(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621185
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】ギャッチベッド用マットレス
(51)【国際特許分類】
A61G 7/057 20060101AFI20191209BHJP
A47C 27/15 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
A61G7/057
A47C27/15 C
A47C27/15 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-13501(P2018-13501)
(22)【出願日】2018年1月30日
(62)【分割の表示】特願2016-145670(P2016-145670)の分割
【原出願日】2013年4月23日
(65)【公開番号】特開2018-61909(P2018-61909A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2018年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390039985
【氏名又は名称】パラマウントベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090158
【弁理士】
【氏名又は名称】藤巻 正憲
(72)【発明者】
【氏名】三ツ木 勇人
(72)【発明者】
【氏名】永野 豊
(72)【発明者】
【氏名】有松 崇行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敦司
【審査官】
須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−519186(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0081208(US,A1)
【文献】
特開2009−207543(JP,A)
【文献】
特開2006−158563(JP,A)
【文献】
特開2002−065407(JP,A)
【文献】
特開平11−342280(JP,A)
【文献】
特開平11−009399(JP,A)
【文献】
特開2008−018045(JP,A)
【文献】
特開2014−212849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G7/00−7/16
A47C27/00−27/22
A47C31/10
A47G9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション性を有し、ベッド使用者の体重を支えるマットレス本体と、
このマットレス本体を被包するカバーと、
を有し、
前記マットレス本体は、前記ベッド使用者の大腿部に対応する位置に配置されたウレタン製補助材を有し、
この補助材は、ベッド長手方向に関し、その腰部側の上面はその先端に向けて下降傾斜する斜面を形成し、その足部側は均一な厚さの平板状であり、
この補助材により、前記ベッド使用者の大腿部に対応する位置が、腰部及び背部に対応する位置よりも硬くなっていることを特徴とするギャッチベッド用マットレス。
【請求項2】
前記カバーの下面の前記硬いウレタン製補助材に対応する位置には、滑り止め加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載のギャッチベッド用マットレス。
【請求項3】
前記カバーの下面における前記硬いウレタン製補助材に対応する位置に、マットレスの滑動を抑制する滑り止めが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のギャッチベッド用マットレス。
【請求項4】
前記マットレス本体は、ベッドの長手方向の全域に延びるポリエステル製基材を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のギャッチベッド用マットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギャッチベッドの背上げ動作時に、ベッドの背ボトムに対してずれが生じないギャッチベッド用マットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
