特許第6621246号(P6621246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6621246
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】トレイ保持装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20191209BHJP
【FI】
   H05K13/02 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-88019(P2015-88019)
(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公開番号】特開2016-207844(P2016-207844A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】永石 拓也
(72)【発明者】
【氏名】岩田 卓也
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−251705(JP,A)
【文献】 特開2005−101153(JP,A)
【文献】 特開2008−205009(JP,A)
【文献】 特開2007−201505(JP,A)
【文献】 特開2015−070258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品を上面に収容したトレイを載置するパレットと、前記パレットの所定位置に前記トレイを位置決め保持する保持部材とを備えて、前記トレイから部品実装機へ前記部品を供給するトレイ保持装置であって、
前記保持部材は、
前記パレットに載置された前記トレイの側面に当接して延在するように磁力によって前記パレットに保持される主保持部と、
前記主保持部から前記トレイの上方に張り出して前記トレイの浮上を防止する浮上防止部と、
前記主保持部に一体的に形成されて前記主保持部の延在方向と交差する交差方向の両側のうち前記浮上防止部が近い片側のみに延在し、磁力によって前記パレットに保持される補助保持部と、を有して、
前記主保持部および前記補助保持部が矩形の前記トレイの隣り合う2辺に平行して配置されるL字形状とされており、
前記部品実装機の挟持チャックは、前記トレイから前記部品を挟持して採取する際に矩形の前記トレイの第1組の向かい合う2辺の一方に接近するとともに、第2組の向かい合う2辺には接近せず、
L字形状の2個の前記保持部材は、各前記主保持部が前記トレイの第2組の向かい合う2辺の側面にそれぞれ当接し、各前記補助保持部が前記トレイの第1組の向かい合う2辺の側面から離隔する、トレイ保持装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記トレイの側面高さより低背であって、前記パレットに載置された前記トレイの側面に当接するように磁力によって前記パレットに保持される側面保持部材を含む、請求項1に記載のトレイ保持装置。
【請求項3】
複数の部品を上面に収容したトレイを載置するパレットと、前記パレットの所定位置に前記トレイを位置決め保持する保持部材とを備えて、前記トレイから部品実装機へ前記部品を供給するトレイ保持装置であって、
前記保持部材は、
前記パレットに載置された前記トレイの側面に当接して延在するように磁力によって前記パレットに保持される主保持部と、
前記主保持部から前記トレイの上方に張り出して前記トレイの浮上を防止する浮上防止部と、
前記主保持部に一体的に形成されて前記主保持部の延在方向と交差する交差方向に延在し、磁力によって前記パレットに保持される補助保持部と、を有し、さらに、
前記トレイの側面高さより低背であって、前記パレットに載置された前記トレイの側面に当接するように磁力によって前記パレットに保持される側面保持部材を含む、
トレイ保持装置。
【請求項4】
前記補助保持部は、前記交差方向の両側のうち前記浮上防止部が近い片側のみに延在する請求項3に記載のトレイ保持装置。
【請求項5】
