(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術によれば、道路上に車両計測器を設置する必要があり、パーソントリップ調査のように全体的に大まかな移動量を推定するものではない。特に、自動車やバス以外の交通機関に対しては、移動量を計測することができない。
一方で、特許文献2及び3に記載の技術によれば、連続した滞在地間のODに基づく移動量を算出することができる。
【0007】
これ対し、本願の発明者らは、滞在地間の人の流れによって、交通機関の必要性を検討することができるのではないか?と考えた。特に、ユーザの移動によって時系列に連続遷移せず(直接的な繋がりがない)、且つ、潜在的移動量が多い滞在地間ほど、交通機関を検討する必要性があると思われる。即ち、滞在地間に対する新たな経路を構築し、全体的な人の移動量をオフロードすることを検討することができる。
【0008】
そこで、本発明は、複数の携帯端末の時系列の位置情報に基づいて、滞在地間を行き来する双方向交通機関の必要性を推定するプログラム、装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、複数の携帯端末の時系列の位置情報に基づいて、滞在地間を行き来する双方向交通機関の必要性を推定するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
移動速度範囲を設定した移動速度範囲設定手段と、
携帯端末毎に、第1の滞在地と第2の滞在地との間の移動速度及び進行方向を算出する移動速度算出手段と、
移動速度範囲に含まれる移動速度の携帯端末を選択し、第1の滞在地から第2の滞在地へ進行する第1の進行方向端末数と、第2の滞在地から第1の滞在地への進行する第2の進行方向端末数とを計数する端末数計数手段と、
当該滞在地間について、第1の進行方向端末数と第2の進行方向端末数との比が、所定範囲内となる場合、双方向交通機関の必要性が高いと推定する双方向交通機関推定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0010】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
移動速度範囲設定手段は、第1の滞在地と第2の滞在地との間を移動する移動体毎に移動速度範囲を設定しており、
端末数計数手段は、移動体毎に、当該移動速度範囲に含まれる移動速度の携帯端末の全端末数を計数し、第1の進行方向端末数及び第2の進行方向端末数を計数する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0011】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
移動速度範囲設定手段は、第1の滞在地と第2の滞在地との間を移動する移動体毎に移動速度範囲を設定しており、
端末数計数手段は、
移動体毎に、当該移動速度範囲に含まれる移動速度の携帯端末を選択し、
移動体毎に、選択された複数の携帯端末の時系列の位置情報から、第1の滞在地と第2の滞在地との間の近似の移動軌跡を生成し、
第1の滞在地と第2の滞在地とを結ぶ最短線分に最も近い移動軌跡の移動体を選択し、
選択された移動体について、第1の進行方向端末数及び第2の進行方向端末数を計数する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0012】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
携帯端末毎に、時系列の位置情報から滞在状態を判定し、該滞在状態の位置情報を滞在地として推定する滞在地推定手段と、
携帯端末毎に、所定滞在地間を移動した移動軌跡上の滞在地の群を、1つのセッションとして区分する滞在地群区分手段と、
携帯端末毎に、同一セッションで生じた全ての組み合わせの滞在地ペアを抽出する滞在地ペア抽出手段と、
滞在地ペア毎に、全ての携帯端末のセッションにおける滞在地ペア又は滞在地の出現回数に基づく共起度を付与する共起度付与手段と、
共起度が所定閾値以上となる滞在地ペアのみを選択する第1の滞在地ペア選択手段と、
時系列に連続遷移しない滞在地ペアのみを選択する第2の滞在地ペア選択手段と
してコンピュータを更に機能させ、
第2の滞在地ペア選択手段によって選択された潜在的移動量が多い滞在地間を行き来する双方向交通機関の必要性を推定する
ことも好ましい。
【0013】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
共起度付与手段は、