ギャッチベッドのボトム上には、マットレスが載置されており、患者等のベッド使用者は、マットレス上に横臥する。そして、ギャッチベッドにおいては、ボトムが、使用者の背の部分に対応する背ボトムと、腰の部分に対応する腰ボトムと、大腿部の部分に対応する膝ボトムと、足の部分に対応する足ボトムとに分割されており、通常、腰ボトムは固定されているが、背ボトムは、腰ボトム側の端部を回動中心として、揺動するようになっている。この背ボトムが上昇し、背上げ動作がなされると、マットレス上の使用者の上半身が起こされ、使用者は、読書又はテレビジョン鑑賞等がしやすい体勢になる。
【0003】
しかしながら、このようなギャッチベッドの場合、背上げ動作がなされると、マットレス上の使用者の身体が、ベッドの長手方向(足元方向)にずれを生じやすくなり、寝心地が悪くなると共に、余分な力が使用者にかかるという問題点がある。
【0004】
また、この背上げ時に、身体に対して印加される応力は、背ボトム上のマットレスも、ベッド長手方向(足元方向)にずらす方向に作用する。このため、マットレスのずれも問題になる。
【0005】
そこで、特許文献1においては、マットレスの裏面とベッド(ボトム)の上面との間に、高摩擦係数のシート部材を敷設し、マットレスの滑りに対して滑り抵抗力を付加したマットレスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−207543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この特許文献1に開示されたマットレスは、マットレスのベッド長手方向への滑動を防止することはできても、ベッドのマットレス上に横臥するベッド使用者のベッド長手方向へのずれを防止できるものではないという問題点がある。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、ギャッチベッドの背上げ動作時におけるマットレスのベッド長手方向へのずれと、マットレス上に横臥するベッド使用者のずれを防止することができるギャッチベッド用マットレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るギャッチベッド用マットレスは、
クッション性を有し、ベッド使用者の体重を支えるマットレス本体と、
このマットレス本体を被包するカバーと、
を有し、
前記マットレス本体は、前記ベッド使用者の大腿部に対応する位置に配置されたウレタン製補助材を有し、
この補助材は、ベッド長手方向
に関し、その腰部側の上面はその先端に向けて下降傾斜する斜面を形成し、その足部側は均一な厚さの平板状であり、
この補助材により、前記ベッド使用者の大腿部に対応する位置が、腰部及び背部に対応する位置よりも硬くなっていることを特徴とする。
【0010】
このギャッチベッド用マットレスにおいて、
前記カバーの下面の前記硬いウレタン素材に対応する位置には、滑り止め加工が施されているか、又は、前記カバーの下面における前記硬いウレタン素材に対応する位置に、マットレスの滑動を抑制する滑り止めが設けられていることが好ましい。
【0011】
また、前記マットレス本体は、ベッドの長手方向
の全域に延びる
ポリエステル製基材を有するように構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、マットレス本体に硬い部分があると、背ボトムが上昇して、背上げ動作が行われた場合に、マットレス長手方向にずれようとする使用者の体重がマットレス本体の硬い部分に集中しやすい。そこで、マットレス本体が、例えば、腰部の位置が軟らかく、大腿部の位置が硬くなるように構成した場合、マットレス上に横臥するベッド使用者は、相対的に、その腰が沈むものの、大腿部は硬い素材に支持されて沈みにくい。このため、ベッド使用者自体も、背上げ動作時に、マットレス本体に対して足元方向にずれてしまうことが防止される。また、カバー下面におけるマットレス本体の前記硬い部分に対応する位置に滑り止めを設けておくことにより、この滑り止めに有効に荷重が印加されて、その下方のボトムとの間で摩擦力が有効に作用し、マットレスがその長手方向にずれてしまうことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るギャッチベッド用マットレスを示す斜視図である。
【
図3】同じく、そのカバーの下面を示す下面図である。
【
図4】マットレス本体の変形例を示す図であり、(a)は組み立て斜視図、(b)は側面図である。