前記保持部材は、前記主保持部および前記補助保持部が矩形の前記トレイの隣り合う2辺に平行して配置されるL字形状とされている請求項4に記載のトレイ保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を上面に収容したトレイを位置決め保持するトレイ保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の部品が実装された基板を生産する設備として、はんだ印刷機、部品実装機、リフロー機、基板検査機などがある。これらの設備を連結して基板生産ラインを構成することが一般的になっている。このうち部品実装機は、基板搬送装置、部品供給装置、部品移載装置、および制御装置を備える。部品供給装置の一種に、複数の部品を上面に収容したトレイを用いる方式の装置がある。トレイ方式部品供給装置では、パレットの所定位置にトレイを位置決め保持して取り扱う場合が多い。この種の用途に好適なトレイ保持装置の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のトレイ保持装置は、トレイの隣接する2辺に当接する位置決め手段と、トレイの位置決め手段とは反対側のコーナー部分をクランプするクランプ手段とを備える。さらに、実施形態には、位置決め手段として位置決めピンを用い、クランプ手段としてクランプ具を用いる態様が開示されている。位置決めピンは、ベースプレート(パレット)に立設されており、その頂部に設けられた浮き上がり防止鍔部がトレイの上方に張り出す構造となっている。また、クランプ具は、トレイの上方に張り出す掛合爪部および底面に埋め込まれた磁石を有し、磁力によってベースプレート上の磁性プレートに保持される。これによれば、ベースプレート上でトレイを正確に位置決めして保持できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−270442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に例示されるように、磁力を用いてトレイを位置決め保持する構成では、部品を採取する際にトレイの浮上や移動のおそれが発生する。例えば、部品実装機の挟持チャックがトレイ内の複数の部品の一つを挟持して採取する際に、当該の部品がトレイに引っ掛かっている場合が有り得る。この場合、挟持チャックの上昇に伴い、磁力に打ち勝ってトレイが浮上したり移動したりする。すると、浮上時や移動時の衝撃で部品が散乱したり、トレイが元の位置に戻らなかったりして、部品の供給に支障が生じる。
【0006】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、磁力を用いてトレイを位置決め保持するときのトレイ保持力を強め、トレイの浮上や移動を効果的に防止できるトレイ保持装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のトレイ保持装置は、複数の部品を上面に収容したトレイを載置するパレットと、前記パレットの所定位置に前記トレイを位置決め保持する保持部材とを備えて、前記トレイから部品実装機へ前記部品を供給するトレイ保持装置であって、前記保持部材は、前記パレットに載置された前記トレイの側面に当接して延在するように磁力によって前記パレットに保持される主保持部と、前記主保持部から前記トレイの上方に張り出して前記トレイの浮上を防止する浮上防止部と、前記主保持部に一体的に形成されて前記主保持部の延在方向と交差する交差方向の両側のうち前記浮上防止部が近い片側のみに延在し、磁力によって前記パレットに保持される補助保持部と、を有して、前記主保持部および前記補助保持部が矩形の前記トレイの隣り合う2辺に平行して配置されるL字形状とされており、前記部品実装機の挟持チャックは、前記トレイから前記部品を挟持して採取する際に矩形の前記トレイの第1組の向かい合う2辺の一方に接近するとともに、第2組の向かい合う2辺には接近せず、L字形状の2個の前記保持部材は、各前記主保持部が前記トレイの第2組の向かい合う2辺の側面にそれぞれ当接し、各前記補助保持部が前記トレイの第1組の向かい合う2辺の側面から離隔する。
