(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係合部材は、前記接地センサの接地の検出にともない、前記第2の係合部を前記第1の係合部に近接させる弾性部材を有する請求項1または2に記載の歩行補助装置。
前記係合部材は、前記接地センサの接地の検出にともない、前記第2の係合部を前記第1の係合部に近接させる弾性部材を有する請求項4または5に記載の歩行補助装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人の通常の平地歩行では、遊脚期から立脚期に移行する瞬間、すなわち接地の瞬間には、必ず、膝が完全に伸展した状態で接地することになり、なお且つ、この接地後の全期間に亘って、膝を屈曲することはない。
【0005】
従って、人の通常の平地歩行では、立脚期間中の膝が完全に伸展した状態を維持させつつ体重を支持する機能だけで十分に下肢への荷重負担の軽減が実現することになる。
【0006】
特許文献1に記載の装置では、対をなす脚部を交互に動かして歩行機を歩行させる歩行時に、下腿部の着地部が着地面に着地すると、回転規制部が膝関節部の座屈を規制する。これにより、使用者が歩行機を使用する際、不用意な膝関節部の座屈を抑制している。
【0007】
しかしながら、特許文献1の歩行機が歩行機の座屈を防ぐために採用している膝部の回転規制部の構成に関する技術をユーザの身体に装着するタイプの歩行補助装置に応用すると想定した場合には、次のような問題がある。
【0008】
特許文献1の発明について、その請求項1では「前記回転規制部は、前記着地部が着地面に着地した際に前記膝関節部の屈曲動作を規制する」という回転規制部についての一般的な機能が述べられている。その後、その規制の仕方について具体的には、「前記着地部が着地面に着地した際、前記第2の係合部を前記退避位置から前記係合位置へ移動させて前記第1の係合部に係合させることにより、前記膝関節部の屈曲動作を規制する」と記載されているだけである。
【0009】
従って、特許文献1の発明は、歩行機の膝部の特定の屈曲角度における屈曲動作のみを規制する機能を実現する技術の提供を目指したものではない。換言すると、歩行機の膝部の特定の屈曲角度以外における屈曲動作を規制するのか、規制しないのかは問題にされていない。
【0010】
このため、特許文献1の発明が提供する回転規制部の構成に関する技術を、後述する開示の歩行補助装置が備えているような荷重支持具を取り付けた歩行補助装置(以下、「対比用歩行補助装置」と言う)に応用する場合を検討してみると、次のような問題が生じる。
【0011】
対比用歩行補助装置は、ユーザの膝が完全に伸展している場合の立脚時にのみユーザの膝の屈曲を防止し、ユーザの膝が完全には伸展していない場合の立脚時にはユーザの膝の十分な屈曲を規制しないような構成にはならない。その理由を以下で述べる。
【0012】
特許文献1の明細書では、回転規制部52の具体的な規制の仕組みについて、「このため、定径部56bにロッド52が挿入されると、ロッド52と直交する方向へのロッド52の移動は規制される」(段落[0029]参照)と記載されているに過ぎず、定径部56bにロッド52が挿入されない場合に、回転規制部52は対比用歩行補助装置を装着するユーザの膝の屈曲を規制するのか、それとも規制しないのかについて参考になる具体的な説明が何もない。
【0013】
特許文献1の明細書の図面によれば、対比用歩行補助装置を装着するユーザの膝が屈曲して立脚した場合は、定径部56bにロッド52が挿入されないと解釈される。そうすると、ロッド52の先端は、異径部56aのどこかに衝突する筈であるから、ロッド52の先端は、ロッド52を押し上げる力に対する反力を受けることになる。
【0014】
ロッド52を押し上げる力は、対比用歩行補助装置の荷重支持部にかかるユーザの体重などの一部による床反力であり、ロッド52の部材自体の重量による荷重ではないから、かなり大きな力である。ロッド52は高剛性である(段落[0029]参照)から、この反力を弱めることなくそのままユーザの足部にある回転部材37に伝達することになる。
【0015】
そこで、回転部材37が高剛性であれば、ロッド52と衝突する異径部56aの衝突部分、または、ロッド52の先端部分、または、回転部材37が足部に支持されている部分のいずれかに変形や破損が生じる虞がある。もし、「回転部材37を弾性変形可能な材質により形成する」(段落[0056]参照)とした場合、つまり、「回転部材37自身が、所謂板ばねを構成する」(段落[0056]参照)とした場合には、このような事態を回避できる可能性は確かにある。
【0016】
しかし、特許文献1の明細書と図面で示されるような板ばねの設置方法を対比用歩行補助装置に採用すると、2つの問題がある。1つは、特許文献1の図面から明らかなように、ユーザの膝の屈曲が十分に保障されないことである。このことは、「大腿部21と下腿部23とが相対回転可能な角度は一定角度に規制されている」(段落[0027]参照)という特許文献1の明細書の記述からも明らかである。
【0017】
もう1つは、ロッド52の先端が、異径部56aのどこかに衝突した場合、ロッド52は、ロッド52を押し上げる力に対する反力を受けて押し戻され、従ってまた、その板ばねも押し戻されることになるから、その板ばねが押し戻されるだけの距離を予め設定しておくことになる。
【0018】
そうなると、立脚期には板ばねと床面とが前述した距離の分だけ離れていることになる。すなわち、対比用歩行補助装置の踵部は、板ばねという弾性部材の上で安定しない状態に置かれることになるから、歩行補助装置として好ましい状態ではない。
【0019】
従って、弾性変形可能な材質により形成された板ばねを利用する方法は、対比用歩行補助装置に求められる問題に対して有効な解決策ではない。板ばね以外に考えられる対策は圧縮ばね54を利用することである。しかし、特許文献1の明細書では、圧縮ばね54のこのような利用法について何も記載されていない。圧縮ばね54は、特許文献1の明細書では、「回転部材37を第2の位置から第1の位置へ移動させる」役割(段落[0054]、[0055]参照)を持たされているに過ぎない。