【
図5】マットレス本体の他の変形例を示す図であり、(a)は組み立て斜視図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るギャッチベッド用マットレスについて説明する。
図1はマットレス本体1の斜視図、
図2は側面図である。ギャッチベッドは、通常、ベッド長手方向に、背ボトム、腰ボトム、膝ボトム及び足ボトムが配置され、腰ボトムが固定されており、背ボトムが腰ボトムに対して腰ボトム側の端部を揺動中心として揺動する。なお、この膝ボトム及び足ボトムは、脚ボトムを構成し、夫々、別個、独立して揺動することができる場合が多いが、脚ボトムは、膝ボトム及び足ボトムに分割されておらず、一体的に固定されたものである場合もある。背ボトムはベッド使用者の背を支持し、腰ボトムは腰を支持する。よって、ベッド使用者の大腿部は、膝ボトム又は脚ボトムに支持される。
【0015】
マットレス本体1は、ベッドの全面に対応する幅及び長さを有する第1部材2と、この第1部材2の頭部側及び足部側の部分の下面に接合された第2部材3,4と、第1部材2の腰部の部分の上面に接合された第3部材6と、平面視で第1部材2における第3部材6と足部側第2部材4との間の部分における下面に接合された第4部材5とから構成される。第1部材2と第3部材6の上面はほぼ面一であり、第2部材3,4及び第4部材5の下面と、第1部材2における腰部の部分の下面とは、ほぼ面一である。従って、マットレス本体1は全体で板状をなす。第1部材2は、例えば、硬さが200N(40%圧縮)以上のポリエステル硬綿製であり、第2部材3,4及び第3部材6は、例えば、硬さが50乃至130N(40%圧縮)のウレタン製である。第4部材5は、同様に、ウレタン製であるが、硬さが150乃至500N(40%圧縮)であり、第2部材3,4及び第3部材6より高硬度である。ポリエステル硬綿製の第1部材2は、マットレス本体1の基本的な構造材となり、ベッドの長手方向の全域に延びる基材である。また、腰部に相当する第3部材6は若干軟らかい素材で形成されている。一方、大腿部に相当する第4部材5は硬い素材で形成されており、基材又は腰部の第3部材6よりも硬い素材で形成された補助材である。なお、この補助材、即ち第4部材5の断面形状は、
図2に示すように、腰部側の部分がくさび形になっており、足部側の部分は均一な厚さの平板状をなす。この補助材は、ベッド長手方向に100mm以上の長さを有し、幅は150mm以上であることが好ましい。
【0016】
図3は、本実施形態のカバー40を示す下面図である。この
図3に示すように、カバー40は、袋状をなし、マットレス本体1を内部に収納して、マットレス本体1を被包する。カバー40のベッド長手方向の端部の辺と、それに続く両側の辺の一部に、ファスナー41が設けられていて、このファスナー41を開閉することにより、マットレス本体1を内部に収納する。このカバー40の両側部には、取っ手42が2対設けられていて、マットレスを運搬する際の便宜に供するようになっている。例えば、カバー40は、その上半部がニット製であり、下半部が織物製であって、これらの上半部及び下半部をカバー40の側部で接合することにより、袋状にしている。なお、カバー40の上面には、製品ロゴ等をシルク印刷により表示することができる。
【0017】
このカバー40の下面には、硬い第4部材5に対応する部分、即ち、マットレス上に横臥したベッド使用者の大腿部に対応する部分に、滑り止め加工することにより、滑り止め部43が設けられている。この滑り止め部43の滑り止め加工は、平面状にゴム素材を被着することにより行うことができるが、この手段は、その他の種々の手段を講じることができる。この滑り止め部43は、ベッド長手方向に100mm以上の長さを有し、幅が150mm以上であることが好ましい。
【0018】
上述のごとく構成された本実施形態のマットレスにおいては、補助材(第4部材5)が150乃至500Nと硬い素材で形成されており、腰部を支持する第3部材6が50乃至130Nと軟らかい素材で形成されているので、ベッド使用者の腰部は第3部材6で相対的に沈みやすく、大腿部を支持する補助材(第4部材5)は150乃至500Nと硬い素材で形成されているので、ベッド使用者の大腿部は補助材(第4部材5)により支持されて、相対的に沈まない。このため、使用者の臀部(腰部)は、補助材(第4部材5)に係止されて、ベッド長手方向(足元方向)にずれることがない。また、カバー40には滑り止め加工部43が設けられているので、マットレス自体も、膝ボトム(脚部ボトム)との間に、大きな摩擦力が作用して、ベッド長手方向にずれが生じることはない。更に、ベッド使用者がマットレス上に座した場合、臀部が補助材(第4部材5)からの反力を受けて、骨盤が立った座位姿勢をとりやすくなる。