また、本発明のトレイ保持装置は、複数の部品を上面に収容したトレイを載置するパレットと、前記パレットの所定位置に前記トレイを位置決め保持する保持部材とを備えて、前記トレイから部品実装機へ前記部品を供給するトレイ保持装置であって、前記保持部材は、前記パレットに載置された前記トレイの側面に当接して延在するように磁力によって前記パレットに保持される主保持部と、前記主保持部から前記トレイの上方に張り出して前記トレイの浮上を防止する浮上防止部と、前記主保持部に一体的に形成されて前記主保持部の延在方向と交差する交差方向に延在し、磁力によって前記パレットに保持される補助保持部と、を有し、さらに、前記トレイの側面高さより低背であって、前記パレットに載置された前記トレイの側面に当接するように磁力によって前記パレットに保持される側面保持部材を含んでもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のトレイ保持装置において、保持部材は、トレイの側面に当接して延在する主保持部と、主保持部からトレイの上方に張り出した浮上防止部と、主保持部に一体的に形成されて交差方向に延在する補助保持部と、を有する。ここで、パレットから浮上しようとするトレイは、浮上防止部を押し上げて、主保持部を倒す方向の回転力を発生させる。このとき、補助保持部とパレットの間の磁力は、主保持部が倒れるときの回転中心から大きく離れた位置で発生しているので、逆回転方向の大きなトレイ保持力となる。したがって、主保持部の倒れ防止が可能になり、トレイの浮上や移動を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】トレイ方式部品供給装置の構成例を示す側面図である。
図2】第1実施形態のトレイ保持装置を説明する斜視図である。
図3】第1保持部材の斜視図である。
図4】第1実施形態のトレイ保持装置の作用を説明する側面図である。
図5】第2実施形態の第1保持部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1.トレイ方式部品供給装置9の構成例)
まず、トレイTを使用して部品を供給するトレイ方式部品供給装置9の構成例について、図1を参考にして説明する。図1は、トレイ方式部品供給装置9の構成例を示す側面図である。トレイ方式部品供給装置9は、第1実施形態のトレイ保持装置1に保持されたトレイTを使用し、換言すると、トレイTを載置したパレット2を使用する。トレイ方式部品供給装置9は、部品実装機8の後側に移動可能に配置される。トレイ方式部品供給装置9は、ハウジング91、トレイストッカ92、およびトレイ搬送部93などで構成されている。
【0011】
ハウジング91は、概ね縦長の直方体形状の筺体である。ハウジング91の上部にトレイ搬入部911が設けられ、ハウジング91の下部にトレイ排出部912が設けられている。ハウジング91の概ね中間高さの前側に、トレイ搬送口913が開口している。トレイストッカ92は、5段の収納棚921を有する概ね箱状の部材である。各収納棚921は、パレット2を前側に引き出し可能に収納する。トレイストッカ92は、図略の昇降機構に駆動されて、ハウジング91内を昇降する。トレイストッカ92の上面に搬入用保持部922が設けられ、トレイストッカ92の下面に排出用保持部923が設けられている。
【0012】
トレイ搬送部93は、ハウジング91の前側に設けられている。トレイ搬送部93は、搬送部本体931、一対の搬送コンベア932、および駆動スプロケット933などで構成されている。搬送部本体931は、後部がトレイ搬送口913に臨み、後部以外が部品実装機8に差し込まれて使用される。一対の無端環状の搬送コンベア932は、搬送部本体931の幅方向に相互に離隔するとともに前後方向に延在して、搬送部本体931に支承されている。一対の搬送コンベア932は、駆動スプロケット933および図略のモータに駆動されて輪転する。搬送コンベア932の途中にパレット連結具934が設けられている。パレット連結具934は、パレット2の前縁に設けられた係止部21を離脱可能に把持する。トレイ搬送部93は、パレット連結具934によりパレット2を把持して搬送コンベア932に載せ、搬送コンベア932の輪転によりパレット2を搬送する。
【0013】
次に、トレイ方式部品供給装置9の動作について説明する。図1に破線で示されるように、トレイ搬入部911が後方に引き出されて、トレイTの載置されたパレット2がセットされる。この後、トレイ搬入部911が前方へ戻されて、パレット2がハウジング91内に搬入される。搬入されたパレット2は、上昇したトレイストッカ92の搬入用保持部922に一時的に保持される。続いて、トレイストッカ92が下降し、搬入用保持部922の高さ位置がトレイ搬送口913に調整される。
【0014】
すると、トレイ搬送部93の搬送コンベア932が図1の時計回りに輪転して、パレット連結具934が搬入用保持部922のパレット2の係止部21を把持する。続いて、搬送コンベア932が反時計回りに輪転してパレット2が搬送部本体931の上に引き出される。さらに、トレイストッカ92の収納棚921の高さ位置がトレイ搬送口913に調整され、搬送コンベア932が時計回りに輪転して、パレット2が収納棚921に収納される。ここまでの動作が繰り返されて、複数のパレット2が収納棚921に収納される。