【0020】
逆に、「圧縮ばね54を省略しても良い」(段落[0056]参照)と記載されている。 圧縮ばね54が省略された場合、圧縮ばね54に代わるような対策は何も記載されていない。
【0021】
以上の考察から、特許文献1の発明に係る歩行機の回転規制部の構成に関する技術は、「ユーザの膝が完全に伸展している場合の立脚時にのみユーザの膝の屈曲を抑制し、ユーザの膝が完全には伸展していない場合の立脚時にはユーザの膝の屈曲を規制しない」という点について、有効な解決法ではないと言える。
1つの側面では、本発明は、膝が完全に伸展した状態で立脚しているときの膝の屈曲を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、開示の第1の歩行補助装置および第2の歩行補助装置が提供される。第1の歩行補助装置は、ユーザの脚への荷重負担を軽減する歩行補助装置であって、荷重を支持する荷重支持具と、ユーザの一方の脚の大腿に装着され、一端部が荷重支持具に揺動可能に連結され、他端部に第1の係合部を有する長尺状の大腿リンクと、一端部が、他端部に回動可能に連結される長尺状の下腿リンクと、下腿リンクに配置され、一端部が第1の係合部と係合可能な第2の係合部を有する係合部材と接地を検出する接地センサと、を備え、接地センサが接地を検出したときに、ユーザの膝が伸展している場合、第1の係合部と第2の係合部が係合して大腿リンクと下腿リンクの相対回動を止め、ユーザの膝が伸展していない場合、第1の係合部と第2の係合部が係合しない。
【0023】
第2の歩行補助装置は、ユーザの脚への荷重負担を軽減する歩行補助装置であって、荷重を支持する荷重支持具と、ユーザの一方の脚の大腿に装着され、上端が荷重支持具に揺動可能に連結される長尺状の大腿リンクと、一端部が、大腿リンクの下端に揺動可能に連結される長尺状の下腿リンクと、一端部が大腿リンクの中央付近に揺動可能に連結され、他端部が下腿リンクに摺動可能に連結される第1の係合部と、下腿リンクに配置され、一端部がユーザの膝が完全に伸展したとき第1の係合部の他端部と係合可能な第2の係合部を有する係合部材と、接地を検出する接地センサと、を備え、接地センサが接地を検出したときに、ユーザの膝が伸展している場合、第1の係合部と第2の係合部が係合して大腿リンクと下腿リンクの相対回動を止め、ユーザの膝が伸展していない場合、第1の係合部と第2の係合部が係合しない。
開示の第1の歩行補助装置および第2の歩行補助装置の用語と表現について説明する。
【0024】
開示の第1の歩行補助装置および第2の歩行補助装置においては、ユーザの一方の脚に装着された場合について記述されている。従って、ユーザの脚、大腿、下腿、膝、足底という語は全てユーザの一方の脚についての記述であり、他方の脚の大腿、下腿、膝、足底について記述されたものではない。同様に、開示の歩行補助装置の各構成部分を表現した、大腿リンク、下腿リンク、大腿係合部、下腿係合部、接地センサ、第1の係合部、第2の係合部という語もユーザの一方の脚に装着された場合について記述されたものであり、他方の脚に装着された場合について記述されたものではない。
【0025】
また、荷重支持具とは、例えばユーザの体重による荷重、または、ユーザの担う人又は物の重量による荷重を支持する器具である。具体的には、荷重支持具とは、ユーザの担う人又は物の重量を含めたユーザの体重を支持する荷重支持具(以下ではこれを第1荷重支持具と記す)と、荷重の支持部を主にユーザの体重のみを支持する部分(体重支持部と記す)とユーザの担う人又は物の重量による荷重のみを支持する部分(荷重支持部と記す)に分離した荷重支持具(第2荷重支持具と記す)と、ユーザの体重は支持しないでユーザの担う人又は物の重量による荷重のみを支持する荷重支持具(第3荷重支持具と記す)という3種類の荷重支持具から選択して備えることができる歩行補助装置であるということを表現したものである。
<第1の歩行補助装置の大腿係合部と下腿係合部と係合部材>
【0026】
第1の歩行補助装置の大腿係合部とは、例えば大腿リンクの下端に設けられた窪み、穴または突起のいずれかである。下腿係合部とは、例えば下腿リンクに配置され、上端が大腿係合部と係合可能な形状で、下腿リンクの上端において大腿係合部と係合可能な位置に配置される棒状部材である。
【0027】
第1の歩行補助装置の係合部材は、上端が下腿係合部であり、下端が接地センサであって、且つ、下腿係合部の下端と接地センサの上端との間に、押しばねなどの弾性部材が組み込まれて形成されるのが好ましい。
<第2の歩行補助装置の第1の係合部と第2の係合部と係合部材>
【0028】
第2の歩行補助装置の第1の係合部は、例えば上端が大腿リンクの中央付近の位置に連結され、下端が下腿リンクに摺動可能に連結される棒状の部材である。大腿リンクの中央付近とは、例えば大腿リンクの長径方向の中央付近の意味である。中央付近と表記したのは、第2の歩行補助装置では、第1の係合部の上端の位置をかなり広い範囲から選択して設定することが可能なためである。
【0029】
第2の歩行補助装置の第2の係合部は、例えば下腿リンクに配置され、前端が第1の係合部の下端と係合可能な形状で、第1の係合部の下端と係合する位置と、第1の係合部の下端と係合しないで待機している位置との間を移動可能な突起状の部材である。
【0030】
第2の歩行補助装置の係合部材は、第2の係合部の突起状部材の後端と接地センサの上端との間に、板ばねなどの弾性部材が組み込まれて形成されるのが好ましい。
<第1の歩行補助装置の構成>
【0031】
最初に第1の歩行補助装置の構成を説明する。第1の歩行補助装置は、例えばユーザの体重などによる荷重を支持するための荷重支持部と、ユーザの膝の屈曲を規制するための回転規制部とを有している。荷重支持部は、例えばユーザの体重、または、ユーザの担う人又は物の重量による荷重を支持する荷重支持具と、荷重支持具を支持する脚部とを有している。更に、脚部は、ユーザの一方の大腿に装着され、上端が荷重支持具に揺動可能に連結される大腿リンクと、上端が大腿リンクの下端に揺動可能に連結され、下端が前述した脚の足底に至る下腿リンクとを有することができる。
