けることにより、表皮の側端部に荷重をかけたときの当該表皮の側端部における変位量が、当該表皮の中央部の変位量と同等になるように構成した。この結果、シートにおいて着座者(すなわち、標準的な大人)の身体の一部(例えば着座者の腰部)が当たる面の幅が、当該着座者の身体の一部(例えば着座者の腰部)の幅と同じかそれよりも狭くなっている場合(すなわちシートがスリムである場合)であっても、着座者が当該シートに着座したときの当該シートの側端部の変位量を小さく抑えることができる。この結果、着座者に良好な着座感を与えることが可能になり、それ故、スリムなシートを実現できることになった。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るシート及び車両用シートを実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、本明細書に添付した図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0025】
(シートの第1の実施形態)
図1は、本発明に係るシートの一実施形態であるシート組立体としての車両用シートを示している。この車両用シート1は、車両例えば自動車の床2の上に設けられたシートクッション3と、シートクッション3の後端部に連結されたシートバック4とを有している。シートバック4は、シートバック主体5と、ヘッドレスト6とを有している。本実施形態では、シートバック4も本発明に係るシートの一実施形態である。
【0026】
シートクッション3は、
図2に示すように、クッションパネル8と、パッド9aと、表皮10aとを有している。クッションパネル8は軽くて強度の高い材料、例えばFRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)によって形成されている。パッド9aは弾性材料、例えばウレタンの発泡材によって形成されている。表皮10aは通気性を有する材料、例えばファブリック、革、合成皮革、等によって形成されている。パッド9aはクッションパネル8によって支持されている。表皮10aはパッド9aを覆っている。
【0027】
シートクッション3の下方位置に、床2に固定された固定レール13と、固定レール13に滑り移動可能に取り付けられた可動レール14と、可動レール14に固定されたサイドフレーム15と、X(エックス)字形状に組み付けられたリンク16と、リンク16の上端に固定されたアッパバー17と、が設けられている。
【0028】
固定レール13及び可動レール14は、シートクッション3を床2に対して矢印Aに示すように平行方向に滑り移動させるためのシートスライド機構20を構成している。シートスライド機構20はその他の付随機構及びモータ等といった動力源も有しているが
図2ではそれらの図示を省略している。
【0029】
X字状リンク16及びアッパバー17は、シートクッション3を矢印Bに示すように昇降移動させるためのシート昇降機構21を構成している。シート昇降機構21はその他の付随機構及びモータ等といった動力源も有しているが
図2ではそれらの図示を省略している。
【0030】
シートバック4のシートバック主体5は、バックパネル24と、パッド9bと、表皮10bとを有している。バックパネル24は軽くて強度の高い材料、例えばFRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)によって形成されている。パッド9bは弾性材料、例えばウレタンの発泡材によって形成されている。パッド9bはバックパネル24によって支持されている。表皮10bはパッド9bを覆っている。
【0031】
シートバック4の後方位置に、固定支柱25が設けられている。固定支柱25は、
図2の紙面を貫通する方向に延在しているロッド26によってシートクッション3のサイドフレーム15に対して回動可能(すなわち傾斜移動可能)に設けられている。可動支柱27が固定支柱25に
図2の上下方向へ滑り移動可能に取り付けられている。
【0032】
シートバック4のシートバック主体5のバックパネル24は、ブラケット28a及び28bを介して可動支柱27に取り付けられている。固定支柱25に支柱29が取り付けられている。支柱29は固定支柱25の上端から、さらに上方へ延びている。支柱29の上端にヘッドレスト6が取り付けられている。
【0033】
以上の構成により、車両用シート1は床2に対して矢印Aのように滑り移動可能である。また、車両用シート1は床2に対して矢印Bのように昇降移動可能である。また、シートバック4はロッド26を中心としてシートクッション3に対して矢印Cのように傾斜移動可能である。
【0034】
図1において、本実施形態のシートバック主体5は、横方向に広い上部5aと、横方向に狭い下部5bとによって形成されている。上部5aは、標準的な大人の着座者の身体の一部である背中部(特に肩甲骨部)及び同じく身体の一部である両腕部の両部が当たる面を構成している。シートバック主体5の正面図である