【0015】
部品実装機8へ部品を供給するとき、トレイ搬送部93は、パレット2を最も前側の部品供給位置まで引き出す。これにより、部品実装機8の部品実装ヘッド81に設けられた挟持チャック82は、パレット2に載置されたトレイTから部品を挟持して採取できる。図1は、収納棚921の下から2段目および3段目にパレット2が収納され、収納棚921の最下段からパレット2が部品供給位置まで引き出された状態をハッチングで例示している。
【0016】
全部の部品が使用されて空になったトレイTを保持するパレット2は、トレイ搬送部93によって、トレイストッカ92の排出用保持部923に搬送される。続いて、トレイストッカ92が下降し、このパレット2がトレイ排出部912に受け渡される。トレイ排出部912は、トレイ搬入部911と同様に後方に引き出され、空になったトレイTおよびパレット2が回収される。
【0017】
(2.第1実施形態のトレイ保持装置1の構成)
第1実施形態のトレイ保持装置1の説明に移る。図2は、第1実施形態のトレイ保持装置1を説明する斜視図である。トレイ保持装置1は、パレット2、第1および第2保持部材3A、3B、および3個の側面保持部材6で構成されている。
【0018】
パレット2は、略矩形の板材であり、後述の磁石43、53、54を引き付ける鋼材で形成されている。パレット2の4辺に形成された縁部22は、上方に突出している。縁部22は、その高さ寸法H1がトレイTの側面高さH0よりも小さく、挟持チャック82の挟持動作を妨げない。縁部22の内側面にトレイTの側面を当接させることで、位置決めが可能になっている。パレット2の前縁(図2の右上方向の縁)に、一対の係止部21が配設されている。パレット2の上面に、トレイTが載置される。トレイTは、樹脂製であって矩形に形成されている。トレイTは、複数の部品Pを上面に収容している。
【0019】
第1および第2保持部材3A、3Bは、相互に鏡面対称に形成されている。ここでは、第1保持部材3Aを例にして、詳細に説明する。図3は、第1保持部材3Aの斜視図である。第1保持部材3Aは、主保持部4A、4個の浮上防止部42A、および補助保持部5Aなどからなる。
【0020】
主保持部4Aは、断面が矩形のアルミ製の棒状の部材であり、水平方向に長く寝かして使用される。主保持部4Aの水平方向の長さは、保持するトレイTの辺の長さと同程度であることが好ましく、辺の長さより短くてもよい。主保持部4Aの高さ寸法H2は、長さ方向の位置に関係なく一定であり、トレイTの側面高さH0よりも大きい。主保持部4Aの上面には、6箇所の矩形溝形状の凹部41が長さ方向に概ね等間隔で形成されている。
【0021】
浮上防止部42Aは、小さな四角形の板状の部材である。浮上防止部42Aは、2個のねじを用いて凹部41に水平に取り付けられる。図3において、両端を除いた4箇所の凹部41に、それぞれ浮上防止部42Aが一体的に取り付けられている。4個の浮上防止部42Aは、主保持部4Aの一方の側面方向に張り出している。浮上防止部42Aの張り出し長さL1は、部品Pの上方にまで達しないように設定されている。主保持部4Aの底面から浮上防止部42の下面までの高さ寸法H3は、トレイTの側面高さH0よりもわずかに大きく設定されている。
【0022】
主保持部4Aの底面に、4個の小さな円柱形状の磁石43が長さ方向に概ね等間隔で埋め込まれている。磁石43の磁力Fm(図4に示す)によって、主保持部4Aはパレット2の上面に保持される。なお、凹部41、浮上防止部42A、および磁石43の大きさや個数、配設位置などは、保持するトレイTの大きさや重量に応じて適宜変更できる。例えば、4個の浮上防止部42Aは、主保持部4Aの長さ方向に延在する1個の長い浮上防止部に置き換えることができる。
【0023】
補助保持部5Aは、断面が矩形のアルミ製の棒状の部材であり、水平方向に長く寝かして使用される。補助保持部5Aの水平方向の長さは、保持するトレイTの辺の長さの半分よりも小さめであることが好ましい。補助保持部5Aの高さ寸法H4は、一端部51において主保持部4Aの高さ寸法H2に一致し、他端部52側に向かうにつれて徐々に減少している。
【0024】