【0032】
一方、回転規制部は、大腿リンクの下端で、大腿リンクと下腿リンクの相対回転の回転軸の下方(回転軸の直下、またはその前か後)に設けられた大腿係合部と、下腿リンクに配置され、上端が第2の係合部であり、下端が接地センサであって、第2の係合部の下端と接地センサの上端との間に押しばね等の弾性部材を組み込んで形成される係合部材とを有することができる。
【0033】
更に、回転規制部は、ユーザの脚が立脚期で且つユーザの膝が完全に伸展している場合には、大腿係合部と下腿係合部とが係合して大腿リンクと下腿リンクの相対回転を止め、ユーザの脚が立脚期で且つユーザの膝が完全には伸展していない場合には、大腿係合部と下腿係合部とが係合しないで大腿リンクと下腿リンクの相対回転を許可する一方、ユーザの脚が遊脚期にある場合には、大腿係合部と下腿係合部とが係合しないで大腿リンクと下腿リンクの相対回転を許可することができる。
<第1の歩行補助装置の作用>
【0034】
第1の歩行補助装置が、接地センサが接地を検出し、ユーザの膝が完全に伸展した状態での立脚時にのみ、大腿係合部と下腿係合部が係合することによって、ユーザの膝の屈曲を停止させるという様に、立脚時のユーザの膝の屈曲を規制する機能を最小限に限定している。
【0035】
第1の歩行補助装置の機能を実現可能にしている技術の要点は、ユーザの脚の立脚時にユーザの膝の完全伸展時以外では、大腿係合部と下腿係合部が係合しないことと、更にこのとき、大腿係合部と下腿係合部の各先端部分が衝突する事態が生じても、係合部の長さが押しばねなどの弾性部材の弾性変形によって短縮することにより部材の変形、破損の虞を回避できることである。
【0036】
また、第1の歩行補助装置は、ユーザの膝の完全伸展時以外では、立脚したままユーザの膝が屈曲して行く運動を制動する機能を有していない。このように余分な機能を持たない分だけ余分な構造物を省くことによって、薄型で、軽量な歩行補助装置を実現できる。
<第2の歩行補助装置の構成>
【0037】
第2の歩行補助装置は、例えばユーザの体重などによる荷重を支持するための荷重支持部と、ユーザの膝の屈曲を規制するための回転規制部とを有している。荷重支持部は、ユーザの体重、または、ユーザの担う人又は物の重量による荷重を支持する荷重支持具と、荷重支持具を支持する脚部とを有している。更に、脚部は、ユーザの一方の大腿に装着され、上端が荷重支持具に揺動可能に連結される大腿リンクと、上端が大腿リンクの下端に揺動可能に連結され、下端が前述した脚の足底に至る下腿リンクとを有することができる。
【0038】
一方、回転規制部は、上端が大腿リンクの中央付近に揺動可能に連結され、下端が下腿リンクに摺動可能に連結される第1の係合部と、下腿リンクに配置され、上端が第2の係合部であり、下端が接地センサであって、第2の係合部の後端と接地センサの上端との間に板ばね等の弾性部材を組み込んで形成される係合部とを有することができる。
【0039】
更に、回転規制部は、ユーザの脚が立脚期で且つユーザの膝が完全に伸展している場合には、第1の係合部と第2の係合部が係合して大腿リンクと下腿リンクの相対回転を止め、ユーザの脚が立脚期で且つユーザの膝が完全には伸展していない場合には、第1の係合部と第2の係合部が係合しないで大腿リンクと下腿リンクの相対回転を許可する一方、ユーザの脚が遊脚期にある場合には、第1の係合部と第2の係合部が係合しないで大腿リンクと下腿リンクの相対回転を許可することができる。
<第2の歩行補助装置の作用>
【0040】
第2の歩行補助装置が、接地センサが接地を検出し、ユーザの膝が完全に伸展した状態での立脚時にのみ、第1の係合部と第2の係合部が係合することによって、ユーザの膝の屈曲を停止させるという様に、立脚時のユーザの膝の屈曲を規制する機能を最小限に限定している。第2の歩行補助装置に特徴的なこの機能を実現可能にしている技術の要点は、ユーザの脚の立脚時でユーザの膝が屈曲する場合には、屈曲角度の増大と共に第1の係合部が第2の係合部から遠ざかることによって両者の相互の係合を回避できるように構成されていることと、更にこのとき、ユーザの膝の屈曲によって、第3突起の先端が、第1突起の側面に衝突する事態が生じても、板ばねなどの弾性部材の弾性変形によって第3突起が元の位置に戻ることにより、部材の変形、破損の虞を回避できる構成になっていることである。また、第2の歩行補助装置は、ユーザの膝の完全伸展時以外では、立脚したままユーザの膝が屈曲して行く運動を制動する機能を有していない。このように余分な機能を持たない分だけ余分な構造物を省くことによって、薄型で、軽量な歩行補助装置を実現できる。
<第1の応用例>
【0041】
第1の歩行補助装置を、立脚したまま膝が屈曲して行く運動の大半を制動する機能を併せ持った歩行補助装置に変えることは勿論、可能ではある。しかし、そのような歩行補助装置は、モータ等の動力装置を使わずにユーザの体重のみを利用する方法を採ったとしても、膝の屈曲度合いの増大に伴う回転力(モーメント)の急激な増大により、大腿リンクと下腿リンクの連結部の部材及び回転規制部の部材にかなりの大きさと強度が要求され、装置が大型になって、重くなり、費用も嵩む。但し、費用が嵩むことや装置が大型化することがそれほど問題にならないという場合には、膝が次第に屈曲して行く運動を立脚期の大半の期間に亘って制動するタイプの歩行補助装置に第1の歩行補助装置の構造を応用することは可能である。
<第2の応用例>
【0042】
第2の歩行補助装置を、立脚したまま膝が屈曲して行く運動の大半を制動する機能を併せ持った歩行補助装置に変えることは容易に可能である。第2の歩行補助装置の回転規制部は、第1の歩行補助装置の回転規制部と違って、かなり大きな回転力(モーメント)に耐えられる構造になっている。第2の歩行補助装置を、特に荷物運搬装置として利用する場合には、第2の歩行補助装置の構造を、立脚したまま膝が屈曲して行く運動の大半を制動する機能を併せ持った歩行補助装置に応用することは有用である。
