特許第6621218号(P6621218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6621218燃料から生成ガスを生成するための反応装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621218
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】燃料から生成ガスを生成するための反応装置
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/54 20060101AFI20191209BHJP
   C10J 3/56 20060101ALI20191209BHJP
【FI】
   C10J3/54 L
   C10J3/54 M
   C10J3/56
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-531350(P2017-531350)
(86)(22)【出願日】2015年12月7日
(65)【公表番号】特表2018-503714(P2018-503714A)
(43)【公表日】2018年2月8日
(86)【国際出願番号】EP2015078876
(87)【国際公開番号】WO2016091828
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年11月8日
(31)【優先権主張番号】2013957
(32)【優先日】2014年12月11日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】517392746
【氏名又は名称】ミレーナ−オルガ ジョイント イノベーション アセッツ ベローステン フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】MILENA−OLGA Joint Innovation Assets B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ブレウグデンヒル, ベレンド ジョースト
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ドリフト, エイブラハム
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−520353(JP,A)
【文献】 特開昭62−169906(JP,A)
【文献】 特開2009−019870(JP,A)
【文献】 特開昭60−001285(JP,A)
【文献】 実開昭59−149949(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/00−3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料から生成ガスを生成するための方法であって、
燃料を熱分解チャンバ(6)に導入し、生成ガスを得るための熱分解プロセスを実行するステップと、
前記熱分解チャンバ(6)から排出された燃料の一部を燃焼チャンバ(20,23)に再循環させるステップと、
前記燃焼チャンバ(20,23)において、一次プロセス流体を用いて流動床(20)内でガス化プロセスを実行し、その後、二次プロセス流体を用いて前記流動床(20)の上方の領域(23)にて燃焼プロセスを実行するステップと
を備え、
前記ガス化プロセスが、前記一次プロセス流体の速度と酸素含有量とを制御することによって制御され、前記燃焼プロセスが、前記二次プロセス流体の速度と酸素含有量とを制御することによって制御され、
前記ガス化プロセスが、0.9〜0.99の当量比ERで実行され、
前記当量比ERが、供給酸素量を燃料の完全燃焼に必要な酸素量で割った比として定義されるものである、方法。
【請求項2】
前記一次プロセス流体が、前記流動床(20)の温度を制御するために用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス化プロセスが、
前記一次プロセス流体の供給を減じること、
前記一次プロセス流体の酸素含有量を減じること、
前記一次プロセス流体に不活性ガスを加えること、及び
前記一次プロセス流体に排ガスを加えること
の1つ以上によって前記当量比を制御することによって、さらに制御される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス化プロセスが、前記生成ガスの温度の測定値、前記燃焼プロセスからの排ガスの温度の測定値若しくは前記燃焼プロセスからの排ガス酸素含有量の測定値又はこれらの組合せに基づいて前記当量比を制御することによって、さらに制御される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