補助保持部5Aの底面に、2個の磁石53、54が長さ方向に離隔して埋め込まれている。磁石53、54の磁力Fm(図4に示す)によって、補助保持部5Aはパレット2の上面に保持される。磁石53、54は、主保持部4Aの磁石43と同一品であり、これに限定されず、磁石43と異なる形状であってもよい。磁石53、54の大きさや個数、配設位置なども、保持するトレイTの大きさや重量に応じて変更できる。
【0025】
図3に示されるように、主保持部4Aの一端部45と、補助保持部5Aの一端部51とが、2個のねじ57を用いて一体的に結合されている。補助保持部5Aは、主保持部4の延在方向と直角に交差する交差方向に延在する。かつ、補助保持部5Aは、交差方向の両側のうち浮上防止部42Aが近い片側のみに延在する。これにより、第1保持部材3Aは、平面視でL字形状となっている。また、主保持部4Aの底面および補助保持部5Aの底面は、一つの平面を形成してパレット2の上面に保持される。
【0026】
同様に、図2に示される第2保持部材3Bも、主保持部4B、浮上防止部42B、および補助保持部5Bからなる。ただし、主保持部4Bから張り出す浮上防止部42Bの方向、ならびに、補助保持部5Bの延在する方向は、第1保持部材3Aと逆になっている。
【0027】
側面保持部材6は小型の直方体の部材であり、その高さ寸法H5は、トレイTの側面高さH0より低背である。側面保持部材6の底面にも図略の磁石が埋め込まれ、あるいは、側面保持部材6自体が磁石になっている。側面保持部材6は、磁力によってパレット2の上面に保持される。側面保持部材6の大きさや使用個数なども、保持するトレイTの大きさや重量に応じて変更できる。
【0028】
(3.トレイ保持装置1によるトレイTの保持方法)
次に、第1実施形態のトレイ保持装置1によるトレイTの保持方法について説明する。矩形のトレイTの第1辺T1〜第4辺を図2に示される時計回りに定める。第1辺T1および第3辺T3は、第1組の向かい合う2辺に相当し、第2辺T2および第4辺は、第2組の向かい合う2辺に相当する。トレイTの第1辺T1は、パレット2の縁部22に当接されて位置決めされる。
【0029】
トレイTの第2辺T2の側面に当接して延在するように、第1保持部材3Aの主保持部4Aが配置される。このとき、浮上防止部42Aは、主保持部4AからトレイTの上方に張り出して配置される。また、第1保持部材3Aの補助保持部5Aは、トレイTの第3辺T3の側面から離隔して平行に配置され、パレット2からはみ出ない。
【0030】
さらに、トレイTの第4辺の側面に当接して延在するように、第2保持部材3Bの主保持部4Bが配置される。このとき、浮上防止部42Bは、主保持部4BからトレイTの上方に張り出して配置される。また、第2保持部材3Bの補助保持部5Bは、トレイTの第3辺T3の側面から離隔して平行に配置され、パレット2からはみ出ない。これにより、トレイTは、向かい合う第2辺T2および第4辺が2つの主保持部4A、4Bにより両側から挟み込まれて位置決めされる。また、トレイTは、向かい合う第2辺T2および第4辺が浮上防止部42A、42Bの下方にそれぞれ位置して浮上が防止される。
【0031】
トレイTの第3辺T3の側面に当接するように、3個の側面保持部材6が相互に離隔して配置される。これにより、トレイTは、向かい合う第1辺T1および第3辺T3がパレット2の縁部22および3個の側面保持部材6により両側から挟み込まれて位置決めされる。
【0032】
なお、第1実施形態において、補助保持部5A、5BをトレイTの第3辺T3の側面に当接させず、別に側面保持部材6を用いる理由は、挟持チャック82の挟持動作を妨げないためである。詳述すると、部品Pは平面視で細長い形状を有し、挟持チャック82は部品Pの細長い両端を挟んで採取する。このため、挟持チャック82は、トレイTから部品Pを挟持して採取する際に、トレイTの第1辺T1や第3辺T3に接近し、第2辺T2および第4辺には接近しない。このとき、トレイTの側面高さH0よりも高い補助保持部5A、5Bが仮に第3辺T3の側面に当接していると、挟持チャック82が衝突しかねない。この衝突のおそれは、第3辺T3から補助保持部5A、5Bを離隔するとともに、低背の側面保持部材6を用いて第3辺T3を位置決めすることにより解消される。
【0033】
(4.トレイ保持装置1の作用)
次に、第1実施形態のトレイ保持装置1の作用について、従来技術と対比して説明する。図4は、第1実施形態のトレイ保持装置1の作用を説明する側面図である。作用の説明に際して、挟持チャック82が部品Pを挟持して上昇する際に、当該の部品PがトレイTに引っ掛かっていて、トレイTに浮上力Ffが発生する場合を考える。なお、浮上力Ffの発生原因は、異なっていても差し支えない。図4に示されるように、浮上力Ffは、浮上防止部42Aを押し上げる方向に作用する。