【発明の効果】
【0043】
1態様では、膝が完全に伸展した状態で立脚しているときの膝の屈曲を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、実施の形態の歩行補助装置を、図面を参照して詳細に説明する。
【0046】
以下の図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲等に限定されない。
実施の形態において単数形で表される要素は、文面で明らかに示されている場合を除き、複数形を含むものとする。
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態の歩行補助装置を示す図である。
図1中、紙面上方向を「上」、紙面下方向を「下」と言う。
【0047】
第1の実施の形態の歩行補助装置1は、例えば、下肢に重度の機能低下はないが、怪我や老化などにより歩行に幾らか困難を感じている人、及び、下肢の機能には全く問題はない健康体であるが、出来るだけ足への負担を少なくしたいと望む人などが歩行するとき、および立位の姿勢を維持するときの脚への荷重負担を軽減する装置である。
図1は、歩行補助装置1をユーザが装着した状態を示している。ユーザの図示を省略し、装置のみの左側面の概略を示している。
左側の脚部は遊脚期の状態、右側の脚部は立脚期の状態を示している。
歩行補助装置1は左右対称に作られているので、以下では、
図1に基づいて歩行補助装置の左側についてのみ説明する。
歩行補助装置1は、荷重支持部2と回転規制部3とを有している。
【0048】
荷重支持部2は、ユーザの主に坐骨部でユ−ザの体重を支持する体重支持部2a1を有する荷重支持具2aと、荷重支持具2aに掛かる荷重を支持する脚部2bとを有している。荷重支持具2aの垂下部2a2と脚部2bの上端は、連結部材4によって連結されている。
【0049】
連結部材4により、脚部2bは垂下部2a2に対しユーザの腰の前屈方向には揺動可能になっている。また、脚部2bは垂下部2a2に対しユーザの腰の後屈方向には揺動不可能になっている。
脚部2bは、ユーザの大腿に配置される大腿リンク2b1とユーザの下腿に配置される下腿リンク2b2とを有している。
【0050】
大腿リンク2b1と下腿リンク2b2は、大腿リンク2b1の下端と下腿リンク2b2の上端に形成された連通孔に挿通される回転軸によって、ユーザの膝の屈伸に同期して揺動できるように連結されている。
一方、回転規制部3は、大腿リンク2b1の下端にある大腿係合部3aと、下腿リンク2b2に配置される係合部材3bとを有している。
【0051】
係合部材3bは、下腿係合部3b1と押しばね3b2と接地センサ3b3とが下腿リンク2b2の長手方向に直線状にこの順に並んで形成されている。下腿係合部3b1と押しばね3b2と接地センサ3b3は、それぞれ支持部5a、5b、5cに摺動可能に把持されている。これにより、係合部材3bの上端、すなわち、下腿係合部3b1の上端が大腿係合部3aの下端との衝突により大腿係合部3aの下端からの反力によって下方に移動するとき、押しばね3b2の長さの短縮が起こるが、係合部材3b全体としては1本の棒状の部材として機能できるように形成されている。回転規制部3は、係合部材3bの上下移動の動きに応じて、大腿リンク2b1と下腿リンク2b2の相対回転の運動を規制する。
<荷重支持具>
【0052】
荷重支持具2aは、ユーザの坐骨部に掛る荷重を支持する。荷重支持具2aは、この荷重をユーザのベルト部2a3から垂下部2a2に伝達できる機能と構造を有していれば、その形状と構成部材は随意に決めて良い。
図2は、荷重支持具の変形例を説明する図である。
図2(a)に示す荷重支持具2aは、ユーザの体重を支持する部位に加えて荷物を配置できる荷重配置部2a4を有している。
図2(b)に示す荷重支持具2aは、体重支持部2a1が省略されている。
再び
図1に戻って説明する。
<大腿係合部3aと下腿係合部3b1>
【0053】
大腿係合部3aは大腿リンク2b1の下端に形成された窪み、穴又は突起のいずれかを有している。
図1では大腿係合部3aは窪みになっている。下腿係合部3b1は、大腿係合部3aと係合できる形状で下腿リンク2b2の上端に形成された窪み又は穴又は突起を有している。
図1では下腿係合部3b1は突起になっている。大腿係合部3aの窪みは、大腿リンク2b1の長径方向と平行で、且つ、大腿リンク2b1と下腿リンク2b2の相対回転の回転面に対して垂直になる側面を有する。同様に、下腿係合部3b1の突起は、下腿リンク2b2の長径方向と平行で、且つ、大腿リンク2b1と下腿リンク2b2の相対回転の回転面に対して垂直になる側面を有する。大腿係合部3aの側面は下腿係合部3b1の側面より膝の後方に位置するように配置される。大腿係合部3aと下腿係合部3b1が係合している状態は、下腿係合部3b1の側面が大腿係合部3aの側面に下方から摺動しながら接近することによって当接している状態である。
<押しばね3b2>
【0054】
押しばね3b2の付勢力は、下腿係合部3b1の自重によるばねの縮みがゼロとなる位に十分に強く、また、下腿係合部3b1を素早く押し戻すのに十分なほど強く、更に、荷重支持部2に掛かると予想される力より十分に弱い力であるように設定される。
<係合部材3b>
【0055】
係合部材3bの下端、即ち接地センサ3b3の下端は、ユーザの脚の遊脚期に下腿リンク2b2の下端より一定距離だけ下方に停止しているように予め設定されている。この一定距離をh(
図3参照)とする。このとき係合部材3bの上端即ち下腿係合部3b1の上端の位置は、ある程度の範囲内で随意に決めることができる。以下では、ユーザの脚の遊脚期に大腿係合部3aの下端と下腿係合部3b1の上端が、接触寸前の位置に設定されているとして説明する。
<構成部材>
【0056】