燃料導入部(4)、一次プロセス流体導入部(5)及び生成ガス導出部(10)に接続された熱分解チャンバ(6)と、
排ガス導出部(9)に接続された燃焼チャンバ(20,23)と、
前記熱分解チャンバ(6)と前記燃焼チャンバ(20,23)とを接続するフィードバックチャネル(11,12,12a)と
を備える、燃料から生成ガスを生成するための反応装置であって、
前記燃焼チャンバが、流動床を収容するガス化ゾーン(20)と、前記流動床の上方の燃焼ゾーン(23)とを備え、
当該反応装置(1)が、前記ガス化ゾーン(20)と連通する一次プロセス流体導入部(21)と、前記燃焼ゾーン(23)と連通する二次プロセス流体導入部(22)と、前記ガス化ゾーン(20)に対する一次プロセス流体の速度と酸素含有量を制御するために、前記一次プロセス流体導入部(21)に接続された制御ユニット(24)と、を更に備える、反応装置。
【請求項6】
前記一次プロセス流体導入部(21)及び前記二次プロセス流体導入部(22)がそれぞれ、ガス化プロセス及び燃焼プロセスのための空気を供給するように配置されている、請求項に記載の反応装置。
【請求項7】
前記燃焼ゾーン(23)に対する二次プロセス流体の速度と酸素含有量を制御するために、前記二次プロセス流体導入部(22)に接続された制御ユニット(24)を更に備える、請求項に記載の反応装置。
【請求項8】
前記制御ユニット(24)が、1つ以上のセンサに接続されている、請求項又はに記載の反応装置。
【請求項9】
前記二次プロセス流体導入部(22)が、前記燃焼ゾーン(23)に配置された分配装置(25)を備える、請求項のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項10】
前記一次プロセス流体導入部(5)が、一次プロセス流体を前記熱分解チャンバ(6)に供給するように配置されている、請求項のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項11】
前記熱分解チャンバ(6)が、当該反応装置(1)に配置された1つ以上のライザチャネル(3)によって形成されている、請求項10のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項12】
前記燃焼チャンバ(20,23)が、当該反応装置(1)に配置された1つ以上のライザチャネル(3)によって形成されている、請求項10のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項13】
前記フィードバックチャネル(11,12)が、当該反応装置(1)に配置された1つ以上のダウンカマーチャネルを備える、請求項12のいずれか一項に記載の反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料から生成ガスを生成するための方法に関し、この方法は、燃料を熱分解チャンバに導入して、生成ガスを得るための熱分解プロセスを実行することと、熱分解チャンバから排出される燃料の一部を燃焼チャンバに再循環させることとを含む。更なる態様においては、燃料から生成ガスを生成するための反応装置が提供され、この反応装置は、燃料導入部、一次プロセス流体導入部及び生成ガス導出部に接続された熱分解チャンバと、燃料導出部に接続された燃焼チャンバと、熱分解チャンバと燃焼チャンバとを接続するフィードバックチャネル(フィードバック流通路)とを備える。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2014/070001号は、燃料から生成ガスを生成するための反応装置であって、運転中に流動床を収容する燃焼部を有するハウジングと、反応装置の長手方向に沿って延びているライザと、ライザの周囲に同軸に配置され流動床内に延びるダウンカマーとを備える反応装置を開示している。燃料をライザに供給するための1つ以上の供給チャネルが設けられている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、燃料バイオマス、廃棄物又は石炭のような燃料を処理するための改良型の反応装置を提供するものである。
【0004】
本発明の第1の態様によれば、上で定義された前文による方法が提供され、この方法は、更に、燃焼チャンバにおいて一次プロセス流体を使用して流動床にてガス化プロセスを実行することと、その後、二次プロセス流体を用いて流動床の上方の領域にて燃焼プロセスを実行することと、を含む。一次及び二次プロセス流体は、例えば、酸素を含む空気である。熱分解プロセスと、ガス化プロセスと、燃焼プロセスとを別々に行うことにより、運転をより効率的なものとすることや、特定の燃料に対する適合可能性を高めることなどを含む幾つかの利点が得られる。