【0019】
マットレス本体1は、第1部材2が硬さが200N以上のポリエステル硬綿で成形されており、この第1部材2が、ベッド長手方向の全域に配置されているが、ベッド上に横臥した使用者の腰部の部分は、第1部材2上に、硬さが50乃至130Nの軟らかいウレタン製の第3部材6が配置されているので、ベッド使用者の背部及び脚部は、硬い素材に支持され、腰部は、柔らかい素材に支持されることになる。このため、本実施形態の下層マットレス部材1は、腰部が沈み込みやすく、背部及び脚部が沈み込みにくいという特性をもつものとなる。
【0020】
図4は、マットレス本体1と上層マットレス部材10とを積層したマットレスの変形例を示す図である。
図4に示すように、上層マットレス部材10は、マットレス本体1の上に、分離可能に重ねられる。この上層マットレス部材10はマットレス本体1と同様の平面形状(幅及び長さ)を有し、その中央部分の第5部材11と、幅方向の両端部の第6部材13とから構成される。第5部材11は、例えば、硬さが50乃至130N(40%圧縮)のウレタン製であり、第6部材13は、例えば、同じくウレタン製であるが、硬さが150乃至500N(40%圧縮)と、中央部の第5部材11より硬くなっている。また、第5部材11の表面は、粗面化処理12が施されている。この場合、上層マットレス部材10とマットレス本体1は、重ねられた状態で、カバー40内に収納される。上層マットレス10は、例えば、その下面の一部に面ファスナーを接合しておき、マットレス本体1の上面の素材として、面ファスナーの機能をもつものを使用すると、上層マットレス部材10とマットレス本体1とを、この面ファスナー同士で、分離可能に係止し、相互に固定することができる。このマットレス本体1の面ファスナーの機能をもつものとして、マットレス本体1の第3部材6を、例えば、膜なしウレタンで形成することができる。この膜なしウレタンは、洗浄時の流水性及び乾燥時の通気性を良くするために、通常のウレタンフォームの組織にある小さな膜を飛ばし、骨格のみ残したウレタンのことをいう。これにより、第3部材6は、その上面が面ファスナーとしての機能をもち、上層マットレス部材10の下面の面ファスナーとの間で、上層マットレス部材10とマットレス本体1とを相互に係止することができる。
【0021】
このマットレスの場合も、
図1に示すマットレスと同様の効果を奏する。即ち、使用者の臀部(腰部)は、補助材(第4部材5)に係止されて、ベッド長手方向(足元方向)にずれることがない。また、カバー40には滑り止め加工部43が設けられているので、マットレス自体も、膝ボトム(脚部ボトム)との間に、大きな摩擦力が作用して、ベッド長手方向にずれが生じることはない。更に、ベッド使用者がマットレス上に座した場合、臀部が補助材(第4部材5)からの反力を受けて、骨盤が立った座位姿勢をとりやすくなる。
【0022】
しかし、このマットレス本体においては、更に、上層マットレス部材10により、マットレスの硬さを種々調整でき、寝心地を改善できるという効果を奏する。即ち、このマットレスの場合は、ベッドの幅方向の端部に患者が座して、ベッドから離床しようとする端座位の姿勢をとったときに、上層マットレス部材10の端部の第6部材13の硬度が中央部よりも高いので、患者はベッドから離床しやすい。そして、マットレス本体1の上に配置される上層マットレス部材10は、その幅方向中央部の部分が、長手方向の全域にわたって、硬さが50乃至130Nの軟らかいウレタン製の第5部材11で占められているので、マットレス本体1による支持の相対的な硬軟の関係は、変化しない。つまり、マットレス本体1上に上層マットレス部材10が重ねられたマットレスとして、ベッド使用者の背部及び脚部は、比較的硬い素材に支持され、腰部は、比較的軟らかい素材に支持される。
【0023】