荷重支持具2aのベルト部2a3と垂下部2a2と体重支持部2a1、大腿リンク2b1、下腿リンク2b2、大腿係合部3a、下腿係合部3b1及び接地センサ3b3は、ユーザの体重などに耐えられるだけの強度を持った部材、例えば金属、硬質プラスチックなどで形成される。
<具体的な仕組み>
以下、実施の形態の歩行補助装置1の仕組みについて、次の3つの場合に分けて説明する。
図3および
図4は、ユーザの脚が遊脚期にある場合を説明する図である。
図3は、ユーザの脚が遊脚期に伸展している場合を説明する図である。
【0057】
ユーザの脚が遊脚期にあって、膝が完全に伸展している場合は、係合部材3bの下端、すなわち接地センサ3b3の下端が下腿リンク2b2の下端(ユーザの足底の位置)より、一定距離hだけ下方に停止している。また、膝が完全に伸展している場合は、係合部材3bの上端、すなわち下腿係合部3b1の上端は大腿係合部3aの下端と接触寸前の位置にある。
図4は、ユーザの脚が遊脚期に屈曲している場合を説明する図である。
【0058】
ユーザの脚が遊脚期のときにユーザの膝が屈曲した場合には、大腿リンク2b1の下端は大腿リンク2b1と下腿リンク2b2の相対回転の回転軸の回りを時計まわり(
図4中、下向きの矢印)に回転し、係合部の上端すなわち下腿係合部3b1の上端は、大腿リンク2b1の下端と接触寸前のままの位置を保ちながら、大腿リンク2b1と下腿リンク2b2の相対回転の回転軸の回りを反時計まわり(
図4中、上向きの矢印)に回転することになる。
【0059】
すなわち、この場合は、下腿係合部3b1の突起の側面は、大腿リンク2b1の下端の窪みの側面と当接(係合)しないから、大腿リンク2b1と下腿リンク2b2の相対回転の運動を停止させる力が発生しない。
従って、この場合、回転規制部3は大腿リンク2b1と下腿リンク2b2の相対回転の運動を規制する(停止させる)ことはない。
図5および
図6は、ユーザの脚が立脚期にある場合を説明する図である。
図5は、ユーザが膝を完全に伸展した状態で立脚した場合を説明する図である。
【0060】
この場合、まず、接地センサ3b3の下端は、遊脚期の位置として予め設定されていた位置から上に移動して下腿リンク2b2の下端と同じ位置になる。このとき、押しばね3b2の付勢力は下腿係合部3b1の自重による押しばねの縮みがゼロとなる位に十分に強いから、係合部材3bは長さを変ずる(短縮する)ことなく、距離hだけ上に移動することになる。すると、下腿係合部3b1の上端、即ち突起の上端の側面も、大腿係合部3aの窪みの側面に沿って摺動しながら距離hだけ上に移動することになる。つまり、大腿係合部3aの窪みの側面と下腿係合部3b1の突起の側面とが距離hだけ当接することになる。
【0061】
従って、ユーザが膝を完全に伸展した状態で立脚している場合、立脚したまま膝を屈曲させようとしても、大腿係合部3aの窪みの側面が時計回りに回転する力(モーメント)は、下腿係合部3b1の突起の側面が反時計回りに回転する力(モーメント)による反作用を受ける。このため、大腿リンク2b1と下腿リンク2b2の相対回転の運動は停止する。
【0062】
なお、この場合、大腿係合部3aの窪みの深さ、すなわち、大腿係合部3aの側面の上下方向の長さは、係合部材3bの移動する距離hより僅かに短くても、長くても、同じでも構わない。もし、大腿係合部3aの窪みの深さが、距離hより僅かに短い場合は、下腿係合部3b1の突起の上端が、大腿係合部3aの窪みの底面に衝突して大腿係合部3aの窪みの底面からの反力を受ける。しかし、この反力は係合部材3bの押しばね3b2を短縮させる力に変換されるから、諸部材の変形や破損を生じることは無い。また、大腿係合部3aの窪みの深さが、距離hより長い場合、または同じ場合は、下腿係合部3b1の突起の上端が、大腿係合部3aの窪みの底面に衝突しないから、やはり諸部材の変形や破損を生じることは無い。
図6は、ユーザの脚が立脚期に屈曲している場合(ユーザが膝を完全には伸展していない状態で立脚した場合)を説明する図である。
【0063】
この場合も立脚期であるから、まず、接地センサ3b3の下端は、遊脚期の位置として予め設定されていた位置から上に距離hだけ移動して下腿リンク2b2の下端と同じ位置になる。しかし、下腿係合部3b1の突起の上端は、大腿リンク2b1の下端の窪み以外の部分に衝突することになり、大腿係合部3aの窪みの側面と下腿係合部3b1の突起の側面とが当接することはない。
【0064】
従って大腿係合部3aの窪みの側面が時計回りに回転する力(モーメント)は、下腿係合部3b1の突起の側面が反時計回りに回転する力(モーメント)による反作用を受けないため、大腿リンク2b1と下腿リンク2b2の相対回転の運動は規制されない(停止させられない)。すなわち、ユーザの膝の屈曲伸展の動作は妨げられない。また、下腿係合部3b1の突起の上端と大腿リンク2b1の下端の窪み以外の部分との衝突による大腿リンク2b1の下端からの反力は、押しばねを短縮させる力に変換されるから、この場合も、やはり諸部材の変形や破損を生じることは無い。
【0065】
以上説明したように、実施の形態の歩行補助装置1によれば、荷重を支持する荷重支持具2aと、ユーザの一方の脚の大腿に装着され、一端部が荷重支持具2aに揺動可能に連結され、他端部に大腿係合部3aを有する長尺状の大腿リンク2b1と、一端部が、前述した他端部に回動可能に連結される長尺状の下腿リンク2b2と、下腿リンク2b2に配置され、一端部が大腿係合部3aと係合可能な下腿係合部3b1を有する係合部材3bと、接地を検出する接地センサ3b3と、を備え、接地センサ3b3が接地を検出したときに、ユーザの膝が伸展している場合、大腿係合部3aと下腿係合部3b1が係合して大腿リンク2b1と下腿リンク2b2の相対回動を止め、ユーザの膝が伸展していない場合、大腿係合部3aと下腿係合部3b1が係合しないようにした。
これにより、杖のように体重の一部を支持できる荷重支持具2aを積極的に利用して下肢への荷重負担を軽減することができる。
【0066】