【0005】
第2の態様において、本発明は、上述した前文で定義された反応装置に関するもので、この反応装置においては、燃焼チャンバが、流動床を収容するガス化ゾーンと、流動床よりも上方の燃焼ゾーンとを備え、当該反応装置は、ガス化ゾーンと連通する一次プロセス流体導入部と、燃焼ゾーンと連通する二次プロセス流体導入とを更に備える。これによって、反応装置の運転及び制御をその全体にわたってより効率的なものとするために、ガス化プロセスと燃焼プロセスとを別々に、より詳細には反応装置の複数の部分の温度を別々に制御することが可能となる。
【0006】
以下、本発明について、添付図面を参照し、複数の例示的実施形態を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】燃料から生成ガスを生成するための従来の反応装置を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態による反応装置を示す概略図である。
図3】本発明の更なる実施形態による反応装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
バイオマスのような燃料から生成ガスを生成するための反応装置は従来技術において知られており、例えば本出願と同じ出願人の国際公開第2014/070001号を参照されたい。燃料(例えばバイオマス、廃棄物又は(質の悪い)石炭)は、反応装置のライザに供給され、それは、例えば、80重量%の揮発成分と、20重量%の相当に硬い炭素又は炭化物とからなる。ライザに供給される前記燃料を、低酸素内で、すなわち不足当量(substoichiometric amount)の酸素環境又は無酸素環境内で、適切な温度に加熱することにより、ライザ内でガス化又は熱分解が生ずる。ライザ内における前記の適切な温度とは、通常、800℃よりも高く、例えば850〜900℃である。
【0009】
揮発性成分の熱分解によって生成ガスが作られる。生成ガスは、例えば、CO、H、CH及び任意の高級炭化水素からなるガス混合物である。更なる処理を経ると、前記可燃性の生成ガスは、様々な用途の燃料として使用されるのに適するものとなる。低ガス化速度のため、バイオマスに存在する炭化物は、限られた範囲でしかライザにてガス化されない。したがって、炭化物は、反応装置の分離したゾーン(燃焼部)内で燃焼することになる。
【0010】
従来の反応装置1の断面が図1に概略的に示されている。反応装置1は、揮発性成分についての熱分解/ガス化と、炭化物についての燃焼とを組み合わせる間接式ガス化装置すなわち外熱式(allothermic)ガス化装置を形成する。間接的なガス化の結果、バイオマス、廃棄物又は石炭のような燃料ガスは生成ガスに変換され、この生成ガスは、最終製品又は中間製品として例えばボイラやガス機関、ガスタービンにおける燃料として適し、また、更なる化学プロセス又は化学原料のための入力として適している。
【0011】
図1の概略図に示すように、この種の従来の反応装置1は、外壁2によって区切られるハウジングを備えている。反応装置1の頂部には、生成ガス導出部10が設けられている。反応装置1は、例えば、中央に配置された管の形態のライザ3を更に備え、その内部にライザチャネルを形成している。ライザ3に反応装置1の燃料を移送するために1つ以上の燃料導入部4がライザ3と連通している。燃料がバイオマスである場合、制御された態様でライザ3の方に燃料を移送するために、1つ以上の燃料導入部4にアルキメディアンスクリューが取り付けられるのがよい。ライザ3におけるプロセス(従来技術の例においては、熱分解チャンバ6において生ずる熱分解プロセス)は、例えば蒸気を導くために、下部にて一次プロセス流体導入部5を使用することにより制御される。フィードバックチャネルが、熱分解チャンバ6の上部(又はライザ3の上部)から、燃焼チャンバ8として機能する流動床に戻るように、例えば、燃焼チャンバ8の下側にてライザ3の方向への開口12aと、(同心に配置された)リターンチャネル12に接続された漏斗11の形態で設けられている。燃焼チャンバ8の流動床は、一次プロセス流体導入部7を用いて、例えば空気を用いて保持された「流体」である。漏斗11の下側における反応装置1の空間は、排ガス導出部9と連通している。
【0012】