【0034】
このとき、第1保持部材3Aの合計6個の磁石43、53、54の磁力Fmの総和が浮上力Ffよりも大きければ、第1保持部材3Aがパレット2から離れて浮上することは無い。ただし、浮上力Ffによって第1保持部材3Aの主保持部4Aが倒れるおそれは解消されていない。そこで、浮上力Ffが浮上防止部42Aの先端のP点に作用するとして、主保持部4Aの回転による倒れについて考察する。主保持部4Aの回転中心は、主保持部4Aの底面のトレイTから離れたQ点になる。
【0035】
すると、主保持部4Aを倒す方向の回転力Rは、次式で表される。
R =D1×Ff・cosθ
ただし、P点とQ点との距離D1であり、P点とQ点とを結んだ直線がパレット2の上面と成す角度θである。
【0036】
また、主保持部4Aを現在の直立姿勢に維持してトレイTの浮上を防止する逆回転方向のトレイ保持力Kは、次式で表される。
K =(4×D2+D3+D4)×Fm
ただし、主保持部4Aの4個の磁石43とQ点との距離D2、補助保持部5Aの磁石53、54とQ点との距離D3、D4である。上式および図4から分かるように、補助保持部5Aの2個の磁石53、54の大きな距離D3、D4により、大きなトレイ保持力Kが確保される。
【0037】
これに対して、従来技術の保持部材は、補助保持部5Aを有さず、主保持部4Aおよび浮上防止部42Aのみからなる。したがって、従来技術では、小さな距離D2に基づく小さなトレイ保持力しか得られない。このため、回転力Rがトレイ保持力よりも大きくなりがちで、主保持部4Aの倒れを防止することが難しかった。一方、第1実施形態のトレイ保持装置1によれば、従来技術よりも格段に大きなトレイ保持力Kが得られるので、主保持部4Aが図4の直立姿勢から倒れることは無い。これにより、トレイTの浮上や移動が防止される。
【0038】
なお、パレット2からトレイTを取り外す場合には、図4に白抜き矢印Zで示されるように、補助保持部5Aの他端部52を持ち上げる。これにより、小さな持ち上げ力であっても大きな回転力が発生するので、第1保持部材3Aの全体がQ点を中心にして回転し、各磁石43、53、54の磁力Fmが無効化される。したがって、第1保持部材3Aの取り外しは簡単である。
【0039】
(5.第1実施形態のトレイ保持装置1の態様および効果)
第1実施形態のトレイ保持装置1は、複数の部品Pを上面に収容したトレイTを載置するパレット2と、パレット2の所定位置にトレイTを位置決め保持する保持部材3A、3B、6とを備えて、トレイTから部品実装機8へ部品Pを供給するトレイ保持装置1であって、第1および第2保持部材3A、3Bは、パレット2に載置されたトレイTの側面に当接して延在するように磁力Fmによってパレット2に保持される主保持部4A、4Bと、主保持部4A、4BからトレイTの上方に張り出してトレイTの浮上を防止する浮上防止部42A、42Bと、主保持部4A、4Bに一体的に形成されて主保持部4A、4Bの延在方向と交差する交差方向に延在し、磁力Fmによってパレット2に保持される補助保持部5A、5Bと、を有する。
【0040】
ここで、パレット2から浮上しようとするトレイTは、浮上防止部42Aを押し上げて、主保持部4Aを倒す方向の回転力R(=Ff・cosθ)を発生させる。このとき、補助保持部5A、5Bとパレット2の間の磁力Fmは、主保持部4Aが倒れるときの回転中心のQ点から大きく離れた位置で発生しているので、逆回転方向の大きな保持力Kとなる。したがって、主保持部4Aの倒れ防止が可能になり、トレイTの浮上や移動を効果的に防止できる。
【0041】
さらに、補助保持部5Aは、主保持部4Aと交差する交差方向の両側のうち浮上防止部42Aが近い片側のみに延在する。これによれば、補助保持部5Aの他端部52を持ち上げることで、第1保持部材3Aをパレット2から簡単に取り外せる。
【0042】
さらに、第1および第2保持部材3A、3Bは、主保持部4A、4Bおよび補助保持部5A、5Bが矩形のトレイTの隣り合う2辺に平行して配置されるL字形状とされている。これによれば、矩形のトレイTの少なくとも1辺を確実に位置決め保持して、浮上や移動を防止できる。また、パレット2から補助保持部5A、5Bがはみ出ることがなく、取り外しも簡単であるので、保持部材をT字形状や十字形状に構成した場合と比較して使い勝手が良い。
【0043】