図3(a)において、シートバック主体5の上部5aの最大幅Waは、着座者の背中部と両腕部とを足し合わせた幅よりもわずかに広い幅となっており、例えば400mm〜550mmの範囲内の値である。
【0035】
シートバック主体5の下部5bの幅Wbは上下方向で均一である。下部5bの幅Wbは、標準的な大人の着座者の身体の一部である腰部が当たる面を構成している。下部5bの幅Wbは標準的な大人の着座者の腰部の幅と同じかそれよりも狭くなっており、例えば150mm〜400mmの範囲内の値である。
【0036】
シートバック主体5の上部5aの最大幅Waの端部5X,5Xは円弧形状になっている。上部5aは、下部5bの上端から最大幅Waの端部5X,5Xまで直線的に広がる形状となっている。また、上部5aは、最大幅Waの端部5X,5Xから最上部5Yにわたって緩やかな湾曲形状Mを描いている。
【0037】
上部5aは、シートバック主体5の平面図である
図3(b)に示すように、中央部P1から両端部P2(すなわち、最大幅の端部5Xと同じ部分)に渡って、後部から前部へ張り出すように湾曲している。つまり、上部5aは、着座者の背中部から両腕部に渡って、着座者の背面を覆うように湾曲している。これにより、着座者は横ズレしないように上部5aによってしっかりと支持される。
【0038】
図3(a)においてシートバック主体5の下部5bの幅Wbを狭く形成したことにより、本実施形態のシートバック4(
図1参照)及びシートクッション3の全体の幅は狭くなっている。つまり、本実施形態の車両用シート1はスリムに形成されている。
【0039】
図4は、
図1、
図2及び
図3(a)のD−D線に従って、シートバック主体5の下部5bの平面断面構造を示している。
図4に示すように、シートバック主体5の下部5bは、バックパネル24と、パッド9bと、表皮10bとを有している。バックパネル24、パッド9b及び表皮10bは
図2に同じ符号で示した部材と同じ部材である。
【0040】
表皮10bは、第1の表皮10b1と、第2の表皮10b2とによって構成されている。第1の表皮10b1は、シートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qから下部5bの背部にわたって設けられている。第2の表皮10b2は、着座者の腰部P0を受ける面を構成している。
【0041】
第1の表皮10b1は、エラストマ、軟質樹脂、成形不織布、又はそれらと同等の材料によって形成されている。また、第1の表皮10b1は自然状態で所定の形状を維持する性質、すなわち形状維持特性を有している。第1の表皮10b1は、シートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qに対応する部分に係止部32を有している。
【0042】
第2の表皮10b2は、革、合成皮革、ファブリック、等によって形成されている。また、第2の表皮10b2の先端部にはフック部材33が取り付けられている。第2の表皮10b2の先端に取り付けられたフック部材33を第1の表皮10b1の係止部32に嵌め込むことにより、第1の表皮10b1と第2の表皮10b2が一体となっており、これにより表皮10bが形成されている。
【0043】
本実施形態では、エラストマ、軟質樹脂、成形不織布等によって形成されていて形状維持特性を有している第1の表皮10b1を、シートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qに配置したので、当該両側端部Q,Qの剛性がシートバック主体5の下部5bの中央部P3の剛性よりも高められている。つまり、シートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qに設けられた第1の表皮10b1によって剛性付与構造が構成されている。
【0044】
従来のシートバックにおいては、
図8に示すように、表皮50bの全てが第2の表皮50b2、すなわち革、合成皮革、ファブリック等から成る表皮によって形成されていた。すなわち、シートバック主体55の下部55bの両側端部Q,Qも第2の表皮50b2によって覆われていた。
【0045】
図4に示した本実施形態においては、両側端部Q,Qの所に第1の表皮10b1、すなわちエラストマ等といった形状維持特性を有した材料によって形成された表皮、を配置したので、当該両側端部Q,Qの剛性が高められている。具体的には、押圧子34によって両側端部Q,Qに所定の荷重をかけたときの当該両側端部Q,Qの変位量が、
図8の従来例において両側端部Q,Qに押圧子34によって同じ大きさの荷重をかけたときの当該両側端部Q,Qの変位量よりも小さくなっている。
【0046】
あるいは、
図4の本実施形態においては、パッド9bを覆った状態の表皮10bの中央部P3に押圧子34によって所定の荷重をかけたときの当該中央部P3の変位量と、表皮10bの両側端部Q,Qに押圧子34によって同じ大きさの荷重をかけたときの当該側端部Q,Qの変位量とが、ほぼ同じ値である。「ほぼ同じ」というのは、全く同じ場合はもとより、若干の違いがある場合でも着座者が同じ値であると感覚する程度の違いも含む意味である。具体的には、中央部P3の変位量がδである場合に、側端部Q,Qの変位量が中央部P3の変位量δに対して±0〜0.2δの誤差がある場合でも「ほぼ同じ」ということが言える。