しかしながら、実際の使用においては、反応装置1は草やわら、高灰分の石炭や褐炭、廃棄物のような難燃性燃料(灰を含む燃料)をガス化することができるが、反応装置1の温度を制御する際に様々な問題点が観察された。難燃性燃料をガス化するためには、燃料と関連した凝集及び腐食という問題を避けるために温度は下げなければならない。通常、ガス化温度を下げた場合に生ずることは、生成ガスへの変換も減少させることである。その結果、炭化物が多くなり、それは燃焼チャンバ8内に残る。この効果のために、燃焼チャンバ8の流動床において温度は上昇し、このことは上述した2つの事柄から望まれないものである。
【0013】
図2及び図3の概略図に示される本発明の実施形態によれば、生成ガスを燃料から生成するための反応装置1が提供され、この反応装置1は、燃料導入部4に接続されている熱分解チャンバ6と、一次プロセス流体導入部5と、生成ガス導出部10とを備えている。反応装置1の壁2によって画されている燃焼チャンバ20,23が設けられ、この燃料チャンバは、排ガス導出部9に接続され、熱分解チャンバ6と燃焼チャンバ20,23とを接続するフィードバックチャネル11、12に接続している。燃焼チャンバは、流動床を収容するガス化ゾーン20と、流動床の上方にある燃焼ゾーン23とを備えている。反応装置1は、更に、ガス化ゾーン20と連通する一次プロセス流体導入部21と、燃焼ゾーン23と連通する二次プロセス流体導入部22とを備えている。かくして、本発明の実施形態においては、運転挙動を改善するために燃焼チャンバでの付加的な工程、すなわちガス化が行われる。熱分解ゾーン6、ガス化ゾーン20及び燃焼ゾーン23を別個に形成することによって、幾つかの利点が得られる。
【0014】
また、本発明の更なる態様においては、燃料から生成ガスを生成するための方法が提供され、この方法は、熱分解チャンバ6に燃料を導入して、生成ガスを得るための熱分解プロセスを実行するステップと、熱分解チャンバ6から燃焼チャンバ20,23に導出される燃料の一部(固体)を再循環させるステップと、燃焼チャンバ20,23において、一次プロセス流体を用いて流動床にてガス化プロセスを実行し、その後、二次プロセス流体を用いて流動床の上方の領域にて燃焼プロセスを行うステップとを含む。一次プロセス流体と二次プロセス流体は、例えば、酸素を含有する空気である。
【0015】
流動床内のガス化ゾーンと、流動床の真上にある反応装置の空間における燃焼ゾーンとの間の分離を達成するために、0.9〜0.99の当量比ER、例えば0.95の当量比ERでガス化プロセスを操作することによってストイキオメトリを制御することができる。ここで、当量比ERは、供給された燃料を完全に燃焼するために必要とされる酸素量で割った供給酸素量の比として定義されるものである。
【0016】
一次プロセス流体導入部21は流動床の温度を制御するために有効に用いられる。これは、反応装置1の内部でのプロセスを外部から操作することができるからである。当量比は、例えば、一次プロセス流体の供給を減じることによって、一次プロセス流体に含有する酸素含有量を減じることによって、一次プロセス流体に不活性ガスを加えることによって、又は、一次プロセス流体に(例えば排ガス導入部9から(再循環))排ガスを加えることによって、制御される。これらの選択肢のすべてを容易に利用することができるので、反応装置1の構成や操作についての付加的な手間やコストはなく或いは僅かである。
【0017】
燃焼ゾーン23は、例えば熱分解プロセスにより生成された炭化物の燃焼ゾーン内での可能な限りの完全な燃焼を達成するために、少なくとも1.2の当量比ER、例えば1.3に等しい当量比で稼働されるとよい。
【0018】
一次プロセス流体導入部21及び二次プロセス流体導入部22はそれぞれ、ガス化プロセス及び燃焼プロセスのための空気を提供するように配置されている。これにより、ガス化プロセスと燃焼プロセスとを別々に制御して、より効率的な反応装置1全体の運転及び制御を達成することができる。効率的な制御のために、反応装置は、ガス化ゾーン20への一次プロセス流体の速度及び酸素含有量を制御するために、一次プロセス導入部21に接続された制御ユニット24(図2及び図3の実施形態に示される)を備えているとよい。更に、制御ユニット24は、燃焼ゾーン23への二次プロセス流体の速度及び酸素含有量を制御するために、二次プロセス流体導入部22に接続されるとよい。速度及び酸素含有量は、外部空気又は他のガス源(不活性ガス源)、例えば窒素を用いて制御されてもよく、又は、別の代替手段では、排ガス導出部9からの排ガスを使用してガス再循環が用いられてもよい。このために、制御ユニット24は、例えば、排ガス導出部9に接続された入力チャネル(及び弁などの適切な制御要素)が設けられている。
【0019】