このように、ベッド使用者(患者)がベッド上に横臥した場合、その腰部(臀部)は、最下層に硬さが200N以上の硬い第1部材2をおいて、その上に、硬さが50乃至130Nの第5部材11と硬さが50乃至130Nの第3部材6の積層体が配置されたものの上に位置するので、実質的に硬さが50乃至130Nのウレタンにより支持される。また、患者の背部は、硬さが50乃至130Nの第2部材3を最下層において、硬さが200N(40%圧縮)以上の硬いポリエステル硬綿からなる第1部材2と、硬さが50乃至130Nの第5部材11との積層体が配置されたものの上に位置しているので、硬い第1部材2の影響が強く、腰部(臀部)よりも硬い部材に支持されることになる。脚部は背部と同様の硬さの部分に支持される。更に、患者の大腿部は、硬さが150乃至500Nの第4部材5と、ポリエステル硬綿からなる第1部材2と、硬さが50乃至130Nの第5部材11との積層体の上に位置しているので、腰部はもとより、背部及び脚部よりも硬い部材に支持されることになる。このように、臀部が最も軟らかい部材(硬さ50乃至130N)に支持され、背部及び脚部が臀部の部材より硬い部材に支持され、大腿部が背部及び脚部の部材より硬い部材に支持されることになる。このため、このマットレスは、患者が寝返りをしやすいと共に、患者の臀部は硬さが50乃至130Nの部材に支持されるので、体圧分散性が優れていて、寝心地と体圧分散性との双方が優れたバランスが良いものとなる。しかも、前述のごとく、患者はベッドから離床しやすい。従って、マットレス本体1と上層マットレス部材10との組み合わせは、寝心地と体圧分散性が優れ、端座位が安定するという機能をもつスタンダードタイプのマットレスとなる。
【0024】
図5は別の上層マットレス部材20を示す。この上層マットレス部材20は、ベッド幅方向に中央にてベッド長手方向に並置された2個の第7部材21及び第8部材22を有する。この第8部材22は、均一な厚さの部分と、厚さが徐々に小さくなって、その上面が傾斜した傾斜面23である部分とが、ベッドの長手方向に連なっている。そして、第7部材21及び第8部材22の平坦な表面上に、第9部材24及び第10部材25が配置されており、第8部材22の傾斜面23上に、第11部材26が配置されている。これらの第9部材24,第10部材25及び第11部材26は均一な厚さを有する。ベッド幅方向におけるこれらの第7部材21及び第8部材22の両側方には、ベッド長手方向の全長に延びる第12部材27が配置されており、この第12部材27の上には、ベッド長手方向に延びる第13部材28が配置されている。これらの第7部材21〜第13部材28は、相互に接合されて、一体的に構成されている。第7部材21は、例えば、硬さが50乃至130N(40%圧縮)のウレタン製であり、第8部材22は、例えば、硬さが150乃至500N(40%圧縮)のウレタンであり、第9部材24,第10部材25及び第11部材26は、例えば、硬さが50乃至130N(40%圧縮)のウレタン製である。そして、第12部材27は、例えば、硬さが200N(40%圧縮)以上のポリエステル硬綿製であり、第13部材28は、例えば、硬さが50乃至130N(40%圧縮)のウレタン製である。この上層マットレス部材20は2層構造であり、マットレス上の位置における硬さをより任意に且つ広範に調整することができる。
【0025】
なお、マットレス本体1は、それだけで、ベッド上のマットレスとして必要な機能をもつ。従って、マットレス本体1は、種々の患者等にとって、共通に必要な機能を備えており、最低限の寝心地を有していて、それだけでも、患者が横臥するマットレスとしての機能を有する。マットレス本体1は、前述のごとく、その上に横臥した患者は、動きやすいと共に、臀部の体圧分散性がすぐれている。
図1及び
図2に示すマットレス本体1は、例えば、厚さが7cmであり、薄型タイプのマットレスといえる。
図4に示すマットレス本体1と上層マットレス部材10との組み合わせのスタンダードタイプのプラットホーム化マットレスは、上層マットレス部材10の厚さが例えば9cmであり、
図5に示すマットレス本体1と上層マットレス部材20との組み合わせの床ずれ防止タイプのプラットホーム化マットレスは、上層マットレス部材20の厚さが例えば12.5cmである。このように、上層マットレス部材の厚さが異なるので、カバー40は、各厚さに対応したものを用意することが好ましい。即ち、患者等のベッド使用者の特性に応じて付加すべき機能、即ち、個々のベッド使用者にとって必要な機能は、上層マットレス部材がもつが、マットレス全体の厚さは、この上層マットレス部材の厚さにより変化するので、それに応じて適切なカバーを用意することが好ましい。
【0026】