携帯端末毎、同一セッションで出現した滞在地ペアに、出現回数=1とし、
全ての携帯端末ΣUのセッションにおける滞在地ペアの出現回数の総和を、共起度として付与する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0014】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
共起度付与手段は、
全ての携帯端末ΣUのセッションにおける、第1の滞在地の出現回数と第2の滞在地の出現回数との乗算に基づく数値を、共起度として付与する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0015】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
滞在地推定手段は、時系列の位置情報における所定時間以上の滞留を抽出し、当該滞留の位置を滞在地と推定する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0016】
本発明によれば、複数の携帯端末の時系列の位置情報に基づいて、滞在地間を行き来する双方向交通機関の必要性を推定する装置であって、
移動速度範囲を設定した移動速度範囲設定手段と、
携帯端末毎に、第1の滞在地と第2の滞在地との間の移動速度及び進行方向を算出する移動速度算出手段と、
移動速度範囲に含まれる移動速度の携帯端末を選択し、第1の滞在地から第2の滞在地へ進行する第1の進行方向端末数と、第2の滞在地から第1の滞在地への進行する第2の進行方向端末数とを計数する端末数計数手段と、
当該滞在地間について、第1の進行方向端末数と第2の進行方向端末数との比が、所定範囲内となる場合、双方向交通機関の必要性が高いと推定する双方向交通機関推定手段と
を有することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、複数の携帯端末の時系列の位置情報に基づいて、滞在地間を行き来する双方向交通機関の必要性を推定する装置の推定方法であって、
装置は、
移動速度範囲を設定しており、
携帯端末毎に、第1の滞在地と第2の滞在地との間の移動速度及び進行方向を算出する第1のステップと、
移動速度範囲に含まれる移動速度の携帯端末を選択し、第1の滞在地から第2の滞在地へ進行する第1の進行方向端末数と、第2の滞在地から第1の滞在地への進行する第2の進行方向端末数とを計数する第2のステップと、
当該滞在地間について、第1の進行方向端末数と第2の進行方向端末数との比が、所定範囲内となる場合、双方向交通機関の必要性が高いと推定する第3のステップと
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のプログラム、装置及び方法によれば、複数の携帯端末の時系列の位置情報に基づいて、滞在地間を行き来する双方向交通機関の必要性を推定することができる。特に、潜在的移動量が多いであろう滞在地間に、全体的な人の移動量をオフロードすることができる双方向交通機関(例えばバス、レンタル自転車、レンタカー)の設置を検討することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明における推定装置の機能構成図である。
【0022】
本発明の推定装置1は、複数の携帯端末の時系列の位置情報に基づいて、滞在地間を行き来する双方向交通機関の必要性を推定することができる。
スマートフォンやタブレットのような携帯端末2は、ユーザに常に所持されており、位置情報を逐次に推定装置1へ送信する。位置情報は、例えば携帯端末2に搭載されたGPS(Global Positioning System)によって測位された緯度経度であってもよい。
【0023】
図1によれば、推定装置1は、滞在地間決定部10と、移動速度算出部11と、移動速度範囲設定部120と、端末数計数部12と、双方向交通機関推定部13とを有する。これら機能構成部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、装置の推定方法としても理解できる。
【0024】
[滞在地間決定部10]
滞在地間決定部10は、複数の携帯端末の時系列の位置情報に基づいて、滞在地を決定する。推定した滞在地は、端末数計数部12へ出力される。
最も簡単には、時系列の位置情報における所定時間(例えば30分)以上の滞留を抽出し、当該滞留の位置を滞在地と推定する。
また、後述する
図5〜
図15によれば、滞在地間決定部10は、人の移動としては連続遷移していないが、潜在的移動量が多いであろう滞在地間を推定することができる。そのような、滞在地間に双方向交通機関を設置するこができれば、全体的な人の移動量をオフロードすることができる。