さらに、部品実装機8の挟持チャック82は、トレイTから部品Pを挟持して採取する際に矩形のトレイTの第3辺T3に接近するとともに、第2辺T2および第4辺には接近せず、L字形状の第1および第2保持部材3A、3Bは、各主保持部4A、4BがトレイTの第2辺T2および第4辺の側面にそれぞれ当接し、各補助保持部5A、5BがトレイTの第3辺の側面から離隔する。これによれば、挟持チャック82の挟持動作を妨げるおそれが生じない。
【0044】
さらに、保持部材として、トレイTの側面高さH0より低背であって、パレット2に載置されたトレイTの側面に当接するように磁力によってパレット2に保持される側面保持部材6を含む。これによれば、第1および第2保持部材3A、3Bに側面保持部材6を併用することで、挟持チャック82の挟持動作を妨げることなく、確実にトレイTを位置決め保持できる。
【0045】
(6.第2実施形態のトレイ保持装置の保持部材3C)
次に、第2実施形態のトレイ保持装置について、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同じパレット2、および第1実施形態と異なる第1保持部材3C、第2保持部材を用いる。図5は、第2実施形態の第1保持部材3Cの斜視図である。図示されるように、第2実施形態の第1保持部材3Cは、補助保持部5Cの高さ寸法H6が第1実施形態の第1保持部材3Aと異なり、その他の部位は略同じである。
【0046】
すなわち、補助保持部5Cは、断面が矩形のアルミ製の棒状の部材であり、水平方向に長く寝かして使用される。補助保持部5Cの水平方向の長さは、保持するトレイTの辺の長さの半分よりも小さめであることが好ましい。補助保持部5Cの高さ寸法H6は、一端部51を除いて一定であり、トレイの側面高さH0よりも小さい。また、第2実施形態においても、第2保持部材は、第1保持部材3Cと鏡面対称に形成されている。
【0047】
このため、トレイTの第2辺T2の側面に第1保持部材3Cの主保持部4Aを当接させるとき、補助保持部5Cを第3辺T3の側面に当接させても、挟持チャック82の挟持動作を妨げない。同様に、第4辺の側面に第2保持部材の主保持部を当接させるとき、補助保持部を第3辺T3の側面に当接させることができる。これにより、トレイTは、向かい合う第1辺T1および第3辺T3がパレット2の縁部22および2つの補助保持部5Cにより両側から挟み込まれて位置決めされる。したがって、側面保持部材6は必要でなくなる。
【0048】
さらに、パレット2と2個の第1保持部材3Cのみを用いてトレイ保持装置を構成することも可能である。すなわち、トレイTの第1辺T1および第2辺T2に1番目の第1保持部材3Cを当接させ、第3辺T3および第4辺に2番目の第1保持部材3Cを当接させ、縁部22を用いずにトレイTの4辺を位置決め保持できる。
【0049】
(7.実施形態の応用および変形)
なお、第1および第2保持部材3A、3B、3Cは、主保持部4A、4B、浮上防止部42A、42B、および補助保持部5A、5B、5Cのねじ結合によって一体的に形成されているが、これに限定されない。すなわち、第1および第2保持部材3A、3Bは、接着や溶接などの別の結合方法による一体化によって形成されてもよく、単一部材の曲げ加工や切削加工によって形成されてもよい。また、アルミ製の第1および第2保持部材3A、3B、3Cの底面に磁石43、53、54を埋め込む代わりに、第1および第2保持部材3A、3B、3Cを鉄製として底面を磁化させてもよい。
【0050】
さらになお、第1実施形態で、トレイTの第1辺T1をパレット2の縁部22で位置決めしているが、第1辺T1を側面保持部材6によって位置決めするようにしてもよい。これによれば、パレット2の上面におけるトレイTの4辺の位置を自在に設定変更できる。また、第1および第2実施形態のトレイ保持装置1は、トレイ方式部品供給装置9以外で使用されてもよく、例えば、部品実装機内のテーブルに固定的に載置されてもよい。本発明は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:トレイ保持装置 2:パレット
3A、3C:第1保持部材 3B:第2保持部材
4A、4B:主保持部 42A、42B:浮上防止部 43:磁石
5A、5B、5C:補助保持部 53、54:磁石 6:側面保持部材
8:部品実装機 82:挟持チャック
9:トレイ方式部品供給装置
T:トレイ P:部品 Ff:浮上力 Fm:磁力
図1
図2
図3
図4
図5