図5に示すように、上層マットレス部材10の代わりに、上層マットレス部材20をマットレス本体1と組み合わせて使用した場合には、硬さが50乃至130Nの第7部材21と硬さが150乃至500Nの第8部材22とがベッド長手方向に配置されており、硬さが150乃至500Nの第8部材22は、傾斜面23の部分で厚さがベッド長手方向に徐々に減少しているので、硬さも同様に徐々に低下している。よって、上層マットレス部材20の場合は、ベッド長手方向に硬さが変化する。即ち、ベッド使用者は、背部が軟らかい第7部材21により支持され、臀部が比較的硬い第8部材22により支持され、第8部材22の硬さは、足部側になるにつれて低くなっている。そして、上層マットレス部材20は2層構造でその上層には、軟らかい第9部材24,第10部材25及び第11部材26が配置されているので、ベッド使用者の感触が心地よいものとなっている。また、臀部の第8部材22の硬さが比較的硬いので、人体の中で比較的重い臀部が上層マットレス部材20内で沈み込んだ場合でも、この臀部が下層マットレス部材1まで到達する所謂底付きが生じることが防止される。また、上層マットレス部材20の場合も、ベッドの端座位の位置では硬さが高いので、端座位が安定し、例えば、リハビリテーション中の患者が端座位で立ち上がりやすくなる。但し、上層マットレス部材10と異なり、上層マットレス部材20の場合は、端座位が2層構造になっており、下層の第12部材27は硬さが200N以上と硬いが、その上層の第13部材28は硬さが50乃至130Nと軟らかくなっているので、ベッド使用者の触感が心地よいものとなっている。
【0027】
更に、上層マットレス部材20の場合は、前述の如く、端座位が安定すると共に、仰臥位及び側臥位のいずれの場合も、また30°以下の背上げ時においても、優れた体圧分散性が得られる。上層マットレス部材20は、2層構造であり、例えば厚さが12.5cmと、単層構造の上層マットレス部材10(例えば,厚さが9cm)よりも3.5cm厚いため、ベッド使用者との接触面積が上層マットレス部材10よりも増大している。よって、この上層マットレス部材20とマットレス本体1とを組み合わせたマットレスの場合は、体圧分散性が極めて優れており、床ずれ防止に極めて有効である。即ち、このマットレスは、仰臥位、側臥位、及び背上げ時の体圧分散性が優れているという機能をもつ床ずれ防止タイプのマットレスとなる。なお、上層マットレス部材を、より軟らかく、厚さをより厚くすると、患者の身体との接触面積がより増大し、体圧分散性がより優れたものとなり、褥瘡の予防に有効なマットレスを組み立てることができる。
【0028】
上述のごとく、ベッド使用者の固有の特性に応じて、必要となる機能をもつ上層マットレス部材を選択し、これを共通に使用する1個のマットレス本体1と組み合わせて、所望の特性をもつマットレスを得る。一般的な患者の場合は、上層マットレス部材10を使用し、床ずれが著しい患者の場合は、上層マットレス部材20を使用する。マットレス本体1は、全ての患者に共通に使用する。このため、本実施形態においては、患者の固有の特性に応じて必要な機能を、上層マットレス部材を交換するだけで得ることができるので、その機能をもつ専用のマットレスを用意しておく必要がなく、病院及び介護施設においては、設備コストを低減できる。在宅介護の場合も、被介護者は、月単位又は年単位で、その容体が変化する。当初は、褥瘡がなかった被介護者が、年月の経過と共に、褥瘡が酷くなる場合があるが、このように容体が変化した場合も、上層マットレス部材を交換するだけで、その時に最適な特性のマットレスを得ることができる。よって、介護に必要な費用を節約することができる。このように、本実施形態においては、患者に必要な特有の機能を、上層マットレス部材のみを、適切なものに変更することにより、ベッド使用者固有の特性に応じた機能を付加することができるので、ベッド使用者にとって最適の機能をもつマットレスを容易に且つ低コストで得ることができ、このカスタマイズのための費用を著しく低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明においては、ギャッチベッドの背上げ時に、マットレス上に横臥するベッド使用者が、ベッド長手方向にずれてしまうことがなく、マットレス自体もベッド長手方向にずれることがないので、ベッド使用者は常に当初の位置に残り、寝心地を損なうことはない。よって、本発明は、ギャッチベッドの好適な使用に多大の貢献をなす。
【符号の説明】
【0030】
1:マットレス本体
2:第1部材
3、4:第2部材
5:第4部材
6:第3部材
10、20:上層マットレス部材
11:第5部材
13:第6部材
21:第7部材
22:第8部材
24:第9部材
25:第10部材
26:第11部材
27:第12部材
28:第13部材