【0025】
[移動速度算出部11]
移動速度算出部11は、携帯端末毎に、第1の滞在地と第2の滞在地との間の「移動速度」及び「進行方向」を算出する。
「移動速度」は、少なくとも2つの位置情報及び測位時刻から、位置情報間の距離を、測位時刻間の時間で除算することによって算出できる。
「進行方向」は、第1の滞在地から第2の滞在地へ向かう第1の進行方向か、又は、第2の滞在地から第1の滞在地へ向かう第2の進行方向かのいずれかである。
携帯端末毎の移動速度及び進行方向は、端末数計数部12へ出力される。
【0026】
[移動速度範囲設定部120]
移動速度範囲設定部120は、移動速度範囲を設定する。この移動速度範囲で進行している携帯端末のみを対象とすることができる。
移動速度範囲は、1つでもよいが、第1の滞在地と第2の滞在地との間を移動する移動体毎に移動速度範囲を設定したものであってもよい。移動体とは、例えばバス、自転車、車のように、携帯端末を所持したユーザを搭乗させる乗り物であってもよいし、勿論、徒歩であってもよい。移動速度によって、いずれの移動体で移動している携帯端末のみを対象とすることができる。
【0027】
例えば以下のように、移動体に応じて複数の移動速度範囲を設定することもできる。
移動速度範囲1 2km/h〜 5km/h(徒歩を想定)
移動速度範囲2 5km/h〜15km/h(自転車を想定)
移動速度範囲3 15km/h〜30km/h(バスを想定)
移動速度範囲4 30km/h〜50km/h(自動車を想定)
移動速度範囲5 50km/h〜70km/h(電車を想定)
【0028】
[端末数計数部12]
端末数計数部12は、移動速度範囲に含まれる移動速度の携帯端末を選択し、第1の滞在地から第2の滞在地へ進行する第1の進行方向端末数と、第2の滞在地から第1の滞在地への進行する第2の進行方向端末数とを計数する。
【0029】
図2は、携帯端末毎の移動速度及び進行方向を表す第1の説明図である。
【0030】
図2(a)は、各携帯端末の移動速度(移動中の速度の中央値)が、移動速度範囲設定部120に設定された移動速度範囲内か否かを表している。ここでは、ID1〜ID13の全ての携帯端末が、移動速度範囲に含まれているとする。尚、
図2〜
図4について、丸印で囲まれた数字は、端末のIDを示す。
図2(b)は、各携帯端末の進行方向を表す第1の例である。ここでは、滞在地Aから滞在地Bへ向かう第1の進行方向端末数は「8」であり、滞在地Bから滞在地Aへ向かう第2の進行方向端末数は「2」である。
図2(c)は、各携帯端末の進行方向を表す第2の例である。ここでは、滞在地Aから滞在地Bへ向かう第1の進行方向端末数は「5」であり、滞在地Bから滞在地Aへ向かう第2の進行方向端末数は「5」である。
【0031】
図3は、携帯端末毎の移動速度及び進行方向を表す第2の説明図である。
【0032】
図3(a)も、各携帯端末の移動速度が、移動速度範囲設定部120に設定された移動速度範囲内か否かを表している。ここでは、ID1,4,5,8,9の携帯端末のみが、移動速度範囲に含まれているとする。
図3(b)は、各携帯端末の進行方向を表す第1の例である。ここでは、滞在地Aから滞在地Bへ向かう第1の進行方向端末数は「4」であり、滞在地Bから滞在地Aへ向かう第2の進行方向端末数は「1」である。
図3(c)は、各携帯端末の進行方向を表す第2の例である。ここでは、滞在地Aから滞在地Bへ向かう第1の進行方向端末数は「2」であり、滞在地Bから滞在地Aへ向かう第2の進行方向端末数は「3」である。
【0033】
<最大端末数>
端末数計数部12は、移動体毎に、当該移動速度範囲に含まれる移動速度の携帯端末の全端末数を計数する。例えば以下のように、全端末数を計数する。
移動速度範囲1(移動体:「徒歩」を想定) :150
移動速度範囲2(移動体:「自転車」を想定):230
移動速度範囲3(移動体:「バス」を想定) :870
移動速度範囲4(移動体:「自動車」を想定):320
移動速度範囲5(移動体:「電車」を想定) :0
そして、全端末数が最も多い移動体「バス」について第1の進行方向端末数及び第2の進行方向端末数を計数する。
移動速度範囲3(移動体:「バス」を想定) :870
第1の進行方向:420
第2の進行方向:450
【0034】
<最短の移動軌跡の端末数>
端末数計数部12は、以下のS1〜S4によって、第1の進行方向端末数及び第2の進行方向端末数を計数する。
(S1)移動体毎に、当該移動速度範囲に含まれる移動速度の携帯端末を選択する。
移動速度範囲1(移動体:「徒歩」を想定) :150