具体的には、歩行補助装置1は、できるだけ単純で、薄型で、軽量にするために、ユーザの歩行時及び立位の姿勢を維持するときに、ユーザの膝が完全に伸展した状態で立脚している時にのみ体重を支持することによって、下肢への荷重負担を軽減できる。
これにより、ユーザの歩行や日常生活の動作における膝の屈伸動作を妨げない形で実現される。
【0067】
前述したように、人体に装着して下肢への荷重負担を軽減する歩行補助装置においては、立脚期間中の膝が完全に伸展した状態を維持させるために、膝が完全に伸展した状態で立脚している時の膝の屈曲のみを抑制する技術の確立が重要である。この問題が解決されれば、少なくとも平地歩行においては、下肢への荷重負担を軽減することの大半が解決したことになる。それ以上に、膝が完全には伸展していない状態で立脚しているときの膝の屈曲をも規制する技術を追求すると、装置が複雑で大きく、重くなり、費用も嵩むことになる。
【0068】
従って、少なくとも平地歩行においては、膝が完全に伸展した状態で立脚している時の膝の屈曲のみを防止し、且つ、膝が完全には伸展していない状態で立脚している時の膝の屈曲を規制しない技術が実現すれば、下肢への荷重負担の軽減という課題の大半が解決したことになる。これは、脚に特別な機能障害を持たない人を使用対象とする歩行補助装置の開発において特に考慮されるべきことと思われる。
<構造の変更による変形例1>
【0069】
大腿リンク2b1と下腿リンク2b2を、ユーザの膝の内側と外側に分枝するように構成し、この構成に合わせて、回転規制部3をユーザの膝の内側と外側に設置する構成にしても良い。
<構造の変更による変形例2>
図示していないが、荷重支持具2aの垂下部をなくし、荷重支持具2aの坐骨相当部と大腿リンク2b1の上端を直接に連結する構成にしても良い。
<構成要素の追加による変形例3>
【0070】
重量物を担いながら膝を屈曲して行く時などにおいては、ユーザの足底を上げなくても膝を屈曲出来るように、手動で大腿係合部3aと下腿係合部3b1の係合状態を解除する係合解除装置をユーザの腰部などに備えさせても良い。
<構成要素の追加による変形例4>
【0071】
ユーザの膝が完全に伸展するときは、通常、大腿リンク2b1と下腿リンク2b2が一直線に並ぶようになるが、何らかの理由で、ユーザの膝がこれより幾らか屈曲した状態にしか伸展できない場合も想定される。
【0072】
しかし、次のような簡便な方法で本装置の構成を殆ど変えずに対処することができる。まず、大腿係合部3aの窪みの側面と同じ形状の薄い(例えば、0.6mm程度の)金属板を複数枚準備しておく。歩行補助装置1では、大腿係合部3aの窪みの側面は、第2の係合部の突起の先端の側面と接触する位置に配置されているが、本変形例では、大腿係合部3aの窪みの側面をこの位置より僅かにユーザの膝の後方にずらして形成しておく。このようにユーザの膝の後方に僅かにずらすことによって得られた空所に、その空所を満たすように前述した複数の金属板のうちの適当な枚数をはめ込む。このようにして形成された大腿係合部3aの窪みの側面は、やはり、下腿係合部3b1の突起の先端の側面と接触する位置に配置されていることになるから、膝が完全に伸展出来るユーザがこの装置を利用するときには、変更する前の装置と同様に機能する。
【0073】
一方、膝が完全には伸展出来ないユーザがこの装置を利用するときには、大腿係合部3aの窪みの側面にはめ込まれていた複数の金属板のうちの適当な枚数を取り除くことによって、その取り除いた金属板の厚さの分だけ、大腿係合部3aの突起の側面と下腿係合部3b1の突起の側面に隙間が出来る。この場合、両側面が接触する、すなわち、係合するのはユーザの膝が完全に伸展した状態でなく、幾らか屈曲した状態の時に初めて起こることになる。このようにすれば、大勢のユーザのそれぞれの膝の伸展度合いに応じた大腿係合部3aの側面を予め多数形成して置かなくても済むことになるという利点がある。
<変形例5>
図7は、実施の形態の歩行補助装置の装着形態を説明する図である。
図7(a)に示すように、歩行補助装置1の大部分が着用した衣類の外部に見えるように装着してもよい。
図7(b)に示すように、荷重支持具2aを着用した上からスラックスを履き、脚部2bの一部が衣類の外部に見えるように装着してもよい。
図7(c)に示すように、荷重支持具2aを着用した上からスラックスを履き、歩行補助装置1のほぼ全てが衣類の内部に配置されるように装着してもよい。
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態の歩行補助装置について説明する。
以下、第2の実施の形態の歩行補助装置について、前述した第1の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図8は、第2の実施形態の歩行補助装置をユーザが装着した場合の左側面の概要を説明する図である。
【0074】
第2の実施の形態の歩行補助装置1aは左右対称に作られている。以下では、
図8と
図9に基づいて歩行補助装置1aの左側についてのみ説明する。右側も同様の構成をなしている。
図8では、左側の脚部は遊脚期の状態、右側の脚部は立脚期の状態を示す。
【0075】
歩行補助装置1aは、荷重支持部6と回転規制部7とを有している。荷重支持部6は、主に坐骨部でユ−ザの体重を支持する体重支持部を有する荷重支持具6aと、荷重支持具に掛かる荷重を支持する脚部6bとを有している。荷重支持具6aの垂下部6a1と脚部6bの上端は、ユーザの腰の前屈方向には揺動可能に接続されている。また、垂下部6a1と脚部6bの上端は、ユーザの腰の後屈方向には揺動不可能に連結されている。
【0076】
脚部6bは、ユーザの大腿に配置される大腿リンク6b1とユーザの下腿に配置される下腿リンク6b2とを有している。大腿リンク6b1と下腿リンク6b2は、大腿リンク6b1の下端と下腿リンク6b2の上端に形成された連通孔に挿通される回転軸6b3によって、ユーザの膝の屈伸に同期して揺動できるように連結されている。
図9は、第2の実施の形態の回転規制部を説明する図である。
【0077】