【0047】
以上のように、本実施形態では、剛性付与構造としての第1の表皮10b1によってシートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qの剛性を高めたので、
図4においてシートバック主体5の下部5bの幅Wbが着座者の腰部P0の幅と同じか、あるいは腰部P0の幅よりも狭くなっている場合でも、下部5bの側端部Q,Qが着座者からの荷重の負荷によって大きく変形することが防止される。この結果、着座者に良好な着座感を提供できるようになった。そして、このため、スリムなシートを実現できることになった。
【0048】
(シートの第2の実施形態)
図5は本発明に係るシートの第2の実施形態を示している。この実施形態も、
図4に示した実施形態と同様に、
図1、
図2及び
図3(a)のD−D線に従って、シートバック主体5の下部5bの平面断面構造を示している。
【0049】
図5において、シートバック4(
図1参照)のシートバック主体5の下部5bは、バックパネル24と、パッド9bと、表皮10bとを有している。バックパネル24、パッド9b及び表皮10bは
図2に同じ符号で示した部材と同じ部材である。
【0050】
表皮10bは、第1の表皮10b1と、第2の表皮10b2と、第3の表皮10b3とによって構成されている。第1の表皮10b1は、シートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qに設けられている。第2の表皮10b2は、着座者の腰部P0を受ける面を構成している。第3の表皮10b3は、シートバック主体5の下部5bの背部に設けられている。第1の表皮10b1と第2の表皮10b2は縫い合わせNによって互いに接合されている。他方、第1の表皮10b1と第3の表皮10b3はファスナ35によって互いに接合されている。
【0051】
第1の表皮10b1は、エラストマ、軟質樹脂、成形不織布、又はそれらと同等の材料によって形成されている。また、第1の表皮10b1は自然状態で所定の形状を維持する性質、すなわち形状維持特性を有している。第2の表皮10b2は、革、合成皮革、ファブリック、等によって形成されている。第3の表皮10b3は、第1の表皮10b1と同じ材料によって形成しても良いし、第2の表皮10b2と同じ材料によって形成しても良い。あるいは、第3の表皮10b3は、第1の表皮10b1及び第2の表皮10b2の両方と異なった材料によって形成しても良い。
【0052】
本実施形態においても、エラストマ、軟質樹脂、成形不織布等によって形成されていて形状維持特性を有している第1の表皮10b1を、シートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qに配置したので、当該両側端部Q,Qの剛性がシートバック主体5の下部5bの中央部P3の剛性よりも高められている。つまり、シートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qに設けられた第1の表皮10b1によって剛性付与構造が構成されている。
【0053】
以上のように、本実施形態では、剛性付与構造としての第1の表皮10b1によってシートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qの剛性を高めたので、
図5において下部5bの幅Wbが着座者の腰部P0の幅と同じか、あるいは腰部P0の幅よりも狭くなっている場合でも、
図4に示した第1の実施形態の場合と同じ理由により、下部5bの側端部Q,Qが着座者からの荷重の負荷によって大きく変形することが防止される。この結果、着座者に良好な着座感を提供できるようになった。そして、このため、スリムなシートを実現できることになった。
【0054】
(シート
の第1の参考例)
図6は本発明に係るシート
の第1の参考例を示している。こ
の参考例も、
図4に示した実施形態と同様に、
図1、
図2及び
図3(a)のD−D線に従って、シートバック主体5の下部5bの平面断面構造を示している。
【0055】
図6において、シートバック4(
図1参照)のシートバック主体5の下部5bは、バックパネル24と、パッド9bと、表皮10bとを有している。バックパネル24、パッド9b及び表皮10bは
図2に同じ符号で示した部材と同じ部材である。
【0056】
表皮10bは、第1の表皮10b1と、第2の表皮10b2とによって構成されている。第1の表皮10b1は、表皮材38aとその裏面に貼り付けられたワディング39aの2層構成となっている。第2の表皮10b2は、表皮材38bとその裏面に貼り付けられたワディング39bの2層構成となっている。
【0057】
第1の表皮10b1は、着座者の腰部P0を受ける面とシートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qとにわたって設けられている。第2の表皮10b2は、シートバック主体5の下部5bの背部に設けられている。第1の表皮10b1と第2の表皮10b2はファスナ35によって互いに接合されている。