移動速度範囲2(移動体:「自転車」を想定):230
移動速度範囲3(移動体:「バス」を想定) :870
移動速度範囲4(移動体:「自動車」を想定):320
移動速度範囲5(移動体:「電車」を想定) :0
【0035】
(S2)次に、移動体毎に、選択された複数の携帯端末の時系列の位置情報から、第1の滞在地と第2の滞在地との間の近似の移動軌跡を生成する。
最も簡単には、当該移動体の移動速度範囲に属する全ての携帯端末2について、移動軌跡の位置情報をプロットし、近似の移動軌跡を生成する。これによって、移動体毎に、近似の移動軌跡が生成される。
また、同一の移動体であっても、例えばクラスタリングによって、複数の位置情報の群に区分することで、その群毎に、複数の移動軌跡を抽出することもできる。
【0036】
図4は、携帯端末毎の移動速度及び進行方向を表す第3の説明図である。
図4(a)は、
図2と同様に、ID1〜ID13の全ての携帯端末が、移動速度範に含まれているとする。
図4(b)(c)は、位置情報ID1〜13から、近似の2つの移動軌跡が抽出されている。
【0037】
(S3)次に、第1の滞在地と第2の滞在地とを結ぶ最短線分に最も近い移動軌跡の移動体を選択する。
図4(b)(c)によれば、第1の滞在地と第2の滞在地とを結ぶ破線(最短線分)に最も近い移動軌跡yが選択される。
移動軌跡は、例えば位置情報のクラスタリング結果に対し、同一クラスタと推定された軌跡の緯度経度の移動平均近似曲線であってもよい。
そして、例えば最短線分に対する直角方向について、最短線分と移動軌跡との間の最も長い距離を抽出し、その距離が最も短い移動軌跡を選択することができる。
【0038】
(S4)そして、選択された移動体について、第1の進行方向端末数及び第2の進行方向端末数を計数する。
図4(b)(c)によれば、移動軌跡yの近傍の携帯端末について、第1の進行方向端末数及び第2の進行方向端末数が計数されている。
【0039】
[双方向交通機関推定部13]
双方向交通機関推定部13は、当該滞在地間について、第1の進行方向端末数と第2の進行方向端末数との比が、所定範囲内となる場合、双方向交通機関の必要性が高いと推定する。
【0040】
図2(b)によれば、第1の進行方向端末数と第2の進行方向端末数との比が「8:2」であり、
図2(c)と比較して、双方向交通機関の必要性は低いといえる。
図2(c)によれば、第1の進行方向端末数と第2の進行方向端末数との比が「5:5」であり、
図2(b)と比較して、双方向交通機関の必要性は高いといえる。
【0041】
図3(b)によれば、第1の進行方向端末数と第2の進行方向端末数との比が「4:1」であり、
図3(c)と比較して、双方向交通機関の必要性は低いといえる。
図3(c)によれば、第1の進行方向端末数と第2の進行方向端末数との比が「2:3」であり、
図3(b)と比較して、双方向交通機関の必要性は高いといえる。
【0042】
図4(b)(c)によれば、第1の進行方向端末数と第2の進行方向端末数との比が「2:1」であり、双方向交通機関の必要性を検討することもできる。
【0043】
図5は、本発明における滞在地間決定部の詳細機能構成図である。
【0044】
図5によれば、滞在地間決定部10は、滞在地推定部101と、滞在地群区分部102と、滞在地ペア抽出部103と、共起度付与部104と、第1の滞在地ペア選択部105と、第2の滞在地ペア選択部106とを有する。
【0045】
[滞在地推定部101]
滞在地推定部101は、携帯端末2によって測位された時系列の位置情報を収集する。位置情報は、携帯端末2から直接的に受信するものであってもよいし、特定の位置情報サーバから取得するものであってもよい。
【0046】
次に、滞在地推定部101は、携帯端末毎に、時系列の位置情報から滞在状態を判定し、その滞在状態の位置情報を「滞在地」として推定する。
具体的には、滞在地推定部101は、時系列の位置情報における所定時間(例えば30分)以上の滞留を抽出し、当該滞留の位置を「滞在地」と推定する。滞在地毎に、滞在地ID(IDentifier)が付与される。
【0047】
他の実施形態として、滞在地推定部101は、携帯端末毎に、滞留する時間帯から「自宅」を推定するものであってもよい。高層マンションの場合、自宅であっても、多数の携帯端末が滞在地として集中する場合がある。自宅を推定するために、例えば以下の2つの方法があるが、その他の既存技術を用いてもよい。
【0048】
(住所周辺の位置情報に基づく自宅推定)
滞在地推定部101は、携帯端末を所持したユーザの住所を予め登録しておき、その住所を中心とする所定半径に含まれる位置情報を、「自宅」と推定する。
(滞留時間帯の傾向に基づく自宅推定)