回転規制部7は、上端が大腿リンク6b1の中央付近の位置に揺動可能に連結され、下端が下腿リンク6b2に摺動可能に連結される係合部材7aと、下腿リンク6b2に配置される係合部7bとを有している。
【0078】
係合部材7aは、ユーザの体重などの一部を支持できるだけの強度を持った棒状部材7a1を有している。係合部材7aの下端は、ユーザの膝の後方に向かって突出するように形成された第1突起7a2と、棒状部材7a1の両側に突出する形で、大腿リンク6b1と下腿リンク6b2の回転軸の軸方向に平行になるように形成された第2突起7a3を有する。
第1突起7a2と第2突起7a3によって形成される間隙が係合部7a4を形成している。
【0079】
棒状部材7a1の幅は、下腿リンク6b2において下腿リンク6b2の長手方向に平行に形成された2本の棒状部材6b5、6b6により形成される溝部6b7の幅とほぼ等しくなっている。
【0080】
また、第2突起7a3の両端部は、棒状部材6b5、6b6それぞれに設けられた凹部(
図9では凹部6b61のみを引出線で表記している)に嵌合している。このため、第2突起7a3は、凹部6b61内を
図9中、上下方向に摺動できるようになっている。
これにより、棒状部材7a1は、溝部6b7に沿って下腿リンク6b2を
図9中、上下方向に摺動できるようになっている。
係合部7a4は、ユーザの膝の完全伸展時に係合部7bの下端と同じ高さになる位置に配置される。
【0081】
係合部7bは、係合部7a4の下端と係合可能な形状で、係合部7a4に係合する位置と、係合部7aに係合しないで待機している位置との間を移動可能な第3突起7b1を有する。
第3突起7b1は、下腿リンク6b2に固定されている固定部6b8の開口部に挿通されることによって、
図9中、左右方向に移動可能に配置されている。
<板ばね8>
【0082】
板ばね8の上端は、第3突起7b1の左端に接するように配置される。板ばね8の下端は、接地センサ6b4の上端と接するように配置される。板ばね8は、大腿リンク6b1と下腿リンク6b2の相対回転の回転面に直交する面上を僅かに回転できるように、板ばね8の下部の適当な一点を回転中心とする回転軸8aによって下腿リンク6b2に連結されている。
【0083】
ユーザの脚の立脚期には、接地センサ6b4が上方に移動することにより、第3突起7b1の左端部に配置された板ばね8の先端が第3突起7b1を右側に押圧する。これにより、第3突起7b1が、係合部7a4に摺動しながら進入する。これによって、係合部7bは、係合部7a4と係合する。
【0084】
第3突起7b1は、板ばね8を介して接地センサ6b4に連結されている。このため、第3突起7b1が係合部7a4と衝突しても、第1突起7a2の側面から受ける反力が、板ばね8を弾性変形させることにより、第3突起7b1は元の位置へ押し戻されることになる。
【0085】
なお、本実施の形態では、溝部6b7によって、棒状部材7a1を挟み込むようにした。しかし、これに限らず、例えば、棒状部材6b5、6b6の代わりに1本のレール状の部材を配置し、係合部7a4の下端の第2突起7a3を、このレール状の部材を両側から挟む形のカギ状の部材に変えても良い。
<構成部材>
【0086】
荷重支持具6aのベルト部と垂下部6a1と体重支持部6、大腿リンク6b1、下腿リンク6b2、係合部7a4、係合部材7aの第1突起7a2、第2突起7a3、係合部7b、第3突起7b1、および接地センサ6b4は、ユーザの体重などによる荷重に耐えられるだけの強度を持った部材、例えば金属、硬質プラスチックなどで形成される。
第2の実施の形態の歩行補助装置1aの具体的な仕組みについて、次の3つの場合に分けて説明する。
(1)ユーザの脚が遊脚期にある場合(
図9参照)
図9は、ユーザの脚が遊脚期で、ユーザの膝が完全に伸展している場合の回転規制部7の様子を示している。
【0087】
まず、ユーザの膝が完全に伸展しているときの第1突起7a2の下面と第3突起7b1の上面の高さは同じになるように設定されており、また、第1突起7a2と第3突起7b1は接触寸前の位置に配置されている。ユーザの脚の遊脚期には、ユーザの膝が伸展していても、屈曲していても、接地センサ6b4が板ばね8を押し上げないので、板ばね8の先端は第3突起7b1の方に向かって押し出されず、従って第3突起7b1は移動を開始しない。このため、ユーザの脚が遊脚期にある場合は係合部7a4と、係合部7bは係合しない。このため、係合部材7aの棒状部材7a1は上方へも下方へも移動できる。すなわち、ユーザの脚が遊脚期にある場合は、回転規制部7は大腿リンク6b1と下腿リンク6b2の相対回転の運動を規制する(停止させる)ことはない。
(2)ユーザが膝を完全に伸展した状態で立脚した場合
【0088】
まず、ユーザが膝を完全に伸展した状態では、ユーザの脚が立脚期でも遊脚期でも、第2突起7b1の位置(高さ)は変わらない。そこで、
図9を参照して説明する。ユーザが膝を完全に伸展した状態で立脚した場合は、接地センサ6b4が上方に押し上げられて、板ばね8の下端を押し上げる。その結果、板ばね8の先端は、板ばね8の回転軸を回転の中心として紙面上、僅かに時計回りに回転する。これにより、第3突起7b1が係合部7a4の方へ向かって移動し、その結果、第3突起7b1と係合部7a4が係合する。従って、棒状部材7a1の下方への移動が規制される。すなわち、ユーザが膝を完全に伸展した状態で立脚した場合、回転規制部7は大腿リンク6b1と下腿リンク6b2の相対回転の運動を規制する(停止させる)。
(3)ユーザが膝を完全には伸展していない状態で立脚した場合
【0089】
まず、ユーザが膝を完全には伸展していない場合は、係合部7a4の下端の位置(高さ)は、係合部7bの位置(高さ)より低くなる(そのように予め構成されている)。従って当然、係合部7a4と第3突起7b1とは係合しない。但し、ユーザの膝の屈曲角度が小さい場合には、第3突起7b1が第1突起7a2の側面と衝突することがある。しかし、この場合には、第3突起7b1が第1突起7a2の側面から受ける反力は、板ばね8を弾性変形させる力に変換されるから、諸部材の変形や破損は生じない。また、棒状部材7a1は上方へも下方へも移動できる。すなわち、ユーザが膝を完全には伸展していない状態で立脚した場合、回転規制部7は大腿リンク6b1と下腿リンク6b2の相対回転の運動を規制する(停止させる)ことはない。