本発明の方法の更なる実施形態では、当量比は、生成ガスの温度の測定値、燃焼プロセスからの排ガスの温度の測定値若しくは燃焼プロセスからの排ガスの酸素含有量の測定値又はこれらの組合せに基づいて制御される。例えば、0.9〜0.99のERの所望目標値を達成するためには、排ガス中の測定酸素含有量は3〜5%でなければならない。これらのパラメータは、それ自体公知である適当なセンサを使用して、運転中に反応装置内で容易に測定することができる。更なる反応装置の実施形態では、制御ユニット24は、1つ以上のセンサ、例えば温度センサ及び/又は酸素含有量センサに接続される。
【0020】
別の実施形態では、二次プロセス流体導入部22は、燃焼ゾーン23に配置された分配装置25を含む。これによって、燃焼ゾーン23においてより良好な燃焼結果及び効率を得ることができる。具体的な形状及び構造は、燃焼ゾーンの形状に依存し得るものである、図2に示す実施形態では、分配装置は、分布配置された複数の小孔を有するリングチャネルとされるとよい。代替手段として、分配装置25は、反応装置の壁2の全周にわたり分布された、複数の接線方向に配置され且つ内向きとされたノズルとして具現化されてもよい。
【0021】
反応装置内で熱分解プロセスを適切に実行させるために、一次プロセス流体導入部5は、一次プロセス流体、例えば、蒸気、CO、窒素、空気などを熱分解チャンバ6に供給するよう配置される。特定の一次プロセス流体パラメータ(例えば、温度、圧力)を外部で制御することができる。
【0022】
難燃性燃料は、完全な燃焼を維持しながら、通常よりも低い温度でガス化することができる。燃焼に通常関連する熱は、典型的には燃焼チャンバの流動床で生成されるが、燃焼チャンバのストイキオメトリを低下させ二次空気を増加させることによってガス化ゾーン20が導入される。このガス化ゾーン20は、(例えば(圧縮)空気を使用して)一次プロセス流体導入部21を介して空気を流動床に対して調節することによって温度を上昇又は下降させるように調整することができる。流動床の上方の燃焼ゾーン23は、未燃成分(CO及びC)を燃焼させるために使用される。この燃焼に関連される熱は、ガス化ゾーン20内のバブリング型流動床の温度を上昇させることはないので、凝集という問題を引き起こさない。
【0023】
燃焼チャンバをガス化ゾーン20(バブリング型流動床:BFB)及び燃焼ゾーン23(BFBの上方)に分割することによって、炭化物の一部は燃焼されず、ライザ3に(フィードバックチャネル11,12を経て)再循環される。これは、一方では、燃料変換を増加させる水蒸気ガス化の追加の機会をもたらし、他方では、タール低減のための触媒プロセス(炭化物は触媒及び/又は吸着活性を有することが知られている)に加えることができる。
【0024】
炭化物の蓄積(特により低いガス化温度で)が生じるが、ガス化ゾーン20の流動床はより小さな粒子に炭化物を分解し、その粒子は最終的に燃焼ゾーン23に逃される。
【0025】
代替手段として、バブリング型流動床における速度を増加させることによって炭化物の蓄積を防止することができる。これは、反応装置1のサイズ(最も顕著にはガス化ゾーン20内の流動床の直径)を小さくすることによって達成され、反応装置1の拡張性を改善することができる。更なる実施形態では、ガス化ゾーン20のバブリング型流動床に大きな気泡及び大きな分散(splash)ゾーンを生成するために、速度が増加される。
【0026】
その後、燃焼ゾーン23内の二次空気はまた、流動床の上方の領域に入る炭化物を燃焼させる。これにより余分な熱が発生するが、その熱は排ガス導出部9を経て移送され、流動床温度は低く維持される。
【0027】
図2には、バイオマス又は廃棄物(他の燃料も使用し得る)の処理に最も適した反応装置1の一例が示されている。ここで、熱分解チャンバ6は、反応装置1内に配置された(例えば、垂直管の形態で、すなわち長さ方向に配置され、又は反応装置の壁2と同軸に配置された)1つ以上のライザチャネル3によって形成され、バブリング型流動床は、反応装置1の下部のガス化ゾーン20内に配置され、ライザ3の下部を取り囲んでいる。
【0028】
これに対して、図1の反応装置1は、熱分解チャンバ6と、燃焼プロセスが行われる流動床を備えた燃焼チャンバ8のみを備える。図2の例においては、ガス化ゾーン20の流動床における状態が、当量比ERを低下させることによって適応されている。その結果、ER(完全燃焼に必要とされる酸素量に対する供給酸素量の比)を下げることによって、体積流量が低下し、ガス化ゾーン20内の流動床の温度も低下する。
【0029】
図3の実施形態に示すような反応装置1の変形例においても同様に改善され得る。動作原理は図2の実施形態とは逆である(燃焼はライザ3内で生じ、石炭の熱分解は流動床6内で行われる)。言い換えると、燃焼チャンバ20,23は、反応装置1内に配置された1つ以上のライザチャンネル3によって形成される。この実施形態は、例えば、高灰分の低品質石炭を処理するために有利に使用することができる。