【0058】
表皮材38a及び38bは、革、合成皮革、ファブリック、等によって形成されている。ワディング39a及び39bは、弾性材料であるウレタンフォームのスラブ材によって形成されている。パッド9bは、袋状である第1の表皮10b1の内部に注入され、さらに発泡させられることにより、
図6に示す所定の形状に成形される。この発泡成形加工の際、シートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qにおいてパッド9bが第1の表皮10b1のワディング39aに含浸して硬くなり、含浸部40,40が形成される。そして、これらの含浸部40が剛性付与構造として機能する。
【0059】
以上のように、
本参考例では、剛性付与構造としての含浸部40によってシートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qの剛性を高めたので、
図6においてシートバック主体5の下部5bの幅Wbが着座者の腰部P0の幅と同じか、あるいは腰部P0の幅よりも狭くなっている場合でも、下部5bの側端部Q,Qが着座者からの荷重の負荷によって大きく変形することが防止される。この結果、着座者に良好な着座感を提供できるようになった。そして、このため、スリムなシートを実現できることになった。
【0060】
(シート
の第2の参考例)
図7は本発明に係るシート
の第2の参考例を示している。こ
の参考例も、
図4に示した実施形態と同様に、
図1、
図2及び
図3(a)のD−D線に従って、シートバック主体5の下部5bの平面断面構造を示している。
【0061】
図7において、シートバック4(
図1参照)のシートバック主体5の下部5bは、バックパネル24と、パッド9bと、表皮10bとを有している。バックパネル24、パッド9b及び表皮10bは
図2に同じ符号で示した部材と同じ部材である。
【0062】
表皮10bは、第1の表皮10b1と第2の表皮10b2とによって形成されている。第1の表皮10b1は、着座者の腰部P0を受ける面とシートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qとにわたって設けられている。第2の表皮10b2は、シートバック主体5の下部5bの背部に設けられている。第1の表皮10b1と第2の表皮10b2はファスナ35によって互いに接合されている。第1の表皮10b1及び第2の表皮10b2は、革、合成皮革、ファブリック、等によって形成されている。
【0063】
パッド9bは、表皮10bの両側端部Q,Qに対応した位置に配置された第1のパッド9b1,9b1と、表皮10bの両側端部Q,Q以外の位置に配置された第2のパッド9b2と、を有している。第1のパッド9b1及び第2のパッド9b2は、いずれも、発泡及び硬化したウレタンによって形成されている。但し、第1のパッド9b1の硬度は第2のパッド9b2の硬度よりも高くなっている。
【0064】
本参考例では、中央部のパッド9b2よりも硬度の高いパッド9b1,9b1を、シートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qに配置したので、当該両側端部Q,Qの剛性がシートバック主体5の下部5bの中央部P3の剛性よりも高められている。つまり、シートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qに設けられた第1のパッド9b1によって剛性付与構造が構成されている。
【0065】
以上のように、
本参考例では、剛性付与構造としての第1のパッド9b1,9b1によってシートバック主体5の下部5bの両側端部Q,Qの剛性を高めたので、
図7において下部5bの幅Wbが着座者の腰部P0の幅と同じか、あるいは腰部P0の幅よりも狭くなっている場合でも、下部5bの側端部Q,Qが着座者からの荷重の負荷によって大きく変形することが防止される。この結果、着座者に良好な着座感を提供できるようになった。そして、このため、スリムなシートを実現できることになった。
【0066】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0067】
例えば、上記の各実施形態は、シートバック4のシートバック主体5の下部5b、すなわちシートバック主体5のうち着座者の腰部が当たる面に本発明を適用した。しかしながら、本発明は着座者の背中部が当たる面に適用することもできる。
【0068】
また、本発明は、シートバック4に限られず、シートクッション3に適用することもできる。具体的には、本発明は、シートクッション3のうちの着座者の太ももの裏側部分が当たる面に適用することもできる。さらには、本発明は、シートクッション3のうちの着座者の臀部が当たる面に適用することもできる。
【0069】
また、本発明は、車両用シート以外のシート、例えば1枚のクッションとして用いられるシートに適用することも可能である。