第2の実施の形態の歩行補助装置1aによれば、第1の実施の形態の歩行補助装置1と同様の効果が得られる。
<第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態の歩行補助装置について説明する。
【0090】
以下、第3の実施の形態の歩行補助装置について、前述した第1の実施の形態および第2の実施の形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第3の実施の形態の歩行補助装置1bは、大腿係合部と下腿係合部の形状及び係合部の構造が第1の実施の形態および第2の実施の形態と異なっている。
図10は、第3の実施の形態の歩行補助装置を説明する図である。
【0091】
第2の実施の形態の歩行補助装置1aでは、係合部7a4に第3突起7b1が直線的に進入して係合する方法を採っているが、第3の実施の形態の歩行補助装置1bは、凹部に凸部が嵌合することにより係合する。
第3の実施の形態の大腿リンク9は、凹型の窪みを有する係合部9aを備えている。
大腿リンク9と下腿リンク10とは、回転軸9bにより回動可能に接続されている。
【0092】
また、下腿リンク10には、板ばね11が取り付けられている。この板ばね11は、回転軸10aにより支持されている。回転軸10aは、下腿リンク10が有する固定部材10bに一部が突入されている。板ばね11は、回転軸10aを軸として時計回りおよび反時計回りに回動可能となっている。
この板ばね11は、係合部9aに係合できる形状の凸型の突起を有する係合部11aを備えている。
板ばね11は、固定部材10bに取り付けられた引きばね12により、反時計回り方向に付勢されている。
板ばね11の下端部には、接地センサ6b4が配置されている。接地センサ6b4の上昇に伴い、板ばね11は、回転軸10aを軸として時計回りに回動する。
また、下腿リンク10には、係合部11aの突起を押さえる突起押さえ10cが設けられている。
【0093】
突起押さえ10cは、係合部9aと係合部11aとが係合している状態で、膝の屈曲により大腿リンク9が時計回りに回転しようとするとき、係合部11aが反時計まわりに回転することになる。そこで、膝の屈曲を押さえるためには、係合部11aが反時計まわりに回転するのを抑制すれば良い。突起押さえ10cは、この係合部11aの反時計まわりの回転を抑制する働きを有している。
【0094】
なお、図示していないが、凹凸の組み合わせは逆になっていても良い。すなわち、係合部9aが凸型の突起を有し、係合部11aは、係合部9aの突起に係合できる凹部を有していてもよい。
【0095】
なお、係合部9aも係合部11aも共に凸型の突起であってもよい。この場合は、係合部9aの突起が係合部11aの突起よりユーザの膝の後方に位置するように配置する。
【0096】
以下では、
図10に示すように係合部9aを凹型の窪みに、係合部11aを凸型の突起に形成した場合について説明する。凹型の窪みの側面は丸みを帯びないで底面に対し垂直になるように形成する。底面の形状は円形を除く任意の形で良く、複雑な形でも良い。係合部11aの形状は、係合部9aの形状と基本的に同じである。多少違っても、係合部11aの突起が係合部9aの凹型の窪みにぴったり嵌まりこむことができ、それによって両者が係合可能なように構成されていれば十分である。係合部11aの凸型の突起の前方部分は後方部分よりも下腿リンク10の表面から離れた、僅かに高い位置になるように配置する。すなわち、突起の先端部分が、突起の両側面の一定の部分を回転軸として、大腿リンク9と下腿リンク10の相対回転の回転面に直交する面上を僅かに回転可能となるように、係合部11aの突起の両側面の一定の部分を下腿リンク10に回動可能に連結する。
【0097】
さらに、係合部11aの突起の先端は、遊脚期に係合部9aの凹型の窪みの上面より僅かに上にあるように配置しておき、接地センサ6b4が接地を検出すると、これが直線的に移動するのでなく、大腿リンク9と下腿リンク10の相対回転の回転面に対し垂直な面上を僅かに回転して係合部9aの凹型の窪みに接近し、進入するように形成されている。
【0098】
これにより、ユーザの脚が立脚期で、膝が屈曲している場合、膝の屈曲角度が僅かでも、または大きくても、係合部9aの窪みの底面の形状が円形でない限り、係合部9aの窪みに係合部11aの突起の先端がぴったりとは嵌まらないことになる、すなわち、嵌合しないことになる。しかもその場合、係合部11aの突起が板ばねの弾性変形により押し戻されることが可能である。
この歩行補助装置1bによっても歩行補助装置1aと同様の効果が得られる。
【0099】
以上、本発明の歩行補助装置を、図示の実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や工程が付加されていてもよい。
また、本発明は、前述した各実施の形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【解決手段】荷重を支持する荷重支持具2aと、ユーザの一方の脚の大腿に装着され、一端部が荷重支持具2aに揺動可能に連結され、他端部に大腿係合部3aを有する長尺状の大腿リンク2b1と、一端部が、前述した他端部に回動可能に連結される長尺状の下腿リンク2b2と、下腿リンク2b2に配置され、一端部が大腿係合部3aと係合可能な下腿係合部3b1を有する係合部材3bと、接地を検出する接地センサ3b3と、を備え、接地センサ3b3が接地を検出したときに、ユーザの膝が伸展している場合、大腿係合部3aと下腿係合部3b1が係合して大腿リンク2b1と下腿リンク2b2の相対回動を止め、ユーザの膝が伸展していない場合、大腿係合部3aと下腿係合部3b1が係合しないようにした。