滞在地推定部101は、携帯端末を所持するユーザの滞留する時間帯の傾向から、自宅か否かを推定する。
例えば、時系列の位置情報について、「例えば半径100mの地域範囲に連続して6時間以上」している場合、その地域範囲を「自宅」と推定することができる。また、「その滞留している日が、1週間で6日以上続く」とする条件を更に加えて、その地域範囲を「自宅」と推定することも好ましい。
【0049】
[滞在地群区分部102]
滞在地群区分部102は、携帯端末毎に、所定滞在地間を移動した移動軌跡上の滞在地の群を、1つのセッションSとして区分する。
【0050】
図6、
図7及び
図8は、ユーザU1、U2及びU3における1セッションの滞在地遷移を表す説明図である。
【0051】
「セッション」とは、携帯端末毎に、所定条件に基づく滞在地の群に区分したものである。
例えば、携帯端末毎に、自宅と推定された滞在地から出発して到達するまで(自宅から出発し自宅に戻るまで)の滞在地の群を、1つのセッションSとして区分するものであってもよい。セッションSnは、ユーザUk毎に独立に存在するものである。勿論、自宅の滞在地に限らず、始点と終点とを予め設定し、その間の滞在地遷移を1つのセッションとしたものであってもよい。
また、他の実施形態として、A駅とB駅との間を、セッションとして設定するものであってもよい。これによって、A駅とB駅との間で、潜在的移動量の高い、連続しない滞在地間を推定することができる。
【0052】
図6によれば、1セッションにおけるユーザU1の滞在地が表されている。
滞在地の連続遷移 :A->B->C->D->E->A
1セッションの滞在地:A,B,C,D,E
図7によれば、1セッションにおけるユーザU2の滞在地が表されている。
滞在地の連続遷移 :G->B->C->D->E->I->E->I->E->D->C->B->G
1セッションの滞在地:B,C,D,E,I,G
図8によれば、1セッションにおけるユーザU3の滞在地が表されている。
滞在地の連続遷移 :J->E->I->E->D->F->D->C->D->E->J
1セッションの滞在地:C,D,E,F,I,J
【0053】
[滞在地ペア抽出部103]
滞在地ペア抽出部103は、携帯端末毎に、同一セッションで生じた全ての組み合わせの滞在地ペアを抽出する。
図6、
図7,
図8には、ユーザU1,U2,U3それぞれの滞在地ペアが表されている。
【0054】
図9は、ユーザUk毎の全ての滞在地ペアの組み合わせを表す説明図である。
図9によれば、ユーザU1における1つのセッションSnについては10個の滞在地ペアが抽出され、ユーザU2及びU3それぞれにおける1つのセッションSnについては15個の滞在地ペアが抽出される。
【0055】
[共起度付与部104]
共起度付与部104は、滞在地ペア毎に、全ての携帯端末ΣUのセッションSにおける「滞在地ペア」又は「滞在地」の出現回数に基づく共起度を付与する。具体的には、以下の2つの方法がある。
<滞在地ペアの出現回数の総和に基づく共起度>
<滞在地の出現回数の総和に基づく共起度>
【0056】
<滞在地ペアの出現回数の総和に基づく共起度>
携帯端末毎、同一セッションSnで出現した滞在地ペアに、出現回数=1とする。即ち、同一セッションSnで出現した滞在地ペアi-jが、同一セッションSnで何回出現しても、出現回数=1とカウントする。具体的には、ユーザUkにおける第1の滞在地iと第2の滞在地jとの間の共起度を以下のように表す。
pair(i,j,Uk,Sn)=1
そして、全ての携帯端末ΣUの全てのセッションΣSにおける滞在地ペアの出現回数の総和を、共起度として付与する。
pair(i,j)=Σ
UkΣ
Snpair(i,j,Uk,Sn)
【0057】
図10は、滞在地ペアの出現回数の総和に基づく共起度を表す説明図である。
図10によれば、左側にユーザ毎の滞在地ペアを縦列に並べ、右側に滞在地ペア毎の出現回数の総和を共起度として表している。
【0058】
<滞在地の出現回数の総和に基づく共起度>
全ての携帯端末ΣUのセッションにおける、第1の滞在地の出現回数と第2の滞在地の出現回数との乗算に基づく数値を、共起度として付与する。具体的には、以下のように表される。
pair(i,j)=√(N(i)×N(j))
N(i):全ての携帯端末ΣUの全てのセッションΣSにおける滞在地iの出現回数
N(j):全ての携帯端末ΣUの全てのセッションΣSにおける滞在地jの出現回数
【0059】
図11は、滞在地の出現回数の総和に基づく共起度を表す説明図である。
図11によれば、左側にユーザ毎の滞在地の出現回数を縦列に並べ、右側に滞在地毎の出現回数及び共起度を表している。例えば滞在地N(B)=3は、全ての携帯端末ΣUの全てのセッションΣSにおける滞在地Bの出現回数が3回であることを表す。