【0030】
更なる方法の実施形態(特に、図3の反応装置1の実施形態を操作するための方法)において、流動床は、当量比(ER)が少なくとも1、例えば1.05又は1.1に等しい値で運転される。当量比(ER)は、供給酸素量を燃料の完全燃焼に必要な酸素量で割った比として定義される。本発明の実施形態は、草やわらのような難燃性の(灰を含む)燃料をガス化することができるが、高灰分の石炭及び廃棄物もガス化することができる。しかしながら、難燃性燃料のガス化を達成するためには、燃料に関連する凝集や腐食という問題を解消すべく、並びにPb、K、Cd等のような化合物による下流チャネル及び設備の、起こり得る蒸着や汚損を避けるべく、温度が下げられる。通常、ガス化温度を低下させると、変換も低下する。この結果、より多くの炭化物が得られ、燃焼器で終結する。従来技術の実施形態(燃焼チャンバ8内の流動床、図1参照)では、上記の2つの事柄の故に、その効果によって温度が上昇し、これは望ましくないものである。
【0031】
燃焼温度を低下させることは、ガス化ゾーン20で燃料を部分的に燃焼させ、流動床の上方の燃焼ゾーン23で完全燃焼を実現することによって達成される。これは追加の熱が発生するところであり、灰成分と直接接触しないところである。したがって、灰が蒸着することはなく、溶融層を生成せず、凝集を引き起こさない。
【0032】
驚くべきことに、流動床において完全燃焼を達成する必要がないことが可能であることが見出された。その場合、燃料の未燃部分(CO及びC)が、高温で且つ完全燃焼を達成するために用いられる。
【0033】
流動床における炭化物の不完全燃焼は、炭化物の蓄積につながる可能性がある。更なる実施形態では、炭化物を流動床の上方の領域に押しやるために、バブリング型流動床の分散ゾーンを増加させる可能性があり、そこで燃焼させることができる。このようにして、まだ十分な炭化物が、蓄積を防止すべく変換される(そして効率が低下する)。分散ゾーンの増加は、流動床におけるより高速度でのみ達成され得る。これは、機能向上及び経済性に優れた反応装置1のサイズ(特に直径)を小さくするために使用され得る。
【0034】
反応装置1の従来技術の実施形態に関して、本発明の実施形態による反応装置1の直径は、2/3倍又はそれ以下の倍率で小さくすることができる。その効果は以下のとおりである。
【0035】
・排ガスへの炭素変換の僅かな減少。これは、より多くの燃料が生成ガスになることを意味し、より高い効率につながることを意味する(これは試験され、観察されたものである)。
【0036】
・凝集効果により良い制御。流動床が低温で維持されるためである。これは試験により確認されている。
【0037】
・アルカリ性物質の蒸着のより良い制御、及びその結果としてより良い腐食制御。これは試験により確認されている。
【0038】
・低温での価値ある生成物(C及びC分子並びに芳香族化合物)の増量。これは試験により確認されている。
【0039】
・(低温での)重いタールの減量。タールは最終的には下流の機器との接続に問題を引き起こすものである。試験により実証済み。
【0040】
・高温での重いタールの減量(炭化物効果)。
【0041】
・機器サイズの縮小。流動床はより少ない空気で流動化されるので、流動床の領域を減じることができる。より低い温度で運転された場合、その領域は十分な速度を維持するために減じられることが必要である。このこと全てが設置コストを改善する。
【0042】
・バブリング型流動床に残っている炭化物は、生成ガスの炭化物変換と共に、おそらくはタールに関する触媒と吸着プロセスに加えて、幾つかの過剰な循環段階を有する(まずは高温で、第2には低温で)。
【0043】
・反応装置1を拡張することは、常に、流動床全体の炭化物の分布の問題を引き起こす。この目的で、フィードバックチャネルは、更なる実施形態における反応装置1に配置された1つ以上の付加的なダウンカマーチャネルを備えるとよい(図1〜3に関連して上述したフィードチャネルバック又はダウンカマーチャネル12と同様なもの)。付加的なダウンカマーチャネル12は、付加的な機械的応力及び熱応力の負担をもって可能となる。しかしながら、1よりも小さなERを有する本発明の実施形態は、ガスが流動床の上方で燃焼しガスが固体よりも良好に混合するため、炭化物の分布の重要性をより少なくする。
【0044】
・段階的な燃焼による放出制御の容易化。流動床の上方に形成された高温ゾーンがあるため、望まれない放出(CO及びC)がより良好に制御される。
【0045】
以上、本発明の実施形態について、図示するような幾つかの例示的実施形態を参照して説明した。幾つかの部分や要素の変更や代替的実行が可能であり、それらは添付の特許請求の範囲にて規定される保護範囲に含まれるものである。
図1
図2
図3