【0060】
[第1の滞在地ペア選択部105]
第1の滞在地ペア選択部105は、共起度が所定閾値以上となる滞在地ペアのみを選択する。ここでは、顕在的移動量に注目しており、共起度が小さい滞在地ペアは、そもそも移動量自体が少ないためである。
【0061】
図12は、連続遷移する全ての滞在地ペアに、
図10の共起度を付与したトポロジ図である。
図12によれば、共起度が所定閾値2以上となる滞在地ペアのみが選択されている。ここでは、以下の滞在地ペアのみが抽出される。
B−C−D−E−I
【0062】
図13は、連続遷移する全ての滞在地ペアに、
図11の共起度を付与したトポロジ図である。
図13によれば、共起度が所定閾値4以上となる滞在地ペアのみが選択されている。ここでは、以下の滞在地ペアのみが抽出される。
C−D−E−I
【0063】
[第2の滞在地ペア選択部106]
第2の滞在地ペア選択部106は、時系列に連続遷移しない滞在地ペアのみを選択する。滞在地が連続遷移するか否かは、滞在地推定部101によって推定された滞在地の時系列によって判定することできる。選択された滞在地ペアは、端末数推定部12へ出力され、双方向交通機関の必要性が推定される。
【0064】
図14は、
図12に基づいて連続遷移しない全ての滞在地ペアに、
図10の共起度を付与したトポロジ図である。
図14によれば、
図12における、共起度が所定閾値2以上となり、且つ、連続遷移する滞在地ペアの滞在地について、連続遷移しない全ての滞在地ペアが表されている。実際に時系列に連続遷移する滞在地ペアは、そもそも潜在的なものではないためである。
ここでは、滞在地ペアC−Eの共起度が最も高い。即ち、
図6〜
図10及び
図12に基づく実施形態によれば、滞在地間C−Eの潜在的移動量が最も高いことが理解できる。例えば滞在地間C−Eに、人の移動をオフロードするための迂回経路を検討することができる。
【0065】
図15は、
図13に基づいて連続遷移しない全ての滞在地ペアに、
図11の共起度を付与したトポロジ図である。
図15によれば、
図13における、共起度が所定閾値4以上となり、且つ、連続遷移する滞在地ペアの滞在地について、連続遷移しない全ての滞在地ペアが表されている。
ここでは、滞在地ペアC−Eの共起度が最も高い。即ち、
図6〜
図9、
図11及び
図13に基づく実施形態によれば、滞在地間C−Eの潜在的移動量が最も高いことが理解できる。例えば滞在地間C−Eに、人の移動をオフロードするための迂回経路を検討することができる。
【0066】
図14及び
図15によれば、潜在的移動量が多いであろうと推定された滞在地間について、双方向交通機関の必要性が推定される。
【0067】
他の実施形態として、「所定時間範囲」毎に、滞在地推定部101と、滞在地群区分部102と、滞在地ペア抽出部103と、共起度付与部104と、第1の滞在地ペア選択部105と、第2の滞在地ペア選択部106とが実行されることも好ましい。
例えば「所定時間範囲=1日」であってもよい。例えば、1日の中で、自宅から出発して自宅に戻る(セッション)ことが3回あったとすると、セッション数は3となる。
【0068】
また、所定時間範囲=「1日を区分した時間帯」「1週間」「1ヶ月」又は「季節単位」であってもよい。その所定時間範囲では、同一ユーザUkについて複数のセッションが発生することなる。
pair(i,j,Uk)=Σ
Snpair(i,j,Uk,Sn)
即ち、所定時間範囲で、潜在的移動量が多い滞在地間を推定することができる。
【0069】
例えば所定時間範囲=1ヶ月とした場合、ユーザ毎にセッション数も異なる。
ユーザU1 -> セッション数=30回(Sn(n=1〜30))
ユーザU2 -> セッション数=40回(Sn(n=1〜40))
ユーザU3 -> セッション数=42回(Sn(n=1〜42))
【0070】
尚、他の実施形態として、第2の滞在地ペア選択部106の処理が、第1の滞在地ペア選択部105の処理の前段で、又は、共起度付与部104の処理の前段で実行されるように構成することもできる。
【0071】
以上、詳細に説明したように、本発明のプログラム、装置及び方法によれば、複数の携帯端末の時系列の位置情報に基づいて、滞在地間を行き来する双方向交通機関の必要性を推定することができる。特に、潜在的移動量が多いであろう滞在地間に、全体的な人の移動量をオフロードすることができる双方向交通機関(例えばバス、レンタル自転車、レンタカー)の設置を検討することができる。
【0072】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。